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1948-06-14 第2回国会 参議院 農林委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月十四日(月曜日)    午後一時三十一分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○農業改良助長法案内閣送付)   —————————————
  2. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) それでは只今から委員会を開会いたします。本日は農業改良助長法案につきまして予備審査をいたしたいと思います。最初に平野政務次官から本法案提案理由の御説明を伺うことにいたします。
  3. 平野善治郎

    政府委員平野善治郎君) 只今委員長からお話のありました農業改良助長法案提案理由を御説明申上げます。  食糧増産を図るために、農業に関する科学的技術発達及びその成果の速かなる普及を図ることは、極めて緊要なことでありますので、これが基底をなす農業に関する試驗研究並びに技術知識普及交換に関する機構並びに機能を刷新することといたしまして、昨年來連合軍最高司令部天然資源局積極的助言指導の下に、種々研究を重ね、目下その成案を取進めておる次第であります。  農業に関する試驗研究には一段と力を注ぐ必要がありますが、現在は國立農業関係試驗場大学專門学校都道縣農業関係試驗場、その他民間機関において行われておりまして、ややもすれば、これら各機関における試驗研究には、重複反復するものも少くなかつたのでありますので、この際これらの各機関有機的連絡調整を一段と緊密にいたしますと共に、時勢の要求に應じ、農業発展に即應して、最も適切な試驗研究能率的に進進助長することとし、一定計画の下に研究助長をいたしたいと思うのであります。又かかる試驗研究の結果に基く諸成績の普及滲透に関しましても種々努力が拂われ、最近におきましては特に指導農業中心とする普及方式を採用して参りましたが、農業会解体後における諸情勢並びに國家財政等の点をも考慮いたしまして、今般組織的に普及技術者設置し、これにより技術普及を図るところの方式を採用するところの方式を採用することになりました。この新方式の実施に関しましては、農林省並びに都道府縣等が資金その他に面において最も緊密なる協力をいたすことによつて所期成果が発揮できるものと信ずるのであります。  以上申述べました諸目的を達成いたしますために、國庫助成に関する法律を制定する必要があると認めましたので、本法の制定を提案することになつた次第であります。何とぞ愼重御審議上速かに御可決あらんことをお願い申上げまして、提案理由を御説明申上げます。
  4. 山添利作

    政府委員山添利作君) 只今提案理由の御説明がありましたが、それを若干敷衍する意味におきまして、差上げておきました農業改良助長法参考資料、この中のことにつきまして御説明をいたします。  この農業改良助長法には、目的一つでありますけれども、二つの部分がある、一つ試驗研究能率的に且つ日本農業要求するような形で行うということが一つ、その次には試驗研究によつて得られました結果を、有効適切に農業の間に普及する、こういうことが一つ、この二つの部分から成つておるわけであります。法律自体といたしましては、これはただ助成法でありまして、別に珍しいことも何もありません。問題は、それよりもこの法律の裏にあつて何を実際やるかということが大切なわけであります。で、その点について第三の機構というので、農林省(案)と書いて、機構表一つ附いてございます。これをお開き願いたいと思うのであります。この法律の主たる目的でありまする試驗研究能率的に進めること、並びに府縣における農業改良普及事業を推進するための部局といたしまして、農林省農業改良局というものが設置される予定であります。で、その一番右の方に農業技術研究部というのがございます。この改良局の中に技術研究部経済研究部と、それから普及部、この三つの部が置かれるわけでありますが、試驗研究につきまして、この研究部のところに書いてありますように、試驗研究をやるについてプロジエクト・リーダーというようなものを設置して、稻なら稻、その他の穀類或いは芋類、ここに書いてありますような、多分これは十九に分れていると思いますが、それらのことを担任する高級な專門家を設置する。このプロジエクト・リーダーは稻なら稻に関する試驗研究の企画、或いは実際行われる試驗研究方法指導というようなこと、並びにその結果の取纒めということ一切を担当するのでありまして、これは國の試驗場で行われる試驗府縣試驗場で行われる試驗、又農林省農林委託金なり補助金なりを支出して行いまする大学等におきまする試驗、これらのものを一人の人が統一をして、そうして能率を挙げて行く。あつちこつちで無統制、或いは無連絡にやつておるということでなしに、統一された計画で試驗研究を進める。重複を省いて最も能率のよいものにして行く、こういう考えであります。そうしてこの農業技術研究部でこのようなプロジエクト・リーダーを置かれますと共に、そこで綜合的に、日本農業の経営並びに生産力発展上、どういうところに主眼を置いて行くかというようなことを考えて、試驗研究能率を挙げて行こうというわけであります。これは本省における部の組織でありますが、國における試驗場はここに並べてありますような、現在でございまするものがあるわけでございますが、これがどういう形になるかということにつきましては、目下研究をされておりまして、具体的なことは決まつておりません。ただ國及び府縣を通じまして、固有の意味農業並びに畜産を一体的に考えて行く、從つて試驗研究も大体そういうことを綜合的に対象にして行くという考え方でございます。從つて府縣における農事試驗場、或いは畜産に関する試驗場というようなものがございますれば、これは一つ農業試驗場という形にいたしまして、農畜一体の姿において研究をして行く、從つて今まで飼料作物というようなもの、それは余り取上げられていなかつた嫌いもあるのでございまするが、そういうようなものも十分取上げて行くということに相成るわけでございます。この試驗場につきましては、現在非常に沢山あるのでございまするが、只今申しますような能率を上げて行くという点から見ますると、若干これを整理してもよろしいという考え方もございます。そこで全國大体農業にはそれぞれ地帶があるわけでありまして、北海道地区或いは東北地区或いは関東地区、そういうような地帶がそれぞれあるわけでありまするが、そういうようなところを綜合的に考えて、試驗研究の場所を整理をして行こうという考え方がございます。これにつきましては、連合軍の方の指導によりまして、目下研究をされておる段階でございまして、的確にどういうふうにしたらよろしいという結論まで申上げる段階には到達いたしておりません。こういうことによりまして、試驗研究を綜合的に且つ計画的に能率よく進めて行こう、且つそれは農畜一体の姿において、又北海道とか九州とかいう地域の立地條件に即した研究をやつて行きたい、こういうアイデアを持つておるのであります。  その次に、農業経済研究部というのがございます。その下に現在ございます農業綜合研究所も加わるわけでございますが、ここで経済的な事柄についての研究をいたす、農業技術だけでなしに、その経営というものを経済面から取上げて研究をする、両々相俟つてこの農業の進め方ということが明らかになると思うのでありますが、この農業経済研究部の方で取上げます項目は、もとより多岐に亘ることと思いますが、大体三つの分野に分けて考えております。第一は農業経営中心とするところの普通のいわゆる経済的な調査であります。第二番目は社会的な研究と申しましようか、農村における自治でありまするとか、或いは組合活動でありまするとか、或いは衞生の問題、或いは栄養改善の問題というような、社会的な部面の事柄であります。第三番目は自然科学経済との交流した分野研究——災害研究でありまするとか、或いは土地の綜合利用に関する研究でありまするとか、そういうような三つの事柄になると思いますが、そういう研究を進めて行く筈になつております。  それから普及部でありますが、これは地方にそれぞれ機構があつて、そうしてこの試驗研究の結果等を農民の間に傳播して行く、こういうことになるのであります。これが機構に関する説明でございます。  その前に書いてございますが、農業改良助長法関係予算農業に関する試驗研究経費というのが八百万円ばかり上げてございまするが、これは現在農林省予算の中で、試驗研究の項目として載つておるものの予算を拾い上げたのであります。こういう試驗研究に関する項目は、現在はそれぞれの農政局なり主管局予算に計上されておりまするが、これが改良局所管予算になるという部分であります。  それから補助金につきましても、府縣試驗場等でやつております事柄についての参考資料、それから試驗場関係経費、これが上げてございます。それからBの農業普及農業に関する経費、法第三章に関する分、五億円ございます。この予算普及部に属するのでありまして、その主たる内容は、府縣に大勢の技術普及員を設置する、そうして普及事業を行うということが、内容になつておるのでございまするが、これにつきましては、内容は後程申上げたいと思います。簡單に申しますれば、從來は指導農場中心にして、この農業技術発展と向上を図つて行く、又その普及に努めて行くという制度を採つてつたのでございまするが、指導農場に関しましては、この四月一ケ月分の経費を以ちまして國庫助成を打切るということに相成りました。五月以降はここに書いてございまする予算で人員を設置し、そうして普及事業をやつて行くということになつたのでございます。この機構図を一枚まくつて頂きますると、「協同農業普及事業に関する都道縣及びその地区機構及び任務の概要(案)」というのがございます。これが府縣における農業改良普及事業の骨組と申しまするが、それがやがてやや分り易くと申しまするか、書いてあるのであります。これをお読み頂ければ簡單に直ぐ分るのでありまするが、この骨子になつておりますところを申上げますると、各府縣地区をそれぞれ農業事情を同じくするところの、立地條件をほぼ等しくするところの地区に分ける、五ケ所なり七ケ所なり或いは十ケ所程度の同じような地帶を取つて一つ地区を設置する、その地区に数名の技術員を設置する、そうしてその中の一人が地区責任者である、他の技術員はそれぞれやはり地区内の村を一ケ村なり二ケ村なり分担をして受持つ、こういう考え方でありまして、その地区に三名なり四名なりの技術者が設置される、技術員だけのことを申しますれば、これが農民に直接接触いたしまして、技術普及に当る人でありまするが、その上に專門家を置く、米なら米、果樹なる果樹、或いはこの農業改良普及事業の対象は、ひとり狹い意味農業技術だけでなしに、農村生活改善という部面も含んでおります。從つて栄養改善でありまするとか何とかいうことも含んでおるわけでありまして、從つて対象になる人から申しましても、農家の主婦、或いは少年少女というものも含まれておるわけでありまして、そういう家事向き或いは青少年教育ということも併せて行うのであります。そういう事柄專門家府縣若しくは府縣の更に廣い地区を担当する者として設置をされる、府縣廳にはそれぞれこれらの仕事について專門的な指導をする人が置かれる、こういう機構になつております。そこで府縣將來農業技術普及部というものを設置することが予想されておりまするが、差当りの問題といたしましては経済部なり、農林部の中にこの仕事を担当する課なら課、セクシヨンを作るということでありまして、その下に専門技術者がおり、末端には地区技術者がおると、こういう関係に相成ります。それから委員会が設置されるのでありまして、農業技術普及委員会という名前になつております。地区農業委員会というのは恐らく地区農業改良委員会とでもしたらよいと思います。そういうものを設置することは市町村の議会におきまして、適当な人、即ち本当の農民であつてかようなことに熱心な人を村から一名乃至二名を選ぶ、これは農民の数によりまして選ぶわけであります。その人達が、地区のそういう選ばれた人達が地区委員会を構成する。その地区委員会を構成するところの委員府縣委員会農業代表を選挙する。こういう構成になつております。この府縣委員会、又地区委員会はそれぞれこの農業改良事業に関する事項の調査、或いはそれについてのどういう方策を採つたらよいかというような権限を、アドヴアイスをするわけであります。特にこの重要な任務といたしましては、府縣等に置かれます專門家並びに地区に設置されます普及技術員は、この委員会の選考による。もとより形の上におきましては府縣の吏員でありますから、知事さんが任命されるわけでありまするが、実質上はこれらの委員会において選任をいたして行く、こういうことになつております。同時に、同時にじやございませんが選任をするのでありまするが、それらの普及技術員專門技術員はそれぞれ一定資格要求されるのでありまして、それらにつきましては、この資料の方に都道府縣農業普及技術員資格及び任用方法要綱という資料が附けてございます。これも將來若干変ることがあるかも知れませんが、とにかく地区技術員にいたしますれば、原則として甲種農学校を出て三年以上まあ農業に関する試驗研究、或いは教育機関に働いた経驗がなくてはいかん。まあこういうような一定資格要件があります。この資格を持つた人農林省の定める基準に基いて都道縣ごとに実施する試驗に合格しなければいかん。その合格者の名簿を持つておりまして、その名簿に載せられた者からこの府縣委員会の方で人を選定して行く、且つさように選定されは人は身分保障を受ける。こういうようなことになつておるわけであります。併しながらこういう委員会を設置いたしまするとか、或いは試驗をいたしまするとかということは、到底本年の間に合いませんので、本年といたしましては、差当り食糧増産技術員という名前におきまして、將來これらの試驗に合格するような人を府縣の吏員として採用をして貰う。即ち指導農場で働いておつた人であるとか、或いは農業会に働いたおつた人であるとか、その他の範囲からそういう人を採用する。そうしてその人はこの会計年度中に行われる試驗に合格し、且つ農民の方の委員会の選考を経て、正式の普及技術者ということに任命せられなければ、來年からはこの仕事に從事することができない。こういうことになつておるのであります。この食糧増産臨時職員は合計で六千五百名でありまして、二級官が千五百名、それから三級官が三千五百名、雇員が千五百名ということになつております。先程の五億円の予算はこれを中心とする経費でございます。  尚法律の方でございまするが、法律に書いてありますことの要点は、試驗研究につきましては個所数を七十五ケ所に限定してあり。それから普及に関する経費につきましては九割を農地の面積割並びに農業の戸数割で按分で機械的に配付をしてしまう。後の一割はこれは調整用使つてもよろしいという規定でありまして、即ち法律では災害があつたとか、農業資源の開発が遅れておるとかいうふうに書いてございまするが、畢竟するところ農業の地位から申しますると重要府縣であるけれども、いわゆる財政上貧弱な府縣がございます。さような府縣に交付をいたすことになるわけでありまして、この五億円に関する予算は本年は、府縣法律上特に國の出す予算に対して更に附け足しをするということを要求されておりません。併し明年からは國が十億円出せば府縣は五億円以上出さなければならん。即ち國の出します分の二分の一以上を府縣が又負担しなければならん、こういうふうになつております。尤もこの調整用に使い得るところの一割を交付しまする分につきましては、これは調整でありますから府縣費の負担は強制ではございません。これが要点であろうかと思うのでありまして、結局今までの指導農業中心考えておりまして制度はこれを廃止いたしまして、農業畜産蚕糸は特性がありますから除きますが、農業畜産について、これを一体的なものとして試驗研究能率的に、又日本の本当の農業要求に合うような形で能率的に行なつて行く。これを農民に傳播をして行く。それについては今のように段階的に機構を整え、そうして末端に相当の知識経驗あり、これらの仕事に適する性格を持つた技術者を設置をいたしまして、そうして農民の間の啓発宣傳をやつて行く。同時に又実地のデモンストレーシヨン、新らしい品種の栽培等農家に委託をしてやつて見る、こういうような仕事をやりまして、農業発展のために効果を挙げて行きたい、こういう趣旨でございます。尚いろいろ細かいこともあるのでございますけれども、試驗研究の点につきましてはまだいろいろ申上げる段階に至つておりません。普及事業のことにつきましては、又御質問に應じましてお答えいたしたいと思います。
  5. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) それでは只今から質疑に入りたいと思いますから、どうぞ……。
  6. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 先ず第一に伺うのは、どういう意味蚕糸業はこの中に入つていないのですか。農業日本的にということが御説明の中にあるとしますと、日本蚕糸業を閑却するということは日本農業としては余程おかしいじやないかという感じがするのです。それでアメリカからの指導ということが説明の中にありましたですが、指導を受けるという方面からは、或いは蚕糸業日本の方が独特であるかも存じません。いろいろの御考慮もあつたと思いますけれども、特に蚕糸業だけを除いた場合に、食糧農産物関係もここに生じて來るでありましようし、工業産物関係も生じて來ると思います。綜合であるならば、農家全体について考えるのがいいのであり、農民生活改善というようなことが、第一條に書いてありますが、これは蚕糸業を除いて、農民生活改善ということも甚だ如何かというような感じもするのです。殊に緬羊のようなものについて考えますると、農家自家用繊維がそれから取れるわけであります。そういうところの関係はやはり重大な考慮をしなければならんのであります。その点について何故蚕糸業は、農業綜合的に考える場合において除かなければならないかという理由を私承わりたいと思います。
  7. 山添利作

    政府委員山添利作君) 松村委員の御質問になりました点は、この法案立案過程におきまして、最も問題にされた点であります。成る程養蚕と申しましても、これは農業の一部であり、等しく農家がやつておる仕事であります。その意味から申せば、この法律意味における農業の中に入れてもいいのじやないかということが一應考えられるのであります。又そうでなければ完全ではないのじやないかという御意見は御尤もであります。併し蚕糸自体から見ますと、これはちよつと樣子の違つた点があるのでありまして、一つ試驗研究の点から見ましても、蚕糸の一番氣を付けなければならんとなる点は、何と申しましても、輸出が重点でございまするので、海外における需要、それから來るところの生糸改良、そのことは又繭の改良、或いは品種選択改良ということになると思いますが、どうもそちらの面から來る要求考慮して、絶えず研究をしなければならん。又同じ研究をいたしますについても、分野が相当絹織物等との関連を持つた方向において廣く、又何といいますか研究をする機関におきましても、おのずからそこにいろいろな方面の協力的な研究が必要であるというような点の特異性考えられるのであります。御承知のように、蚕糸調査会というものができまして、この蚕種、生糸改良研究をやつておるのでありまするが、そういうような一つ機関も持つて綜合的にやつておるのでありますから、やはりこれは試驗研究分野において、一應別にして置いた方がいいのじやないか、こういう考え方であります。それから末端における、末端と言うと語弊がありまするが、農家に対する指導についても、蚕糸におきましては特殊の何と申しますか、施設を作つて直接蚕を飼つて指導をいたしておるのでありまするが、この單なる人間の技術者設置してやる、この仕組みの中には十分当て嵌まらないのじやないか、無論蚕糸蚕糸としての設備を持つた独特の技術者設置する必要があるが、それから又製糸業者との関連におきまして、何といいましてもこの製糸の方から要求して來る養蚕指導ということもこれは無視できないのでありまして、やはりそういう方向という事柄もあるという点からいたしまして、やはりこの際はこの法律の中には含めないで、蚕糸蚕糸としての領域を認めるという形で先ず出発をする方が適当ではないか、かような結論になつたのであります。
  8. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 今のお考えは、先ず、というのですから、やはりこれは考え得るという前提であるか、どういう意味ですか。先ず、というのは後では一緒にするという構想の下に行かれるのか、永久に蚕糸は別であるという頭で行かれるのか。どうも只今の御説明は、輸出関係があるということで御議論になつておりますが、そうしますと、この農業改良というのは、國内消費のものについてのお考えに限つておられますか。事輸出に関するならば、それは外であるというような意味考慮されるのですが、例えば「はつか」というようなものになりますれば、相当輸出されるのでありますが、必ずしも普通の食糧作物とは違うのであつて工藝作物考えると、輸出なり輸入なりや或いは國内生産なりやというようなことについては理由にならんと思います。例えば先程申しました緬羊のごときものも、大部分輸出されておる。そういうものについてはどうお考えになつておるのですか。貿易関係は除外するという考えですか、國内的のものだけを考慮して行くという出発点でありますか、どうですか。
  9. 山添利作

    政府委員山添利作君) これは國内的なものだけを考えるということではありません、輸出農産物通じての問題であります。生糸の場合、即ち養蚕の場合におきましては、海外から來るところのその要求を特に考慮をして、一貫的な、生糸のできた製品から……生糸、それから繭、蚕の飼い方、品種と、かような一貫的な海外からの要求を反映したところの研究改良が行われなければならん、その姿におきまして、相当独特性を持つておるので、これはそういうものとしての見地から、一貫した只今ございます蚕糸調査会等研究を続けて行くということが適切であろう、こういう結論であります。  それから將來はどうするのかということにつきましては、もとよりこの法律は、こういう形で進むのでありますから、將來一緒にするという意味ではございません。さればといつて將來それではいつまでも離れるというところの結論にも來ていないのだと思うのでありまして、これは新らしい方式をやるのでありますから、物はやりつつ改善して行くということが、私はいいのじやないかと思います。この法律もそういう考え方を採つておると考えておるのであります。
  10. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 生糸の場合は、大部分輸出されるでありましよう。併しやはり内地需要のものもあろうと私は考えます。日本人はすべて生糸輸出するのである、國内には用がないというような考え方では、私は了解することはできない。ただ生糸については、いろいろな機関が別であるから、暫く別にやるというお考えであれば、これは一つ理由になりましよう。併し特にこれを輸出品なるが故に除外するということについては、まだ十分了解いたしません。そういたしますと、海外の影響を多分に含んでおる関係のものは除外しよう、こういうように了解してよろしうございますか。
  11. 山添利作

    政府委員山添利作君) そういうアイデイア、そういう考えといいますよりも、具体的に或る独特の領域があつて、それはそれとして研究する方が適切であり、現状としてその方が都合がいい、こういうところから來ておるものであります。
  12. 羽生三七

    ○羽生三七君 農業能率的な発達や、農業における科学滲透を図るためにこういう法案が出ることは、歓迎すべきことではありますが、一般的な問題について二、三疑義のある点をお伺いして置きたいと思います。  第一番には、ちよつと理屈に亘りますが、二千数百年の昔から、殆んど人糞尿というような農業から脱し切れなかつた日本が、今日の段階において、高度の農業技術を必要とすることは、もとより当然でありまして、尤も最近におきましては、脱穀或いは調製等におきましては、やや電化或いはその他科学化がされておりますけれども、日本農業全般といたしまするならば、恐らく非常な生産費のかかる又科学的な技術の遅れておる國であろうと思うのであります。こういう場合に私達は飽くまで日本農業を高めるために、その科学的な技術滲透を図らなければならないわけでありますけれども、例えば第三條を見まするというと、農林大臣は、それぞれの試驗場における研究成果について、その重複や反復を避け、結果の報告の形式を統一して一つ結論を見出そうということになつておるわけであります。併しこれは戰時中にもちよつと聞いたのでありますけれども、或る特殊な研究家の研究が極めて優れたものであつたというにも拘わらず、それが一般的なものでないというような理由で葬り去られたということを私共よく聞いておるのであります。從つて私共はたとえそれが全國何十ケ所の試驗場綜合的、統一的な試驗の結果でなくとも、或る一ケ所、或いは或る特定な個人の研究においてすらも、それが極めて重要な成果をもたらすものであるということが認定された場合に、それに対して十分な助成をする決意がなければならないと思うのであります。これも更に又理屈ぽくなりますが、恐らく原子エネルギーで世界の産業革命が行われようとしておる時代におきまして、非常な高度な、ややもすれば革命的で突飛に見えるような研究が一般的性格を持つておらなくても、それ自分非常に高度な研究であるならば、それを全面的に取入れなければならないような場合もありますけれども、從來ややもすればそれが一般的、綜合的な成果をもたらしておらんということによつて葬り去られた事例は、私は相当沢山あると思うのであります。そういう意味におきまして私達の期待しておることは、今申上げましたように、一般的でなく、或いはそれが統一的な成果を、結論を得られなくとも、それが有力な、革命的な技術として認定される場合においては、徹底的な助成を講じなければいけない。そういう意味におきましてこの参考案を見ますというと、技術普及等については約五億の予算を組んでおりますが、いわゆる技術研究費におきましては、僅かにその十分の一に過ぎない。私共はこれも戰爭中のことでありますけれども、日本の原子エネルギーの研究において、その大学研究者がリユツクサツクを背負つて芋の買出に行きながら研究をやつて、逐に倒れたような事例も聞いておりますけれども、いつも日本ではそういう純正技術研究に対する費用が少な過ぎるのであります。いわゆる行政費には非常な費用を掛けますけれども、科学的な研究に対しては、極めていつも微々たる予算しか出さない。今日行政整理といわれて予算節減が叫ばれておるときでありますけれども、恐らく日本農業に革命的な技術発達がもたらされるならば、数千万や数億の技術研究費の予算のごときは物の数ではないと思うのであります。そういうことが殆んど認識されておらない。恐らく又この成果の統一というようなことになりましても、一般的な常識的な範囲を出なくて、日本農業を革命するようなそういう方向へこの技術指導を持つて行くということが、又再び置去られるようなことになるのではないかということを杞憂しておるのであります。尚又同じく第三條のうち農林大臣はそれらの研究の結果に基いてその最後の方向を示すことになつておりますが、一体農林大臣自体がどういう……例えば行政的な措置はできるでありましようけれども、農林大臣自体が科学的な研究を持つておる、研究の能力をそんなに持つておるわけではないのでありますから、どういう機関を通じて最後的な決定をするのであるか、これも我々の疑問とするところであります。尚こういう逐條的のことにつきましては、あとから承わりたいと思いますが、要するに今申上げた点は、一般的形式的な統一が得られない場合においても、たとえそれが一研究所、一個人であつても高度なる研究成果が発表された場合においては、渡林省は敢然としてこれを採用し、且つこれに最大の助成を與える意思があるかどうかということを、先ず第一に根本的に承わりたいと思います。それで今の農林大臣の最後の決定を具体的にはどういう機関を通じてやるか、尚又前の松村議員の質問について同樣な見解を持つておるわけであります。
  13. 平野善治郎

    政府委員平野善治郎君) 只今羽生議員からいろいろお話がありましたが、日本農業が非常に原始的な方法を以て営まれておりまして、今回画期的な科学滲透を來し、そうしてそれによつてこの日本の生産向上をやらなければならないというようなお説は御尤もだと思います。尚從來においてこの研究の結果において一方において立派なものができておつたにも拘わらず、これを國が採用しなかつたという事例があつたということにつきましては、我々もそういうことは今までも耳にしたのでありまして、第三條にあるこの結果報告の形式の統一に囚われて、若しも今後とも偉大なる革命的な立派なものができたときに、これを採用しなかつたり、助長しなかつたりしてはいけないという御意見には全く御同感でありまして、当局といたしましても結局そういうような考えは持つておりません。日本農業を再建するために最も科学的であり、進歩的なものがすつかり分つた場合においては、このものを十分に育成し、助成し、そうしてこれを取上げる方針であります。尚農林大臣がこの決定をどういう機構で行うかという御質問につきましては農政局長から御説明をいたさせます。
  14. 山添利作

    政府委員山添利作君) これは参考資料の図表にありますように、農林省農業改良局設置されて、試驗研究のことについては農業技術研究部、この機関が取扱うことになつております。
  15. 北村一男

    ○北村一男君 試驗研究につきましては、これは府縣の方と連絡を取らせるのでありますが、普及事業につきましては委員会を以てそれに普及させるということでありますが、この場合に農業協同組合を活用しまして技術普及をされてはどうであるか、農林当局の御見解を承わりたいと思います。強いて又こういう委員会を作る必要がどうであるか、私はどうも納得しかねるのであります。  それから先程農政局長の御説明では、農畜一体綜合経営をする建前で、いろいろ試驗研究をなさるというような御説明があつたと覚えておりますが、然らば日本將來農業経営形態について、何かお見通しを以けていらつしやるか、ただ研究した結果を綜合するつもりであるというのか、予め経営形態について見通しを付けて研究されるのか、こういう構想がありましたならば、ここに御披瀝願いたいのであります。  それから、これは私まだ研究しませんから正確に申上げることはできないのでありますが、この法案を見ますると、國で出す半額は府縣が負担しなければならんような意味合いになつておると思いますが、この場合において、地方財政においてこれだけやはり殖えるのであります。つまり負担が殖えて行くことに相成りますから、そういう場合においてこの法案の立案に際しまして、地方財政が膨脹する、その措置をどうするかというようなことをお考えなつたかどうか、お考えなつたら、どういうふうにお考えなつたかということを御披瀝を願いたいと思います。
  16. 山添利作

    政府委員山添利作君) 普及事業について協同組合を利用してはどうかという御意見でございまするが、協同組合は協同、自主的な組合として、それ自身農業技術改良ということにも活発なる活動をして頂きたい、そういう考えを持つております。併しながら制度そのものと、協同組合とは形式的には直接の関連は何らないのでありまして、この普及事業は國とそれから都道府縣とが財政的に協同をして、そうしてこの普及事業を進めて行こう。御承知のように協同組合は從來の農会と磯いまして、任意加入の團体であります。こちらの普及事業につきましては、協同組合員のみを対象にしてやるとか、或いは協同組合を対象にしてやるとかいうことではございません。一般の農民対象といたしまして、政府の仕事をして普及事業をいたすのであります。併しながらその実質において協同組合と非常に連繋を取つて仕事をするのでなければ仕事の効果も挙らないし、又実際上できないのであります。技術の上においては協同組合とは密接な関連を持つて、その間に又協力をして普及事業を進めて行く、かようなことにいたしたいと思つておるのであります。  それから地方財政に関する負担でございまするが、次の年度といたしましては國が出します普及事業の半分以上を府縣が出すことになります。これは見掛け上から申しますると、それだけ増加を來すではないかということでありますが、実質から申しますると、今までは指導農場という形において、これも國が助成をしておりますと共に、府縣が相当又出しております。その経費が落ちてこちらの方に替るわけでありまするので、実質上の府縣の負担ということは、旧制度とこの制度と大差はなかろうと、こういうように考えております。  それから農畜一体研究をして行く、それについて將來農業経営の構想を持つておるかどうかということでございます。勿論これにつきましては、それぞれ專門家の間にも意見がございましよう。我々農林省の者といたしましても、漠然としておりまするけれども、それぞれアイデイアは持つております。併しながらそれらのことを予め決めた形で行くということではないわけであります。ただその地区の特性に應じて、こういうような発展をしなければならないだろう、こういうようなことに着目をして、その立地條件に應じて研究が行われ、又それに即するところの普及事業が行われなければならん、こういうことであります。現在の経済状況では、予定いたしましても、なかなか困難な点もございまするので、段階的に、この時期にはこうなり、この次にはああなりということを今考えておるわけでありません。さような方向で行きたい、こういうように考えておるのであります。  それから先程羽生さんの御質問の中にこういうちつぽけな試驗研究経費ということがございましたが、今までの点は実はこの程度でございますが、これはこういう機構を作るのについて試驗研究費をどうするかというのは、これは來年度予算にならないとその全貌が出ないのであります。今年は取敢えず今まであるものをここに取上げておるわけであります。ちよつと珍らしい費用といたしましては、肥料に二百五十万円ございますが、これは理化学研究所の仁科博士に重窒素のことの研究をお願いしております。今後はこういうことが問題になると思います。
  17. 山崎恒

    ○山崎恒君 政府は曾て指導農場設置して日本農業改良発達に資しようというような計画の下に、過去におきまして相当厖大な予算計画し、これも相当進捗しておつたのでありますが、半ばにおいてこれを中止しなければならんというような状況に立至つておるのであります。その身代りとして出た法案がこの法案と解してよろしいかどうか、それが一つ質問の点でありますが、尚意見を附加えて多少質問を申上げたいと思いますが、大体におきまして今回のこの法律内容全般から見まするというと、特にこの試驗場等を利用し、或いは試驗の結果を蒐集して、それに対する施策を講ずるというようなことも重点になつておるのでありまするが、現在まで行われたところの指導方法に鑑みまするというと、私共はそれによつて日本農業が特に発達助長できるかどうかということに疑問を持つのである。殊に從來は農業会等におきましても相当政府とタイアツプいたしまして技術陣営を、相当数の技術陣営を以て從來この普及等をしておつたのでありまするが、すでに農業会は解体され、遂に技術陣営は破滅の止むなきに至つておるような状態であるのであります。而して今回のこの法律によりまして大体農業会等の技術陣営はこれに吸收されるというような御説明であるのでありまするが、技術方面のますます官僚化というようなことに重点を置かれるではなかろうかということが、懸念の一つであります。同時に民間におけるところの技術指導というものを今後どういう工合に民主的にこれを指導する方法を政府は持つておるかどうかというようなことを、お考えがありましたならばお聽かせを願いたい、こう思うのであります。さような点を考えますときに、特に曾て指導農場を縣或いは地方の農業会或いは試驗場三位一体の形におきまして指導農場設置して普及事業計画し、普及しつつあつたのでありまするが、これが中絶した今日、現在指導農場が相当数に設置されておるのであります。この指導農場の利用方法を、如何に政府は利用されるか、この指導農場中心として計画したところのものを如何に政府は利用するかという点、この点につきましては、相当地方各縣とも、費用を投じ、或いは寄附金等を募集しまして、設備も着々整えておつたというような状態にあるのでありますが、そうした利用方法等について、今後の計画、見通しというような点についてお聽かせ願いたいと思うのであります。以上三つの点についてお伺いいたします。
  18. 平野善治郎

    政府委員平野善治郎君) 今山崎委員からのお尋ねの点でありますが、指導農業の身代りのつもりでこの法案を出したかどうかということにつきましては、当局といたしましては指導農場が現段階において閉鎖をするのは止むを得ないということで作りましたのでございまして、この法案は又それと切離しまして、日本農業科学的な將來指導のために是非必要であるという考え方から立案しまして、御審議を願つておる次第であります。尚今までの農業指導方法においては不十分なものがあつたという御説でありまするが、私共もこの点は十分でなかつたということは認める者であります。從つて今後の指導におきまして、特にこの法案が実施されるときにおいて官僚化されて行くことが懸念されるという点でございまして、この御例念は御尤もなことだと思います。我々といたしましても、こういう指導が民主的に非常に下から盛り上つた、或いは横の連絡がスムースに行くような機構にして、農民と常に相喜んで協力ができるような組織にいたしたいつもりでありまして、これに関係するところの人に対して趣旨を徹底させたい、こういうふうに考えておる次第であります。尚指導農場の今後のいろいろな利用、或いは活用についてどういうふうな対策を持つておるかという点でございますが、折角あれまでに育成したものでございまするし、又將來とも農業改良、或いは指導の上について、いい意味においてますますこれを活用するという精神には変りはないのでございまするが、目下これに対してはいろいろな事情が各指導農場によつてつておる点もありますので、この個々の事情を取纒めておりまして、近い中にその方向を決めまして、御発表申上げたいと存じております。
  19. 岡村文四郎

    ○岡村文四郎君 この法案は、或る面を見ますると非常にいいものだとも考えますが、又或る面を見ますると非常に因つた点があると考えます。そこでまだ末端のことまで議が纒まつておらんことでありまして、未熟であるようでありますから、余りに堀下げてお尋ねしても駄目でありますが、とにかく山崎委員のおつしやるような日本の事情でありまするが、ここに法律案として出ておりますものを見ますると、科学的に非常に高度の指導をしようという意図が多分に含まれております。そこで一應資料を見ますると、六千五百人ほど要る人間が食糧事務所の人間をそのままぴつたりと持つてつて充てようかというようなふうにも見えます。そうでないかも知れませんが、数学の上から見ますとぴつたり合つております。私は食糧事務所の人員を調ベておりますが、それとぴつたり合つております。ところがあんな人間では何年経つたら一体ここにあるような高度の指導ができるかということなんであります。私はこの前にいろいろなものを見た時分に、非常なむずかしい指導なんで、一体この案に盛られておる、最高司令部の方で指導をしておるような指導者が現在のところでは日本には一人もいまい。恐らくないだろう。そういう感じを持つております。大変結構なことで、これはそこまでやり得ればやつてもいいのでありますが、農業指導というものは非常にむずかしいものであり、考えようによれば簡單ではありますが、百姓と一つ心になつて指導をする指導員でなければ、絶対に現在の日本の原始的農業指導はできんて言わなければならないのであります。そこで、科学指導はこれは別でありますが、私の方で物理化学を應用する農業をやつて貰わなければ駄目だというので、三年掛かりになつて物理化学の研究を應用して、農業研究をいたしております。大体成功したものもありますが、本はシベリヤの麦の蒔き方を見て、北海道の帶廣であの麦の蒔き方をすることも研究して見たのであります。ところがこれは全然工合が違つておるので、シベリヤの土地の凍り方と北海道の帶廣とは違いますので、これは不成功に終つた。他の方法によつて研究をして成功しました。又北海道の雪が非常に深いのでありますが、この雪の解かし方をどうすれば一体早く融けるかというのも成功いたしたのでありますが、これは科学者がやるのでありまして、百姓とがつちり手を組んでやるのでありますから、それでいいのでありますが、今までの日本農業指導者は、ここに挙げておられますような、何だか役人であるような、ないような、それから百姓と一緒に行けそうにも見えれば、とてもむずかしいとも考えられるようなものでは、余程議を練つてよろしくやつて貰わんと、私らはこれは非常に経費を掛けて日本の現在には効果は非常に少いのじやないか。それから養成所はどれだけの金を掛けて、どれだけの人員を養成すると思つておられるかをお聽きしたい。それから農業協同組合の指導者と、別にこれはそうして行かんということにもなつておらんようでありますが、又お互いにやつて行かんけりやならんのでありますが、現在の指導農場が非常に多額な経費を掛けて設備をして、そうして一年か一年半で駄目だということになつて、その受持つた町村は国の予算が非常に少くて、段々経済が膨張して大きな迷惑を被つてつておりますのでありますが、それでも止むを得ないからやつて行きたいという個所もあるようであります。そこで協同組合でも、御承知のように農家個々が負担をして、協同組合としての指導者を養い、或いは養成をして行かなければならんのでありますが、この負担も、これは半分は地方の負担として持つて行くことになりますと、非常に過重な負担をすることになりはせんか。全部國が負担するということになれば、國民全体が負担をするのでありますから、これは又そこにゆとりもありましようが、そうでなくして、各市町村ではどうして一体協同組合の技術者指導するその経費を見出そうかというので、非常に熱心に考えておるようでありますが、これは負担金による以外に途がないということもはつきりいたしておりますので、その負担金たるや恐らく相当の負担金を取らなければ満足な農業指導はできない実情にあります。そこへ持つてつて又地方の負担が掛かりますと、非常な迷惑になり過重になつて、堪えられぬようになりはせんかという疑義を持つております。その点どういうお考えか、お答えを願いたいと思います。
  20. 平野善治郎

    政府委員平野善治郎君) 只今の岡村委員のお尋ねでありますが、日本農業改良指導のために二つの大きな……一つは物理化学的な、科学者のような分野で以て研究を積まれること、もう一つ指導の面におきまして、百姓と一体となりまして、指導をする面との両方を強化して、そうしてそれが適切に運用できるようにというお話でございまして、誠に御説には同感でございます。私共といたしましても、今回のこの法案を作成いたしまして御審議を願う趣旨もそこにございますので、只今まで行われなかつたようないろいろな物理的な化学的な農業改良につきましては、こういう方々の研究を非常に期待し、これを育成して行きたい。一方において、実際の農家と密接に連絡をいたしまして、指導育成するのにつきましては、努めて民主的な氣持から農家の氣持と同じになりまして、その得たところの高度な技術、或いはその時に應ずるところの最善の方法を速かに普及したいと、こういう考えでおるのであります。  尚その農家指導に当るところの人の数が食糧事務所の人員の数と同じであるから、その者は兼務ではなかろうかというようなお尋ねのように承わりましたが、これは全然別なのでございまして、その点御了承を願いたいと思います。  尚指導農場を今後どういうふうにこれを活用して行くかという御意見に対しましては、先程山崎さんのお尋ねにお答え申し上げました通り、個々のいろいろな関係がございますので、今それを取調べておりますので、早急にこれが活用について成案を得てお発表申上げたいと存ずるのであります。  尚指導者の育成の点でございますが、この所管につきましては、後程具体的なものを農政局長から説明をさせますが、地方財政のいろいろな負担、或いは協同組合が自分の技術者養成と、或いはこの意味指導者との過重負担になるではないかというお話でありますが、この法案にある養成者がよく協同組合と……、協同組合は自発的なものでございますから、その自発的な組合のやつておる一指導者とよく連繋をいたしまして、そつちの方のこの指導者が力を貸すことができますから、この法案ができまして、指導者が養成されて、それが農家或いは協同組合と密接な連絡が行く場合においては、却て協同組合の方の御負担には過重にならない、こういうふうに只今のところ考えております次第であります。
  21. 木下源吾

    ○木下源吾君 それではお伺いしますが、この法案農業一般に対する農民生活改善とか、或いは実用的な農民の幸福のためにというので技術的に限定されておるようでもないけれども、併しながら提案理由説明によれば、技術方面に重点が置かれておるように見えるのであります。そこで今日の農業によるところの農民の幸福、或いは食糧増産等もいろいろ問題がある。それはもう御案内の通りであろうと思うのでありますが、土地改革のために一挙にして農民は商品生産という立場に置かれて参つておるのでありますが、この商品生産と同時に、又他面には供出という制約された制度があるのでありまして、この商品生産と供出というような相矛盾せる問題を解決するためには、又それを解決することなくしては、農民の幸福は増大しないし、増産もしないと、こう私は考えておるのでありますが、これを解決するためには、私はこれは論議の必要なく、要するに共同生産へ或いは共同経営にというような方向のみが、今後この矛盾を解決して、より農業の生産も増大し、農民の幸福も増すものなりと、こう考えておるのであります。果して然らば技術指導であろうと、何であろうと、かような線に副うての準備が整うておらなければいけないのではないか。そういう体制が整わなければいかんのではないか。根本的にいうならば土地改革をももう一歩進めなければいかんと私は思うのでありますが、現在の面だけにおいても土地のいわゆる分合等は当然これは施策として共同生産の面において行わなければならない。又共同生産の実を挙げんためには綜合的な農業を営むような体制を整えなければならない。例えば開墾に対しても從来のような單なる農業耕作者じやなくして、有畜、立体的な農業という方向が取られなければ共同生産ということの実は挙らんとこう考えるのであります。そこで技術指導と言いますけれども、政府は單に在來の小農的な、在來の零細農的な技術面のみを指導するということにこれは考えておられるのかどうか。それならばまあ別に問題はありませんけれども、本当農民の幸福、食糧増産、作物の増産考えるならば、私は今申上げるような方向こそが正しく認識されて、こういう法案が立案されなければならんと、こう考えるのであります。法案の中を見まするというと、連合軍の施策によつてというようなことが書いてありますので、これは我々この面から見れば一も二もなくこれは〇・Kなんですが、ただ政府は今日何か一つのものを示唆されるというと、その面にばかり跡を追つて、全体というものへさつぱり創意工夫を凝らすという努力がないのではないか、こういうように考えられるのであります。若しもそういうような努力がおありになるならば、眞にこの法案目的を達するために、農民の福祉、或いは食糧増産のために、現在のままの農民の態勢では、そういう態勢では到底次への段階発展することができないのだということは明瞭だと思うのであります。でありますから私のお尋ねしようとするのは只今申上げた内容からして、共同生産なり、或いは共同経営に、又今後の開拓等においても、そういう線において農業を進めて行くという條件を、この技術指導の外にそういうことを準備しておられるのかどうかと、いうことをお尋ねしたいのであります。で若しそれを準備しておるとするならば、その精神に基いてこの法案が作られたのかどうか、こういうことをお尋ねしたいのでありまして、勿論そういうお考えもあるでありましようけれども、現われた点だけにおいてはそういうところに対する努力と熱意が非常に欠けておるようだ。これは今日の農業一般問題に対する根本的な問題に対しても非常に理解がなさ過ぎるように考えられるので、この機会に一つあなた方の内部で御研究、或いはやろうとしておられる努力があるならばお示しを願いたい、かように考えるのであります。
  22. 平野善治郎

    政府委員平野善治郎君) 只今木下議員から御熱心なる御発言がございましたが、農家將來の仕方につきましていろいろお話を承わりました。日本農家只今の費地改革で小さい仕組にいたしまして、これを將來農業の立派な発達なり、或いは公共の福祉を増大することはできないのじやないかという御説明は御尤もだと思います。併しながら只今のところ土地の分合にいたしましても、或いは共同生産、共同施設、誠にこれは望ましいことでありまして、私共もかかることが速かに自発的なる意図の下に行われることを非常に希望して、その線に副うて指導は怠つておらないつもりであります。尚開墾の立体的なこと、有畜費業を入れよというようなことにつきましても、その線に副うて指導を進めておる次第であります。ただ政府といたしましてしつかりした……どういうような方法で、どういうふうにするかという、そういう規則を作つて進めておるかということになりますと、只今まだ十分とは申上げかねるような状態でありまするが、できるだけ私共は家の諸君が、木下さんの仰せになるようなことを自発的にいろいろ考える、或いはそういうふうに行くことを希望しまして、その線に副つて指導を怠らないつもりであります。尚本法案が決して今までのような小農、零細農になるようなことを基礎にして、その普及徹底を図るというような考えは毛頭ございませんことを御了承願いたいと思います。
  23. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) ちよつと申上げます。委員長としては大変恐縮でございますが、二時から始まつておる予定になつております予算委員会の方に速記を割愛することになつておりましたので、少し延びることになつておりますので、以後速記はございませんが、引続いて御審議を願いたいと思いますから、その点御了承を願いたいと存じます。速記は止めて下さい。    午後二時五十一分速記中止    —————・—————    午後三時二十四分速記開始
  24. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) それでは速記を始めて下さい。本日はこの程度にて散会いたします。    午後三時二十五分散会  出席者は左の通り    委員長     楠見 義男君    理事      羽生 三七君    委員            木下 源吾君            北村 一男君            柴田 政次君            平沼彌太郎君            小杉 繁安君            石川 準吉君            宇都宮 登君            岡村文四郎君            河井 彌八君            島村 軍次君            寺尾  博君            松村眞一郎君            山崎 恒雄君            池田 恒雄君   政府委員    農林政務次官  平野善治郎君    農林事務官    (農政局長)  山添 利作君