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1948-07-04 第2回国会 参議院 農林委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年七月四日(日曜日)    午後一時五十五分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○農業改良助長法案内閣提出、衆議  院送付) ○食糧確保臨時措置法案内閣提出、  衆議院送付)   —————————————
  2. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) これより開会いたします。速記を止めて。    午後一時五十六分速記中止    ——————————    午後二時四十六分速記開始
  3. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 速記を始めて。それでは一應休憩いたします。    午後二時四十七分休憩    ——————————    午後三時三十分開会
  4. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 引続き開会いたします。速記を止めて。    午後三時三十一分速記中止    ——————————    午後四時五十八分速記開始
  5. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 速記を始めて。それでは只今から農業改良助長法案議題に供します。この問題については先程御了承を得ましたように質疑を終了いたしましたので、これから討論採決に入りたいと思います。
  6. 北村一男

    北村一男君 この改良助長法については、すでに質疑のときにおきまして、各委員からいろいろ修正の御意見も出ましたし、我々としても尚この法案につきましは全面的に賛成するというわけに行かない部分もございまするが、段々準備も進行しておるというような実状に鑑みまして本案賛成する者でありまするが、併し政府におかれましても、こういう委員会の空気をよく御洞察になつて、來るべき國会において、改良すべき点はみずから改良するように発議なさる、こういう條件の下に民主自由党賛成いたします。
  7. 高橋啓

    高橋啓君 只今民主自由党から賛成の御意見がありましたが、同じ理由で民主党におきましても賛成いたします。
  8. 板野勝次

    板野勝次君 私はこの農業改良助長法案は実に大切なもので、今まで責任ある当局説明では、どうしても農林大臣考えでどういうふうにでも農業改良助長方法が進められて行くと、何ら民主的に農業改良目的のために資金を使うというふうなことも保証されていないし、若しこれがこのまま通りますならば、ただ官廳が独断的に意図するもの、或いは都道府縣の農業試驗場を中心にしたもののみに重点を置いて、民間試驗研究機関等が段々と圧迫されて行く、むしろそれを助長するようになるのでありまして、どうしても修正の要があると思うのであります。全体として農業改良という問題に対して、我々は亳も反対する理由はなくして、その農業改良方向と、それから資金が妥当に出されて行つて農業改良の上に十分に企図ができるという方向に推進して行かなければならないのでありまして、原案によりますると、むしろ農業改良を助長させるよりも狹めて行くという方向に危險を孕んでおりますので、大体の修正点は印刷したものをお配りしてある筈でありますが、第一の総則の「法律目的」を「法律目的及び運営」と改める。それから総則に第二條として條の條文を加え、以下の條項を繰下げるようにしたいのであります。これは農林大臣の独断的な権限を審議会運営に委ねようというのであります。即ち「この法律運営を円滑にするため農業改良助長審議会を置く。本委員会農民組織労働組合科学者團体学識経驗者関係官吏をもつて構成し、委員会規定は別にこれを定める。但し関係官吏の数は委員総数の十分の一を超えることはできない。  「農林大臣本法運営に対する任務はすべて本委員会決定に從わねばならない。」というように修正をして、農林大臣は偏えにこの審議会決定した内容を遂行して行くという点に限つて参りたいのであります。  それから第二條中第三項、第四項を削除し、第八條、第十九條はいずれも削除するのであります。これは前に質問の際に相当詳しく繰返されておりますから説明の省略いたします。  第十三條は第一項中「都道府縣が農林省と協同して行う」というのと、「都道府縣に対し」、この字句を削除するのであります。第十三條第二項はこれを削除する。  第十四條第二項並びに第十五條、第十六條、第十七條、第十八條中の「都道府縣」の下にそれぞれ「及びその他の機関」という字句を挿入いたしまして、第十六條第一項、一、二、三号をそれぞれ削除する。第十六條第二項はこれを削除する。  第二十三條第四項中、「当該補助金不要額とする」を「当該補助金を他の都道府縣又はその他の機関割当てることができる。」というふうに改めたいのであります。  以上のごとく修正いたしまするならば、各位におかれても心配された面、農業改良を助長して行く眞の目的が達成されると思うのでありまして、以上のごとき修正案を提出する次第でありまして、どうか農業改良助長のために熱心にそれの推進を望まれる委員各位賛成を得たいと考えるのであります。
  9. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 他に御発言ございませんか。
  10. 山崎恒

    山崎恒君 この法律農民の直接の利益というものは盛られていないで、試驗研究等間接的にこの農業生産の増大、発達達というようなことを期するために盛られてあるのでありまするが、只今配付になつておりまするところの農業改良局と密接不可分な関係にあるものであります。ただ遺憾なる点は蚕糸業に関する問題が分離になるということは、如何にも日本農業蠶糸業を重んじていないというようなことに、我々は観察しなければならないようなことになつておるのでありますが、その点は非常に遺憾と思うのでありまするが、何といたしましても今後農業に関する諸原理及びその他の科学的砂驗研究をいたしまして、日本農業最高度に向上させなければならんというような状勢下におきましては、本法案に対しまして提案通り賛成する者であります。
  11. 太田敏兄

    太田敏兄君 戰時中はともかくといたしまして、戰後における傾向を見ますると、農業技術につきましては官廳指導の線が強く浮き上つておるように見受けるのであります。私はこの官廳指導というものを一概に排するものではありませんけれども、ただ官僚指導一方に墮するということは非常に警戒すべきことであると思うのであります。これは今後我が國におきましてますます重要でありますところの農業技術動脈硬化を起す基であります。それで只今板野君のお話もありましたが、私も同様の意見を以ちまして、この際官僚指導と共に、民間研究機関もこれと並行して、発達を助長しまして、もつと自由奔放な新研究が行われまして、我が國農業の発展の上に寄與するようにいたしたいと思うのであります。こういつたような希望條件を附しまして、一應原案賛成いたしたいと思います。
  12. 藤野繁雄

    藤野繁雄君 私は第一條のことで昨日いろいろ申上げたのでありますが、この法律から見ますれば、今山崎委員からお話のあつたように、蚕糸業を分けておるということを遺憾に感ずるのであります。又農業という中に畜産を含んでおるということでありますが、いろいろの点から考えて見まして、畜産振興が我が國の現在の状況で重要であるのにも拘わらず、内容を見てみると畜産振興に関するいろいろの点が欠けておるように考えるのであります。將來本法の運用によつて、又近く本法を改正して畜産振興も同時にやり、又蠶糸業本法において同時に行うというような態勢をされるような希望を述べて本案賛成する者であります。
  13. 岡村文四郎

    岡村文四郎君 私はこの助長法案が決して悪いものとは考えておりませんので、いろいろと質問をやつたわけでありますが、現在の日本農業が如何にあるかという観点から非常に熱心に調べた結果がここに現われておるのでありますが、試驗研究を主としておやりになりますが、試驗研究をして日本の現在の農業に即應することを第一義に研究をして貰いませんと、あらゆる部面で試驗研究はできたが実施に移して効果がないというものが沢山あるわけであります。殊に官僚を非常に嫌つておりますが、先方の書いたものにも農林省官僚を非常に説いておりますが、私共はあれ程官僚的だとも考えておりませんが、往々にして官僚的になり勝ちで農業試驗研究末端に下ろすべきものの研究はそういう気持では絶対駄目であります。殊によく御注意申上げお願いを申上げて置く点は、その仕事に携わる者はいろいろな労働組合の法規によつてストをやつたり、賜暇をやつたりするような気持ではこの試驗研究は絶対に生きて下へ通らんと存じます。今後農業に携わります、これに雇われる職員は絶対にそういう気持のない者をして試驗研究に当らせるようでなければ、下まで滲透することにはならんと思います。  それからその次は末端のことを余り心配をしないで上の方ばかり研究をすることになつておりますが、これは早急に末端を第一に考えてそうしてやるようでなければこの効果は挙らんと思います。私は賛成はいたしまするが、これは止むを得ん賛成であります。非常に練れておらん、誠の杜撰な案でありまして、國会としてこの案を認めることに実に責任があると思います。この責任は私共は國会におるうちは追及いたしますが、退きますと責任を追及できませんからこの点を十分に政府においてしつかりと御用意をして、やがて追及されますことを心の中において執行されますように、その意味で御賛成申上げて置きます。
  14. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 大体討論を終結したようでありますから、これから採決に入ります。先ず最初に板野議員から御提案になりました修正案議題にいたします。この御提案になりました修正案に御賛成の方の御起立を求めます。    〔起立者少数
  15. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 少数であります。從つてこの修正案は否決されることになりました。  次いで農業改良助長法案全文について採決いたします。原案通り可決することに御賛成の方の御起立をお願いいたします。    〔起立者多数〕
  16. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 多数起立、よつて多数を以て本法案原案通り可決することに決定いたしました。尚只今討論或いは委員会における審議経過等につきましては、例によりまして委員長の手許で適当に調整いたしまして本会議に報告することにいたしたいと思いますから御了承願いたいと思います。  次に食糧確保臨時措置法案議題にいたしますが、今衆議院討論中でございますので、その間若干時間がありますから、実は一應予備審査としての質疑は打切りましたが、北村委員から質問を留保されておる点がございますので、これをやつて頂くことにいたします。
  17. 北村一男

    北村一男君 この衆議院修正案に皆さんがまあ御同意なさつたようでございまするが、前回に私質問希望いたしました点もございまするが、我々の党といたしましては、この中央審議会決議機関にして貰いたい、こういう実は民主自由党独自案というようなものがあるわけであります。ところが本日の修正を拜見いたしますると、この点は「意見を聽いて」でなくて「意見に基き」というふうに衆議院修正は相成つておるようでございまするが、この点は政府は「基き」ということをどういうふうに御解釈になるか、その点を承わつて置きたいと存じます。尚これは事前割当に相成りましたのでありますから、そうして末端にすでに下ろされて行きましたのでありまするから問題はないと存じますが、ただ参考のために承わりたいと思いますることは、昨年農林大臣官邸において米價の問題について協議のありましたときに、農民の申出た水田の面積と、それから政府推定しました面積との間に約十九万町歩ばかり食い違いがあつたのでございますが、その十九万町歩をどうして政府が多く推定したかということにつきまして、当時の説明では、日本國民健康状態などを考えて、約六百万石程度の闇米が流れておるというような推定が下される、そういうものを勘案しますと、只今申した約二十万町歩足らず面積が想定できるというような説明があつたと私は記憶いたしておりまするが、まだ一筆も調査を全國的に完了しません今日、政府事前割当数字をお出しになるに、やはり本年もそういう数字を御参考になさつて決定なつたものであるかどうか、念のために承わつて置きたいと存じます。
  18. 平野善治郎

    政府委員平野善治郎君) 只今北村委員からのお話がございましたように、第三條の審議会を、前の案といたしましては「審議会意見を聽いて」とあつたのを、今回衆議院修正では審議会の「意見に基き」とこうなつておるが、その「基き」ということはどういう意味かというお尋ねのように承わりました。勿論農林大臣審議会意見を基礎としてこれを根本に自分考えの大基いとして、適切な施策を建てよう、こういうのでございまして、前の場合においてもそういう大体考えでありまするが、あの表現では或いは必要によつて、見ようによつては聞き流してというふうにも聞えるところがありますので、今度はあの中央審議会意見に基いて、これを大本といたしまして、そうして自分のいろいろなことを決める基いにしたい、こういう考え方であります。  それから作付反別の問題でございまするが、昨年の説明はどうでありましたか、私今存じておりませんが、そのときの御説明では、或いは相当量の米が正規のルートを通らないで流れておることからしても、供出そのものの御無理を願つてつて、そういう余力がないのに実際はあると見ておる、そうすれば、一反歩当りの收穫は大体非常に御難儀を掛けておりますから、反別でも或いは延びておるのじやないかというようなふうに観察をした、こういうお話だつたろうと思いますが、今年はそれについてどういうふうに考えておるかというお話でありました。それは、そういう点も今年も考慮の中に入れておりまするが、いま一つ供出制度が段々こういうふうになつて參りましてから、御承知通り日本の田地、或いは畑におきまして、作付面積申告が非常に減つておるのであります。それらのことも睨み合せまして、少しそういうような申告だけでは、正しくないのではないか、こういうような両面の推定から、一つ反別を想定いたしまして、割当てておることは事実であります。併しながらこれは実際ないような供出面積考えるわけではありませんので、若し間違つておる場合におきましては、どんどんこれを訂正すべく、それぞれの手配をいたしておるわけでありますし、又本省直轄作物報告所、その他の機関、或いは都道府縣、そういう向きとも連絡をしまして、できるだけ早く、反別の適正な測量をして、將來こういうふうな点の明朗化を期したいと、こう考えておる次第であります。地方に行きまして、私共常に、耳にいたしますのは、反別のないところに供出割当をしておるというお話でございますが、その度にそういう事実があれば、いつでも補正を迅速に行なつて農家に方々には、迷惑を掛けないということを力説しておりますので、この点を御了承願いたいと考えております。
  19. 岡村文四郎

    岡村文四郎君 少しお伺いして見たいと思いますが、御承知のように、本年初めて、事前割当をおやりになつて、夏作、特に稻作の事前割当をやつたのでありますが、六月二十日の調べによりますと、未だに割当が完了していない地方相当多いのであります。割当がかくのごとく遅延いたしましたのでは、事前割当の價値はなくなると思うのでありますが、当局は如何にそれをお考えになつておりますか。次はこの法律が施行になりますと、末端個人別割当が最も必要でありますが、法に書いてありますように、異議があれば十日或いは二十日というふうに日にちが決められておりますが、上の方で相当余裕を見て指示をしませんと、又相を変らん結果になりはしないかという必配があるのでありますが、当局の方では、少くとも五ケ月以上の余裕を見て、指示する確約ができるか、その点をお伺いしたいと思います。
  20. 平野善治郎

    政府委員平野善治郎君) 只今岡村さんの御質問は、事前割当が六月二十日においても諸所において割当が不可能な所があるのを、どう思うかというお尋ねでありますが、誠にこれは残念なことでありまして、その間には、いろいろな事情があつたと思います。いろいろ事情に副わない点も、或いは所によつては、あるかも分りません。又その他府縣の各地区との均衡が取れないとか、或いは又末端の部落の均衡上、隣の村との釣合いというようなことから、いろいろな問題で、主として、供出割当が事実に上において、過重な点があつて事前割当を不可能にさせておることだろうと思いまして、これは、今、そういう地区に対しましては、誤解のないように、或いは又実情をよく調査をいたしまして、そうして一日も早く、全國が事前割当を終ることを努めております。  尚又末端個人割当がいろいろ最後に問題になるというお話は、その通りでありまして、これに対して、異議があつた場合には、一應、十日或いは二十日という期限は附してあるのでありますけれども、そういうことでは、やはり期間が短いから、できるだけ早く、個人割当を終るようにというお説は御尤もであります。併し五ケ月以前にこれをはつきり割当を完了することができるかという期限につきましては、できるだけ早くやりたいということに考えておりますけれども、只今のところ、日にちを切つてお答えするということろまでは、私も申しかねるわけであります。
  21. 岡村文四郎

    岡村文四郎君 ちよつと、次官誤解があるのじやないかと思いますから、もう一應申上げます。私の五ケ月というのは、中央政府割当決定してからの時日であります。決して下の方へ行つて五ケ月というようなことを要求してはいないのであります。この点は中央から都道府縣に、都道府縣から市町村に行くとかうようなことは、相当余裕がないと、又これはごだごだすると思いますから申上げるのでありますか、次官御自身では確約は困難だろうと考えておりますが、その趣旨において十分折衝されて、私共の希望通りますように、特段の御配慮を願つて置きます。
  22. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 質疑はこれで終了したものと認めまして、これから食糧確保臨時措置法案について、討論及び採決に入りたいと思います。尚申上げますが、衆議院から送付されました案によりますと、原案修正が加えられておるのであります。即ち、その修正の点を申上げますと第一は、第二條第二項中「生産数量」の下に「生産者保有数量」を、又「供出数量」の下に「(代替供出範囲及び比率を含む)」を、「農機具」の下に「等」を加える。これが第一点であります。  第二点は、第三條第一項中「意見を聽いて」を「意見に基き」に改める。  第三点は、同條第二項の次に、次の一項を加える。「政府は、主要食糧農産物生産を確保するため必要な資金の融通につき、計画を定めその実施に関して必要な措置を講する。」  第四点は、第十條第五項中「農機具」を「農機具等」と改め、「命令に基き」の下に「時期を失しないで」を加える。  第五点は、第八條第四項に次の但書を加える。「但し、第五項において準用する第六條第二項の規定による決定があるまでは、食糧緊急措置命令昭和二十一年勅令第八十六号)第一條規定による收用は、これを行わない。」  第六点は、第九條中、「農機具」を「農機具等」と改める。  第七点は、第二十九條を次のごとく改める。「第十條」の上に、「第三條第四項又は」を加える。  以上の通りであります。この衆議院送付修正案を含めと議題に供します。
  23. 石川準吉

    ○石川準吉君 この食糧確保臨時措置法は、元來農家自分農家経営のために、自由に耕作し得る権利を非常な制限をする案であります。併しながら現下の食糧事情からいたしますというと、いろいろ心配な点がありましたが、只今委員長が指摘されました、衆議院修正によりまして、その心配が大分緩和されたわけでありますが、今申上げたように、何としても農家経営権の主要な制限でありますので、政府におかれましては、これが実施に当りましては、苟くも不当に農家制限圧迫するようなことのないように、十分な御注意を願いたいと思います。地方におきましては、さような考えがないといたしましても、例えば開拓その他の問題において、末端実施機関におきまするというと、中央の意図を無視しましたり、或いは曲解したりしまして、不当に農民を圧迫する事例が沢山あるのであります。この措置法におきましては、かような問題が起きますというと由々しき大事でありまして、むしろ増産確保減産確保というような結果を招來すると思います。この点につきまして、政府の十分なる準備と、これが運営につきましては誤りないような、詳細な計画を立てて御実施を願いたいという希望を申上げまして賛成いたします。
  24. 板野勝次

    板野勝次君 私は共産党を代表いたしまして、この食糧確保臨時措置法案に対して全面的に反対する者であります。大体五つの理由で反対したいと思います。  第一は、農業計画を立てて参りますのには、政府食糧需給計画と、それから下からの民主的な、具体的な生産計画というものが並存いたしまして調整されなければならないと思うのでありますが、この民主的なる生産計画というものについては、法文には何ら規定されていないのでありまして、農業計画政府農民に対する一方的な註文書を出しておるのに過ぎないのであります。而もこの註文書には、今まで農業生産用の資材が償われていなかつたという点に対して、衆議院で改正されましたことは、もとより結構でありまするけれども、発註書に対して農機具等が保証されて來たというのに過ぎないので、依然として基本的な面が変つていないのであります。而もこの中央農業調整審議会というものが、單なる諮問機関になつており、そうしてその構成や選出の方法につきましても、政令によつてなされるようにできておるので、その民主的な機能というものが何ら保障されていないのであります。第三條の衆議院修正が、「を聽いて」というのが「基き」というふうに字句が改められているのでありまするが、この「を聽いて」ということと、「基き」という点では、言葉の強さというものがありますけれども、内容的には、これによつて諮問機関ではなくなるということにはならないので、單なる欺瞞に過ぎないと思うのであります。  第二の反対の理由は、この法案の骨子というものは、今まで供出割当が、作柄を見た上での予想收穫高を基にして決められたのに対しまして、先ず作付の前に、各農家主要食糧農産物生産割当をし、そうしてこの割当てられた生産数量から、自家保有量を引いて、今度は修正された面によると、大体供出範囲及び比率等が含まれることにはなつておりまするが、この自家保有量を控除したものを供出責任数量とするという点にあるのであります。ところでこの生産割当供出責任数量というものが、民主的に決められるかというのに、從來の供出割当の決め方と全く同樣でありまして、上から天降り的に下へ下へと押し付けて参りまして、各段階農業調整委員会はこれを單に受けて、その割り振りを自主的に有れるのに過ぎないのであります。これではこの委員会を如何に民主的な形のものにいたしましても、政府天降り割当下請機関以上の何ものでもないのでありまして、こういうふうな鉄の枠を嵌められた民主性というものは、政府供出割当とその統制の責任を、ただ調整委員会に轉嫁するというふうな結果になつてしまいまして、見掛け倒しの欺瞞になつてしまつておる点であります。  第三に、それではこういうふうな仕組の下においても、中央地方市町村農業調整委員会が、今までの食糧調整委員会と全く違つた、民主的な運営ができるかというのに、決してそうではないのでありまして、市町村及び都道府縣の委員は、一應公選となつておるのでありまするが、会長市町村の場合にありましては、互選制であるけれども、都道府縣の場合にありましては、知事になつているのであります。そうして会長である知事は、更にこの互選された委員の外に五人というものを選定するところの実権を持つている。從つて現在の農地委員会構成等に比較いたしまして、保守的であり、中央審議会に至りましては、前に申しましたように、絶対命令に等しい農業計画を決め得る段階にありながら、單に農林大臣諮問機関になつており、そしてその構成であるとか、選挙運営等に関しましては、全く官僚に握られておるのであります。こういうように上から下まで官僚決定権は動かし難いものになつておるのでありまして、これでは農村の委員会官僚と結び付き、更に地主富豪的な一部の農家に握られてしまつて、こういう一部の地主富豪的な農家には非常に便利でありますが、その他の中以下の農民に対しては、決して便利な方法ではない。從つて供出や資材配給割当の公正というものは断じて期せられないのであります。  第四番目は、この法案では、又農業生産物の地域、期間、種類、面積といつたようなものの指定と、それから強制ができることになつておりますが、これは農業経営の自主性を破壞し、そうして農民生産意欲を減退させる結果となつて來るのは必然でありまして、これは質問の際におきましても政府委員から應答がありました。この危險性を多分に孕んでおると思うのであります。これが天降り的に強制せられまするときには、戰時中の軍閥官僚政府のフアツシヨ的な作付統制の下に、非常に苦しみました農民の奴隷化以上の状態が起つて來るのは必至でありまして、而も現在のように、生産費を償わないような農産物の價格の統制と並行して、このことが行われまする場合には、農民というものは行き場を失つて自滅し、農業は破壞せられる由々しい結果になると思うのであります。工産物は戰前の百十倍、農産物の價格はまだ未決定でありまするが、労働賃金は三千七百円ベースを押し付つけておるのでありまするが、この三千七百円ベースは実賃的には千八百円ベースに比べまして二十六%も低下しておる。こういう中に賃金の水準から前のパリテイ計算によつてやられたような方法で參りますと、都市の工産品に比較してシエーレはますますひどくなつて参ることは必然でありまして、先日も米價問題に対して今までのパリテイ方式を改めて、生産費を割らない方法による農産物價、米價決定、更に價格差等の問題について大臣の答弁を求めた際におきましても、殆んどこのパリテイ計算の方法を改めずに行くような意図が窺えるのでありまして、こういうふうな現状の下におきましては、作付の統制と、不当な價格によりまする供出統制だけが行われて参るのでありまして、農家経済の收支の不均衡と経営の破綻に農民は追い込まれて行くのでありまして、政府が食糧確保を意図するその強制の必然の結果は、却つて供出の不振、悪循環等をなして参りまして、食糧危機はいつまでも解決されない。勿論これは我が國の政治家の農業問題解決の貧困にも起因するのでありますが、この法律の施行の結果は、予期するごとき食糧の確保とならないばかりでなく、更に労働者や農民の生活が本当に資本の重圧から撥ね返して行く力を失つてしまつて、これらの働く農民諸君が奴隷化し、日本の民主化が逆行して参る。最近はいずれもフアシズムの擡頭になる危險のある諸法案が次から次へと通過して、この法案も、更にフアシズムの道への非常な強化になると思うのであります。  第五の点は、都道府縣及び市町村におきまして、農業計画を決めるのは、各農業調整委員会の議決を経ることになつてはおるのでありまするが、これは知事又は市町村長において勝手に取消すことができるので、何ら民主的に保障されていないのであります。又農業者は自分に対して定められた農業計画について、異議を申立てることができることになつておるのでありますが、この有効期間は、計画公表後、前には一週間、今度はただ十日に改められておるに過ぎないのでありますが、僅か十日間と限定されて、事実上いろいろな手続きで無効となる公算は極めて大きいのであります。市町村長がこの申立てに対して決定するには、二十日以内となつておりまして、前の案によりますと三十日となつておりましたのを二十日に短くして、そうしてこの短期間内に盛り沢山にして、更に煩瑣なる上級機関の承認を順次得なければならないことになつておりますので、結局これを具体的に異議の申請が決定されて行くということを考えて見ますときに、この申立ては事実上骨抜きにされておると言わざるを得ないのであります。而もこの場合中央で決まつた都道府縣別の農業計画は、動かし難い重石といたしまして、官僚的な計画体系が下から少しでも是正されることを固く抑えておるような仕組になつておるので、こういうふうな欺瞞的前提の上に立つて決められた指示に從わない農業者に対しては、市町村農業調整委員会から知事に申請して、強制命令を出せることになつておる。知事はこれによつて申請で相当であるというふうに認められるときには、強制命令を出す。そうしてこの命令に從わない農業者は肥料その他資材の配給が削減れさるだけではなく、二万円以下の罰金に処せられる。  こういうふうな以上の五つの理由によりまして、どうしてもこの法案は、民主的な仮面を被つた官僚的な抑圧法案であると断ぜざるを得ないので、農民が不当に圧迫されるだけでなく、繰返して申しまするが、農民は抑圧されて、供出は却つて阻害され、勤労人民の生活はますます窮迫して、産業復興の基礎が破壞されるものであります。  そこで日本共産党は、飽くまでこの農業計画供出の制度は、民主的に下から築き上げられなければならないことを主張するのでありまして、我々は食糧は飽くまで上から押し付けるのではなくして、食糧の人民管理法等を制定すべきであると考えておるのでありますが、併しなが今日食糧人民管理法等を設定いたしまするためにも、その暫定措置としては、取敢ず食糧管理法を改正すれば、十分供出目的が達し得るので、食糧管理法を改正して、農民のためにする飯米の確保、適正價格の問題、再生産用の物資の確保をこの点で保障して行けば、十分でき得るのであつて、新らしくかくのごとき農民を圧迫するような方法を取らなくても、食糧管理法の中で十分應急の措置が取り得ると思う。そうして更に農民を脅かして参りました食糧緊急措置令等は、この際もう必要のない措置令でありまするから、即刻政府はこれを廃止すべきであると思うのであります。  以上の諸理由によりまして、私は主要食糧臨時措置法案に対して、全面的に反対する者であります。
  25. 藤野繁雄

    藤野繁雄君 私は農業生産のために必要な肥料、農藥、農機具又は資金を入れることになつたのは、喜ばしいことであるのでございますが、農機具の下に「等」という字を入れたことによつて、今までの委員会の経過からいたしまして、農業生産に最も必要なものは、この外に、農家が着るところの繊維製品てあるとか又ゴム製品が入るのであります。如何に肥料、農藥、農機具資金があつても、農家が着るところの着物がなく、使用するところのゴム製品がないということであつたならば、生産を殖やすことはできないのであります。從つてこの「等」ということによつて農業計画を立てる際においては、繊維製品、ゴム製品というものを、肥料、農藥、農機具同樣に農家に配給するようにして、その配給方法については商工省、安本と農林省は交渉中であるということでありますから、その交渉の結果は、必ず確実に配給ができ、又その配給方法はできるだけ農家の自主的團体である農業協同組合及びその連合会をして取扱わせて、食糧増産をより以上に増進するように努めさせて貰いたいという希望を述べ、この案に賛成するものであります。
  26. 太田敏兄

    太田敏兄君 一般論より、私は、現今のような資本主義体制下におきましては、農業は常に工業から圧迫されておる極めて不利な立場に立つておるのであり、或いはこういう制度も農民の利益のためにではなくして、他の産業発展のために作られたものであるとも言えるのであります。かような見地からいたしますれば相当批判の余地があります。又一歩譲つて申しましても、計画はよくてもその運営がまずければ何にもならんのであります。即ち割当方法にいたしましても、供出方法にいたしましても、尚封建的な要素がこの中には多分に残存しておると思いますので、この点当局でも十分牢記されまして、欠陷のある点は他日修正をし、そうして運営よろしきを得るよう希望いたしまして、この際はいろいろの事情から止むを得ざるものといたしまして、この案に賛成いたす次第であります。
  27. 北村一男

    北村一男君 私は中央審議会に対する懸念につきましては、板野委員が第二の点として取上げられたことと同樣の懸念を持つておるのであります。末端の機構に至りましては、私は聊か板野委員と違う見解を持つておるのでありますが、この中央審議会は根本の供出を決めるのでありますから、余程御注意になつて運用して頂き、又人選をして頂かないと非常に困る事態が起きて來る、こういうことを憂慮する一人であります。殊にこの中央審議会においては、私は農業計上のみならず、でき得れば米價の問題もその意見に基いて農林大臣或いは政府において決定されることを希望する者でございます。  尚この資金計画などにつきましては、よく農村の実情を取入れて、物でなくて金の裏付けをして頂きたい、今や農村におきましては、物の裏付けとして資金が要るという事態をよく認識されて、運用よろしきを得るようにして貰いたい。こういう希望を付しまして民主自由党はこの原案賛成するものでございます。
  28. 岡村文四郎

    岡村文四郎君 二年越しの案が大体決定になることになつたのでありますが、農家としては今までのような無策無計画供出を強いられることは迷惑千万であつて、何とか事前に数量を知りたいというのが農家全体の要望であるのであります。そこでこの計画が上から下に下ろされるのでありまして、下から湧き上つて來るのではないのでありますが、元のような無理の割当をされるだろうという懸念は十分にあるわけであります。然るに一應は下の意見を聽いてやることになつておりまするから、多少のそこに樂しみはあるわけでありますが、そこで板野さんから随分いろいろと詳しくお話がありまして、百姓を奴隷化されるというお話もありましたが、決してこれから奴隷化され始めるというのではなしに、奴隷化されておると私は考えております。それはいの一番に日本共産党が最も主張しております農地開放、これが奴隷化の第一歩であります。これは何者も許さん奴隷化でありまして、この奴隷化は自覚いたしております。どうか百姓を何とか面倒を見て計画を立てて呉れといつてお願いしておりますが、私共百姓からお願いをせなくとも、政府それ自体でどうなるだろうという見通しを附けて政府自体が奴隷化しておる農家を引立てて行くのでなくては、食糧の確保を絶対に不可能であると考えておるのであります。  そこで昨日も安本長官、農林大臣がここに來られまして、いろいろお骨折になつた誠にむずかしいお話を承わりましたが、あれは資金難に陷つております農業を何とかして救いたいという熱意に燃えておられますことはよく分るのでありますが、僅か三ケ月に十五億、実に私は騙すにも程があるというつもりで、決してあれには釣られん氣持でおります。そこでここに書かれました資金というものを、一億も資金であり、五億も資金であり、十億も資金で、これを入れたことによつて安心して喜んで受けたと思つてつては間違つておるのであります。今後十分な農業資金が何ぼ要るをという計画くらいは立てて、そうして殊に單作地帶たる、北海道、東北六縣が一番困つております。中にはまだ阪神の方にもあるかも知れませんが、子供瞞しのように資金を入れたら資金は何ぼでもよいとか、或いは文句さえ書いて置けばいいという考えではなしに、どうしても北海道、東北六縣、或いは阪神の中にも一縣程あると思うのでありますが、それを入れたものによつて十分に計画を立てて、そうして万遺憾のないようなことにして、初めて生産が確保できるのでありますから、この点は十分に又とお願いをしなくとも、しつかりと政府の方で案を立てて農業経営をさすことにして貰うことをお願い申上げまして、甚だ遺憾ではありますが、二年越でありますが故に(笑声)もう政府に免じて止むを得んこととして賛成申上げます。
  29. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 討論はこれで終結いたしました。衆議院送付案を議題にいたしまして、これから採決をいたします。  右送付案に賛成の方の御起立をお願いいたします。    〔起立者多数〕
  30. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 多数であります。從つて衆議院送付通り可決することに決定いたします。  以上可決いたしました諸案について、本会議へのそれぞれの報告については、その内容その他は例により委員長にお任せ願います。  尚右各報告書に、可とせられる諸君の御署名を願います。    〔多数意見者署名〕
  31. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 速記を止めて。    〔速記中止
  32. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 速記を始めて。それではこれにて本日は散会いたします。    午後五時五十九分散会  出席者は左の通り。    委員長     楠見 義男君    理事            羽生 三七君            高橋  啓君    委員            木下 源吾君            太田 敏兄君            北村 一男君            柴田 政次君            西山 龜七君            平沼彌太郎君            木檜三四郎君            小杉 繁安君            佐々木鹿藏君            竹中 七郎君            石川 準吉君            宇都宮 登君            岡村文四郎君            徳川 宗敬君            藤野 繁雄君            松村眞一郎君            山崎  恒君            板野 勝次君            池田 恒雄君   政府委員    農林政務次官  平野善治郎君    農林事務官    (農政局長)  山添 利作君    農林事務官    (畜産局長)  遠藤 三郎君    大藏事務官    (主計局第二部    長)      河野 通一君   説明員    農林事務官    (畜産局競馬課    長)      井上 綱雄君