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三島通陽君 この「
こどもの日」のことでございますが、この「
こどもの日」につきましては、私は実はたびたび論じましたので、もう一度ここで申上げることは恐縮なので、できるだけ
簡單に申上げたいと思うのでありますが、ただ問題にな
つて來るのは、五月五日という日であると思います。「
こどもの日」を置くということは、どなたも反対のないことであるように、参衆両院とも伺
つておるのでありますが、ただ問題は、五月五日という日にな
つて來るのであると思いますので、一應これが五月になりましたことにつきまして、どう考えるかということについて、ここで申上げて置いた方がいいように思うのであります。当初私達参議院の者達が考えておりましたことは、五月の三日に「
こどもの日」を設けまして、十一月三日に「
憲法記念日」を設けて頂くというのが初めの考えでありました。それはなぜかと申しますと、「
こどもの日」を設けるのは、先ず一番先に考えることは季節ということでありまして、ベスト・シーズンに「
こどもの日」を設けたいということでありました。それでいろいろ天文台の方なんかに調べて頂きまして、大体三日、四日、五日、六日、七日というところが、
日本中が氣候のいい、雨も少い時だということでありましたので、それでは五月三日は、丁度たまたま
子供の男の祭の五月五日、女の子の祭の三月三日、それを月と日を合せ取
つて五月三日としたならば、
一つは
日本國憲法の施行日に当るので、新
憲法の
精神を
子供の上に吹き込んで行くという上でも、非常にいいのじやないかと思います。五月三日でずつと参議院の方は
参つたのであります。ところがその後十一月三日の
憲法記念日は、衆議院におきましては五月三日にや
つて貰いたいという御
意見が
大分あつたようでありますので、それではやはり
憲法記念日は五月三日がよくはないかという御
意見が出まして、
憲法記念日は五月三日に決ま
つて、それで
子供の日が溢れてしまつた。ベスト・シーズンであり、それで
子供にちなんだ日であるから、永年の
子供のお祭をして來た日だから、五月五日にしようということになりました。その後参議院におきましては、五月五日という日は、
一つには、考えるのに女の子がネグレクトされているという理由、第二は、五月五日ということは尚武の節句とい
つて、軍國主義的なお人形などを家庭で列べたこともあるから、その日は避けた方がよかろうというのが第二の理由、第三は、この辺に祭日がくつつき過ぎる。四月二十九日が
天皇誕生の日、五月一日はメーデー、これは祭日ではないけれども大体お休みになる。それから五月三日が
憲法記念日、五月五日が
子供の日では、余り休日がくつついて、事業家とか、或いは銀行家とか、こういう
人達も非常な迷惑をしやしないだろうか、又
日本が非常に活動しなけれどならないのに、お休みがくつつき過ぎるので、どうであろうか、たまたま配分から
言つても、十月は何にもお休みがないのだから、「
こどもの日」を、どうせ新らしい
精神で、「
こどもの日」を設けるならば、その日に拘泥しないで、十月一日にしたらどうかという御
意見が出まして、私も実はその日に
賛成したのであります。ところが衆議院と合同
委員会がありまして、衆議院の方では、「
こどもの日」ということは、これはそうばかりでないと思いますが、
大分参議院からの非常な熱烈な御
意見もあ
つて入れたものだ、殊に五月五日ということは、厚生省あたりでもこの運動をや
つておられる人があ
つて、是非五月の初めにや
つて貰いたいという、全員一致の御希望がありまして、余り十月一日ということを参議院側が強く主張いたしますと、「
こどもの日」そのものがどつかへ飛んで行
つてしまう心配も出て参りましたし、とにかく五月初めは草木の萠え、芽の出る時でありますし、十月というと草木の萎むという時であります。
子供のお祭をするならば、むしろ五月の方がベスト・シーズンでいいのじやないかという御
意見で出まして、五月の五日というふうに決まつたのであります。これにつきましては、今の私が申上げました三つの点から、多少
將來と雖も、そういう懸念を持たれる人があろうと思うのでありますけれども、併しそういうことに、どうぞこだわらないで、新らしい
日本が
子供の人格というものをここに認めて、
子供のために
祝いをして、
子供を正客とした
祝い日を定めて、そうして
子供に光明を與えたいということが、もともとの
趣旨であります。それ故にこの
制定の
趣旨におかれましても、先ず最初に「
こどもの人格を重んじ」ということが入
つておるのだと思います。とかくまだ残念なことに、我が國は
子供の人格を認めないというようなことが、往々にしてあるわけでありまして、どうぞ
子供を一人前の人としてのパーソナリティーというものを、この際皆が認めるという、ここに
一つの考え方を織込んで行きたい。それは全然新らしい考えであり、又
子供を讃えて、
子供のためにする運動というようなものは、世界では、まだこういう
子供日というものは余りありません。私は最近分つたのでありますが、六月の何日かに、極く少数の國で、少数の
人達が、そういうチルドレンス・デーという
子供の日のための運動があるということを調べましたが、六月何日か、十幾日かでありまして、これは
日本は雨期に入ります。雨期にその日を持
つて來るということはどうかと思われます。折角五月五日の最もいい氣候に、それを入れたという
趣旨でありますから、どうぞそういうことにこだわらずに、新らしい
精神を以て定め、又
日本の五月五日の節句というのは、ずつと昔の藤原時代の端午の節句には、そういう
意味はなかつたのでありますから、男の子も女の子も、この際は一緒にした
子供の日ということで、そういうように、その
制定の
趣旨を考えて頂きたいということを申上げて置きたいと思います。