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1948-01-27 第2回国会 参議院 本会議 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年一月二十七日(火曜日)    午前十時二十五分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第六号   昭和二十三年一月二十七日    午前十時開議  第一 國務大臣演説に関する件(第五日)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 諸般の報告は御異議がなければ朗読を省略いたします。
  3. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) これより会議を開きます。日程第一、國務大臣演説に関する件(第五日)、昨日に引続き順次質疑を許します。細川嘉六君。    〔細川嘉六登壇拍手
  4. 細川嘉六

    細川嘉六君 不肖私は日本共産党を代表して質問いたし、國政根本道を明らかにしたいのであります。  日本民族科学的精神に富み、而も麗わしく、而も逞ましい正義感を持つ独立自由なる民族であらねばなりません。政治家たる以上、諸君におかれても異存がないことと思います。先ず年頭のお年玉として総理大臣片山君に苦言を呈したい。これは片山君のお耳にはちよつと入らないかも知れない。片山君や官房長官西尾君が機会あるごとに自己流に解して、我々に対する御説教の種にしておるところの、総司令部民政局代表言葉を借りて我々のお年玉といたします。民政局代表は二十三日新聞記者との会見中で、政党が妥協することなく政策実行するような制度を作らねば政治的安定は得られない。日本國民政治の原則を理解し、政党政策を重んずるようにしなければならない。こう述べております。片山君はこの言葉を如何なる詭弁を弄してお逃げになるつもりか。この点について、政党公約実行についての片山君の覚悟の程を篤と承わりたいのであります。今日現在政治貧困のために、全國民は希望もなく苦しみ抜いているのである。政党公約実行こそ言うまでもなく民主主義基礎ではありませんか。片山君は又しても、やれ、理想と現実とはどうとか、連立内閣だからどうとか、社会党が絶対多数党にならなかつたから仕方がない。こう抗弁なさるつもりか。これはこの際一切御無用にお願いしたい。四党協定だ、連立だという毒「ぐも」の網が社会党に張り廻らされておることは、國民の知るところであります。社会党左翼國民の圧力に押されて、同党大会で聊か幹部反対の氣勢を揚げた。これは選挙目当のこととも理解されてもおるが、併し性懲りもなく、今日社会党が新らしく三党協定を結び直すなどといつて、結局独占資本代弁者民主党と心中を図ろうとしておる。それでは遺憾なことだが、社会党國民大衆から見放される危險があるではありませんか。社会党はもう少し元氣を出して欲しい。公約不履行によつて日々に民主主義を破壞しておる片山君から反共言葉を聞くことは、戰時中東條君が反共を我々に叫んだと同樣であつて、これは我々の甚だ光栄とするところであります。  次に政府インフレ対策について述べます。先日來本会議において同僚議員諸君からインフレ対策の失敗を攻撃しておられる。併しながら無所属及び共産党を除いてこれを攻撃する資格がどこにあるか。一二ケ月前このインフレ予算に賛成した人たちはこれらの人たちであります。片山君は第一回國会施政演説において、政府は現在インフレ進行の重要な原因政府支出の増大にあると述べた。今回はどうか。政府生産増強復興再建こそインフレを防止するものであると述べておる。生産増強インフレ防波堤であることは片山君の言葉俟つまでもなく明らかであります。併しながらインフレの最大の原因は依然として政府の巨大なる支出にあります。実に年末政府資金の撤布超過は約二千億に達しておる。片山内閣はこの放出を行つて民主党選挙対策行つたとも言われておる。復金インフレと言われる復金金融についても同樣である。政府インフレ対策は、我が党が警告したごとく、昭和二十一年の百二十六倍、國民一人当り二千四百円という重税であります。而も取れる所からは取らないで、取れない所から取るという方針である。滯納の続出することは勿論のことである。昨年十一月現在で税の未納九百四十七億円、專売益金收入も價格引上のために減收となつて約九十億の歳入不足となつております。(「元氣を出して」呼ぶ者あり)而もこの課税基礎となつておる所得税基礎所得は公表されていないから、どの程度闇所得が提えられておるか不明であるが、この所得税基礎所得勤労所得業種所得配当利子所得、地代及び家賃、その他の種別との比較は果してどうか。この点大藏大臣栗栖君にお伺いしたい。全財労組の発表した労働者のいわゆる財政白書によりますと、今年度國民稼ぎ高の約半分、即ち五千億円は闇利得となつてつて課税対象として捉えられていないから、結局煙草益金と税金との合計約三千億の巨額が殆んど勤労階級、農民、市民、中小企業者に背負わされておる。ここに滯納一大原因がある。滯納はこれは全く政府責任である。大藏大臣栗栖君の見解はどうですか。然るに全財労組大阪地方連合会大口闇利得者脱税防止目的特別調査班作つて、そうして乘り出した。これに対して大阪財務総局長は、脱税摘発官紀紊乱になるから断乎として処置する。こう述べておる。栗栖君はこの脱税捕捉に熱心な税務官吏やり方について如何にお考えなりますか。大藏省では一切の重税勤労大衆に負わせ、闇利得を逃しておる課税方針を探りながら、滯納に対して断圧強行方策を探つておる。支拂能力のない者、資金、資材の締め出されたので倒産し掛つておる中小企業者に対してもこの方策を探るのであるか。政府の言う惡質脱税者惡質滯納者という意味はどういうことであるか。これを明らかにして欲しい。そこで栗栖君に一つ提案します。金融機関重要産業と共に國営人民管理にして、基礎利得の捉え方を正確にさせる。そうして税の査定を、下からお互い同士で民主的にやる人民管理の方式にして、闇利得を捉えることができると思うが、栗栖君のお考えは如何でありますか。更に大藏省では、滯納者に対する処分については、工場設備、それから工場生産品、これを公資に付しようとしておると傳えられるが、これによつて搦手から労働者首切りとなり、企業整理を断行する意図は含まれていないか。そうだとすると結局これは生産の停滯をもたらす。現在東芝の例があります。二億数千万円の滯納に対してこの公賣問題が起きておるということである。その中には勤労所得税一億数千万円がある。会社関係のものは一億数千万円であります。勤労所得税、は千八百円ベースで我慢しておれというので、我慢しておる労働者から差引かれて会社に預けてある。それであるから労働者にはこれは責任はない。会社言分では、昨年末わら材料は四倍の値上りにされておる。然るに生産品公定で押えられておる。で、儲からないというのである。この滯納問題政府企業家とに責任であつて、これは八千百円ベースでせつせと働いておる労働者責任はありません。労働者はこれでは政府企業者側首切りを狙うものであつて信用できないという感情を持つて來ておる。これは生産意欲に大いに有害である。かかるやり方では、今日我が國の運命を決するところの勤労者総意総力、これを発揮するということに対しては非常に故障になつて來ておる。妨害になつて來ておる。栗栖君とか労働大臣米窪君は、この東芝のごとき重大問題の続出に対して如何にお考えになるか。お伺いしたい。  先に申しましたごとく、我が國は誠に重大な國難に対しておるが、この打開に対してのふさわしい大道が確立されないために、國内の政治経済が甚深な危機に陷つておることは申すまでもありません。外交についても同樣なことが言える。外交といえば、又講和といえば、又また独占資本支配を強化するために、徒らに富強の國から、外資が欲しい。クレジツトが欲しい。物資が欲しいというようなわけで、媚態を呈しておる。更に他方ポツダム宣言の完全なる履行を連合國わら疑われるよう策動を我が支配階級がなしておるのである。これには外務大臣……あ、いないか。……(笑声芦田君にも責任のあることである。本議場で衆議院議長松岡君は、國際信義を回復することが大切であると言つておる。これは尤もな話である。國際信義とは何か。これを如何にして獲得するか。この二つが現内閣にどれほどに理解されておるか。我が國の占領管理アメリカばかりではない。ソ連然り。英國然り。中國然り。これらによつてなされておるのである。それでありますから、我が國民單独講和ではなく、連合國全体との講和が一日も早く実現されて占領軍が撤退し、平和状態の到來することを望んでおる。対日講和に関し、連合國間に多少の意見相違がある。併しこの意見の不一致を利用して、一國に頼つて他國を排斥する。そうして漁夫の利を占めるという策動は、我が國民独立と自由のために断じて許さるべきことではありません。(「その通り」と呼ぶ者あり)実際は、然るにこれとは反対な策動が行われておる。昨年の春マツカーサー元帥が、講和條約成立後は連合軍引揚げて、日本のことは國連管理下に置くと言つたに対して、芦田君の大先輩、前内閣首相吉田君は、日本國連の下におるよりも、むしろ米國の保護を受けた方がよいと言つた吉田君は更に昨年の秋、同じく外人記者に同樣の意見を述べ、更に講和後の日本の役割についてアメリカ同情ある支持を得て、極東における安定勢力として働くことである。こう述べておる。これは單に吉田君の意見だけではない。我が政界を動かしておる指導層意見である。これに止まらない。更に米ソ意見の対立を利用し、米ソ開戰宣傳……宣傳というよりもこれを期待し、反ソ宣傳を、而も現政府の黙認の下に行なつておる。我が國の経済民主的発展には、連合國殊近隣の諸國の信用同情を得なければならんことは明らかなことである。吉田君の発表した意見といい、反ソ戰爭宣傳といい、海外諸國の信用同情をから得ると言い得るか。これは我が経済復興のためにソ連支持を受けることの故障になる。中國、朝鮮、オーストラリア、印度それらについてはどうか。吉田君の言うように、昔のように、日本が(「誰に質問しておるのだ」と呼ぶ者あり)若し大資本國支持を得て立ち上つた時には、自分らの経済建設はどうなるか。工業の発展はどうなるか。これについてはもう危惧の念を抱いておる。ソシアル・ダンピングに慄えておる。更にソシアル・ダンピングから更に大資本家層の成長となり、帝國主義的階級の発達となる。この危險を周囲の後進國は見ておるのである。更に驚くべきことには、昨年中頃、ニユーヨーク・ヘラルド・トリビユーンに発表されたことであるが、講和対策というものがある。單独講和は辞せない。領土問題については琉球、千島の返還を求める。國内治安については警察力相当の増加をさせて貰う。武装船艇、短独離飛行機の準備もさせて貰う。賠償についてはできるだけ輕減して貰う。こういうよう方策外務省あたりで練られておるということが外人に傳えられたことであります。そうして連合國の、或いは世界日本に対する日本民主主義化における不信用を高めて來ておる。以上の事実は、明らかに我が國の指導層が如何にもして連合國意見相違を利用して、戰前帝國主義的、侵略主義的立場を回復しようとする念願を内在さしておるということを内外に発表しておるものである。(「そうだ」と呼ぶ者あり)我が國に対する占領管理は、帝國主義の根絶と民主主義改革の完成とにある。この目的を達成するためには、我が國民責任は、正直にこの民主主義化を全般的に徹底させるということであります。この任務を果してこそ國際信用は得られる。然るに上述外交上の策動は、同時に國内における民主主義化をサボリ、民主化を妨害する策動と表裏一体を成しておる。東久邇宮幣原吉田内閣から現片山内閣に至るまで、すべての内閣戰犯人戰爭責任者の糾明と追放を積極的にやつていない。みんなGHQの督促を受けてやつている。これは何というていたらくであるか。鳩山君、石橋湛山君、平野君、林君のごときはこれはどうであるか。戰前の一切の政治的大罪惡を反省するどころか、彼らの今まで動かして來た帝國主義的野望を現在においても達成しようとするのである。今日國際信義を得る途は、外交上の策動を、こういう策動を拂拭するばかりではない。戰犯人戰爭責任者一切を糾明し、追放して、民主主義発展大道を打開することである。(「そうだ」と呼ぶ者あり)私は先議会において片山内閣に対し、戰爭に敗けたからとか、即ち戰爭に勝つたならとかいう思想政界から一掃すべきであると主張した。而もこの思想は依然として今日我が國内一般に拂拭されていない。かかる思想内閣から、或いは一般政界から一掃されないからこそ、先日羽仁委員が祕密政府のことを述べたが、この疑念は國内に民主化が徹底しないからである。徹底すれば直ちにこれは解消するものである。更に本月十四日の外電では、御存じの通り公定一千億から二千億の物資が、軍部と官僚と大財閥とによつて闇流しにされ、これがぐるとなつて日本民主化を妨害しておるということを報道して、アメリカでセンセーシヨンを起しておる。上述ような事実は、内実アメリカも、ソ連も、中國も、日本信用し切れない情勢を釀し出していないということができますか。國際関係は國内においていい加減に考えてはいけません。みんな知つておる。現実に即して我々は大改革をなし、國際信義を得なければなりません。單独講和でなくして、連合國全体との講和を締結し、多面的な親善貿易関係を作らねばなりません。これは外資によらなければならない。或いは必要の物資外國から沢山入れなければならない。これは我が國の建設にとつては大切なことであります。この点について総理片山君、外相芦田君はどう考えられるか。どうしよとなさるか。これをお伺いしたい。(「吉田芦田は親類じやないか」と呼ぶ者あり)我が國の資源の関係からしまして、一國に偏せず、万國と、殊に近隣諸國との善隣友好関係を保つことは大切であります。必要な物資を多量に一日も早く輸入しなければなりません。これは講和條約が締結される以前においても可能なことであります。現に昨年ソ連から石炭が輸入された。日本から蚕卵紙が輸出された。本年正月日本経済新聞によりますと、八隻の曳船、六隻の艀、これらの注文ソ連から來て、これができ上つたのでもう引渡すことになつておる時に、更にソ連から鑄鋼碇用鎖六百トン、第二注文として七百トン來ておるということであります。ソ連極東における一大漁業地である。大森林地である。石炭、石油を持つておる。更に穀物の余剩も持つておる。こういう我が國にとつて必要なものを持つておる。そこでイデオロギーはどうか、こうとか言うが、問題はイデオロギーではない。イデオロギーなんか何でもない。なぜか、アメリカが十年前ソ連を認めていなかつたが、満州事変で直ちに認めておる。今次の第二次戰爭を見て御覧なさい。イデオロギーの問題じやない。そんなものに拘わつておらん。政治的に経済的に打つべき手、結ぶべき手はこれは直ちにやる。このイデオロギーを問題にするのは、それは帝國主義侵略主義者の内心における陰謀がものを言わしておるのである。(笑声)(拍手外相芦田君はソ連との貿易発展について如何よう考えられるかお伺いしたい。  上述のごとく内政上、外政上、國民が日に日にこの國難の重積に困つておる。民族独立と自由とは危殆に瀕しておる。この根本原因はどこにあるか。これは戰爭の前後をかけて起きたところの客観情勢大変化に基いております。簡單に言うと、内政については台湾、朝鮮満州という植民地がなくなつておる。これによつてつて來日本経済にとつてこれは大変化である。ただに物がないというだけではない。経済根本変つて來ておる。國内の資本主義経済の方も根本的に変革して來ておる。会社借入れ資本拂込資本の四倍となつておる。その中、短期借入がその十割近くを占めておる。この事実は、新規の資本追加というものは再生産基礎を築く固定資本の方に用いられずに、闇資本の方に流されて來ておる。これは戰後産業経営が不生産的、破壞的性格を持つて來ておるということである。今日の重大産業というものは、石炭においてもそうだが、財政の重大な援助なしにはどうしてもやつて行けない。そこでこの客観的事態ただ一つ解決策として我々に迫つておるものは、金融及び重要産業國営及び人民管理、これであります。これこそ人口の九割以上を占める働く人たち総意総力を発揮する途であります。論より証拠、炭鉱ではどう言つていますか。炭鉱夫はこの手当、この施設では十分ではないが、一生懸命やりましよう。そういつて今増炭しております。人間の力、覚悟というものはこういうものであります。況んや重大産業國営人民管理なつた場合には、今日想像もできないところの力を発揮して來る。論より証拠中欧東南ヨーロツパを見て御覧なさい。チエツコ、ポーランドが戰前生産の水準を乘り越えて來ておる。人間の力というものはこういうものである。今日の政治貧困勤労大衆のこの力を信じ得ないというところにある。政治家として立つ我々の義務は、この力を如何に発揮させるかということにかかつております。六千年來の人類の歴史は、ここに新たな働く者の民主主義世界を打開するというところに來ておる。これの遂に反する場合は、世界は第三次の世界戰爭に陷る。我々は世界文化と平和、このために我々は一致協力しなければならん。その途は今言う國内の大改革即ち重大産業國営人民管理、働く者総立ちとなつて國内を豊かにする。ここにおります社会党左翼大立物松本総議長はこう言つたそうである。「人は人を拜むべきではない」。これは尤ものことだ。(笑声民主主義世界となつて來たのだから人間はそうでなければならん。我々は更に神聖なるものは労働である。これはカーライルの言葉と同じである。(笑声同僚諸君、活眼一番、政治家はここに悟るべきである。民族独立と自由とはここから達成され、世界文化と平和はここから達成される。我々はちつぽけなことで啀み合つてはいけない。この困難に対して我々は民主人民戰線政府を作るべきだ。これが我が國難を打開するただ一つの途であると我々は確信します。(拍手)(「ソクラテス偉いぞ」と呼ぶ者あり)(笑声)    〔國務大臣片山哲登壇
  5. 片山哲

    國務大臣片山哲君) 細川君の第一の御質問は、政党政策重要性及びその実行方法について私の考えを聞かれたと思うのであります。政党政治の今日において、政党政策実行する團体であつて政策実現に力を集中しなければならないということは御尤もであります。併しただ掲げておるだけではなかなか実行ができませんので、結局は数の力で議会にこれを現わすということでなければ実行ができないのであります。社会党大会で決定されました政策も、社会党だけの数では今日実現を図ることができませんので、これらの線に沿うて、他の党の協力を得まして漸次実現に向いたいと考えておる次第であります。  第二の外交問題については、主として外務大臣お尋ねでありまするが、一言触れて置きますると、今日はまだ細川君の言われましたような具体的な講和條約に関する事項について話をいたす段階に至つていないと思います。ただ我が國といたしましては、どうしても連合軍各國の信用を十分に得まして、日本はすでに民主國なつたのである。將來帝國主義侵略の企図は持つていない。完全に侵略意図を捨てまして軍國的な色彩を拂拭いたすことが最も重要なことと思うのであります。これにつきましては是非とも國民全体が力を持ち寄りまして、本当の民主國文化國作つて世界各國の信用を高めて行くということが一番大事なことであると思いまして、講和会議に臨む心構えといたしましては、かような態勢で進んで行かなければならないということを当初より私は考え、今後もそういう方針で進んで行きたいと思つておる次第であります。以上を以てお答えに代えたいと思います。(拍手)    〔國務大臣栗栖赳夫登壇拍手
  6. 栗栖赳夫

    國務大臣栗栖赳夫君) 細川さんのお尋ねに対し簡單にお答えしたいと思います。先ず第一は、所得税算定基礎となつておる業種別所得を公表せよと、こういう趣意お尋ねであつたと思うのでありますが、この点は数字等を詳細に御説明する必要がありますので、委員会に讓らして頂きたいと思うのであります。  その次に大阪の全財連合会闇利得者脱税その他の調査班作つて、この摘発をするということに対して、大阪財務局長が、これは業務管理であるから止めて貰いたいと、こういう趣意のことを申したのであります。それについてのお尋ねがあつたのであります。政府といたしましては、徴税事務政府即ち税務関係官廳責任において、整然たる職場秩序の下に、上司の指揮を受けて実行すべきものであると考えておるのであります。組合が大会で決議して直ちにこれを実行せんとすることは、職場秩序に好ましからざる影響を與え、官紀紊乱の因となるとこう考えましたので、差止めたような次第であります。併しながら税務官吏熱意には敬意を表する次第でありまして、願わくばこの熱意を全面的な税務官吏としての職責の達成の上に振り向け、整然たる秩序の下に行なつて頂きたいということを要望する次第であります。  それから惡質滯納者についてのお尋ねがあつたのでありますが、闇利得者等で不当に課税を免れておる者は、最も惡質脱税者であり、又滯納者であるわけでありまして、これに対しては、政府は公賣処分その他をどしどしやつて、そうして追究をいたし、尚体刑等をも辞せないことはすでに申上げ通りであります。それで惡質滯納者に対して個々調査をするということで、金融機関についても行い得るかどうかというお話があつたのでありますが、惡質滯納者個々滯納その他についての調査をすることについては、金融機関についても行い得ることは申すまでもないことであります。それから東芝の例を探られて、滯納による工場の公賣処分その他についてのお尋ねがあつたと思うのであります。滯納処分につきましては、政府は大いに励行する次第でありまして、現に励行しておるのであります。一方において國家緊要のこの重点産業をいたすについて、滯納の結果資金不足を生ずるとか、或いはこの重点産業を続行することができなくなるというような心配についてのお尋ねもあつたと思うのであります。これは重点産業に対して、一方において滯納処分を励行いたしますが、他方においては生産の阻害のないように、資金その他については融資等をも考えておる次第であります。  尚最後に金融事業人民管理についても言及されておるのでありますが、この際にここではつきり申上げて置きたいと思うのであります。企図せられるよう人民管理は、政府においては全く考えておらんということをここではつきり申上げて置きたいと思うのであります。(笑声)(拍手)    〔國務大臣米窪滿亮登壇拍手
  7. 米窪滿亮

    國務大臣米窪滿亮君) 東芝及びこれに類似の問題についてのお尋ねにお答えいたします。  傳えられるところによりますと、東芝における税の滯納が約二千五百万円‥‥約二億五千万円、その中勤労所得税が大体約その半分になつているということでございますが、これにつきましては会社経理相当の糾彈すべき点があるではないかと考えられまして、(「税務署にも責任がある」と呼ぶ者あり)例えば労働攻勢に押されて、そうしていわゆる赤字契約をしまして、赤字團体契約をしまして、相当給料を赤字において上げているという疑いがある工場が方々にあるのであります。これに対しては、経理監査を嚴重にすることによつて健全なる企業経営をすべきことを政府としても考えているのでございまするが、併しながらこの滯納税を取り立てることによつて会社経営難に陷り、企業が分離及び労働者首切りをなすということは、労働省としては決してこれを認めるわけに行かないのであります。從つて事実を十分に調査しないと、はつきりしたことは申上げられませんが、調査の結果御指摘のような点があるとするならば、労働大臣として警告を発するつもりでございます。(拍手
  8. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 芦田外務大臣は後刻出席の上答弁せられる趣でございます。鈴木憲一君。    〔鈴木憲一君登壇拍手
  9. 鈴木憲一

    ○鈴木憲一君 今年は初春を迎えましても、日本の人は門松も立てず、歌も唱わないで、何か知らん希望のないような陰欝な顔をしておつたように感ぜられてなりません。不景氣の前触れでも予感したのか、(「本論々々」と呼ぶ者あり)或いは何か知らん、いやな予感でもしたのか、無感激な、無風蔕の中に、実に殺風景な正月を迎えたように思われてなりません。古い封建的な傳統や因習というようなものはこれは捨て去らなければならんことは勿論でありますが、新らしい大きな生活の夢を持ち得ないまでに幻滅の淵に落ち込んでしまつてはならないのであります。平和の建設ということは戰爭以上に深刻なまじめなものでなくてはならんと思うのでありますが、國民が段々と自己の生活に希望を失い、絶望的になつて來ように感じられてならない。これは戰爭の惨禍が漸くにして経済の危機となり、政治貧困となり、社会の不安を起し、各人の懷ろに深い巣をかけ始めたからであつて、時々刻々に凄まじい結果を招き始めたことによるのでありまするが、この國民を苦悶の世界から平和日本建設への熱情をたぎらせるまでに元氣づける、方向づけることこそ、政治家の一大関心事でなければならないと思うのであります。如何に國民に自主性がなくなつたか。あらゆる方面において徒らに迎合的になつております。依存的になつております。又一方には安易な諦らめとなつて各部門に現われておるように思われます。即ち日本人の衰滅、顛落を意味するような悲しむべき樣相であります。大衆に迎合する。権勢に依存するというような、実に節操のない、自主性を失つた滔々たる風潮があるように思われます。私は徒らに愛國主義を云々するものではありません。敬虔な氣持から一國の文化國家を立てんとする、この國の人々を敗戰の苦難から立たしめる方途を今にして眞劔に考えなければ、悔を永久にのこすのではないかと思う。敗戰は文化を栄えしむるという言葉があります。この暗い顔をした國民を明るく唱わしめ、行進させるというために、私は全國の藝術家、教育者、文化人、これらの方々に根強い努力を要望して止まないものでありますが、首相及び政府は、こういつた國民の樣相に対しまして、國民に何らか希望を持たせ、自主性を呼び起させるよう方策を適切に考えられておるのかどうか。こういうような面から私は次に文教、文化方面に対して少しくお伺いしたいのであります。  政府は第一國会におきましても、亦今回におきましても、新らしい教育制度に対して非常な熱意を示しつつあることはよく分りますが、併し私が納得しかねまする点は、政府閣僚は文教予算に対しまする考え方について、非常に我々と考えを異にしておるように思えるのであります。由來教育は國家興亡の根源でありまして、百年の計であるという言葉は誰も知つておるが、併し眞の認識があるのかどうか。そのよい例として、政府はいつも決まつて文教予算について、財政の許す限りという言葉を、非常にマジツクな言葉を使うのであります。ところが國家がこの國の子供たちに、或いは若い者に対する立場というものは、地方の市町村や或いは家族、親たちが子供に対する立場と根本において何らの変りはないと思うのであります。この点から考えまして、親は子供たちのためならば、どんなに苦労をしましても自分の食を割き、衣を脱いで、物を貯え、貯金をし、保險に加入し、基本財産を積立てまして、我が後継者のために心から努力をするのであります。やがてこの努力が元一となつて、次の時代の繁栄が約束されるのでありますが、こうした立場から、國は先ず何をおいても、若い者たちの親として、その後継者のために、國の後継者のために、万難を排し欠乏に堪えつつ、親が子供のために保險に入るように、國の予算を以て文教費を保險的に考えて行くべきではないかと思うのであります。即ち國の総予算の歳出中から一定のパーセントを優先的に文教予算として支出する。年々そういういつも総予算の歳出中から一定率のパーセントを優先的に支出する。こういうふうに決定しておきまするならば、いずれもこういう國歩艱難のときでありまするから、一時には十分とは行かなくても、この安定線というものがやがて國を繁栄せしめるところの約束になるというふうに考えるのであります。そういう基本的な考えを置いて、その措置をした上において、初めて財政の許す限りというよう言葉を使つてよいのではないかと思うのでありますが、いつもそういう措置をせずして、財政の許す限り行いますというような立場でありまするので、御覧のごとく、いつの予算を見ましても全予算の或る時は二%、今度のごときは全予算の四%であるというような、実に文教費が雀の涙にも足りないようなことをして、而も本年の追加予算のごとく公共事業費の中から搾り出したり、或いは予備金から流し出すというような、浮草が漂うような、誠にはかない、頼りのない根のない状態にこの予算を置くことは、口に文化國家を唱え、平和建國を幾ら云々しましても、何人も心からこれを眞に平和主義、民主主義者の考え方であると信ずる者はないと思うのであります。國家の将來の安定線を確保する唯一絶対の策として、私はこの一定率の優先支出策を考えるのですが、政府は如何にこれらに対してお考えであるか。敗戰後の國を建て直す土台石を今据える時であります。我が國の政治が長い間に亘りまして経済優先の予算編成方針を探つております。こういう政治的な政治観を捨てまして、ここに新らたな前申上げましたような立場から予算を編成したらば、苦しい中においても將來の見通しが立つというふうに考えるのであります。片山内閣國民の定めた初めての内閣であるというような立場から、一層その点を熱望して止まないのでありますが、果して緊褌一番この大道の眞中に乘り出して、こういつたような措置を講ずる決心があるのかどうか。お伺いしたいのであります。  次に六・三制の完全実施についてお伺いいたします。六・三制の新らしい教育制度を完全に実施しますることは容易ならん仕事であるということは、何人もよく認識しておるところでありますが、最近還元論をなす者がある。六・三制を止めてしまつたらどうかというようなことの論をなす者がある程に、非常にこの問題は困難を極めておると思うのであります。その六・三制完全実施についての一助として、私は地方のために教育公債を発行することを政府は許可したらどうか、教育地方公債の許可、或いはこれは些細なことではありましようが、軍事施設等がまだ未処置で沢山残つているように思うのでありますが、これを優先的に廉價でおのおの学校の施設のためにどんどん拂下げをしたらどうかというようなことも早速に構ずべき措置ではないかと思うのでありますが、政府はこれらの完全実施の六・三制を遂行する上に如何なるこういう点に熱意を、誠意を持つておるのかお示しを願いたい。  次に、私立学校の問題でありまするが、凡そ時代の教育の盛衰の一バロメーターであると言われる私学の盛衰は現在見ますところによりまするというと、実に惨憺たる状況にあるのであります。併し私学が衰微に瀕しつつあるか、どなたもよく御存じであると思う。國が如何に困窮をして、政治が如何に貧困であると言いましても、この私学に対して何らかの方法を講じてやらなければならない。再建の途を立ててやらなければならないと思うのであります。これは文教の中心である國家再建の鍵を握つている文相の責任ではないかと思うのであります。若し國の予算がこういうものに使うことができないという立場であるならば、何らか外に方法はないか。ただ策なくして放置すべきものではない。私はここに一案を提するならば、私学に対してその復興のために寄附金をなす、寄附をなすというような場合には免除をしてやつたらばどうか、私学に対する寄附金の免除措置を講じられてはどうか、まあ一つのつまらない案かも知れませんが、尚かかる点について文相の明答を期待して止まない者であります。  免税のことが出ましたから、序にお願いしたいのでありますが、明治維新の際も同じでありましたが、こういう國家が非常に動きますときには、我が國の有名な藝術品や古美術品というようなものが、非常に闇商人の手から闇商人の手に渡り、遂には外國に多く出る、持ち去られるというような非常に危險に暴されることは御承知の通りであります。現今もそういうことを非常に多く聞くのでありまするが、実に残念なことであります。これも美術品等に対して税を多く取る、売買に対して税を多く取るというところから、そういう流れ方が多いようでありますが、若し美術品や藝術品というようなものを博物館や美術館等において買上げる場合においては、免税をするというような措置を講じまして、この流失を防ぐというようなことを実施したら非常に我が國のためによいのではないかと思うのであります。  次に、私は農村の問題について、少し農村の関係についてお尋ねをしたい。食糧問題が非常に論ぜられていることは御承知の通りでありまするが、食糧問題解決の一つの策として政府はこの度米麦の一割増産を示されました。私はこの米麦の一割増産は可能性があると思います。一割はおろか、方法によれば二割も三割も増産可能であると思うのであります。鉱工の四割増收よりもむしろこの方が可能性が大きい。併しながらこれは方法の適切を欠きまするときは、或いは却つて減産になるという虞れが非常に多いのであります。要するに問題は具体策がどうであるかということにあります。この具対策政府にお伺いしたいのであります。この具体策の中に当然考えらるべき問題の一つとして、農業技術の水準を引上げるという問題があります。政府は前年から農業生産技術向上対策一つとしまして、到る処に多くの指導農場を設置して実施しておつたのでありまするが、その実情は果してどんなであるか、成績はどうなのか、この施策を更に徹底せしむるために強力な予算措置を考えないかということが一つであります。  次は、この増産のために水田の裏作をどうするかということであります。この対策は長年に亘つて政府も農民も共に苦労を続けて來たところでありまするが、今日尚非常に不徹底であります。日本農業の特性から言いましても、その対策について強い関心が持たなければならないと思うのでありまするが、併しながら昨今の農民の一大関心事というものは、こういう農民本來の面目であるべき研究増産を顧ることが誠に少くて、徒らに土地の所有権の移動というようなことにのみ心血を注いでおるのであります。時代の要求であるとは言え、農民諸君が本來の途を強く進まれんことを要望するのでありまするが、併しながら事実は農民諸君は互いに相爭つて鬪爭の拳にまで出ておる状況も沢山あります。一方これを指導奬励するよう政治組織による背景がいろいろ各種各樣に生じまして、増産の正道を踏み外しておることは御承知の通りであります。技術の習得、耕地の改良研究、それらに対しまして農民諸君は興味の中心を置かないようなふうが見える。これが現代農民氣質であるのかと思われまする。これらの実情から鑑みまして、政府は一割増收を政府農民一体となつてすると言われておりまするが、果して如何なる具体策を持つておられるのか、何人も納得の行くような、極めて具体的な案を國民の前に示されたと思うのであります。(拍手)  次は、供出についてでありまするが、政府はこの度供出制度を根本的に改革をして責任供出制を実行する、急いで実施する、こう言われたのでありまするが、過去の供出制度の欠陷は何と言つて生産増加に対して創設的な意図を含まなかつた、織込み得なかつたという点にあると思うのであります。生産増強を阻害したり、自主的な供出確保を貫徹せしめ得なかつたという結果を生じたのでありまするが、これは何としても供出制度の理論的な檢討と、一つはこれを完全せしめるところの政治力の貧困にあつたことは疑いないのであります。今回この不手際な制度を根本的に改正いたしまして、至急に実施するというものでありまするが、やや我々もその声明によつて安心をする氣持になつたのでありまするが、併しながら次の諸点について予め聽いて置きたいと思うのであります。即ち責任供出制の責任基礎となるべき生産及び供出條件の実態把握が、この制度を決定する上に最も必要であるのでありまするが、果してその実態把握がどの程度現在進んでおるのか、又この制度は、早速に可能性があるのか、いつから実施するのか、果して合理的に納得の行く、末端にまでよく理解されるところの根本的な改善が行われるかどうかということは、これは心配の一つであります。本年の供出が誠に順調に進んでおると言つて政府はいつも喜びの声を上げておりまするが、併しながらその半面に、笑えない泣きたい程の事実がいろいろの面から現われております。殊に報獎物資につきましては、政府が、供出は農民の責任であり、報獎物資政府責任である。こう言つて報獎物資を盛んに努力をして出しておるようでありまするが、併しながらこれについても、実にこんな愚策があるのかと思われるような面もあるのであります。例えば或る部落でありますが、十四軒の部落に、早場米の報獎酒が大きな樽に三樽も來た。一石二斗來ております。尚その後から出す供出に対して、一軒当り二斗五升も來る。まあ決まりで順にそういうふうに來るのでありましようが、これは百姓に酒さえ與えて置けば供出はできる。醉つぱらわして置けばよいんだというような見方にもなるわけであります。この沢山な酒がどんどんと送り込まれたということは、この中の同僚議員の中に体驗者がおるのであります。百姓に酒さえ與えて置けば能事終れりというような報獎の仕方がよいのか。そこの一軒の家を見ましても、女や子供が沢山いる。それらは亭主が酔いしれて、囲炉裡の傍で酒に浸つておる時に、女子供は長い間の艱難辛苦を喜んで迎えることができるのかどうかというようなことも考えて見なければなりません。ただ報獎物資を既定通りに出せばよいんだというよう考え方では困る。この政治がよいのかどうか。國民が恨みを並べたくなるというところであります。尚報獎物資について、衣料が沢山來る。百姓は非常に喜んでおりましたが、いざ來て見ると、実にひどい布地で、労働用などには及びもつかない。業者がごまかしているんじやないか、政府がこんなものを作らせるのか、政府は実際実物を知つておるのか、檢査をしたのか、或る百姓は言つております。こんなインチキではたまらない。我々は純綿を出しておつて、そうして不純綿を高い値段で売り付けられる。これならば横流しをして、その金で純綿の本当のものを買つた方がよいとまで言つておるのであります。或る男は又言つております。これは官僚と業者が結託しておるんじやないか、こうよう言葉が半面から出ておる。政府は、一面に供出が順調で非常に今年はよろしいと言つて喜んでおりますが、これらの点について、今度の責任供出制は如何に重大な供出制度であるか、それを如何にうまく決めて行くかということは、容易ならんことであると思うのでありまするが、これらの点について、極めて具体的にお願いしたいと思うのであります。  要するに農村における協同組合の眞劍な活動、その協同組合の眞劍な活動が釀し出すところの協同理念の徹底化、人道的な相互扶助的な雰囲氣の中から、この責任ある供出、合理的な供出が期待されるのでありますが、前に述べました、生産及び供出條件の実態把握の状況と併せて、こういう点もお答えが願いたい。ところがいつもこういうことを政府に要求しますと、例によつていつも統計調査の整備とか、或いは委員会制度の民主化とかいつたような線で、末端の苦労と不徹底を知らん役人の机上案の答弁がいつも繰返されるのでありますが、そういう答弁では困ると予めお断りをして置く次第であります。  次には、これに非常な関係のある、米價の問題でありますが、責任供出制度を実施して行く上には、これと関連の深い米價の合理化を考えなければなりません。この点を政府はどう考えておられるか、同僚三好議員が、前年前國会におきまして、米價決定におけるパリテイ計算に関する質問書を再三政府に提出をいたしました。その中で政府は、若し物價体系を変える時があれば、改める時があれば、その時には米價も改訂するという答弁をしておられますが、一体物價体系はいつ改正をやるのか、その時には必ず米價を改訂するかどうか、再びここで確認をしたいと思うのであります。又物價体系の改訂ばかりでなしに、この責任供出制度を実施する際に、米價を改訂するかどうか、これをやらなければならんと思うのでありまするが、その供出制度の実施と同時に、米價が合理的に改訂されるかどうか、これらの諸点について関係閣僚の親切な、丁寧な答弁を要求して私の質問を終ります。(拍手)    〔國務大臣片山哲登壇
  10. 片山哲

    國務大臣片山哲君) 鈴木君の御意見通り、現在の我が國の再建のためには、自主的な建前を取りまして、國民の総力を結集しなければならないと思うのであります。御承知の通り、今回の戰爭の被害が予想外に大きく、世界を挙げましてその回復に努力しつつあるのでありまするが、回復がなかなか困難でありまして、回復計画も亦予想外に遅れておるような状態は、世界各國の経驗しつつあるところであります。我が國におきましても、國民全部がこの敗戰意識に徹すると共に、更に再建すべき方途が、今までの方向よりも進んだ民主的にして、文化的な方向であるということを考えまするときに、一段の努力が拂われて來なければならないのであります。特に國民全部が新憲法の精神によりまして、新らしき文化國建設するということになりますると、余程の困難を克服して、忍耐努力が必要であるのでありまして、政府はこの時局を担当いたしまする際に当つて、懸命な努力を拂つておるのであります。つきましては、この文化國建設のために文教問題、文化問題を優先的に取扱いたいと考えておるのでありまするけれども、文化費、文教費を十分に捻出し得る財政経済を先ず拵えて行かなければならないのであります。どうしてもこの財政経済、産業の立直しをやつて行かないことには文化費用が出て來ないのであります。そのために先ずインフレを克服して危機を突破し、更に進んでは再建、増強へと進んで、我が國の財政文化費用を十分に出し得る余裕を作つて行く。こういうことに懸命にやつておるような次第でありまして、決して文化費は後と、これを簡單に取扱うというよう考えは毛頭ないのであります。特に國民が敗戰のために精神的打撃を受けまして、いらいらした心持に対しまして、精神的な援助及び激励を與えまして、且つ又文化的な方面に希望を與える方策をも採らなくてはならないということは、鈴木君の言われます通りであると共に、政府においても、つとにその点に関しましては意を拂つておるような次第でありまして、いろいろ具体的に、文部省或いは厚生省等においてこの文化対策を考慮中でありまして、來るべき追加予算及び二十三年度総予算におきまして、漸次これを組んで行きたいと思つておるのでありまするが、まだ文教費を優先的に取扱うという財政状態に進んでいないことを甚だ遺憾に思うのであります。併しこの問題につきましては、十分に努力を拂つておるのでありまして、できるだけの方策を盡したいと考えております。財政の許す範囲内においてと、常に言うのは怪しからんというようなお言葉もありましたが、実際学校を作つたり、教員の待遇を改善したり、それぞれ文教的な施策をするのには財政が伴わなければならないのでありますから、財政面を充実さすためには、先ほど申しましたような方途を十分に講じて行きたいと考えております。今まで軍事費のために使つておりました費用を、今後は文教のために、社会事業のために、これら國民生活向上のために使いたいとは考えておりまするが、現下置かれておりまする我が國の情勢は未だこれを許しませんので、できるだけ早い機会においてかような状態が作られることを私共は心から期待いたしておりまするから、諸君の十分なる御協力を仰ぎたいと存じておる次第であります。以上を以てお答えに代えます。(拍手)    〔國務大臣森戸辰男君登壇
  11. 森戸辰男

    國務大臣(森戸辰男君) 鈴木君の御質問にお答えいたします。敗戰後の日本を再建するに当りまして、文教、文化というものが果しまする大きな役割についてのお説は誠に御同感であります。  第一の御質問は、文教、殊に教育に対する予算を優先的に且つ一定の比率を以て組むということについてのお考えについて、政府はどう考えておるかということでございました。只今総理もお答えになり、後にも大藏大臣もお答えになると存じまするが、文教の政治をなして行きまする上には、これらの費用が確実に、優先的に與えられるということが極めて重要であるということには誠に御同感であります。と言いますのは、文教の費用はややともすれば不急の事業であり、又極めて最も根本的な人間生産する仕事ではありまするけれども、而もこれが非生産的な仕事とされて後廻しにされるという危險があり、在來もそういうような嫌いもありましたので、この際さような点を特に強調頂いたということは、大いに傾聽に値するものと存ずるのであります。尚從來の国家政策において教育の占めておる比重を立直して行くためには、予算の中で一定の比率を文教のために確保するということも極めて傾聽すべき御意見考えておるのであります。外國におきましても、実は例えば中華民國の憲法にはこの規定があります。又アメリカの諸州におきましても、教育の基準的な経費が定められており、それを國と地方團体と分担する比率を定めておる所もあるのでありまして、我々はこれらのものを参考すべきであると考えておりまするが、併しこれらの問題は地方財政の改善その他國家財政全般に関係いたしまするので、これらと十分睨み合せながら、お説の点も十分に参考しながら万全の策を立てたいと存じております。  六・三制の問題につきましては、坊間しばしばこの制度を延ばすのではないか、中止するのではないかというようなことが傳えられておりまするけれども、政府はさよう考えは持つておりません。    〔議長退席、副議長着席〕  六・三の制度については政府國民公約をいたしており、又連合國にもそのことを明らかに申しておるのでありまして、今俄かにこれを取止むるというようなことをいたす考えはございません。でありまするから、私共はこの新らしい教育制度は、制度の上としては完全に、二年に止めたり或いは全部延ばしたりするようなことはいたす考えはございません。ただ個々の点において、個々の実際の施設等が理想的に行われることが六・三制の完全実施という意味でございますならば、それはむずかしいと思うのであります。御承知のよう日本の窮乏した経済の状態で新らしい教育制度を興して行きまするのには、國も、地方も、生徒も、父兄も、先生方も、十分辛抱して、不自由に堪えながらこれを実現して行かなければなりませんので、この意味で理想的な施設の意味での完全実施ということは、これはむずかしいと思うのであります。尚この制度が地方に対して非常な負担になつておるということは私共も十分に考えておりまして、何とかしてこれらの負担を軽くいたしたいとも存じておるのであります。これに関連しての地方教育公債、或いは軍事施設の優先的な且つ安い値段での拂下げ等の問題につきましては大藏大臣からお答えになることと存じます。  私学の問題につきましては、私学は新らしい民主的の教育の制度の場合には、実は官公立の学校と同じような地位において文教に寄與して頂かなければならんと存じております。私学の現状から、又過去の実績から、將來へのこの私学に対する期待からも、私共は國家としてもこの私学に対して何らかの形の援助をいたすべきであるということについては御同感でございます。併しこの問題の解決についてはいろいろな事情もございますので、更に私共は十分の考究をいたして御趣旨に副いたいと存じております。尚私学の寄附に対する免税につきましては、財務との関係もございますので、大藏大臣から御答弁があることと存じます。  最後に國宝及び重要美術品の取扱でありますが、インフレの昂進及び財産税その他の関係から、重要美術品の移動について遺憾な点があり、或いはその或るものが海外に流出しておるのではないかという心配もあるのでございます。併しこの流出については、重要なものが多く流出しておるというような事実はございません。併しながら全然そういうことがないということでもなく、將来そういう危險がないということでもありませんので、私共は十分國宝並びに重要美術品が我が國土に留まつて國民がこれを十分に鑑賞できて、我が國の文化水準が上るように努力いたしたいと存じております。從つて國宝並びに重要美術品に対する法規についても改めまして、できるだけこれらのものを正確に把握して行けますように、又必要なものにつきましては國立博物館でこれを買上げるようにいたしたいとも存じております。その際過重な税がかかりまして、それがためにこれが妨げられるというような事態もあるやに承つておりまするので、これは國宝並びに重要美術品を保護するというような見地から、十分実情に即した課税方法が採られるように、財務当局にも交渉をしておる次第であります。以上簡單ながらお答え申上げます。    〔國務大臣栗栖赳夫登壇拍手
  12. 栗栖赳夫

    國務大臣栗栖赳夫君) 鈴木さんのお尋ねに対して簡單にお答えいたします。六・三制の実施に関連いたしまして、教育公債の発行と軍事施設の利用、轉用についてのお尋ねがあつたのであります。教育公債については國債の場合と地方債の場合に分けて簡單にお答えいたします。教育國債として國債を発行するということがこの財政法の公共事業の中に入る場合においては、これはできるのでありますが、ただ今日のようインフレーシヨンの進んでおる現状の下におきまして國債を日銀引受で発行するということは、非常なインフレーシヨンを激化する関係がございますので、是非國債を発行する場合においては、種類の如何を問わず、市場で消化ができるという見込の立つた場合だけに限られると思うのであります。二十三年度その他については、こういうような市場消化できる場合において、その他の國債発行等といろいろ考え合せて考えても見たいと思う次第であります。それから地方債の場合におきましては、現在追加予算によつて十七億を予定いたしておるのであります。これは預金部その他の資金によつて消化が可能なものについては着々実行をいたしておるような次第でございます。今後もこの預金集積の状況と睨み合せて実行をもいたしたいと考える次第であります。  軍事施設の問題につきましては成るべくこの六・三その他の実施に使用して行きたいと思つて、優先的に取扱をいたしております。その價格につきましては無償というようなことは、これは國家財政関係から許されませんので、諸般の事情を考慮いたしまして、適正な價格でお取引を願うようにいたしております。それから尚その代金の納入については、必要があるというような場合には、或いは法律等を改正して分納等をも考えるかというように考慮中でございます。  それから私学の復興、振興ということは誠に大事でございまして、その寄附金の場合の課税についてのお尋ねがあつたと思うのであります。これは法人税の場合と贈與税の場合の二つに分けてお答えいたしたいと思つております。この私学に対する寄附でありますが、校舎とかその附属設備の復旧に関するための寄附でありますならば、法人の所得の計算については、これを損金に立てまして処理をいたしておりますので、課税はないことになるわけであります。併しその他の場合の寄附金でありますならば、この損金に算入いたしませんので、課税等の問題が起つて來るのであります。贈與税につきましては、学術その他公益を目的とするところの事業について贈與する場合には、五千円以下の場合と、五千円以上に限つてこの減免の手続が贈與税の場合に決まつておるのでありまして、それによつて現在処理しておるわけであります。今後この私学に対する寄附というような場合において、私学振興、復興というようなためにこの減免の範囲を拡大するかどうかということは、これは國家財政の現状その他とも睨み合せて考える必要があると思いますので、愼重に考究中でございます。(拍手)    〔國務大臣波多野鼎君登壇拍手
  13. 波多野鼎

    國務大臣(波多野鼎君) 鈴木さんの御質問にお答えいたします。一割増産の具体的な方策はどうであるか、という御質問でございましたが、この具体的な方策につきましては、生産技術の向上とか、或いは虫害の防止の対策とかというような技術上の諸問題につきまして、具体案を決めておりまして、現在すでに大体の成案を得た次第であります。近く関係方面との了解を得て発表いたす段取になつております。  責任供出制実施に関して政府は農村の実態を十分把握する準備をしておるかという御質問でございましたが、御説の通り、農村の実態を完全に把握しないと責任供出制の運行はうまく参りませんので、政府は先ず昨年農林省に統計調査局を設けまして、そうしてその末端の機構を各農村にまで延ばしております。そうして農村の実態把握のために非常な努力を重ねて参つておりますが、今回の責任供出制を実施するに当りましても、この末端から上つて來る統計調査に基きましてやつて参りたいと考えております。と同時に、これだけではまだ十分ではないと思いますので、農民の公選による農業調整委員会が各市町村に設けられておりますので、この農業調整委員会と相諮りつつ責任供出制の割当が單な天降りに終らないように、本当に農業生産の実情に即するよう留意して運用したいと考えております。  次に第三には報獎物資の件についての御質問でございましたが、報獎物資に関しまして、いろいろお説の通りのお話を私も就任以来たびたび耳にいたしまして、甚だ残念に思つております。報獎物資としては、私の方針としましては、特に農業作業衣、肥料、農機具、そういう農業生産に最も必要なものを農民諸君にお渡しするということを根本方針として立てなければならんと考えております。ただ工業生産の実情が今の通りでありますから、いろいろ困難な点もございますが、日本の再建のために食糧問題の解決が根本でなければならん。その必要上、外の方面への配給を幾らか割いても、農業生産に必要な資材の配給は報獎的に農民諸君にお渡ししたいという決意で以て、各省と折衝しながら仕事を進めておる次第であります。  それから報獎物資の品質が惡かつたという点についての苦情を相当私も耳にいたしております。これにつきまして、何分品物が多い関係上、時にそういうものが混つておつたという場合もあろうかと思いますが、そういう場合には優良な品物とお取換えする措置を講ずるよう指令をいたしておりますから、どうか農民諸君がこんな用いられない物を渡して、それで政府責任を逃れたような顔をしておるというふうに思われないように、どうかどしどし取換えるような手段を講じて頂きたいと考えております。    〔副議長退席、議長着席〕  最後に、米價の問題でありますが、物價体系がいつ全面的に再吟味されるかという点につきましては、私お答えすることはできませんが、仮に物價体系が全面的に変ることがありますれば、米價につきましても考慮されることは当然のことであります。と申しますのは、先ほど御指摘の通り、米價の決定はパリテイ計算によつております関係上、外の物資が全面的に変れば米價も変えるということは、これは理論上当然のことでありまして、米價だけが置き去りになるということは絶対にございません。  それから責任供出制度の実施と伴うて、米價を変える意思はないかというお話であります。米價の点は今申上げましたように、一般物價との関連で決ることでありますので、責任供出制度に伴うて直ぐ米價を変えるというようなことはできないと考えております。以上簡單でありますが、御答えいたします。    〔國務大臣水谷長三郎君登壇
  14. 水谷長三郎

    國務大臣(水谷長三郎君) 只今の私に関するやつは、報獎物資の品質の点に対してのお叱りであろうと思うのでありますが、多くの中には親の心子知らずというものがございますので、今後は一層注意するつもりであります。(拍手)(笑声
  15. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 深川タマヱ君。    〔深川タマヱ君登壇拍手
  16. 深川タマヱ

    ○深川タマヱ君 組閣以來の片山内閣の施政につきまして、数多長所もあつたことと思いますが、只今は暫くその問題には触れないことにいたしまして、只今の段階において、どうしても改革いたさなければならないと思う節につきまして、私の意見を申し上げて政府の御所見を伺いたいと存じます。  先ず第一番に、政策國民生活の実情との間に相当距離があると思うことであります。数世紀に亘つても尚且つ成功しないかと思われる程の大改革が、政治経済文化の各方向に亘りまして、急テンポを以て無声無血の間に着々と進行いたしておる時のことでございまして、昨日の財閥は今日の庶民となり、昨年の物價は今年は数倍になるという程の激甚な変化の時でございますので、どうか國民の生活を切り盛りいたしまして、その生活の安定を図ることを最大の目的としておる筈の國家の政策が、ややもすると情勢の変化に追随いたしかねて、國民の生活の実情と政策との間に相当距離を生じ、少くとも國民の身長よりは大分高い所を政策が素通りになりたがる傾向があつたことは否めないと思います。その結果は、表面は一應辻褄が合つとるごとく申されておりましても、一つ蓋を開けますと、阿鼻叫喚の巷、國民政治にのみ頼つておることができませんので、みずからの力で自己を防衞しようと、思い思いの手段を講じます結果、國家全体としての経済機構を混乱に陷れていた事実があると存じます。政治は、眞面目に働いていたならば暮して行ける道を開いて置きまして、それに反いた者は刑罰に処すという、慈悲と劍との二本建でなければならないと存じます。然るに只今の政治は眞面目に働いても暮して行けない。惡いことをすれば監獄へ行く。こうなりますと、生活の責任を持つている人たちは、毎日隔穽の上を通つておるよう危險千万な世渡りであると存じます。將来は眞面目に働いていたならば、別に惡いことをしなくとも暮らして行けるように、日本の國の政治根本から、大本から建て直さなければならないと考えております。一切の政策の基本をなすのがこれであつたのでありますが、次第に具体的の問題に入つて行きたいと存じます。  質問の第二番になりますが、國民に生業を與えていないということであります。國民生産者として生きるか、流通部面を担当するか、將來消費者として生きるか、三つの中の一を選ばなければならんと存じます。併し自由経済時代ならばいざ知らず、今日におきましては封鎖、統制、こういう関係がございますので、純然たる消費者としては生活できないと存じます。何らかの形におきまして、どうしても生業に就かなければなりません。又全國民生産者として生かすことも、資材、資金、設備の不足上、これも不可能でございます。どうしても相当の人員は流通部面を担当して貰わなければなりません。ところが、今日流通部面は大体において統制でございまして、官吏によつて國民は生業を奪い取られておる形であると存じます。生きる道を失つた國民は、いたし方なく闇商人に顛落いたしておりますが、その闇の取締りが嚴重でありますので、いよいよ國民は困りまして、窮鼠のごとく進退窮しておる状態にあると存じます。日本の失業者の人員は概算一千万人と言われております。然るに日本政府の失業対策は來年度におきましては大体その一割の百万人を見込んでおりまして、中五十万人は水力発電事業、あとの五十万人は失業手当、これで賄うということになつております。併しながら私は失業手当というようなことは、これは純然たる失業対策の中には入らないと存じます。何故ならば僅か一ケ月一千円そこらの金を、幾ら家族が多くてもそれだけくれて、期間も一年でございます。こういう金目は今日におきましては、全く見舞金程度のものでございます。失業救済の理想は、どういたしましても、國民の生活を安定さすということでなければならないと存じます。尤も今日の時代におきまして、永久に変らない職業に就かしむるというようなことはちよつと困難でございますが、それかと言つて土木事業だけぐらいでは、極めて心細いと存じます。そこで私が考えますのは、もう主食と基本産業と、それから纎維製品、こういうものを除けたあとは統制を撤廃いたしまして、これによつて中小商工業者として失業者の生きる途を開くことがいいと考えております。この点につきまして政府御当局のお考えは如何か承りたいと存じます。(拍手)  それから第三番目になりますが、現政府政策の中で租税制度に欠陷があると私は考えております。非常に重い大衆課税を掛けておりますが、今日交通税、通信税、こういうものはすでに限界点に達しております。又酒や煙草は成る程贅沢品ではございましようけれども、これはなかなか止められないものだそうでございますので、それだけに租税として取りはぐれはないけれども、それ故にこそますます國民は困つておるようであります。一方におきまして所得税の方が申告税の形になつておりますので、どうしても今日の日本國民文化水準から考えますと、大体所得の二三割程度しか捕捉できていないと思います。こういう事実がありますので、國民はどうもその不公平さに納得が行かないと存じております。分らないところで如何にむずかしい政策を立派に行つておりましても、直接國民に負担を掛けるこの大衆課税が重くては、民心が離反するのではないかと、ひそかに私は心配いたしております。租税の基礎は担税力であります。廣い背中に重い荷物を背負わすのでなければならないと存じます。將來この点について政府御当局がどうお考えになつておいでになりますか、お尋ねいたしたいところでございます。  それからその次は、財源の工夫が画餅であつたと考えております。今回の首相の施政方針演説のなかでもいろいろ事業が掲げられておりますけれども、あの財政面だけで考えて見ましても、大して旧年度よりも歳入が殖えておるとは思えません。然るにあれだけの事業をするということになりますと、当然その裏附けになる物と金との準備ができていなければなりません。これができていないといたしまするならば、あれは、單に理想を掲げられたので、希望條件であると存じます。画餅に終る危險がございますが、画かれた餅として終らせてはならないと思いますので、当然これが財源を工夫しなければならないと存じます。然るに政府は、ただ行政費を捻出する、行政整理によつてそこから金を捻出することだけが掲げておりませんが、これでは物足らないと存じます。これにつきまして、私は官業の一部拂下を主張いたしたいと存じます。日本の國が貧乏いたしまして、國民も「たまねぎ」生活をいたしておる時でございますので、残念ではございますが、暫く國家で、例えば電話のようなものを民間に拂下げて、ここで暫くこの財政の危機を遁れて、その内には終戰処理費も要らない時機が來るでございましようから、その金で以て又必要があれば民間から買上げる、こういう時世におきましては、臨機應変の処置を取らなければならないと考えております。それから第二には、只今砂糖の輸入をいたしておりまする情勢に鑑みまして、國内で生産いたす澱粉を本にいたして砂糖を造りまして、それを專賣にいたしまして、それの税金で賄います。それから第三には、庶民住宅であるとか、それから観光事業、こういうものは無理に政府資金でしないで、公債を募集してやればいいと存じます。近い將來に收入がある見込が立つのでございますから、何分今日は只今申したように、軍事費は要らなくなつておりましても終戰処理費は沢山要つておるにも拘わらず、國家はない資本でいろいろ自分で仕事をしようとするために、非常に大衆の生命に食い入つたり、生産を阻害したりする程重い重税を課さなければならないところに無理があると存じますので、こういうふうにして財源の工夫をしなければならないものと考えております。  その次の項目は、供出以外の主食と生鮮食料品との自由販売が中止されておる、このことが原因で非常に國民生活の生活費を上げておるという事実であります。只今政府は二合五勺配給いたしておりますが、その外に幾ら米があつても買つてはならないということになつております。これは政府が二合五勺で人間の健康の維持ができるという建前の上に立つておるのでありましようか、これは科学の研究の結果も、私たちの日常の体驗からも、これでは健康が維持できないということが分つております。若し國民がこの通りつていたのであつたならば、今日轡を並べて増産に進軍しなければならない時期に、恐らくは枕を並べて討死していたでありましよう。併し國民はよく経驗で知つておりますので、統制の下を潜つて闇の物を買つております。法律に反くことによつて辛うじて健康を維持して來たのであります。ところが、その取締が嚴重になる度に闇の値段が上ります。米は昨年の今頃東京あたりで六十円であつたのが、この頃は三倍の百八十円になつております。「さつまいも」は昨年の今頃は四十円であつたのが、東京ではこの頃約百円になつております。こういう事情がございますが、供出以外の米につきましても、政府は肥料とか農業資材とかをリンクしてできるだけ沢山吸い上げて配給を殖やしてくれるならば結構でありますが、その方も限度があると思うのでありまして、民主政治には限界があるのでありますから、だらしがないようでありますが、供出したあとのものは自由販賣を許可するということが、これがむしろ政治の勘どころであるように私は考えております。庶民の生活は、大体支出の中の八割が食糧に入れられております。而もその中の更に八割が闇の食糧を買うために費されております。然るに闇の食糧が三倍になるということは、非常に家計を脅かしております。大藏大臣は健全財政を主張いたしておりますが、私は全國の婦人をも代弁いたしまして、この席からどうしても政府に向つて、家計の赤字を克服して、家計の健全財政を主張いたさなければなりません。この最も大きい赤字原因になつておる主食の、即ち供出以外のものの自由販賣、これを政府に対しても質問したいと存じます。同時に生鮮食料品の問題でありまするが、闇市場には沢山闇の野菜が出ておることがあります。あれを統制を強化したならば、それが全部統制のルートに乘つて來ると思うところに認識不足があると思います。安い公定値段を恐れて、保存の利く加工品に廻ります。今日は、今までで統制が最も強化されておるところであります。然るに御承知の通り、千葉の大根は殆んど全部「たくわん」になつております。埼玉縣の大根は殆んど全部切乾しになつて、三四月頃の端境期に備えております。お蔭樣で今度は沢山配給して貰えるかと思つておると、天井から眼藥の程度で、至極困窮しております。果物は統制を撤廃してから出廻りも好くなり、價格も次第に下る傾向があります。これは極めてよいお手本であると存じます。併し細民の生活を保障するという必要があるならば、統制と供出とはそのままにして置いてよろしうございますが、併し供出以外の自由を許して頂きたい。主食の場合も、野菜の場合も、こういう二本建でやつて頂きたいということを波多野農林大臣にお尋ねいたしたいのであります。  その次は、庶民の住宅問題に落度があつたと存じます。只今木材は統制されておりますけれども、今度はあれを供出制度にいたしまして、住宅の公債を発行いたして、それで政府が、罹災者や引揚同胞やそれから重点産業労働者のために、資材は少くて收容人員の多い而も文化的な家を沢山造りまして與えるのでなければ、到底住宅はできないと思いますが、この点に関しまして所管大臣の御意見を承わりたいと存じます。  それからその次の項目は、社会政策に落度があると存じます。この点で三つの例を挙げたいのでありますが、闇の女というものが出ておりますが、これに対して政府はどういう対策をお考えになつておいでになるのでございましようか、私はあの中で家族の生活のために困り抜いておる女性に対しましては、只今のように檢黴制度で、病氣さへ持つていなければ直ぐに街に放り出して密淫費を黙認する形でなく、同時に生活相談に應じまして、子供のために、娘のために適当な職業を授け、残された家族にはそれ相当に生きる途を授けてやらなければならんと思います。それから中にはずるいのがありまして、貞操を資本に金儲けをするのがあります。これに対しましてはブラツク・リストを作つて、何遍注意してもきかない人間に対しましては自由を束縛いたしまして、労働の習慣を付けながら再教育するのでなければならないと考えております。  その次、社会政策の第二番目は婦人の失業救済であります。これにつきましては、私は只今の紡績工場の設備をもつと拡張いたしまして、賃金を上げてここで沢山就職さして貰いたいと考えております。只今日本の紡績業は連合軍より四百万錘まで各庁することが許可になつておりますが、未だ設備がそれに及んでおりません。一方におきましては接收されておる設備がありますので、許可されておるところまで接收設備の拂下げを懇願いたしたいと存じております。同時にその女工の賃金は今日八百円程度でありますが、これでは僅か靴下が一足半でありますので、闇の女の誘惑が強うございますから、もつと賃金を上げて頂きたい。現在中國から、日本の紡績工場の賃金が安いために労働ダンピングするから、ああいう状態になるのだから、將來日本の纎維製品の輸入はお断りすると、昨年一本釘が差されております。以上の項目が只今の政府政策として特に成るべく早く改革しなければならないところと私は考えております。  最後に、今度長期計画に基本産業の工業が四割方増産されることを承わりましただけでも心の明るさを覚えるものでありますが、さてその結果私たち國民の生活がどれだけ潤うのであるか。例えば石炭と電氣があれだけ増産いたします結果は、今年のように非常に困つておる燃料の問題などはもう大体心配しなくてもよいような状態になるのか。それから鋼鉄があれだけ生産されることになりますれば、今日國民危險を冒して非常に生活能力が下つておりますあの交通地獄なども、相当緩和して頂けるのであろうかどうか。それからその次はセメントがあれだけ生産されるならば、危險な水害地の復旧工事もできるのであろうか。それから硫安があれだけ生産されるならば、日本の農業生産力がどれだけ多くなりまして、その結果あの今年の農業生産力の一割増産の目標がその裏附けのために言われておるのか。そうして二合五勺が二合七勺になるのであろうか。そういうことについてもお尋ねいたしたいと存じます。纎維製品も大分増産されるようでありますが、その結果は國民にも少し配給して頂けるのであろうか。これは全國の國民が知りたいところであろうと思いますので、代つてお尋ねいたしたいと存じます。尚時間の関係もございますので、項目だけを差上げてある点がございまするが、若し差支えなかつたら御返答願いたいと思います。以上政府当局の方々からお教え願えれば幸甚に存じます。御清聽を頂きまして有難うございました。(拍手)    〔國務大臣片山哲登壇
  17. 片山哲

    國務大臣片山哲君) 深川君からいろいろ重要なる実際問題を提げられまして政府の所信をお尋ねになりましたので、総括的な問題をお答えいたしたいと思います。誠に國民生活の安定を図るということが政治の究極の目的であるという点においては同感でありまして、私も常にこれを考え、その方向に向つて努力いたしておるのであります。敗戰後の我が経済がすべてに関連をいたしまして、國民生活の発展と國家財政、國家経済、國家産業一連の関係において影響いたしておりますので、一つを上げようと思うならば、全体の計画を立てましてその向上を図つて行かないことには、目的が達成されないのであります。そこで政府といたしましては、先ず今日の邪魔ものであり、今日我が國の危機を招來いたしておりまするあらゆる障害を取除けるということに先ず精力を集中いたしまして、インフレの克服、闇の撲滅、いわゆる流通秩序の確立ということを以ちまして危機を突破すると共に、一面基礎産業でありまする重要産業発展及び輸出すべきところの仕事に勢力を集中いたしまして、その重点的な方策によりまして産業の発展を図つて経済の立直しをしたい。こういうよう考えまして、一つの一連の計画の下に國民生活の向上を図ろうと考えて努力いたしておるような次第であります。何分食糧も不足いたしておりまするし、石炭不足いたしておりまするし、戰爭のために生産機関、生産の機構が破壞せられまして、その立直りが非常に努力を要するのであります。御承知のように、汽車も硝子窓から、機関車から、レールから、すべて破損磨滅いたして、この回復にはなかなかの努力を要するのであります。これを回復にしつつ立直して行くということになるのであります。大体戰前昭和五年——九年の生活水準に引上げようと思うのには余程の努力が要りまするので、先日施政方針演説申上げような計画で先ずそれをやつて行こう。こういうようにやつて行くならば、段々と國民生活も良くなつて來る。その間に國民の協力を求める。こういうような建前で進んで行かないことには、膏薬貼りで一部だけ手直しをするというようなことでは到底目的は達成されないと思います。そこで國民全体にも一つ闇生活をなくして貰いたい。闇のために家計経済赤字になつて來るのでありまするので、これは國民に闇の撲滅に御協力を願うと共に、政府といたしましても大いに努力いたしまして、闇生活をしないでもよいような配給生活の確信を図りたいということの大きな計画を立てまして、努力いたしておるような次第であります。これは物資不足の際でありまして、なかなか困難でありまするけれども、配給生活の確保ということを目標といたしまして、非常に奮鬪いたしておるような次第であります。この意味におきまして、日本は民主革命が進行中で即ち戰前の生活水準に引上を図りたいのであるが、政治経済その他の制度におきましても、前の状態をそのまま持つて來るのでなしに、民主的な、文化的な、進歩せる合理的科学性を持つた新らしいものをそこへ持つて來なければならん。こういうのでありますから、單なる復旧、單なる復古的な考えではなしに、進歩的な考えで努力しなければならんというので、一段二重の力を要するわけであります。即ちこれが平和の内に民主革命を行おうとする國民の努力を要請しなければならない訳合いであります。こういうような意味で、精神的方面におきましても非常な御奮鬪を願わなければならない。二重、三重の苦痛が、今日國全体にかかつておりまするので、いろいろ御不平もあろうと思います。不服も大いに謹聽いたしまするが、國民全体が協力して我が國を立直すというところに進んで行かないことには、どうしても経済復興はできないと思つておるような次第であります。政府といたしましては、そういう意味で食糧問題につきましても、或いは住宅建設問題につきましても、あらゆる努力を拂つておるのでありまするが、経済が立直らないことには非常に困難であります。といつてそれをうつちやつて置くわけにも行きませんので、困難を克服いたしまして、一面積極的に文化政策もやるし、住宅政策もやるし、生活改善の方策もやりつつ、すべて、口火を切りまして、轡を揃えて全面的に進行いたしたいと考えておるような次第であります。実際上の面からいろいろと御注意を賜わりましたることは大変結構でありました。諸君の十分なる御協力を仰ぎたいと存じます。これを以て私のお答えに代えたいと思います。(拍手)    〔國務大臣栗栖赳夫登壇拍手
  18. 栗栖赳夫

    國務大臣栗栖赳夫君) 深川さんのお尋ねに対し簡單にお答えいたしたいと存じます。  先ず第一は税制に関する問題であつたと思います。お説の通り税制をよりよいものにし、國民が負担を公平にして、成るべく拂い易く、分り易くするということについては全く仰せの通りでございます。それについて財政の需要と睨み合せまして着々と改善を加えておるのでございます。それから予算申告制の問題についてお尋ねがございました。これはこの民主的な新らしい日本にとつて最も恰好な制度でございますが、これが普及という点において十分でない点がございますので、納税運動その他によつて努めてこの普及をいたし、そうしてこの運用を全ういたしたいと考える次第でございます。それから租税負担の能力の問題であつたと思います。國民経済の許す範囲において或いはこれと相應する範囲において財政を組立てるということは、我々も理想といたしておるところでありまして、ただ占領下、終戰以來経済の危機に喘いでおる日本でございますから、直ちに理想の実現というまでは行かない点が多々あるのでございます。政府は努めてこの理想に向つて財政を編成して行きたい。二十三年度においても更に努力をいたしたいと、かよう考える次第でございます。  次には官業の拂下げについてのお話があつたと思うのであります。政府は只今元陸海軍が所有しておりました財産を國有に移して、これが拂下げをいたしておることは先程も申した通りであります。その外、電話その他についての公共事業の拂下げにつきましては、一面において財源を得ることと同時に、他方これらの産業が公共性を持つておるという点をも考えなければならんのでありまして、愼重に考慮、研究をいたしたい。かよう考えておる次第でございます。  それから砂糖に代えて新糖素の專賣をいたして收入を挙げたらどうかという御注意であります。この新糖素の原料はいろいろな用途に用いられるのでありまして、これを監督する上におきましてはなかなかむずかしい点もあるのでございます。そこでこれも一つ愼重に研究をいたしたい。かよう考えておる次第でございます。  それから最後に観光事業或いは庶民住宅の建築等については公債を発行して、そうして民間資本を利用して財政の負担を軽くしてはどうかという御趣意のお話があつたと思うのであります。公債の発行につきましては先程來申上げましたように、市場消化ができませんというとインフレ下におきまして、由々しい問題を起しますので、市場消化という点において限られた範囲において公債発行が考えられるわけであります。健全財政その他の建前からいいまして、教育の問題その他各般の問題もありますので、これも一つ諸般の問題と睨み合せまして考えたいと思う次第でございます。簡單でございますがお答え申上げます。    〔國務大臣波多野鼎君登壇
  19. 波多野鼎

    國務大臣(波多野鼎君) 深川議員の御質問にお答えいたします。  第一の点は一〇〇%供出後の米について自由販賣の制度を認める意思はないかという点であつたと思いますが、この問題に関しましては昨年八月に閣議の決定がございまして、超過供出後の米と雖も自由販賣はしないという方針を確立したのでありまして、その方針は現在においても聊かも変化いたしておりません。ただできる限り多くの米を正規の配給ルートに乘せて、國民諸君に公正に配給するというために、一〇〇%供出後の米につきましては、價格及び報獎物資などの点について特別の措置を講じて、任意供出の形で供出して頂く方針でありまして、その具体的な点につきまして今各方面と折衝中でありますが、近く発表する段取になると思います。  第二の点は、生鮮食料品の問題についてでありました。生鮮食料品の統制を強化したため、水産物その他野菜にしましても加工品に逃げてしまうのではないかというお話でございました。この点につきましても生鮮食料品の統制は、やはり日本の食糧事情並びに日本のみならず世界の食糧事情との関連におきましてあの生鮮食料品の統制を実行するに至つたのでありまして、この統制を今変更する意思は毛頭持つておりません。加工物につきましては、例えば、水産物については「いわし」製品外九品目はいわゆる指定水産物といたしまして、これは嚴重な配給統制を実施しておりますが、その他の加工水産物につきましては末端においてマル公で販賣するという点の統制を加えておるだけで、その他の点については統制をいたしておりません。以上簡單に御答弁いたします。    〔國務大臣木村小左衞門君登壇
  20. 木村小左衞門

    國務大臣(木村小左衞門君) 深川さんにお答えを申上げます。  住宅の復興は民生安定、産業再建上に欠くべからざる重要問題でありますることは御承知の通りであります。政府におきましてはこれが促進に種々これまで努力を拂つて参つたのでありまするが、昭和二十二年度におきましては約三十万戸を復旧いたしました。その内、政府財政援助によりまして供給いたしまする庶民住宅は約四万戸でありまして、もとよりこの程度のもので政府といたしましては決して滿足いたしておるものではございませんが、只今のところ資金資材の関係でどうも止むを得ない状況になつておりますのであります。それで昭和二十三年度、來年度におきましては、目下政府において策定中のいわゆる長期建設計画、かの五ケ年計画の第一年度といたしまして、少くとも住宅三十五万戸程度は復興いたしたいと考えておりまして、又この内、庶民住宅といたしましては、財政、資材が許しますならば極力これが資材を蒐集いたしまして、約十万戸程度を建設いたしたいという考えを持つております。尚この都市の住宅建設につきまして、ちよつとこのところ考えさせられるものがあります。従來の木造建築は非常に火災の憂いがありまして、現に昨年の一月から昨年の六月まで、僅か六ケ月間の火災の統計を旧内務省の警保局にて取つて見まするというと、新らしく建設せられました住宅の約四二%が火災に罹かつて燒失いたしております。これは数においてであります。新らしい住宅がそれだけ燒けたというのでありませんが、新らしく建設されたところの、つまり十二坪、十五坪のような小さい住宅が沢山できた。その数の比例において四二%を燒失しております。そうするというと小さい住宅が燒けましたならばまだしも資材の関係が少いわけでありますけれども、從來残つておりまして現存した住宅がその四二%の中にこもつておるといたしますならば、これはどうも國策として由々しきところの重大問題であると考えなければなりません。この問題につきましては、できるならばどうぞこれから不燃性の住宅を獎励して行く、又これを実行して行きたいと、こう当局では考えておりますが、これにもやはり伴うものは資材と資金であります。尚資材と資金が許しますならば、この不燃性住宅を以て綜合的住宅を建設いたしまして、一面においては火災を防禦するのと、都市経営の上において立体的な住宅を造りまして、我が國民に最も欠乏しておりますところの、かの共同生活の一端をも助成させることがよかろうではないかと、こういう希望を持つておりまして、そういう方向に向つて二十三年度には極力これを推進して行きたいと考えておりまする次第であります。  尚木材の統制を解いて供出制度にしてはどうかというようにちよつと只今承わつたのでありますが、木材を供出制度にしたらどうかという誠に御名案のよう考えられます。これは併し今まで曾て考えてはおりませんが、何しろこれは非常に重大な問題であります。木材の統制を解きますということは、物資需給計画に基いて、すべての規範によつてつておることでありまして、殊に欠乏しております木材に対して統制を解いて、この物資需給計画の大半の規範を壞すということは如何がなものかと思つておりますので、こういうことはちよつと考えておりませんのであります。  尚産業復興の最尖端に立ちまするところの炭鉱労務者のための住宅は、來年度も今年度同樣資材、資金を優先的に確保いたしまして、炭鉱業者を督励いたしまして、この建設を推進いたしたい考えであります。炭鉱以外の重要産業労務者住宅につきましても、この建設を推進するために極力努力いたしたいと考えております。以上御答弁いたします。(拍手)    〔國務大臣一松定吉君登壇
  21. 一松定吉

    國務大臣(一松定吉君) 闇の女に対する政府対策如何という御意見ように承わりました。闇の女が終戰後特に増加の傾向を辿つておりますことは誠に残念に存じます。今我が國における闇の女の数が三万人以上と推算せられておるということであります。而もその中のいわゆる三六%、百人について三十六人が花柳病の所持者であり罹病者であるというに至りましては、厚生省といたしまして誠に遺憾に存ずるのでございます。然らばこういうような闇の女に対しては、どういうよう対策を探ればよろしいかということについては、先ず闇の女に顛落した動機原因を探究することが先決問題であります。何故闇の女に顛落したのであるか、それにはいわゆる職業がないために生活に困るということで闇の女に顛落する者もありましよう。職業があつても就職ができないがために、生活上止むを得ず闇の女に顛落する者もありましよう。又自分に職業がない、仕事をする能力がない、そういういことのために自分の生活に困つて闇の女に顛落する者もありましよう。又自分からいろいろの仕事に從事して、ひどい労務に服するよりもむしろ安易な方法によつて生活を維持することがよろしいという間違つた考で闇の女に顛落する者もありましよう。又いわゆる一種の病氣のために、特に他のことを考えずして、そういうことに從事する女もありましよう。その動機原因はいろいろありましようが、これらの動機原因を取除いてやるということが、この闇の女をなくする一つの大きなる政策であると私は考えております。  この意味におきまして、いわゆる職業のない婦人に対しては職業の補導をやり、又自分は仕事は持つておるけれども雇い手がないというような者に対しましては、いわゆる就職の周旋をしてやる、或いは自分はそういう仕事に從事するよりも安易な方法によつて生活費を得ようというような間違つた女に対しましては、これを指導する、教育するということの方法を採らなければなりますまい。病的である者に対しては病院に入れて、そういうような病源を絶つという方法を探らなければなりますまい。然らば政府はこういう点についてどういうような方法を探つておるかといいますと、我が國におきましては、只今のところ六大都市並びに福岡及び宮城、これらの八府縣に対しまして婦人の保護施設を設けまして、これに対してこれらの経驗者を嘱託をして、そうして職業補導、指導、或いは就職の紹介或いは病を癒すとかというような方面に努力することにいたしておりまして、中央におきましてはいわゆる婦人福祉中央委員会というものを設けまして、地方と中央が連絡をして、これらの病根を除去することに努めております。花柳病の撲滅に関しましては、最も新らし藥、注射等の方法によつて、これを撲滅することに努めております。又こういうような人々に対しまする取締というようなことは、これはむしろ元のいわゆる内務省、そういう方面でこれを取締つて頂かなければなりますまいが、これはつまり教育の点において、或いは精神修行の点において、そういうような人々を病院に入れまして、そうしてそれらの人をいわゆる精神教育をする、指導するということによつて、徐々にこれを是正して行くということが必要であろうと思うのであります。こういうような考を以て厚生省はこの闇の女に対する政策考え且つ実施しております。今申しましたいわゆる八つの府縣以外の地方におきましても、そういうような女の増加するに順應いたしまして、それらの施設を設けて万遺憾なきを期したいと考えております。    〔國務大臣鈴木義男君登壇
  22. 鈴木義男

    國務大臣(鈴木義男君) 深川議員から闇の女についての御質問でありまして、大体厚生大臣の御答弁で要点を盡しておると存ずるのであります。司法省といたしましても、厚生省と協力いたしまして、でき得る限り救済の手と保護の手を差伸べたいと考えておるのであります。殊に最近就任せられました榊原政務次官は、そういう方面に最善の努力を盡す予定でありまして、本日もその方面の観察に出ておるような次第でありまして、特に御期待に副うようにいたしたいと存じておる次第であります。    〔國務大臣和田博雄君登壇拍手
  23. 和田博雄

    國務大臣(和田博雄君) 長期計画と國民生活との関係につきまして簡單にお答え申上げます。  長期の経済復興計画は、どうしてもその前半期におきましては基礎産業、例えば石炭でありますとか、電力とか、それから輸送といつたようなものに重点を指向しまして、日本経済力の基礎を培養するということになりまするので、その面から行きますると直ぐに國民経済生活が急に上昇して行くということは、これは長期計画においても、日本の今の経済力から言つては望めません。併し一方インフレーションが非常に大きな問題として今我々がそれに対処いたしておりますので、その関係からいいまして、できるだけ我々としても消費物資を同時に増加して行きたいという考え方で長期計画を策案いたしております。殊に労務者用の物資については、生産を殖やして行くことにつきましても、どうしてもそれに伴つて殖やして行きませんと、生産自体が殖えて行かないという関係にありまするので、これは今年度よりも長期計画においては來年度はもう少し殖やして行きたい、こう考えております。衣料につきましては、これは二十二年度が御承知のように一人当り年間を通じて一・八ポンドであつたのでありまするが、二十三年度は二・七ポンドくらいにはしたい、こういう考えでおります。鉄道の輸送につきましては、これは重点産業一つとして、長期計画の殊に前半期におきましては取上げておるのでありまするが、來年度はどうしましてもやはりレールの補修とか、車輌の補修或いは貨物輸送の増加ということに局限されるのではないかと思います。家庭燃料につきましては、電力はこれも重点産業として非常に重んじて來年度は立てております。併しできました電力につきましては、これを産業方面に主として向けて行かなければなりませんので、家庭用にこれをより多く振向けるということは、これはできません。併し薪であるとか或いは豆炭、煉炭とかガス、そういつたような部門が大体二、三割の増加を示しますので、全般としては二割方くらいの増加になろうかと思います。  要するに長期計画におきましては、その前半期においては経済基礎を培養して行く。そうして國民生活が本当によくなつて行くということは、やはり後半期においてそれが顯著に出て來る、こういうよう日本の今の経済力から行きまするならば、外國の援助を以ちましても、そういうような形において日本経済というものが回復して行く。昭和五——九のポツダム宣言に許された生活水準に近付いて行く。こういうように御了解願えれば結構だと思うのであります。    〔國務大臣芦田均君登壇
  24. 芦田均

    國務大臣芦田均君) 細川君の御質問にお答えいたします。細川君が先程お述べになりました御意見を要約いたしますと、我が國が現在置かれておる境涯においては、特定の一國とのみ親善関係を結ぶことは賢明ではない、むしろ多面的に多くの國々と親善通商関係を結ぶべきであるという御意見の御開陳がありました。又ソヴイエト連邦との貿易についても、現在一部分実行中であるが、將來ますます発展する方向に導くべきではないかという御意見の御開陳があつて、これに対する政府の見解をお尋ねなつたのであります。政府におきましても、ほぼ細川君の御意見のごとく考えまして、折角その方向に努力いたしておる次第であります。
  25. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 姫井伊介君。    〔姫井伊介君登壇拍手
  26. 姫井伊介

    ○姫井伊介君 片山総理大臣の施政方針演説に対しまして、労働問題、税制問題並びに予算に関しまして、緑風会の一員といたしまして質問をいたします。  第一は、労働問題と産業生産形態についてでありますが、我が國の労働者が長い間資本主義と軍國主義と封建的観念の重圧の下に苦しみ來つたことは申すまでもありません。終戰後民主主義の大鉈によつてこの重圧の重石は微塵に粉碎されました。労働者は驚いて起ち上りました。喜んで起ち上りました。併しそこには恐るべきインフレーシヨンの嵐が巻き起つておりました。これに伴う生活難の怒濤が押し寄せて参りました。人間として目醒めましたところの労働者は、生活権並びに労働権確保のために協力團結いたしまして、この嵐、この大波を衝いて、それを乘り越えるために、鬪爭に次ぐに鬪爭という一つの手段方法を以て前進して参つたのであります。これが今日までの樣相でありまして、私はそれは自然の姿と考えるのであります。今後はどうあるべきか、労働攻勢といい、資本攻勢といい、若しも從來のごとく鬪爭的な言葉により、行いにより続けて行かれまするならば、私は平和日本建設後において大きなる矛盾を産み出すと考えるのであります。言葉自身が持つ観念、眞理、これには恐るべきものがあります。私は決して鬪爭を否定する者ではございません。けれども本当に自由なる人権、平等な生活、これを確保するために、努力するためには、敢て鬪爭ということによらずして、私は社会正義を背景としたるところの正しいところの運動、強い要求主張によつてこれを貫徹することができると考えるのであります。歴史は鬪爭の歴史と言われておりますけれども、我が國にとりましては、即ち戰爭を放棄いたしまして、文化的な平和な國を作つて行こうとする場合におきまして、私共は飽くまで平和な、文化的なその歴史を新らしく建設して行かなければならないと考えるのであります。憲法の第十二條には、憲法が保障するところの國民の自由並びに権利は濫用されてはならない。常に公共の福祉のために利用するの責任を負うべきものと規定されておるのであります。この点から考えまして、從來採られましたところの鬪爭、即ち力において、時間において、金において、多くの無駄を生じ、而も早くなさなければならないところの生産過程を足踏みをさせるというような方向につきましては、多くの考慮、反省を求めなければならんと考えるのであります。(拍手)首相は演説の中に、最近健全なる労働運動の起りつつあることを喜ぶ。更に遠からず不健全分子は制裁されるであろうことを期待すると述べられております。更に日本経済再建の成否は一にかかつて全國の勤労者及び農民諸君の双肩にある。社会秩序の混乱と再建経済の破壞を企図するがごときことは、諸君の採らざるところであると信ずると述べられておりますが、これだけは今後あるべき労働行政の方針が奈辺にあるか、はつきりしておりません。ただ一つ情勢と希望を述べられておるに過ぎないのであります。  更に私は労働者のみに対する要求のみならず、一方事業界への反省、要求というものがなされなければならない。(「その通り」と呼ぶ者あり)(拍手)この点について、何らも触れておるものがないのであります。労資協調という言葉が使われますが、これは申すまでもなく大正時代に使われた言葉でありまして、頗る古い思想であります。平清盛が鎧の上に衣を纏い、鎖帷子の上に背廣服を着、防彈チヨツキの上に作業服を纏いましても、それは本当の労資協調の姿でも何でもない。事業一家、事業は一家であるという産報的な考え方もあるのでありますけれども、これもそうした自然の情勢が持ち來され得なければ、口で言うお説教では何もならないのであります。確か大正年代と思うのでありますが、時の紡績業界の大御所が沢山の女工を前にいたしまして、あなた方はこの工場の家族である。私はあなた方の親である。父と思いなさい。仲良く働いて行きましよう。と、こう言つた時に、女工の一人が一歩前進いたしまして、お父さん、私にも大島の着物を買つて下さい。と言つたという皮肉な話があるのであります。(拍手)  そもそも労働問題の発生はどこにあるか。申すまでもなくそれは資本主義の機構と、封建的な観念と、これの結合によるところの私生兒であるのであります。労働問題はこの資本主義的な機構、考え方、働き、これがなくならなければ、どんな姿を採りましようとも断じて絶滅することはできないのであります。(拍手)(「資本家がなくならなければいけないね」と呼ぶ者あり)だからして私はソ連に憧れを持つものでもありませんけれども、又多くの欠点も見出しますが、今の問題の限りにおきましては、ソ連におきましては労働爭議はございませんと私は聞いておるのであります。  そこで産業経済界の現状を振り返つて見る必要があるのであります。終戰後、財閥の解体、独占禁止、経済力集中排除、並びに各協同組合の組織、これによりまして我が國の社会状態はどういうふうになつて來たか。昔は社会は三角形だ。円錐を成しておるところの三角形だといつて、立体的に見ておりましたが、今日はそうした民主的の進行に伴いまして、これは段々押し下げられて参りまして、殆んど平面化して、又平面化して來なければならない情勢にあるのであります。又それが我が國の進むべき目的であります。即ちそこには社会的階級、或いは生活的階級というものも非常に幅が狭く、高さが低くなつて來た現状であります。故にいわゆる資本家としての特権というものは認められません。搾取は行われません。不当所得も許されません。かくのごとき実態の今日、生産増強に対するところの産業の組織は如何にあるべきか。即ち経営者と技術者と労働者とは、從來のごとく上下的な隷属、服從関係でなくして、全く平等に置かれなければならない。同じ対等の権力の上に置かれねばならない。即ち平面的にこの三者が結合しなければならない。この結合によりまして初めて資本というものが活用されるので、資本は生産のために絶対欠くべからざる要素でありますが、その資本に使われるということでなくして、今申しました形態によりまして今度は資本が活用されなければならない。私は資本や或いは利子というものを否定もいたしません。その形態はどういうふうになるか。今日では経営協議会とか生産協議会とか申しておりますが、私はこれを打つて一丸としたるところの事業協議会というものによつてこの産業が運営されて行かなければならない。これが即ち産業の生産協同体と私は申すのであります。即ち経営者も、技術者も、労働者も平面結合でありまして、悉く給與によつて生活をするという全部が勤労者なのです。全部が勤労者である。そこに涙と血が通つて來る。本当にこの工場は俺たちのものだ。この会社は俺たちのものだという実体的の本当の感じが出て來るのであります。無論労働者におきましても或いは労働組合におきましても、その会社ならば株を持つことができる。出資することができる。ここに何らの資本家としての横暴は認められなくなつて來るのであります。そこにこそ基本的人権の尊重が実現いたしまするし、生活権の平等が保障されるのであります。併しながら多くの人は、資本主義と自由経済とを混同される傾きがあると私は思うのであります。申すまでもなく資本主義は生産経営の一つの仕組なので、自由経済といい、統制経済といい、それは一つ経済政策なんであります。だから如何なる形態におきましても、或る部分に対しまして、或る範囲において、自由経済がこれは必要であるというならば、それはできる。統制経済ならざるべからずとすればそれができるのであります。  かく観じて來ますると、私は今日もはや資本主義というものは成立をしない。崩壞してしまつた。その段階に到達しておるということを考えるのであります。(拍手)(「そのことだけは正しいな」と呼ぶ者あり)故に私はこれに答うるに産業協同主義を唱えるのでありまして、労資観念は即ち止揚さるべきものだ。今日尚資本家だとか、或いは金持だとかいつたような、目に見えないところの幽霊に襲われておるということは愚の骨頂だと私は考えるのであります。(「まだ残つておるよ」と呼ぶ者あり)残つておるのは段々これは清算して行かなければならない。(笑声)この方向にこの労働問題並びに産業形態の方向というものを持つて行かれるお考えがありますかどうかということを、第一にお尋ねするのであります。  次は、今の認識と見通しが誤まりないといたしまするならば、私は現内閣が採つておられまするところの三党の政策協定というものも更に考え直される必要があるのではなかろうか。余りに一つの部面にこびり附いておる。丁度冬の蠅が日向の障子に頭をぶつけてぶんぶんやつておるようなもの、一歩退いて大観いたしまして、いわゆる大悟徹底しなければならない。結んで固いところの厚氷が解けて流れる春の水と申しますか、淙々として洋々たる大海に落ち込んで行く。そこまで従來の考え方が高められて行かなければならない。即ち政権というものに対して拘わりを持たないで、本当に日本を立派なものに仕上げて行くのだというこの一念に、高い理想に到達いたしましたときに、いや何党、何派といつたような小さい拘わりについて、なすべきことを阻害するというようなことは大いに反省しなければならないと私は考えるのであります。即ち企業の再建整備、或いは金融の再建整備にいたしましても、今日の軍事公債の利拂い問題なども、この高い見地から眺めて見まするならば、私は易々として解決することができると思う。この高い、大いなる理想、それに向つて総理のお考えはどうでありますかということを第二にお尋ねいたします。  第三には、税制問題でありまして、租税は、必要な額が、必要な時に、いつでも、最も見易く、確実に、漏れなく收納されなければならない。それがためには國民をして國家の財政を知らしめるとか、或いは課税額が公平適正でなければならない。納税方法は簡素に、その費用は軽減されなければならないといつたような、いろいろな條件がありまするが、これに対しまして首相の演説の中におきましては、徴税機構の拡充強化と税務運営方法の刷新とを図り、税務官吏の待遇を改善し、綱紀を粛正する。インフレ所得者に対する第三者の通報制を活用するといつたようなことを述べられておるのでありますが、それだけの考えでは、まだ昔ながらに税は上から引き締めて取られるものだという感じを國民に與えるのであります。即ち税金は我ら國民が納得して納めるべきものだといつたところの、そういうふうな心持になり得ない。私は税制につきまして極く大綱を申述べます。それは一つ國民税と私は仮に言つておりますが、その内容は米の消費税であります。主食配給統制が行われまする期間だけはこの國民税というものを考えたらどうか。即ちこれは米だけに、米の配給量だけに課する税金なんであります。藷だとか、麦だとか、それは別物なのであります。又それは國民ひとしく頭に落ちかかるところの均一消費税となるのでありまするから、余り多くを求めてはいけない。けれども、一方國民の生活権の平等が保障されるという、この見地から言いまして、或る程度の人頭均一課税というものは私は認めてよいのじやないか。政府は供米割当を合理化して完全な供出を求める。できたところのものはいろいろな方法によつて全部配給のルートに乘せると、先程も農林大臣の御答弁がありましたが、若しそれならば、この消費税を課することにおいて、多く米を國民に與えれば與える程國家の收入は多くなるのであります。若し仮に不正な人があつて闇流しをするというならば、それは統制違反に問われると同時に納税違反に問われるということになるのであります。仮に私は米一升に対しまして五円とこれを見る。闇買をしないで済むならば、これだけは私共は國民が我慢をしてもよいのじやないか。六千万石の産米に対しまして三百億円の歳入が予想されるのであります。  第二は勤労所得税であります。これは裁定生活費というものを合理的に見まして、これを勤労所得から差引いてしまう。或いは課税の免税点を引上げるとか何とかいろいろなことを考えておりますが、お互いは最低生活をするためにはそれが保障されなければならんとすれば、それに要するところの費用は勤労者所得から差引くということは当然なんです。その上に対して累進的な課税を行つて行く。これは收入は確実である。前に申しました國民税は食糧配給公團をしてやらせればこれ亦收入は確保できるのであります。  その次は一般所得税でありまして、これには國民の総所得考えまして、それによつて一つの基準を付けて等級別をするのであります。例えば三十等なら三十等といつたような標準等級を求めまして、それによつて地方々々において、職域若しくは地域の特殊の協同組合、これを基本体といたしまして、ここにおいてその標準に合わして國民に相談し合わせるわけであります。組合に相談し合わせる。そうすると凡そ分るので、あすこはこういう收入がある、あすこの家庭事情はこうだ、あすこは闇をして随分金が入つて來ておる、十目の見るところ、十指の指さすところ自然と分るのであります。ここにおいて多数の人の申合わせによりまして、つまり民主的な共同責任制を持たせるのであります。今日は單独申告制がありますが、これは單独申告制でありますからうまく行かない。これに社会的の責任制を持たせる。又協同組合によつてお互の國民生活の基本が形付けられて行くということは、これから先我々の行くべき途なのであります。ここにおきまして私はこれも今のような沢山の税務官吏、職員を使つて何十億という金を使つてやらないでも易々としてできるのではないか、その他推定の困難な所得に対しては、これは税務署にやらせる。或いは財産税なぞは、これは税務署にやらしたらよろしい。その上私は教育税というものを目的税として設定する。六・三制問題もいろいろありますが、これだけのものはこれは教育費にするのだという一つ目的税といたしまするというと、父兄の人、國民は喜んで私は出す。先に公債だとかいろいろな話がありましたが、私はこの方法を採つて行くならば、又六・三制の実施、その他教育振興の上におきまして計画的な仕事ができて行くのではないか、而してその標準は綜合の所得額に比例して行けばそれでよろしいのであります。政府は税制改正の具対案を近く出すと言われますが、今申しましたようなこれは一つの愚考に過ぎません。一々の税目について御答弁を私は願うとは思いません。こういうふうな形式、こういう氣持ちでやつたならば、税がうまく公平に適正に取れるのではありませんかというので申上げるので、この点に対しましての御答弁が願いたいのであります。  最後は、これは一口の御答弁で済むことであります。新年度予算の案はいつ提出されるかということなんであります。政府の持つておりまする政策、信念、決意というものは、この出さるべきところの予算案に具現して來るのであります。この予算案によつて我々は檢討することができる。無論その実行にもよりまするけれども、國民はこの予算案によつて、この政府信ずべきか信ずべからざるかを判断する材料となる。而もこの政府が本当に独自の立場から新らしいところの予算を編成されるのであります。現在三本マストの片山丸は、この難局の運航におきまして泥舟として崩壞するか、或いは難航は続けながらも一つの鉄船として押切るかということは、ここに一つの標準が見出されるのであります。当り前ならば施政演説と共にこの予算が出されなきやならない。これにはいろいろな関係もありましよう相当の時日も要しましようが、さてこれを編成する人たち、定時退廳とか何とかそんなことを言つている時代では私はないと思うのであります。國民の公僕として夜を日に継いで、徹夜してでもですね、この案は早く仕上げなければならない。早く仕上げる程國民の信を得る。遅くなる程國民から飽かれるということになる重大なるこの予算案であります。公務員が本当に尊敬せられて、公僕として本当に尊敬し、信頼し得られる、道義昂揚とありますが、問題もありますが、かくのごとき仕事に本当に身命を打ち込んで急速に適正なる案を出すということが、即ち道義昂揚の範を示すの一端ともなるわけなんであります。この重大な意義を持ちまする予算案を、一体二月の何日頃までにはつきり御提出になりまするか、それを御伺いいたします。以上。(拍手)    〔國務大臣片山哲登壇
  27. 片山哲

    國務大臣片山哲君) いろいろ重要なる問題の御提議がありまして、参照、参考になつたと思うのであります。  第一は労働問題と産業機構の問題でありまして、これにつきましても、相当思い切つた御意見を御述べになりましたので、私もこれについていろいろと意見を述べたいと思うのでありますが、相当時間も要しまするので、この問題に関しては他日委員会等において檢討いたしたいと思います。大体のことを申上げて見まするならば、我々日本國民に課せられたる至上命令をも言うべき民主化の徹底を、産業機構の中に植え付けたいと、私はかよう考えておるのであります。そうして産業機構、労働問題等におきましても民主的にやるということが必要である。この意味において資本家の独裁は勿論許されなくなりまするし、又全般的に考えましても、独占企業は禁止されておる今日でありまするから、利潤本位の資本家の独占形態は勿論排除されなければならないのであります。同時に又労働者の方面におきましても、労働運動が民主的に発展して來なければならないのでありまして、徒らに力ずくで工場を占領するとか、或いは生産を管理するとか、こういうふうなやり方は取るべきではないのでありまして、眞に労働組合運動が民主的に、且つ健全に動いて、生産発展労働力が十分に参加せらるべき形態が合理的に組立てられて行かなければならないのであります。具体的に然らばどういう産業組織が必要であるかというような問題になりますると、いろいろの問題において檢討しなければならない具体的事項が生れて参りますから、この問題は他日に讓りたいと思うのであります。そうして一に資本家においても、又労働組合側におきまてしも、生産発展と合理的な組織が要望されて來なければならないのでありまして、日本の再建に最もこれが要望されるのであります。つきましては政府として、労働組合運動が健全に発達いたしまして、産業の一翼を担つて貰わなければならなければならない、日本産業発展の重要なる土台としてその職責を全うせられることを心より希望し、労働運動を指導し、労働運動の在り方をこういう方向に決めて行きたいと考えておるのでありまして、近く労働省において、これらの問題について具体的な檢討をいたしまして、諸君にお諮りする時機が來るだろうと考えております。  第二の、三党協定等についてもイデオロギーに囚われないでやればよく分ると、こういうような御意見がありましたが、現在の実際上の政治に当りましては、数字の問題、政策の問題等についても具体的にこれを取上げて行かなければなりませんので、單に心持が一致したというようなわけで、政策を抽象的に纏めて行くというわけにも行きませんので、公債の利拂停止問題等につきましても、具体的にこれをおいおい檢討して行きたいと思います。大体御承知のこの三党協定と申しまするものは、九項目から成つておりまして、その條項は産業発展、現下の我が國に應じまする産業統制問題等についての條項が沢山その中に書かれておるのでありまして、やはり我が國のよう物資不足せる今日、敗戰に喘いでおりまする日本の産業を発展せしむるためには、或る程度の統制が必要であるということが、この日本に課せられたる大きな仕事になつておりまするので、その條項に基きましてこの三党協定の各項目が組まれたようなわけでありまして、これらの條項をそのまま今廃棄してしまうというようなことも論じられていないのでありまして、前にも申上げましたように、九項目の中の一項目の但書に関する問題だけが議論されておるような次第であります。これらの対策については先般お答えいたしました通り、具体的な処置はそれぞれの党、三党が寄りまして、更に定めたいと考えておる次第であります。  税制の問題について幾多の具体的な御意見がありました。いろいろこの点については政府でも考えておるのでありまして、現在の税制をどうしても変えなければならないという意味合で、税制の根本改革に着手して、本國会に税制の改革案を出したい、お諮りいたしたいということは、施政方針演説においても申上げておるのでありまするから、着々その改革案立案に進んでおるような次第であります。今お話のような事項も檢討の材料になつて参ります。大体においてこの未納、滯納が大変多い、取立て難いと、上から搾り上げるというような観念がまだ行き渡つておりますので、租税というものは、本当に國民が國家のために、國家財政を堅実に組み上げて行くために支拂つて行かなければならないものであるという意識に徹したいということは、姫井君の御議論に同感でありまして、何とかしてそういうような事項も檢討いたしたいと思つておるのであります。その意味において或る人は、國家建設税というようなものを國民全体が考えて貰わなければならないと、こういう意見を出す人もありまするし、まあいろいろの御意見が税制には出て來ると思います。或いは又大衆課税の意味を持たない意味においての消費税というものを拡張して行かなければならない。直接税一本槍で行くことは行詰つて來たのではないかと、こういうような議論もありまして、余程これらの問題については檢討を要すると思います。諸君の中からもいろいろと御議論を出して頂いて、より良き成案を得たいと思つて、目下この税制改革について十分努力いたしておるような次第であります。  最後の二十三年度予算をいつ出すか、こういうことを一言で言えというお話でありますが、今日の情勢では、一言で言うことはなかなかむずかしいのです。御承知のように占領下にありまする我が國の財政問題、税制問題、予算問題等につきましては、まあいろいろ苦心を要するところでありまして、大藏当局におきましても大いに努力しております。徹夜してやれということは御尤もであります。大いにやつておるのでありまするが、諸般の情勢がまだまだなかなか困難でありまするので、二月中に出し得るか、三月に掛かりますか、まあとにかく誠意を以てできるだけ早くお出しいたしたいと考えております。即ち政府考えておりまする政策を如何に実行するか、机上の空論に終らしめないで、如何に実行に移すかということは、姫井君のお示しの通り私も十分に考えておることでありまするから、懸命の努力を拂いまして、できるだけ早く提出いたしたいと、目下奮鬪中でありまするから、どうかその辺御了承を賜わりたいと存じます。以上を以てお答えといたします。(拍手
  28. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) これにて國務大臣演説に対する質疑の通告者は全部終了いたしました。次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十六分散会