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1948-02-04 第2回国会 参議院 本会議 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年二月四日(水曜日)    午後二時五十一分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第九号   昭和二十三年二月四日    午後一時開議  第一 國立國会図書館法案羽仁五郎君外五名発議)(委員会審査省略要求事件)  第二 國立國会図書館建築委員会法案羽仁五郎君外五名発議)(委員会審査省略要求事件)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 諸般の報告は御異議がなければ朗読を省略いたします。      ―――――・―――――
  3. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) これより本日の会議を開きます。この際お諮りして決定いたしたいことがございます。治安及び地方制度委員長より、警察官の教育施設視察のため都内に吉川末次郎君、中井光次君、鈴木直人君、羽生三七君、村尾重雄君、奧主一郎君、大隅憲二君、黒川武雄君、岡田喜久治君、靑山正一君、岡本愛祐君、岡元義人君、柏木庫治君、阿竹齋次郎君及び濱田寅藏君を二月四日、五日の二日間の日程を以て派遣したいとの要求がございました。これら十五名の議員を派遣することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 御異議ないと認めます。      ―――――・―――――
  5. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 報告をいたさせます。    〔青木参事朗読〕 本日委員長から左の報告書提出をした。  國立國会図書館法案可決報告書  國立國会図書館建築委員会法案可決報告書      ―――――・―――――
  6. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) この際日程に追加して、國立國会図書館法案國立國会図書館建築委員会法案衆議院提出)以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 御異議ないと認めます。先ず委員長報告を求めます。図書館運営委員長羽仁五郎君。    〔羽仁五郎登壇拍手
  8. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 只今議題となりました國立國会図書館法案並びに國立國会図書館建築委員会法案につき、本院図書館運営委員会審議の経過及び結果について報告をいたします。  眞理は我らを自由にする。これがこの國立國会図書館法案の全体を貫いておる根本精神であります。今日の我が國民の悲惨の現状は、従來政治眞理に基かないで虚偽に基いていたからであります。國民の安全と幸福とを守ることを期待されておりました先の日の議会が、その任務をはたすことができないで、遂に官僚軍閥の前に屈してしまつたのは、立法の全権及びその立法基礎となるべき調査資料議会みずからが全く持つていなかつたからであります。新憲法により國会が國の最高唯一立法機関として、國民の安全と幸福とを守つて行くために、従來のように官僚立法し、軍閥がこれを命令するというような状態を完全に脱却して、人民主権によつて選挙せられた國会任務を果して行くためには、その確かなる立法基礎となる調査機関を完備しなければなりません。これまでの日本においては、議会調査機関を備えず、行政各部調査機関を備えておつたのであります。併し行政各部は、事実上各部專門に分れ、よい意味においてか、悪い意味においてか、セクシヨナリズムに陥り、綜合的なることは甚だむずかしく、又政治を行うに急にして、ややもすれば國民現実を遊離して、ここにいわゆる官僚主義の弊害を甚しくしたのであります。かくて軍部又は行政官僚の一部が、この國民現実を遊離し且つ綜合的見地を全く欠いた調査によつて國策を樹立し、現実的でもなければ、綜合的でもない、即ち眞理によらない立法によつて、全國民を誤まり導いた事実は、実に戰慄すべきものであります。今日我が國民を救うべきあらゆる立法の大前提として、國民現実に即し、且つ綜合的なる調査をなすことができるのは、專ら人民主権によつて選挙せられたる我が國会あるのみであります。我が國会國民によつて選挙せられたるものでありますから、常に國民現実を忘れることができません。而して常に國民生活現実見地から、綜合的に考え、調査し、立法することができるのであります。これらの点に基いて國会図書館の必要が痛感せられ、先に國会図書館法が制定せられたのであります。然るに新國会第一回開会以来、國会立法の原則が未だに実現せられず、官僚立法が続けられ、そのために経済安定本部物價廳、その外行政各部において厖大なる調査機関が持続せられ、且つ拡張せられる傾向さえあることは、すでに本院におきましても、しばしば痛烈に批判せられたところであります。ここにおいて國会図書館を急速に建設し、その機能整備することはますます痛感せられておるのであります。然るに國際的にはすでに御承知のごとく、アメリカ合衆國議会図書館コングレス・ライブラリーは、これらの点において世界的に成績を挙げ、各國の模範となつております。第一回國会開会以來、本院図書館運営委員会は、このアメリカコングレス・ライブラリーの歴史、その現状、その組織、その機構、その現実機能の実情について詳細なる研究を続け、学ぶところに実に少くなかつたのであります。コングレス・ライブラリーにおいては、議員法案審査に当り、必要なる資料又は調査図書館調査立法リフアレンス部要求すれば、直ちに、或いは数分、或いは数十分、又は数日、その問題の性質によつて、最も急速にあらゆる資料又はその研究の結果の報告を手にすることができ、かくて各議員は常に十分の調査の結果に基いて法案審議に当ることができ、これが米國國会をして米國國民及び世界に対し重きをなさしめていることは誠に範とするに足るものがあります。これらの詳細なる研究を進めるにつれ、國会は実に國際的援助を得ることに成功し、現在アメリカコングレス・ライブラリー副館長の要職におられるヴアーナー・クラツプ君及び先に米國図書館協会のプレジデントの要職におられたチアルス・ブラウン君を我が國会図書館建設に対する使節として迎えることができたのであります。  この貴重なる援助を得て衆参両院図書館運営委員会は、昨年十二月十六日以來年末年始の休暇をも抛つて連日会議を開き、我が日本現状に基き、而も我が國及び世界の將來をも考え、我が國会立法基礎となるべき調査重要任務を実現すべき國会図書館、そして同時に貧弱を極めておつた日本國民図書館文化を、國際的水準に引上げる任務を持つ國立國会図書館の構想のために研究を続け、その間我が國におけるこれらの方面権威識者の意見をも聴き、且つ我が國諸方面調査研究機関新聞社調査部などをも調査し、特に最近に至りましては、両院法規委員会議院運営委員会委員諸君より貴重なる討議をも受けて、ここに遂にこの法案が完成せられ、本日ここに國会に提出することを得ましたことは、委員会の一人として私の最大の光栄であります。只今参議院図書館運営委員会は、衆議院送付法案につき最後の審議を行い、万場一致可決いたしました。  次に、國立國会図書館法の各章について簡単に御報告申上げます。眞理が我らを自由にする。この確信に立つて憲法の誓約する日本民主化世界平和に寄與すること、これが我が國立國会図書館設立使命であります。この法案前文はこれを明記しております。これは特に参議院図書館運営委員会において起草せられましたものが衆議院の同意を得て、前文に掲げられたるものであります。  法案の第一章第二條は、國立國会図書館があらゆる資料を蒐集し、國会議員の職務の遂行を助けると共に、行政並びに司法の各部門に対し、更に日本國民一般に対し、図書館として奉仕することを規定しております。法案の第二章は、國立國会図書館長國会両院議長の任命により、如何にしてこの重大任務を果すべきかを各條に亘り規定しております。法案の第四章は、國立國会図書館運営についての國会常任委員会及び國立國会図書館と、行政及び司法の各部門におけるその支部図書館との関係調整についての連絡委員会につき規定しております。法案の第六章は、國立國会図書館主要任務たる國会、その常任委員会及び國会議員立法のための調査機能につき詳細を規定しております。法案の第七章は、國立國会図書館が、行政及び司法の各部門における調査資料図書館を支所として、如何に活動すべきかを規定しております。法案の第八章は、國立國会図書館がその主要任務たる國会要求を妨げない限り、一般國民図書館文化の中心たるべきことを規定しております。以上がこの法案の要点であります。  次に、この法案と並んで提出せられておりまする國立國会図書館建築委員会法案は、國立図書館がその重大且つ複雑の機能を能率的に果すために、如何なる建築上の條件を備えなければならないか、その完全なる準備を使命とする委員会につき規定しております。この國立國会図書館法案並びに國立國会図書館建築委員会法案につき、與えられましたる各方面からの援助につき、なかんずく使節を通じて寄せられたるアメリカ合衆國民友愛に対し、ここに最も深き心からの感謝を捧げることを許されたいのであります。(拍手)  これらの法案によつて國立國会図書館は、なかんずく民主日本文化日本國際平和日本の、國の最高唯一立法機関たる我が國会議員各位が、日本を一刻も早く再建し、長く國民の安全と平和とを守る立法のための調査機関たる重要任務を、必ずや誤りなく果すことを固く確信いたしまして、委員会審議の結果を報告し、これらの法案につき本院の議員各位の十分なる討議を仰ぐ次第であります。  尚本日この議場に、これらの法案につき一ヶ月余に亘り、連日友愛援助を送られることを惜しまなかつたアメリカ使節両君が傍聴に見えておられることを御報告いたして置きます。    〔拍手起る〕  日本の久しき官僚主義に対する我が國会民主主義の勝利のために、戰争に苦しみ、今インフレーシヨンに苦しむ我が國民の安全と幸福とを守る立法基礎たる調査の確立のために、本法案採決諸君の賢明なる御判断にお委せいたします。以上を以て報告を終ります。(拍手
  9. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 討論の通告がございます。堀眞琴君。    〔堀眞琴登壇拍手
  10. 堀眞琴

    堀眞琴君 私は三つ理由からこの法案に賛成いたす者であります。  第一に、この法案は我々議員立法活動基礎となるところの研究調査について、有効なる規定を含んでおるということであります。言うまでもなく図書館任務と申しますものは、單に図書資料を蒐集し、或いはこれを整備するというだけではないのでありまして、それらの集められた図書なり資料なりを、我々が有効にこれを活用するというところにあると思うのであります。従つて図書館を設けますにつきましては、單に図書資料蒐集整備するだけでなく、これに附随して我々の立法活動を助けるところの調査機関を完備しなければならないのであります。然るに我が國のこれまでの國会図書館におきましては、そういう設備がないことは勿論のこと、我々の調査活動を十分ならしめるための図書資料につきましても、必ずしも完全に蒐集整備が行われておつたとは考えることができないのであります。  本法案におきましては、この我々の立法活動基礎となる研究調査につきまして、十分にその資料乃至は図書蒐集整備するばかりでなく、我々の立法活動を助けるための調査機関國会図書館法によりまして設置せられることになつておるのであります。尚立法考査局或いは專門調査員というものが設けられるばかりでなく、更に一切の図書資料を蒐集するために、納本制までもが規定されておるのであります。従來はこの納本制は御承知のように、内務省警保局において行われておつたのでありまするが、今後は、國会図書館においてこれを行うのでありまして、而も内務省警保局のごとくに無償においてこれを行うというのでなくて、代償を以て納本制を確立しているのであります。これが私の第一の理由であります。  第二の理由としましては、國会図書館、各行政部門図書館司法部図書館、これらが統一連絡ある規定を設けられたことであります。御承知のように、従來行政各部図書館は、それぞれ別個に設けられている。司法部図書館も亦政府図書館からは独立に設けられておる。國会図書館に至りましては、衆議院参議院それぞれその組織、その運営の仕方が異つているのであります。こういうようなことでは、統一連絡ある國会議員政府職員裁判官調査活動というものは全然できないのであります。本法におきましては、この三つ機関のそれぞれの職員が十分に統一連絡ある調査活動を行うことができるようになつているのであります。即ち組織の上から申しますと、國会図書館がいわば中央の図書館であり、行政各部図書館司法部図書館はそれぞれ支部図書館として運営されるのであります。そうしてそれらの各部門図書館連絡調整機関として、連絡調整委員会が設けられることになつておるのであります。さらに運用上から申しますると、政府職員國会議員裁判官はそれぞれ國会図書館を利用するばかりでなく、各自資料交換であるとか、或いは調査交換であるとかいうことができるようになつているのであります。従つて我々がこれまでばらばらに行なつて参りましたところの調査活動が、この國会図書館法によりまして、統一連絡ある調査活動が行われることとなつているのであります。  第三に、私が本案に賛成いたしますのは、この國会図書館國民一般に対しても研究調査のサービスを提供するということであります。勿論國会図書館はその性質上から申しまして、我々議員立法活動政府職員司法部員研究調査のために役立つものでありまするが、併しながら同時にそれは國民一般に対しましても、調査研究のための十分なる機関として役立つものでなければならんのであります。本法案はこの点について明瞭に規定しているのであります。尚上野の図書館につきましては、これ亦來年の二十四年の四月一日までに國会図書館に編入されることになつておりまして、行く行くは東京都に移管されまして、都民の図書館として十分に役立ち得るものとなつているのであります。私はこの三つ理由からして本法案に賛成いたす者であります。(拍手
  11. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 岩本月洲君    〔岩本月洲登壇拍手
  12. 岩本月洲

    岩本月洲君 私は只今上程されました國立國会図書館法並び建築法案満腔賛意を表する者であります。その理由といたしまするところは、第一に、只今堀議員からのお言葉もありましたように、立法機関行政機関、裁判所、そのおのおのが職能を遂行して参りまする上に、この図書館が生きた一つの働きを持つということであります。この事柄に関しまして、先ず私共は、國会開会されまして以來渇望いたしておりましたものは、一日も早く國会図書館設立されて、私共の職能を万全に遂行することができるようにということでございました。何故かと申しますると、私共は國会議員といたしまして、現在まではその職能を果して行くについて、実は手なし足なしの状態でやつて参つたのであります。甚だ不便この上もない状態で、一つ事柄調査いたしますのも、個々の我々が個々の僅かな機関を利用して調査をする。例えば補助員使つて調査をせしめる、乃至は委員会に附属してありまする專門調査員の手を煩わすという程度であつたのでございまするから、おのずからその資料も甚だ貧弱であり、その蒐集されましたる参考になるべきものの量も質も全く貧弱であつたのでございまするが、この法案に盛られておりまする内容によりますると、全く図書館の持ちまする内容は、私共國会議員國会議員としての職能を果して行く一つ原動力となる。調査部門におきましても亦立法草案起草についても、この法案の第十五條の内容に示されておりまするように、実に万全に私共が立法職能を果して行くことのできるような立派なものであると言うことができましよう。又次に今までの國会國会としての独自の権能を発揮することができなかつた。何故かと申しますると、調査にいたしましても、又は蒐集いたしましたところの資料にいたしましても、それは殆んど官僚から当てがわれたものによつて動かされておつたのであります。その調査機関が、乃至資料蒐集が、國会図書館法によりますると、この図書館調査局乃至立法レフアレンス局ともいうべきいわゆる立法参考局によつて、自由自在に而もそれが便利であるばかりでなくて、充実したところの内容のものを我々に提示してくれることができる。こういうことにおいても、私共はこの法案を見るときに、今までこういうものなしに我々が職能をやつていたということが、実に不思議な程であります。この法案によつて図書館設立されて、初めて我々は職能を発揮することができるんだということが頷ける程であります。同時に私共國会議員がたまたま世評に勉強が足らないという評を受けます。現在のようないわゆる四階の片隅に抛り上げられているような図書館、そういうものではなくて、日本政治原動力となる、生きた動脈のように動く國会図書館が、この國会の直ぐ傍に設立されましたならば、國会議員勉強しないという、この悪評から我々は免れることができる。もつと言えば、本当に勉強のできる機関がここにできるということは、私共にとつて喜びの中の喜びでなくてはならんと思うのであります。而もこの法案アメリカの貴重な経験からして示唆されたものでありまして、それを練り上げて、そうしてここに私共の國立國会図書館法として上程されましたことは、実に御同慶に堪えないのであります。この法案によつて立法行政図書館の貢献するところは万全の内容を持つておるということを私共信じて、満腔賛意を捧げて止まないのであります。同時に、この図書館法設立と共に建築委員会法というものが上程されてありまするが、一日も早くこの建築委員会法によつて、私共の眼前にこの図書館設立が早められんことを希う次第であります。一言以賛意を表する次第であります。(拍手
  13. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) これにて討論は終局したものと認めます。これより両案の採決をいたします。両案に賛成の諸君起立を請います。    〔総員起立
  14. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 総員起立と認めます。よつて両案は全会一致を以て可決せられました。(拍手)      ―――――・―――――
  15. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) お諮りいたします。本日の議事日程に記載いたしました羽仁五郎君外五名発議の両案は、只今本院において可決せられました衆議院提出國立國会図書館法案及び國立國会図書館建築委員会法案と同一の事件と認め、これを議事日程より削除いたしたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 御異議ないと認めます。      ―――――・―――――
  17. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 在外同胞引揚問題に関する特別委員長より、先に議員を派遣して調査した北海道及び東北における在外同胞受入態勢について、その結果を報告するため発言を求められました。つきましては、御異議なければこの際これを許可いたします。在外同胞引揚問題に関する特別委員長中平常太郎君。    〔中平常太郎登壇拍手
  18. 中平常太郎

    中平常太郎君 先に第二回國会におきまして、十二月十一日の院議を以ちまして、議員淺岡信夫木下源吾北條秀一山田節男の四氏は北海道に、木内キヤウ千田正穗積眞六郎の三氏は東北、宮城、岩手、青森、秋田の四縣に、海外引揚同胞受入状況調査のために派遣いたされましたのでございまするが、東北班は十二月十九日より二十六日まで、北海道班は二十日より三十日まで、それぞれ目的地において視察いたしました。院議決定日程と多少の相違がございますが、これは交通事情の悪化と降雪のためでありまして、何とぞ御承認をお願いいたしたいのでございます。特に申上げたいのは、この嚴寒時における引揚者の実際的受入とその生活状態視察するために、各議員が十二月のあの寒い休会中、而も年末に僅かな期間を各自宅にもいられませずして、わざわざ東北北海道寒冷地に向つて出張を願つたことは、その御熱意に対し感激に堪えないものがあるのでございます。(拍手)  この出張目的は、先に第一回國会におきまして政府から改めて、帰りまする引揚者三万人のその受入設備に対して、昨年十一月までに新たな施設完了するということを厚生大臣が言明したのでございまして、その受入施設進捗状況が寒冷と降雪のため若干遅延しておる等の有様であつたので、その進捗状況調査し、又これを檢討し、且つはそれを進捗せしめ、一方引揚者のこの寒空の生活状態視察せんとするにあつたのであります。  引揚者同胞受入施設整備ということは我が國の義務でありまして、且つは引揚促進について最善を盡されておりますところの連合軍当局の御厚意に対しましても、なさねばならん当然の責務でございます。計画されました施設は、北海道が百六の市町村に百二十四ヶ所、収容人員は一万六千九百九十八名であり、東北六縣は七十六ヶ所、一万三千人であります。これらの施設は、調査当時即ち十二月二十五日現在におきましては、北海道地区は七五%、東北地区は八〇%の完了でございまして、それから考えて見ますというと、当時急いで施設しておりましたから、一月末におきましては全部完了しておるものと思われるのでございます。青森のみは降雪等関係で幾分遅延しておりましたが、これも一月末までには完了予定になつておるのであります。これらの施設は全部既存建物を利用したものであるために、附属の施設に対しまして、井戸とか浴場などにおいて若干の不備がございますが、但し採暖、いわゆる火鉢のごとき採暖器具、或いは燃料、一般家庭配給基準量は先ず先ず確保されておりまして、引揚者特殊事情などもよく講ぜられまして、緊急措置といたしましては適切であると判断し得たのでございます。畳は全体的に欠乏いたしておりまして、各府縣共非常に苦心を拂つております。三万人の受入施設もほぼできておるのに、昨年十二月六日到着の引揚船を最終といたしまして冬期の引揚は打切られまして、設備はできた、人は帰らない、一部分の人は帰つて來ないというふうになりまして、無縁故者のみを入れる筈であつたその施設に対しまして、縁故先に定着する予定であつた者まで一應そこに収容しておるような状態でございます。その結果四月の解氷期に相成りまして、どしどし帰つて参りますことに相成りまするというと、施設の面におきまして不足を生ずるような結果を見るのでありますが、これに対しましては先般政府におきましても、急速に実行すると言明されておるのであります。  更に、これら受入態勢一つといたしまして、縣及び北海道輿論について述べたいと思うのであります。  東北六縣中、視察は四縣でありましたが、今次の受入れにつきましては、異常なる熱意を示しておられることは、施設の微細なる点にまでよく注意が拂われておることによつても判断し得たのでございます。北海道は、樺太、千島方面引揚者の中八〇%は北海道内に定着する者と考えられております。又満州の開拓民も、大部分は道内に定着を希望しておると考えられております。元來北海道はこれまでの人口は御承知の通り僅かに三百余万でありまして、鉄道沿線以外は誠に大部分が廣漠たる原野でございます。シベリヤその他北ヨーロツパ地方のことを考えるなれば、敗戰後人口の異常な密度にあるところの日本國民が、この北海道積極的入植計画を立てないということは、國家の怠慢であると私は信ずるのでございます。(拍手従つて北海道当局におきましては、無縁故者の大部分北海道受入れるべきであるという積極的なる意図を明らかにしておられます。このため差当り一万七千五百戸の應急施設を計画しておられますことは、誠に当を得たことと喜んでおる次第でございます。  以上によりまして認識し得るように、北海道輿論は、北海道開発の主体的條件と、又一つ引揚げ人口処理の國内の客観的情勢とから考えまして、これらの無縁故者北海道受入れについて堅実なる熱意が高揚されておるということは、引揚げ問題の将來に大きな暗示を與えておるものと言うべきであると存ずるのであります。従來北海道は土質、氣候等によりまして、南方よりの入植は相当困難でありましたが、引揚者も樺太、千島、満州、北鮮などで、氣候には十分馴れております。寒冷に処するの途を知つておる。又生産方面におきましても、適地における適種の栽培に対する経験もありますし、十分なる土地を與え、保護をするなれば、極めて好適なものと私は信ずるのでございます。これが総括的の御報告でございますが、各縣に亘りまして調査報告はこんなに沢山参つておりますけれども、これを圧縮いたしまして極めて簡単に各縣の様子を申上げます。  宮城は、割当二千人でございまして、現在四百四十人帰つております。施設は三ヶ所で、白菊寮、愛子寮、椿寮でございまして、建築はバラツクと旧兵舎でございます。縣、市、学生連盟、引揚者連盟などの斡旋でお出迎えなさつて、寮へ輸送し、親切に炊出しなどをやつておられます。帰着後一週間の間は医療班の巡回診療などをいたしております。就職の方面におきましては、現在九十四名程鉱山方面に就職いたしておりまして、あとは日稼ぎの状態でございます。共同作業場の計画も宮城にありますが、予算、資金の関係でまだ実現はいたしておりません。大体今度の三万に対する御報告でございますが、どの縣にも十万に近いところの、或いは五万、八万の引揚者を皆包容いたしておりますことは、これは申上げるまでもございません。但し今度私が申上げますのは、新らしい三万の分に対して申上げますから御了承を願います。川渡の元軍馬補充所、舟岡の海軍火藥所跡あたりは國庫から拂い下げて、十分なる施設をして今後に備えなければならないものであると存じます。  次に岩手縣としては、二千五百、四百世帯でございまして、収容は旧兵舎で四千七百坪の所を施設いたしております。只今その兵舎は五〇%収容し得るような設備完了いたしておりまして、あとはどしどしできて行きつつもあるのでありますが、百五十万円程その施設には不足を來し、國庫の補助を要望いたしております。畳一枚二円で賃貸しして家賃を取つておりますが、これが一ヶ年約十万円になるそうでありまして、これは私は当分無料にすべきではないかと思つております。岩手縣は引揚者に対して非常に親切で、青森からの連絡次第にわざわざ青森まで出迎えに行かれ、主食、調味料なども即日配給されて、援護物資などは、國庫補助以外に岩手縣保有の物資を倍以上引揚者に給與せられており、引揚者一般に非常に感謝しております。但し入浴設備が未だに不備な点があることは残念でございます。  青森縣は、連絡所は所員が十四名で、非常に熱心に事務を処理しておりますが、ここは御承知の通り函館よりの輸送の任に当つておるが、列車輸送の円滑を欠く等の事態に処するために、蓮華寺に待機所、市内に旅館二ヶ所、病院一ヶ所を指定せられております。併し昨年の体験より見まするに、青森の上陸者は帰國を急ぎまして、遠方のお寺などには行かない、これを利用しない、従つて駅の構内で一日千人から千三百人がすし詰めになつて、構内から溢れて、誠にその混雑は実に名状すべからざるものが昨年はあつたのでございます。ここではどうしても構内に今一層緊急待機施設をなすべきだという要望が非常に強くございました。視察者におきましても、これを痛感されて帰られたのであります。青森縣は七百十九世帯、二千二百人でありますが、実際は今回帰つた分はまだ一名も受入れておりません。これは青森が内地の北門に当つておりまして、北海道から帰る引揚者、又南方から北海道に渡る者などで随分混雑いたしておりますので、後から帰る者を入れるつもりで、この三万人の中の者はまだ一名も収容いたしておりません。青森の当局におきまして調べたところによりますと、通過する者が一日千人から六百人、それがとかく夜中が多うございまして、これがために上陸第一歩の印象を悪くしてはいけないというので、万全の処置を取つております。昨年のごときは医療及び湯茶、味噌汁、握り飯など非常な努力を拂われて、その待機の人々に給與しておられましたが、現在では資金関係でお湯とお茶のみになつております。市内の旅館二ヶ所は二百人くらいしか収容できないので、これは優先的に婦女子を入れております。如何にしても駅の構内に早く一時的待機所を造る必要があるのでございます。  秋田縣は、百四世帯でありまして八百名、施設は水害のために遅延いたしております。秋田市から一里程の所に造船工場がありまして、それを專ら使つておりますが、三百七十万円の施設を以てやつておりますが、大部分できて行きつつありますが、入浴施設などがまだ急がれております。配給品は大体行渡つておりまして、生活に直接の難儀はないようでございます。農業者の勤労意欲は佳良であります。現在では大部分日稼ぎの状態であります。一時秋田縣民との間に摩擦がありましたが、現在では大体落着いて参りまして、引揚者の中から町村長になつた者もある程でございます。生業の救援につきましては、漁業と海運関係などに重点を置かれておられます。未だこれから後三百万円ぐらいの援助を以て引揚者のために働かねばならんという縣の方針でございます。  次は函館、函館援護局は埠頭の上陸所に四つの寮で六千二百人の収容力を備えております。ここにちよつと申上げておきますが、舞鶴の方は主として九五%までが未復員者でございまして、青年でございましたが、函館におきましては反対に九五%までは一般引揚者でございます。上陸所は檢疫、檢診、消毒、又援護給與から遺骨その他荷物の託送、又一般引揚者、復員者、或いは道内へ入る者、本州へ帰る者、人も荷物も一々区別しなければならないので、非常に複離多岐な事務を函館は処理いたしております。一日一千人の消化能力が標準でありますが、解氷期になりましたら約二倍、三倍の人員が帰つて來ることになると存じますが、非常に熱心にその覚悟を以てやつておられます。四つの収容所はいずれも遠方でありまして、四キロから八キロございます。それで連絡輸送は全部トラツクでありますが、進駐軍の援助で十五台のトラツクが入手できましたが、全部後輪ダブルになつていないために、輸送力が十分でないため、四台を上架をして、そのタイヤを取つて轉用しておる状態でございまして、今後輸送用充実のためには十分努力を拂わねばならんことを覚悟しておられます。ともかく函館は受入のために多大の経費を負担せられ、各階級の方々が物心両面の総動員を以て援護に当つておられることは誠に感謝すべきことと存ずるのであります。 青函輸送つまり、青森、函館間の輸送でありますが、現在千人から千三百人でありますが、特別連絡船の増発を極力要望されておる状態でございます。  小樽市、小樽市は千三百九十人の収容の予定でありまして、収容施設完了いたしております。十一ヶ所の寮で、この費用も道費が二百六十八万円、小樽市民の寄附が五百十万円、尚あと小樽市民が五百万円の寄附を募集しておられるようでありますが、受入施設に対しまして誠に熱心で、現在収容せられておるところの人々は大変にその親切に対して感謝しておりますことによつても、この小樽市の親切が判明することと存じます。  札幌市は旧兵舎に二千人でありまして、更に改造して三千人を増加する見込であります。何かの設備もよろしいが、何さま兵舎でありますために天井が高いので、保温設備ができませんために、中二階を造つてはという議が持ち上つておりました。  豊平町は人口二万六千位の所でありますが、千二百人を引受けておられます。尚且つあと無縁故者を二千人引受けておられるようでありまして、非常に熱心にやつておられまして、豊平町といたしましては、費用は大部分地元が負担しておられますが、これは特に國庫の補助の要があろうと痛感いたしたのであります。  旭川は四十四世帯、それから七十九世帯と二つでありまして、これは二十二年度中に七寮、二百六十五世帯まで入れる予定でございます。臨時収容所には生活不能者のみを収容しておられますが、折柄お正月にもなるので、餅などを配付せられて行届いた援護振りでありました。  室蘭は千四百四世帯で四千三百八十一人、これに対し三千坪の遊休建物を買収して集團アパートの計画中であります。同市も受入に対しましては極めて積極的でありまして、授産補導についても熱意を以て働きつつおられるようであります。  これを総括して申上げますと、現在受入態勢は臨時的、應急的で、決して根本的ではないのであります。即ち今後は個別に、適材適所に配置移動が行われるものと思われます。又恒久対策といたしましては、厖大なる人口を消化するため、北海道入植の外に、政府は國内到る処にある干拓事業によりて土地を増加し、生産を増強せしむる具体的なる方策を樹立いたしまして、多数の引揚者に前途に希望のある力強きスタートを切らしむべきであると思うのであります。而して従來のように受入地区に莫大なる負担を掛けさすようなことではいけない。合理的に國家において十分考慮を拂うべきであると思うのであります。又配給物資につきましても、調査したところによりますと、蒲團一枚が三千円であつたのでありますが、かくのごとき高價な蒲團では引揚者は到底甚えられない。一應こういう必需品は、裸で帰つたところの同胞に対しましては無償で配給することが原則であると私は思うのであります。これらを骨子といたしまして計画を立て、営農資金、住宅資金、或いは住宅提供、入植後は臨時生活資金又は生業資金の増額等によりまして、引揚者六百万人の勤労意欲を復活せしめ、その腕と勇氣と技術とを活用せしめ、以て再建日本の更生促進のために惜しみなくその心身を用いしめるように、積極的なる考慮を拂うべきであると痛感する次第であります。(拍手)  尚この視察におきましては、北海道その他各縣から痛切なる各種の要望がありましたが、これらの要望につきましては、特別委員会におきまして十分研究して、将來成案を得たいと考えておる次第であります。右極めて簡單でありますが、御報告申上げまして、失礼いたします。(拍手
  19. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) これにて本日の議事は議了いたしました。次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十七分散会