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1948-06-30 第2回国会 参議院 農林委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月三十日(水曜日)    午前十一時六分開会   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○食糧確保臨時措置法案内閣送付) ○指定農林物資檢査法案内閣提出)   ―――――――――――――
  2. 楠見義男

    ○委員長(楠見義男君) 只今から開会いたします。これから食糧確保臨時措置法案を議題にいたします。農林大臣も見えておりますので、どうぞこの問題については今まで留保されておつた質問その他重要な問題について御質疑を願いたいと思います。
  3. 北村一男

    北村一男君 この際農林大臣にお伺いしたいことは、しばしば本委員会において米の値上り差額農村に還す問題についていろいろ御説明を頂きましたが、これはいろいろの事情で早急の解決は困難であつて目下努力中と承わつておりまするが、然るに本院の農村関係の一議員が十八、十九両日に亘りまして安本長官にお会いしたところが、本年度食糧増産奨励金形式において農村に還すことに決つておりまして、そのことについては近く関係方面の承認を得て運ぶつもりであると、それから又農民代表に対しましても政府としてさような形式において農村に還すつもりである、こういうことを言明されましたので、各府縣に対してはそれぞれ農民代表が電報を以て知らしてやる、こういうことを承わつております。そういたしますると、國会においてまだどうもはつきりしないというような大臣の御答弁は、他の人が伺いますると、安本長官と共に恰もそういうふうに決まつたかのような印象を受けるような御説明に相成つておるということに相成りまするから、これは國会に対して故意に眞相をお隠しになるという御意図がないまでにいたしましても、他より詳しいことをお知らせにならんということに私は相成るのではないかと思うのであります。この点についてどういう成行きになつておるか御説明願いたいと思います。  それからこれは別の問題でありまするが、この際外米輸入に対するお見通しというようなものがおありになりましたならば、でき得る限り詳細に御説明願いたいと思います。以上二点をお伺いいたします。
  4. 永江一夫

    國務大臣永江一夫君) 第一のお尋ねになりました米價還元支拂の点でありますが、これは再三私がこの委員会においても申上げでおりますように、まだ関係方面と折衝中でありまして、安本長官がどういうことをお話なつたか私は承知いたしませんが、当面の責任者は私でございますので、私が責任を以て申上げ立場にありまする関係上、委員会におきまして、或いはその他公的、私的の会合、或いは談合をいたしまする際におきましても、私はさようなことは申上げた覚えはないのであります。恐らく安本長官が何か一つ見通しについてお話なつたと思うのであります。御承知のように、この点は先般も報告申上げましたように、衆議院全会一致の可決によりまして、芦田総理から政府のとるべき方針を明かにいたしまして、その後再三いろいろな方面から折衝したのであります。どうしても還元支拂ということは関係方面においては、了承されないのであります。從いまして政府ばかりでなくして衆議院農林委員会においては、各派の代表がやはり先方で関係方面といろいろお話なつた。依然としてこれは行悩んでおるのであります。ただその間衆議院の方の農林委員会におきましては、この問題について適当に善処せよ、換言して申しますれば、國会衆議院における決議では米價差額について還元支拂をせよという決議であるけれども、これが現下の特殊事情によつて困難な場合にはある程度代案作つてやつたらどうかという御意見が出て参つたのであります。私はその御意見に從いましていろいろ代案というようなもので話をしておるのでありますが、併しこれも非常に困難であります。本日も十二時から、昨日は午前八時から、関係者が寄りまして、いろいろ案を練つておるわけであります。まだ今お話のようなことにななかなかならないと、こう私は思つております。決してこの間のことは隠しておるわけではありませんので、私は責任ある御回答ができまする間は、極力一日も早くこれを具体的に申上げるように、鋭意努力をいたしておるということを御了承願いたいと思います。  それから第二の点の外米見通しにつきましては、只今のところ非常にデリケートな関係がありまして、これは明言をいたしかねる、さように御了承願いたいと思います。
  5. 西山龜七

    西山龜七君 私は監理局長官にお伺いしたいと思います。政府におきましては主要食糧配給にいろいろと御腐心をなされておることは、十分に了承いたしますが、七月より十月までの配給はカロリーにおきましては、二合五勺に相当する量を維持いたしまして、十一月の新年度より約一割程度増配が可能であると、食生活の前途は明るい希望を與えておりますが、私は七月以降の端境期は運賃、物價賃金の改正に伴いましてインフレの高進は必至であると思います。特に八月以降になりますと、米の配給が非常に減少いたしまして、砂糖が五日間代替配給になるので、この調子でいきますと、米の闇價格は一升三百円以上というような空前の高値を現出して、國民食生活に深刻なる不安を與えると憂慮する者であります。そこで私は政府に要望したいのは、十一月より増配予定のものを八月に繰上げて実行して貰いたい。この三ケ月間に必要なる数量は約一週間くらいの消費量を捻出いたしますならば、実行が可能であります。この捻出方法は全國の公團の支局の手持を約三、四日間減少いたしまして、配給操作を完遂することといたしまして、後の三、四日間のものは十一月の新米穀年度の分より繰上げて操作をする。このような操作は私は中央でやることは至難でありますので八月以降の三ケ月に限りまして、特例を設けた上で各道府縣に一任せられて現地においてその実状に即應してやれば実行が可能であります。從つて私は政府に要望する点は、八月以降における政府食糧需給計画の範囲内におきまして、操作可能の府縣においては一割程度増配を認めるということを発表、実施して貰いたいのであります。私はこの方法実行可能であつて食生活に安定を與えまして、インフレ阻止に最も有効適切であると確信する者であります。これに対しまして長官の御所見を拜聽したいと思います。
  6. 片柳眞吉

    政府委員片柳眞吉君) 只今八月頃から何とか遣繰りをいたしまして、現在の二合五勺の配給をある程度増配ができないかどうか、又全國的にできなければできる地方だけでもやつたらどうかというような非常な重大な御質問でありますが、実はやがて近く一般の物價も上つて参りまするし、実質賃金裏付といたしましてもできるだけ早く現在の配給量を増加して参りたいということは、かねてから念願しておるところでありまするが、ただ從來も國会でもお話をしておると存じまするが、現在の需給から見て参りますると、現在出荷中でありますところの麦なり、馬鈴薯なり、或いは秋の甘藷新米等をできるだけこれを本年度内に消費をするということで参りましても、現状では現在の二合五勺の配給を維持するに汲々たる状況でありまして、勿論この七月以降は輸入食糧状況はある程度は好轉すると存じますけれども、これが計画通りに入つて参りましても、結論といたしましては、現在の配給量をどうやらこうやら維持できるという以上には困難な状況でありまして、すでに早場米につきましても約百三十万石の食込み予定いたしておりまするし、今年の麦ガ相当不作でありまするが、麦の配給につきましてもすでに約四百万石以上を予定しておるのであります。これ以上繰上げは実際上は困難ではないかという点からいたしまして、全國的に八月から配給量を増加することは、遺憾ながら現状では困難だと私は考えるのであります。要しまするに來年度の年間の全体の見通しをつけませんで、八月からどんどん繰上げて今から増配をするということになりますると、或いは一時的には増配が可能かも知れませんけれども、又來年度の途中で欠配が起るというようなことにもなるのでありますので、どうしましても來年度見通しをつけまして継続的に増配が可能であるということでありませんと、今、あわててやりまして、又後で遅配、欠配が起きる、こういうことになりましてはいかんと思うのであります。結論といたしましては、困難だと私は断禎する外はないと思うのであります。ただ西山委員の御出身の高知縣等におきましては、相当早場米も出て参りまするし、或いは甘藷相当出る地帶でありまするから、高知縣だけのみとられて、或いは十一月以前に増配をすることは、これは或いは可能かとも存じまするけれども、併しこの主要食糧増配問題は、やはり全国一律にやりませんければ、非常な不均衡不公平が起きると存ずるのでありまして、或いは教府縣だけと限りますれば、或る程度は可能なところもあるかも知れませんが、併しそれはやはり全國的に歩調を合せてしなければならん振合いと存じまするので、地方的に可能と数字が出て参りましても、これをやることは適当でないと考えております。
  7. 西山龜七

    西山龜七君 長官の御説明は諒といたしますが、私の伺う八月以降、これを是非とも増配をして貰いたいという理由は、砂糖配給が五日間ありますことと、米が非常に少くなつておる、この二点のために、御承知のように我が國民の長い慣習によりまして、砂糖ではどうして食糧を充たすことはできないのであります。それがために、少くとも七月は少々米がありますが、八月から米が特に少うなりますので、これを申上げたのであります。戰時中にも不可能を可能にするということをよく言われておりましたが、これは今長官の申されまするように、中央ではそれは困難ということを認めます。併し各府縣にこれを実施してもよろしい、こういうふうに政府の腹を決めて頂きましたならば、必ず夜に日を継いで第一番に消費者が味方になりましてこれを実行さすのであります。からして私は少くともこの案を特例として頂きまして、実行して頂きたい。新年度からはずいれにいたしましても砂糖配給は五日間というようなことはないと思いますので、やはり同じ二合五勺でも食生活に、やや安定を及ぼしますけれども、過去に実例のないような実情でありますので、八月以降は特例を設けて頂きたいというのが、私の本提案の理由でありまして、決して政府需給計画を壞さずして、これが実際において実行できる案でありましたなら、関係方面の了解も得まして、これをただ発表と実施してもよろしいということで、私は実行ができると思いますので、もう一度長官のお考えをお聞きしたいと思います。
  8. 片柳眞吉

    政府委員片柳眞吉君) 先程お答えを落しましたが、砂糖配給につきましては、五月、六月が五日というような、実は非常な日数を配給しておりますが、八月以後は或程度一日乃至二日程度は減じ得る見込みでありまして、尚今後の輸入食糧については、現在の状況で参りますると、主として小麦粉が一番多く入つて來るというような状況でありまして、砂糖が或る程度減りまして、小麦粉配給が多くなる、大体かような見通しになると思います。現状よりも多少質的には改善をされるのではないかと思つております。  更に各縣でやつても國の需給影響がないという御意見でありまするが、実は八月から二合五勺を増配しますれば、それだけやはり食込み量が多くなるのでありまして、結局來年度需給にはそれだけやはり食込んだだけがマイナスに響くという、やはり全体には國の需給計画影響があると思うのであります。  殊に早場米地帶だけが、例えば八月から増配をするということになりますと、消費地輸送予定しておりますところの、先程も申上げました百三十万石の消費地向け輸送という問題にも、当然これが影響があると思います。翌年度需給にも影響がありまする以外に、端境期の米の消費地の廻米にも相当影響があると思うのであります。勿論できればさようなことを全國的にいたしたいと考えておりますが、先程申上げましたような理由で、現在の状況では困難だと私は考えるのであります。
  9. 板野勝次

    板野勝次君 砂糖の問題について農林大臣に伺いたいのですが、昨年は主食配給が二十何日か棚上げされて、今年は又砂糖主食代表配給になつておる、我々は國民として率直に考えて見て、この何日間かの砂糖主食代替配給は、或る意味においての欠配のような感じがするのです。それから又最近では地方砂糖休暇というふうな言葉が使われております。砂糖配給されると、それを持つて農村に出掛けて行つて、色んな物と換えて來なければならん。こういう状態では事実困るのであります。併し現在入つて來ておるものを、そうして食糧需給状態からして、どうすることもできないという言沢をいつも聞くのですが、我々考えて見て、どう考えて見ても、キユーバ島のあの糖業政策を保護し、援助するために、他に入つて來食糧はあつたけれども、あの救済策として政府は無條件にそれを受入れたというふうにしか思えないのですが、事実そういう点であつたか、どうであつたか、調味料として砂糖を輸入して來るということができなかつたのかどうか、この点を伺いたいと思います。
  10. 永江一夫

    國務大臣永江一夫君) 砂糖主食代替につきましては私からお答え申上げて置きます。これは主食として配給をせられましたのは、日本食生活に非常な重荷になることはお説の通りであります。私は就任以來できるだけ砂糖主食代替としないようにということで、関係方面にもお願いをしたのでありますが、その後いろいろ輸入食糧操作関係によりまして、予定数量に大きな変動がありまして、遂に砂糖を以て主食代替ということを、本米穀年度中行うということになつたのであります。その場合には、お尋ねのように、アメリカ國内におきまするいろいろな政策上、他に食糧があつたに拘わらず砂糖を以て代えたのではないか、こういうお尋ねのようでありますが、そういう点は私はないと考えております。いろいろ輸入いたしまする食糧の船腹の関係ポンド地域との関係によりまして、日本に放出されておりまするこれらの物が、アメリカの國内におきまする、いろいろの政策的の意味を加味したものが含まれておるとは私は考えておりません。
  11. 池田恒雄

    池田恒雄君 農林大臣に一言お伺しておきたいのでございますが、この法案の第二條で見ますと、主食という規定では表類と「甘しよ」「甘鈴しよ、」こういうことが規定されて、その麦類の中にはライ麦とか燕麦とか、こういうものは含まれておらないように見えるのでございますが、適地適作ということは、前の國会から岡村さんなんかが非常に強く御主張のようでございますが、適地適作という点から言いますと、ライ麦とか燕麦のようなものも、当然法律の中に含まれておるというのであらねばならないのではないかと私は思うのであります。これはライ麦とか燕麦ばかりでなく、主食というものを狭く限定しますと、これでは極めて狭い作物を、極めて廣い國土、廣いと申しましても、日本の國というのは、御承知通り、北海道から今の九州の南端まで行くのでありますが、これは寒帶から熱帶に亘るというので、今世界の國々を見て、こういう廣い國はないのでありまして、恐らく外國作物を見まするならば、このくらい廣い國には、もつと種々雜多の作物があると思うのであります。ところが僅かに麦の場合は、大麦、小麦、はだか麦と、この三つの種類だけをこの非常に廣い多種多様な自然條件を持つておる國土に、法律で以て押付ける形になつておるのであります。この点は、私はどういうものかと思うのであります。この点を極く明瞭に聞かして頂きたいと思うのであります。  もう一つの問題は、第五條農業計画の問題でありますが、この中を見ますと、一應全般に触れておるように見えるのでありますが、併し農業生産に要する資金とか、労働力とか、販賣に関する計画が欠けておるように見えるのであります。それからこの農業計画につきましては、戰爭中我々は一つ経驗をして來ておるのであります。この時代におけるところの農業計画というものは、労働力が減つて行くという情勢の下に、いろいろ建てられて行つたのであります。從つてその技術及び作物というものの動き方というものも、そういう方向に從つて立てられて行つた筈なのであります。ところが終戰後におきましては、逆の傾向をとつて來ておるわけであります。つまり農村労働力というものは、日に日に増加しておる、これは労働力が増加するという言い方をするというと非常に平凡なんでありますが、逆に農村失業者が非常に増加しておるという形になつておるのであります。そうなつて参りますというと、この場合は日本農業経営というもの、その農業生産の諸様式労働の諸様式は、如何にして失業者を消化して行くかということが問題になつて來るのであります。ここで戰時中戰後とは、農業計画性格相当違つて來ておると思うのであります。このことは前に申しましたように、今後の作物動き方とか、或いは農業のいろいろな技術動き方、つまり農業計画の内容に大きい変更が來ると思うのであります。ところが、この法律上における農業計画を見ますと、戰爭中における農業計画と殆んで変つていないように、私は思うのでありますが、この点農林大臣の方から御方針を承わつて見たいと、こう思うのであります。
  12. 永江一夫

    國務大臣永江一夫君) 第一の点は、御承知のように、ここに書いてあります雜穀の中には、十数種類のものが食糧管理法関係法規におきましてこれを指定してありますから、今お話のようなものは、皆雜穀として指定されてその中に含まれておる、こう御了承願いたいのであります。  それから第二の点については、しばしば御議承のあるところでありまして、農業計画に、今お話のように、すべてを含めるということになりますと、非常に農業計画を立てますることが、悪く申しますれば、官僚統制的になる弊害があるのではないか、私共はやはり農業計画というのは、相当生産者自身自主性のあるものという考え方の範疇の中でこの規定をいたしております。これは一つ生産計画でありまして、主要食糧農産物生産数供出数量、肥料、農機具、農藥配給数量等の極く限られた主を指しておる、こういうふうに御了承願いたいのであります。それのすべての基盤になります金融でありますとか、或いは労働力でありますとか、その他の農村におきまする諸種のその生産におきまする一切の社会的條件すべてを、一つ計画の中に入れるというようなことを、規定いたさなくとも、勿論そういう基盤の上にこれらの農業計画という一つの狭い意味における計画を立てて行く、こういうことで法の目的は達せられる、こう考えております。
  13. 池田恒雄

    池田恒雄君 一應尤ものようにも聞えるのでありますが、併し資金計画とか販賣とか労働力という問題は、農業経営に直接に入つておるものであつて、この経営相当影響を與える性格のものであります。從つて農業計画或いは農業経営計画の加に、これらの問題は直接織込まれるものであつて簡單にそういうものを無視して、或いは無視しないにしましても、そういうものと直接結び附かずして農業計画を立てるということは、これは困難だと思うのです。  それから販賣の中には米價という問題もあるのでありますが、つまり米なら米を生産する場合、生産した秋において何ぼで賣れるかという想定がなくて、私は商賣というものは成立たないと思うのであります。ところがこの農業計画の上におきましては、あらゆる生産物については、收穫の際に幾らに賣れるかというようなことは、全然想定されておらないのであります。併しそういうことを想定しない商賣というものはないのでありまして、この点はやはり農業計画の中に明確になすべきものだと思うのであります。  それから先程私のお伺いした点で、労働力の問題について、詳しい大臣答弁がないのでありますが、これは労働力というよりも農村失業者というものを、どういうふうに農林省当局が見、且つこの農村失業労働力というものがどうあう工合に今日の農業生産や或いは農民の経済に影響を與えておるか。このことは私は十分檢討する必要のあることだと思うのであります。極めて單純な例を申しますならば、今農村から闇米が流れるとか、何とかいうようなことがしばしば新聞に出されるのでありますが、若し農村の内部に過剰労働力というか、失業者がなかつたならば、闇の米を都会に運ぶ人間はなくなる筈であります。ところが農村農業労働の中にそういう労力を全部吸收することができないから、そういう不健全なる流通面に方に、そういう労働力が流れて來るというようにも見られるのであります。これは一つの例でありますが、供出に関するいろいろな問題があつて、それが法律上の問題や何かになつておるのでありますが、併しそれを法律上の問題としてとやかくいつても、その失業者という問題をはつきり把握して、これに対する対策がなければ供出の問題でも、或いはいろいろな問題でもこれは解決できないことではないかと思うし、且つ農村労働力がこう余つておる、或いは失業者が沢山おるということになつて來ますというと、これは簡單にいうと、農業経営規模影響して來るとか、或いは農業作物の選択の仕方に影響して來る。つまり労働力が多くなつて参りますと、より多く農業経営の仕方が集約的になつて來るわけであります。從つて作物の穫り入れ方が、單純な穫り入れ方でなく、もつと複雜になつて來る、そうなりますと、第二條主食というものの規定の仕方、而もこの主食というものが非常に大幅に耕地を食つておるというやり方というものと関連して、相当これは大きい問題であると、こう思うのであります。それで農村の失業問題の解決についての大臣の御方針を承つて見たいと、こう思うのであります。
  14. 永江一夫

    國務大臣永江一夫君) 一つの点は、今お話農業計当にそれらの農村労働力というものを無視して計画できないじやないかという御議論でいろいろお話がございましたが、この農村過剰人口というような問題をも含めて、今後できますところの調整委員会でいろいろ議論が出て來ると私は思つております。そういうことのすべてをここで規定するということは困難だろうと思います。  もともとこれは自由に生産者が選択いたしまするものを自由に生産し、而もその國において供出制度というようなものの必要のない場合におきまする議論と、今日のごとく如何に生産者意思を尊ぶと思しましても、やはり國全体の消費面から見まして、その生産者意思を或る程度コントロールして行かなければ國の食糧需要供給関係のバランスがとれないという特殊事情におきましては、何としても或る種の法規によりまして、個々生産者生産計画というものに抑制を加えなければならない、ということが必要的に生れて來ると思うのであります。我が國が自由奔放に諸外國と貿易によつて必要なる食糧を手に入れるという、絶対的な自由を今日持ち得ない現状におきましても、やはりこの問題は附随して出て來ておるのでありますが、そういう客観的情勢から、政府におきましては、勿論生産農民諸君の自由奔放なる生産意欲によつて生産計画を立てられて、最も効果的に生産を挙げて頂くということも望ましいことでありますけれども、総合的に見まして、個々生産者生産計画が、全体の面から抑制を受けておるということの一つ考え方の上に、この法律案があるということを御了承を願いますならば、今御議論のありましたような点につきましては、私はおのずからこの委員会運営と、それから第五條の第二項に掲げてありますような「生産者意見を徴し、」ということにその間の事情が盛られておると思つております。第六條でもこの農業計画に係わります生産者が、当該農業計画について異議のありますときは、相当異議を唱える立場を認めておるわけでありまして、この委員会運営によりまして、これら個々生産者生産計画というものが、或る程度不満足でありましても、調和点を見出して行くということができる、こう思うのであります。
  15. 池田恒雄

    池田恒雄君 私は、自由奔放な農業生産をやらせなければならないという考え方はありませんし、且つそういう意味お尋ねはいたしておらないのであります。  それから抑制をしなければならないということは、これ亦尤もな話でありまして、その抑制という抽象的な言葉に対して何ら私は疑問は持つておらないのであります。その抑制の仕方、統制の仕方が戰爭中と今日では違う筈であり、違う條件が明瞭に現われれておる、これに対してどういう方針を農林当局が持つか、こういうことを私は伺つておるのであります。そのことがつまり戰爭中のように統制のとれておつた時代は、ああいう統制も結構であつたでありましようが、今日においてはやはり労働力とか販賣とか資金に関する問題というようなものが、計画の中に入らなければならないという状態が発生しておるわけであります。それを私は自由奔放にやらせろというのではなく、どのように統制し、どのように計画するかという内容の問題を私はお伺いするわけなんであります。併しこの問題はもう一度機会がありましたならば、私は事務当局の專門家の方からでも伺う機会を與えて頂きたい、こう思います。  本日大臣一つお伺いして置きたいのは、この法律の事前運用の問題でありますが、これは先日農政局長から私一通りのお伺いをしたのであります。それは麦類の事前割当につきまして各縣を私調査して参りましたところが、いわゆる空反別というものがあるのであります。この究反別があるかないかということにつきましては、先日私農政局長との質問及び答弁によりまして、空反別があるということについて、農政局長と私共の間の見解は一致しておるのであります。  さてこの空反別の問題でありますが、これはこの法律に基ずかずして、農林当局が一應地方に対して割当てたのであります。その割当は、農林当局の面積と、実際に割当てられる以前において、各町村において作付された自治作付反別との間に開きが出ておるわけであります。これを今後の供出や何かの場合、どういうふうに処理するか、こういうことを一應大臣の方から明瞭に御答弁をして置いて頂きたい、こういうふうに考えておるのであります。
  16. 永江一夫

    國務大臣永江一夫君) 麦の事前割当につきましては、御承知のように割当をいたしまする際の時間的な問題がありまして、本年においては十分末端にまで事前割当が参らない先に、植付が行われておるという状態が起きておるのであります。いろいろその間に数字的には補正すべきものがあろうと思いますが、これは先般も全國の知事会議を招集いたしまして、適正に補正をいたすのでありますが、尚実際供出に当つて不都合のできました点は補正をするつもりであります。
  17. 楠見義男

    ○委員長(楠見義男君) 池田さんの先程のお話の事務当局に更に質問の機会を残したいということでありますが、この点はこういうことはおかしいんですが、原案に、昨年の生産調整法においては、今農業計画の中に入る事項に、農業労働力に関する事項というのがあつたんです。それが今度「当該生産者と同一世帶に属する者の状況」と、こう変つております。從つてこういうものも中心に事務当局にお聽きすると同時に、事務当局の方にもそれらの間の相違、又経緯等をよく準備をして説明をするように委員長からも申上げます。
  18. 池田恒雄

    池田恒雄君 それからやはり事前運用の問題でありますが、一つ地方調査をやつて稻の割当をやる、或いは麦の割当をやるということになりまして、地方調査が今年の春行われておるのでありますが、ところが地方調査が完了しない中に事前割当をやつた村もあるのであります。そうするとこれは地方調査が完成した上において割当をやり直さなければならない、法律上の理屈はそういうことになると思うのでありますが、そうやらねばならないのかどうか。  それからもう一つは、地方調査というものは飽くまでも地方を調査するものだと私は考えたのでありますが、ところが地租を賦課する折、使うところの、あのいわゆる賃貸價格によつて地方の等級を決めておる村が非常に多いのであります。これは明らかに地方調査としては間違いだと思うのでありますが、こういつた類の間違つた地方調査をやつておる村々も相当あるのであります。こういうふうに間違つた地方調査をやつて、その上で割当てたという場合、つまり間違いが発見された場合、割当は遣り直しになるかどうか、こういうことをお伺いしたいのであります。  もう一つは、今年度の肥料の割当、その他の政府農村に対するいろいろな施策は、この法律に基かずして行われておるわけであります。でありますから、今年この法律がいつ頃から実施になるか、或いは又どういう作物の時期から実施になるか分りませんが、この法律の効力がどういうふうに作用して行くのか、つまり法律に基かずして作物の割当をやり、或いは資材の割当をやつておるわけであります。ところがその作物は途中でこの法律に引つ掛かつて來るということになるわけでありますが、果して途中で引つ掛かるものか、或いは今度の中間になるところの作物は延ばして、全く新らしく作付するとき、この法律に基いて初めていろいろな計画をやるものか、その点お伺いしておきたいと思うのであります。
  19. 永江一夫

    國務大臣永江一夫君) 事前割当につきましては、間違つた点がありますれば、いつでも補正をするつもりであります、この点は一方的な独断でやるつもりではありませんから、十分調査した上において、政府におきましては、間違つたということが関係当局において、明白になりました際には、いつでも補正いたします。  第二の点につきましては、本年度の事前割当はやはり今まで割当てました数量によつてこれを本年は実施いたしまして、この法が両院を通過いたしまして効力が出ましても、事前割当については翌年度分からする、こういうつもりでおります。
  20. 岡村文四郎

    ○岡村文四郎君 食糧確保の案がしばしばいろいろなふうに議論されておりますが、農業計画を立てますときに、一番肝腎なものが考えられておらんと思います。何となれば、政府裏付として農機具、肥料、農藥配給することになつておりますが、農家の方でいつでも品物を買い得るような資金の準備ができておりますれば、それはそれでもいいと思いますが、現在及び今後の状態を考えてみますると、全國一律ではありませんが、單作地帶は殊の外……、経済の一番根幹をなします資金の問題、人間が生活をいたして行きます上に一番大事なもの、業を営むのに一番大切な資金の目安が附かなくては、計画は相立たんのであります。そこで農林大臣はいろいろ御心配になりまして、金庫もお作りになるという案をお示しになりましたが、これもいろいろな御事情がありましてお取止めなつて、特別会計によつて資金の融通をしたいというので、お骨折りになつておりました。これは多分実現するとは考えておりますが、こういうふうに資金面が窮屈になつて参りますと、本年非常な苦労をし、御迷惑を掛けて、單作地帶の急場を凌ぐ資金状態を決めては貰いましたが、なかなか動かんのであります。何と申しましても農業の実態を少しも御認識にならない、尤も知ろう筈はないので、これを責めてもしようがないのであります。ところが、その方面に確保しておる金は、文句なしに必ずその方面に行くという制度がない以上は、私は今後は絶対駄目だと考えております。それは役所にもそういうことがありますが、日銀の総裁や副総裁、理事の方は、かように考えてはおりませんが、本当に仕事をする人は誠に方法が附かん。百姓なんというものを、てんで頭の中に考えておらん人がやつておるので、頑迷固陋で抜き差しできない状態なんであります。これでは方法が附かんので、実は我々の責任で、今度の二十三年度の作付によります計画は、達成することは非常に不可能だろうと、こういうことを考えておりますが、それは大事な営農資金がいかんのであります。今丁度営農資金の点で眞つ最中でありまして、若しこれが行きませんと、收穫に影響するのでありますが、その責任中央で持つて呉れるのでなくて、我我が地方々々で責任を負わなければならんことに相成るのでありますが、これはどうしてもこの生産確保の法の中で一番肝腎な百姓が、いつでも金を持つてつて、品物さへ配給すれば買えるというわけでなく、金もないし、物もないのですから、それを業となし得るようにする國の責任がある。大体百姓は委託事業をやつておると同じでありまして、自分が作つたものを賣るわけにも行きません。價格も自分で附けるわけにも行きません。作るだけを委託されておるのでありまして、場合によりますと、自家保有の食糧までも出さなければならん実情にありますために、どうしても安心して仕事のできるようにして貰わなければ、今後の單作地帶の営農は、絶対組立たんと考えておりますので、今申上げて置きますが、若しこれがこの案に挿入されないと、私はどんなことがあつても、これに賛成できないのであります。若し同僚各位の中に、あいつの言うことは駄目だ、これで通すというなら私は絶対賛成できません。はつきり申上げて置きますから、そのつもりで政府はどう考えておるか、御答弁願いたいと思います。
  21. 永江一夫

    國務大臣永江一夫君) 農村の金融が、極めて生産に不可欠な重要なものであるということは、私共十分認めております。先般もこの席上で一應農村金融の現在やつておりますことについて、政府関係方面を折衝しておることは御報告申上げて、今御議論のありましたように、この法の中にすべてそういうことの全部を、規定することが妥当であるかどうかということについては、私は俄かに今の御意見には賛成をしかねるのであります。併し他の方法によりまして金融措置をするということにおいては、私共は全面的に鋭意これに向つて努力するつもりであります。
  22. 楠見義男

    ○委員長(楠見義男君) ちよつと農林大臣にその問題に関連して、私も議事の進め方についてお尋ねするのですが、この法案と、それから農村金融、特に生産資金の融通確保の問題とは、極めて密接な関係があることを承知しておるのであります。從つていろいろ現在お考えになつておる。農村金融についての法的措置等もお考えになつておるようですが、それはこの法案を審議する最後までに間に合うかどうか、その辺のお見通しをお伺いしたいと思います。速記を止めて。    〔速記中止〕
  23. 楠見義男

    ○委員長(楠見義男君) それでは速記を始めて下さい。
  24. 羽生三七

    ○羽生三七君 私のは極く簡單な問題でありますが、どなたからでもお答え願えれば結構であります。それはこの作付計画を定めるときに、農地面積、地方その他の状況並びに作物の組合せ等を勘案してやるようになつておりますが、これは事前割当を受けた作物は、自己所有の耕作地の中で穫れた收穫物で完納した場合は、どの耕地にどういう作付をやつても、一向牴触しないのか、つまり割当てられた食糧を完遂さえすれば、その組合せに何ら掣肘を受けないものであるか、この点ちよつと技術的な問題ですがお尋ねしたいと思います。
  25. 永江一夫

    國務大臣永江一夫君) この作付の決定は、事前に個々生産者委員会で相談をして決めることでありますから、それで生産が行われると、こういう解釈であります。その生産物がどの田どの畠から出たということは、一々調査をしないのであります。それは今お話のような点は差支ないと、法律的には解釈できますが、手続は事前に、作付面積は決定することになつております。
  26. 松村眞一郎

    ○松村眞一君 私は昨日速記のないときに、政務次官にお伺いしたのでありますが、その際に政務次官は明瞭に御答弁になりましたけれども、非常に重大なることでありますから、大臣の御答弁を求めるわけであります。  それはこの法律農民に義務だけを背負わせる規定であるのか、これに対立して政府も亦どういう義務を負うのであるか、その点をお尋ねしたいのであります。それでできました米を政府に提供しました場合には、それに対して代金を支拂うということは当然のことでありまして、それは賣買であります。ところがこの法律によりまして、この生産の義務と、供出の義務という方を努力するように法律が命じておるのであります。  その努力、義務に対立しまして、政府はどんな義務を負われるのでありますか。一番の明瞭なことは、生産に必要な肥料、農藥又は農機具の供給を確実にすることであります。それは第三條の第三項に「主務大臣は、農業計画に定められた肥料、農藥及び農機具その他主要食糧農産物生産に必要な物の生産配給又は輸送の業務を営む者に対し、これらの物の供給を確保するため必要な事項を指示することができる。」とあります。この指示に反した場合はどういう罰則を受けるのでありますか。又この指示通りにこういう業者が生産したものを、政府は確実に配給するということはどこに書いてあるのでありますか。その点が非常に私は不明確であると思います。少くとも第三條第三項に対しまして、指示に從わなかつた場合の罰則の規定がないのであります。  然るに農業者は第七條第二項の規定によつて、「生産数量の確保に努めなければならない。」ということがあります。この努めなければならんということに應じて、第十條に、「その生産の確保に支障を及ぼす虞」があるような農産物の作付をしてはいけないということが書いてあります。それに違反した場合には、第二十九條に罰則が書いてあります。それから第三十條には、第十一條の第四項の規定に反した場合は、やはり罰則の規定がある。それは第十一條に、生産者その他に対して、「必要な事項を指示することができる。」と書いてあります、その指示に從うべきことを第四項には命じておる。それに違反すれば三十條で、罰金になる。  こういうような工合に農業者に対しては罰金を以て臨んでおりながら、農業生産に非常に必要なる肥料であるとか、農藥や農機具を作るところの指示をした場合に、それに從わなくても一向に罰則の規定がない。そうであるならば、肥料なり農藥なり農機具というものの生産は確実にできなくてもよいということを保障しているということになるのであります。しかのみならず生産に必要なるそういう必需物資を政府の方で農民に対して供給するということの責任をどこにも明示していない。ただそういつた業者に対して政府が「指示することができる。」指示するというだけである。それを履行しなかつた場合の何らの罰則もない、履行しない結果肥料なり農藥なり農機具ができなかつた、そうして政府が供給することができなかつた場合に、政府責任関係規定がどこにもない。こうした規禎で農民のみにこういう脅迫をするような、私は脅迫と言つてよいと思う、このような脅迫を與えるような感じを示すような法案ばかり羅列されることは、眞に生産意欲を心持よく発揮するゆえんではないと私は思うのであります。  そこで第八條の一項には「前條第一項の規定による指示を受けた者は、災害その他眞にやむを得ない事由に因つてその指示に係る農業計画によつて定せられた供出数量主要食糧農産物供出することができなくなつたときは、市町村長に対して、当該供出数量の変更を請求することができる。」ということが書いてあります、それで農藥なり肥料なり農機具なりの供給ができなかつたために、生産ができなかつた場合はどうなるかということを申しましたら、政務次官はこの第八條の規定によつてやはり変更ができるのであるということを答弁されたのでありますが、私はそういう解釈はむつかしいと思います。「災害その他眞にやむを得ない事由」というように、農藥なり農機具なり肥料なりの配給が、計画通りに行われなかつたということがここにあるものとするならば、私は明文を置かなければいけないと思います。そういう解釈が直ぐ出て來ない。なぜかというと、この肥料、農藥或いは農機具というようなことは、明らかに第三條に例示しているのでありますから、そういう例示を受けて親切にやはり第八條の中に書かなければならんと思いますが、大臣農藥等の配給ができなかつたときには、その供出数量の変更を請求してよいということに御解釈になりますか。それでなければ、明文を置く必要があるわけであります。それをただそういうことができるというだけで第八條の規定を見過ぎ去るわけにはいかないと思います。今申しましたことについて、大臣のお考えをお聞きしたい。
  27. 永江一夫

    國務大臣永江一夫君) その点につきましては、本年平野政務次官からお答えした通りでありまして、大体御趣旨のありました主たる点は二つあつたと思います。一つはこの法点の施行によつて、一方的にのみその責任を負荷して罰則を設けておる、こういうことでありますが、やはりこの点は私が先程お答えいたしました一つのアイデアの中に盛られておる考え方でありまして、当然主務大臣といたしましては、これの反射的なあれとして、やはり必要な生産資材等を生産者であります農民諸君に供給するところの責任を負うておるわけであります。これにつきましては、飽くまでその責任上、それらの資材を生産すべき者、輸送すべき者が相反した場合の罰則がないじやないかということは御尤もでありますが、併しこれらのことは、今日のような物資の非常に少い場合におきまして、やはりこれらの生産の指示に相反した行動をするものに対しては、私共は十分この第三條第三項の條文に行政的に活かすことによつて処置ができると、こう信じておる次第であります。  それから今の然らば生産資材というものが実際生産農家に渡らなかつた場合には、供出数量の変更をすることができるかどうかという解釈でありますが、これは平野次官からお答えいたしましたように、私はその場合には、供出数量の変更をいたす、こういう考え方であります。
  28. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 私はこの行政上必要な措置をとるというようなことで済ませる問題であるならば、食糧確保臨時措置法それ自身も行政上の措置でよろしいと思う。こういう法律を出すということは、義務を義務付けておるのであります。行政上の処置というようなそういう緩慢なことでいけないからこういう法律を出す。何が故に農民はこういう法律によつて強制せられ、農民生産に必要なところの肥料や農機具や農藥生産するのは行政上の措置で、何ら命令を受けない、処罰もされないということでよろしいのか。私は大臣の御意見とは全然反対でありまして、そういうことでは片手落であるということを申上げます。それのみならず、今の大臣の仰せで明瞭であるがごとく、当業者だけに指示をして、政府は供給するということを書いてない。政府が供給するということを、私は書く必要があると思う。それでありますから、これは第一條を修正しなければいかん。「確保するため、生産に必要なる肥料、農藥、農機具の配給を確実にし」ということが要ります。むしろ政府は「供給し」といういうことまで書いた方がいいと思います。供給を確実にして、政府がそういうことをやつて、初めて生産なり供出ができる。生産供出のできる原因は、何にあるかというと、肥料、農機具、農藥にある。それを與えずして生産を強要し、供出を強要するということは、これは片手落であるのみならず、前提条件を欠いておる、それが第一なんだ。そういうことさえ整えば、農家は非常に樂々と生産供出もできるわけであります。その源の方を努めずして、末を責めるというような法律に私は賛成できないということを明言いたしておきます。こういうようなやり方では、本当に眞劍に農業者をして蹶起して増産に進んで行くことができないと思います。  それのみならず、雜穀というような物について漠然として規定が置いていることは、私は賛成できません。元來供出数量の全部を、この法律裏付けるという必要はこれはないと思います。主要食糧に実際二合五勺とか三合とかいうものの配給をする、そのすべてのものをこの法律裏付けなければならんというような貧弱な行政では、これはいけないと思います。非常に必要な大きなところだけは強制して、その外少しのところは政府の行政の努力で、例えば三合が全部この法律で確実に取得ができなくても、二合五勺であるとか八勺であるとかというのはこの法律裏付けする。あとの残りの二勺とか三勺というものは、政政の努力で、やるということぐらいのことをやらないで、三合なら三合すべてがこの法律で強制するというような思想の下に雜穀という物を入れておるということが、甚だよろしくない。米麦、甘藷、馬鈴薯だけでよろしい、それだけに重点を置いてそれだけの供出の割当をし、それだけの生産を確森すれば、その外の雜穀は、大豆くらいの大きなものを入れることはよろしいが、ただ煩瑣なものをすつかり、何が入るか分らないようなものをして、いよいよ三合に少し切れるときには、その方の法律を強行して農民の方に責任を轉嫁するというようなやり方の、生温い行政には私は賛成できません。それ故に雜穀という字のそのままにあることは私は賛成できませんから修正意見を出します。明瞭にお断りして置きます。  それから今の農藥なり肥料なりの供給を確実にするという文字を入れなければ私は賛成しません。それだけ申上げて置きます。
  29. 永江一夫

    國務大臣永江一夫君) 私は先般お答えいたしましたことに補足をして申上げて置きたいのですが、政府は、勿論日本の肥料生産の実態から申しまして、今御承知のごとき数量が出るのでありますが、当然こういうところのその数量等についても或る程度の明示をする方法を取り得るのであります。皆樣十分御承知のように本年の春肥につきましても、硫安反当五貫五百というのが今日の日本生産能力としては可なり重い負担を負うておる。今これをただ理論の上から申しまするならば、反当八貫ならば八貫要るということが一應成立つのであります。今その八貫のものを政府生産農民の諸君に配給ができないのに、それを八貫要るからということの約束はできないのであります。そういう点についての数的な量を決定いたしますることは、この法の運営によりまして実際的な数量が出た以上は、それについては政府責任を負うて配給をいたしますけれども、当然これは所要の反当八貫といたしましても、それが八貫まで政府責任配給することは実際問題として可能性がないのであります。そういうすべての面におきまして不足勝でありまする今日でありますから、私共はこういう法規によつて、その間の適切な調整を図りたい、こういう考えでありまして、この法律によつて生産農民諸君にのみ強いるという意図は毛頭ないのでありまするから、この点は御了承願つて置きたいと思うのであります。
  30. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 私は昨日も申したのであります。元來農民に対して或ることを要求されるならば、それに対してこれだけの物は政府は提供するという義務を私は伴うべきものであると思います。單純にでき上つた物を買うという点だけならば、私はそういうことを申しません。自分のできた物を何石持つて行く。それを政府が買うというだけのただ賣買の強制という点であるならば、私は敢て申しません、それでないのであります。生産努力をせよというところの勤勉ということを強制しておる法律なんだ。そういうことを強制するならば、やはりそれに対立した或るものだけは政府は確定的にその義務を負われて私はよかろうと思います。政府は今計画の全体の数量責任は負えないと申しますけれども、或る程度数量は負えると思います。必ず負えるだけのことをお書きになつたらよかろう。例えば追肥とか元肥であるとかいうことがあるでしよう。元肥ならば元肥、私は專門のことは詳しく存じません。その程度のものだけは必ず政府責任を以て供給するが、供給ができないときは、生産数量なり供出数量影響してもよろしいという態度を示さなければ、どうして農民が強い信念を持つてやりますか。計画はするが、それが一つも行かないが努力する、併しそれが一つ配給がなくとも責任がないというようなことで、農民生産意欲を強制することは私はできないと思います。大臣がいろいろのことをおつしやいましたが、それは全体のことをおつしやつて、それを私が申しました雜穀まで入れなくてもいいという思想と同じように、これだけの肥料については責任を以て配給するということは、私は農林省として言い得なければならんと思う。それだけのものは生産者に対してもできるだけ努力をさせる、これだけの物は政府として配給するというというように、私はかねてから申しておる。この米麦の供出というものと肥料の供給というものは一緒にやらなければいかん、私は前から申しておる、何年か前から申しておる。だから今の食糧管理局は食糧と肥料との監理局にならなければならない。自分が片方において取るならば、一方で肥料を供給するということをしなければならん。
  31. 楠見義男

    ○委員長(楠見義男君) 農林大臣が、行かれますが、よろしいですか。
  32. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 よろしうございます。お聞き願えればよいのです。そういうことを考えますから、大臣の今の答弁には満足しないということを申上げます。
  33. 楠見義男

    ○委員長(楠見義男君) それでは食糧確保臨時措置法に問題については一應この程度で中止をして、それでいずれ又別の機会にやることにしまして、指定農林物資檢査法案を議題に供することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 楠見義男

    ○委員長(楠見義男君) それでは議題に供しますが、その前に委員長から一言申上げて置きますが、皆さんのお手許に配られておりまする指定農林物資檢査法案の第五條にミスプリントがございますのでそれを申上げます。第五條の中で「その檢査を受けて合格したものでなければ」という個所でありまするが、これは「その檢査を受けたものでなければ」というのが正しいので、そういうふうに御訂正を願います。尚、発言の残つておられます方は御発言願います。
  35. 板野勝次

    板野勝次君 第十四條に、「各規格審議会の委員は、五人から十人までとし、学識経験のある者であつて指定農林物資の生産業又は販賣業に利害関係のないもののうちから、農林大臣がこれを委属する。」ということになつておりますが、併し指定農林物資の生産又は販賣等に関係を持つている者の側からも、規格審議会の委員という者が出て行つて、そういう実情が規格審議会に反映する。こういうことにならないと、規格の決定が一方的になつてしまうという虞れがあるのですが、何故そういうものを委員に加えるということをしなかつたのでしようか。
  36. 平野善治郎

    政府委員(平野善治郎君) 只今板野委員のお尋ねの第十四條の二項の審議会の委員の選定に当りまして、生産業又は販賣業に利害関係のない者の中から委属するということが、却つていけないのではないかというお尋ねのようでございまするが、私共といたしましては、この審議会が規格を定めることによつて、非常に生産者或いは又需要家に対しまして重大な関係があることは十分承知をしておりますが、利害関係がある者の中から選びますというと、その規格の決定に当りましていろいろ弊害が起るというような懸念がございますので、そのものにつきましては非常に堪能な、よく知つている方で、利害関係のない方を選んだ方が最もよろしい。こう思いまして、このような條項にしたわけであります。
  37. 岡村文四郎

    ○岡村文四郎君 私は質問でありませんので、お聞き取りを願つて、十分善処をして貰えればいいのでありますが、檢査方法が二種類ありますが、食糧事務所が直接行うのと、都道府縣に委讓してやつて貰うのとあります。まだ、その上に委託檢査を行うものがあるようでありますが、現在やつておりますものでも、委託檢査のような形式のものは、非常に檢査をするというだけはいいのでありますが、やつた結果を見ますと誠に権威のないものが多いのであります。現に北海道の木炭の檢査をやつておりまして、その規定はあるのでありますが、やつた結果は誠に緩慢であり、消費者に対して少からん迷惑を掛けているのであります。これは今後と雖も同じ方法で行きますと、かような問題が起ると思いますが、今度は國が行う形式によつてやるのでありまするから、十分の注意をして、今後の檢査に当りましては、苛酷な檢査をする必要は決してありませんが、正当な檢査をし、生産者は製品の品質を向上して價値を高める、消費者は安心をして檢査によつて買い得るという建前から、絶対不都合のない、間違いのない檢査をして貰うような、十分な御手配を願わなければならんと思います。それには相当多額の経費を要しますが、どうもそれは甚だ私が申上げたような檢査をするつもりの経費ではないと思いますので、当局では十分善処に善処を重ねて万遺憾なのな國の檢査を行う、その趣意を生産者にも消費者にも十分に生かすようにお考えになつて頂きますことをお願い申上げます。
  38. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 私は先程委員長から正誤としてお述べになりました文字がこれは極めて重要なことになると思いますから、かくのごとき、重大な関係を持つような正誤をしなければならんような、杜撰なと申してこれはよろしいと思いますが、こういう法案の提出は將來十分警戒して頂きたいと思います。それは憲法論が何故行われたかと申しますと、檢査を受けて合格したものでなければ賣ることができない、不合格のものは賣れないということがあるから、憲法論が起つたり何かしたのであります。檢査け受けたものは合格でも不合格でもみんな賣れるというならば、そういう憲法論をする必要がなかつたのでありますから、そういう意味におきまして、これは余程よくお考え願わないと、こういう重要な法案については、原案をお出しになるときに、一番大切なことでありますから、粗漏にならんように、將來のために注意をして頂きたいということを強く申上げます。  それから、この法律の趣旨は、できるだけ檢査をして、規格を統一するという助長行政と私は考えている。それ故に不合格であろうが、合格であろうが、とにかく賣らせて、不合格のものは安くしか賣れないことになると、自然國民が買わないでしよう。それで、おのずから規格が統一されて行くという意味に導くところの法律であるという考え方で、この法律を運用されないといけないと思います。そういう関係から非常に先程の正誤の場所は、大切なことでありまして、よくお考え願いたい。その意味は、合格、不合格の規格を定める場合において、第三條に細心な注意をせられたいと思います。どうぞそういう注意をせられんことを要望いたします。  そうして農林省はどう考えているか、或る型を決めて、無理に押し込むということを考えているか、漸次そういうことを助長して、國家全体の農林物資というものが、おのずから皆が納得して、段々助長的ないい規格に統一するというような工合の考えを持つておるのでありますか。急速的に命令的に、こんなもので影を整えてしまうというような、そういう性急な考えで以て運用するのであるかどうか、その点明瞭にお答弁願いたい。
  39. 平野善治郎

    政府委員(平野善治郎君) 只今松村委員からの御意見でございましたが、第五條のミスプリントにつきましては、全く非常に大事な点を、農林当局といたしまして、誤字を植えておきまして、誠にこの点遺憾に存じます。尚檢査につきまして一方的に強制的にこれを、農林物資の生産者に対しまして無理強いをするのかどうかというお尋ねでございますが、そういう氣持は毛頭ございません。農林物資の生産者が品質を向上いたしまして、その價値を高め、それらの消費者が立派な物を入手できまして、消費生活を裕かにすることができるという線に向つて、親切丁寧にこの檢査を行なつて行きたい、こう考えておる次第でございます。(「進行」「進行」と呼ぶ者あり)
  40. 池田恒雄

    池田恒雄君 憲法問題まで出たのですが、ミスプリントということを発見しまして、大分緩和されたのでありますが、それによると檢査を受けたものでなければ販賣できないという形になるわけでございます。私はこういうことは非常に結構なんでありますが、ちよつとこれは農林当局に対する相談になりますが、檢査をしたものでなければならないというふうにすると、どういう取引の場合でも檢査したものでないと賣れないと、私達が引越をする場合に、繩一束と莚数枚を隣から譲つて貰うという場合でも、檢査したものでなければ取引できないと、こういう工合にいわゆるお巡りさん的に解釈されると、これは非常に不自由を來すと思いまするが、米の檢査の場合だと、歴史的によると、檢査は市場の声價を高めるためだというので、移出に対して檢査をして、縣内取引に対しては檢査をしない、こういう時代もあつたわけであります。この場合如何なる取引でも檢査をしなければならないという工合の取引じやなく、檢査を必要としない取引については、檢査しなくてもいいような工合にやつて貰わないと、うつかりすると困ることになりやせんかと思うのでございます。
  41. 楠見義男

    ○委員長(楠見義男君) ちよつと、その点は第五條には「生産者は」云々とありまして、それからもう一つ「但し、農林大臣の定める一定数量以下のもの」は受けなくてもいいとこういうふうにしたのでありますから、今の点は第五條でできると思います。(「簡單」「進行」と呼ぶ者あり)
  42. 板野勝次

    板野勝次君 提案理由説明の中にも、檢査を官がやらなければならないのに対して、民間の團体がやると、特権的な地位を與える結果になる、そうして今期議会に提出して審議をやつてつている事業者團体法案に牴觸するのだ、こういうことを言つておどかしておるのですが、そこでそういう民間團体に特権的な地位を與えるといけない、経済民主化の趣旨には副わないから、そういう趣旨に副うためだ、経済民主化の趣旨に副うためなら、官僚統制にすればいいのだという結論は直ぐ出て來ないと思う。それから若し事業者團体法案が用意されておるからというのならば、この事業者團体法案の通過を待つて、この檢査法案というものを審議せられるのが当然であつて、これがもうそのまま原案通り通過するだろうということを前提にしてやるというのは、少し行過ぎだと思います。我我はこの事業者團体法案の内容から見ても、日本の中小企業というものを、殆んど無力化する意図があるので、我々としてはこの事業者團体法案に対しては反対しなければならない。民間の團体がそういう檢査をやることによつて、悪い面があるのならば、それは是正して、例えば消費者の團体の代表が加わつて、規格の審議をやるとかいうように、その團体檢査の上に民主的な方途を加えれば、十分目的が達し得るので、團体にやらせるといけないから、何でも官僚の方によつてやろうという考えは、少し行過ぎではないかと思う。その点に対して一つ
  43. 平野善治郎

    政府委員(平野善治郎君) 只今板野委員の御質問でございますが、政府がこの法案を御審議をお願いいたしておる趣旨は、決して今仰せになられました民主化と反するものだとは考えておらないのでございまして、やはり事業者團体法が通る通らない、これは別にいたしまして、そういうような一つ法案を一方においては御審議をお願いしておりますが、そういうような御審議を願うというような情勢の下において、或る種の事業者團体に、こういう生産者と或いは消費大衆との、非常に関係の深いものを委して置くということは、やはり民主化にはならないのだ、こういう見地から國がこれを行いまして、最も良き指導と、好意的な檢査をやつて行つた方がよろしいという観点からやつておるのでございます。  尚審議会におきまして、消費者代表、いろいろそういう方々をというお話でございますが、これは御尤もなお説でございますので、審議会の構成については、そういう御意見を十分採入れて、立派な方々の集まりを作つて頂いて、万全を期したいとこういうふうに考えております。
  44. 楠見義男

    ○委員長(楠見義男君) 大体御発言も盡きたようでございますから、直ちに本名について採決に付したいと思いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 楠見義男

    ○委員長(楠見義男君) 御異議ないようでございますから本案を議題にいたしまして、採決に付したいと思います。政府提出原案通り可決することに御賛成の方の御興立を願います。    〔起立者多数〕
  46. 楠見義男

    ○委員長(楠見義男君) 多数であります。よつて多数を以て原案通り可決することにいたします。尚只今可決いたしました法律案について、委員長が本会議におきまする報告は、例によつてお委せ願うことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 楠見義男

    ○委員長(楠見義男君) 御異議ないと認めます。それから議院に提出する報告書について、本案を可とせられました方の御署名をお願いいたします。    〔多数意見者署名〕
  48. 楠見義男

    ○委員長(楠見義男君) 午前中はこの程度に止めまして、午後二時から再開いたしたいと存じます。    午後零時三十九分休憩    ―――――・―――――    午後二時三十七分開会
  49. 楠見義男

    ○委員長(楠見義男君) 引続き開会いたします。速記を止めて。    午後二時三十八分速記中止    ―――――・―――――    午後四時十四分速記開始
  50. 楠見義男

    ○委員長(楠見義男君) 速記を始めて。今日はこれには散会いたします。    午後四時十五分散会  出席者は左の通り。    委員長     楠見 義男君    理事            木下 源吾君    委員            太田 敏兄君            門田 定藏君            羽生 三七君            北村 一男君            西山 龜七君            木檜三四郎君            佐々木鹿藏君            竹中 七郎君            石川 準吉君            宇都宮 登君            岡村文四郎君            島村 軍次君            徳川 宗敬君            藤野 繁雄君            松村眞一郎君            山崎  恒君            板野 勝次君            池田 恒雄君            廣瀬與兵衞君   國務大臣    農 林 大 臣 永江 一夫君   政府委員    農林政務次官  平野善治郎君    食糧管理局長官 片柳 眞吉君    農林事務官    (畜産局長)  遠藤 三郎君