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參事(
川上和吉君)
委員長の御命令で、私から
祝祭日の
法制化の場合の
考え得る問題を申上げまして、御
審議の御
參考にいたしたいと思います。と申しましても別に
研究しておるわけではありません。極く思い付きのことを申上げるので甚だ恐縮でありますが、一應いろいろの點につきまして
感じたことを申上げて見たいと思います。
祝祭日の
決定が、舊來の形のような、何と申しますか、官憲的な
色彩の強いものから、國民的な
祝祭日ということにならなければならんということが、この
委員會で取上げられておる問題だと思いますが、すべての
法制化に當りましても、すべてさような
観點から問題を
考えて行かなければならんと思います。さような點から數点につきまして氣付いた點を申上げたいと思います。まず第一は、この
法制化の場合に、
祝祭日を
一種の
宣言的なものにするか、或いは何らか
拘束的なものにするかという點があろうと存ぜられるのであります。これこれの日、これこれの名稱を以て
祝祭日とするということを
國内全般に
宣言をしまして、これによ
つて効果を擧げるというような
宣言的、政治的なものにするか、政治的というと語弊があるか知れませんが、國民的なものにするか、或いはもう少し
法律的に何らかの
拘束力を伴うものとするか。これは言い換えますれば、
祝祭日に關する
制度とするか、或いはその中に
一種の休日に關する
制度にするかという問題とも
關連いたすかとも存じます。御
承知のように
從來の
祝祭日の
制度は
勅令等でもむしろ休日に關する
制度は定められておりましたので、
表面は
祝祭日にな
つておりません。これは恐らく冒頭に申しました今囘の
考え方から申しますれば、
祝祭日を取上げて行く、休日はそれに附帶したものにするという
考え方からいたしまして、或いは
宣言的な形の方がよろしいのじやないかという
感じもいたすのでありますが、この
宣言的なものにするか、何らかの
拘束的なものにするかという點がまず第一の點であろうと思います。で、それに
關連をいたしまして、
祝祭日ということでここでも御
論議にな
つておりますが、
祝祭日という名稱自體が問題であろうと思います。それに附隨しまして
法律の名稱が
變つて參ると思うのでありますが、
祝祭日が果して
適當か、
法律の名稱をどうするか、その大體の
中味を
宣言的なものにするか、
拘束的なものにするか。恐らく今までの御
審議の經過から
考えますれば、私はこれは
宣言的なものがよろしいのじやないかという
感じがいたすのでありますが、この點は
一つ根本問題として御協議、御
審議を願いたいと思うのであります。
それから第二番目は、さような前提が決まりまして、今度は
内容的にどういうことが
考えられるか。これは今まで御
審議に
與かつた點でありますが、まず名稱の問題、それから
期日の問題、どういう名稱でどういう日にするか。これは今までからの御
審議をそのまま活かして行けばいいのでありますが、扨てそれを
法制化する場合にそうした名稱なり、
期日をそのままぶち込んで行くか、或いはそこに
從來のような
一種の
祝祭日と休日と申しますか、
祝祭日という名稱が問題でありますが、何らかそこに
區分をして
規定をされるかどうか。一本にされるか、或いは何らか二種或いは
三種に
區分されるように
規定されるか。二種或いは
三種に
區分するならば、さような
規定の
體裁にな
つて來ると思いますが、その邊のお
決めを願うことが
規定の
體裁を定めて行く上に重要だろうと存ずるのであります。名稱と
期日と今の
區分の問題、更に進みまして
從來の
規定にありまするように、單に名稱と
期日だけを掲げるに止めるか、或いは、ここでの御
審議の結果を明確にする
意味合におきまして、その精神と
意味と申しまするか、
意義をこの
制度の中に書き込んで行く。これはむしろ
意味を明確にされた方がよいのではないかというようなことも
考えられるのであります。單に
從來のように何々祭、何々
祝祭日、何月何日ということよりも、そこに多少の
意義を
規定をされて行くということになるかどうかという點が問題であります。尚それに
關連をしまして、この
祝祭日を選び、或一定の日を選んだ際に、それに
一つの
意義だけを持たせるか、或いは
一つの
意義の外に
一種或いは二種の
意義を加え持たせるかどうかということも問題であろうと思います。若しさような企てがあるといたしますれば、さような點も書き込んで行くという點になろうと思います。これらが
實體的な
内容について問題になる點であろうかと思います。
それから第三番は、第一に申し上げましたのと
關連をいたすのでありますが、休日との
關連をどうお
考えになるかという點であります。
從來は御
承知のように
勅令でむしろ休日として定められてお
つた。これをさつき申しましたように、
祝祭日を
表面に取上げて、むしろ休日ということを
表面に出さない方がよいのではないかということが多分に
考えられると思うのであります。併しながら休日の點に觸れた方がよいという御
意見であれば、その點も問題になり得るのであります。併しながら休日と申しましても、今までのいわゆる官憲的な
思想から申しますると、
役所の休日であるかのような形を呈したのでありますが、
國民一般に休日を強制するということもどうであろうかというような
點或いは又必ずしも
祝祭日に今までのように
祝祭日即休日ということでなくして、その中に
一部分が休日になるということであれば、これは多少
規定の
意味をなす問題になろうと思います。まあ私見を加えさせて頂きますれば、この種の
祝祭日の
決定はむしろ
宣言的なものにして、休日はむしろ切り離した方がよいのではないかということも
考えられるのであります。その點が問題であります。尚その休日の問題に
關連しまして御
參考に申し上げて置きたいと思いまするが、御
承知のように
勞働基準法によりまして、
一般の休日の
關係が可なり
法律的な
意味を持つようにな
つて參つたのであります。それは
勞働基準法の第三十五條に、「
使用者は、
勞働者に對して、毎週少くとも一回の休日を與えなければならない。」という
規定があります。これは常識的には日曜は休むということでありますが毎週少くとも一囘ということで、必ずしも日曜とは限定していないのであります。他の休日をも
つてこれに代えることも
差支ない。それから同じ
勞働基準法の第三十
七條に、今の休日の
規定を受けまして、休日に勞働させた場合には、その日の勞働については通常の勞働時間の
賃金の
計算額の二割五分以上の率で計算した
割増賃金を支拂わなければならないという
規定に相成
つております。これを假に
祝祭日即休日だ、或いは少くともその
一部分は休日だということが
法律で許されますというと、この
勞働基準法の
規定によ
つての休日に相成
つて、
法律的にそうな
つてしまうということにも解釋されるのであります。日曜の休日と普通の休日とをどう織り混ぜるかという點であります。尚勞勵
基準法には今
一つ八十九條に、休日に關しまして八十九條の
規定がございまして
基準法の八十九條に、常時十人以上の
勞働者を使用する
使用者は、左の
事項について、
就業規則を作成しなければならないという
就業規則の
規定があるのであります。
就業規則の中には休日に関する
事項を定めるということに相成
つております。
從つてこの
規定と、先程讀みました三十五條なり、或いは三十
七條と
關連をいたしまして、この
勞働者につきましての
就業規則で休日を
決める。その休日を受けて、尠くとも毎週一囘以上、それからその休日に働いた場合には
割増賃金、こういうことに明確にな
つておるのであります。これが
帝國憲法時代にさような
制度のなか
つた時分と相當趣きを異にして參るのでありまして、さような點から考へまして、むしろ休日は、
官廳でありますれば
官廳の内部の
規則、又その他
一般民間つきましては、この
勞働基準法の
就業規則で
決めるという形を採ることの方が適切じやないだろうか。
祝祭日につきましては、
宣言的に
祝祭日ということを
決めるというに止めた方が宜しいのじやないかという
感じもいたすのでありますが、併しこれは非常に重要な點であります。又
一般にそう申さんで、
祝祭日をお
決めになる、
一部分は國民的な休日にするという
行き方も、これはあるだろうと思われるのでありまするが、その邊の
實態を
委員會で御
檢討願いまして、その結果に基いてこれを
法制化するということに相成ろうかと思うのであります。これが第三番目の點であります。
それから第四番目の點は、
祝祭日の
内容としての
一種の
行事、その他の催しと申しますか、かような點につきまして
法制化の場合に如何に
考えられるか。先程申しましたような
宣言的な
規定ということに相成りますれば、むしろ固よりそういう點につきまして細かく立入るということは、
法律としても
適當じやないという點もあろうかと思われるのでありまするが、併しながら又お考へようによりましては、これも全部の
祝祭日でなくても、或る特定の
祝祭日につきましては、なんらか法制的に
規定をするということも考へられると思われるのであります。そうした點は
法律で
拘束することは
適當じやないので、この問題は飽くまでも、單に
宣言的に
祝祭日を
決めるだけに止めようという御
意見も尊重せらるべきだと思いまするが、この
行事、その他の點につきましても、一應の御
論議が願いたいと思うのであります。それが第四番目であります。
それから第五番目に、かようなことを盛込みましての
法律の
形式の問題でありまするが、以上のことが決ま
つて參りますれば、自然に
法律の
形式が固ま
つて參るのであります。ただ併しながらこの事柄の
性質上、この
制度の
法律化につきましては、多少
從來の
法律の形を離れた
一種自由闊達な
形式をお用いになるというような御
意見もあろうかと思われるのでありまするし、又さようなことも望ましいことであろうとも思いまするし、さような點につきまして
法律の
形式を如何にするかという點につきましても、
皆さん方の間に御
研究が願いたいのであります。尠くとも
從來の
勅令に現われておりまするように、左の
通りの
祝祭日を
決めるといふ素つ気ない言い方じやなくして、例へば
法律の前文なり、或いは第
一條に、
祝祭日を
決めるにつきましての
氣持を
規定をいたして行くというような樣式もあり得ると思われるのであります。併しこれもさような
色彩をむしろ殘さん方が宜しいという
意見もあり得るかと思いまするから、この
法律の
形式をどういうふうにするかという點についての御
檢討を願いたい點が
一つであります。
それから最後に第六番目に、以上のような
恰好で
法律を
纒めるといたしますれば、或いはその點におきまして、皆
樣方の御
審議の結果が、
法律の法案の形で現われる上においては、非常に物足らん點があろうと思います。斯樣な
意圖を以てや
つたに拘わらず、
法律の
形式は比較的簡素な
形式だ
つたというような場合に、
左樣な點を補
つて行く
方法を
考えて置く必要があるのではないかということを
考えますと、何か
法律を議決されます際に、
一種の
決議案と申しますか、これは
性質上各
議院別個の
決議案では政治的の
意味が薄いので、その兩院一致した
決議案が宜しいと思います。その
決議案の中に今申しましたような
法律の
形式に現わすには不十分であ
つたと思うところの皆
樣方のお
氣持を表現して頂いて、これによ
つて國民に愬えてゆくという
行き方も
一つあろうと思います。もつと
内輪の形といたしますれば、例えば
委員會における
審査報告の中に、
左樣な點を盛り込むというような
内輪の
行き方もあろうかと思います。これらの點を、こうした種類の
法制化の
性質上併せてお
考え願いたいと思います。
以上の點は極めて常識的なことでありまして恐縮でありますが、併し恐らく
法制化の問題につきましては、それ以上の
複雜なこともなかろうかと思いますし、又以上申上げました點だけでも、可なり幅のある問題であり、御
檢討の次第によりましては、なかなか厄介な點も出て來るかと思いますから、以上の各
事項につきまして御
研究を願いまして、その結果を
法律にしたいと、こういう
恰好でお進になることがよくはないかと思います。
委員長からの
お話でありますので、御
參考になるかどうか。一應以上の
通りでございます。