○
岩木哲夫君
現下の
インフレ原因は、固より
敗戦下の被
占領経済下といたしまして、或いは止むを得ないものがあるかも存じませんが、併し一面これまでの
政府の取り来
つて参りました
経済政策が、ややもいたしますれば
分配政策にのみ
重点が置かれておつたやの傾きがありまして、真の
生産増強の一貫した
総合政策に欠けていた点が多多あつたからであると信ずるのであります。即ち
政府は、今日まで
予算その他各般の
財政政策を実行するにいたしましても、ただ刹那々々の追い打ち、彌縫
政策的な
処置のみによりまして、その場限りの
積り積つた悪結果が、今日及び将来捲き起らんとする恐るべき
インフレ惨禍の
最大原因を成しておる素地であろうと信ずるのであります。特にその失政の顕著なるものといたしましては、第一に、生きた
経済、動く
経済、流れる
経済、脈を打
つておる
経済を死物化し、固定化し、或いは
不動観念によ
つて、而も理外の理を行きまする
経済修錬に乏しい
法律万能の
官僚が、非
現実的な
机上計画による
主観統制を頑迷にも強行し、而もその
経済の質と量とその
動的本能を見極めずいたしまして、一方的なただ何でも
価格は抑えればいいといつたような単純な
価格統制を強行した悪結果が、即ちその
最大の
原因と信ずるのであります。更にこうした結果、再
生産は振いませず、
生産経済の
本質、
本能は破壊蹂躙されました。そうして今日のこの
インフレを余儀ない以上に
拍車をかけたと思うのであります。
その第二の問題といたしましては、更にこうした
処置に対しまして、成行き的な
金融政策の失敗が又非常な暗影を投じ、
拍車に
拍車をかけて来たことと存ずるのであります。要は
資本を保護いたしませず、
資本を保障せず、正当な利潤と、そうして正当な労銀を無視いたしまして、而してその
生産されました物の質と
本能とを無視いたしまして、
価格統制政策を
机上計画で取つたことによりまして、再
生産は進みませず、振いませず、
資本と
経営と
労働意欲はますます遊離減退いたしまして、
産業自体が崩れて来るといつたようなことから、
統制と出荷がこれらに伴いませず、
物資はますます欠乏して来る一方でありまするのみならず、更に
秩序はこれ又非常な非
現実的な、非能率的な
机上統制計画に終始いたしましたことの結果から、物が流れて来ない。
配給がないところに、さなきだに少い
物資の横流れや
闇価格とこうした結果にな
つて、
物価は段々上
つて来る、
物価は隠れる一方、こうしたような
状態で、
物価が上りましても正しい
生産は一向振わない。所要の
産業資金は枯渇する一方、
生活は
マル公では
生活は到底できない。
従つて賃金は上る、
予算は膨れる、この悪結果が余儀なく
紙幣の
増発となりまして、
インフレの悪化は増進の一途を辿
つて来たのが今日の現状だと思うのであります。
こうした
闇物価高、或いは
通貨膨張が悪循環いたしまして、真面目な
国家計画の
生産は振わないのでありまして、この事態は決して一部の人がよく
言つておりまする
紙幣が
増発したから
インフレ物価高が招来したのであるというようなことではないのでありまして、
紙幣の
増発を余儀なくいたさせました
政府の
物価統制、この
物資不足、
生産不振が、この
最大の
原因であると信ずるのであります。(
拍手)ここに私たちが先ず第一に
生産第一
主義を掲げまして、
国家総力を結集いたしまして、この恐るべき
インフレ惨禍を緊急に救うべき
重大対策を、且つ従来も取り来
つておりました
統制政策を変転修正するの必要を強調する所以であります。
然るに現在の
実情はご
案内の
通り四つの島に犇めき合う
生活を賄うあらゆる
重要産業鉱工業品はまだ戦前の四〇%より
生産いたしておりませず、
食糧亦八五%に達するや否やの
状態であります。この
消費経済の充足は到底この
敗戦下管理を受けております日本だけの力と、物と、金だけでは救われないのであります。ここに先ず国内産業体制の確立に先行いたしまして、或いはそれに伴
つて外資導入並びに重要
物資の輸入懇請と、こうした措置が緊急絶対必要とな
つておることは勿論であります。然らばこの
インフレ対策に重要なる課題であります外資導入並びに重要
物資資源の輸入によ
つて、基本的な貿易再開上に対処いたすべき
財政経済の準備と建直しが、果して
政府或いは官民共に真実を穿
つて充実いたしておりまするかどうかは、我々非常に危ぶむのでありますが、特に
経済力集中排除の施行後、或いは独禁法施行後におきまする産業再建の具体化の明示が、当面する
経済不安に莫大なる問題を、甚大なる問題を投じておる。この
実情に照らしまして、この集中力排除法が、或いは独禁法に対しまする、問題に対しまする
政府は重大なる措置が又要請されると信ずるのであります。要は再生日本の
経済建直しは先ずこの国際貿易
経済の一環整備に全力を集中すべきであると存じますると共に、又これに伴いまする国際信用を得る政治
経済の新システムの創造、及至は改善によりまして、緊急善処すべき諸点が沢山あるのであります。こうしてこの取敢えず資源の
不足いたしておりまして自立自営できない日本の産業に必要なる海外所要資源の輸入を懇請いたしますると共に、これらの資源輸入に対処いたすべき受入体制の企業整備が、企業施設の拡充が、是又非常に重要なる問題でありまして、我が日本といたしましては、これらの外国資源を輸入いたしまして、優秀なる加工技術と真正なる労働力を輸出する考え、加工技術と労働力を輸出する熱意を以てこの国際信用対外貿易
経済一環の中軸とせなければ、到底日本の再建は困難であろうと思うのであります、こうした必要
政策を敢行いたしまして、併せて当面いたしまする貿易為替のドル対円の減価率を少なくすること、ドルに対しまする減価率を少くすることが、これ又日本の
インフレ防遏下に重大なる要素であり、且つ絶対必要なるものといたされるのでありまして、この円価維持によりまして、将来発展すべき国際貿易
経済化の一環といたしまして、将来日本の
生産増強の又大きなる根幹といたすべきであろうと存ずるのであります。私はこの見解に基きまして、当面する
インフレ対策の要諦は大体次のようなものにあるのではないかと信じておるのであります。
その第一は
生産第一
主義と融資
政策に対しまする処際、第二は
物価体系の根本的改革、第三は金融並びに税制の改革、第四は
食糧問題の解決、第五は
官僚的な
統制経済の大修正、この五つの点が当面する
インフレ対策の根本であらねばならんと確信いたしておるのであります。
その
生産第一
主義の融資
政策は、然らばどういう点にその
重点を置くかという問題でありますが、これは私が只今申上げましたる
通り、我が国産業の基本的要素でありまするが、外資導入と且つ外国重要資源の輸入に対処いたしまする、国際貿易産業に対処いたしまする国際
経済体制の確立と、国内需要産業のこの
経済体制の確立と、
二つに分けて国家の産業形態を処理いたしていかなければならんと思うのであります。これにつきましては、特に外資導入及び外国資源の輸入に処しまする国際貿易産業の企業拡充につきましては、特に集中排除、独禁法に対しまする特別の措置を以ちまして、徒らに拘束することなく、真の我が国際
経済、貿易再建、国家再建の真実を…国際信用を得られるようにすると共に、これらに対しまする特別の措置が是非必要と信ずるのでありまして、更にこうした外国資源の輸入と
生産と、融資とのリンク制を図らなければならないのであります。ただ外国資源を入れて、それを所定の産業体に加工委託して、それを輸出して為替管理をするというだけでは、なかなかこの困難なる産業は発展されない。飽くまでもこれらの融資は
生産と外国資源とのリンク密着性を取るべき措置が是非必要であると思うのであります。更に
経済システムの変更でありますが、これは先程申上げましたる
通り、
資本と利潤を
否定し、正しい労銀を
否定するような、各種各様の、
資本家は
資本家、
経営者は
経営者、労働者は労働者のみの
立場にて、誤まてる民主、自主的な考えを
是正いたしまして、
資本家も、
経営者も、労務者も併せて、挙
つてこの
経済困難に対処いたしまする新らしい日本の
経済システムを設定いたしまして、外資導入、外国資源輸入に対しまする企業再建の発展に協力一致いたすべき
経済システムの構想が是非必要と存ずるのであります。こうしたことによ
つて、正しい
資本、正しい利潤、正しい賃金に対しまする
生活保障の三位一体の実を挙げまして、この
生産増強の根幹とせねばならないのでありますると共に、更にこれらのおのおのの
物資別に特定の組織を結成いたしまして、その
生産から融資、
配給から供出、あらゆる各般に至りまする責任体制の確立を以ちまして、殊に
価格面、
生産資格、或いは賃金、或いは
配給消費のおのおの
価格面にも、これらの産業別の組織体が相当需要なる役割を持
つて、官民一致の
価格統制、
価格構成の中核となすべきことが、
生産増強の上に最も欠くべからざる要素と思うのでありまして、殊に国内産業に対しまする
生産増強をいたしまするには、特定の公債をこれらに連結いたしまする
処置も取り、あらゆる産業保護
政策を強行しなければならんと思うのであります。第二に
物価体系の抜本的改革は、現行の
価格体系の理念、即ち基準年次の六十五倍とか、賃金の二十七八倍といつたような、刹那漠然たる
価格形成の措置でありませず、飽くまでも再
生産経済と、通貨と、
消費経済とをコントロールいたしましたる新らしい角度によ
つて物価体系を築きまして、この結果によりましての賃金の最低を設けるというような、而もこれらの
配給秩序に関連せる、新らしい角度の
物価体系の根本的改革が必要であるわけであります。
第三は金融並びに税制の改革でありますが、現在の
政府の
金融政策は徒らな彌縫策、追打ち
政策のみでありまして、この沢山な闇金融を排して、
統制ある預金吸収
政策としての措置を取るべきことが絶対必要でありまして、預金を特に優遇する制度、預金者に対して特別の条件保護を与え、或いは金利を大幅に上げまするとか、或いは小切手とか手形取引を
重点的に
経済取引の中核にいたしまするとか、税金も預金より徴収するの制度を新らたに設けまするとか、或いは一年、二年、三年の定期預金に対しましての徴税の割戻しの歩合を設定いたしますとかいつたような工合の、特に金融集中
政策に対しまする特別措置が絶対必要であります。殊に
物資の移動につきましては税務署の査定する移動証明による課税の制度を取りまするとか、指定産業以外に対しまする特別課税をいたしまするといつたような、税制と金融との関連性を築くことが絶対必要であります。
第四は
食糧問題の解決であります。私は今日の
インフレの
最大の
原因は
食糧問題にあると思う。ただ僅かの五勺の米、一匹の「いわし」、一片の菜つ葉の
不足するため、如何に
国民が
食糧事情、
食糧問題に喘いでおるか。我々の
生活費の七〇%は
食糧に費しておる。而もこれが大部分闇購入の
根源とな
つておる事態から見まして、若し我々にもう五勺の増配、一匹の「いわし」、一片の菜つ葉を増配することができまする措置を取りますれば、恐らくは二千二三百億以上の、こうした闇流れの
食糧購買の金融が停止いたしますることと確信いたしておるのであります。現に日本は
主食にいたしましても、副食にいたしましても、その他の
生鮮食料品にいたしましても十分あるのであります。ただ
統制経済、
価格措置の誤まてる結果から、この闇流れ、横流れとな
つて、米の僅かの足らないことが、すべての闇
物資インフレの
根源とな
つておる事実に鑑みまして、当然
食糧問題の積極的なる改革が必要であると確信するのであります。
最後に私は、
官僚的
統制経済の
撤廃とは申しませんが、大修正が必要であると思うのであります。特に
価格統制の誤まてる先程申上げましたる措置によりまして、この
生産の
本能を没却して、
生産意欲を粉砕し、物の性質と物の動きというものを破壊し、而も非能率、非
現実、機動性のないこの
価格政策ということによ
つて、物は全部死んでしまう。物と
価格のギヤツプが
闇取引、
闇価格とな
つて、あらゆる燎原の火のごとく悪化増進いたしておる実態から見まして、
物価の
本質、
本能を見究め、機動性のある
価格の大修正が必要であると共に、物にこの民主
主義思想と
統制経済との食い違い、履き違いというものに対しまして、政治面、
経済面、社会道義面に対しまする重大なる措置を必要とするものであります。現在各官公署の購買消費組合が如何に多くの
物資を闇流しして私物化しているかという事態が、
官僚的な
物価統制の、或いは
官僚主義的な
統制経済の最も悪標本でありまして、私はもし今日のこの誤まてる
価格統制を大修正し、
官僚統制の頑迷なる措置を修正することができますれば、
生産は恐らく二割は増産するでありましようし、或いは
価格は二割も下がるでありましようし、犯罪は五割も減るでありましようし、闇金利は五割も下
つて、
インフレ悪化は停止いたすやの考えすらも有しておるのでありまして、今日この生きた
経済を
机上計画、而も修錬のない
法律万能主義の
官僚主義的な
価格統制主義を以て、このあらゆる少い
物資を円滑に属転いたし、而も喘いでいる
国民生活の中核といたしましての
経済体制を握る
官僚の、こうした
処置に対しまする一大修正が絶対必要であろうと思うのであります。以上の諸点を総合化し徹底化することによりまして、初めて当面する
インフレ対策、将来恐るべき
インフレ惨禍を救うことのできる諸点と確信して疑いません。以上を以ちまして私の見解といたします。(
拍手)
〔丹羽五郎君
発言者指名の
許可を求む〕