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1948-07-28 第2回国会 参議院 通信委員打合会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年七月二十八日(水曜日)    午前十時四十九分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○放送法案内閣送付)   —————————————
  2. 深水六郎

    委員長深水六郎君) それでは只今より通信委員会を開きます。前日に引続きまして質疑を継続いたします。
  3. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 逓信大臣がお見えになつておりますから、大臣に先ず御伺いしたいのでありますが、昨日の政府委員からの御説明で、大体概要が分つて來たのですが、この法律を施行いたしまして、放送事業運営をされて行く場合に、非常に重要な放送委員会につきまして二、三お伺いして置きたいと思うのであります。十一條にもありますが、「政党」という言葉を使つてありますが、今日まで政党というものはまだはつきりとしたものがどこの法律にも出ておりませんが、この政党というのはどういう意味にお考えになつておりますか、一應それをお伺いいたしたいと思います。
  4. 冨吉榮二

    國務大臣冨吉榮二君) 御案内のごとくまだ我が國では政党法決定を見ておりませんので、今ここでその法律的な解釈を申上げることは不可能でございますが、要するに常識的に考えた、偏跛なことをやる……中正公平を期するという意味をこの内容といたしまして、たまたま政党という問題を引例いたしたのでございまするから、要するにそういう一種政治的意見ということによつて行動する人といいますか、不偏的ならざるあれに属する人をできるだけ避けたい、できるだけでなく絶対避けたいという意味でここに「政党」と書いてあるのであります。
  5. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 御趣旨はその通りだと思うのですが、法律にこういう「政党」という字を使つてある以上は、或る程度範囲を明確にして置く必要があると思います。今大臣お話によると、結局これは社会通念決めるということになると思うのでありますが、それでも結構だと思いますが、これは他方政党だけでなしに、結局地方政党も勿論入る趣旨だと思いますが、それでよろしうございますか。
  6. 鳥居博

    政府委員鳥居博君) 今の大臣の御説明に附加させて頂きます。第十一條委員任命という條がございますが、この條で政党役員委員に就任できない、この第二項の第六号で規定しておりますが、この六号の但書に「役員範囲政令でこれを定める。」と書きました理由は今新谷委員からの御質問通りに、政党或いは政党役員というものにつきまして、明確な法律的規定が現在ございませんので、「政令でこれを定める。」といたした次第でございます。
  7. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 政府委員の御説明は少しおかしいように思うのですが、「役員範囲政令でこれを定める。」というのですが、「政党」というものの範囲政令でお決めになるような御趣旨でございますか。
  8. 冨吉榮二

    國務大臣冨吉榮二君) その点は勢い政党役員ということになりますと、この政党というものが決まつて來るというように考えるのでございますが、結局政党は現在の政事結社として考えられているものが通念として政党というようになるかと思いまするが、これも政党法というものがはつきりできれば別でございまするが、ただ党員だというだけを拘束しないというのでありまして、この役員というのは、政党それ自体責任を持ち得る人ということを意味するのでこの点は政令決めるのでありますが、政党という概念は地方政党もやはり私は包含されるものと解釈いたしております。
  9. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 今の御説明だと、政党というものを政令で或る程度決めなければならんようになつておりますが、それはこの條文から行きますと出て來ないので、若しそういう御趣旨だとすれば、役員範囲政令で定めるということにしなければならんじやないかと思いますが、その点は別といたしまして、私も一番初めに大臣のお述べになつたように、政党というものはこの前の政治資金規正法のときにもいろいろ問題になつて定義を書こうとしたのでありますが、定義が書けなかつた。やはり政党というものは社会通念決めるんだという考え方でもいいのではないかと思います。役員範囲だけを定めて、併しやはりいわゆる政党というものはこの國会でたびたび問題になつております各種法案でいわれておるのが政党であつて、特別のことを意味しておるんじやない、そういう趣旨考えてはどうかと私は思いますが、何れこれは……。
  10. 冨吉榮二

    國務大臣冨吉榮二君) 大体そのように考えております。
  11. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 それから放送委員のことでございますが、委員がどういう方面からどういうふうに選ばれるか、つまり委員会の構成というものは、將來の放送事業をよくするも悪くするも、これが非常に重大な問題であつて、むしろこの法律案の実際のポイントといつてもいいんじやないかと思います。第十一條によりますと、極めて漠然と「公共利益に関して公正な判断をすることができ、且つ、廣い経驗と卓越した識見を有する年齡三十五年以上の者のうちから、」云々ということになつておりまして、これは勿論こういう中から選ばなければならないんですが、この中にもいろいろのものがあると思うのです。放送事業というものが非常に廣汎分野を持つておりますし、又これを監督指導して行きます場合にも、いろいろな角度から監督指導して行かなければならんということを考えられるのであります。恐らく提案された政府としましては、この放送委員五人というものをどういう方面からどういう人を何人ぐらい選ぶかという構想をお持ちであると思います。その構想内容を承りますれば結構であります。若しこの構想相当固まつておるものであるならば、これはこの委員会に置きましても十分に審議檢討いたしました上で、場合によりましては十一條にそういう内容を持つたものを規定して行く、例えば文化人といいましても、文化人だけでこれを構成するということは却つて指導監督上よくないと私は考えるのであります。いろいろの分野から適当な方を五人選ぶというようにしなければならんと思つておるのでありまして、この点について先ず大臣からこの五人をどういう方面からどういうふうに選ぶのが適当であるかという御構想を承りたいと思います。
  12. 冨吉榮二

    國務大臣冨吉榮二君) 初めにお述べになりましたように、この放送委員任命は、極めて放送事業の遂行のために重要な役割を果しますので、これに関しましては我々といたしましても十分考えるべきことであり、又今後とてもこれを重大に取扱い、その人選を嚴にしなければならんと思うのでございます。そこでこの第十一條の第一項の只今御指摘の通りの、即ち委員は「公共利益に関して公正な判断をすることができ、且つ、廣い経驗と卓越した識見を有する」という、いわゆる積極的面規定をいたしておるのであります。更に同條の第二項には適格の條件、或いは第十三條には兼職を禁止するとか、或いは第十五條には退職に関することを書いてある。或いは第十六條には罷免の問題とかいうようなふうに、二つの積極面消極面との両面から委員任命條件を嚴重に規定いたしておるのであります。そうして又年齡三十五歳以上の者でありまするが、本委員任命に当りましては、その重要性に鑑みまして、両議院同意を求めるということを特に規定いたしたことも、それらの意味からでございまして、從いまして内閣総理大臣からこの委員選考、指名をいたしまして、両議会にその御賛成を求める提案をいたします。これに対しまして、若し異存があればこれを両院を否決いたすことができることになつて最後決定はつまり両院國会が持つている。こういう筋合でございまして、決していわゆる官僚独善に流れないということを謳つているのでございます。そこで政府においてこの委員任命いたしまするのには、どうしてもこの事業それ自体にも鑑みまして、放送行政が全國民に直接影響を及ぼすものでありますから、非常に重大に取扱わなければならないのでありますが、まあ科学、技術、或いは新聞、出版でありまするとが、商業、工業、農業、財政、教育、文化、宗教、労働婦人青少年等各種職業別年齢別、性別に属する全國民、階層の利益とその地区の利益を十分勘案いたすのでございますが、只今お述べのような、例えばどういう方面から、婦人から何人入れるとか、或いは労働関係、或いは文化團体からどうというようなことはむしろ考えない方が妥当だと、私共こう考えている。つまり普遍性を持つて、眞に自他ともにこの放送事業運営をやつて行くに足ると一般社会から認められる人ということに重きを置くべきでございまして、各界代表といつたようなことは当らないのではなかろうか。むしろ不適当だ。こういうふうに考えております。だから五人という意味も、何の方から何人、どの方からというようなふうの決め方は、この放送委員としてはよろしくない。すべてにいわば超然とした建前文化人といいますか、という人をお願いしたい。こういうふうな実は考え方を持つております。これはひとり私達だけが考えた問題でございませんで、英國等におきましても、それぞれの放送事業に関する文献等によりまして向うのやり方などを見ましてもこの專門知識を持つ者でなければならないという勧告案等を否定いたしまして、現在は專門的な知識よりもすべての点に通暁する普遍的な常識人格と見識とを有する、そうしてしかも至純至高建前で、眞に放送事業に專念し得る人、こういうようなふうのことを英國放送委員会等におきましても決定いたしておるようでございまして、これらの方向に我々はとつて参りまするので、差寄りこの委員をどういう方面からどう、或いは何團体を代表する者というようなふうの、職能團体的な考え方は、私共やめた方が妥当である、このように考えておる次第であります。
  13. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 大臣お話至極尤もでありまして、私もそういう意味でこれは委員というものは、利益代表とか、或いは職場代表のようなものでなければならないということを申上げてないのであります。併し大臣のお述べになつたように、個々委員が非常に立派な常識、立派な判断力も特ち、経驗も十分持つている。そうして放送事業に関する限り如何なる問題でもどういう種類の事柄でも、それを一應公正に、そうして間違いない判断ができるということが望ましすのでありますけれども、現実の問題としましては先程申上げましたように非常に廣い、文化方面のこともありましようし、又技術方面のこともありましようし、或いは國民の家庭というものとも結びつかなければならないというような面もありまするし、方法としては、或いは一種言論機関であるというような意味もありますし、これは一番廣い分野を持つているものというふうに考えられますので、現実の問題としては如何に我我そういうふうに、大臣のおつしやつたように希望いたしましても、個々の五人の人がそれぞれそれだけの高い常識経驗を持つた人を、五人とも選ぶのだと言いましても、これは不可能じやないかと思います。そういう意味で、五人の方が会議体として、これは処理されることになつております。会議体行政機関でありますから、会議体としてできるだけ今お話したように完全に近いものに持つて行くというのが委員の選定上非常に重要な問題ではないかと思うのです。又考慮すべき問題だと思います。でありますから勢い具体的な問題になりますと、例えば一般文化方面に特に造詣の深い方も選ばなければならないし、或いは場合によりましては婦人からも入れた方がいいだろうし、或いは言論報道方面からも入れた方がいいだろう。或いは場合によつて技術のよく分る方、特に報道関係技術のよく分る方が入つてつた方がいいというようなことも考えられるのでありまして、それをただ漠然とやつて見て、勿論結論としてはその組合せを考えて、最後に案を作つて國会にお出しになると思うのですが、その成行きが大体目に見えるように考えるものでありますから、只今のところどういうふうな構想でその委員会を構成しようとするのかということをお伺いしておるわけなのであります。大臣からこれ以上お答えを得られなければ、更に今申上げました点をお考えの上で、他日委員会のときに又お考え伺つてもよろしいのです。
  14. 冨吉榮二

    國務大臣冨吉榮二君) 新谷委員のお説は極めて御尤もであると思いますし、御尤もであるだけに、どうも実ははつきりしたことが言いかねる場合があると思うのです。それでまあ勿論十全の神というのはこれはなかなかいらつしやらないので、いろいろな点から多少非難といいますか、不満といいましようかがあることは、これは爭われないと思います。併し以上私が申上げたような案も、まだ実は私共これに対して白紙といいますか、いまこういうものによつて占められなければならないと我々が考えることでなしに、やはり非常に輿論を尊重しまして、大体十目の見るところ、十指の指さすところというところに委員が落着いて行くべきものであろう。この全貌が明かになり、國民にこの法案内容が理解されて來れば來る程、そういう方面からの意見もいろいろ活溌に出て來ますので、自らやはり決まるべきところに決まろう、御承知のようにこういう法案はとかく官僚が作りますのでございまして、又私共としてもまだ審議の最中でもありますし、ここで大体こういうふうなことを決めますこと自体が、この放送事業特質に鑑みまして私共の見解だけで、これを決めない方が却つていいのじやないか、併し大体の方向といたしましては、今申上げるような各界に対するできるだけ精通して、そうして最も円満な人格とクリーヤされた常識とを持つた方を推挙するというふうに、むしろ漠然と決めて置いた方がよき人物が得られるのじやなかろうか、このように考えておるのであります。例えばとかくの議論はございましても現在放送協会会長をやつておられる高野先生のような人が適当でないか。これはどちらからも御異論のないところで立派な会長と見られておる。今後こうした委員等に対しましては、そういう輿論というものが一つ方向決定して行くというふうに考えておる次第でございまして、大体新谷さんの主張せられる方向に行くのは行くのですけれども、ただそれをそういうふうな予めの線を決めることは、非常に困難であり、余り適当でないのじやなかろうかと、このように考えておりますので、さよう御了承願います。
  15. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 今の段階におきましては、まだそこまではつきりと一應の構想を伺うことは困難じやないかと思いますから、この程度にいたしますが、この通信委員会或いは文化委員会委員意向も、審議経過を通じまして段々明瞭に、具体的になつて参りますと思いますので、そういう意向を十分に参酌されまして案をお作りになつたらどうか。それから從來の各種委員で、両議院同意を得なければならんものにつきまして、場合によりまして非常に両院との連絡が不十分であつて両院の方では初めてそういうことを聞いた、どういう人か名前も全然知らなかつたというようなことで、多少審議の遅れたようなこともありますので、こういう放送委員につきましては國会の方で知らないような人を、國民が知つておる筈がないので、勿論有名人だけがいいのではありませんけれども、できるだけ國会の方と事前連絡をして円満にと言いますか、成るべく廣い目で以て立派な人を搜すというような意味におきまして十分な連絡を取ておやりになつて頂くのがいいのじやないかと思います。この点は特に大臣希望を申上げて置きます。  それからこの委員につきまして、第十三條に兼職禁止規定がございますが、放送委員職務権限は大体この法律案に明瞭になつておりまして、これを見ますと大体どういう仕事をするかということも分りますし、その忙しさの程度もほぼ想像ができるのであります。昨日の御説明によりまして定例の会議としては大体一週間に一回は少くとも集まるようにしたいというような政府希望もあるようであります。恐らく一回では済まないだろうと思いますけれども、併し兼職を、如何なる他の職務も禁止する程、この委員がすべて五人共常勤しなければならんかというと、そうでもないように考えられるのであります。この兼職禁止規定がありますと、折角非常に有能な方がありましても、その方に委員になつて貰うことができないような結果になると思うのであります。從つてこの法律の運用がすべて放送委員会承認或いは監督によりまして動かされておるのでありますから、まあ第一回の場合はちよつと問題でありますが、原則として放送委員会なら放送委員会承認をした場合には兼職をしてもよろしいのだ、併し放送委員会の方で、非常に忙しい本業を持つておる人を持つて來ても、それでは放送委員職務を行うことができないと思われる者はいけないけれども、まあ放送委員としてやつて行ける程度の、極く忙しくない職務を持つてつても、それまで全部辞めて來いということになると、勢い選考範囲が非常に狹くなつてよい人が得られないという結果になるのですが、これは絶対的に兼職を禁止しなければならんというお考えでしようか。この点多少考えを変えて、ゆとりを取つた方がいいように思いますが、如何でしようか。
  16. 冨吉榮二

    國務大臣冨吉榮二君) 今お述べのこと、極めてお尤もなことでありますが、実は政府といたしましても、この立案に対しましてはそういう心組みを持つてつたのでありますが、関係方面意向が非常に強かつたという工合になつておりますので、これらのことは委員会の御審議によつて決め願つて、絶対に反対するという考え方は持つておらんのであります。
  17. 深水六郎

    委員長深水六郎君) 速記を止めて。    〔速記中止
  18. 深水六郎

    委員長深水六郎君) 速記を始めて。
  19. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 私だけ質問しておりますので、成るべく簡單に大臣に対する質問だけを申上げます。この法律案を通じまして、日本放送協会という特殊の法人ができる。これは何と言つて日本放送事業の中核をなすものであると思います。從つて理事者等に対しては、相当監督規定もあり、又相当責任を負わしておる。場合によつては罰則まで規定しておるというような仕組みになつておりまして、一應結構だと思うのでありますが、放送協会のその他の一般職員はどういうふうな地位を持つておるのでありましようか。こういう特殊法人では、例えば現在沢山あります公團等におきましても、職員はやはり公務員並みになつておるのが多いのでありますが、理事でない一般職員が、勿論常識から言いますと、公務員と同じような程度國民に対する義務を持つておる、そういう地位にあるということは、常識的には考えられる。ところがこの法律案には、それに関する何らの規定がないのでございます。これにつきましては、むしろ公務員法全体の適用があるということになりますと、いろいろ差支えのある規定も中にはあるようでありますが、あれに準ずるような地位責任を持つておるというような意味をどこかに現わして置いた方がいいのではないかという氣がするのでありますが、その点は如何お考えでありましようか。
  20. 鳥居博

    政府委員鳥居博君) 大臣に代りまして、私から御答弁申上げます。  今度新らしく組織されます日本放送協会のような公共的機関、これの從業員というものは、國家公務員或いはそれに準ずる者、こう取扱われるのが原則でございます。この法案におきましても、最初そのような考えを持つてつたのでございますが、その後現実放送事業運営しておられます責任者並び從業員という方々の切実な声といたしまして、若しそういうような裃を着せられたときには、このような文化的事業経営ということは、能率を極めて落し、そうして完全な経営というものについての自信を失う、こういう強い御意見がございまして、我々といたしましても、一應尤もと考えられる点もございます。そして尚この法案の第九十一條を御覽になりますと、協会役員につきまして、刑法と同樣に涜職罪規定いたしておりますが、凡そ協会從業員賄路を取り、或いはその他の行爲行なつたときには、協会がさような行爲をしたという立場から、協会役員が全責任を負つても差支えないから、從業員に法規を以てそういう裃を着せるということは、是非止めて貰いたい。それは放送事業という文化的事業特質に基くものだからという極めて切実なお話がありまして、我々もそれを諒といたしまして、この法案では、九十一條規定しましたように、協会役員だけに公務員に準ずる規定を入れまして、一般從業員にはこれを規定いたさなかつた次第でございます。
  21. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 経過は分りましたが、どうも御説明内容がまだ納得できないのでありまして、この法律案によると、日本放送協会は、法律によつて他に見られない相当大きな特権を持つております。こういう特権を持つてつて國民にサービスをするのでありますが、この特権の半面には、やはりそれに應じたような当然國民に対する義務というものがなければならないのであります。その点におきましては、他の公團におけるよりも尚一層、國民に対して、役員は勿論、職員方々義務を感じておらなければならない筋合だと考えるのであります。新聞なんかは、一般の会社でありまして、こういう特権は持つておらないのであります。そういう点は多少似た点もありますけれども、建前として根本的に相違があるわけであります。これについては、只今の御説明では、私まだ納得するまでには行かないのでありますが、今申上げましたような趣旨で、更に他の委員方々の御意見にもよりまして、今後もう少し檢討して見たいと思いますが、政府に置かれましても、その点に関して、更に決定までにはもう少し突き進んだ御檢討を希望する次第でございます。それから最後にもう一つ、この機会に伺つて置きたいと思いますのは、昨日も私から政府委員の方に質問をしたのでありましたが、日本放送協会聽取料の問題でございます。これにつきましては、技術的な、或いは理論的なことは止めにいたしまして、結論だけお伺いいたしますが、日本放送協会仕事は、相当に全般に亘つて公益的なものであり、國民に取つても、これは文化國家を建てます上に非常に大きな貢献をするものでありますから、他に見られないような聽取料というようなものを取りますことも止むを得ないかと思うのです。若し國家財政が許すならば、國からこういうふうな聽取料に代るべきものを出して然るべきだと思う。併し内容を段々檢討して参りますと、その聽取料というような性質で國民から徴收する金で以て賄つて行かなければならん使途といいますか、その金を使用する目的というものは、おのずから限定されて來ると思うのであります。本來日本放送協会が非常に公益的な目的を持つておるのであるから、放送協会の行う仕事であれば何でも聽取料賄つていいかということになると、それであつてはいけないのではないかと考えるのであります。方送協会の行つておりますいろいろの仕事、或いは今後行わんとするいろいろな仕事もございましようが、大体予想できるのでありまして、その中で特に公益的なものであり、これは日本放送協会をしてやらしめないと一般にはやれないというようなもので、今申上げたように、國民に非常に好い影響のあるというような事業は、これはどうしても聽取料賄つて行くことが、この際は必要でありましようから、それはよいのでありますが、それ以外のものにつきましては聽取料を以て賄うべきではないと、つまり聽取料を以て賄うべき費途の範囲を法令で以て限定して行くというようなことにつきましては、立案の当切お考えにならなかつたのでしようか、その点を伺いたい。又今後、今申上げましたような意見に対しまして、大臣としてどういうふうに処置をして行かれますか、その点のお考え伺つて置きたいと思います。
  22. 冨吉榮二

    國務大臣冨吉榮二君) 御承知通り、この放送事業は、全く公共性があるし、而も公益的な事業でございまするので、これは営利目的としてならないということは第二十五條はつきり謳つてございます。二項に、「協会は、前項の事務を行うに当つては、営利目的としてはならない。」ということをはつきり掲げておりますし、三項には、「協会の剩余金その他の收入は、すべて本條第一項に掲げる事務遂行のために用いなければならない。」こういうふうに謳つてありますので、今御意見のことは、この委員会で嚴重に取締られて行くものと理解いたして、御意見全く同感であります。
  23. 井上なつゑ

    ○井上なつゑ君 現在の社團法人日本放送協会から今度できます日本放送協会に引継ぎするときでございますが、現在ございます資産が引継がけるのでございましようか、負債は引継がれるのでございましようか、若し負債がある場合にはこの放送債券を以て賄われるようになるのでございましようか、その点を一つ伺いたいと思います。
  24. 鳥居博

    政府委員鳥居博君) 只今の御質問は、現在の社團法人日本放送協会を如何にして新らしい日本放送協会に引継ぐか、こういうことでございますが、これにつきましては、この附則に規定を設けまして、百二条に書いてございますが、今の日本放送協会の資産も負債も両方全部を新らしい協会に引継ぐわけでございます。從いまして、今放送協会が持つております積極財産であります放送局の設備でございますとか、一切の資産、そういうものを全部新らしい協会に引継ぎます。それと同時に、その見返りになつております消極資産であります借金でございます。これは大分大きいのでございまして、数千万円の借入金、その他一時預り金でございますとか、又は保証金として預つておるもの、こういういろいろな負債がございますが、これも全部新らしい協会に引継ぐわけでございます。それと同時に從業員も全郡引継ぐ、こういう形でありまして、ただ引継ぎませんのは一つだけございまして、それは、現在の社團法人の社團を廃止いたしますために、今社團法人としてその会員が何分の金を出資しております、この出資の金だけを会員にお返ししまして、あとの残りは全部一つも手を付けずにそのまま新らしい協会に行くことになります。従つて社團法人日本放送協会は、清算事務というものが全然要らない、こういう形に相成ります。
  25. 井上なつゑ

    ○井上なつゑ君 それでは、今度の十五億円の放送債券でございますが、あれは放送設備に使うということにここに書いてございますけれども、この放組事業に発展させる上に、放送設備と申しましようか、私の考えますのは、汽車の中だとか、電車の中だとか、それから公園だとか、この頃一部停車場だとか公園だとか人の集る所には設備してある所がございますが、況してあちらの人が自動車の中まで受信機を持つておられますが、汽車や電車やバスの中まで放送協会で受信機の設備をなさるようなお考えはございませんでしようか。
  26. 鳥居博

    政府委員鳥居博君) 只今お話は、放送の受信を普及させるためにどのように費用を使うか、こういう御質問と承わりましたのでございますが、これは原則といたしましては、この法律建前といたしましては、日本放送協会経営方針に委ねておるわけでございまして、政府といたしまして、特にそういう施設をしろとこういう命令を出すような考えは、この法案では持つておりませんのでございます。併し、若しそういう施設が今の日本の國情からいたしまして必要だという世論が強くなれば、これは放送委員会としても、新らしい日本放送協会に適当な勧告をいたしまして、そういう処置を取るように勧めることはできます。併し、これを命令するということは、只今のところ考えておりません。法案に挙げましたいわゆる十五億円の社債というものは、大体そういう受信の設備をして放送というものを普及させる費用というよりは、むしろ電波を出す方の設備の費用、この方を主として考えておりまして、この十五億余円を考えましたときには、只今お話のありましたような設備に要する費用というものは考慮いたしておりません。
  27. 深水六郎

    委員長深水六郎君) 外に御質疑の方ありませんか……新谷委員からいろいろ大きい問題について御質問がありましたので、この点は一應私も差控えますけれども、この法案で不偏不党ということを謳つておりますが、委員の数が五人、そうすると過半数であれば三人でもよいということになりますが、そうすると三人の場合、二人は同一政党に属してもよいと、実際問題としてそういうことが起るかどうか分りませんけれども、そういうことも考え得るわけですね。そういうことに対して、折角設けられた規定ですから、できないようにするというようなお考えはないのですか。
  28. 鳥居博

    政府委員鳥居博君) 只今委員長の御質問は、御尤もな点でございまして、私共もその点には非常に注意して研究いたしたのでございますが、先ず委員の定足数を三名といたしまして、この多数決によつて決ります場合には、二名でも決り得る、こういう状態が起り得る可能性はあるのでございます。從いまして、今仰せのように、この法案では、同一政党から二名までは許されておりますので、たまたま委員の出席の悪いときに重要案件を処理して、或る立場の者の意思で以て、これを決定してしまつたということが起りはしないかと、こういう疑念も出まして、我々もそれを考えましたのでございますが、これを防ぎますためには、非常に委員の数を殖しまして、尚且つ、同一政党、或いは同一色彩を持つ方の人数というものを制限いたさなければならなくなりまして、このようにして参りますと委員会の構成というものは極めて困難になるのでございます。從いましてこの法案では只今のようなことが起り得ることを予想いたしまして、その予防手段をこの法案規定いたしました。凡そ放送委員会決定、或いは処分というものにつきましてこれが独断である、或いは十分な根拠によつておらない、或いは間違つておると考えられます場合には、その再審理の要求をできるようにいたしまして、たとえ一党一派が偶然の機会にチヤンスを得まして、独断的な行爲行なつたといたしましても、その結果を直ちに救済し得る規定を第五章に作りまして、そうして世論によつてそういうことを救済し得るように構成いたしましたのが本法案でございます。
  29. 深水六郎

    委員長深水六郎君) それから委員長や副委員長ですが、これは総理大臣任命になつておりましたですね。こういうのは折角委員会というのができておるのですから、互選というわけには行かんですか、どつちがよろしいかということですが、お考え伺つて見たいと思います。
  30. 鳥居博

    政府委員鳥居博君) 只今委員長の御質問でございますが、本法案では、この委員会行政機関であるという建前を堅持いたしておるのであります。その建前上、この委員会の所轄権を内閣総理大臣に帰属さしておるわけでございますが、内閣総理大臣がこの委員会に対して持つ権限はただ二つしかございません。一つ委員任命と、一つ委員の罷免又は彈劾の手続を取るということでございまして、凡そこれが行政機関である以上は内閣総理大臣として最少限この程度の権限は保持しておる必要があると考えられたわけでございます。  もう一つ委員長と副委員長の選定でございますが、これはこのような会議制の官廳に置きましては、委員長の立場というものは非常にむづかしく、又委員長の立場を中心としていろいろ委員の選孝も行なわれるかと思われますので、一般官吏というものの任命権は一應内閣にあるという建前から、委員長、副委員長の選任もこれは内閣総理大臣の権限に持つて参りまして、互選という制度を止めまして、これが諮問委員会のような性格の委員会でございますと、互選が最もよいと考えられるのでございますが、飽くまでも行政機関という建前から内閣総理大臣がこれを任命するというように考えた次第でございます。
  31. 深水六郎

    委員長深水六郎君) もう一つ政府委員の方に、これは非常に細かい問題かも知れませんけれども、二十一條の場合は、過半数がなければ成立しない、それから七十五條の場合は、委員長が決するということになつておるのでありますが、この前いろいろ御説明のときに二重投票という言葉がありましたが、そうすると七十五條の場合は委員長は二票持つているように解釈してよろしうございますか。
  32. 鳥居博

    政府委員鳥居博君) 只今質問通りに、七十五條の場合には委員長一般委員としてのヴオート、それからそれを含めて可否同数の場合は委員長としての決裁権を持ち、結果において二重投票権を持つ、こういう建前を採つております。  それから、二十一條の場合に、委員長に二重投票権を認めませんで、飽くまでも委員長は投票権が一つである。こういたしましてこれをはつきりいたさせます。本日までの委員会行政につきましていろいろ委員会が現在できておりますが、この点は今までの立法上非常に不明確でございまして、可否同数の場合は委員長がこれを決する。この書きました場合に、或る委員会では委員長一般委員と異なるように規定してございます。例えば委員会の構成は委員長及び委員を以て組織する、こう書かれておりますような場合に、委員長一般の投票権はなく最後の決裁権だけがあるのだ、こういう解釈が成り立つわけでございます。それから又或る委員会につきましては、委員長はやはり委員であつて、そして委員長職務を行なうのだ、こういう性質の規定として置きながら、尚且つ可否同数の場合は委員長がこれを決する。こう書いてございますと、これは法規の建前委員長は二重投票軽を持つという解釈が成立するわけでございます。この点やや日本行政機関、在いは審議機関の委員会の議事規則に多少の差がございます。この法案ではこの点に將來質疑が起りませんし、二十一條の場合と、只今お話のありました七十五條の場合とをはつきり区別して規定いたしまして、委員長の投票権というものを明らかにした次第でございます。
  33. 深水六郎

    委員長深水六郎君) 國会委員会なんかは大体七十五條のように出席委員の過半数を以て決し、可否同数の場合は委員長の決するところによるというのには、委員長には二重投票権はないのです。この場合は御説明のようにそういうふうに解釈してよろしうございますか。
  34. 鳥居博

    政府委員鳥居博君) そう解釈して頂きたいと思います。
  35. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 少し細かい問題ですから大臣からの御答弁でなくても結構でございますが、昨日も御説明を聞きますと、一般放送局の方は大体この法律なり、或いはこの法律の下にできる放送委員会の規則というようなものによりまして、免許の基準ができるというお話でございますが、大体法令によつて免許の基準ができるということは、結局いわゆる自由裁量ではなくて法規裁量の免許行爲になるんではないかと思うのであります。併し昨日の御説明によりますと、例えば電波の割当、周波数の割当のごときものにつきましては、説明が多少曖昧な点があつたのでありますが、そういう法規裁量の行爲でこの基準を法令に掲げるという場合には、現在ところどういう電波が具体的に使用できるか、一般放送局として使用できるかというようなことは、勿論公示すべきだろうと思いますが、その点は公示されるものと考えてよろしいでしようか。
  36. 鳥居博

    政府委員鳥居博君) 只今の御質問につきまして御回答申上げます。この法案只今御説のように、委員会の自由裁量により許認可ということは否定しております。全部法規裁量ということに相成つておりまして、五十六條の第四号が如何にも自由裁量のような形に見えますので、只今の御質問があつたことと存じますが、電波の管理といいますものが、御承知のように國際條約によつて決められておりまして、日本政府或いは逓信省というようなところで自由な裁量はいたし難いようにすでになつておる次第でございます。電報の管理或いは割当そのものがすでに法規裁量という形になつております。從つて放送につきましても國際條約によりまして、例えば標準の波長帶では先般も御説明申上げました通りに、これこれの波長を使う、それから短波の波長帶では放送にはこれこれの波長帶を使う、それから超短波の波長帶は放送にはこれこれと、はつきり決まつております。又超短波におきましては、同じ放送の中でも、例えばこの範囲はテレビジヨンに使う、この範囲はF・Mの放送に使うというふうに決められております。又混信をしないために一つ一つの波長の割当の間の幅、例えばAという局の波長と、その直ぐ近接する波長を持つBという局の使うべき波長のその差は、やはり少なくともこれだけは離れなければいけないというような取決めができておりますので、自然にそこに放送に使い得る波長というものは決まつて來るわけでございます。現在日本ではこれを一覧表にして発表するというような手続が取られておりませんが、アメリカにおきましてはこれを全部一覧表にいたしまして、その中のどれとどれというふうに番号が全部つけてございます。その番号の中どれとどれは現在どこが使つておる。どれとどれは現在空いておるということを毎年リストにして公表いたしております。このたび若し放送法が成立いたしまして、これにつきまして放送委員会が設立されましたような暁には、このアメリカの採つておりますと同樣の方法でこれを明らかに公衆に明示いたしまして、この点でも法規裁量であるということを明確にいたしたいと考えております。
  37. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 その問題は非常に重要な問題でありまして、実際上も一般放送局の免許申請をされる向におきましても、準備期間に相当の人手も要り、経費も要ると思います。免許申請を出したところが、電波の管理の関係で実際に電波がないということになりましてもいけないのでありまして、当然これは昨日申上げたように資材、資金の問題もありますけれども、致命的な電波の問題につきましては、この周波数は使つてもいいんだということを明示されました上で免許申請人が計画を立て得るようにしてやることが最も適当だと思いますので、今言明されました通りに、是非これは逓信省におきましては実行して頂きたいと思うのであります。  それから五十五條に関係しまして、これは若しできれば大臣からでも御答弁を願いたいと思いますが、五十五條規定によりますと、外國資本や外國人の一般放送に対する関與について相解の制限がございます。これは成る程昨日お話のような一應御尤もではありますけれども、五号によりますと「役員の三分の一」、「議決権の五分の一」ということになつております。議決権というのは、恐らく言い換えれば資本構成の問題であろうと思います。この資本構成に関しまして、一般放送局というようなものはどういう形として出て來るだろうかというようなことを考えました場合に、何しろ現在の日本の状態から見ますると、一般放送局を作られます場合に、資材方面とか或いはいろいろな機器類につきまして、或る場合には相当外國の援助を仰いだ方がいい、又仰がなければでき上りにくいというような問題が考えられるのであります。これも過半数になると、昨日政府からのお話のように困る問題も起つて來ると思いますが、「五分の一」というふうに特別に資本構成を制限されたのは何か特別に意味があります。何か資本構成については緩和して置いた方が一般放送局を実現する場合にやりいいんじやないかという氣がするのでございますが、如何でございましようか。
  38. 鳥居博

    政府委員鳥居博君) 只今五十五條の外國勢力の排除に関する規定についてでございますが、只今の御質問は非常に我々としても考えますとむずかしい点なんでございますが、從來の考えから申しますと、日本の商法では十分の一以上の株を所有しておる者に特権が認められておるわけでございます。從いまして十分の一以上の株式を持つ者は、その企業に対しての非常な特権者である、相当の支配力を持つ株主である、こう考えられるわけであります。旧來の立場か申しますれば十分の一以上を禁止しておる、そうして発言権を仰せておる、こういうことも考えられるのでありますが、只今のような日本の國情におきましては、これは余り酷ではないかという建前から、これを「五分の一」に緩和したつもりであります。而もここに書きましたのは特に「議決権」と書きまして、資本構成と特にしなかつた点は、將來の議決権を伴なわない出資の方法、こういうものもあり得るんではないか、又そういう点も利用できるのではないかということを考えまして、特に株式という、そういう用語を避けまして、「議決権」という用語を用いました。これがまだ酷ではないか、もう少し緩和してもいいではないかというお考えもあるかと思うのでありますが、これは又國会で十分に御審議頂きたいと存ずるわけであります。それから「役員の三分の一」ですが、これも半分まではよくはないかという考えも成り立ち得るのでございますが、少なくとも五十五條規定は、放送というものを日本國民の手で行なつて、我々の手で日本文化というものを拡げて行く。そうして日本文化というものを今後確立して行こうという建前でございますので、この放送のような大事な事務に第一号、第二号、第三号に掲げるような方が過半数に近い勢力を持たれるということは重大な影響が参りまして、結局第一号、第二号に掲げた目的を達成し得ないようなことに相成ると考えましたので、これを「三分の一」という制限をつけた次第でございます。
  39. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 この問題につきましては理屈の問題もありましよう。從來これのいろいろな法令に現われております精神も勿論参酌しなければならんと思いますけれども、放送事業というものから見ましての、殊に現在の日本放送事業という点から見ましてのいろいろの時別の考慮も必要かと思いますので、私も尚檢討して見ますが、政府におかれましてもこの点更に御檢討を頂きまして、次の機会に又御意見を伺いたいと存じます。  序にこれは字句の問題かと思いますが、相当大事な問題であると思いますので、この機会に伺つて置きたいのは、四條に「公安を害する」という言葉を使つてございます。それに対して罰則の方で八十八條では「風俗を害する」放送に対しては罰則の規定がある、これは多分裏表の規定だろうと思うのですが、この公安を害するという言葉は、他の法令にも前例がありますので、單に風俗を害するという意味だけでなく、もつと廣い意味だろうと思うのであります。風俗を害さない、他の公安を害する行爲に対しては、何故罰則をお附けにならなかつたのか、そういうことはあり得ないというお考えでありましようか。これは裏表の規定として規定の不備ではないかと思うのでありますが、御意見如何でしようか。
  40. 鳥居博

    政府委員鳥居博君) 第四條の第二項は公安を害する者を含まない、こう申しましたのは、第四條そのものはニユース記事の眞実性を守らせるという一つの道義規定でございまして、公安という廣い用語を使いましても解釈にそう大きな支障は來たさないと思うのです。併しこの罰則に持つて來まして、公安を害した場合には云々といたしますと、この公安というものの解釈に伴ないまして、これは非常に大きな問題が起ると思うのですが、公安とは何かということを、現在この放送法で決めますということは、おかしなわけでありまして、何か法安を維持するのは、こうだという昔の治安維持法のような法律でもございますれば、公安の概念は極めて明確に相成りますが、現在日本に置きましては、そのような意味での公安を規定した法規は存在しないのであります。從いまして罰則におきましては、概念の明確な風俗壞乱だけに限定いたしました。
  41. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 私の今の御説明はおかしいと思うのでありますが、大野委員のような法律家がおられるので、大野委員から御意見伺つてもよろしいのでありますが、八十八條の第一項の「日本國憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壞することを主張する放送をした者は」は云々、ということは、公安を害する放送の一部を、これは例示したものだと思うのであります。これは全部でないと思うのであります。風俗壞乱ということも公安を害する一部だろうと思うのであります。こういうふうに或るものを規定し、或るものを規定しないということになりますと、罰則関係では政府を暴力で破壞する放送をしたものと、風俗壞乱の放送をしたものと、この両方が罰せられるのであります。あなたの言われるように成る程道義的にはニユース記事の放送については公安を害するということはいけない、こういうことで一應縛られるという感じがしますけれども、それはどこまでも道義であつて法律建前としていけない場合には、処罰を以て臨むということが法律体系としてはいいのではないか、特に会社秩序を破壞するとか、公安を害するとかというような非常に大きな社会に対して弊害を伴なうものは、やはり罰則で明確に規定して置いた方がいいのじやないか、成る程公安を害するという言葉は非常に廣い言葉ですから、どんなものが包含されるか分らんと思います。これは場合によりまして、裁判所の解釈によつて、裁判所の権限でそれを裁判して行くということも考えられますが、この点は法規的に見ますと、どうもこの点は不備じやないかという氣がするのですが、何かこれについてもう少し御説明を願えないでしようか。
  42. 大野幸一

    ○大野幸一君 その点について、私ちよつと関連して序いでに御質問いたします。公安を害かるという観念ですが、今政府委員の御説明によると、治安警察法にあるような場合には、公安を害する場合の観念が明らかでありますが、今日では公安を害するというのは、漠として適しないというお話でありますが、これは天皇主権説があつたときの頭の観念であつて、天皇主権説の頃には公安を害するという観念は、治安警察法で直ぐ頭に來た訳です。それは今どういう國家であるかという御認識がまだ足りないのじやないか。それは國民主権に移つたいわゆる民主主義國家というものに、國体が変革されたのであるから、民主國家から見るところの観念から、公安に害があるかどうかは、一目瞭然であるのでありますから、私も前委員の申されましたように、これこそ最も大切である、風俗を壞乱するというようなものは極く少部分である、併しながら民主國家が覆されるような場合もあり得ることであるから、公安を害するということについても処罰しなければならないということも、私も附言して一つ申上げて置きたいと思います。以上関連して……。
  43. 深水六郎

    委員長深水六郎君) ちよつと速記を止めて……。    〔速記中止
  44. 深水六郎

    委員長深水六郎君) 速記を始めて下さい。
  45. 鳥居博

    政府委員鳥居博君) この公安問題でございますが、第四條の規定と、それから第八十八條の罰則とここで少し趣旨の違う点がございますので、これを立案者として申上げます。それは第四條ではニユース報道というものを規定しているのでございまして、放送全般を規定しておらないのでございます。凡そ放送の内容にはいわゆるできた事実を報道するということと、意見をいうこととこの二つがございまして、意見と事実の報道ということは、全然異なつたことと私共は考えております。第四條では報道というものは、飽くまでも事実を傳えるとこである。從つて眞実でなければいけない。それと同時に公安を害するようなものであつては困る。こうはつきり規定いたしたのでございますが、今度は意見の表明ということにつきましては、日本國憲法の建前に基きまして言論の自由ということを、飽くまでも尊重するという建前を取つております。從いまして言論の自由の結果、公安を害するというようなことが起つて、そうして日本の今度の憲法に基きまして作られておる社会秩序というものを乱す、こういうことが起りましてはこれは一大事なんでございまして、そのために八十八條の罰則を加えまして、言論の自由は禁圧しないが、このような言論をなした者は処罰されるということを明らかにして、八十八條の第一項で先ず日本國憲法を破壊するような言論をなした者は処罰する。次に日本國憲法に基いて成立しておる正当な政府を暴力で破壊するようなことを主張する放送をした者は、これは処罰する。それから風俗を害するような事項を放送した者は処罰する。この両面におきまして、只今立案者は新らしい民主主義の理念を理解しておらないという御批判もございましたが、私共はそうは考えませんので、言論の自由というものを尊重しながら、尚且つ民主主義國家の成立の基礎であるところの諸條件は守つて行くのだ。こういう立場を取つたつもりでおりますので、附加して説明させて頂きます。
  46. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 御意見を伺つたのですが、これは私の聞き方が悪かつたか知れませんが、法律的には少し違うところがあるのじやないか、と言うのはニユースの放送でありましても、やはり風俗を害する事項の放送はいけない、又政府を暴力で破壊することを主張する、こういう人がこういうことを言つておりましたというニユースの放送でも、それが公安を害するものはいけない、こういうことだろうと思うのであります。第四條に規定しておるところと、第八十八條に規定しておるところと、食い違いがあります。併しそれは重なつておるところが勿論あるのでありまして、罰則の点から言いますと八十八條の方が、ニユースはとにかくとして、放送全般についての罰則だろうと思うのでありますが、少くともニユースに関しては表面から第四條の規定があるわけですから、その点について公安を害していけないということを言つて置きながら、ニユースに関しては風俗壊乱と暴力破壊と、この二つだけを挙げておるのを見ましても、これは法律的に足りないところがあるのじやないかと思います。これが單に八十八條はニユース以外の一般言論である、意見の発表に対する罰則であるというふうにお考えになるということは、法律解釈としておかしいのじやないかと、私は考えるのであります。從つてこの問題につきましては、先程大臣からもいろいろお話がありましたが、更に委員会としましても檢討を加えることにして、質問はこの程度にしますが、序でに、一分間で終りますから、八條の関係で、内閣総理大臣の所轄ということが謳つてありますが、それと第二項で、独立して権限を行うということがあるのですが、御説明によると、内閣総理大臣の所轄ということは、ただ面倒を見て貰うということのように御説明なつたように記憶しておるのであります。面倒を見て貰うということは、平たい言葉で言えばそういうことになるのですが、行政官廳としては一体どういうことになるのでありますか。やはり内閣総理大臣は、國会に対しましても、放送委員会に関する事項については責任大臣である。放送委員会國務大臣從つて内閣というものを通さないで、特に放送委員会そのものが責任を負うというようなことは、今日の内閣制度を以てしては考えられないのではないかと思う。それについては、御説明が多少不備な点があつたように思いますので、補足して御説明願いたいと思います。もう一つは、申すまでもなく明らかでありますが、第二國会を通過しました國家行政組織法によつて、事務局等の行政機関におきましては、局部の設置は法律で書かなければならないということになつております。これは前の提案でありますから、事務局については何らそういう規定がない。これはどうせ國家行政組織法の規定從つて修正をしなければならないと思うのですが、昨日のお話では、総務部、放送部、技術部の三部を置きたいというような御意見があつたのですが、これも次の機会に局部の関係事項を資料として出して頂きたい。
  47. 鳥居博

    政府委員鳥居博君) 只今新谷委員から御質問ございました、総理大臣の所轄権につきまして御答弁申上げます。それから第二のお話につきましては、至急に資料を取揃えまして御提出いたします。およそ今度の日本の憲法に基きましては、行政権は飽くまでも内閣に包括的にございますので、この放送委員会が独立してその権限を行うと、こう書きましても、これは、ここに規定されました権限につきまして法律によつて包括的委任を行われたに過ぎないのでありまして、國会に対しましては、内閣総理大臣責任者となります。併し、放送委員会が行いました一つ一つの処分につきまして、内閣総理大臣はその直接の責任は負わないのであります。併しながら、委員会監督するという立場から、委員会に対して何分の処置をとる、こういう責任はあるわけでございまして、國会に対しまして、飽くまでも内閣総理大臣委員会を代表いたしまして、その当面の責任者と相成ります。
  48. 大島定吉

    ○大島定吉君 一つ簡單に御質問いたしたいと思います。  大体新谷さんから詳細御質問がありましたので、別に質疑することもありませんが、ただ雜則の審議会の問題ですが、審議会は五年のうちに必要があればこれを設置するというようなことになつておりますが、その必要というのは、委員会のやり方において政府が必要と認めてこれを設置するように解釈もできるのですが、どういつた意味でこの審議会ができるのですか、説明して頂きたいと思います。
  49. 鳥居博

    政府委員鳥居博君) 第九十九條の趣旨に、これは内閣総理大臣審議会を設置し招集する規定でございます。そういたしまして、必要があればでなくて、五年以内には行わなければならないのでございまして、若し必要があればそれよりも短い期間に適当にこの法案を檢討しますためにこういう審議会を招集できると、こういうふうに規定しておるわけでございます。
  50. 大島定吉

    ○大島定吉君 五年以内と決めたのは、どういう意味なんですか。
  51. 鳥居博

    政府委員鳥居博君) この五年といたしましたのは、現在日本の社会情勢というものは急激に変つて参りますので、現在最も理想的と考えまして作りましたこの法案も、近い將來に或いは再檢討を要するのではないかという考えから、最初は十年と考えたのでございますが、十年は今の日本の國情から見て多少長過ぎる嫌いがある、外の條項にもございますように、一應放送局の許可期限も五年としておりますのでこういうものに平仄を合せまして、一應五年くらい経ちますと、民間放送局もそろそろ出揃つて、そうして新らしい日本放送協会仕事も軌道に乘つて行くと、こういう時期の到達するので、その時期にもう一度この法案を見直すと、このままで進むか、或いは又想を新たにするかということを國民の立場から考え直す、こういう考えでございます。
  52. 深水六郎

    委員長深水六郎君) それでは、時間も大分過ぎたようですから、質疑はこの次の機会に讓ることにいたしまして、委員会は一應散会いたします。    午後零時二十七分散会  出席者は左の通り。    委員長     深水 六郎君    理事      千葉  信君    委員            大野 幸一君            大島 定吉君            井上なつゑ君            新谷寅三郎君   國務大臣    逓 信 大 臣 冨吉 榮二君   政府委員    逓信事務官    (臨時法令審査    委員会主査)  鳥居  博君