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1948-01-26 第2回国会 参議院 本会議 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年一月二十六日(月曜日)    午前十時二十六分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第五号   昭和二十三年一月二十六日    午前十時開議  第一 國務大臣演説に関する件(第四日)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 諸般の報告は御異議がなければ朗読を省略いたします。      —————・—————
  3. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) これより本日の会議を開きます。日程第一、國務大臣演説に関する件(第四日)。一昨日の前之園君及び平岡君の質疑に対し、農林大臣より発言を求められました。この際許可いたします。波多野農林大臣。    〔國務大臣波多野鼎登壇拍手
  4. 波多野鼎

    國務大臣波多野鼎君) 前之園議員の御質問に対しまして御答弁を申上げます。増産による自給方策はどうであるかという御質問でございました。この我が國のような狭小な國土におきまして、八千万以上の人口を養うためには、相当量食糧輸入は到底これを避けることはできないと考えておりますが、併し我が國の工業発展を図るためには、できるだけ工業上の基礎物資輸入しなければなりません関係上、食糧輸入は成るべく少量に抑えたいと思いまして、つまり國内における食糧自給率はできるだけ高めたいと考えております。そこで今回政府におきましては、食糧一割増産運動を起すことに決定いたしまして、農家各戸に対しまして増産に努力して頂くと共に、政府としましては食糧増産に必要な資材配給について万遺憾なき対策を立てております。この運動の具体的な内容につきましては只今研究中でございますので、極く近い將來に発表いたしまして皆さんの御賛同を得たいと考えておる次第であります。  第二の点でありますが、農民の生産意欲充実供出制度報奨物資等に対する対策はどうであるかという御質問でございますが、供出意欲を充実するためには、先ず何を申しましても供出割当合理化ということが一番大事であろうと考えております。そこで農業調査を就任以來急いで進行させておりまして、近くその結果が出て來ると考えておりまして、この調査に基きまして供出割当徹底的な合理化を図りたいと考えております。  次に末端に対する……末端と申しますか、各戸農家に対する割当で民主的な方法で行われることを期待いたしますために、末端委員会活動について、もつと從來以上に民主的な活動方法を取つて頂くように指示いたしております。第二に事前の割当制度を確立したいと考えておりまして、これに必要な法律案を目下起草中でございますので、これも近く國会に提出して皆さん方の御審議を仰ぎたいと考えております。  第三に、報奨物資及び生産用資材配給を適正に行わなければならないということは申すまでもない点でございますが、この点は安定本部商工省大藏省とも密接な連絡を取つて行かなければ効果が挙りませんので、昨年十二月二十四日の閣議におきまして、この問題は内閣全体の責任としてやつて行かなければならんという趣旨で、閣内に「リンク物資対策本部」なるものを設けて頂きまして、経済安定本部総務長官がこの対策本部長として活動して下さることになりまして、その後この本部活動によりましてリンク物資の蒐集、配給等について万遺憾なき方策を実行中でございます。  右簡單でございましたが御答弁を申上げます。(拍手
  5. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) これより一昨日に引続き、國務大臣に対する質疑発言を許します。佐々木良作君。    〔佐々木良作登壇拍手
  6. 佐々木良作

    佐々木良作君 私は質問に入るに先立ちまして、この本会議において総理その他からの答弁が余りにも事務的に流れ、或いは現在の危機を切り抜けるに対して、どれ程の自信と力を持つておられるのか、ちよつとも我々に分らん。國民を代表して本当に心から力のある確信のある御答弁を御要求したいと思います。  現内閣連立内閣とは言いながら、社会党首班内閣であることは巖然とした事実であります。先の吉田内閣に対しまして、我が國の勤労階級大衆は、これをその団結の力において戰い、そうして社会主義的政策のみが我が國の経済危機を克服し得る、こういう社会党の党是を信頼し、又閣内闘爭を通じて社会主義的政策を強力に反映せしめる、こう言われた西尾長官の言を期待して、ここに一縷の、或いは多大の望みを嘱して現内閣に対する支持と激励を続けて参つて來ておるのであります。併しながら現内閣はこの八ケ月の施策の跡を辿つて見ますと、最近勤労大衆は急速にこの件内閣に対する失望を現わして、そうして不安なる状態を呈しつつあることは御承知通りであります。その理由は言うまでもなく、各方面から繰返して指摘されておりますように、昂進するインフレに対し、政府は効果的な果敢なる対策を行わないで、糊塗策に収支して、却つて業種別暫定賃金、いわゆる千八百円ベースを固執することにより、インフレに追從することの最も遅い賃金を押し付けて、賃金と物價のギャツプを拡大し続けて來たからであります。そして又國民大衆は今度の総理施政方針演説によつても、その演説の中から何ら新らしい積極的な方針を発見し得なかつたからであります。更にむしろ從來と同じ方針を確認し、その演説内容の実施不可能と、從つて現在の経済危機の克服の不可能を直感的に知つたからであります。政府が現政見を放棄するならば、保守反動内閣後継内閣を組織して、そうしてその途は勤労大衆に取つて更に悪い状態を招來するであろう。現内閣なればこそ、社会党首班片山内閣なればこそ、この程度の勤労大衆犠牲で済んでおるんだ、こういうふうなことを度々言われておつたのであります。併しながら現実に離反して行くところの勤労大衆の心を繋ぐのには、こういう言葉はもう何の役にも経たない状態になつております。勤労大衆は現内閣施策に愛想をつかすと同時に、今や最も恐るべき事態は、政治全般に対する不信と無関心をさえ表明しつつある事実であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)(拍手)私はこの事態に対して極めて大きな関心と最も日本民族的なる危機を直感する次第であります。この事態の恐るべきことは今更言うまでもありませんが、政治に対する民衆の不信、無関心こそ本当民主主義政治発達最大の障害であり、フアツシズム誕生基盤となるものである。これは民主主義者である片山首相十分に御存じの筈であります。各閣僚とも同感であろうと思う次第であります。然るにこの状態が今現に勤労大衆中心とする一般國民の中に蔓延しておるというこの事実、首相はこの状態を如何に見、如何にこれに対して本当政治を行おうとするか、私は衷心より総理民主主義者としての立場からの御回答をお願いしたいと考える次第であります。更にこれと関連して、首相繰返し繰返しガラス箱の中における政治ということを、民主政治の本道としてたびたび述べられております。然るにも拘わらす、そうして政府がこれまでたびたびどのように弁解しようとも、いわゆる林問題、それから平野問題、こういうものを繞つて政治に対する割り切れない疑惑は、國民大衆をして本当暗黒政治の影を敏感に感ぜしめつつある次第であります。(拍手)更に保守新党問題、芦田新党問題、内閣盥廻し説等の一連の動きは、この大衆と遊離した政治権力の在り方に、大衆をしてますます政治自分たちと縁の遠い絶縁物だと断定せしめつつある状況であります。先般社会党大会におきますところの決定的なる方向は、これらの事態に対処して、社会党本來の原則的立場帰つて勤労大衆基盤とする社会主義政党としての性格を強化してくれ、現内閣をその方向に推進せしめるようにと、こういう決意が明らかに大会の中に反映されておつたもんだ。私はこういうふうに解するものであります。然るにその大会直後の本議会におきまして、片山首相施政方針演説從來方針と殆んど変らない、むしろ基本的には全然同一でありまして、要するに我が國の経済復興をいわゆるチープ・レーバーの上に打ち建てることを意味するもんでありまして、今後ますます大衆窮乏化を促進し、民主主義政治に対する大衆不信を増大せしめ、而して政治的な、経済的な危機をますます深刻化することを現に言つておるわけであります。この基本的態度こそすでに現片山内閣が八ケ月の施策において実践して、そうして國民不信を、國民的な不信買つて來態度そのものであります。この態度に何の反省も質的な変革も私は窺うことができなかつたのであります。この政治権力がこの方針を以てこのまま推移する結果こそ、敗戰以上民族的悲劇である。私はかくのごとく考えておるわけであります。而して私はこのような観点から、先ず片山総理大臣並びに芦田総理に対しまして、現段階における政治責任を明らかにする意味において、次の質問を行いたいと考えるわけであります。  片山首相に対しまして、先程繰返し言いましたような、こういう不明朗な、そうして極めて面白くない政治情勢にあると言いましたのでありますが、このような政治情勢下におきまして、若し首相本当にあの演説の中に言われておるような強力な施策を行おう、こういうようにお考えになるならば、その前に先ず政府信任國民に質して見る氣持はありませんですか、その必要は認められませんか。國民は過去八ケ月の施策十分知つております。そうして國民的破局の影に怯えながら現内閣に対し、更に又國会に対してさえも大きな不安を持つておる。これを持つていないと断定して、その上に立つて施策を行うことができますか。私はこの際総理がこの信を國民に問うという態度に対してどのようなお考えを持つておられるか、御質問したいと思うわけであります。蛇足になりますが、丁度今日の毎日新聞にこの間の輿論の事情をうまく傳えておると思います。今日の毎日新聞輿論調査は第三回の輿論調査となつておるにも拘わらず、現内閣に対する支持は二三%で、不信任が七十数%になつております。第一回の時は信任がまだ六八%、第二回の時には五六%あつた。それが現在二三%になつておる事実、又もう一つの問に対して國民に信を問うたらどうか、総辞職を敢行して國民に信を問うたらどうかという答えに、信を問えと出て來ておるのが五五%以上もある。その間の事情も十分に御承知の上でお答えを願いたいと考える次第であります。  第二に、若しこのまま政治首相が担当されて行かれるつもりなら、首相は本議会において、郡司公債の利拂の停止はやらないということを言明された。又金融機関國家管理も時期尚早だとたびたび言われております。果してそのようならば、第一に社会党大会の決定を、いつ、いかなる恰好で閣議に持ち出して、実現を図られる御方針でおられるか。第二番目に、これと関連して、四党協定に伴う政治協定の破棄という問題と関連しまして、本当社会主義政策の強化を行おうとされるならば、いわゆる左派の人を入閣せしめて内閣を改造するというようなお考えが現在あるかどうか。後の二問に対しましては、民主党國協党與党態度遺憾に拘わらず、私は社会党党首としての総理大臣所信を承わりたいと考える次第であります。(拍手)  次に芦田外相に対しまして、繰返して言いますように、現在のような不明朗な政治情勢を背景として、私は敢て弱体内閣と言いますが、このような弱体内閣において、國民外交を提唱されておる外相は、言われるごとき講話会議に対して、民族的な全般の大きな準備が本当にできるとお考えになつておられるかどうか。講話会議を迎えるに当つて我々がなさねばならないところの問題は沢山あるわけであります。そうして國民外交を主張する外相は、この問題を本当にやらなければならんとくれぐれも申しておられるわけであります。こういうことが現在の政治情勢で、現在の内閣の力によつて本当にできるとお考えになつておられるかどうか。できないとお考えになつておられるならば、重大な問題であります。この点をお伺いしたい。  それから二番目には、いわゆる保守新党の問題と関連して、最近芦田新党の結成、内閣盥廻し説ということが、先程申上げましたように繰返し繰返しいろいろな方面から流布されております。そうしてこのような風説……或いは本当の説かも知れませんが、このような説は、ますます國民大衆政治から離れさせて行きつつある。そうして今申したように國民政治との分離をますます大きくし、政府國会に対する不信國民はこういう面からも更に更に大きくしつつあります。こういう状況について、この問題について、與党としての、民主党党首としての芦田外相所信を承わりたいと考える次第であります。  以上片山総理並びに芦田総理に対する問題は、私の基本的な質問でありまして、現在國民が現在の政治と現在の日本の状態考えて、本当に心から憂い、心から出しておるところの質問であると考える次第でありまして、本当に心からの國民に対するお答えを願いたいと私は切にお願いする次第であります。(拍手)  次に少し具体的な問題になるかと思いますが、この参議院という特殊な状況考えまして、極めて具体的な問題をその所管の大臣に対して二、三質問したいと考えます。  第一に労働問題に対して米窪労働大臣にお伺いしたいと考えます。米窪大臣に対する質問の第一は、労働省の運営の方針についてであります。言い換えますならば、労働行政方針についてであります。言うまでもなく労働省は、先だつて現下の経済再建途上における労働者決定的重要性考えての、この必要な労働力確保とその秩序付けということを任務として誕生したものであると私は考えております。そうして米窪大臣はその初代の労働大臣として、労働省の今申上げましたような労働力確保とその秩序付けという任務をどういうふうに具体化して行くか、今後の労働行政を、労働省方針を現在の段階において方向付けるという重大な任務を以て就任された筈であります。併しながら私が最も心配しておるものは、労働行政というものの中心労働組合運動の取締、労働組合運動の取締的な方向のみを持つて來て、そうして言い換えれば労働省労働者に対して從來の内務省化する。解体させられなければならないような状態なつた内務省化するということを、私は極度に恐れておるものであります。最近米窪労政労働組合健全化を焦る余り、このような誤謬に陥る虞れなしとしないと私はひそかに心配しておる次第であります。米窪大臣のこの問題に対する所信を、本質的なお考えを承わりたいと考える次第であります。  第二番目は労働組合法労働関係調整法に関する問題であります。新聞の報ずるところによりますと、政府は目下労働組合法並び労働関係調整法改訂を準備しておるという話であります。そうしてその内容は、從來労働者團結権、爭議権に重大なる変化をもたらそうとしておるもののごとくに傳えられております。果して新聞の報ずる通りとするならば、我々は本当に重大なる関心を示さざるを得ないのであります。我が國の民主革命の推進の一大勢力労働組合の健全な発展にあることは言うまでもないと考える次第であります。然る故にこそ社会党は、吉田内閣当時において労調法の制定に対して党を挙げて鬪つて來たわけであります。それが片山首班内閣においてこのような改訂が若し意図されるとするならば、これは私は、その当時とは情勢が違うというような、そういうような簡單な言葉では絶対に許すことができない問題であると考える次第であります。若し本当にこういうことをやらなければならんというならば、私は完全に社会党の看板を外して、それから後にやつて貰いたいと考える次第であります。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)(拍手)こういうようなことは社会党政治責任という問題だけでなくして、現実本当の問題としまして、今日の状態においてこのような改訂が若し行われるとするならば、我が國の労働組合をして青年期にたつせしめずして、本当発展を遂げる青年期に夭折せしめる。こういうことになつて、これを契機として反動勢力の台頭は火を見るよりも明らかである。社会党出身閣僚は、その点は十分に從來立場からして直感されておるというように私は考えておる次第であります。私は歴代内閣インフレ政策犠牲となつて、未だ本当労働組合としての発展を遂げず、徒らに賃金闘爭に追い廻されざるを得ないような状況に収支しておるところの全國の労働組合員諸君に対して、私はこの壇上より最大警告を発する。今やまさに労働組合は、從來任務をどのようにして達成して行くか、或いは崩壊するかというその岐路に立つておるということを、私はこの壇上より本当に全國の労働組合員に対して叫びたいのであります。(拍手諸君が、今申上げましたように反動勢力犠牲とは言いながら、インフレの過程においてこの本格的な闘爭にまだ目を向ける暇がない時に、諸君團結の力とその芽は今や摘まれようとしつつあるのであります。それは先だつて公務員法の成立の場合のあの状態を全國の労働組合員は想起するがよろしい。私はこの意味において労働組合法並び労調法の改正が今や政府において問題になろうとしておる報を新聞から得るについて、全國の労働組合に対してくれぐれも重ねて私は警告を発したいと考えておるのであります。(「命令だろう」と呼ぶ者あり)命令……そういうことがあなから言えますか。責任を以て言つて貰いたい。私は同時に、全國の労働組合員の名において、その名において、政府に対して今の両法の改訂の意図が現在あるかどうか。そうしてどのような除隊に現在進んでおるかということを明らかにして貰いたいと考える次第であります。  次に動力、燃料の問題に関しまして、商工大臣安本長官ちよつとお答えを願いたいと考える次第であります。動力、燃料問題は、当面の問題といたしましても、又長期対策といたしましても、或いは又社会問題としても、経済問題としても、現在の状況において最も中心的な重要な問題であることは言うまでもないところであります。私はこの問題に対して、現政府が採り、又採ろうとしておる政策に対して、あらゆる角度からの批判と質問を行いたいのでありますけれども、時間の関係もありますので、近く、恐らく、近い内に問題となるであろう二、三の点だけの質問を行いたいと考えます。  その第一は電氣事業の再編成に関する問題であります。現在の電氣事業経営者並びに從業員、この両方が、殆んど一致して事業の再編成方向をその社会化ということに結論付けております。更に今次の電産爭議の調定案においても、中労委は電氣事業安定のために、再編成の問題の解決を早急に且つ積極的に政府においても採り上げるべきだということを勧奨しております。更に社会党大会において基本産業國営社会化という方向を決定しておることは言うまでもないことであります。こういうような情勢において、商工大臣は急速に且つ積極的にこの問題を採り上げて解決する意図があるかどうか。そのお答えを願いたいと思う次第であります。  二番目に、少しく小さくなるかとも思いますが、電力料金の問題に関して伺いたい。鉄道運賃の値上、郵便料金改訂というようなことが問題になつておりますが、これと関連して、更に又電力供給秩序の維持という方策とも関連して、商工大臣及び和田安本長官電力料金改訂を現在考慮しておられるかどうか。考慮しておられるとすれば、その基準を何に求められるつもりか。現在の状況をお知らせ願いたいと考える次第であります。序でにこれと関連して、目下非常に不明朗な状態になつておるところの超過料金超過料金制度ですね。いわゆる罰金とか言われたりいろいろに言われておりますが、超過料金制度、これをどういうふうにお考えになるか。商工大臣からちよつと附加えて貰いたいと思います。三番目に和田安本長官に対して、動力と燃料の問題は本当に綜合的な立場からこの供給対策を樹立しなければならんということは当然であると考えますけれども、長期計画の樹立に当つて將來石炭電力との比重をどのように調整して行こうとお考えになつておるか。考え方針を承わりたいと考える次第であります。以上三点について商工大臣及び安本本部長官からそれぞれ所見を承わりたいと考えます。  三番目に要生活保護者引揚者復員者の救護に関しましてでありますが、この問題は繰返し各方面からその必要か強調され、失業対策と共に論ぜられておるのでありますけれども、殆んどはかばかしい成績を挙げておらない。そうして深刻な社会問題化しつつある事実は御承知通りであります。政府は現在の段階におきまして、生活保護法による生活保護基準額の引上、或いは引揚者に対する生業資金の引上、更にこれらを積極的に経済建設のプラスの面に動員する方途について、現在どのような施策をお考えになつておられるか。厚生大臣の御答弁をお願いしたいと考えます。  最後に栗栖大藏大臣に対しまして、藏相は事あるごとに通貨信用維持ということを建前として、金融通貨面からする強硬なインフレ対策の回避をたびたび言明しております。一方國民納税義務観念の徹底であるとか或いは徴税機構の拡充、税務職員待遇改善というようなことが説かれております。私は基本的な包括的な問題を眞正面から採り上げることを避けまして、むしろここに二三の具体的な実例を挙げて、藏相の積極的な技術的措置の限界と矛盾を指摘して、藏相のこれに対する所信をお伺いしたいと考えます。  第一に、大藏省は各税務署に対しまして徴税額割当行つて、丁度執達吏的な強硬徴税徴税官吏に指令しておられる事実がある。ところがこういう状態と同時に、一方におきまして、御存じだと思いますが、いわゆる味野事件というのがあつて、最近税務官吏十数人が数百名の暴民に袋叩きにされて重大なる暴行を受けたという事実があります。これは基本的には悪税制と現在のインフレ、この二つの責任をこれらの現場官吏がみずからの生命を挙げて負担しておることになつておるわけであります。こういうような状態税務機構の拡充とか職員の待遇改善がどのように行われておるか。又こういうような基本的態度徴税が予定通り行われ、インフレが克服され得ると本当にお考えになつておられるかどうかという点が第一であります。  第二に、先だつて新聞によりますと、東芝税金滞納のために差押え処分食つたということになつております。これを調べて見ますと、その場合の東芝滞納税額は二億五千万円であります。そうしてその中で一億二千万円は勤労所得税であります。御承知のように勤労所得税は、私共が金を受取る前にポケットからちやんと初めから差引かれておるものであります。これはすでに我々勤労者立場からするならば初めから差引かれておつて、初めからちやんと納税したことになつておる金であります。これは今の滞納額二億五千万円の中の半分一億二千万円であります。これを理由として差押えがなされておる。  そしてその差押えの結果、東芝從業員工場閉鎖賃金不拂の危險にさらされておるのであります。諸君、この事実をどういうようにお考えになるか。藏相は、この通貨金融面からのインフレ対策強硬措置は不可能である。或いはなすべきでない。むしろ生産を挙げるとこによつて生産面の増強からインフレを克服しなければならんということとたびたび言われております。一方において、今のようなこういう差押えから、当然こうば運轉に非常に大きな影響があることは事実であります。こういうような方法で以て生産本当に挙げてインフレを克服するというようなことができるかどうか。非常に問題は細かいようでありますけれども、基本的問題に触れておるのじやないかと思います。  第三に、國民大衆に対して納税運動を鼓吹されております。これも細かいようでありますが、同時に銀行には無記名預金制度があることは御承知通りであります。これは秘密の洩れない預金、こういうように銀行から宣傳しております。秘密の洩れないということは税金のかからない預金ということであります。一方において納税義務國民に対して徹底を図り、そうして大騒ぎをされる。一方において、ちやんと抜道のあるこういう無記名預金制度というものがある。仮に貯蓄奨励の意味があるにせよ、こういう制度がちやんと残されておる。これで正直な者以外に納税思想の徹底が可能であると考えられるかどうか。具体的な事例を挙げて、この三点について藏相所信を承わりたい。そうして同時に基本的なインフレに対するお考えをもう一度はつきりとお伺いしたいと考える次第であります。時間が丁度参りましたので、これで質問を終えますが、私は労働組合の出身の議員であります。同時にどの政党にも所属しておりません。そうして私は本当國民大衆の氣持をそのまま受継いで、その上に立つて質問をしたつもりであります。個人的な氣持でなしに、その上に立つて質問したつもりであります。どうかそれに対してお答えをお願いしたい。心からお願いする次第であります。(拍手)    〔國務大臣片山哲君登壇
  7. 片山哲

    國務大臣(片山哲君) 佐々木君の御質問は、大体において三つに分れておると思うであります。  第一は、祖國再建、経済復興について氣魄が足りない、如何なる根本対策を採つてこれを乘切ろうとするのであるか。こういう御趣旨であつたと思うのであります。御承知のように、世界を挙げまして今日國家再建に努力せられておるのであります。ヨーロツパの状態を見ましてもお分りの通り、なかなかむずかしい再建復興事業であります。非常な費用もかかることでありましようし、又短時日にその再建ができ上るとも考えられないのであります。戰爭の被害が余りにも大きく、予想外に深刻であり、且つ激甚であつたということを、現実に世界は今感じておることと思うのであります。我が國の状態におきましても、頗る難事であり、容易な仕事でないということを現実國民は見せ付けられておるのでありまするが、時局を担当いたしておりまする政府といたしましては、懸命の努力を拂い、全力を盡しまして、この難事を克服いたしまして突破しなければならないと考えまして、先ず第一にこの危機を突破する対策といたしまして突破対策を立てましたることは、すでに御承知通りであります。インフレを克服し、食糧難を十分に乘り越えまして、そうして國民生活の確保を図りつつ産業復興に進んで行かなければならない。こういうような意味で、第一段といたしまして危機突破対策、これが第一回國会政府の決意として現わしましたる事柄でありまして、第二回國会におきましては、その上に積極的な産業復興政策を立てて行かなければならない。國民に耐乏を求めるのみでは消極的でありますから、積極的に復興政策に乘出して行かなければならない。こういう意味を以ちまして、先般私は施政方針においていろいろ細目に亘りまして復興計画を諸君にお示しをいたしまして、御相談いたしておるような次第であります。ただ物を多く造ればいい。こういうふうな建前ではなしに、本当に我が國の経済状態の再建計画を図つて行かなければならない。労働生産性の向上を図つて行かなければならない。そうして労働大衆の協力を産業復興に求めて、國民的態勢において祖國再建に進んで行かなければならないという、この二つの建前、二つの筋を立てまして、その上に立つて再建に進んで行こうと努力たいしておるような次第であります。これは半年或いは八ケ月という期日では直ぐ成果が現われるというわけではないでしよう。非常な努力を要しなければならないと思いまするので、本当に虚心担懐な心持を以て祖國のために盡したい。できるだけ成果を挙げたい。國民の協力を心から求めて、そうしてこの我が國の荒廃せる状態を築きかえるようにして行きたいと精一ぱいの努力をいたしておるような次第であります。(「閣内で喧嘩するな」と呼ぶ者あり)  第二は、民主主義政治として輿論に問うために、政府の信を更に國民に票によつて問う手段に出たらどうか。こういうような御趣旨であつたと思うのであります。御承知通り民主主義政治議会政治に要約せらるると思うのであります。いろいろ國民の総意を政治の上に集めると申しましても、結局のところは、議会政治を以て民主主義政治の窮極の形と考えておるのであります。それはどこの國におきましてもやはりそういう形態を採られておるのでありまして、我が國における民主政治政治体系を整備いたしました結論といたしまして、議会政治を昂揚し、議会政治の信用を高めて、國民のいろいろの意見、國民のいろいろの要求、或いはデモ行進等がありましても、その叫び声を集約いたしまして、議会にどう現わして來るかということが結論となつて出て來なければ、纏まりは付かないと思います。その意味において現政府といたしましては、議会において多数の支持ある限りにおいては、國民支持あるものといたしまして、時局担当の決意を続けて行きたいと思つておるのであります。(拍手)  第三は、社会党大会で先般定めましたる決議事項をどしどしとやらなくてはならないじやないか。こういうような御意向であつたと了承いたします。社会党大会におきましては、党の建前によりまして、政治、経済、産業、労働、農村、各般の問題について大会の意思を表示いたしました。社会党單独内閣でありまするならば、大会の決定事項をそのまま政府政策といたしまして十分現わし政治運営の基礎政策といたさなければならないと考えまするが、御承知のように今日の状態はさようではないのであります。三党協定の下に、三党協力の下に時局を担当いたしておるのでありまするから、社会党政策を全部的にそのまま持つて参りまして、今日の政府政策として鵜呑みにする。そのまま持ち出すというわけには参らないのであります。三党が現下の情勢に最も適当した政策、現下の情勢を睨み合して祖國再建に必要なる、且つ又有力なる政策を採り上げて、これを実施いたしたいと考えておるのであります。私は社会党の委員長として責任の地位にありまするけれども、今日内閣首班といたしまして尚それ以上國家再建の重大なる責任あることを考えまするときには、三党協定の下に祖國のために必要なる政策を十分に採り上げて、その社会党政策の中からいろいろと考えて行かなければならないという重要なる役目を持つておりますることを是非とも御了承願いたいと思います。以上を以てお答えに代えたいと存じます。(拍手)    〔國務大臣芦田均君登壇
  8. 芦田均

    國務大臣芦田均君) 佐々木君の質問お答えいたします。  第一点は、現在のごとき弱体内閣を以て果して來るべき講話会議に臨み得るかというお尋ねであります。(「準備ができるか」と呼ぶ者あり)一体占領軍の治下において、或いは又講話会議に臨まんとする直前において、その國の政治の在り方がどういう姿であることを理想とするかという問題は、それぞれ人々によつて考え方は異ると思いますが、我々の属しておる民主党考えといたしましては、占領軍の治下にある政府の在り方は、できるならば挙國一致の態勢による政府であることを理想とするのである。その考えに基きまして、御承知通り昨年五月十九日に発表しましたる四党政策協定、この政策協定の背景を成す考え方は、現在の超非常時においては、各政党はその基本的イデオロギーを捨てて、差当りの危機突破に最も適切にして必要なる政策を協定し、これによつて政治の休戰を行い、國内一致の態勢の下にこの難局を乘り切ろうではないかということが、その根本的な考え方であつたことは、恐らく御承知通りと思います。然るに当時の情勢は、不幸にして日本自由党の協力を得られなかつた。それがために第二の案として、次善の案として、三派連立内閣が組織されたことは天下周知の事実であります。從つて佐々木君の言われるいわゆる弱体内閣とはどういうことを言うのか、強力内閣とは何を言うのか、一應の立憲政治の観点から申せば、國民の最も多くの支持を得ておる内閣が強力内閣であり、國民支持を得ること少い内閣弱体内閣であると私は考えておるのであります。(「その通り」、「異議なし」と呼ぶ者あり)果して然らば、佐々木君の理想のごとき強力内閣を作るということは、在野党たる日本自由党が現在の政府政策に同調して、これに協力をするということ以外に発見の途はないということになります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)ところが私が申すまでもなく、普通に運用されておる立憲的政府の形態は、政府党と野党の数の差引計算で行われる。現在の政府党は恐らく七十乃至八十の多数を衆議院において擁しておると思います。我々の観点から言えば、この差は決して満足すべき形ではないかも知れないが、立憲政治を運用するには、必要にして且つ十分な数であると信じております。(國民大衆はすでに離反しておる」と呼ぶ者あり)成る程質問者のお話のごとく、社会全体の空氣から言えばそういう傾向にあるということを、私は否定する材料は持つておりません。けれども國民輿論を知る材料は、如何なる具体的の数字を以て判断するか、私共の信念によれば、時々行われる参議院、衆議院の補欠選挙に現われたる投票の数、この数字は立憲思想の上から見ても、科学的な基礎から見ても、單に漠たる世間の風潮とか、或いは一二の人の見解よりも遙かに根拠のある数字であると信じております。(拍手)昨年以來行われましたる参議院議員補欠選挙の結果を御覧になれば分る通り、栃木、群馬、鹿兒島、滋賀、徳島の諸縣、本年初頭に行われたる長野縣の補欠選挙、これらの補欠選挙において野党が何回の勝利を占めたか、滋賀縣及び岩手縣においては日本自由党が補欠選挙に当選者を出しております。殘る府縣においては、挙げて政府與党たる我々民主党の候補者が当選して來ておるのであります。(拍手)(「その通り」と呼ぶ者あり)これらの事実は必ずしも世のいわゆる世論調査というものが、國民の投票の数と正確に符合しておるかどうか、この際十分に檢討の必要があると考えるのでありまして、そういう意味から申しましても、いわゆる弱体内閣と呼ばれる今日の片山内閣が、各地の補欠選挙において敗れてはいない、衆議院においては新潟縣の補欠選挙が行われました、自由党の代議十二名が失格した後の補欠選挙において、自由党の代議士一名、我が民主党の代議士一名が当選しております。これらの事実より考えて見るときに、今日の内閣を以てして、講話会議に対する準備をもなすことのできない弱体内閣であるとは、私は断じて考えておりません。(拍手)  第二の点は、世間には政見の盥廻しとやらいう風説がある。一体何という不都合な考え方を持つておるかという御意見のように拝聽したのであります。私共の党は、時局乘り切りに必要なる政策を協定して、社会党首班内閣に熱心なる支持を與えて参つたのであります。その協定したる政策の線に沿つて、(「実質は民主党だ」と呼ぶ者あり)その線に沿つて政策が行われる限り、実質が民主党であるという御意見は一應の理由があります。(「だから弱体なんだよ」と呼ぶ者あり)何となれば、我々の見解によれば、いわゆる急激な社会主義思想、共産党をも含めて(笑声)、かような政策は、今日の時局を突破するのに適切緊急なる政策であるとは考えておりません。又自由党が多年一枚看板として唱えて來ておられるいわゆる自由経済主義政策が、今日の日本経済の段階において適切なる危機突破の対策であるとも考えておりません。從つて政府は、帰するところ我我の主張する修正資本主義、社会連帯主義の政策によつて、今日の時局に善処する外に、行く道がなかつた。(拍手)(「選挙演説をするな」と呼ぶ者あり)そこで、盥廻しとは何を言うか、盥廻しとは恐らくは、片山総理が辞職をしたときには、民主党の総裁がその後継ぎになるということを意味されておるのだと思います。(「その通り」と呼ぶ者あり)ところが、言うまでもなく、現内閣が辞表を出した場合に、その後継者は誰が決めるか、國会がこれを選挙によつて決める。國会が選挙によつて決める問題を、閣僚の三人五人が集つて、首をすげ替えようなどということを謀議すべき問題でないのみならず、かくのごときことができる問題ではない。(拍手)後継首班は一に國会多数の意向によつて定められるものでありまして、我々の主張といたしましては今日かくのごときことを考慮する時期でないのみならず、又かくのごとき謀議を行うことが政治を不明朗なるものにならしめるものと確信いたしております。(拍手)  最後にもう一点、佐々木君は今日の政府の施政が明朗を欠く結果として、國民はますます政治に対して無関心となり、政府に対しては多大の失望を抱いておるというお話でありました。無論政府の一挙手一投足が國民政治思想に多大の影響を與えることは十分承知いたしております。併しながら今日のごとき激動せる社会事象の前に立つてこの難局に当る者は、とかく天下多数の不平の的となることは、勢い免れざるところであります。社会思想が激変し、経済的に社会が安定せざる際、逝去のみひとり安定すべしと求めることは、求める方において無理がある。政局の安定は社会思想と経済生活の安定の上に築かるべきものであると私は信じておる。(「それをやるのが政治じやないか」と呼ぶ者あり)例えばインフレーシヨンの克服を考えて見ましても、日本のインフレーシヨンの根本原因はどこにあるか。人口と物資の権衡が破れておるということにある。戰爭の結果人口は殖えたが、物資は激減しておる。このバランスが回復されない限り、我が國のインフレーシヨンは根本的に克服される余地はない。その事業たるや、半歳、八ケ月にして到底完成し得る仕事ではない。かなりの忍耐と努力と年月とを掛けて初めてインフレーシヨンは完全に克服し得られるのである。現内閣がその仕事を始めて六ケ月以上くれた。ところが初め多大の期待を以て迎えられたごとくすぐにインフレの病氣は治らなかつた。ここに國民の失望があることは我々もよく了解できます。併しその難局に処して、誠心誠意渾身の力を揮つて黙々として働こうというのが我々政府におる者の固き決意であります。(拍手)併しながらその政策國民多数の不満を買つて内閣國会において少数になつたという曉においては、我々潔く職を他の政治家に譲ることを躊躇するものではありません。けれども、差当つて今日只今天下の民心がしかく現内閣を離れたという事実を確実に掴むことができないのみならず、(「総選挙をやつて見れば分るよ」と呼ぶ者あり)この困難なる時局に処して、我々が誠心誠意その力を盡して難局打開の遂に進むならば、天下尚現内閣支持する有識の士は必ずしも少くないことを確信して、(拍手)(「よう言わんわ」と呼ぶ者あり)政府施策を熱心に遂行いたしておるわけであります。(拍手)    〔國務大臣米窪滿亮君登壇拍手
  9. 米窪滿亮

    國務大臣(米窪滿亮君) 私に対する御質問に対してお答えいたします。  第一の点は、今後における労働行政の基本的性格乃至動向についてのお尋ねであつたと思うのでございます。労働省が設置されましたときに、その設置法の第一條の労働省新設の目的としましては、労働者の福祉と職業の確保を図り、以て経済の興隆と國民生活の安定に寄與するということになつておるのでございます。私は就任以來、この労働省設置法の第一條の目的を実現するために努力をして参りました。又將來もこの動向に向つて自分の全力を捧げたいと考えておるのでございます。從つて佐々木さんが御指摘のようないわゆる内務省の……果して内務省がそうであつたかどうかは、これは批判の余地があると思いまするが、あなたのお言葉を借りて言えば、内務省の採られたような労働取締行政ということに、私は労働省方針がそういう方向に進むことを極力避けて参りたいと思います。今日日本の労働階級は、労働省に対して、労働者のためのサービス省でなければならないと考えておるようでございます。私自身も就任以來、労働省労働者のためのサービス省であるべき方向に行かなければならんと言つておるのであります。併しそれは階級至上主義の立場からそう申しておるのではないのであります。(拍手)今日の日本の経済状態からいつて労働者生産性が昂揚されざる限り、経済の興隆と國民生活の安定は期待できないからこそ、(拍手)我々は労働者のためにその裁定の生活を確保するための諸施策労働省において採りたい。こういう考えで申上げておるのでございます。從つて私が僅かなる過去四ケ月の施政におきましては甚だ不十分ではございましたでしようが、いわゆる生産復興運動のために労働者の奮起を促し、或いは昨年の國会を通過しました職業安定法、或いは失業保險法、失業手当法、こういつた労働法規を作つた精神もやはりここにあるのでございます。從つて私は御指摘のような労働組合健全化を図るために取締の方針にのみ堕せんとする考えは毛頭持つておりません。併し今日の日本の労働組合の現状を見ますると、率直に言つて健全なる労働組合運動が日本全國を蔽うて行われておるものとは私は思いません。(拍手從つて私は労働組合自身が相当反省をする必要があるだろうし、労働省も労働教育を通じて労働組合健全化を図るがために努力する方針を持つております。  第二は、労働組合法労調法の改正をするように坊間傳えられておるが、その点についての考えはどうかということでございます。労働者に対する團結権、交渉権、罷業権については、明らかに憲法第二十五條以下においてこの基本的人権が定められております。從つてこの基本的人権に重大なる影響を及ぼすような改正を私は目下考えておりません。この私の考えは、昨年議会を通過した國家公務員法の問題のときにおける私の態度によつてもお分りだろうと思います。私の過去は、團決権、罷業権を獲得するために三十年間鬪つて來たということをお考え合せ下さつても分ると思います。但し日本の現在の労働運動が終戰後急速に発達したために、又当時の情勢から、制定されました労働組合労調法のごとき関係法規が、完全に労働組合の自主性、民主性というものをはつきりと企画しておらない点が多分にあるものでございます。(「どこだ、どこだ」と呼ぶ者あり)從つて今日いわゆる幹部独裁等に対する考え方が明確に法規の中に載つておりません。又いわゆるアン・オーソライズド・ストライキ、即ち非公認爭議、即ち罷業権のない者が爭議をしてもそれが法規に抵触しないという工合に解釈され得る余地が今日の法規にあるのであります。從つてこういう法規をそのままにして置いて、本当に健全なる労働組合が日本に実現され得るか否かについては、大方の識者において相当の疑問があり得ると私は考えておるのであります。併しながらこの種の点について労働法規を改正するということのみを以て目的は完全に果されないのでございます。即ち労働組合自身の反省、檢討並びに労働教育等のそういう方法を通じて、健全なる労働組合運動というものは始めて実現され得るものと思うのでございまして、これらの点を考えまして、これらの関係法規の改正については目下愼重に考慮しておる次第でございまして、これについてするかしないかということの言明を、今日まだする時期に達しておらないということを申上げる次第でございます。(拍手)    〔國務大臣水谷長三郎君登壇拍手
  10. 水谷長三郎

    國務大臣(水谷長三郎君) 佐々木君の私に対する御質問お答えいたします。  第一点は、電氣事業の再編成を行う意思ありや否やという御質問でございます。申すまでもなく現在の電氣紙業の経営機構は、発送電部門につきましては日本発送電会社によりまして、更に又配電部門につきましては地区別の旧配電会社によつて経営されておりまして、いろいろの欠陥があることは私も十分に認めておる次第でございます。從いましてこれが改善につきましては、目下あらゆる角度から檢討中でございまするが、本問題につきましては影響するところが極めて廣く大きいので、各方面の意見を十分聽き善処したいと思つております。さしずめこの度の電産爭議に対しまする政府態度が決定することと思います。あの爭議の一番大きな眼目に電氣事業の一社化を中心にいたしました電氣事業の民主化の問題があるのでございまして、それに対する政府の回答といたしましては、その政府態度決定直後に、國会の代表、或いは電氣事業の資本家、経営者並びに労働組合の代表、学識経験者、更に又電氣の需要者の代表等を網羅いたしました極めて権威あるところの委員会を設置いたしまして、この問題をば十分檢討いたしまして政府は善処したい、このように考えております。  第二番目の御質問は電氣料金でございますが、この電氣料金は昨年七月改正されたものでございまするが、現在の電氣会社の経理状況は、收入におきまして未收納金の増加がある一方、支出におきましては火力発電用石炭消費量の増加、発電設備の緊急整備増強、人件費の増加等のため非常に苦しい内容を示しておることは私も認めるに吝かではございません。併しながら電氣料金の改訂につきましては、その影響するところが極めて廣汎であるのでございますが故に、政府といたしましては差当り改訂は考慮しておりませんが、物價体系の一般的な修正がある場合には改訂することを考慮したいと、このように考えております。  更に第三の御質問は、超過料金制というものを商工大臣は如何に認めるかという御質問でございますが、率直に申しまして極めて私は遺憾なる制度であると思つております。併しながら現在の乏しい電力事情の下におきまして、その電力をば有効に規正する一つの手段といたしまして、又止むを得ない問題であると考えておりますので、私自身の立場を率直に申上げますならば、この超過料金というものが鐚一文も古訓の懐ろから拂われずに電力が十分に規定されてこの乏しい電力が必要な方面に流れることを期待して止まない者でございます。(拍手)    〔國務大臣和田博雄君登壇拍手
  11. 和田博雄

    國務大臣(和田博雄君) 佐々木議員の私に対しまする御質問は、長期計画に於ける石炭と電力とのバランスの問題であつたろうと思います。御意見のように、日本の工業生産の振わない一番大きな原因は、日本の動力ベースであるところの石炭と電力というものが不足しているということでございます。そこで石炭につきましては、これは國管法の実施を俟ちまして、新鉱開発であるとか、或いはその他の設備の改善、又は労働者側の協力を得まして増産をやりますが、併しどう考えましても私の考えでは、これを五六年の内に戰爭中の、あの十五年十八年の五千五百万トンから五千七百万トンペースまで引上げるということは、なかなか困難であると思うのであります。私の考えでは、せいぜい行きまして四千五百万トンから六百万トンというところになろうかと思います。勿論この数字は檢討する余地があると思いますが、大体そういうことになろうと思います。そうしますと、大体工業エネルギーとしては、日本として良質炭、重油というようなものの輸入ということも勿論懇請しなければなりません。そういうこともやるつもりでおります。併しどうしても動力ベースとしては、むしろ電力ベースの方に傾斜が掛かつて來るではないかと思います。こう考え長期計画におけるそういう意味におきましての石炭と電力のバランスについては、石炭の將來の増産、それから輸入の見通し、又或いは千万トンも昔は輸入しましたが、それでも困難な事情考えまして、むしろ電力の方の側に傾斜が掛かつて來ると考えております。どの程度に掛かつて來るかということにつきましては、これは長期計画を御説明申上げます自由を得ました時には皆様に御説明を申上げますが、私の今の構想ではどうしても電力にバランスが掛かつて來る。そこで今までのように、冬期の渇水期における設備の増強であるとか、或いは今やつております緊急対策の外は、どうしても電力の開発計画というものを長期計画の中に取入れまして、それの実行をやつて行く、そういうふうに考えまして、只今関係方面と折衝をいたしておる次第でございます。    〔國務大臣一松定吉君登壇拍手
  12. 一松定吉

    國務大臣(一松定吉君) 佐々木議員の私に対しまする御質問の要生活保護者に関する給與の問題、並びに引揚者に関する更生資金の問題について、この金額を引上げる意思ありや否やという点の御質疑であつたように思います。生活保護法の規定は御承知のごとく、いわゆる國民の権利義務はすべて平等であるということを建前にして第一條に規定せられてありまして、特に或る人に対して優先的にこれを保護する、或いは特に或る人を優遇するとか、或いは低級にこれを待遇するというようなことでなく、國民すべて平等にこれを保護しなければならんという建前から、而してその保護の種類並びに方法等は、これは勅命によつて、即ち今日から言えば政令によつてこれを決めることができる。そういう建前から、厚生省におきまして基準的の給與の金額を決めてあることは御承知通りであります。而してこれが物價の変動によりまして、或いは増加し、或いは軽減するという建前になつておりまするが、今までの運営の実情を見ますると、すでに最初決めました基準額を超過いたしまして、今日では数回の増加を見ておりますることも御承知通りでありまして、五人の一世帯において千五百円というものを給與いたしておるのでありまするが、併しながらこれは物價がますます高くなりまして生活が困窮になれば、これは勿論増額ができるのであります。それは今定められておりまする基準というものは、ただ目安を決めただけでありまするから、この目安だけでは到底生活ができないという場合には、これを増加することは勿論のことであります。又各個人々々に対しましても、基準はこうなつておるけれども、この要保護者はかくかくの事情によつて、只今基準として決められた金額だけでは生活ができないという場合には、民生委員がその実情を明らかにして、これを当該官憲に申出て頂きますれば、その檢討の結果、その民生委員の具申が当然であるという場合においては、その者に限つてその者の生活を擁護するために金額を殖やすことのできることは、これは当然であります。ただ今すべての人々がそういうような運営の方法を十分熟知しておりませんがために、基準金額だけより以上の給與は貰えないものと考えておることは、これは間違いでありまするが、併しそれらの点に対しましては、民生委員をしてそれらの要保護者に対して徹底的に周知せしむるということが必要でありまして、それは民生委員の会合の席において厚生省から十分に指示いたし、又將來とも指示するつもりでありまするから、さよう御了承を賜わりたいのであります。  引揚者に対しまする更生資金の問題も、これ亦最初は御承知のごとく三千円を貸與いたしておりましたけれども、今日の物價高に僅か三千円くらいのことでは更生資金には充当するに不足でありまするから、これを五千円に引上げたのも御承知通りでありまするが、その五千円でさえも今日では到底自分らの更生資金としてこれを運用するについては余りに少な過ぎるということでありまするので、私は少くともこれを二倍くらいには引上げて差上げたいと考えておりまするが、これは我が國の財政と睨み合せまする一面には、関係方面のやはりそれだけの承認を得るということが必要でありますために、思うように参つておりません。併しながら私は五千円では到底それらの人々の事業の運営上支障を來すと考えておりまするから、できるならば少しでもこれを引上げて差上げたいというつもりで、少くとも七千円くらいにはこれをして上げたい。こういう考え関係方面と折衝しておりますが、まだ思うようにそこまで運んでおりませんけれども、大藏大臣の御盡力によりまして、復金方面で相当な金を融資するというような簡便な方法考えておりますから、そういうことに向つて私はできるだけの努力をして、それらの人々の更生の目的を達するように努力いたしたいと考えております。  序では申上げて置きますが、未復員者の給與の問題であります。いわゆる元の陸海軍人がまだ海外におりまする、それらの人々の家族であります。その家族の人々の生活が非常に困つているということは、これ亦顕著な事実でありまするから、これらの人に対しましては、前の國会において皆様方の御協賛を得ましたいわゆる未復員者の給與法の実施されておりまする今日、即ちその海外におるところのこれらの元の軍人諸君に対しては、    〔議長退席、副議長着席〕  一律に一ケ月百円の月給、家族に対しては一人に対して百五十円の補助、又これらの方の死沒に対して死体を引取るという場合における費用が三百円、葬式の費用が五百円ということになつておりまするが、これ亦只今のすべての物價高の今日におきましては、それらのことは到底賄うに足りませんからして、こういう点につきましても私は心配をいたしまして、現に大藏当局とも話をし、又関係方面との了解を得まして、それらの増額を実現いたしたいと、かように努力中であるということを御了承賜りたいのであります。(拍手)    〔國務大臣栗栖赳夫君登壇拍手
  13. 栗栖赳夫

    國務大臣(栗栖赳夫君) 佐々木議員のお尋ねに対しお答えをいたします。租税徴收に当つて割当制を採つてはおらんか。こういう第一のお尋ねであります。今回の所得税にしましても、予算申告制という民主的な制度を採用し、その普及活用についても努力いたしておるのでありまして、非民主的な割当制ということを採つてはおらんのであります。併しながら租税收入の確保が現下緊要なる現状に鑑みまして、收入の極く大体の目標を指導いたしまして税收の確保に努めておるのでありますが、この收入の極く大体の目標額は、税法の適正なる運用によつて上げられるべきことは勿論でありまして、一應の目標額に止まり、個々の納税者は、飽くまで税法の規定に從つて納税の義務を果して頂くことを求めておる次第であります。それで、若し超過の納税というようなことがありますならば、政府は速やかにお拂戻しをいたしたいと、こうも考えておる次第でありますし、又不足の納税の場合においては不足額の追及を速かにいたしておる。こういう現状である次第であります。  この問題に関連いたしまして、岡山縣の味野の問題をお示しになりましたので、この機会にちよつと申上げて見たいと思うのであります。昨年の暮でありますが、岡山縣玉野市の味野税務署員が暴民のために二名の警官と共に暴行を受けた問題であります。これは直ちにその報告を受けて、廣島の財務局長が上京いたし、つぶさに報告を受け、且つ又税務署員の報告をも直接受けましたので、直ちに閣議にこれを掛けまして、そうして租税完納が極めて大事であるという國民運動を展開しておる折柄、この原因、その経過、これに対する処断等をも速やかに明らかにする必要があるということを決め、政府は断乎とした処置を採るということにいたしまして、目下司法大臣を通じ、この事件の究明その他に当つておる次第でございます。  尚その次に極めて具体的なお尋ねがありました。東芝に関する巨額の滞納、その滞納税額を二月十五日までに徴收する。そのために工場閉鎖とか賃金不拂等のことが起るかどうかと、こういうようなお尋ねであつたと思うのであります。これは東芝の現下緊要産業として働いておるところを政府としては十分考え、尚この種のものにつきましては、緊要産業に從事しておる限りにおいて、又時局救済のため、インフレーシヨン克服のために働いておるというようなこの種の工場に対しましては、一方においては收入その他から税の完納は是非求めますが、他方において運轉資金その他の適当なる方法によつてこれを供給いたしまして、必要なる工場の継続と賃金の支拂というようなことを十分努めたいと思う次第であります。  尚その次に無名の定期預金の制度のお尋ねに触れられたと思うのでありますが、これは現下の問題として通貨の増発を防ぐという上、及びその收縮するということが、インフレーシヨン克服の上にも極めて大事でありまして、そういう面に租税收入の確保ということと、それから貯蓄の増強、こういうことが共に大事でありまして、この二つの線が触れますところがこのお尋ねの点であると思うのであります。政府は脱税その他を奨励するために無記名の定期預金制度などを創定いたしておりません。一面に貯蓄の増強をすると同時に、これに対しては源泉的に適法の課税をして行く、こういうことに努めておるのでありまして、若し租税徴收上特に具体的問題に当りまして必要がありまするならば、この無記名の定期預金その他についても、十分調べる途も立つておる次第でございます。そこで要は租税の收入を確保するという点と、他面においては貯蓄の増強という点、共に通貨の増発を防ぎ、これを收縮する作用であります。この両方面の作用を適当に調整して、どちらの目的をも達するように政府は指導しておる次第であります。  それから最後にインフレーシヨンを克服する基本的の問題についてのお尋ねがあつたのであります。これは総理及び先程も外務大臣からも言及されたと思うのでありますが、現下のインフレーシヨンを短い期間において克服するということはなかなか容易でないのであります。敗戰下、この終戰以來の進行したインフレーシヨンを克服するということについては、撓まざる相当の期間をかけての克服ということが必要であるのでありまして、それには一連の綜合的な政策が必要であることはいうまでもないのであります。大藏大臣といたしましては、一面において生産増強の面において、資金の供給、殊に又資材の不足或いはその他について、それを輸入するためにクレジツトの設定その他についても極力いたしておる次第でありまして、他方租税の完納、中央、地方の財政の健全化を、單に編成のみならず実行の上においても現わして行く。赤字金融を避ける、貯蓄の増強その他の一連の政策によつて通貨の増発を防ぎ更に收縮をさす、一方においては物の増産或いは輸入、こういうようなことをいたして、倦まず撓まず断乎としてこれを克服して行く、こういう考えでおる次第でございます。(拍手
  14. 松本治一郎

    ○副議長(松本治一郎君) 木村禧八郎君。    〔木村禧八郎君登壇拍手
  15. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 私は日本社会党参議院團を代表いたしまして、片山首相施策方針演説に対しまして、大別三つの質問をいたしたいのであります。  その第一は、日本経済危機の現段階がどういう段階にあるかという点と、その性質がどういうものであるかという点に関する質問であります。今後のあらゆる経済政策は現在の日本のこの経済危機がどういう段階にあるか、そうしてどういう性質のものであるかということに対する認識如何によつて分れて來ると思うのであります。從つて片山内閣がこの点についてどういう認識を持つておるかということを質すことは、過般の首相の施政方針が正しいものであるか否かということを判定するところの基本となると思うのであります。從つて先ず第一にこの点についてお伺いしたいのであります。ところが片山首相施政方針演説に示されたところの日本経済の危機に対する認識は極めて曖昧であり、又動揺的であり混迷さえもしておるように窺えるのであります。例えば「我が國現下の経済情勢を見るに、危機はまだ完全に去つたとは言えない」というふうに言われておるかと思うと、他面においては「復興が漸くその緒につき始めた」とも言つておられるのであります。我々の見るところによりますれば、日本経済危機はこれから本格的にやつて來るのである。経済危機は去つたとは言えないというような甘い認識を持つてこれを律することはできないと思うのであります。日本経済危機内容は、言うまでもなくインフレーシヨン、過小生産恐慌、この二つによつて形成されておると思うのであります。過小生産恐慌についてはこれから二三月における渇水期、それによる電力飢饉、それによつてむしろ生産危機はこれから來るのではないかと思うのであります。更にインフレーシヨン危機につきましては、今後追加予算がまだ相当に出て來ると思います。政府においては一應百十億の追加予算を第二國会に提出されるようでありますが、併しながら百十億の追加予算では到底足りないと思うのであります、この点については大藏大臣にもお伺いしたいのでありますが、相当の追加予算がまだ出て來る筈であると思います。而も一方徴税ということが十分にその目的が達成されないような状況にあり、又復金においては今後三百億の増資を予定し、本國会に又増資案を出されるようでありますが、この復金債券の消化につきましては、昨年四百九億の復金債券を発行しましたに対して、その中の七九・一%約八〇%は日銀引受けである。栗栖大藏大臣は機会あるごとに今後復興金融金庫債券は原則として市中消化によつてやると言われたが、実際においてその八〇%が昨年度において日本銀行引受になつておるのであります。今後復金が三百億の増資をする場合に、その復金債券の消化については、恐らく又昨年と同じような経過を迫るのではないかと思います。そうしますると通貨は相当に膨張して参る。通貨発行審議会においては本年三月末までの通貨発行高は、最高通貨発行額を大体二千七百億円に決めておるようであります。今後の通貨の膨張を予想する場合に、私は二千七百億円に恐らく止まらんのではないかと思うのであります。こういうように過小生産の面から行きましても、又インフレーシヨンの面から見ましても、危機はむしろこれからである。然るに拘わらずこの危機が克服されないで、どうして長期復興計画ができるでありましようか、先ずこの日本の経済危機がどういう段階にあるか、それに対する認識をはつきりしまして、その上に立つて政策を行うのでなければ、正しい政策は私は行われないと思うのであります。ところが先程述べましたように、この危機の認識におきまして極めて動揺的であり、而も昏迷さえもしておると思うのであります。何故私は日本のこの経済危機に対する認識が、施政方針に現われた認識が動揺的であつて昏迷しておるか、その原因を考えて見まするのに、これは社会党経済危機に対する認識と、民主党経済危機に對する認識とその対策とが、対立しておるのであります。そうしてその上に立つたところのこの連立内閣というものの性格が昏迷しておる。そのために経済危機に対する考え方も曖昧になつて來て、而もそれに対する対策も混乱を來しておると、そういうふうに私は考えておるのであります。(拍手社会党は、経済危機はこれからである。本当経済危機はこれから來るという認識に立つて、過般の第三回最高会議においてその具体策を決定したのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)併しながらその具体策は何ら片山首相施政方針演説の中には盛り込まれておらないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)(拍手)むしろ民主党政務調査会のいわゆる生産第一主義の案が、首相施政方針演説の冒頭に掲げられておるのであります。從つて首相施政方針演説は、大体民主党案を採用されて、そうして生産第一主義によつてこの危機を乘り切ろうと、そういうお考えであろうと思うのであります。從つて世間では過般の首相演説を評しまして、民主党首班内閣施政方針演説の感があるということを言われておるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)(拍手)我々社会党を以てしては実に遺憾に堪えないのであります。それで、この危機に対する基本的な考え方は今後のあらゆる政策の根本となるのでありますから、この点については曖昧模糊たることを許さないのであります。日本の経済危機はもう脱したのか。或いはこれから深刻化するのか。この点についてはつきりした認識を持たれなければ、今後の適切な政策は行えないのであります。(拍手)この点についてはつきりしたお考えを承りたいのであります。  更にこの危機の性質についてお伺いしたいのであります。それは昭和二十二年度、昨年度においても経済危機ということが言われました。昨年度の危機の性質はどういう性質であつたかと申しますれば、昨年の二月におきまして鉱工業生産指数は事変前に比べて二四・七%、三割台を割つた。從つて生産面から経済危機が來る。資材ストツクが枯渇して、そのために生産は痲痺状態に陥るのではないかというので、いわゆる三月危機が唱えられたのであります。然るに皮肉にも三月には危機が参りませんで、むしろ生産指数は三月には三〇%を超え、その後上下はありますが、生産は多少上昇の傾向を辿つておるのであります。併しながら昨年度において危機が來なかつたかと言えば、いわゆる企業の赤字という形において危機が來まして、企業経営が困難になつた。そこで昨年度においてこの紙業の赤字を克服するために、七月においていわゆる物價改訂行つて、そうして企業の赤字を消してやつたのであります。企業の危機というものは、そういう形において訪れましたが、物價改訂において能率賃金以上に公定價格を引上げまして、そうしてこの企業の危機を救つたのであります。ところがその半面において、例えば六月において能率賃金が事変前の五十倍であつた。ところが公定價格は六十五倍に引上げられた。その間十五倍余計引上げられた。そのために企業の赤字は消えたのであります。併しながらその半面において生活危機がここに訪れた。それが本年度まで持ち越されている。本年度、二十三年度の危機は今度は生活危機である。インフレーシヨンが今後ますます発展して行く場合、勤労大衆の生活はますます苦しくなる。從つて賃金値上が起る。そうなると又再びここに企業の赤字が來る。その企業の赤字を今度どういうふうに克服しようとしているのか。政府においてはこれを行政整理においてお手本を示して、民間においてこれに右へならえという形において、企業整備、人員整理によつて、いわゆる水膨れ雇傭を減らして首切りをやつて、そうして企業の採算の合うような状態にいわゆる能率賃金確保して行こう。そういう方向において企業の赤字を埋めよう。又更に公定價格の引上が予想されているようであります。そうなると又生活賃金犠牲になる。今後インフレーシヨンがますます昂進しますと、結局その危機というものは單に生産が少くなるという、そういうような平面的な問題でなく、生活賃金と能率賃金の他律という形において問題がますますむずかしくなつて來るのであります。この点について、能率賃金と生活賃金、この調整という問題について、政府は今後どういうふうに対処して行かれるのであるか。この点についてお伺いしたいのであります。以上の質問の第一点につきましては片山首相、和田経済安定本部長官、栗栖大藏大臣にお伺いいたします。  質問の第二点は経済危機対策及び復興再建対策の基本についてお伺いしたいのであります。現在の日本の経済危機段階、その性質に対する認識が曖昧であり、動揺的であり、昏迷しているために、その対策についても非常に曖昧であり、昏迷しており、動揺的なんであります。片山首相施政方針演説におきまして、この日本経済復興対策についての御意見を見ますると、こういうように言つておられるのであります。先ず生産第一主義の復興建設政策を示された後に、「大体以上のような生産増強、産業建設の計画により、政府インフレを抑止し、一段と再建を促進して行く方針で、かかる計画を実施して増産目標を達成するためには、インフレに対して確乎たる対策を講じなければならぬ」と言われているのであります。そこで問題となるのは、復興計画、増産によつてインフレを抑止するのであるか。或いはインフレ処理によつてインフレを收めることによつて増産目標を達成するのか。どちらであるのかという点であります。この点がはつきりしなければ増産対策も立ち得ないわけであります。私は増産対策も必要であり、インフレ対策も必要でありますが、その対策の順序としてはインフレ処理が先決問題であると確信するものであります。(拍手)曾て第一次大戰後のドイツのインフレ期におきまして、やはり経済復興のためには通貨の安定が先であるか。或いは通貨を安定さすべく生産その他の諸條件を整えることが先であるかについて論爭が起つたのであります。日本の現在と同じような論爭が起つた。その時のことを評しまして、ドイツ、インフレの研究家であるブレスチアニ・チユローニという人はこういうことを言つております。この数年間のドイツの危機で経済学者、政治家、大産業の代表者たちが長い間主張した考えが全く誤謬であることが明らかとなつた。即ち彼らは、マルクの安定なるものは経済状態の回復の結果である。それ故に経済的な條件が整わない中に貨幣改革について考慮しても無駄に決つていると言つていた。ドイツはこういう條件の到來を待つために数ケ年を無駄に費してしまつた。その間通貨不安からドイツ経済中に生じた不均衡はますます増大化して行つた。併し事実は通貨安定こそ経済的更生の必要條件であるということを主張する者が正しいということを明らかにした。(拍手)(「ハンガリーを見ろ」という呼ぶ者あり)それは事実であります。從つて私はインフレ処理が生産復興計画の前提條件であると思う。ところが首相施政方針演説に示されたところでは、どつちが先であるかはつきりしておらない。生産増強によつてインフレを処理するのか、インフレ処理によつて生産を増強するのか、この点が曖昧である。併しながら恐らくその重点は、民主党政務調査会の根本方針に基きまして、生産復興によつてインフレを処理して行くという方向に向いておるように見えるのであります。併しながらこれは反対であります。インフレ処理ができなくて、どうして生産増強ができましようか。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)(拍手從つてこの点につきまして、はつきりしたお考えを聽きたいのであります。ところがインフレ処理の問題につきましては、首相施政方針演説に示されたところでは、これまでの政策と何ら変らないのであります。勿論インフレ抑止の根本方針通貨の増発を抑止する点にあるということについては、異つた考は持つておりませんが、その方法として、財政面においては財源の確保金融面においては資金の蓄積、この二つが必要なのでありますが、これに対する確信ある政策が示されておらないのであります。私は財政方面においては財源を確保するということが、これが絶対的に必要條件でありますが、現在のように税務機構が殆んど破綻しておる状況において、外からいろいろこれを測定して財産とか所得を捕捉する方法があるかどうかです。これにはどうしても限界があるのであります。どうしても、財源を的確に捕捉できないとすればです。脱税が行われて、そうして健全財政は仮に言葉で言つても実際には行われない。私は施政方針演説に示された程度の政策ではインフレーシヨンはこれは防止できないと確信しております。又資金蓄積の面におきましても、如何に一片の声明で新円の再封鎖を行わないと、そういうことを言つても、資金は蓄積されるものではない。現にインフレーシヨンは進行して、一年の内に通貨の價値が三分の一にも下るような状態の下において貯蓄を奨励して見ても、資金は蓄積されないのであります。結局は通貨に対して物の裏附けをするということが貯蓄を殖やすゆえんであります。これが根本対策であります。そういうような考え方をこれからして行かなければならない。安定價値計算の問題、安定通貨の問題も皆そういう考え方でありますが、一体政府はそういうことに対して研究し、準備し、努力しておるのかどうか。このままの円の状態で、通貨状態で、持つて行けるのかどうか。そういう点についてしつかりした御意見を伺いたいのであります。ヨーロッパ敗戰國の例を見ましても、チエツコ、フインランド、ハンガリー、ギリシヤ、ソ連、皆それぞれ思い切つたところの通貨改革をやつておるのであります。日本の敗戰後の通貨政策につきましては非常に甘い。このような状態でこのインフレ危機を乘切れるとは、私は断じて思えないのであります。(拍手)要するに生産増強とインフレ処理、この二兎を追つたのでは一兎も得られないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)先ずインフレ処理という一兎を専念して追いまして、そうしてこのインフレ徹底的に退治して、然る後に生産復興ができるのでありまして、長期復興計画も、その前提としてインフレ処理をやらなければ、経済復興長期計画の実現も困難であるということを私は断言できると思うのであります。從つて今後政府インフレ処理に全力を集中して頂きたい。そうしなければ生産復興計画というものは單に政治的ジエスチユアに過ぎなくなつてしまう。(「そうだ」と呼ぶ者あり)そこで、私は非常に遺憾に思いますのは、インフレ処理に当つては、あらゆる財源を確保して、そうして不換紙幣の膨張を防がなければならないのであります。その一つの政策として、過般の社会党最高会議において公債利子の停止の問題が決定されたのであります。ところが公債利拂の問題につきましては世上いろいろ論議がありましたが、第一にその金額が少いということで反対をする向があるのであります。併し決して郡司公債利拂の停止によつて浮くところの金額三十五億は少いのではないのであります。例えば昨年度の第四・四半期までに業種所得の租税、これは納めたのが予算に対して一七%であります。ところが勤労所得税その他は一〇〇%を超えておる。軍事公債の利拂停止三十五億は、若し業種所得のような形でこれを取る場合には、その歩留一七%としましたならば、これまでの税の取り方では、二百億と同じ内容を持つものであります。八三%も滞納を止めたならば……。ところが軍事公債の利拂は滞納はないのであります。滞納なしのネツトの財源である。こういういい財源があるのであります。更に又これは使いようによつては非常に大きくこれは効果を挙げるのです。千三百億の租税を取るのに、その第一線に活動している税務官吏の待遇が悪い。この税務官吏の待遇を改善する。又徴税費が少い。こういう方面に振り向けることによつて、千三百億の財源が確保できる。徴税ができるということになれば、この三十五億というものは決して少いのではないのであります。又政府はこれまで大衆課税、間接税、そういうものは少くてもどしどし取る。ところが公債利拂停止の問題になると、金額が少いといつてこれに反対するわけです。又その一般的影響につきましては、或いは政府政策に対する國民の信頼感に及ぼす影響、貯蓄運動通貨信任に及ぼす影響、將來の國債消化に及ぼす影響、金融機関の再建整備、延いて産業の復興に及ぼす影響等挙げられておりますが、これらは逆であつて、軍事公債利拂停止のような、そういう根本的又革新的な政策を行うことによつてインフレーションは処理され、それによつて通貨の信頼は回復するのであります。こういう点についてお伺いしたいのであります。特に片山首相におきましては、公債利拂の問題につきまして、第一日に社会党の最高会議においては、公債利拂については積極的な意見の決議がないという御答弁をされておりますが、併しながら社会党大会においては議案としてこれを決定しておるのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)從つて先の御答弁社会党最高会議の決定事項を正しく議場にお傳えしていないのであります。この点につきましては、私は御訂正願いたいと思うのであります。(拍手)  尚波多野農相に対しまして、この利拂停止問題に関連してお伺いしたいのですが、波多野農相は第一回國会の時に、この公債の利拂は打切るか、或いは打切ることができないならば、その利子を低減すべきであるということを仰せられた。國務大臣になられて、閣議においてこの問題につきまして、どういうふうに御主張されますか、この点についてお伺いしたいのであります。時間がありませんので、簡單にあとの第三の質問をいたしたいのであります。只今の質問に対しましては、総理大臣安本長官、大藏対人、波多野農相等の御答弁を煩わしたいと思います。  最後に私は官紀の粛正、特に経済官廳の官紀粛正について御質問したいのであります。曾て私が昭和十七年頃華中に参りまして、当時インフレがひどくなつておりまして、当時の南京政府は経済統制を強化したのでありますが、当時の中國の新聞は、これをこういうふうに批評しておつたのであります。統制々々、そは貧官汚吏に対して蓄財の大道を拓くものである。そういう批評をしておつたのであります。私は日本の経済関係官廳におきまして、この中國の新聞が批評しました、統制統制、そは貧官汚吏に対して蓄財の大道を拓くものであるという、そういう批評が当る官吏があるやにしばしば聞くのであります。(「大いに当るよ」と呼ぶ者あり)特に経済官廳である商工省、又物價局或いは貿易廳等々につきまして、我々は相当具体的なことを聞いておるのであります。例えば公定價格の引上げを行う場合に、業者の了解によつて必要以上に公定價格を上げるというようなこと、又進駐軍関係の工事についての許可、認可が必要以上に遅れる。又その許可、認可の取消その他経済官廳の官吏の腐敗堕落というものを我々は(「極度に達している」と呼ぶ者あり)業者において、あらゆる機会に聞くのであります。こういうことをやつてつたのでは統制は逆にインフレを激化し、生産を妨げるものである。(「その通り」と呼ぶ者あり)そうして貧官汚吏に対して蓄財の大道を拓く、この点について私は関係経済大臣に対して、そういう事実があるかないか、若しかある場合にはどういう処置を取られるのであるか、しつかりした御答弁を煩わしたいのであります。(「大臣も困つておる」と呼ぶ者あり)まだ私は予算編成方針或いは物價賃金問題等々についてお尋ねしたいのでありますが、時間が参りましたのでそれらの点につきましては委員会において御質問いたすことにいたしまして、以上を以て私の質疑を終りたいのであります。(拍手)    〔國務大臣片山哲君登壇
  16. 片山哲

    國務大臣(片山哲君) 私は現在の経済危機は去つたというような樂観的な考えを持つておる者ではありません。経済危機は尚進行を続け、且つ深刻にそれが國民全体の上に非常に重圧を加えておるということを十分に考えておるのであります。これに対する対策は、どうしても防止対策を巖重に立てまして、その抑圧を図つて行かなければならないということにつきましては、組閣以來緊急経済突破対策を立てました中心が、インフレ防止策にすべてを置いておるということによつても、十分に御了承願えると思うのであります。今回の増産対策もこの経済危機突破対策を並べて行なつておるわけでありまして、緊急突破対策はもうそれが仕事は終つてしまつた。それは止めてしまつて、今後別に増産対策を立てる、こういうことであるならば、木村君の攻撃は或いは当るかも知れませんが、そういうようなやり方をしておるのでは決してないのであります。尚十分組閣後続けて参りましたるインフレ防止対策を強化して、これに対して力を集中して行かなければならない。更にそれに加うるに増産対策を立てて昭和二十三年度の新目標として進んで行きたい。両々相俟つて現下の危機を克服するように努力したい、かように考えておる次第であります。このインフレ防止につきましては、どうしてもやらなければならない仕事ありますから、これはできないと言つて捨てるわけには行きません。あらゆる面から防止対策を立てなければなりません。木村君の御指摘になりましたように、通貨の面から申しましても、或いは全般的な防止対策の面から申しましても、どうしてもこれに対しては強い対策を立てて行かなければならないのでありまして、必ずこれは克服しなければならない責任を持つのである。祖國再建のためにはどうしてもこれはやり通す、こういう固い決意を持つて今日進んでおるのでありまして、諦めておるとか、これを第二に置いておるというような考えは毫もないということを御了承願いたいのであります。つきましてはこの通貨面において如何なる防止対策を取つておるかは大藏当局によつて、又安定本部長官からこの点についての御説明をいたすことにいたします。  第二の公債利拂停止の問題でありますが、第一日目に私がお答えいたしました点に錯誤があるから取消したらどうか、こういうようなお話であります。これは私の承知いたしておるところでは、金融通貨対策でしたか、その委員会において、この問題については利拂停止をするという決議はしていないと聞いておりますし、(「しております」と呼ぶ者あり)又それぞれの担当関係者からさように承わつたものでありますから、先般お答えいたしましたように答弁いたしたのであります。併しこれは社会党の内部の問題でありますから、その問題の取扱は恐らく新中央執行委員会等の役員会において明白にせられると思いますから、その明白にせられました結果に從いまして、改めて考慮することにしたいと思つておる次第であります。    〔國務大臣和田博雄君登壇
  17. 和田博雄

    國務大臣(和田博雄君) 木村さんの御質問の第一点は、現在の経済危機に対する認識の問題であつたと思うのであります。それが経済危機が去つたかどうか、又その実態がどうか、こういうお話であつたと思うのでありますが、経済危機が私共は去つたとは思っておりません。ただ併し現実経済危機内容が去年巷間に傳えられました三月危機内容とは余程変つておるということは、木村さんの御意見と私も同様であります。去年の三月においては、日本が今まで持つてつた企業面においてのそれぞれのストツクが、計画的な統制経済をやらずして自由に或る程度委されておつた結果、急速に枯渇して行つた。それは生産面においては一つの、その前年度と比べて増産という形、何%かの増産という形で出てきたが、併し各企業の部面、産業部門の間に細かく見るならば、そこに非常にアンバランスがあつたという形において、日本の私設が傷められている上に、尚且つ原材料の手持が経つて來る、言い換えると経済産業の構造の面において、極めて憂慮すべき状態がそこに出て來るというので、恐らく経済危機ということを述べた人はそういう観点から述べたのであろうと思うのであります。現在における経済危機というものは、根本においてはお話のように過小生産であり、一面それを引つくり返えせば過剰な消費でありますが、併しその通貨増発の大部分が財政資金の放出、言い換えれば政府の資金が出ているというものが非常に多くの部分を占めておる、言い換えると財政面における面からのインフレーシヨンの影響が極めて強く出ているという点において、現在の経済危機というものはそう生易しいものでないということは私共も考えているのであります。從いまして総理演説において、順序として生産の増強、言い換えると産業復興計画における第一年度としての生産増強とインフレーシヨンとの間の関係が、極めて明確でないというお話であつたのでありますが、我々としましては、経済の実態である一つの物の面と貨幣面とを、これは少しく私が誤解であれば取消しますが、この二つを明確に切り離して考えていないのであります。今の経済は貨幣経済でありまして、そこにどんなに計画的な又統制が行われておりましても、すべての事柄は貨幣を通じて、言い換えれば一つの價値計算によつて行われて來るのでありますが、併しその二つの面は相互に結び付いておるのであつて、一つの物と一つの物とを別々に切り離して、機械的に我々は考えていないのであります。(拍手)從いまして生産の復興、長期復興計画を実行しまする上におきましては、勿論それに対してインフレーシヨンを克服して行くということは、その前提として我々としては強く考えているのであります。(拍手)併しインフレーシヨンを窮極において克服するためには、やはりそこに日本の産業構造として、生産面において物的な面において需給の均衡が取れて行くというその事柄がない限りは、通貨面だけに如何に力を注いでも、結局は國民の生活というものも安定もしなければ、(拍手)生活の向上もないということを我々は確信いたしておるのであります。私はイギリスのD・H・ロバートソン、あの有名な貨幣論の最後において、貨幣の問題は如何に重要に見えても、それだけでは結局問題の重心に触れたものでなくして、その背後に潜んだその國民の性格とか、或いはその産業の構造であるとか、その背後に潜んだものにこそ本当の問題があるところであり、そこに問題解決の鍵があるということを、最後の結びで言つてつたように思うのでありまして、私はやはり日本のインフレーシヨン問題を考えまする場合においても、その立場を堅持いたして行きたいと、かように考え政策を立てておる次第でありまして、さように御了承をお願いいたしたいのであります。インフレーシヨンに対しまする各種の政策、大藏大臣に対する御質問につきましては大藏大臣から御答弁あると思います。(拍手
  18. 栗栖赳夫

    國務大臣(栗栖赳夫君) 木村議員のお尋ね中、大藏大臣関係するところを簡單お答えしたいと思うのであります。  先ず第一は、本年度の追加予算について金額を傳えるところを示してお話があり、尚これ以上追加予算が相続くのじやないか、こういうお話があつたのであります。追加予算については極力編成を急いでおるのでありまして、必要止むを得ないこの二・八ケ月の残存の問題とか、或いはこの法務廳その他の問題、緊急止むを得ないものを只今編成をいたしまして、そうしてその筋とも交渉いたしておるのでありますが、金額は未だ決まつておらんのであります。併しなるべく少く、そうしてこれについても均衡を得さすということに極力努力をいたしておるのでありまして、大体三月までの收入の大体の見通し、財源の見通し及び支出の見通しとを立てて、そうして均衡を得さしたものにいたしたいと思うのであります。  それから復興債の消化についてのお話があつたのでありますが、復金債の消化につきましては実はこの貯蓄運動によりまする預金の純増の中、財政資金と産業資金に分けまして、その一部をこれに振り当てておるのでありまして、そういたしまして國債と復金債というものは、これはこの自由預金その他の預金の増で賄うという方針を立てて極力斡旋その他をしておるのであります。國債については昨年の九月から大体そういう面で市場で消化するという方針で大体貫いておるのであります。復金債につきましては、これはその方針その他を立てるのに相当の時間が経つたのでありまして、実は実際の働きは十二月から働いておるのであります。昨年の一月以來のものは大部分において日銀消化、日銀引受、こういうことになつてつたのでありますが、昨年の十二月から市中の斡旋その他によつて大体軌道へ乘つてつたのであります。そういたしましてこの二十三回と申しますが、三十億を出しておりますが、これは十二月の二回目の発行でありますが、全額市場消化をいたしておるのでありまして、昨年十二月はそれで二回の発行で六四%の市場消化になつておるのであります。一月につきましては二回、五十億を出しておるのでありまして、これについては市場消化が二八%三になつておるのであります。これは実は農業会方面等に集まる資金がこの米の供出の代金として立替えられておりますので、その代金を政府が処理して支拂うようになれば、直ちにこの復金債の方を更に引受けるということに相成つておるのであります。かようにこの消化の方法が相当この手続その他で遅れて参りましたけれども、これが今後の見通しであります。今後復興金融金庫に相当の金融資金の供給がウエートを置くということは間違ないことでありますので、政府といたしましては、その中においても市場の、或いは市中、或いは地方の金融機関において賄い得るものは極力その方面で賄うことにしまして、復金に過度に重点がかかることを避けたいと一つは思うのであります。尚復金の保証による貸出であります。これを今少し更に勧誘斡旋いたしまして、各種の金融機関によつてこの資金は賄わす。こういうことにしまして、復金債の発行の金額を圧縮いたしたいと考えております。それからその他に市場消化の途を拡大して参るということ、それから一面においては政府の出資、これを丁度予算には尚百億残つておりますので、これをも必要に應じては活用いたしたいと思うのであります。復金債が発行余力が少うなりますので、いずれ國会で各位の御審議を経て拡大いたしたいと思いますけれども、お尋ねは三百億とかいうお話がありましたけれども、これも今申上げましたような諸般の事情によつて極力圧縮して、少い金額にいたしたいと考えております。それからこのインフレーシヨンと生産対策とのお話がありましたのでありますが、これは総理及び安本長官からすでに説明済みでありますから、詳しいことについては私は避けたいと思うのであります。ただ安本長官よりも話のありましたように、インフレ生産という対策を全然切り離して考えるということは、これは前の欧州大戰後のドイツにおいてもいたさなかつたところでありまして、(拍手)これは、その点は十分相関連するところを考え、そうして而もけじめを立てるところは立てて十分やつて行きたいと思つておる次第であります。殊に財政金融面においては十分努力をいたしたいと思う次第であります。それからこの資金確保の問題として通貨安定のお話がございました。これは最も大事なところでございまして、お話のように、政府としても綜合的に、全般的に通貨の安定ということには極力施策を展開しておる次第であります。ただその時、この通貨安定につきまして、安定價値計算のお話があり、政府はどうしているかというお話があつたのであります。これについてお答えをいたしたいと思います。この通貨安定については、諸般の政策を綜合的に展開する必要があるのであります。この安定價値計算につきましては、一つの議論といたしまして政府として調査研究をいたしておる。こういうことを申上げたいと思うのであります。それから財源確保の問題について、公債利拂停止のお話がありました。これは昨日もここで説明をいたした通りに、実は公債利拂を停止することによつて財源として十分期待ができるかどうかという問題であります。私は、例えば金額は少いから確保しない。そういうことをしないというようなことは、この際は言うべきでなしに、あらゆる財源を捉えて、そうして財政を立てて行くということが必要であることは申すまでもないことでありますが、これは前内閣の時に補償打切によるこの一連の処理が行われたのであります。この公債の大部分は金融機関或いは預金部、それから簡易保險局というような大衆預金の集積によつて大部分が運営されておるのでありまして、これは金融機関の再建整備というものによりまして、この公債と、それからそれと見合いますところの金融機関の預貯金が一万五千円以下というような一連の手続によりまして、新勘定へ移つておるのであります。新勘定へ負債の方に、そうして預金が對鎖預金として移つておる。而して多面においてこの公債が試算の方へ移つておるわけであります。そうしてその預金の方というものは、その後對鎖預金の拂い出し前後において、又新らしい封鎖預金がそこへ入つて、見合いをいたしておるような次第であります。そこで公債の利拂を停止するという面において、この面を押しますと、一面においてはそういう預金その他の利拂をいかにするか。こういう問題があるのでありまして、この面を両方見合い、更に一連のこの影響するところを考えますというと、この公債利拂の停止によつての金額が、財政上制約し得る金額が、三十五億というような大きな金額に相成らんのであります。その点を財政的に考えますというと、大きな財源として期待ができないと、こういうことであります。のみならず金融財政の一般の面への影響ということを考えて、どういうようにこれを処理して行くかという、こういうことの問題になりますというと、政府としては、この際こういうものを考慮しないと、こういうことに決めておるような次第であります。(拍手)    〔國務大臣波多野鼎登壇
  19. 波多野鼎

    國務大臣波多野鼎君) 木村君の御質問に対してお答えいたします。戰時公債の問題、これは御承知のように、戰時補償の打切の問題と同時に処理せらるべき問題であつたと存じます。それが処理されないままに今日残つてつております。私の考えといたしましては、第一回國会のこの壇上で申述べましたように、我々が平和的な民主國家として再出発しておる今日におきまして、あの戰爭が生んだ鬼子であるところの戰時公債について何らの措置も講じないということは、好ましくないと私は考えております。(「その通り」と呼ぶ者あり)今日においても同様に考えております。それで金融界に悪影響を及ぼさない範囲内におきまして、又通貨の信用を害しない範囲内におきまして、この戰時公債の利子をどのように取扱うか。又取扱うことができるかということを私は眞劍に研究しておるのでありまして、この考えに基いて、常に発言し主張することは申上げるまでもございません。以上お答えいたします。(拍手)    〔國務大臣水谷長三郎君登壇
  20. 水谷長三郎

    國務大臣(水谷長三郎君) 只今木村さんから経済官廳の官紀の粛正の御質問があつて、特に商工大臣として答弁しろという御注文で、何だか商工大臣としては、くすぐつたい氣がするのでありますが、官紀の粛正につきましては、何と申しましても商工行政がああいうような性質でございますので、十分に平素より注意をいたしまして、事務処理の迅速公正を期しておるような次第でございます。御承知通り昨年九月以降は商工省行政監察委員会が成立したのでございまして、これと絶えず緊密なる連絡を取つて、事務能率の増進を図りまして、又不詳事件の防止に遺憾なきを期しておる次第でございまする。只今商工省に何か問題があるかないかという御質問でございまするが、私の知る限りにおきましては、最近問題になりましたいわゆる田中邸における、時に商工省の役人が数名参加しておつたという程度は知つておりまするが、それ以上の事実を私は知つておりません。ただ木村さんがこの本会議におきまして御質問される限りにおきましては、何か動かすことができない事実でもお持ちであるかと思われますが、若しその事実がございまして、この國会において責任を持つてその事実をば御指摘願いますならば、商工大臣としては断乎として粛正に当る決意でございます。
  21. 松本治一郎

    ○副議長(松本治一郎君) 山下義信君。    〔山下義信君登壇拍手
  22. 山下義信

    ○山下義信君 私の質問は行政整理に関してでございますが、すでにこの問題につきましては一二お触れになりました方がございました。然るに政府答弁を承わつておりますと、総理大臣の御演説と同じように、依然として不得要領でございます。從いまして私は行政整理の問題に限りまして、具体的にお尋ねいたして見たいと思います。  不明瞭な点と申しますのは、この行政整理は何の目的であるのかというその目的であります。又どういうふうにやろうとするのか、その方策であります。又いつやるのかというその実行の時期であります。今回政府の御発表になりましたる施政の方針、数項目にお分けになつておりまするが、その中で私は最も重大なる政策は、実にこの行政整理の問題であると考えております。経済政策につきましては、これは非常に複雑でございまして、且つ又現象が常に変化いたしますから、これを論ずるということになりますると、浜の眞砂と同じように種は盡きません。この内閣の経済政策がどうであるか、良いか悪いかは別といたしまして、少くともこの内閣の経済政策が具体的に現われるのは、実にこの行政整理にあると私は考えております。(拍手)從いまして今後の政治上の重大問題は、実に行政整理にあるということを國民はここに認識しなければならんと考えております。その重大なる行政整理の問題につきまして、如何に現内閣が浮足立つて、氣もそぞろにおいでになるとは言いながら、その重大なる点についてかくの如き不得要領であるというに至りましては、余りに粗雑であると言わなければなりません。衆議院ならともかくも、この参議院をそのような程度でお通りになろうとはお考えが少し甘過ぎると考えます。(拍手)つきましては私はその重大なる点につきまして、別の観点から具体的に数点について伺いまするから、できるだけ具体的に御答弁を願いたいと存じます。  第一点は人員整理の問題でございます。現内閣総理は、この人員整理につきまして首切り整理をなさいますかどうかという点をはつきり御答弁を願いたい。総理は第一回國会におきまして我々が質問をいたしました時に、行政整理に関して人員整理をする時には首切り整理をやらないとおつしやいました。失業者は出さないとおつしやいました。配置轉換をやるのだと御答弁になりました。これは速記録に明らかに残つております。私は首切の整理をやるならば、早くその方針を示すがよい、苟くも人の一生涯の運命に関すること、親切があれば早くその方針を示すがよかろうと思上げましたところが、いや失業者は出さないのである。配置轉換でやるのだとおつしやいましたが、一般財政の方針の上には明らかに失業者を出す、人員整理をやるとおつしやつておいでになります。又下院の設問應答におきまして、総理は、行政調査の審議会の審議を待つ前に首切り整理をやるかも分らんとおつしやつておられます。そこでこの人員整理というのは、首切り整理をなさいますかどうであるかということをお尋ねいたしたい。と申しますることは、只今傳えられておりまする行政調査部の人員というものは二割天引、或いは民主党が主張いたしております二割五分の天引、これを果しておやりになるかどうかという点を具体的に御答弁を願いたいのであります。いや二割五分の天引、二割五分の天引をおやりになるかじやありません。それを特別会計にも一律平等になさいますかどうかという点を伺いたいと思うのでございまする。若しもそれが一般会計だけになさるということでございますれば、これは首切り整理ではございません。すでに世間が指摘しておりまする通りに、それは單に予算面の御整理に過ぎません。御承知のごとく一般会計におきまして四十二万の職員がおります。この中にすでに空定員になつておりますものが七万六千おります。仮に民主党が主張しますように二割五分いたすといたしましても十万五千人、その中で七万六千人は空定員でありますから、然るに毎月の自然減少が二分五厘ございます。凡そ一万人ずつはひとりでに減員いたしております。この四十二万の定員はこれは昨年十一月初めの調査でございますから、それから十二月、一月、二月と三月経つておりますから、いつおやりになるか分らないが、おやりになる頃は丁度十万人の減員になつておるのでございますから、二割五分なさいましたところで、一般会計におきましては一人も首切りをやらないところの整理ということになります。從いましてこの人員整理ということは、あなたの施政方針の御演説の上の文句といたしましては、極めて曖昧でございますので、現内閣のお用いになります言葉を用いて申しますれば、名目整理をなさるのか、実説整理をなさるのかという点を明らかに御答弁を願いたいと思うのでございます。(拍手)  尚且つ第二点といたしましては、この人員整理、首切り整理というものは、どの方面を対象として御整理をなさるお考であるかということを伺いたいのでございます。行政整理の面ということになりますると、常に人員整理だけに終りますことはすでに齋藤國務相がおつしやつた通りでございますが、とかく人員整理をやるという場合には、その対象が弱い者、弱い者にこれが向けられて行つておるのでございます。近くは幣原内閣がなさつた時の御整理でも、この弱い方に向つて御整理がなされました。只今申上げました一般会計の職員四十二万人につきましても、一級官、二級官、三級官とありまする、その中に三級官は十三万人、雇員、傭員というような、言葉は悪うございますが、下級の方は二十三万、合せて三級官以下の者が三十六万でございます。私は恐らく人員整理がこういう弱い方々の方に向けられているではないかということを憂慮いたします。とかく現内閣のなされるところを見ますと、弱い者いじめをなさる跡がございます。闇取締りと言えば、波多野君ではございませんが、白髪の婆さんの胸ぐらを捕まえて見ましたり、料飲業の取締りと言えば屋台店を襲うて見たり、今回の人員整理におきましても、この内閣総理は断じて弱い者は一般会計、特別会計を通じてそういう下級者の首切りはしないということをここに言明なさることができるかどうか伺いたいと思います。  第三点といたしましては、果して根本的改革をなさるところの見通しがついておりますかどうかという点でございます。根本改革というのは言ふまでもなく能率の増進でございますが、私共見るところによりますと、これはすでに本院でも御議論になりまして、今更繰返す必要はございませんけれども、行政の簡素化、責任体制の確立、この二点にあると思います。行政の簡素化と申しますと、言うまでもなく省の廃合、部局の廃合でございます。全体的の行政機構の圧縮でございます。且つ又中央集権の大是正をやりまするということをやらなければなりません。それにつきまして私具体的に伺いたいと思いますが、総理におきましては、現内閣の無任所大臣……ここにおいでになりまする、いや、おいでになりません。(笑声)ここへおいでにならんような必要のない無任所大臣を、これを先ず最初に廃止になりまするお考えがあるかどうかを伺いたいと思います。  且つ又中央集権の問題でございまするが、即ち中央機関の出先機関、これも整理するということ、これを言うまでもないことでございます。併しながらこの國家機関を今のような三府四十三縣に区切つてこま切りのようにしておいて、小さい縣にすべて國家機関を移譲してよいかという問題であります。でありますから、私共の見るところでは、少くとも州制を布きまして、全國を十か十一ぐらいに分けまして、その程度ならば國家機関の移譲も適当であると思いまするが、現内閣は道州制を布くお考えがありますかどうか伺いたいと思います。又現業廳の独立採算制に伴います企業体制の確立というものが問題になつておりまするが、運輸大臣に伺いたいと思いますが、この現業廳の企業体制に関する切替をやりまするときに、或いは場合によりましては民営にこれを一部拂下げ、民営に移してもいいような部面があるのではないかと思うのであります。運輸大臣はそういう方面に非常に明るい方でございまするから、いろいろ御計画がおありになろうと思います。そういう点についての御所見を伺いたいと存じます。且つ又関連してこの機会に伺いたいと思いますのは、鉄道運賃の値上をなさるようなことが傳えられております。これは全國民が非常に反対いたしております。反対というよりは、むしろ十分にまだ納得していないようでございます。鉄道運賃の値上の必要がどこにあるのかということもまだ分つておりません。ただ單に赤字予算の埋合せというためでは納得いたしません。そこで運輸省の合理的な行政整理、企業整備をなさいまして、これこれやつて見ても且つ又これだけ赤字が出るのだから、國民よ、この鉄道運賃の値上を納得しろというふうになさるのが順序ではないかと思います。(拍手)從いまして、それができるまでは鉄道運賃の値上をお待ちになるお考えはないかということを伺いたいと思うのであります。  且つ又責任体制の確立ということにつきましては、申すまでもなく行政組織というものを縦断化いたさなければなりません。行政組織の縦の線を強くしなければならんということはこれは言うまでもございません。今日の組織というものは余り横に廣がり過ぎて、二重にも三重にもなつておることはすでに定論になつております。譬えて申しまするというと、最近婦人問題をいろいろ調査をいたすということになりまして、当面の婦人問題をどこで誰がやるかということを調べて見まするというと、どこでやるか分らんのであります。労働省に婦人少年局というものができましたときに、これは婦人だけの労働問題を扱うのかということを聞きましたら、そうではない。一般の婦人問題をここでやるんだ。文部省の婦人関係の問題をも皆ここに移すんだというので、我々非常に奇異に感じましたが、もとより一個所に纏めるのならよかろう。それでは当面のいわゆる闇の女の対策の問題はどうするか。この婦人局でやるのかというと、いや、この婦人局でやる考えはない。まあそうですね。闇の女も急を要するので、一つ調べて見ましようかというような程度で、今でもどこでやるのかはつきりいたしません。例えば港湾を開いて貿易のために貿易港を作る。これが一体これはどこであるのかということもはつきりいたしません。例えば又風水害の復旧費なんです。これは一体どこでやるのである。言うまでもなく土木局、今土木局ではありません。建設院でございましようが、建設院でやるのかといつたら、そうじやない。大藏省だ。大藏省でもない。大藏省はこの頃駄目だ。安本へ行かなければ駄目だ。安本へ行つて見ると安本でもない。どこかというと文部省、文部省の風水害の復旧費とんでもないことなんですけれども文部省なんです。というのは、私の郷里の安藝の宮島の昭和二年の風水害で、紅葉の谷というのがやられた。これは政府の方でどこで補助が出るのかというと文部省なんです。どういうわけで文部省かというと、あすこが史蹟名勝天然記念物だというのです。これは文部省の管轄だという。これはとんでもない話ですが、文部省の所管でございますから費用が僅かしか枠が決められてない。そういうことじや不便だというので、只今宮島は史蹟名勝天然記念物から除いて貰う運動をしておるというので、滑稽も甚だしいことではございませんか。こういうふうに行政が混乱しておる。これを整理いたしますることは、行政組織の縦の線を強化しなければならんということは言うまでもない。これをやらなければ、責任体制の確立というようなことは、とてもできるわけのものではありません。責任体制の確立につきましては、公務員法の職階制に伴いまして、これは本年の七月に一部実施されまするが、それに伴いまして、且つ又官廳の執務の上におきまして、文書主義というものを改めなければなりません。その次に私共は絶対に止めて貰わなければならんのは、地方から運動に來るということです。これは地方から中央の行政官廳に運動に來るのは禁止したらどうでしよう。これは猛烈に運動すれば運動しただけの効果があるというので、今のやり方では全國で中央に運動に集まる官職員というものはどのくらいあるか分りません。私は官廳執務要領というようなものを作りまして、こういう運動を止めたらいいじやないかと思います。この点について御用意があるかどうか伺いたいと思うのであります。  第四点といたしましては、この行政整理の目的でありまするが、私共は行政整理の目的が経費の節約とか、能率の増進とか、行政の簡素化とか、そういうことを行政整理の目的とは考えておりません。これは平素からでも心掛けなければならんモツトーでありまして、何も殊更行政整理に限つてこれを目的にするというような程のものではないと思います。もつと大きな所に、もつと高い所に行政整理の目的がなくてはならんと考えております。言うまでもなく國民の要望いたしておりまする行政整理とは、即ち官僚政治の妥当であります。又悪官僚の放逐であります。只今木村君御指摘になりまして、私全く同感でございます。これをおやりにならなければ行政整理の目的は貫徹できんと思います。総理はかねがね無血革命ということをおつしやつておいでになります。施政方針演説を伺つてみまするというと、この行政整理の目的も亦これ無血革命にあることがほのかに見えておりまするが、明瞭でございませんからこの席で明瞭にして頂きたい。即ち民主政治の確立ということは、言葉を換えて言えば、あなたの言葉で無血革命である。この内閣は行政整理をすること、即ち言い換えましたならば、首切りということに対して責任を負わされておいでになります。私は御同情申上げまする。なかなか辛いことであろうと思う。併しながら逆に私は無血革命の遂行ということは與党三派に責任を負わせるということが至当であると考えております。この官僚政治の妥当、腐敗官僚の放逐ということに対してどういう覚悟を持つておいでになりますか。この点は特に司法大臣に伺いたいと思うのであります。これに関しましては、連合軍の司令部が隠匿物資の調査に対する報告の中に、明らかに日本の政府に非常に腐敗せる官公吏の多いことを指摘しております。且つ又クロワーズ中國軍政部長は、縣民、地方民にメツセージを送りまして、官公吏の中に非常に腐敗しておる者が多い。殊に日夜宴席に列なつて酔いしれておる者が多いから、こういう者は一日も早く放逐しなければならん。連合軍のリストにもちやんと載つておる。國民もこれに協力しなければならんというメツセージを送つております。又十二月二十一日の下院隠退藏物資の報告書の中には、隠退藏物資に関係いたしまして、これらの調査に妨害を加えたり、いろいろ怪しからんことをいたしたる者が中央地方の官公吏の中に非常に多いということを指摘いたしております。これらは表面刑法上から申しましたら、或いは微罪でありましよう。或いはただ單に物資需給量とか、或いは統制経済の規則に違反した程度のものではございましようが、併しながら政治上の責任は私は非常に重いと思います。こういうような不当取引に関係いたしました官公吏を、ただ單に國会議員ばかりじやございません、一齊にこの際放逐するところの決然たる覚悟をお持ちになつておられますかどうかということを承わりたいと思うのであります。(拍手)  第五点といたしましては、統制経済と行政整理のあり方につきまして、安定本部長官にお尋ねいたしたいと思う。統制経済というものの行き方というものと、行政整理というものとは非常に密接な関係があると思う。この今日の行政部の仕事というものは、これは殆んど統制経済の仕事をしていると言つてもいい。でありますから行政整理をやるとなれば、統制経済の在り方に関係がある。統制経済のこれからの在り方と見合わせると、行政整理のやり方というものが、どういうふうに安本長官は行政整理も統制経済の今後の在り方の面から考えておいでになるかということを、私はお尋ねいたしたいと思う。新聞で拝見しますと、統制経済とか、計画経済とか、何とか経済とかいう名前のことで、大変爭つておいでになるようでありますが、実はこれはおかしな話でありまして、私共は統制経済や計画経済や何経済じやない。これからの日本國の経済は賠償経済あるのみだと考えておるのでありますが、とにかく統制経済の今後の在り方と行政整理の関係、これを具体的に申しますると、安定本部という役所はこれからどうやろうという構想を持つてお出になりまするか、これも相当に本院におきましても問題になつたのでありまするが、只今承わつておりますと、インフレ対策というものは金だけじやない、物だけじやない、物と金とは切り離すことができんといういろいろ名論がここで展開せられたのであります。その物と金と切り離すことのできんような、そういうような仕事を、物を離れた金だけの大藏省、金を離れた物だけの安定本部で、そういう片ちんばを現に行政の上でやつておいでになる。でありますから安定本部というのは、として大藏省と一つにしたらどうでありましようか、例えばそれを最高企画廳として残すならば、今の総理廳と一つにしたならばどうでしよう。いつそのこと御自分でお作りになつた法律がうまく行かんから経済警察でやるならば、経済警察にしてしまつたらどうなんでありましようか、でありますから経済安定本部というもののこれからの在り方というものをどういうふうにお考えになつておるか、私は和田長官に伺つてみたいと思うのであります。  第六点といたしますと、この行政整理の結果出て参りまする財源、これを何にお使いになるか、折角整理して出て來た財源を、それを失業救済費に使うというのじや意味をなさん。でありますから罷めさした役人を失業救済に関する仕事の方に使つたらいいでしよう。そんなことならあなた、整理しては救済し、整理しては救済し、整理と救済の悪循環をしておつた日にはきりがない。でありますから、行政整理によつて出て來た財源は、これは何にお使いになりますか、この点は総理に窺うのでありますが、これは何にも使うのじやない、これは是非とも社会政策の方にお使い願いたい。狭義的に申しますれば、即ち社会事業方面にこの出て來た財源をお使い願いたい、こういうことを私はお願いをして置くのでございます。総理はこういうことをおつしやつた。社会事業方面、まあ狭義的な社会政策方面に今金を使うということは、これは心には山々考えておるけれども、今の日本の経済ではできない。先ず経済の建直しをして、それから可哀相な者や氣の毒な者や、そういう者の救済をやるんだ、こういうことをおつしやつた。これは一應は頷けるようでございますが、併しながらこのお説は私は納得ができない。それは恰も我々の体の中に、指の先、足の先が傷んでおる。膿が出ておる。そうすると、まあ指の先よ辛抱せよ、体がすつかり好くなつたらお前の指の治療に掛かつてやるからというのと同じであります。これは私は同意ができません。是非とも行政整理によりまする財源は、國内到る処にありまする困窮の國民を救済するところの、そういう方面の社会政策、社会事業方面にお廻し願いたいということを思うのであります。尚且つ厚生大臣に私が伺いたいと思いますのは、今後の政治の在り方というものは社会政策中心の外はないと考えております。今日御計画になつておると思いますが、いわゆる社会保障制度、或いは各種の福祉政策、或いは國民の医療の 対策、こういうものがこれが今後の政治の私は中心でなくちやならん。社会政策中心とするところの行政、こういうものが今後私は展開されて行くと思うのであります。その面から御覧になりましての行政整理の在り方、殊にあなたの御関係の厚生行政の在り方でもよろしうございますから、行政整理と関連しての今後の社会政策的行政の在り方はどうあるべきかということの御所信を承わりたいと思います。これはすでにサムス大佐が先日指摘せられまして、これらの問題を中心としての行政機構の一本化ということを主張されておりまするが、この点特に厚生大臣として私は御所見を承わりたいと思うのであります。且つ又先程すでに本院におきまして質疑がございましたから、私は繰返すことはいたしませんが、この行政整理の問題はこの内閣最大政策最大の問題であると考えております。この事一つおやりになりますならば、この事を遂行なさるところの御決意がありまするならば、確かにこれをやり通すというお見込がありまするならば、本國会において根本的な行政整理をここにお諮りになるところの見通しと決意を持つておいでになりまするならば、我々はこの内閣支持するに吝かな者ではございません。この一つの問題を以て國民に信を問い、解散して國民の信頼を問うということになりまするならば、この行政整理の完遂ということに向つて國民は、或いは大いに賛成いたすかも分りません。経済政策に対しては不満を持つておりましても、官僚政治の妥当、無血革命の遂行という点に対しましては、國民は熱烈に共鳴すると私は信じております。でありまするから、この一点のみを以ちましても総理は衆議院を解散して、國民信任を受けて力強い背後の力を以て遂行なさる御決意があるかないか、私はこの点から改めて総理の決意を伺いたいと思います。以上を以ちまして私の質問を終ります。 (拍手)    〔國務大臣片山哲君登壇
  23. 片山哲

    國務大臣(片山哲君) 山下君が最も熱心に述べられました通り、行政機構の改革、人員の整理、この問題の重要性については全く同感であります。且つ又非常に御熱心に御激励して下さいましたることについては深く感謝いたします。政府といたしましては人員整理をやるつもりであります。施政方針において総括的にその方向を示したのでありまして、今どれだけやつて、いつこれをどの方面からというような細かい問題につきましては、施政方針で述べるわけにも参りませず、又僅か二三日を軽快いたしました今日において、その具体案を諸君にお示しする段階にまではまだ至つていないのは甚だ遺憾でありまするが、御了承願いたいと思います。近く成案を立てまして皆さんにお諮りをいたしたいと思つております。眞に能率増進のために、経費節減のために、多年の懸案となつておりまするところのこの人員整理の問題について手を入れて、今山下君が述べられましたような御期待に副い得る対策を立てて、眞に我が國の行政機構の建直しを遂行いたしたいと考えておるのであります。  第二に大きな問題として、行政機構の根本的改革に関する審議会を立てるのみならず、それについての内容も言え。こういうようなお話でありまするが、これも昨日でありましたか齋藤國務大臣が申上げました通り諸君の意見を聽いて十分よりよき行政機構の改革に進みたいと考えておりまするから、政府の方ではそれぞれ担当者を定めまして案を立てておりまするが、これも今詳細に発表いたしまする段階には至つておりません。どうか諸君の方でも十分に考えまして、眞に官僚制度を打破して、民主的な、いわゆる今おつしやられました無血民主革命を遂行し得る行政機構をどう立てるかということについては、御意見を十分に出して頂きたいと思います。委員会等において、自由なる御檢討に多大の期待を掛けるおるような次第であります。つきましては、無住所國務大臣を廃止するとか、行政出先の問題について種類を決めるとか、こういうような問題につきましても、この審議会において、或いは又諸君委員会において、御意見を伺うのでありまするが、私の考えを聽かれまするならば、無任所大臣をすぐ止めてしまうということもちよつと急激であろうと思いまするから、そういうような方法は採りたくないと思つております。今ここへ無任所大臣諸君は出て來ておりませんけれども、併しそれぞれの担当の仕事が沢山あるのでありまするから、國務を怠つておるというようなわけでは決してないのであります。  尚経費節減によつて浮いた金を社会政策のために使え。こういうような御意見であります。これにつきましても、その御意見を十分に尊重いたしまして、社会政策のみならず、有効なる費用に廻したいと思つておりまするが、これらも今その金はこれだけ社会政策のために使う。こういうふうに窮屈にお考え願わないで、國家万般の有効なる費用にこれを使いたいと考えておるのであります。併し社会政策の費用ということは、最も重要なる費目でありまして、これからの文化國家としては、この問題に対しましては、愼重に、相当な経費を割いて、國民生活の向上のために努力しなければならないと考えておりまするから、社会政策の費目は重要に取扱うという考えを持つておりますることを、この機会に明らかにいたして置きたいと思う次第であります。(拍手)    〔國務大臣北村徳太郎君登壇
  24. 北村徳太郎

    國務大臣(北村徳太郎君) 山下議員のお尋ねの運輸省関係の分についてお答え申上げたいと思うのであります。先ず第一御質問は、運賃を上げるかどうか。運賃の問題と輸送経営合理化に関しての問題であつたと思うのでございます。これは経営の合理化につきましては極力努力はいたしておりますが、大体これは二つの面から考えられると思うのであります。輸送力を先ず増強する。そうして鉄道收入の増加を図るという面に只今も努力を続けております。昨年三月以降毎月九百万トン輸送を目標にいたしまして、現下の鉄道の極めて壊れたような状態の中で相当努力を傾注いたしましたのでございますが、幸いにこれは予期の効果を挙げることができました。又昨年七月以來、旅客列車の増発、主要線区の急行の復活、或いは準急列車の復活等もいたしまして、とにもかくにも何とかもう少し明るい鉄道というものにいたしたいというような運動を継続して参つたのであります。サービス等においても極めて御不満足な点が多いと思うのでありますが、これが改善については目下極力努力いたしております。而も國鉄の私設は、御承知通り、すでに二十五年以上、或いは三十五年以上経過いたしまして、殆んど使用に堪えないものも少くございません。併しそれらの具体的な点につきましては、國鉄実相報告書によつてすでに御覧を願つたことと思うのでありまするが、実は甚だしく疲弊の極に達しており、この際特段の措置を講じなければ輸送力の増強は極めて至難である。むしろ輸送力の低下の傾向さえ示しておるというような実情でございます。これに対しましては、政府といたしまして積極的なる施策を講じなければならん。例えば一ケ年少くとも八万八千トンのレールその他の取換えを要する。現状において入手いたしますことができますのは一万トン乃至二万トン、最高二万一千トンを入手したというような現状でございまして、これが整備或いは補修等の果然を期する上において、実は非常な悩みを持つておるのでございます。それから石炭事情等の関係もございまして、私共といたしましては、運賃の値上げをいたします前に、極力設備の改善をいたしまして、輸送能力を増加することによつて收入面の増加を図りたいということに目下力をいたしておるのでございます。  消極の面においては、人員の適正な配置をしなければならん。これは行政官廳とは多少趣きを異にいたしておりまして、一つの企業でございますから、業務量に從つて人員の配置をして能率的に考えて行かなければならん。こういうようなことは当然であると考えておるのでありますが、勤務責任の範囲を明確にする。或いは單に勤務責任のみならず、経理の責任についてもその所在を明らかにするというようなことについて、目下いろいろ改善をやつております。職場紀律をもつと巖正にしなければならん。或いは能率の向上等のことにつきましても、それぞれ具体策を講じつつあるのでございます。從事員の配置轉換の問題も、これらのことを基礎といたしまして、これを強力に推進したい。こういう考えでございます。それから作業の機械化による人員の圧縮等も現在考えておるのでございます。例えば踏切におる踏切警手、俗に言う踏切番でございますが、これが現在三万人おります。これらは急速に機械化することによつて、その人員をより効率的な方面に差向けて輸送力の増強に充てたい。二十三年度においては、それらのことも予算に盛り込んで皆様の御審議を仰ぎたい。かように存じておるのであります。  それから何と申しましても、國鉄の経費の最大のものは石炭でございます。二〇%以上は石炭でございます。これについては、石炭の消費の科学化の問題も相当研究いたしております。機関車の燃燒率の向上、或いは燃燒に関する技術の錬磨等については、常時研究を続けておるのでございまするが、昨年第一次石炭節約運動というものを起しまして、それぞれ訓練をし、そういう一つの運動を展開いたしまして、このことによつて石炭は約七%節約する実績を挙げたのでございます。併しながら何と申しましても最近重大な問題は、炭質の低下したことでございます。石炭の増産か例えば三千万トンともうしましても、炭質の低下がございますというと、これは質的には減少したことになる。私共石炭を多く使います面において、特にこの点について、炭質の向上の問題、カロリーを引上げるという点について、或いは細炭、粉炭の割合等が機関車に果して適合するかどうかというような点につきまして、今後一層研究をいたしたい。努力を進めたい。以上のようなことを考えまして、そうして鉄道の運営ということを見て見たいと思うのであります。これらの点におきましては、各資材の合理的な使用によりまして、物件費の節約、或いは電化による輸送力の増強、石炭の節約、まあこれら諸般の運営全体の合理化については今後一層推進をいたしたい。かような決心でおります。  かようにいたしましても、國鉄の收支の不均衡はこれは非常に開きが大きうございまして、その原因は、物價賃金水準と運賃水準とが甚だしくかけ離れておるというようなこと、現在の物價体系は御承知通り戰前の六十倍或いは六十五倍でございますが、鉄道運賃は貨物が二十一倍、旅客は二十三倍というような状態でございまして、ここに相当なアンバランスがあります。それに最近給與方面においては二・八ケ月の問題、その他今後新たに起るべき給與体系等々の問題もございまして、相当の赤字は免れんのじやないか、かような現状に置かれておるのでございますが、何といたしましても経営能率を挙げまして、そうして運賃の負担に掛かる分が極力低減できるように、今のところ運賃値上げは恐らくこれは止むを得ず皆さんの御承認を仰がなければならんと思うのでありますが、それはできるだけ小さい幅において実行いたしたい。かように考えておる次第であります。根本対策物價賃金との釣合いの取れた運賃体系というものを先ず改正いたしまして、鉄道財政というものの極めて不健全な現状を克服する。それは單に運賃だけにかけるという横着な考えは毛頭持つておりませんけれども、今の状況では運賃に或る負担をかけなければやつて行けないという状況でございます。  それから尚お話の中に独立採算制の問題等もお触れになつてつたかと思うのでございます。これにつきましては、独立採算制は、何と申しましても全体としてこれを考えなければならん。採算のよくとれる所ととれない所とある。民間へ引き離して一部拂い下げる。或いは民営に移す意思はないかというようなお尋ねがありましたのでございますが、経営が非常に黒字になるというものを引き離して、経営上が赤字になるところはこれを別な考え方をするというようなことは、苟くも國営であつて、公企業である限り、これは私企業のごとくに、この線は儲からんからどうしようというわけには参りません。これは一連のものとして、輸送の責任を果すというような面において、独立採算制を考えます場合に、この引き合わないもの、收支のとれないものも、尚これは國の輸送の一つの大きな機関として併せて考えなければならん。そういうような考え方において、只今のところ切り離して一部を民間に拂い下げて、民営にやつて頂くというようなことは、政府方針としては全然決定もいたしておりません。只今そのことについては何ら申上げる段階に達しておりませんのでございます。以上大体のことを申上げまして、尚一層詳細のことはどうせ委員会等において申上げる機会が與えられると思うのでございますが、以上簡單お答えを申上げます。(拍手)    〔國務大臣鈴木義男君登壇
  25. 鈴木義男

    國務大臣(鈴木義男君) 山下議員の御質問お答えいたします。官紀の頽廃は各方面から強く叫ばれておりまして、政府におきましても十分にその点には留意いたしておるつもりでございます。單に刑事政策を以てこれを強制することはできないのでありますが、併し刑事政策の携わる面も亦極めて重大であると考えまして、少くとも私がその任に就きました後は、あらゆる官公吏の涜職的事実につきましては、檢察の眼に触れます限り仮借なく檢挙をいたしておるつもりであります。尚不正取引につきましても、これは官公吏が関與しておるということはしかく多くないと思うのでありますが、併し往々にしてその事実なきにしもあらずという報告を受けておりますので、そういうものも檢察の眼に触れます限り遠慮なく檢挙をいたしておる次第でございまして、これらの方面からも十分に官紀の粛正を図ることを決意いたしておる次第であります。このことをお答えいたして置きます。    〔國務大臣和田博雄君登壇
  26. 和田博雄

    國務大臣(和田博雄君) 私に対しまする御質問簡單お答えいたします。第一点は統制経済の行方と行政整理との関係でありますが、かなり問題が廣汎なのでありますので、簡單に私の考えだけを申上げたいと思うのでありますが、結局統制経済がどの範囲に今後行われて行くかということは、一つは國家経済がどういう速度で回復して行くか、どういう政党が政治中心になるかということに私はあるかと思うのであります。この経済の面と政治の面との二つの要素が結び合わされて、統制経済そのものの規模と範囲と深さというものが決定されて來るのだろうと私は思います。只今のところ統制経済そのものが非常に縮小して行くという傾向には私はないと思います。これは日本がまだ講話條約も結ばず、占領軍下において、今の経済の回復力におきましては、これは統制経済自体が必要であるということからも言えると思うのであります。ただ統制のやり方につきましては、これは一般の行政官廳と同じように、能率を挙げて行くという点からして檢討すべき点が私はあろうかと思います。それと同時に、企画官廳であり又統制官廳である我々の経済安定本部と他の実行官廳との間には、機能的な整理と言いますか、そういうものも必要であると思うのであります。從いまして、統制経済そのものの進行ということと行政整理自体とは決して両立しないものではなくて、これは統制経済自体の点から行きましても、能率の増進の点から言つても、行政の整理も十分行われる余地があろうかと思うのであります。ただその場合に、統制経済の企画を受持つております官廳と、実際の現場、又國家が企業を行つておる現業官廳と、そうでなくて普通の官廳との間には、そこにやり方については一律的であつてはならないというように考えます。政府としての細かい点はまだ決つておりませんが、大きな方針は、その点についてそういう考え方で進んでおることを御了承を願いたいと思います。経済安定本部のあり方については経済安定本部の存続が一ケ年に限られておりますので、いずれ國会において御決定になることと思いますが、これは経済安定本部自体が持つておりまする計画的なこの綜合的な機能というものは、やはり必要であろうかと思うのであります。ただこれがあなたの御意見のように大藏省と一緒になるというようなことは、これは不可能なことであつて、そうでなくして、これがどこにあろうが、一つの綜合的な、計画的な官廳として只今のような総理の総裁の下に存続するということは、一つは行政面から言いましても、進駐軍との関係で、そのいろいろの資料なり折衝なりを個個の行政廳においてやつて行くということは、今までの経験において煩瑣に堪えないのであります。そうして國内的な統一というものが取り得なかつた弊害が多分にあつたのであります。計画自体が十分に固まつていない。各省ばらばらであるということであつては、今の日本の行政が一面において連合國側の十分な了解を得なければならん点から言いましても、非常に不利であります。又向うも煩瑣に堪えないと思うのであります。從つて計画官廳としての一つの経済安定本部がここに発生いたしたわけであります。この機能は私はまだあると思うのであります。それから、これは私の短かい経験から申しましても、今の日本において、計画自体を綜合的に國民経済の全般に亘つて囚われない立場からこれを計画して行くところの官廳というものは、どうしても必要であろうかと思うのであります。やはりこういう一つの機能を中心にして実際の実施面が動いて行くという事柄が、能率から言いましても非常によいのであろうかと、かように考えておるわけであります。ただ経済安定本部の今の機構につきましては、経済保安廳の関係その他の関係で、我我の方としても一つの構想は持つておりまするが、いずれこういうものは経済保安廳等が具体化しました時にお話できるかと思うのであります。    〔國務大臣一松定吉君登壇
  27. 一松定吉

    國務大臣(一松定吉君) 山下議員の私に対しまする御質問お答え申上げます。その御質問の要旨は、行政整理に関係しての社会政策中心とする今後の在り方についての所信如何と、こういうような要旨であつたように思われます。憲法の第二十五條によりますれば、すべて國民は健康にして文化的なる最低限度の生活を営む権利を持つておることが明らかにせられております。この目的を達成せしむるために、國は社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上増進に努めなければならないという規定をせられておりますることは、御承知通りであります。この憲法第二十五條に規定せられてありまする事柄が、山下議員のお考え通りにこれが政治のすべての基本政策でなければなりません。いわゆる健康にして文化的なる生活を維持することのできる権利を持つておる、その権利を推進し誤まりなからしむることが政治の目的であり、眼目でなければなりません。この目的を達成するために幾多の行政行為というものが行われるのであります。この意味からいたしまするならば、いわゆる政治國民の健康並びに文化的の仕事をするものであると要約することができるように私は考えております。この意味からして、いわゆる厚生省の仕事は非常にその範囲が廣汎でありまして、政治の各方面に亘つておるのであります。然らばこの行政整理に当りまして、厚生省はどういうような考えを持つてこれに臨まなければならんかといえば、あなたのお示しになりましたように、二割五分だとか、或いは二割だとかいう人員をただ首切ればよろしいということには承服できません。今私が申上げましたいわゆる健康で文化的の最低生活を営む権利を持つておる、その目的を達成するために必要な施設に欠くべからざる人員はこれは整理ができません。それを整理するということがあればその目的を達成することはできない。その目的を達成することができないということになれば、政治の根本原則を破壊することになるのでありまするから、絶対にこれはできません。故に坊間傳わつております現業廳については手を着けないというようなことも行われておりまするが、厚生省の仕事の中でいわゆる現業に從事しておる部面が沢山あります。例えば病院に勤めておりまするところの医者、看護婦、保健婦というような者や、引揚事業に直接從事しておりまする事務員、生活安定に必要な関係の業務に從事しております指導員、若しくは兒童福祉法実施に必要なる関係者というような者は、これはいわゆる現業員であります。そういう者を二割五分若しくは二割天引にこれを整理しなければならんということであれば、先刻來申上げました國民の最も基本的なる権利の擁護推進ということはできないのでありますから、それは行政整理といつて、ただ徒らに人員を減らすとかいうようなことや、或いは経費を節減するということのために、その目的を阻害するような行政整理はできない。故に私はそういう考えを以てこの行政整理に臨みたいと考えておりまして、最後に申上げまするが、行政整理をするということは只今総理が申上げた通りでありまするが、その手段だとか、方法だとか、人員の数だとかいうようなことの具体的の事実は、まだ今日においては決まつていないのであります。それは各政治部面に、最も適正にして欠点のない、これならば正しい行政整理のやり方であるということに十分檢討を加えまして、その目的に副うべく行政整理をすることが必要である。かように考えております。
  28. 松本治一郎

    ○副議長(松本治一郎君) 本日はこれにて延会いたしたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 松本治一郎

    ○副議長(松本治一郎君) 異議ないと認めます。明日は午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後一時四十六分散会