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1948-01-24 第2回国会 参議院 本会議 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年一月二十四日(土曜日)    午前十時二十四分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第四号   昭和二十三年一月二十四日    午前十時開議  第一 國務大臣演説に関する件(第三日)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松平恒雄

    ○議長(松平恒雄君) 諸般の報告は御異議がなければ朗読を省略いたします。      —————・—————
  3. 松平恒雄

    ○議長(松平恒雄君) これより本日の会議を開きます。日程第一、國務大臣演説に関する件、(第三日)昨日に引続き、順次質疑を許します。高瀬荘太郎君。    〔高瀬荘太郎登壇拍手
  4. 高瀬荘太郎

    高瀬荘太郎君 (「総理大臣はどうしたんだ」「総理大臣の出席がない」と呼ぶ者あり)私は今回片山総理大臣一般施政方針演説におきまして明らかにされた政府経済政策の中で、最も重要と考えます諸点についてお尋ねをいたしたいのであります。  先ず第一に、片山総理はその演説の冒頭におきまして、今年こそ我が國経済再建の運命を賭ける重大な年である。恒久的な復興再建計画を樹立して、(「総理大臣はどうしたんだ」と呼ぶ者あり)その達成に邁進すべき重大な年だと言つておられるのであります。その片山総理の所見につきましては、無論何人も異論がないだろうと思います。けれども、そういう重大な意義を持ちます恒久的な復興再建計画内容につきまして、総理大臣が述べられましたところは、ただ昭和二十三年度における重要物資生産目標に過ぎないのであります。昭和二十三年度生産計画として、石炭三千六百万トン、鉄鋼百万トン、セメント二百万トンというような目標を明らかにされまして鉱工業生産において約四〇%の増産を図るという点が断片的に明らかにされたに過ぎないのであります。こういう毎年度生産目標でありますれば、今までも常に設定されておつたわけでありまして、前内閣の時代にも昭和二十二年度生産目標として、石炭三千万トン、鉄鋼七十万トン、セメント百八十万トンというような生産目標が立てられて、それに努力されたわけであります。從つて首相が示されましたような來年度生産目標を立てて、これを達成するために努力をするということだけのことであれば、少しも新らしい点がないと思うのであります。首相がその重要性を強調しておられる恒久的な再建計画といいますものは、今後相当長期に亘る建設計画でなければならないのでありますが、そういう長期建設計画内容につきましては何ら触れるところがなかつたのは甚だ遺憾の次第であります。今日のように、世界経済の面におきましても、亦國内経済の面においても非常に不安動揺にさらされておりますような場合には、合理的な、而も実行性のある長期計画設定ということは、非常に困難な事情にあるのであります。殊に長期建設計画というものは、首相が示されましたような單なる生産計画だけでなくて、海陸の輸送、動力、資金、労働、貿易というようなあらゆる計画を含む綜合計画でなければ、必ず破綻を招くわけであります。從つて政府が今度これを設定し、確実に実行するにつきましては、非常な困難を伴うものと覚悟しなくてはならないのであります。それがために、今回政府が考えられております長期建設計画というものが、或いは單なる机上の希望的な計画に降る危険が甚だ多いのではないかと思います。つきましては、政府はその計画設定につきまして万全の考慮を拂いますと同時に、從來のように計画が破綻いたしました場合に、その計画破綻責任をいつも國民に轉嫁して、計画の不備とか遂行能力の欠除というような、政府みずからの責任を回避する官僚的な責任回避態度をやめて、その作成、遂行につきまして、みずから全責任を負うという男らしい、眞劒な、良心的な態度を以て臨まれることを切望する次第であります。(拍手)  私は今回の長期建設計画設定に関する政府方針につきまして、二三の点をお尋ねしたいのであります。  第一に、政府設定しようと考えておられます長期建設計画というものは、今述べましたような綜合的な計画でありますのか。或いは單なる生産計画に止まるのか。それを伺いたいと思います。第二に、外國、殊に米國からの援助長期建設計画の中に織り込む方針であるのか。若しこれを織り込むとするならば、どんな形式で、どんな程度援助をこれに織り込む方針であるか伺いたいのであります。第三に、長期建設計画目標というものは、今後予想されます日本経済回復力と、又國民生活の安定に必要な日本経済力という、この二つを勘案いたしまして立てられなければならないのでありますが、その目標となります我が國の経済水準をどの程度に置いて、これを何年間に達成する考えであるか伺いたいのでありますし又経済力の低下と人口の増加によりまして、國民生活水準はどうしても切下げられなければならないと思うのでありますが、長期建設計画の基礎となります國民生活水準は一体どの程度のものにされる御意見であるか伺いたいのであります。第四番に、長期建設計画の中には我が國産業界の整理、毎編成労働合理的配置というようなことが当然に織り込まれなければならないのでありますが、これによつて産業界の動揺、労働界の不安を招くということは避けられないと思うのであります。從つてその遂行につきましては産業界及び労働界からの相当強烈な抵抗を予想しなくてはならないのでありますが、これを排して断乎として強行するにつきましては、十分の決意と具体的な施策が必要であります。政府はこの点につきましてどんな見解を打つておられるか伺いたいのであります。第五に、設定された長期計画の強力な遂行を図りますために、政府日本経済を今後一層計画化して、統制経済の体制から計画経済の体制へ切替を行う必要があると考えられておるかどうか。その点を伺いたいのであります。  次に第二段におきまして、総理大臣インフレーシヨン対策として通貨膨脹を抑制する必要を強調され、來年度予算編成方針に触れられたのでありますが、その内容は極めて簡單且つ抽象的であります。明年度政府施策の根底となるものであり、而もその編成が最も困難と予想されますところの予算編成の問題が、総理大臣施政方針演説の中で十分明確に提示されなかつたということにつきましては、何人も意外とし、又失望するところであろうと思います。総理大臣財政面から生ずるインフレーシヨンを除きますために、財政の規模を國民経済の実力に合致させる必要があるということを述べられましたが、その点については全く同感であります。併し不幸にして從來採用されました方法は、ただ形式的に收支均衡を図るというだけでありまして、財政國民経済に與える圧迫につきましては十分なる考慮が携われておらなかつたのであります。そういう單純な、形式的な收支均衡主義が、産業の経営を圧迫し、個人の生活を圧迫いたしまして、物價及び賃金、の体系を破壊することになり、政府の採りました形式的な財政均衡主義というものが、それみずから結局本当の財政均衡主義を破壊するという矛盾した結果を強いておるのが現在の実情であります。こういう点から考えまして、この際余程思い切つた税制の改革を断行しない限り、こういう財政インフレーシヨン悪循環を断ち切るということはできないと考える次第であります。尚予算健全性を保持しまして本当の財政收支均衡を確保いたしますのには、総理大臣が述べましたように、ただ財政の面から生ずるインフレーシヨンを除去するというだけでは足りないのでありまして財政の面以外から生じますインフレーシヨン財政に與える影響を除去しなければ、財政インフレーシヨン悪循環は断ち切れないのであります。(拍手)これがためには、新たな年度におけるインフレーシヨン進行速度というものを予めできるだけ正確に測定いたしまして、これに対応するだけの歳入余剰インフレ予備金として初めから留保するか、又は予算編成にいわゆる安定價値基準計算制度を採用いたしまして、收支の金額を先ず一定の基準價値を以て編成をして、インフレーシヨンによる通貨價値低落の影響を修正をして行くという根本的な手段を講ずるより外はないと思うのであります。こういう見地から、予算編成方針につきまして大藏大臣の所見を伺いたいのであります。  第一に大臣は新年度におけるインフレーシヨンの進行につきまして如何なる観測をしておられますか、インフレシヨンの進行速度を緩めるということを総理大臣は言われたのでありますが、新年度におけるその進行速度を一体どの程度に予測して予算編成に織り込まれる方針でありますか、これを伺いたいのであります。  第二に、インフレーシヨンによる歳出の膨脹を補正予算によりまして後から随時に賄うという現在のような無計画予算編成の方法というものは極めて不健全なものであります。(拍手)だから今後はこういう方法を改めて、予定されるインフレーシヨン進行速度に対応いたしまして、予め歳入を確保して予備金の留保をなすことが是非とも必要だと思いますが、大藏大臣の見解を伺いたいのであります。  第三に、インフレーシヨンが激化する現在のような時期には、安定價値というものを基準とする計算制度を採用いたしますことが、予算均衡を保持するために必要なばかりでなく、租税の合理的な賦課徴收につきましても必要ではないかと思います。現在のように名目上の擬制所得に課税するということは、実は資本に課税をして企業の資本維持を困難にし、生産力を破壊し、やがて國民経済を破壊する結果となると思うのであります。これらの点から考えまして、安定債値計算の制度を採用する必要について大藏大臣の所見を伺いたいのであります。  第四に総理大臣は税制の根本的改革を行うということを述べられたのでありますが、それについて具体的に示されましたところは、ただ勤労所得税の軽減と闇利得の徹底的な追求ということだけであります。つきましては大藏大臣は、一部に主張されておりますような軍事公債利拂停止及び闇利得追求一つの手段として、第二財産税を徴收するというような意見がありますが、それにつきましての大藏大臣の見解を伺いたいのであります。  尚総理大臣は第三段におきまして、物價賃金の安定を図つて勤労者生活水準を実質的に充実向上せしめると述べられたのでありますが、その具体的な方策としては、ただ勤労者生活必需品公定配給を確保増加するという、すでに昨年六月経済緊急対策政府によつて発表されて、その際声明をされ、而も現在までその実現を見ないところの試験済の旧政策を説いておるのに過ぎないのであります。物價賃金の安定につきましては、昨年の七月政府物價体系を改めて、これに対応する賃金基準設定し、これを確保いたしますことが日本経済の崩壊を防ぐ最後の一線であるというふうに言われて、飽くまでこれを確保する固い決意を表明されたのであります。ところがそれにも拘わらず、その後近々半年を出でずして賃金基準の変更、物價体系の再改訂を余儀なくするというような情勢に立ち至りましたことは、結局政府経済施策が致命的な破綻を暴露したものと言つてよいのではないかと思うのであります。(拍手)又政府はその組閣早々発表された経済緊急対策におきましても、物損と賃金悪循環を断つということをインフレーシヨン阻止根本條件としておるのでありますが、その後政府みずから(「マイク」を修理しろ」と呼ぶ者あり)煙草の大幅値上を行い、通信料金及び運賃等大幅引上計画して、物價体系をみずから破壊し、賃金基準の変更を余儀なくするということは、首相が強調する物價賃金悪循環を断ち切るというよりは、寧ろその反対に、その悪循環をみずから促進するという全く矛盾撞着した態度と言わなければならないと思うのであります。(拍手政府は近く物價体系を再び改訂し、賃金の新たな基準設定する方針のようでありますが、この際私はその設定方針につきまして、政府の見解をお尋ねしたいのであります。  第一に物價体系を合理的に設定することにつきまして、最も重要なことは、いろいろの物價の問題の均衡を合理的に保持するということであります。ところが今までの物價体系におきましては、この点に関して著しい欠陥が認められるのであります。これは政府がいわゆる安定帯というような観念に基きまして、画一的な基準を設けて、なべての物の改訂に対してこれを一律に適用しようとした誤まつた方針によるのではないかと思うのであります。(拍手つまり個々の特殊な物價に対しまして、画一的な水準の変化を考えるということが誤りではないか、新たに設定しようとする物價体系におきましては、そういう画一的な修正を排して、個別的な修正に重点を置くべきものと思うのでありますが、この点に関する政府意見を伺いたいのであります。  第二に、政府は現在の物質体系一般的水準戰前物價の約六十五倍というところに目標を置くと言いましたが、新たに設定されます物債体系一般的水準戰前の何倍くらいになる見込みであるのか伺いたいのであります。  第三に、物價水準賃金水準との比率は労働者生活水準を決めます極めて重要な関係でありますが、現在の物價体系賃金基準との関係におきまして、物價水準戰前の六十五借くらいにし、賃金水準戰前の二十八倍くらいにされたということは、結局労働者生活水準を大幅に旬下げ幸して、これを、戰前の約四〇%くらいに引下げる結果となるのであります。千八百円ベース賃金基準設定されまして、まもなくこれが破棄されなければならなくなりました一つの大きなな原因は、こういう生活水準の大幅な切下げが事実上労働者最低生活を保持するのに殆んど不可能であつたという点にあるのではないかと思うのであります。つきましては、今度新たに物價体系改訂して、又賃金基準を新たに設定いたします場合に、物價水準賃金水準との比率を現在のままに据え置かれる方針でありますか。或いはこれを改訂するといたしますれば、如何なる比率にこれを改訂する方針でありますか。御意見を伺いたいのであります。私の質問はこれで終ります。(拍手)    〔國務大臣和田博雄君登壇〕
  5. 和田博雄

    國務大臣和田博雄君) 高瀬さんの御質問に対しまして簡單にお答え申上げます。政府の先般総理大臣演説の中で発表した生産目標は軍なる生産目標であるか。それとも綜合計画一環としてのものであるかという点が、第一点であつたように思うのでありますが、勿論あの数字は、政府の立てております綜合計画のやはり一環とお考え下すつて結構だと思うのであります。綜合計画を立てまするに当りまして、言い換えると、長期復興計画を立てるに当りましては、第一番に労働の再生産を可能にするような或る一定生活水準、それから輸入を賄うに足る輸出、この二つ條件を満たすに足る一定生産構造規模、それから最後には、労働生産性の向上によりまして、でき得べくんば完全雇傭の枠を実現する。こういう條件が満たされる時に、経済というものは自立経済として安定するということが費えるだろうと思うのであります。併しこの構造におきましても、生活水準をどこに取るかということによりまして、余程その後の操作というものは変つて來るのではないかと思うのであります。我々といたしましては、一応日本がポツダム宣言によつて許されました昭和五年、九年の生活水準というものを目標にいたしまして、綜合計画を立てておるのであります。ただ一年だけを切り離して立てたわけではないのでございます。去年の七月以降、片山内閣ができまして以來、経済安定本部に十の部会を作りまして、そうして或いはその中には輸送部門もあれば、或いは食糧品部門もあり、鋼材部門もあり、或いは綜合部門もあり、とにかく十の部会を設けて、それぞれの各部会がいろいろの、今我々の手許に集まりますデーターによりまして、それぞれの作業をし、それを又綜合部会において結論を出し、討議をし、又その後の経済上の、去年の七月以降における各種経済上の変化に応じまして、それぞれの修正を施し、或る一応の中間的な結論に到達いたしておるわけであります。併しこれらの細かい点につきましては、又内容につきましては、今各種方面から検討を加えておる次第でありまして、いずれその機会が参りますれば発表し、御説明申上げたいと、かように私は考えております。勿論その長期復興経済計画の中におきましては、日本だけの実力を以ちましては回復し得ない部門もありまするので、外囲からの援助を織り込んでおることは当然でございますしただ一つ、ここで我々の考えなければならないのは、経済再建復興をしますにつきましても、何よりも先づ第一番の條件になるのは、高瀬さんの御指摘になつておしりますように、日本現実経済力であります。この現実経済力を無視して、どんなに高遠な理想を構いても、それは実現できないのであります。從いまして現実経済力が一面においては大きな制約になりますが、現実経済力にプラス・エックスを加えることによつて、それがどの程度に、どの速度回復できるかということは考えられることであろうかと、かように私としても考えております。從いましてこの長期経済復興計画をやりますにつきましては、その目標になりましたものを実現しますにつきましては、或いは外國に対する援助の点について、或いは國内におけるいろいろな各方面における部面において、相当の具体的な政策を必要とするだろうと思うのであります。長期復興経済計画を我々が立てまする一つ目標を、將來における日本政策に或る方向を與えて行く、その一つの指針になるという点も考慮に入れておることを御了承願いたい。かように考えます。その場合に、統制から計画経済へという事柄は、これは一般的に、抽象的には言えないのでありまして、ただこの一つ計画性を特つたものを実現するについて、その各部門が綜合的にどういう程度に具体化されるかということは、各部門々々における政策の度合というものは、おのずと私は異つて來ると思うのであります。  第二の私に対する御質問は、物價に対する御質問でございますが、物價水準一般的に改訂するということは、これはインフレーシヨンの場合におきまして、少くともインフレーシヨンに対して眞つ向から取組む以上は、できるだけ避けて行くのが私は根本態度であろうと思います。去年の七月、新らしい物價体係を立てまして、千八百円ベースによる物價体係を立てて、これを我々がいろいろの御批評はあつたに拘わらず、極力これを一般的な改訂を避けようという努力をして來たのであります。併し日本のように、経済回復力の非常に遅い、戰前に比べまして、僅か去年は四二%、綜合工業生産力水準が僅か四二%にしか回復していないような時に、物價体系そのものを維持して行くということの困難さは、高瀬さん御自身十分御了解下さるだろうと思うのであります。從つて物價体系一般的に、いつどういう規模改訂するかということにつきましては、今私は只今それを申上げる自由は持ちません。併し去年の七月以降、各種條件変化がありますので、それか只今十分検討いたしまして、そうして総理の御演説の中にもありましたように、適当な改訂を加えて行きたいと、かように考えておる次第であります。ただこの際御了承を願つて置きたいことは、六十五倍の水準物價を維持した点でありますが、お話のように、若しもああいう安定帶を採りませんならば、物價水準というものは去年の七月においてもつと上つだろうと思います。御承知のように、鋼材のような生産回復が非常に僅かなものにつきましてこの安定帯を設けないならば、その價償は非常に高いものになつたのでありますしそうすれば、それを使う方の、使つて物生産している外の産業部内の製品の價格もまた高いものになつて來るのであります。そうするならば、財政面における‥‥成る程價格調整負担が百六十億しか負担はないのでありますが、併し物價水準そのものは、六十五倍を遥かに超えた大きなものとなつたろうと私は考えるのであります。政府としては、あの当時の非常にでこぼこのあつた、混乱しておつたその物價水準を一応六十五倍というところの水準に抑えて行く。そうして或る部分は財政負担をして抑えて行く。従つてそこに多少の画一的な弊害の出ることは止むを得ないということであつたのであります。勿論その後の價格における推移は、今後の改訂について十分取り入れてやつて行く方針であります。ただその場合に、物價は六十五倍であるが、賃金水準は三十倍である。これは國民労働者生活を非常に切り下げたことになるのではないかというお話でありますが、この点は、私は今まで機会あるごとに、この議場においても御説明申上げたように、日本経済力回復の、生活水準の低いことを反映しておるだけでありまして、物價が六十五倍になつて賃金水準が三十倍であるということを直ぐそのまま比較になることは、これは比較の対象を私は異にしておる御論であろうと思うのであります。  大体お答えする点は以上で盡きたと思うのでありますが、以上を以て御答弁といたします。    〔國務大臣栗栖赳夫登壇
  6. 栗栖赳夫

    國務大臣栗栖赳夫君) 高瀬博士の御質問に対し大藏大臣関係するところをお答えいたしたいと思うのであります。  この二十三年度、即ち明年度予算編成方針態度についてのお尋ねがあつたのでありますが、これにつきましては実は現内閣は昨年の半ばに成立したのでありまして、追加予算編成しただけでありまして、本予算を通じての編成は今回が初めてであります。前内閣まで探りました予算編成方針は、この本予算において大体見通しを付けて、これで賄い得るだろうというので賄いました。後は追加予算は必要が生じた時に適当な財源をその場で見付けてやつて行くというやり方であつたのであります。実は私大藏大臣になりましたけれども、一年を見通しインフレーシヨン進行度を見込んでの財源等についての余裕を持たしておつたというようなことはなかつたのであります。從つて指摘のような追加予算も誠に苦しい立場において、その必要を生じた毎に編成せざるを得ないような情勢であつたのであります。併しながら二十三年度予算につきましては、大体收支、つまり支出の見通しを付けまして、そうしてこれは一年を通じての見通しを大体付けまして、その付けるに当りましては、現在の物價賃金その他の水準というものの上に立ちまして、そうしてその上にインフレ進行度その他のために生ずる調整というようなものの見通しを立て、そうしてそれを見込んで大体の收支を作り上げ、更に收入面におきましても税その他の官業の收入、それの見通しを立てて、そうしてそれを見合わして確定して、この数字について先ず予算を立てるということにいたしたいと思うのであります。從つて追加予算の必要が生ずる場合も成るべく避けたいと思うのであります。止むを得ない調整ため、或いは未確定なる事情ために、それが確定する際に追加予算を立てますときは、やはりこの見込んでおります大体予定しております收入財源を見合わしてこれを立てて行く、こういう方針にいたして只今編成方針その他に從事しておるわけであります。いずれこの点につきましては、予算の御審議を願う際に改めて申上げたいと思うのであります。  尚インフレ進行度について、これに関連してのお尋ねがありましたのでありますが、インフレ進行度、これは單に通貨増発量だけを見るということも妥当ではないと思うのであります。これは通貨増発量、それから國民経済購買力の状況、こういうような点、殊に昨今購買力なども主要食糧というものについては相当集中されておりますけれども、その他一般の物については増勢が減衰をしておるというような情勢もあるかに見えますのであります。そういうようなものを見込みまして、大体予算を立てます時には一定見込みを立ててやることにいたしておる次第であります。これも予算の御審議を願う際に改めて申上げたいと思うのであります。ただこれにつきましても、政府といたしましては、この三月までの通貨増発の状況、その他は先日も通貨安定の審議会で大体決めたのであります。日本銀行の発行限度を二千七百億に決めたのであります。これも二千七百億までは出るというような意味でなしに、それを成るべく下に打止める。併し最高の限度をそういうようにして置く趣意であります。  それから予算編成に当りましては、民生の安定、國民生活國民経済とマツチしたこの予算編成する。殊に生産増強の面、現内閣長期計画を立て、その第一年度として二十三年度予算編成するわけでございます。そういうような面も十分財政の許す限りは反映さすに努めて今編成しておる次第であります。  それから税制の改善、改正についてのお話がありましたのでありますが、これはインフレーシヨンの現在のような進行過程におきましてはこの予算申告制を採る。予算制を探るということが、これは当然必要だと思うのであります。これを今後も採つて行くつもりであります。それから申告制でありますが、これは民主的な非常ないい制度であるのであります。國民の間に十分慣熟されない或いは普及しておらんというような点がございますので、これを十分普及してやつて行きたいと、こう思つておるのであります。  尚この税の課税の点に考えまして、國民生活と、先程も申しましたように、マツチする点において課税が必要であります。勤労所得者に対する控除とか、減免とか、こういうようなこと、これは勿論財政の許す範囲で考えて予算に盛りたいと思つておるのであります。尚この生産増強というような点、労働意欲の高揚というような点を考えまして、目下問題となつております超過勤務に対する所得、これに対する課税の減免、軽減、或いは法人税の軽減こういうようなことも十分財政の許す範囲において考えたい、こう思つておる次第でございます。  それから安定價値計算の採用についてのお話があつたのであります。これは各方面からもいろいろお話もあるのであります。十分研究はいたしておるのでありますけれども、諸般の事情と睨み合せていろいろ考えなければならん点が多々あるのでありまして、政府といたしましては、今これを採用するというようなことの決定はいたしておらん次第であります。  それから次には軍事公債利拂停止、こういうお話があつたのでありますが、これは政府態度については先日総理より申しました通りであります。今少し詳しく申しますと、この利拂停止ということがいろいろな意味から論ぜられておると思うのであります。軍事公債、戰時中の公債という意味において、これが主張される点もあるのであります。財政上の負担軽減という意味から論ぜられる点があるのであります。この二点が大きな点であると思うのであります。併しこれはこの今の戰時公債は大多数、殆んど大部分は金融機関、而も預金部であるとか、或いは簡易保険局であるとか、一般の金融機関、農業会とか、こういうような國民の預金の見合いとして持たれておるのでありまして、こういう点などを考え合わせますと、單に利拂停止ということだけを取上げて考えるわけに行かないのであります。殊に影響するところは非常に多いのでありまして、政府といたしましてはこういう意味におきましてこれを採用するということは考えておらん次第であります。金融機関につきましては、この際ちよつと附言をいたしますというと、企業の再建整備と睨み合せて再建整備を急いでおる次第であります。金融機関につきましては、大体この三月までに再建整備を急ぎまして、新旧勘定を合併いたしまして、そうして封鎖預金等の整理もいたしまして、平常の状態に速かに復して、そうして日本産業復興経済後輿の金融の役を完全に果すような態勢にいたしたいと、こう考えておる次第であります。そういうような点でございますので、この軍事公債利拂その他の停止というようなことは今考える余地もないと、こう考えておる次第でございます。それから第二財産税の問題でありますが、これは外國にもいろいろ先例があるのでありますが、これも直接に直ちに財産税としての財政收入を目的にするのか、或いは國民の財産の在りかを捕えるために、軽度の財産税を課するという趣意であるか、いろいろ要望されておるところもまちまちであるように考えるのであります。併しながらいずれにしましてもこの制度を徹底的に行いますのには、どうしても新円の封鎖か若しくはこれに類似する行為を行わなければならんのでありまして、さようにいたすことは通貨の信用ということの上に誠に好ましからざる影響を與えるものであります。又技術的に申しましても、通貨が現在のように発行されておる状況におきましては、短時日に公平に、事前に渡れることがなしに、これをするということは、技術的にも非常な困難があつて、殆んど不可能に近いと思われるのでありますので、こういう際に直ちにこれを採用するというようなことは、政府としては考えておらん次第であります。簡單でございますが、これで……。(拍手
  7. 松平恒雄

    ○議長(松平恒雄君) 前之園喜一郎君。    〔前之園喜一郎君登壇拍手
  8. 前之園喜一郎

    ○前之園喜一郎君 國家の政策を樹立するに当りましては、何よりも先ず國民生活の実態を綜合的に全面的に通観して、各種の問題を正確に認識することが最も大事であることは申すまでもないところであります。片山内閣総理大臣は、その施政方針演説において、昭和二十三年度における政策の全貌を発表せられ、恒久的な再建計画の第一歩の踏出しと称して、経済復興産業建設への大体の具体策を掲げられて、國民の前に政府の進むべき途を明らかにせられたのでありまするが、私は片山内閣政策の重点を経済復興産業の建設に置かれたことに賛意を表しますると共に、予想せらるるところの幾多の困難を克服して所期の成果を挙げられ、而して國民をしてその所を得せしむるの成果を挙げられんことを望むものであります。ただ併し私の聊か遺憾に思いますることは、経済復興産業の建設に全力を集中せられんとするために、ややもすればそれ以外の重要問題を逸し、又は軽視せられたる嫌いなきかという点並びに示されたる具体策、特に産業建設の原動力たる労働意欲の高揚に対する考え方が、徒らに物のみに偏し、労働精神の振起に工夫が擬らされていないということであります。(拍手)前者は暫く措き、先ず後者について申すならば、片山総理のいわゆるより多く働く者に、よりよき生活を與えるという御主張、これは当然過ぎる程当然でありまするが、ただ唯物的な考え方に偏しておりはせんかと私は考えるのであります。全國の労働者産業再建印相國再建ために、蹶然として大地を蹴つて起ち上り、奮起する精神的な施策を立てることが最も必要であると私は信ずるのであります。換言すれば物質の充足のみによつて、直ちに高い生活意欲が生れるものであるということは認識の誤まりであると私は信ずるのであります。我が國は敗戰第四年を迎え、今や漸く祖國再建の熱意が國民の中に盛り上つて來つつあるのでありまするが、併し経済は將に破局に陥らんとし、道義は地を拂い、百鬼夜行、一歩を誤まれば遂に再起不可能の土壇場に追い込まれておるのであります。私は深く國民はこのことを思わなければならない。又國民に強い耐乏生活を求めらるるに先立ち、政府みずからが彼の英國のクリツプス藏相のごとき耐乏生活の範を國民に、特に働く労働者の前に示すべきであることを信ずるのであります。かくすることによつて國民は奮起し、労働者生産意欲の高揚も期せられると私は確信いたす者であります。この点について総理並びに労働大臣の御意見を拜聽いたしたいと考えます。  第二は、治安の問題であります。治安の問題は今日國民に取つて最も大きな問題であると私は考えます。然るに片山総理は、その御演説の中に治安については言及しておられないのでありまするが、言及せられない理由は、いわゆる経済復興生産建設によつて直ちに治安は回復し、道義の高揚も期して待つべきものがあるとせられるのでありましようか、若し然りとするならば、私は遺憾ながら異論なきを得んのであります。端的に申上げますると、今年は経済危局の年であるばかりでなく、文案に治安の混乱も最高潮に達する年であると思うのでありまして、経済復興産業建設に一歩前進して、國民生活に生命財産の危惧と不安を増大しつつあることは論を俟たざるところであります。東京の眞中の銀座、西條八十氏が曾て「昔恋しい銀座の柳」(笑声)と歌い、情緒纒綿たる所として東京人の最大の遊び場所でありました銀座でさえ、夜分の通行は危険視せらるる状態であります。ましてその他の地域においておやであります。今や都郡を問わず、津々浦々に至るまで窃盗、強盗、辻斬、追剥、文字通りの無警察状態であると私は考えるのであります。今にして治安の維持ができなければ、生産復興もすべての政策遂行も、ついに支障を來して行き詰りをなすのではないかと私は考えるのであります。(拍手)ここにおいて、先ず我々は日ごとに増加しつつある犯罪の原因を究め、これに対する適切なる刑事政策が樹立せらるることを強く要望いたすものであります。(拍手)犯罪の原因は千差万別でありまするが、私はここに一つの事例を申上げて御参考に供したいと考えます。  私は弁護士を業とする者でありまして、議院に出ない時は郷里にあつて毎日裁判所に出ておつたのでありまするが、終戰以來、刑事被告人として調べを受けまする者は、鹿児島地方裁判所においてさえ、多い時は一日五十人位、平均二十名内外の者が調べを受けておる状態であるのであります。而してその二十人或いは五十人の大部分は若人であります。青年であります。而もその若人の大部分が復員軍人であるのであります。即ち被告人の多くは曾て軍閥によつて戰わされたる戰争に参加したる者であります。この事実は政府はもとより國民の深く考えなければならない点であると私は考えます。而して私の知る範囲においては、彼ら復員軍人が罪の深淵に足を踏み込みました主なる原因は、彼らが祖國に復員いたしましてからの虚脱と絶望感に支配せられた結果であるように考えられるのであります。即ち彼らは復員することによつて限りなき喜びを感じ、祖國に多くの期待と夢とを抱いて帰つて來たのであります。ところが彼らの期待は外れ、夢は破れた。祖國は彼等に冷たかつた。祖國は彼らを温かく抱擁しなかつた。彼らの中には、荒涼たる焼野原に吹き荒ぶ凩の中にさまようような、はかない、やるせない絶望感に閉ざされた者も決して少くなかつたのであります。私は彼らの裁判の審理に立会つて、幾度か法廷の床の上に熱い涙をこぼしつつ考えたのであります。(「映画館でやれ」と呼ぶ者あり)國家は彼らの傷心をいたわつて、彼らのさすらう魂のありかを救い、彼らの行手に灯を掲げたならば、如何に彼らは感泣して、一度は國家に捧げた体を、今こそ眞に平和祖國建設の面に起ち上つたであろうということを考えたのであります。換言すれば、彼らを裁判所への、刑務所への道標を成したものは、國家それ自体であつたといつても、私は敢て過言ではなかろうと考えるのでありまして、今日の國民の不安と危惧は、その一端をみずから求めたものであるといつても私は当らないことがないと考えておるのであります。  私は繰返して申上げます。刑事政策はその原因を究め、且つ適切なる施策を立てなければならんのでありまして、今日我が國の治安の上の一大不安は経済確立によつて直ちに全部が解消するものであるということを考えるならば、それは思いの至らざるも甚しきものであると思うのであります。この点について私は総理の御意見を承わりたいのであります。  尚ここに附加えてお尋ね申上げたいことは、新らしく警察法が制定せられたのでありまするが、この新らしき警察制度の運用によつて將來治安の維持ができるという確信がおありになるかどうか。將來連合軍の厚意ある援助なくして日本の治安を確立して行くことができるかどうかという点についても、私は御答弁を願いたいと思うのであります。  第三は食糧自給対策についてお尋ね申上げます。片山総理は本年において、從來の通常生産高に対し、主要食糧一割増産を目標にしておられるようでありまするが、その從來の通常生産高の全國でできまする数量を何程と考えておられるるのであるか。又一割増收を何年継続してやるのであるか。そうして最後に、日本ではぎりぎり幾らの主要食糧生産できる見通しであるかということであります。我が國は四〇%の領土を失い、それに準じて耕地面積も減じておるのでありまするが、私の久しき農場経営の経験から申しますると、土地の改良であるとか或いは農家経営の合理化、働く農民の意欲の高揚によつて、まだまだ増産の可能性は十分にあると思うのであります。これらについて私は少しく意見を申したいのでありますが、時間の都合もありまして本日は割愛いたします。但し政府に要望いたしたいことは、動く農家の生産意欲の問題でありまして、これは私、先程労働意欲の高揚について申上げましたことをここに援用して置きたいと考えるのであります。農家に対しては、政府國民も最大の感謝を物心両面において表現すると同時に、供米完遂後の自由米の取扱、供米價格の合理的計算等について再検討を加うべきであると考えるが、この点はどうであるかということについても御答弁を願いたいのであります。  第四に、政府は中小企業を重視せられ、その振興を企図せらるるということは甚だ意を強くするところでありまするが、その具体策が示されていないのであります。その具体策をここに承わりだいと考えます。  更に附加いたしまして、勤労者生活協同組合の育成助長と、中小商工業との関連乃至調節と、統制経済はこれを重点的に強化して、成る程度の撤廃を考慮せらるる意思はないかということについてお伺いしたいのであります。例えば我々の水産委員会におきましては、鮮魚について大衆魚、大衆向きの魚類九種を統制強化して、その他のものについては統制を撤廃することを、政府に要望したのであります。これは一例に過ぎませんが、全面的にそういうものが少くないということを私は考えます。この際私は統制の問題について再検討をせられ、強化すべきものは強化する。撤廃することが相当と思うものは直ちに撤廃せらるるように要望したいのであります。  第五は教育の再建乃至教育の民主化の問題であります。教育の民主化を目標とする六・三制は、すでにスタートを切りまして、來年度においては新制高等学校の新設が考えられておるのでありまするが、この六・三制の全貌を考えて見ますると、下の学校はそのままに置く。上の綜合大学もそのままに置く。そうしてその中間だけをいじつておるような感じがするのであります。六・三制即民主教育の徹底は、先ず私は制度自体が民主化する線を確立するものでなければならんと考えるものであります。六・三制によつて所期の効果を挙げ得られるとお考えになつておるのであるかどうか。尚六・三制の確立に要する財政見通し並びに学校の数、学校の配置等については特に慎重を期せられんことを私は望むものであります。更に政府は勤労青年のために定時制高等学校の新設をもくろんでおられるようでありますが、私は青年教育に対してはもつと全面的に、あらゆる角度から検討して、青年の熱と力と純情とを結集して、祖國再建の先駆たらしめるの徹底的な教育施策を立てなければならんと思うのでありますが、この点について当局の御意見を承わりたいのであります。  第六、行政整理と行政機構の問題について極く簡單にお伺いいたします。行政整理はこれを一律に断行してはいけないと私は考えるのであります。各般の事情を勘案すべきであると考えます。例えば裁判所、検察廳のごときは現在の定員でさえも著しい手不足を策しておるのであります。これが若し他の官庁と同様に整理せられるということになりまするならば、事務の澁滯を來しまして、いやが上にも社会不安を増大するばかりであると私は考えておるのであります。  尚この際行政機構に関連いたしまして申上げたいことは、今日國民の間に様々の議論を巻くき起しておりまする公職適否審査の件であります。この問題は平野、林両氏の追放に絡んで、國民にかなり暗い印象を與えているように考えられるのであります。(拍手)私は常に、政治は高い倫理の上に立ち、極めて謙虚なる心持と、明朗豁達にして愛と涙を岩清水のごとく滲み出させるようなものでなければならんということを念願いたしておるものであります。この意味におきまして、たまたま両氏の問題が國民に暗い印象を與えたことは、片山内閣ために甚だ惜しむものでありますし併し私は駆け出しの議員ではありまするが、聊か両氏追放の止むべからざる事情も存じておるつもりでありますから、私の意見乃至質問は、決して片山内閣を衝き、片山総理を難ずるという氣持はないのであります。それ故に総理におかれても率直明快に御意見をお答え下さるようにお願い申上げます。私の意見を一口に申上げると、公職適否審査委員会の所管を全部最高裁判所に移されたらどうかということであります。(拍手)私はこれが司法省の所管であり、総理大臣最後の決定権を持つておるというところに暗い影もさし、國民の疑惑を招く、政治の問題になるということになるのではないかと私は考えます。私はこの際思い切つて速かにこの委員会を最高裁判所の所管に移されるように要望すると同時に、その御意見を承わりたいのであります。  第七は、人口問題並びに將來のいわゆる講和会議の終了後の移民の問題について、私はお尋ね申上げたいのであります。この問題について政府の具体的方針があるならばお聞かせを願いたいのであります。日本は狭い領土と、そして人口の繁殖力も非常に多い、食糧も少いというようなことで、人口問題は相当に考えなければならんのでありまするが、併し私はやはり不自然な入口の調節に賛意を表することはできない気持がするのであります。  第八に、私は新憲法実施九ケ月の回顧について、ただ一つだけお伺い申上げたいと思います。新憲法並びに民法、刑法の改正、実施によつて、多年いわゆる新らしい女性によつて叫ばれて來ましたところの両性の権利の中等の問題は一先ず法律の上においては確立したと考えてよろしいと思うのであります。ところが実際においては、今尚旧態依然として、男尊女卑の思想と、男性の横暴は改まつていないと私は考えます。申上げるまでもなく、民主主義政治は両性の平等の上に立脚することが喫緊事であります。健全なる家庭、平和なる社会は、眞に女性を敬愛するところに始まると私は考えるのであります。政府は両性平等の法律制定によつて満足することなく、よく男性を指導し、女性を啓発して、本当に法律の精神を具体化するところの方途孝考えられておるか。或いは講じようとする御意思があるかどうかということをお尋ね申上げたいのであります。その他二三の問題を考えておりまするが、質問の重複を避けて割愛いたします。ただ一点大藏大臣お尋ね申上げたいことは、第二封鎖預金の取扱について國民相当に考えておると思いまするので、この機会に御説明を願いたいと考えます。  最後に私は、(「まだやるのか」と呼ぶ者あり)海外同胞引揚促進の問題について政府がこの上とも十分なる努力をせられるように切望して止まないのであります。そうして若し三度酷寒の地に年を迎えた七十五万の同胞をその家庭に帰すことができないならば、せめてあなたの父は、あなたの子供は、あなたの夫は、どこかに無事に生きているんだ。いつかは必ず帰つて來るのだということをその家庭に知らしめる方法がないものであるかや連合軍の御厚意によつてそれらの調査をして、せめてそれだけでも各家庭に知らせるような方法をお採りになる考えはないものかし若しできるならば是非そのことをやつて頂きたい。このことを最後にお願い申上げる次第であります。(拍手)私、野人礼にならわざる点も非常に多かつたと思いまするが、〔「分つた」と呼ぶ者あり〕その点ここに謝する次第であります。(「諄かつた」と呼ぶ者あり)    〔國務大臣片山哲君登壇
  9. 片山哲

    國務大臣(片山哲君) 前之園君の私に対する御質問相当多いと思うのでありまするが、初めの経済復興産業建設について、第二番目の労働意欲高揚について、この二点については前之園君の御質問の御趣旨には大体賛成であります。どうしてもこの我が國の難局を打開しまして、國民生活の向上を図り、國家経済、國家産業の隆盛を期するためには、國民一体となつて協力の実を現わして行かなければならないと思うのであります。時局を担当いたしておりまする政府といたしましては、誠意を披瀝し、懸命の努力を拂つて、この目的達成に邁進いたしたいと思つておるのでありまして、一昨日申上げました施政方針をただ單に机上の空論に終らしめないように、これを裏附けするため予算をできるだけ早い機会に編成いたしまして、諸君にお諮りをいたして実行に移したい。実行策を明らかにいたしたいと思つておる次第であります。  尚労働意欲高揚につきましても、御質問の御趣旨には全く同感でありまして、ただ物的にその待遇をよくし、その生活を安固ならしめる外に、精神的な協力を十分に求めなければならないと思いまして、労働者の教育につきましても。又労働組合運動の健全なる発達につきましても、格段の指導と努力を拂いたいと思つておるのであります。矯激なる運動に対しましては、断乎たる態度を取つて、眞に國家建設のために、産業発展のために、労働大衆の心からなる協力を冀つておる次第であります。  次に、治安の問題でありまするが、これは施政方針演説に触れなかつたという点を御指摘になりましたが、全く重要な問題でありまして、あらゆる面から検討して行かなければならないのでありまするが、第一回國会におきまして、十分その意を盡しておつたと思いましたので、触れることを割愛いたしたのであります。御承知の通り警察制度も新らしくなり、裁判制度も民主的に変つて参りました今日、過度時代におきましては、新らしい構想を以て臨んで行かなければならないのであります。國民の自主的な協力によつて國民全体が我が國の治安を守り、政府はその間に十分これを指導して、連絡をよくして遺憾なきを期する、こういうようなやり方で民主的、自主的に進んで行きたいと思つておるのであります。在來のような官僚的なサーベルの威圧で民衆を脅かしたというようなやり方は、全然避けたいと考えておるのでありまして、新らしい警察制度の趣旨をこの機会に徹底させなければならないと思います。過渡時代におきましては、遺憾ながらその間に幾らかの摩擦が起きまして、問題を生ずることなきにしもあらずと思いまするが、政府も十分に努力いたしまするが、指導的立場に立たれまする諸君におかれましても十分に御協力をお願いし、民衆の教育と國民の自主的な治安維持協力態勢を十分に持つて頂くようにしたいと思います。政府といたしましては、公安委員会或いは新らしい警察制度の指導教育に全力を傾倒いたしまして、來たるべき治安維持に万遺漏なきを期したいと考えております。十分自信を持ち、十分努力いたしまして、國民の不安を取除きたいと考えておる次第であります。  行政整理の問題につきましては、施政方針で述べました通りで、根本的な問題につきましては、審議会を組織いたしまして、十分諸君の御協力を仰ぎたいと思います。当面の問題といたしましては、來年度予算にこれを盛るべく、且つ又新らしい案を諸君にお示しいたしまして、これ亦御協力を仰いで、眞に能率増進、無駄排除、経費節減、こういうような意味において当面の行政整理をも行いたい。二つ並べて行なつて行きたいと考えておる次第であります。  尚中央公職審査委員会の問題でありまするが、前之園君の御意見では、これを最高裁判所に移したらどうか、こういう御意見であります。この問題は我が國として、ポツダム宣言を受諾しておる我が國といたしましてはありまするが、当然なすべき事項でありまして、やはり政府の仕事としてなさなければならないと考えておるのであります。その意味において單なる司法問題ではない。單なると言うと或いは偏するかも知れませんけれども、司法、行政と区別いたしますると、裁判問題、司法問題ではなくして、國家としてなさなければならない仕事でありまするから、やはり中央資格審査委員会というものを組織いたしまして、最も公正に、最も民主的に、政府から離別まして、全般の事実を綜合して、司法的な問題よりももつと大きな見地に立つてこの問題を審議さるることが適当ではなかろうかと、こういうふうに考えておりまして、すでに前内閣以來その方針の下に進んである次第でおりまして、私もこの資格審査委員会が嚴に公正に且つ又最も民主的に行われておることを信じておる次第であります。  尚平野君の問題にも官及されましたが、この際誤解を解くために一貫いたしたいと思います。成る程昨年十二月二十六日に一応の結論を得たのでありまするが、一応の結論を得たということだけで全般的な最終の案にはならないのであります。関係筋の十分なる了承を得ないことには最後結論を得られないのでありまして、委員会としましては、いろいろ、の情勢によりまして、更に新らしい材料によつて、慎重なる審議を各委員の協力によつて進められたことと思うのであります。そういうふうで、最後結論には二十六日には到達しなかつたので、一月の六日、九日、十三日と回を重ねて、最も慎重なる審議を進められたことと思うのであります。私としましては、その二十六日の審議が氣に入らないからやり直せといふようなことを言つた覺えもなく、又そういうようなことをすべきものではないと考えております。政府は少しも、政略的にこれを使おうとか、気に入らないから追放してしまえとかいうようなことを委員会に申込んだような、そんなつまらんことは決していたしておりませんから、この点は十分に御了承を仰ぎたいと存じます。尚委員会につきましていろいろ傳えられておりまするが、私は委員長初め委員諸君が最も厳正に、信頼すべき態度を以て審議を進められたということを深く信じておるのであります。特に委員長の学者的態度とその人格には尊敬をいたしておるのでありまするから、疑惑は一帰されて然るべきであろうと思つておる次第であります。  尚最後に、憲法その他法律における男女同権の実が十分に挙つていないという点についての御質問がございました。これも憲法附属の法規を段々と整備いたしまして、民法におきましても、刑法におきましても、その他の附属法規におきまして、段々と充実して男女同権の建前を明白にいたすべきに当然でありまして、諸君の御協力によりまして、その実を発揮いたしたいと思います。併した法律だけで、法規の上だけでこれを現わすだけではいけませんと思いまするので、教育の点においても、或いは又社会問題の点においても、経済上の問題から申しましても、同じように働くならば同じような結果を十分に持ち得るようにと、眞の意味の法律的、社会的、経済的男女同等の立場を明らかにいたしまして、民主的精神を一般に普及する必要があろうと存じて、その問題につきましても、政府といたしましては十分に努力いたしておるよような次第であります。その他の点については関係大臣から答弁をいたすことにいたしたいと思います。    〔國務大臣芦田均君登壇拍手
  10. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) 前之園君にお答えいたします。前之園君は人口問題に多大の関心をお持ちになりまして、平和成立後における海外移民に対して、政府政策を持つておるかというお尋ねであります。我が國が平和以後各國との交際を回復いたしまして、自由なる交通を認められる時期に至りましたならば、我が國の労働力を喜んで迎え入れる國々を相手といたしまして、將來自由に海外移民の行われ得るように、交渉を開きたいと準備をいたしておる次第であります。  次に、ソ連地区に抑留されておる在外同胞の帰還の問題についての御質問であります。すでに御承知のごとく片山内閣成立以來、我々といたしましても前之園君と同様の考えを以て、いろいろ連合國の熱心なる斡旋を依頼いたして來たのであります。昨今冬季凍結のために、一時送還を中止するのを止むなき状況に立ち至つておりますけれども、連合國におきましては、この問題の解決に今尚絶えず努力を続けられておるのでありまして、我々はその熱心なる努力に十分の信頼を置いて、最善の解決を得ることを期待しておる次第であります。簡單にお答えいたします。(拍手)    〔國務大臣水谷長三郎君登壇拍手
  11. 水谷長三郎

    國務大臣(水谷長三郎君) 前之園さんの御質問にお答えいたします。  中小企業の振興に関しましては、問題の重要性に鑑みまして、昨年十一月七日中小企業対策要綱を閣議決定いたしまして、その方針を明らかにしたのでございまするが、その内容につきましては、前國会におきまして再三御説明申上げましたところでございまして、中小企業が中小なるが故に蒙むる不利益を除去いたしまして、且つ規模の大小に拘わらず、企業自体の優秀性に強く着目する施策を行いますと共に、今後の世界経済の動向に備えまして、眞に國際競争に耐え得る中小企業を育成することに主眼を置いたのでございます。今後はこの対策要綱を具体化するにつきまして、この方針の下に行つて行くつもりでございます。本來中小企業が大企業に比較いたしまして、困難な原因いろいろと挙げられると考えられるのでございまするが、根本的に通観いたしますれば、次のような諸因に基くと考えるのでございます。  即ち第一には、中小企業は小規模且つ多数のため、その利益を代表して発言する機会に乏しく、その正当な利益が諸般の事項に反映しにくいこと。第二には、世間一般に中小企業の実力を頭から過小評價する先入主的考えが多いために、実力があるにも拘わらず認められないものが極めて多いこと。第二には、経営技術その他につきまして、その小規模であるために研究もむずかしく、又新らしい問題に対しても、これを受け入れ消化する能力に欠けております。その結果といたしまして、実質的に低位にあるものも少くないこと。以上が大観して中小企業が資金、資材、技術その他諸々の点で困難な條件の下に立たざるを得ない根本原因でございます。  よつて私らといたしましては、中小企業の健全な育成を図るためには、これらの諸原因を除去する具体策を講ずることが必要であろうと思いまする。先ずそのためには、第一に、中小企業の公正な利金を代表いたしまして、中小企業の公平な取扱方を主張する政府機関といたしまして、中小企業聽を設置して、中小企業の向上に当らせたいと考えまして、目下各方面と折衝中でございまするが、幸いに成案を得ますれば、本國会に提出して御審議を仰ぎたいと思つております。  第二には、中小企業に関する資金、資材対策でございまするが、現在のような程度の物資不足経済の下におきまして、中小企業全部に対して、中小なるが故にこれに資金、資材を與えることは事実上不可能であるばかりでなく、國家経済上も取るべきことでないと考えております。先に申上げました通り、企業の大小に拘わらず、その実質の優秀かどうかということ、及び現在の状況下におきまして、眞に緊急を要する業種かどうかという観点に立ちまして、重点的にその振興を図りたいと考えておる次第でございます。勿論從來のように、徒らに大企業に偏重して資金、資材の割当を行うというようなことは嚴に戒しむべきでございまして、中小企業廳は勿論、政府全般といたしましても一企業の生産性乃至生産効率に主眼を置く方針を徹底させるように努力して行く覚悟であります。尚右に関連いたしまして、中小企業の特殊性に鑑みまして、どうしても中小企業を専門に取扱う金融機関を強化する必要があると考えられます。又中小企業の金融が円滑に行われるため手段といたしまして、民間の信用保証機関の奨励等も併せて考えたいと思つております。  第三には、技術、経営その他中小企業のレベルを向上させることは、本問題の中心課題でありますが故に、これに関しましては具体的に各企業の欠陥を発見いたしまして、これを矯正する方法として審査制度を実行したいと考えております。その審査の結果に基きまして、具体的に実地指導を行う以外に、一般的には技術、経営その他諸般の事項に関する向上を図るために、展示会或いは見本市の開催による相互啓発、講習会開催による指導、その他海外及び國丙技術の導入、優秀な発明、考案の育成工業化、試験研究機関の活用、一般経済、技術に関する知識情報の提供等によりまして、根本的な振興の方策一を講ずるつもりでございます。    〔議長退席、副議長着席〕  尚中小企業の欠陥を補う方法といたしまして、協同組合制度による共同施設の活発なる利用によりまして、これを解決することも有力なる方法であると考えられますので、眞に相互扶助の精神に基きました共同施設中心の協同組合の振興については、今後とも努力して行く考えでございます。その他具体的に今後施設を行なうことは多々あると考えられるのでございまするが、要するにこの問題は理論もさることでございますが、その衝にあたる者が如何に熱意を持つて、不断に、而も強力且つ堅実に行うかという実践の如何にあると信ずるので、この点に関しましても十分その効果あらしめるよう留意するつもりでございます。同時に又この中小企業の振興ということは、業者自身のこれに対する態度如何にかかるのでございまして、如何に政府。諸團体、一般公衆がこれに力を挙げて援助いたしましても、業者自身が眞劒な向上心を持つて起ち上つて來なければ不可能なことでございまする。我々は相共に眞劒になりまして、一日も早く強固なる中小企業を確立することを念願といたしたいと思つております。以上簡單でございますが御答弁申上げます。(拍手)    〔國務大臣森戸辰男君登壇
  12. 森戸辰男

    國務大臣(森戸辰男君) 前之園議員の御質問に簡單にお答えいたします。新らしい教育制度、六・三・三・四の制度根本精神と言いまするか、それについての御質問でありますが、この制度は新らしい憲法の精神でありまする平和主義と民主主義と労働を尊重することを精神として、それを教育において実現せんといたすのでありまするが、制度の上からは民主主義を特にその基調といたしておるのでありまして、教育の機会均等と國民の基礎の上に立つ文化水準の向上とを目標といたしておるのであります。  第二点にもそれではこの新らしい教育制度の実現、殊に新らしい新制中学の建設等について財政見通しはどうであるかということでありますが、大きく申しますれば、これにはいろいろな困難がございます。殊に地方の財政についてはなかなかの負担でございます。こういう点から、世上しばしば新制中学は中止するのではないか。或いは延期するのではないかというような考え方が流布いたしておるようでありまするが、政府といたしましては、財政上幾多の困難がありまするけれども、國も、地方も、教育の関係の先生方、児童、御父兄方も皆協力をして、この困難の間に新らしい教育制度を貫徹して行くという方針を探つておるわけであります。  第三に、学校の新設等についての御質問でありましたが、これは單に紙上の計画でなく、國家の財政並びに地方の実情に即しながら問題を決定して行きたいと存じておるのであります。  第四には、勤労青年の教育についての御質問でございますが、新らしい日本の建設につきましては、勿論國民全般の協力によらなければならんのでありますが、殊に青年に期待するところが頗る多く、而も青年の大多数は勤労青年でありますので、勤労青年の動向というものが新らしい日本建設には非常に大きな役割を持つことは申すまでもないのであります。そこで政府といたしましても、この点には、学校教育の面でも、社会教育の面でも、特に重点を置いておるのであります。今年から始められまする新制の高等学校におきましては、この見地から、從來の昼行く学校、高等学校と並んで、実は定時制高等学校という、働きながら高等学校の課程を修め得るような制度を勘案いたしまして、いわゆる定時制の高等学校を始め、同時に夜間の高等学校をも行おうと思つております。尚これらの学校にも出られない人については、通信教育の方法をも始めたいと思つておるのであります。併しこれらにつきましては資金資材の面がありまするので、我々の期待するように十分なことは或いはできないかも知れませんけれども、かような方面に私共は民主的な教育が発足すべきであると存じまして、その方向へとあらゆる努力を畫したいと思つておるのであります。尚現に学校に通つておる学生で生活に困り、或いは勉学に不便を感じておる人々につきましては、大日本育英会の事業を更に拡充いたしまして、これらの人々の学資の貸與を財政の許す限り進めて行きたいと存じております。更に社会教育の面におきましては……と申しまするのは、学校以外において勤労青年がいかなる教育を、廣い意味の教育を受けるかといふことも、これらの人々に取つては誠に大事なことでありますので、これらの面におきましても、例えば労働文化講座とか学校開放講座とかを開きまして、主として参りまする青年の人々への教育に努めまするし、更に図書館の開設をもできるだけ進めて行きたいと存じております。併し社会教育の最も大事なところは、それが民主的な、自主的な形で行われるべきでありまして、地域並びに職域の青年諸國体の動きというものが特に重要であると存じます。この点におきまして文部省は、從來のようなこれらに対する指導監督というような地位ではなく、これらの運動が自主的に発展するような基礎を作つて行き、育成をなして行くという立場に立ちまして、これらのものが自主的な運動として回轉しながら、みずからを教育して行くような機会を十分に與えて行きたいと存じておるのであります。尚この点につきましては、政府が提唱いたして民間における運動の起ることを期待しておりまする新日本國民建設運動という線も、特に青年の間にかような運動が展開されまして、新らしい日本の建設に青年の力が導かれるようにと私共は心から念じておる次第であります。簡單にお答えいたします。(拍手)    〔國務大臣栗栖赳夫登壇拍手
  13. 栗栖赳夫

    大藏大臣栗栖赳夫君) 前之園さんから第二封鎖預金の取扱の見通しについてのお尋ねがございました。この点は只今申上げましたように、金融機関の再建整備というものとの間に関連いたしまして、國民がひとしく知りたいと申しておるところでございますので、聊か手続にも亘りますけれども、ここに相当詳細に申上げたいと思う次第でございます。先程申上げましたように、金融機関の再建整備は企業の再建整備と同様に、前内閣の行いました戰時中の補償打切によつて生ずる特別損失を如何に分配負担し、そうして速かに戰時中の水膨れその他を脱して、新らしい情勢に副うために急ぐ一つの終戰後の大きな措置であります。金融機関の方は企業再建整備と一應切り離しまして、特に速かにこの際するという必要があると認めましたので、先程來申しましたように、三月三十一日までに再建整備を完了したい。こういう目標の下に只今急いでいる次第でございます。速かにして、新しい金融機関として発足さし、そうして経済再建産業復興ために奉仕の役をいたす。こういう趣意において急がしている次第であります。第二封鎖預金はそういう関係で、企業及び金融機関再建整備の手続によりますというと、特別の損失負担をすることになるのであります。それは資本金が先ず負担をいたしまして、その次にはこういう債権が負担をすることになるわけであります。負担の率は特別損失が各金融機関によつて違いますのでそれぞれ率を異にするのであります。この或いは七〇%とか、或いは四〇%とか、こういうよろな損失を負担して、それだけは誠にお氣の毒でありますけれども切捨てられるわけであります。併し残存しました第二封鎖預金というものは、それは三月三十一日までに新勘定と旧勘定を合併いたしまするからして、いわゆる第二封鎖の残つたものと第一封鎖預金というものとが一緒になつてしまうのであります。併合されるのであります。そうして成るべく近い將來諸般の事情とも睨み合せて、そうして將來はこの預金を封鎖預金とか自由預金とするようなことにしたいと一本建にする土台を先ず作りたいと、こういたしている次第であります。そこで自由預金に一本建になるということはその後のことでありますけれども、三月三十一日までには第一封鎖と第二封鎖の残存部分とが一緒になる。こういうことになるわけであります。そうして金融機関の多くは、新旧勘定を三月三十一日までに合併をいたしますというと、それからは合併後、或いは増資をいたします。或いは第二銀行を作る場合におきましては、第二銀行の新株を募集するわけであります。いずれにしましても、増資の新株或いは第二金融機関の新株を募集するに当りましては、この第二封鎖の預金、債権を持つていらつしやる方には、最も優先に新株の応募ができる権利を與えることになるわけであります。即ちこの犠牲を負担された方に対してはこの新株の応募の選択権を與える。こういうことにいたしまして、幾分でもお償いができるものは償うようにいたそう。こういうように考えている次第であります。以上簡單ですが……(拍手
  14. 松本治一郎

    ○副議長(松本治一郎君) 前之園議員より農林大臣の答弁を求めておられますが、農林大臣は止むを得ない事情で出席されません。次回に答弁なさるとのことであります。平岡市三君。    〔平岡市三君登壇拍手
  15. 平岡市三

    ○平岡市三君 我が國現下の最大問題は、言うまでもなく経済問題であり、國民生活問題であります。そしてその病理的実体は、インフレーシヨンという、いとも顕著な現衆として、國家並びに國民の生命を間断なく脅威いたしておりますことは、すでに御承知の通りであります。政府筋におきましては、旧臘來、日本銀行券の発行高がやや減少の傾向を辿り、且つ石炭生産が上昇の傾向にあることを以て、インフレに対し比較的楽観的見解を漏らしておるようでありますが、鉄鋼その他の生産資材の生産減退と財政收入の危機とは、インフレ昂進に対して楽観を許さない危険信号であることも御承知の通りであります。生産の減退に対しましては、政府は或いは電力飢餓の原因たる異常渇水という自然現象にその責を轉嫁するでありましようから、との問題につきましては深く立入ることを止めますが、財政收入につきましては、今や狸の皮算用になりそうな形勢にあるのであります。第一回國会において收支の辻棲を合せて健全財政と謳つた補正追加予算政府は完全に実行し得る確信がありましようか。予定歳入たる税の徴收を完遂し得る自信がおりましようかどうか。二十三年度の激府の方針に対する質問といたしましては脚か逆戻りの感がありますが、これをはつきりいたして置きますことは、二十三年度政府の施政方針を検討する上に極めて重要であるからであります。政府におきましては、企業の破産を冒してまでも徴税を強行する。但し重要産業には破産しない程度に融資するという趣旨のことを新聞紙において拜見いたしたのでありますが、果してさような意図がおありになるでしようかどうか。勿論國家跡敷の見地からして、政府は徴税につきましては断乎たる態度に出なければなりません。又政府指摘なさるように、國民の納税観念が低下いたしておることも事実であります。ところで、申告納税制を採用いたしたのでありますから、申告税に関する限りにおきましては幾ばくの税收入を挙げ得るかは、第一回の申告に基いて推計し得た筈であります。この推計と補正予算における当該税收見込との関係はどうなつておりますか。お答えを願いたいと思います。そもそも予定の税收入を確保いたしますことはインフレ抑止のために不可欠の要件でありますが、インフレ防遏自体が産業復興、民生の安定をその目的といたしておりますのでありますから、企業の破滅、延いては失業或いは事業不振による民生の抑圧を惹起してまで徴税を強行いたしますことは、目的と手段とが矛盾撞着するのではありませんでしようか。勿論國策の経費は公平に負担せられなければなりません。といつて私は勤労所得者のみ負担が過重だとは思いません。過重には違いないが、勤労所得税は結局雇傭主たる企業家、或いは國家等に轉嫁されて行く傾向にあるからであります。次に個人企業家はどうでありましようか。物償高と收入減に挾撃せられて、多くは生活の窮迫を告げておる実情であります。これら企業主に対して過当の課税をなさんとすることは、却つて納税観念を低下せしめる結果となるものであります。すでに民心は現政府を去りつつある事実を政府は御存じでありませんでしようか。すでに多くの企業は赤字に悩み、その担税力は甚だしく不確実なるものとなつておるのであります。而も小企業主は、毎日罪人が白洲に引出されるように税務署に呼び出されて、役人の前に平身低頭するかと思えば、他方におきましては饗應などによつて負担の軽減を図ろうとする者が多いと聞いております。このようにして正直者はますます過重な負担が課せられようといたしておるのであります。洩れ聞くところによれば、官廳方面では、年末に出張旅費の名目で税金の掛らない給與を出したということでありますが、かかる事実がおありになりますかどうか。若しありとするならば由々しき問題でありまして、國民の納税観念の低下に拍車を掛けるもので、政府國民に向つて納税完遂運動をなす資格などは到底ないと申さなければなりません。(拍手)税負担の公平は、言うまでもなく闇利得者に対する課税並びに脱税者及び税務官吏との闇取引の嚴重なる取締によつて期待し得られるものであります。(拍手)そのためには徴税機関の強化並びに税務官吏の優遇及び粛清をなすべきことは言うまでもありません。又闇利得の捕捉と共に闇取引そのものも根絶しなければなりません。これに対して政府は流通秩序の確立を期さんとしておられますが、一方闇利得の捕捉はどの程度行われておりましようか。又他方最近の闇取引の減少という喜ぶべき傾向と共に、却つて企業の担税力を減退せしめておるという皮肉な矛盾を政府はどういうふうにお考えになつておられましようか。かくして一千三百三十九億の税收を確保することは、一方において不可能であると思われますし、他方においてこの税を無理やりに徴放することになりますれば、却つて逆効果にはなりませんでしようか。以上の諸点につきまして、大藏大臣の御答弁をお願いする次第であります。  かく見て参りますと、財政面における経費の節約と、産業面における生産の増強以外には、経済復興、民生安定への方途はないのであります。経費の節減によつて税率の引下げが可能になり、この両者が相俟つて財政の健全化が促進せられるものであります。(拍手)又少い歳入生産増強のために重点的に使用することによつて財政面からする経済の立直しが促進せられるのであります。然るに從來の政府財政方針は、遺憾ながら経費の節約が十分に行われておらず、税率も高く又甚だしく不生産的であります。首相の言を借りれば、「財政規模國民経済実力に合致」していないのであります。それ故に「二十三年度予算におきましては、財政規模國民経済実力に合致させることを根本方針とする」ことは当然のことであります。(拍手政府國民経済実力とマッチせざる二十二年度予算をどう御覧になり、且つどう御処理なさるお考えでありますか、この不合理が二十三年度予算にどう響くか、政府根本方針が果して堅持せられる確信がおありになるかどうか。これ亦大藏大臣の確たる御答弁をお願いする次第であります。  次に、政府は行政機構の改革・行政整理等によつて行政費の節減に努めると申されておりますが、今日までに行政機構の改革に当つて如何程の経費の節減が考慮され、或いは実行されたでございましようか。例えば労働省や建設庁の設置、地方財政委員会、公安委員会等々の設置によつて幾ばくの経費が節減せられましたか。或いは今後節減されますか。具体的にお示しを願いたいと思います。又今後経費節約のための行政機構の改革についてどのような腹案をお持ちになつておられますか。お聽かせを願いたいのであります。(拍手)第一回國会において、政府は、地方出先官職の整理を約束せられておりましたが、地方にあつては出先官庁の整理どころか、続々いろいろな出先官職が設けられまして、而も一つ一つの建物を希望いたしておるような現状であります、(拍手)併しながら予算は人件費を賄うのに手一ぱいでありますので、多額の寄附金を募集する有様で、國民は六・三制のために、或いは新警察制度ために続々と寄附金を半ば強制せられておる有様であります。今や國民は租税の外に、かかる多額の寄附金によりまして圧迫せられておるこの事実を政府は如何にお考えになりますか。(拍手)片山首相及び齋藤國務大臣の率直な御答弁をお願いいたす次第であります。  次に、今日のような低位の生産の下においては、物によりては統制を加えることも亦止むを得ないでしよう。併し統制が存する限り、如何に取締を厳重にいたしましても、現実の問題といたしまして闇取引は絶対に絶えるものではありません。否取締の衝に当る側におきましても闇取引をいたしておるではありませんか。彼らが役得として闇利金を收めておる事実は國民大衆の気持ちをますます不明朗にいたしておるのであります。(拍手首相のいわゆる官紀粛正は余りにも当然のことでありますし併しながら私がここに問題にいたしたいことは、今日査定経済と闇経済とが相排しながら併存しておりますが、民心が漸く國家及び現政府を去らんとし、公定経済に半ば背を向けておる事実であります、國家経済國民経済は隔離し、國民の半ばは税を滞納し、或いは納税不能の状態にあるのであります。二つのこの経済の並立は過小生産に基くものでありますしこれに対して政府は重点傾斜生産方式を採つて、その克服に努力せられておりますが、遺憾ながら政府生産対策と言い、流通秩序確立対策と言い、我々はその効果を半年以上も見守つて参りましたが、今やその完全なる失敗が露呈されておるのであります。(拍手)成る程石炭は三割近く増産せられました。併し一般鉱工業生産は殆んど増産せられてはおりません。勿論電力等の隘路があり、又時間的なずれもありましよう。併しこれらを考慮に入れても、果して二十三年度におきまして國民首相の言われるがごとき鉱工業生産の四割以上の増産を期待し得られるのでありましようか、若し期待し得られると申しますならば、國民の納得の行きますような具体策をお示しを願いたいのであります。我々の見るところでは、現在の統制方式を改善しない限り、事態の改善は期待し得られないと考えておるのであります。政府はこれについて如何にお考えになつておりますか、総理大臣及び和田國務大臣の御所見をお伺いする次第であります。  政治の要諦は、為政者が國民の信を得ることと考えますが、(拍手)遺憾ながら國民の心は政府を離れつつあると断言せざるを得ません。(拍手國民は公定経済に背を向けておりますし公定経済では生きて行けないからであります、政府國民の協力を求められても、それは馬の耳に念佛であります。若し政府施策が十分に効果を現わし得なかつたことは國民の協力を得られなかつたためであると申しますならば、それは政府みずからが自己の政治力の薄弱さを告白するに過ぎません。(拍手)片山首相が如何に耐乏生活國民に要望せられても、千五百カロリーでは人間は生きて行けない事実が実例を以て証明せられておりますし嬰児ならば、配給量のみを與えて置きますれば、飢えに泣きながら死んで行くでありましようし併し活動力ある人間ならば、如何なることをしてもその生命の維持に必要な食べ物を獲得すべく努カするでありましようし二合五勺の配給量ではせいぜい生きて行くだけで、拡大再生産どころか、縮小再生産さえ不可能でありましよう。ここに一切の闇とインフレの根源があるのであります。政府が如何に流通秩序を確立しようといたしましても、再生産に必要なエネルギー源を國民に保障しない限り、それは所詮無駄であり、如何に闇の取締を厳重にいたしましても、生存の権利を剥奪するわけには参りますまい。政府は主食について現に実働に感ずる効率的な運用を図つて労働の軽重に感ずる必要量を確保するとか、加配米の質及び量の合理化を行うとか申されておりますが、このことは重要産業或いは鉄工業の労働者に対する加配米について申されているものと推察されますが、このことは当然のことであります。併しながら私が特に申上げたいことは、一般労働者及び家庭婦人、更に幼児より青年に至るまでのすべての者に主食の増配をする必要があるということであります。社会党首班内閣は、よろしく社会党の公約に從いまして、米三合の配給を断行すべきであると考えますが、実行の意図並びに確信がおありになるかどうか。主食の増配こそは拡大再生産インフレ防止、健全財政、民生の安定等々の先決條件でありますから、これができないとあつては、政府が百万言を費しても、それは結局情熱であり、作文に過ぎません。首相は農産物の一割増産の計画を明らかにされ、又食糧の見返り品ともなるべき鉱工業生産の四割増産の計画を発表されましたが、これによつて見ますれば、一日一人平均二千百六十カロリー以上を確保することは、さして困難でないと思われるのであります。我々は現内閣に仮すに八ヶ月の日時を以てしたのでありますから、今日にして二千カロリー乃至二千五百カロリー程度の食糧を確保する方途がないというならば、現内閣の政治的力量は、一國を担うのには余りにも重きに過ぎるものと断ぜざるを得ません。(拍手)重ねてお尋ねいたします。政府は前述のごとき増配の意図並びに確信がおありになりますかどうか。若しないとしますれば、一昨日総理大臣が縷々述べました増産計画も、インフレ抑止も、民生安定の諸方策も、結局政治作文に終ることは明瞭であります。以上の点に対して、総理大臣並びに関係大臣の率直なる御所見をお伺いいたしたいと思います。(拍手)    〔國務大臣片山哲君登壇拍手
  16. 片山哲

    國務大臣(片山哲君) 私に対しては、行政整理と統制形式の二点について平岡君から御質問がありました。行政整理の問題は一昨日も申上げましたし、又先程も申上げましたので、大体はお分りのことと思いまするので、齋藤國務大臣に現在行政整理委員会総裁として、その仕事を担当して貰つておりまするので、齋藤國務大臣からお答えされることにいたします。  統制問題でありまするが、平岡君も御承知の通り、今日は物資が不足いたしておるのであります。これは日本だけではなしに、全世界が食糧の不足を告げておるのであります。食糧のみならず生産に関する基礎産業も戰争のために破壊せられまして、その生産力が減退いたしておるのであります。ヨーロッパ各國におきましても、この減退せる生産力を如何にして取戻すかということに対して大童になつておることは諸君の御承知のことと思います。我が國におきましても、この食糧の不足、基礎産業に対する生産力の減退を如何にして取戻すか。こういうことが我々に課せられたる大きな仕事であります。この食糧の不足を取戻すためには、食糧生産の増大を図つて行かなければならないということが目標となりまするけれども、今現われておりまする不足状態をどうして國民にひとしく配分するかということになつて参りますると、どうしても統制形式を採らなければならないのであります。これを自由放任にいたして置きますることは勿論平岡君もお考えになつておりますまいが、主食その他の生鮮食料につきましても、ひとしく國民全体に行き亘るためには、どうしても統制形態を採つて行かなければなりません。又一面においてこの増加を図つて行かれなければならないという意味におきまして、一昨日は農業生産において約一割を見当として、どうしても政府、農家一体となつて責任をお互いに分担し合つて、その増強政策に邁進をして、この苦しい状態を打開したい。こういうふうな対策を是非とも立てなければならないと考えておるのであります。同時に又このインフレの原因を衝いてこれを打破つて行くためには、生産増強を図つて行く必要がある。その意味において傾斜的に重点的に考えまして、基礎産業を発展せしめなければならない。又一面においては輸出産業の発展を図つて行かなければならない。戰前比較いたしまして、こういう比率を考えて見ますると非常な減退であります。この減退を取戻すということが是非とも必要であります。そのためには、やはり重点的に傾斜的に考えまして、その資材なり、それから労働力なり、この増強を図る政策にも相当計画経済を立てて行かなければならないのであります。私の考えておりまする統制形態は、この生産増強の計画経済であります。増大計画をたてるため政府國民一体となつて遂行政策であります。決して官僚的な統制をやろうとか、サーベルで抑え付けて、官吏だけがひとり心得ておるのである。國民はついて來い。こういうような旧式なるやり方は全然採りたくない。又それを排斥しなければならないと考えておるのであります。こういう意味から最も民主的にやつて行かなければならないし、又それを目標として進んで行きたいということを考えておるのであります。そこで、この計画を大体五ヶ年計画といたしまして、五ケ年の間に食糧も二千四百カロリーを十分確保し得るところの配給をなし得るような域に是非とも達したい。こう考えて努力いたしておるのでありますが、今直ぐに平岡君のおつしやられたような十分なる配給をすることができないということは甚だ遺憾でありまするけれども、実情は十分に御了察できると存ずるのであります。そういう意味から申しまして、食糧の確保につきましてはその第一歩を踏み出し、漸次十分なる配給をなし、カロリーを十分にとり得るような計画を立てまして、その計画経済の段階を踏んで是非とも進んで行きたい。重要産業につきましても、そういう段階でセメントも殖やし、電力も殖やし、石炭も殖やして、そうしておいおいと基礎産業の確立をこの計画遂行從つて進めて行きたい。かような意味の統制方式を採つて行くことが必要であろうと私は感じておるのであります。こういうことは、一にこの恐るべきインフレを撃破いたしまして、國民生活を安固ならしめ、國家経済を隆盛に導き基礎的な仕事であるということを深く信じて、是非ともやつて行きたいと思つております。これがためには國民に難きを強い、いわゆる耐乏生活を求めなければならない。國民一体となつて乏しきを分け合うということでなければ、なかなかこの難関は乗切れないと考えておりまするので、或いはいろいろの批評を受けるのでありまするけれども、國家のために、國家の前途を考えますならば、この難関は是非とも突破しなければならないということを深く信じておる次第であります。尚詳細は安定本部長官から御説明することにいたしたいと思います。    〔國務大臣齋藤隆夫君登壇拍手
  17. 齋藤隆夫

    國務大臣(齋藤隆夫君) 行政整理についてお尋ねがありましたからして、私心もして大要お答えをいたしたいと思います。御承知の通りに行政整理ということは二つ方面からして考えられます。一つは行政機構の改革でありまするし、又一つは人員の整理であります。人員の整理はこれは比較的やり易いのであります。歴代の政府がやりましたところの行政整理ということは、主として人員の整理、いわゆる天引主義でありまして、一割減らすか二割減らすかというような工合で人間を減らして、減らした結果、予算の上におきましても相当影響を及ぼしたのであります。ところが行政機構の改革ということになりまというと、なかなか実際むずかしうございます。御承知の通りに日本の行政機構は明治以來の永い間の伝統の上に建設せられておりまして、なかなか機構が複雑になつております。これをいわゆる新憲法の精神に基きまして民主的に能率的に簡素化する。又系統的にこれを整理するということを考えますというと、なかなかこれは一朝一夕に参らない事情があります。これは前内閣におきましても、御承知の通りに行政の根本的敗軍をやるという目的を以ちまして、一昨年の暮に行政調査部というものを設けまして、及ばずながら私がその総裁として、これ上まで相当に研究をして参つたのであります。日本の行政組織ばかりではなく、廣くヨーロッパやアメリカの行政組織を参考にいたしまして、若い事務官を集め、又民間の学識経験のある方方も顧問にお願いいたしまして、しばしばその方面の御意見も聽いて鋭意研究に從事して参つております。相当にこの世の中に現われたものもありますことは御了承下さつておる通りでありまして、例えば公務員法の制定、行政官廳法、延いては内務省の解体、司法省の機構の改革労働省の設置というようなものも、これも行政調査部におきまして相当関係を持ちまして研究いたしました結果が現れたことになつております。併しそれくらいのことではいけませんので、もつともつと根本に遡りまして思い切つた改革をしなくてはいかんという考えを持つて相当に案もできております。例えば内務省が解体いたしまして建設院ができておりますが、建設院ではいかない。建設省というものを拵えろという議が恐らく両院一致の御意見であると思つております。それからして、行政官廳と現業廳とをば区別せよというような議論も相当ございます。いろいろございまして、調査部におきましても案は作つてはおりまするけれども、まだ足らない所もありまするのみならず、調査部だけの意見ではいけませんからして、先だつて以來総理大臣が言明せられておりますように、有力な官民合同の調査会を作つて、その議に付して最後の決定をやろうというのが現在探りつつあるところの方針であるのであります。予算関係もありますからしで、成るべく早くして予算編成にも問に合したいと思いまするけれども、間に合うこともありましようし、又間に合わないこともありましようから、その点はあなた方において十分御了承願つて置きますと同時に、なかなかむずかしい問題でありますからして、廣く國民意見を聽いて見たいと思います。どうか議員の方々におかれましても、御意見がありまするならば忌憚なく御教示を願いたいと思つております。それからして近頃地方出先機関の整理が問題になつておりまして、これも行政調査部におきまして案ができまして、或る方面との交渉もありまするので、余り遠くない中において決定することと思います。  もう一つ地方の出先機関に関連もいたしておりまするが、近頃寄附金というものが非常にやかましくなつている。現内閣におきましても御承知の通りに、昨年の十月頃からしてどうしても官紀、綱紀の粛正をやらなければならんという趣意を以ちまして、行政監察委員会を設けまして、中央地方共に相呼応じて官紀粛正に乗出しております。その行政監察委員会の報告の中におきましても、近頃非常に寄附がはやつて國民が困つておる。ちよつと調べましても、大体一ケ年に二十億万円ばかり寄附があるということであります。これも止むを得ないところの寄附もありましようが寄附を濫用して國民大衆が非常に迷惑している。これはこのまま放つて置けませんからして、何か方法を以てこれに一つ相当な牽制を加えたいと思いまして、今具体案を考えているのであります。その寄附の主なるものは、警察署であるとか、或いはこの頃は六・三制がやかましくなりまして、六・三制に関する寄附も大分やかましくなつておりまするが、その外各種方面について寄附……寄附というものは御承知の通りに任意のものでありますけれども、併し事柄によりましては半分以上強制的になりまするので、國民が迷惑をしていること夥しいものでありますからして、このまま放つて置くことはできませんからして、この寄附については相当の制限と申しまするか、何かそこに取締を設けたいと思つておりますからして、これも御承知を願つて置きます。大体以上申上げましたようで、行政機構の改革は歴代の政府がやろうと思つてやれなかつたところでありまするが、もう今日は新憲法も行われましたので、ぐずぐずしておられませんからして、できるだけ一つやろうと思つておりますからして、これだけのことを一つ御承知を願いたいと思います。(拍手)    〔國務大臣栗栖赳夫登壇拍手
  18. 栗栖赳夫

    國務大臣栗栖赳夫君) 平岡議員のお尋ねに対して簡單にお答えいたしたいと思います。予算編成しても、均衡を得たところで、この実行が完遂いたされなければいかないという点の御質問に対して、先ず第一にお答えしたいと思います。お説の通りに予算均衡を律さして編成いたしましても、その実行が、この完遂に欠くるところがありまするならば、これはやはり形式上の均衡予算になるのであります、由々しい問題を起すのであります。そこで政府といたしましては、今回の追加予算の成立が十一月末及び十二月の初旬に亘つて成立したのでありまして、大きな金額を殊に收入の点において僅かの時間の間に徴收するということは、非常な困難が包藏されるのであります。併しこの困難を克服しなければ、政府といたしましてはこのインフレーシヨンの克服はできないわけでありまして、そこで、この收入の中でも最も大きい部分を占めます税收の確保という点において、徹底的な先途を期している次第であります。すでにいろいろお尋ねによつて申上げましたが、政府といたしましては、財政白書の公表ということを初めといたしまして、國民運動の強い展開、税務運営の刷新自粛でありますとか、税務官吏の待遇改善と費用の引上げ、報獎制の採用とか、闇利得者に対する徹底的の追究、その他の運の政策を以て臨んでおる次第であります。そうしてすでに御案内の通り、本月の末日までに最終の所得の申告をいたすと同時に、納税もいたして貰う。非戰災者税も同様であります。尚税務署といたしましては、申告に対する不足その他に対して更正決定の通知もいたしまして、これも本月末までには納税を完遂して貰う。こういう態勢を以て臨んで出る次第であります。それと同時に、悪質の脱税者その他に対しては強い制裁を以て臨んで出るのであります。尚又、超過の課税というような場合には拂戻しを速かにいたしまして、民情を取入れるという点においても吝かならぬようにいたしたいと思つておる次第であります。かようにいたしまして、政府は全力を傾倒してこの徴税の確保完遂ということに邁進をいたしておるのであります。そこで國民各位におきましても、この納税の重要なことを十分認識して貰いまして、租税の完納を要望して止まない次第であります。  次に会社企業その他に対する徴税に関してのお話があつたのであります。これは個人の所得に対する徴税と会社企業に対する徴税とは、課税の負担、徴收の公平、こういうことをいたさなければならんのでありまして、会社企業に冠する徴税については延納その他が相当ございますので、昨年來その徴租を徹底するという方針を探つておる次第であります。これは新聞でもすでに御案内のことと思うのであります。そうして或いは差押えとか、或いはその他の処分もいたしておるような次第であります。そうして緊要事業に対して納税をさすかというお尋ねがここにございましたが、政府といたしましては、この上る收益によつて先ず税を納めて貰いまして、そうして運轉資金その他について不足がございますならば、融資順位の線に沿うて、これは別途融資いたしたい。こう考えておる次第でございます。それから闇利得者に対する捕捉その他についてもお尋ねがありましたが、御承知のように、これを徹底的に捕捉するということがこの税收の完納を期する次第でありますので、十分いたしたいと思つておる次第であります。所在に捕捉をいたしまして、更正通知の決定もすでにいたしており、そうして月末迄に納税も求めておるような次第であります。  それから二十三年度予算について、國民経済とマッチさすところの、対応するところの予算を組んで欲しい。こういうお話がありました。これはすでに申上げましたように、政府といたしまして十分この点に留意をいたして、只今二十三年度予算をその線に沿うて組んでおるような次第であります。いずれ予算の御審議を願う際には、改めて御説明を申上げたいと思うのであります。  尚行政機構の関係において予算との関係お尋ねになつたので、簡單にお答えをいたして置きます。問題になりました新官廳の設置でありますが、政府といたしましては、新しい官廳の設置は必要止むを得ないものだけに限つておる次第であります。そうしてその経費につきましても、殊に人員等につきましても、十分検討を加えておるのでありまして、そうして予算として請求されましても、相当割の切落しを行い、人員については配置轉換を主として、必要止むを得ないもの以外には新規採用をしない。こういうような点において予算の節約を努めておるのであります。両能率の高揚ということを主にいたしまして、徒らに人員を多くするという点は極力避けておるような次第であります。そうして或る官廳を廃止して或る官廳が設けられるという場合には、旧官廳の持つておりました予算の範囲で成るべく賄う。はみ出しを極力避けるというようなこともいたしておる次第であります。司法省の廃止、法務廳の設置等につきましても、いずれ追加予算で御審議を願うことになりますが、その線に沿うていたしておるような次第でございます。極く簡單でございますが、これを以てお答えといたします。(拍手)    〔國務大臣和田博雄登壇
  19. 和田博雄

    國務大臣和田博雄君) 私に対しまする質問につきましては、総理からお答えいたしましたので、ただ補足的に簡單にお答えいたします。  主食の配給の増配でありますが、これは二十三年度はもはや主食の量が決つておるのでありまして、三千五十五万石の供出とそれから不足分の輸入によりまして、政府としましては二合五勺の基準量を確保して行くという態度でございます。二十四年度以降につきましては、長期再建計画の中にやはり農業方面の増産とそうして鉱工業方面の増産その他を絡ませまして、漸次國民生活水準も上つて行きまするような計画を立てておるのでございまして、その点につきましては、いずれ発表し得る時になりましたならば詳しく発表いたしまして、皆様方の御批判を仰ぎたい。かように考えております。
  20. 平岡市三

    ○平岡市三君 現在の統制形式について何か改善するような御意思があるかないか。あるならば如何ようにお考えになつているかということを和田國務大臣お尋ねしたのですが、そのお答えがありませんでしたので、一つお尋ねいたしたいと思います。    〔國務大臣和田博雄登壇
  21. 和田博雄

    國務大臣和田博雄君) 失礼いたしました。現在の統制方式につきましては、これは御承知のように、総理がお答えになつたように、或る主要な生産財等につきまして、又主食その他の食糧品につきまして統制という方式を採りまして、分配の公平を期して行く。又最も効率的な所に生産財が廻つて行くようにして行く。こういう態度を採つておるのでありまして、この根本の考え方につきましては、これを変えるような状態に日本経済があるとは私共も思いませんが、統制のやり方そのものにつきましては各方面について検討する必要があると私も考えております。例えば物價の点について言いますと、公定價格そのものについても、不必要なものについては、大体需給のバラソスの取れたものを、統制から外して他に影響もないといつたものについては、この前、相当の品物について統制を外しましたが、それを外して行く。こういう態度を採つております。尚生産離別の統制等につきましては、ものによりましては、むしろ、もつとしつかりやつて行かなければならないものもあるのでございまして、只今割当切符制度によつて相当のものをやつておりまするが、ものによりましては、割当切符の制度によりましては到底目的を十分達せられないものもあるのであります。例えば鉄関係のものなんかそうであります。繊維関係なんかも私共はそうだと思つております。これはこの政府ができました時に、我々が公團方式をやることを考えまして、関係方面相当折衝したわけでありますが、それがその限りにおいては認められずに、割当切符制度の改善ということで先ずやつて行こうというお話でありましたので、その体制を探つたのでありますから、これらの点は十分又吟味いたしまして相当の改善を加えて行く余地があるのではないかと思つております。又リンク制の物資についても同様の問題がそこにあるのでありまして、こういつたような主たるところの生産財につきまする統制方式ということについては、現在で完全であるとは我々としても考えておりません。
  22. 松本治一郎

    ○副議長(松本治一郎君) 農林大臣の御答弁は次回にいたしたいと存じます。本日はこれにて延会いたしたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 松本治一郎

    ○副議長(松本治一郎君) 御異議ないと認めます。明後日は午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以つて御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後一時六分散