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國務大臣(
鈴木義男君)
栄典法のことは
内閣総理大臣の所管でありまするので、
総理大臣から御
説明申上げるのが順序であります。
総理大臣甚だ御多忙でありまするから、私閣内においてこの
立案のために五人の
委員が選ばれまして、
苫米地官房長官、
竹田國務大臣、
船田國務大臣、
森戸國務大臣、私の五人が選ばれて、私がその
委員長を仰せ付かりました
関係上、
栄典法案につきましては私から主として御
説明を申上げる、こういうことに相成
つておりますので御了承願いたいと思います。御
質問に應じて
お答えをいたしたいと存じまするが、
勳章をどういうふうに定めるかということにつきましては非常に
議論が分れたのであります。今までの
勳章をどういうふうに扱うかということも可
なり議論の紛糾をした点でありまするが、何分にも
只今までの
勳章というものは何百万と差上げてありまするけれども、大部分が軍功によ
つて、
戰爭の
功績で差上げてあるのでありまして、
純然たる平和的な
理由で差上げてある
勳章というものは、
官吏などが
貰つておりますように極く僅かで、
純然たる
民間人が
貰つておりまするものは更に寥々たるものでありまして、その
区別を付けて取換えるとか、引換えをしたらよかろうというようないろいろな
議論もございましたけれども、この際一應
一つ清算をして、過去のものは一
應無効にして、但し折角差上げたものであるから、
儀議等の際に佩用することは
差支ない、ただ
法律上は一
應無効のものとして整理をしよう、今後必要があつたならば、その
階級、勳功に應じた新らしい
勳章を差上げたらよかろう。こういうふうなことに相成つたわけであります。そうして
勳章の
種類につきましても、或いは三種三
階級、五種五
階級、いろいろな説が出たのであります。
政治に対する
功労、
産業に対する
功労、
労働に対する
功労、
文藝、
宗教社会事業に対する
功労というようなものをそれぞれ分けて、そうしてそれぞれの
勳章を上げるというのも
一つのやり方ではないか、そうなりますと、今度は
勳章の
種類を何十
種類も作らなければ、それぞれの
功績に分類することが不可能になりまするので、その点もいろいろ
議論の末、結局
一つの
種類の
勳章で五
階級に分けて置いて、その
範囲内でいろいろ
功績を分けて行くというのが、実際この局に当る者から見ると一番やり易いのである。こういうようなことになりまして、一
種類五
階級ということにいたしたわけであります。
階級の分け方もいろいろ
議論があ
つたのでありまするが、多きに過ぎると非常に
階級制度が強く見えて參りまするし、少きに過ぎれば非常に高い
功績の人と低い
功績の人との
表彰の
区別ができなくな
つてしまうというような観点から、先ず五
階級ぐらいが適当であろう、こういうことに
なつたわけであります。ところでこの
勳章に
階級がありますると、
階級があ
つては誠に困るという
種類の
功績があるのであります。
文藝、
美術、
学問等に対する
功績について、これを
表彰するのにあの人は三等で、あの人は二等だというような
区別を付けて差上げまするならば、恐らく貰う人は潔よしとしないというようなこともあり、又客観的にそういうふうな
價値の
区別を付け得ないものである。
横山大観に
文化勳章を上げる。
横山大観は勳一等であるが、
竹内栖鳳は勳二等である。すでにその人の絵が何か
階級ができてしまうような
感じを與えまするので、少くも
文化に関するものは無
階級の
表彰をするということが望ましいのではないか。そういうふうな
意味で、
文化に関する
表彰は無
階級の
勳章を
一つ、今までもうそでありましたが、作るということに相成つたわけであります。
勳章の
制度が非常に簡素化されました結果、ここに
勳章を差上げるまでではないが、
社会事業に
功績がある、
労働運動に
功労があつた、
産業の
改良発達に
功労があつた、農事の
改良に
功労があつた、いろいろな
功労に対して、やはりその
市町村において、
府縣において、又
國家的に
表彰を値いするような人を
表彰する
方法が、
今一つ下のところに、そして廣く大衆的にやれるようなものが欲しいということに相成りまして、
功労章という
制度を設けたわけであります。必ずしも
勳章より低いというわけには行かない。又そういう定まりはないのであります。
勳章を貰いました人と同じだけの
功労があ
つても、
功労章を差上げる場合がありますから、併し大体補充的な
意味でこういう
表彰があれば、運用の上から
言つてうまく行くのではないか、そういうふうにして
功労章というものを設けた次第であります。その他
善行章は書いてあります
通りでありますから
説明する必要はないと思います。尚
表彰に
伴つて賞金のようなものを差上げるということが望ましいのではないか。花より
團子ということがありまして、
勳章も貰いたいけれども、何か汽車にでも只乘れるパスであるとか、年金というものまで上げることは、或いは
憲法に特権を伴わずに書いてありますることに抵触しはせんかという疑もありまするので、疑問でありまするが、或る一回限りの
賞金を附與するというようなことは
差支なかろう。いろいろそういう
附隨的表彰というものも考慮いたしておるわけであります。尚死亡した者に今まで
表彰をしてお
つたのでありまするが、これからは
一つ原則として生前に
表彰をする。亡くな
つてから急いで上げるというようなことは成るたけしないという方針でありまするが、併し数多くの中にはどうしても思い残しがあるというようなことがあり得まするから、そういう場合には止むを得ず生前の日附に遡
つて差上げる。こういうことにいたすことにいたしたいと思います。それから
外國の
勳章を
総理大臣の認可を得て佩用することは
只今までの
通りであります。又
返納を望む者は
返納をしても
差支ない。又刑に処せられ、その他一定の
條件に触れました場合には、これを没收する、或いは無効とするというような
規定も設けて置くことは必要であろうというようなことで、
規定をいたしたわけであります。その他細かいことは御
質問に應じて申上げることにいたします。
極めて民主的にやつたつもりでありまして、
勳章そのものは民主的な決め方であると共に、これを與える
方法は
施行令の御で
規定いたしたのでありまして、これは
確定案ではありませんから、參考までに御覽願
つて置くのであります。今までは
議定官というものがありまして、
天皇陛下の思召で下さるということに
なつたお
つたのでありますから、
民間の
意思というようなものを端的に表現することはできなか
つたのでありますが、今後は
一つ原則として、
市町村長、各
府縣知事、
各種の
團体の長、いろいろなものに皆
推薦権を持たせたらよかろうという説もありましたけれども、これは切りがありませんから、そこで
地域團体の長に持たせて置いて、
職域團体の長は
地域團体の長までお申出願う、それから
主管大臣が
推薦権を持
つておりますから、
主管大臣にもあの人は
表彰せらるべきであるというふうにお申出があれば、当然
審査委員会に付して、そうして
差支ない
適格者であるということに相成りますれば差上げる、こういうふうにいたそうということであります。與えます
方法も極めて民主的な
立案を持
つておるつもりであります。尚
勲章の
図案等は、ここに極くあつさりしたものを見本までに準備いたしましたけれども、決してこれは
確定案ではないのでありまして、今後
法案でも通過いたしましたならば、
美術界の
権威者に委嘱いたしまして立派なものを作りたい。かように
考えておる次第でおりまして、ただ
費用その他も睨み合せなければなりませんので、
國家の
現状から、余り贅沢なものを作るということを
ちよつとできないの思います。それらの点につきまし前は十分に研究の上、御期待に副うようにいたしたいというように
考えておる次第であります。その他は御
質問に応じて
お答え申上げます。