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1948-07-27 第2回国会 参議院 通信委員打合会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年七月二十七日(火曜日)    午前十一時零分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○放送法案内閣提出)   —————————————
  2. 深水六郎

    委員長深水六郎君) それでは只今から通信委員会を開きます。本日は放送法案について政府側から逐條的に簡單明瞭に御説明を願いたいと思います。
  3. 鳥居博

    政府委員鳥居博君) 昨日に引続きまして、日本放送法案の各條につきまして簡單に御説明申上げます。  各條に入ります前に目次というところを御覽頂きますと、放送法案は七章並びに附則に分れております。第一章におきましては、総則といたしまして放送そのもの在り方というものを規定いたしました。第二章におきましては、そういう放送在り方をこの法律で決めたにつきまして、これを如何に行政して行くかという行政の仕方並びに行政を司る機構というものを規定いたしました。第三章におきましては、放送の一番大きな部面を担当いたします公共放送在り方並びにその企業担当者組織、そういうものを規定いたしました。第四章におきましては、その外にこの度認めることになりました一般放送、いわゆる公共放送以外の放送、こういうものの企業在り方、それからそれに関するいろいろな手続というものを規定いたしました。第五章には、この法律で割合に近來ない特殊なものでございますが、最近の立法例ではこういう傾向が段々強くなつて來ておりますが、行政処理につきまして行政担当者独断を排除いたしますために種々審理規程というものを規定いたしました。そうして第六章の罰則、それから第七章は雜則、こういうふうになつております。  それでは第一章の総則から御説明申上げます。第一條條文をお読みいたします。
  4. 莊宏

    説明員(莊宏君) 「(この法律目的)第一條この法律は、左に掲げる原則從つて放送公共の利便、利益又は必要に合致するように規律するとともに、その自由を保障し、その健全な発達を図ることを目的とする。一放送が、情報及び教育の手段並びに國民文化の媒体として、國民に最大の効用と副利とをもたらすことを保障すること。二放送を自由な表現の場として、その不偏不党眞実及び自律を保障すること。三放送に携わる者の國民に対する直接の職責を明らかにすることによつて放送が健全な民主主義に奉仕し、且つ、それを育成するようにすること。」
  5. 鳥居博

    政府委員鳥居博君) この第一條日本におきまして放送が如何にあるべきかという大原則を掲げたものでございまして、一つ一つ放送局、或いは何と申しますか、放送行政、こういう一つ一つを縛るのでなくして放送全体がこうあるようにするのが國策であるということを規定いたしまして三つの原則を掲げております。第一は、放送公共のために盡すものであるということでございます。そうしてその次には、放送における自由並びに自由に関連する不備不党、眞実ということを規定いたしました。第三番目には、放送公共事業であることに伴なうところの放送に携わる一切の職員の職責というものを明らかにして、そうしてこういう三原則を徹底的によく現わして行こうというのが以後百條に堀る各條文内容をなすものでございます。
  6. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 どうです、條文のところは省略していいじやないですか。
  7. 鳥居博

    政府委員鳥居博君) では省略させて頂きます。  第二條に参りましては、放送というものは御承知のように相当技術を使いますので、今後放送委員会の規則その他で非常に技術の要が出て参ります。それを明らかにして置きますために、第二條に「(定義)」というものを掲げまして、今後の用語を明確にいたしました。この定義で一番はつきりさせました点は、放送とは何を言うかということでございますが、第一号に掲げましたように、「放送」とは電氣通信の送信及び受信からなるものでございまして、この定義から申しますと、例えば選挙演説のときに、普通マイクロフオンを置きましてそれに拡声器を付けて話をする、これは放送ではない。こういうことになりす。併しこれを線を延ばしまして随意に電線に繋いで、そうして好きな人がこれを適当な場所で聽けるようにする、こうなりますと話す者は送信者であり、取る者は受信者になりますので、これは一つ放送だということになります。併しこの法律ではそういう放送一切を取締るということを考えておりませんで、この法律を適用される範囲は次の五種に分けることといたしまして、凡そ無線というもの、電波を利用いたします放送につきましてこの法律は対象にしておる、こういたしておりますのが第一の放送定義でございます。それからこの定義であと問題になるかと思いますのは、最後の十二号「放送番組」でございますが、この放送番組と申しますのは、この表を見ても非常にむずかしく書いてございますが、放送されるもの、放送内容一切を申すわけでございます。  第三條に参りまして、只今申上げました放送番組、こういうものにつきまして雜誌新聞編集権同様に編集権の確立を狙いまして、法規に基く以外の干渉を排除いたしました。ただこの法律では新聞法と違いまして、編集責任者というものを特に指定しておりません。從いまして後の御説明申上げます一般放送につきましては、放送の免許を受けた者、それから日本放送協会につきましてはその代表者、これが放送番組編集責任者ということに相成ります。  この後の第四條五條、これは放送内容につきまして法律を以て規定した制限事項でございます。すべての放送というものは第四條、五條を適用されるわけでございます。先ず第一に、四條におきましてはいわゆるニユース、こういうものはどうなければならないかということを決めまして、これは御承知のように放送というものは非常に傳播力が強うございまして、影響力も大きいのでございます。従いまして現在の新聞法よりも嚴格に眞実を守る、守らせるということにつきまして規定をいたしました。これは関係方面からの終戰後における新聞ラジオ等に関する指示に合致しておるわけでございます。これは一言に申しますれば、先ずニユースというものは眞実に基いて作られなければならないということと、同じ眞実に基きましても事実の一部を省略いたしましたり、又は一部だけを誇大に解扱いまして、そこに何かの意図を盛り込んで、自分の意見を強くそこに出して行くというようなやり方を禁じた次第でございます。若しこの報道が事実でないということがありました場合には、第八十八條によりまして罰則が適用されます。この原則時事評論、或いは時事分析時事解説、こういうようなものも適用されます。從いまして、この時事評論というものの解釈に將來多少問題が出るかと思いますが、凡そ時事問題を批判的に取扱う内容は、時事評論、乃至は時事分析だと考えられますので、放送番組の名前に、この時間は時事評論と書いてあるとないとに拘わらず、内容を以て判断さるべきものと考えております。それから放送の制限に関連いたしまして第八十八條を御覽頂きたいと思うのでございます。それから法規といたしましては禁止をいたしておりませんが、このような放送をすると罰則を科すぞという規定が第八十八條にございます。それは新らしい日本國憲法を暴力で破壞するような放送をした者、又憲法に基いてできた政府を暴力で破壞することを主張した放送をした者、これは七年以下の懲役に処することになります。それから風俗を壞乱するような放送をした者、これも二年以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。こういうふうに規定いたしまして、放送の表現、言論の自由ということは一應尊重いたしまして、禁止は入れておりませんが、こういう行爲がありますと國家の安寧を害しますので罰則を加える、こういう立場に立ちまして立案いたしました。  第五條に参りまして國際放送でございますが、國際放送と申しますのは、ここでは日本から外國放送をする、或いは外國で作る番組中継放送によりまして日本の國内の國内に放送している。こういうものを國際放送と言つております。こういう國際放送は、國際親善を害するものであつてはならない。こういう道義的な規定でございます。  その次に第六條へ参りまして受信の自由ということを特に規定いたしました。これは御承知のように現在無線電信法がまだ効力を持つておりまして、無線電信法規定によりますと、凡そ無線通信を行い得る施設を行いますには、逓信大臣の認可が要るわけでございます。その規定を見ますと、ラジオ受信機を付けるにも一々逓信大臣の認可が要ることになりますので、この法律を以てこの規定を排除いたしまして、ラジオ受信機を自由に施設し、自由に聽くことができるというようにいたしました。このようにいたしましたので、第七條で放送の設備に特殊な取扱をいたしておりますので、その設備を以て放送以外のことに充ててはならない。こう決めました。これで放送全般の概括的な規定を第一章に掲げたわけでございます。  第二章に参りまして、今度はこのような方針で日本放送というものを維持して参りますために、どういう行政機関設置するかということが規定してございます。で、そのためにこの法案では放送委員会という特殊の行政機関設置いたすことにいたしました。この行政機関会議制機関でございまして、五人の委員から成ります。そういたしまして、委員一人々々では如何なる処分も如何なる行爲もできません。すべての委員会行爲、又は処分会議によつて成立いたします。尚この委員会には第九條に掲げます職権というものを與えてございますが、この職権は如何なる機関からも制肘を受けることなく、委員会が独立してこれを行使する、こういたしまして委員会自主性独立性を明確にいたしまして、時の政党勢力、或いは國内の種々の情勢の変化によりまして強く影響されて、放送政策が始終ぐらつくということのないように留意いたしました。但し放送政策というものは永久不変だという考えは持つておりません。やはり社会の進運と共に放送に関する政策も変つて行くべきだと考えておりますが、時の勢力関係によりまして種々変動するということのないように留意いたしたわけでございます。このような委員会設置いたしまして、第八條規定いたしましたようにこれを内閣総理大臣の所轄の下に置きました。所轄ということは面倒を見て貰うこと、こういうふうに考えております。  さて、それではこの委員会にどのような権限を與えたかと申しますと、これは第九條に掲げました。これは行政組織法考えで申しますれば所掌事務というものに当ります。それと同時にこれは放送法でありますから、その所掌事務を遂行するに必要な権限規定いたしております。第九條で特に御説明を要すると思いますのは放送委員会規則でございまして、これは大体政令と省令の間ぐらいの効力を持つものでございます。この放送法施行については、原則といたしましては政令を用いずに、放送委員会規則で以て施行細則を決めて行く、こういう立場でございます。特に種々の情勢上放送委員会規則で定めることの不適当なものだけは、この法案に特にこれを政令で定めると書きまして、それ以外のものは、施行に関する細目はすべて放送委員会規則でこれを定めることにいたしております。これから無線電信法に基きます逓信省と、放送法に基きます放送委員会権限を明確にいたしますために、第九條の第二号にその関係規定いたしました。これを端的に申上げますと放送電波統制に関する技術上の問題、これはすべて逓信大臣権限に属します。それから放送政策的な部面並びに技術上におきましても放送の音質、或いはこれはテレビジヨンなどで申しますと画質と申しますか、質の問題、單なる電波の混線を防ぐところの電波警察の問題以外の文化的な内容を持つ技術上の問題、これは放送委員会権限に属します。ここで放送の施設の取締りにつきまして二つの権限が被さるわけでございまして、いわゆる二重行政の弊に陷る危險もありますので、この法律では次のように規定いたしました。公衆に対する一切の窓口、これは放送委員会に集中いたします。從いまして、凡そ放送と名の付きますときには、一切のことはすべて放送委員会が責任を持つて処理いたしますことになります。処理いたしますことになります。併しながら、只今申上げました逓信省権限に属するものにつきましては、放送委員会逓信省とよく協議いたしまして、その意を以て処分を行う、こういうふうに相成ります。後は、放送を如何に國民の満足する形に持つて行くかという細目の政策を決めること並びにそれに必要な調査をいたしますことと、それから日本放送協会並びに一般放送局を監督いたしますこと、それから放送局設置につきまして許認可の権限を持つというのが、大体放送委員会の大きな所掌事務であり、同時に権限でございます。  第十條の構成につきましては、只今申上げました。  第十一條委員の任命につきましてちよつと御説明いたします。委員会は、只今申上げましたように、あらゆる勢力の支配から、或いは影響から離れまして、独自の立場から不偏不党行政処分に当つて貰う、こういう委員会でございますので、この委員構成につきましては、できるだけ一党一派という力が強く出て來ないように、或いは非常に大きな経済的勢力影響を受けるというようなことがないように考えました。そのために、第十一條の第二項に掲げましたように、委員になる資格に制限を付けました。  先ず、既往において法規の定めるところによりまして処罰を受けた者又は破産をした者、こういうような者を禁止いたしますと同時に、國会議員或いは政党の役員のように、政党という立場から重要な任務をお持ちの方の就任を排除いたしまして、又放送施設その他のいわゆる関係業者、こういう立場を強く取られ得る可能性のある方も排除いたしまして、そして社会公共のために非常に深い経驗と豊富な学識を以て処理なされるような方を是非選びたい、こういうふうに決めたのが第十一條でございます。  それでこの委員の人数を五名にいたしましたので、これにつきまして各方面から非常に御意見がございまして、五名は少過ぎるという御意見が非常に多いのでございます。私の手許で以て、現在日本におきますこの種の行政委員会構成を調査いたしましたが、大体三名乃至七名、このところが大体の常識でございまして、行政委員会といたしましては、多人数ということは行政の能率を阻害いたしますので、少数の方がよろしいのでございます。それで一番少数の例は三名でございますが、この放送のような場合には、三名では公益の保護ということに多少無理があると考えまして、五名にいたしました。一般に私の方で伺いました御意見では、これを三十名乃至五、六十名の多数委員会にして、單なる行政機関でなく、審議機関を兼ねたものにして、そしてその中から執行委員のような者を五名くらい出して、その議決事項の執行に当らせる、こういうふうに規定したらどうかという御意見を多数承わりました。併しこれはよく考えて見ますに、やはり放送の分野におきまして、國会に類似して國民代表機関を作りまして、そしてその代表機関の中から政府に類似した一つ執行機関を作るという思想にも非常に以て参りますので、私共としてこれを採りかねた次第であります。從いましてこの法律では、委員会は嚴確に政府一つ行政機関である、こういうふうに規定いたしまして、そして政策を審議なさるのは飽くまでも國会であるから、放送に関する根本的な政策は、この法律に盛り込んで法律の條項に入れる。若しこれを変更する場合は、國会において政策を変更して頂く。これは法律の改正という手続に相成るわけでございます。このように考えまして、多数委員会制を排除いたしました。  それから第十二條は、これは公務員として当然のことであります。  それから第十三條兼職の禁止、これも只今申上げましたように、委員会独立自主考えで進んで貰いますためには、やはり委員の兼職がありますと、その兼職の関係影響考えられるわけでございまして、一應兼職を禁止いたしました。  次に任期でございますが、任期は五ケ年といたしました。これは後に御説明いたしますが、この法律施行後大体五ケ年くらいの期間でもう一度実績を研究して頂きまして、そしてこの法律の再檢討をして頂くように規定してございますので、從いまして、委員任期も五年がいいのではないかということが一つと、それからもう一つは、委員任期が余り短こうございますと、こういう放送というような事業の監督行政を行いますのに、経驗を積む暇がないということも考えられます。それから委員を五人にいたしましたので、毎年一人ずつ交替して貰うのに、やはり五年が適当であると、こういうような考えから五年といたしまして、そして委員任期を附則の第百一條規定いたしましたように、一番最初の委員任期を一年、二年、三年、四年といたしまして、委員長を五年、こういたしまして、毎年一人ずつ交替されるように考えました。これによりまして、例えば内閣が更りましても、その内閣の存在中に恐らく五人の委員が全部交替するというようなことは考えられませんので、從つて放送委員会構成に重大な影響があるというようなことはないものと考えております。  それから退職につきましては、これはお読みになりました通りでございまして、これは國家公務員法に基きます人事委員会規定と同樣でございまして、委員保護規定になつております。但し、國民が彈刻によりましてこの委員を糺明することの規定をしております。  それから第十八條報酬、これも一般委員会委員と大体同じにいたしまして、委員長國務大臣に準ずる俸給、その他の一般委員一般職の官吏よりも低くなくて國務大臣を超えない程度の報酬を受ける。その具体的なことについては、予算で承認を得るというふうに規定をいたしました。  それから今後は二十一條に参りまして、議事手続でございますが、ここで他の委員会と違つております点が一つございます。他の委員会では、大体会議を行いまして、可否同数の場合には委員長が決するところによると、こう書いてあるのでございますが、この法案では、特にそれがございません。從いまして、この放送委員会におきましては、委員長は二重投票権はないものと明確になるわけでございます。但し、後の審理手続の場合だけは、この規定を入れまして、第七十五條で、可否同数の場合は委員長が決するといたしました。それは、審理の場合の議決と一般の議決とは多少性質が異りまして、審理の場合は採るか採らないかを決めるわけでございます。從いまして、可否同数の場合には議長の二重投票権を認めましても議事を決する必要がございますが、一般議事の場合には、可否同数の場合は、議事は成立しないという原則を適用いたしまして一向支障がない、こういう考えでおります。  それから第二十二條に参りまして、事務局でございますが、こういう仕事をいたしますに、どうしても小規模な事務局が必要と考えられますので、ここに事務局設置規定いたしました。この法案は、行政組織法が改正せられます前に立案せられましたので、内部機構を置いてございません。現在私共が考えておりますこの事務局内部機構は、三部と思つております。一つ総務部、それから放送部技術部、この三部を内部局として置きたい、こう考えております。それからこの放送委員会地方事務局でございますが、これは現在の國家に課せられております行政機構簡素化、こういう立場から考えましても、放送委員会を作りましたために、又地方に十乃至十以上の地方事務所を新らしく作るということは、経費の点から申しましても、又人員の点から申しましても、非常に無駄ができますわけでございます。從いまして、現在逓信省電波局地方機関が全國に十ケ所ございまして、これが近い將來逓信省設置法を御承認になれば、電波廰として独立しまして、電波廰支分局と相成るわけでございます。この電波廰支分局を利用いたしまして、これに事務を担当させたならば、一番経済的で、且つこのような行政に慣れておる人が沢山おりますから、仕事の能率も上るのではないかと、こう考えまして、この法案では、電波廰地方支分局をこの委員会が監督しまして地方事務を司らせると、こういうふうに規定いたしました。電波廰地方支分局仕事はやらせますが、飽くまでも放送委員会の命令でやらせるのでございまして、この点に関しましては、逓信大臣権限は及ばないわけでございます。  それから二十三條に参りまして、放送委員会はこういうふうに独立して、自己の判断においてこの法律を執行いたしますので、その結果を取纏めまして、毎年一回國会に報告をして、同時にその内容國民に廣く知らせるようにいたしましたのが、二十三年の規定でございます。  このようにして、放送委員会自主性を守りまして、そうして又これが独断に陷らずに飽くまでも國民に盡す公僕、而も不偏不党な公僕だということを規定して來ましたので、この第二章の放送委員会規定でございます。  それから第三章に参りまして、今度は日本放送協会でございますが、現在社團法人日本放送協会がございまして、昨日來御説明いたしましたように、これが日本放送事業というものを独占的に経営いたしております。すでにこの協会は二十数年に到りまして歴史を持ちまして、最初芝蒲の小さな放送局から出発いたしまして、現在は日本全國を蔽い、そうして放送内容も、ニユースからあらゆる教養の面に亘りまして、非常に優れた放送を行うことに努力しておられまして、その功績は非常に大きいのでございます。併しながら、御承知のように、戰爭前に数年來、又その戰爭中、政府のこの協会に対しまする干渉というものは非常に大きくなりまして、その大きくなりました原因というのが、この大事な公共放送を行なつておる事業体を、單なる社團法人として、一私設の法人として規定しておりまして、これを公益として保護する法律上の規定が何もなく、そうして又、放送内容についての規定、或いは放送についての政策というものも立法化せられておらなかつたためでございましたので、今回放送法案を立案いたしますにつきまして、この公共放送企業体在り方というものを法律を以て明確にいたしましても、今後如何なる政府といえども、この法律を改正する以外にはこの協会に対して恣に干渉はできないように規定いたしました。又政府以外の如何なる團体も、この法律に基く以外の干渉はできないようにいたしております。これによりまして、公共放送事業体というものが日本において確立されることと相成ると思うのでございます。從いまして、この法律では、現在の社團法人日本放送協会を改組いたしまして、社團という性格を取除くようにいたしました。これは、日本では從來こういう公益という仕事社團法人或いは財團法人という形で行わせて來たのでありますが、今日各方面で問題になつておりますように、財團法人或いは社團法人を完全に公益に合致させるための監督権根、或いはこれを本当に公益から外れないようにする法規的な根拠というものが、残念ながら極めて薄弱でございまして、現在多くの社團法人或いは財團法人が、営利に走つております。これは今各方面から研究されまして、近いうちに何らかの具体的な措置がとられると思いますが、現在の日本放送協会が必ずしも営利に走つたと申しておるわけではないのでありますが、走り得る根拠は多少残つておるのでございます。そういたしまして、現在の日本國民全部に非常に大きな影響のございます独占的な放送を、社團の形で行うということは、少数の結社が、國民のすべての情報、それから教養、文化というものに非常に大きな支配力を及ぼし得る因にもなる、こういう考えから、社團という形を取りまして、そうしてこの法律によりまして、新たに日本國民全部を基礎に持つところの特殊な法人であるというふうに直しました。この際に一番困難を感じましたのは、この新らしい法人財政的基礎でございまして、今後少くとも國民の滿足し得るような公共放送を行いますには数十億乃至それ以上の資金が必要になると思うのでございます。でこれを全部國家の出資で行えば非常に都合がよろしいのでございますが、又関係方面も強くそういう意見を表明いたしておつたのでございますが、何分御承知のように國家財政の現状から申しまして、日本放送協会を只今改組するにつきまして数十億の國家出資を行うといううことは極めて困難なことでございます。それと同時に國家が出資いたしますと、その出資を通じまして非常に一部官僚の支配力というものがそこに伸びて行きますのが、今までの何と申しますか特殊法人に対する忘れ得ない例であります。このような影響も排除いたしたいと考えているのが、そもそもこの法案の立法の精神でございます。從いまして、この法案におきましては基本金のない法人、こういう極めて特殊なものを考え出しました。そしてこの新らしい法人は社債を発行いたしまして、すべて建設資金は社債によつて賄う、これが第四十二條でございます。そういたしまして尚困りましたことにはこの公共放送事業の独立、それから他の一切の勢力からの影響を排除するというために放送の財團と申しますか、放送用施設は一切これを担保に供することを禁止しております。從いましてこの放送委員会が社債を発行する場合に、その発行いたします根拠が極めて薄弱になるわけでございます。これを償いますために社債償却積立金というものを法定化いたしまして、そしてこの社債の限度でございますが、これをこの法案では一應十五億と考えまして、十五億といたしました。根拠は二つの方面から見て参りますと、一つは先ず必要な資金の面から見て参りますと、これは先般來日本放送協会関係方面とも連絡されまして作られました五ケ年の整備計画というものがございますが、これに要すると思われます資金が大体七億余円でございます。これは大体現在の放送を多少よくするために新規施設というものを考えているだけでございまして、現在の放送施設というものが相当老朽化しているものの入れ換えというようなものにつきましては、考えてたしかおられないのであります。こういうものを考えまして大体二倍は当座必要であると考えられまして、これは当面の所要資金が大体十五億ぐらいになるのではないかということが一つでございます。この十五億には新規の事業の開発費というものは考えておりません。それからもう一つは今度財政的の面からでございますが、先程も申し上げました社債というものは、この聽取料の收入から償還されるわけでございます。從いまして地方債と同じように地方債が税金を担保にいたしまして、公債を発行しますと非常に似た形で、極端に申しますれば放送聽取料を担保にして社債を発行する、こういう形に相成るわけでございます。現在聽取料金は加入につきまして、月三十五円に値上げになりましたが、この法案立案当時は十七円五十銭でございます。これを年額に直して見ますと大体十二、三億という收入が考えられたのでございます。そしてこの総收入の中一割乃至一割二、三分というものを社債の償還資金に当てましても、経営をそれ程圧迫するとは考えられませんので、この程度が常識として一番取り得るところではないかと考えます。総收入の中一割乃至一割二、三分というものを社債償還資金に充てまして、尚社債を十五年位で償還いたして、計算いたして見ますと大体そこに十五億というマーヂンが出て來るわけでございます。この両方を睨み合わせまして本法案は発行限度を一應十五億といたしました。併し最近の物價の再改訂、それから放送事業の新らしい開発というようなことを考慮いたしますと、この限度を近い中に引上げなければならなくなるかとも存ぜられます。それから次にこの協会の役員でございますが、これは第三十二條を御覽下さいますと役員の任命というところがございます。役員を七名にいたしまして、これは一名を会長、一名を副会長、こういたしまして、この役員は先程申上げました放送委員会國会両院の御同意を得て任命いたす、という形に規定いたしました。これにつきましては、現在放送協会にも御意見があります。又國民の各方面からも御意見を寄せられまして、そして放送事業の自立性ということ、又放送協会の自立性ということから言えば、放送協会の役員というものは内部から選んだ方が望ましい、という意見も伺つております。併しながら先程も御説明いたしましたようにこの法律で決めました日本放送協会というものは社團法人社團を解体いたしました。從いましてこの法人の内部というものはないわけなんでございます。内部というのはすべて國民と、こう考えて然るべきかとも存じております。それ以外は從業員でございますが、從業員は法人構成体にはならないわけでございまして、法人の内部というのはちよつと考え難いものになつてしまいます。そのために、特に一つ機関として評議委員会というようなものを作る、或いは聽取者の代表機関というようなものを作るということも考えられるのでございますが、これ亦、多額の費用を要して放送審議機関、或いは一つ代表機関というものを構成することになりまして、折角の放送聽取料、入つた聽取料というものをすべてこういうものの機関の費用に多くの部面を使つて行くということは、芳ばしからんことでございまして、そういう無駄な費用をなくして、而も公平に人事が行われるようにしたい。こういう考えから不偏不党構成を建前といたします。放送委員会が選考いたしまして尚且つ國会両院の御同意を得て任命するという形を採りましたわけでございます。それから今度は受信料でございますが、第三十九條、これは受信料を取る特権は日本放送協会だけに與えました。第三十九條で日本放送協会は、協会が行う放送、現在は中波のいわゆる標準放送しかしておりませんから、標準放送を聽ける受信機、將來短波の、或いは超短波の放送をいたしますとそういうものも聽ける受信機、そういう受信機を設備された方から放送聽取料を取ることができる、こう決めたのでございまして、それから前の第一章に戻りまして、第六條に凡そ日本放送協会の提供する放送受信することのできる受信設備を設置した者は第三十九條に定める受信料を拂わなければならない、こうして今度は國民受信料を支拂う義務というものを規定いたしまして、両方の権利義務を合わせまして、ここに日本放送協会受信料を徴收し得る特権を享有しているわけでございます。一般放送局にはこのような特権を規定しておりません。從いまして一般放送局は聽取料を取れないのではございません。拂う方があれば取れますが、放送協会に対しては拂う義務があるわけでございます。それから一般放送局に対しましては契約によつて拂いたければ拂つてもよろしいという立場になります。從いまして一般放送局は恐らく日本放送協会と競爭をする、同じ波長帶で放送する限り聽取料は極めて取れにくい。こういう立場にありまして、一般放送局從つて廣告收入によつて事業を経営して行くのが本筋になる、こういう形に相成ります。それから今まで政府社團法人日本放送協会に対して持つておりました嚴重な法人監督権、或いは規律権と申しますか、こういうようなものは大部分廃止いたしました。ここに残りましたのは会計監査を行う権限、それから貸借対照表を調査する権限、それから放送協会の業務につきまして報告を求むる権限、この程度でございまして、政府の、或いは行政機関干渉というものはなくなつたわけでございます。併しその反面今まで行政機関にすべての法律権を委任しておりましたものを、今度は法規に入れましたので、この法規從つて日本放送協会仕事をしているかどうかということを監督する権限は、放送委員会仕事の大きな部面でございます。このようにして日本放送協会を改組いたしまして、新たに本当の國民のための公益放送を行う機関といたしまして一つの特殊なパブリック、コーポーレーシヨンをなすように、規定いたしましたのはこの第三章でございます。  次に第四章に参りまして日本放送協会以外にも今後は放送事業を開放しようじやないか、こういうことを規定いたしましたのが第四章でございます。先ず第一に開放はするが、こういう方には放送をやつてつては困るということを決めましたものが第五十五條でございまして、放送の免許申請の資格を限定いたしました。これは先ず第一に日本の国籍のないもの、第二には外國政府又はその代表者、第三には外國法人又は團体、第四には日本法人又は團体であつて、前に申上げました三つのものがその代表者となつておる者、第五には法人又は團体であつて第一号から第三号までに掲げる者が、その役員の三不の一以上又は議決権の五分の一以上を占めるもの、こういうふうにいたしまして、この第五十五條に掲げましたものを排除いたしました。これはいろいろ問題もございましたが、凡そこれから日本が文化國家として立つて行こうといいますときに日本放送を全部外國の勢力、或いは外國人の手によつて行われまして、そのために日本の國内に思想の混乱を來し、又は方々に我々の納得し得ないものを流布されるということに相成りましては、我々として非常に大きな混乱を感ずるわけでございます。凡そ世界各國の文明國の放送に関する立法例を参照いたしましても、一流の文明國であり限り、放送は自分達の國民の手に確保するような立法措置をとつております。今回関係方面ともよく了解を得まして、日本放送につきましても同樣な原理を適用いたしまして、第五十五條と相成つたわけでございます。それ以外の方はすべて放送の申請ができる。こういうふうに規定いたしました。今度は申請が出ますと放送委員会が勝手にこれを判断して、お前は許す。お前は許さんということができないようにいたしまして、審査の基準というものをはつきり法律で謳いました。これが第五十六條でございます。この五十六條の規定に合つておりますれば、もうこれは自動的に免許されることになります。それから免許されますと次には放送の施設を先ず建設してもよろしいという処分をいたします。これは設計図で以つて最初大体放送委員会が定めた技術的な條件を満足しているかどうかを審査いたしますが、それに合つておれば建設の許可が出て、建設が今度できますとそれを檢査いたしまして、もとの建計図通りできておればそのまま使用の承認が出る。若し設計図通りできておらなければ改修を命ずる。こういうふうにいたしまして技術の完全を期しております。それからでき上つて初めて放送の許可が出る。こうなります。それから放送の許可を申請いたしまして、これを拒否するような、つまり第五十六條に合わないと、こう委員会が判断いたしますような場合に、凡そ委員会は公平を期して行いますが、それでも尚独断に陥る虞れもございますので、後に申し上げます第五章の審理手続というものを適用いたしまして、申請者にあらゆる陳述、意見の申聞きの機会を與えまして、そうして公平な判断を下すような規定を設けております。尚これでもうまく行かない場合は審理のやり直し、こういう規定も作りました。この審理のやり直しを以て昔の行政裁判の第一審に当るように考えております。このように今後の行政処分というものが独断に陥らないように周到な注意をいたしたつもりでおります。このようにして放送局というものが免許されますと、この免許を受けました者は、最初の申請にありました範囲の放送というものを自由にできるわけでございます。若し申請いたしました範囲を超えまして違つたことをやりますと、これは委員会によりまして、業務の停止、或いは免許の取消し、こういう処分を受けることになります。それからこの免許の期限は五ケ年といたしまして、五ケ年を超えれば一年ごとに更新する、こういう形にいたしました。この期限を五ケ年に切りまして、一年ごとに更新するということは、五ケ年経つたら御破算になるということではないのでございます。五ケ年経つたらもう一遍檢討し直す機会を放送委員会は保留する、こういう建前でございまして、それ以後は一年ごとに再檢討する機会を保留する、こういう意味でございます。從いまして、五ケ年経てば何でもかでも自動的に放送を行う権利は皆消えてしまう、そしてそれから先は全然新規巻き直しだと、こういうわけでは決してございません。ただ五ケ年後に、今までやつて來た業績をよく檢討いたしまして、この法律の趣旨に合わないような局であれば、これは更新を許可いたさない、こういう建前でございます。  それからもう一つ、それから以後一年ごとに更新いたしますのは、將來放送局というものの数が相当数殖えて來るであろうということが考えられますことと、技術が非常に進歩して行くということも考えられるのでございます。從いまして、一年ごとに檢討いたしまして、波長の割当てその他全部に亘りまして公平に合理的になるように考え直し得る機会を放送委員会が保留するということでございまして、これも一年ごとに全然新規に許すか許さないかを考え直すというようなことではないわけでございます。このようにして、一般放送局というものの安定を考えました。ただ一般放送事業というものは、先程も申上げましたように、聽取料、或いは受信料、こういう收入に依存することは可なり困難でございます。フアクシミルとかテレビジヨンにおいては、相当受料料に依存できると思いますが、一般電話放送におきましては、極めて困難になると思います。從いまして、この事業の根拠は原則として廣告收入になつて來る、こういうふうに我々は考えております。  これで大体一般放送局の御説明を終りまして、次に第五章審理手続、不服の審理及び訴訟に移らして頂きます。  審理手続と申しますのは、先程も申上げましたように、放送事業の新たに申請がありまして、この申請を拒否する場合、それから一遍免許いたしました放送事業者に対しましてその免許を取消すような場合、それから日本放送協会の聽取料、これを改正いたします場合、この三つの場合に、委員会が独断で判断を下し処分することを禁止しております。そういたしまして、必ずこれから御説明いたします整理手続を経てから処分を行わなければならないように規定いたしております。この三つの場合は、公衆に影響すること極めて大きい、特に大きいと考えられましたので、この審理手続を法定化いたしたわけでございます。その他のことにつきましても、委員会の発意によりまして自発的に審理手続を取ることはできますが、今申上げました三つの場合は、法定化いたしまして、必ずこれを開かなければならないようにいたしました。この審理手続と申しますのは、アメリカの非常に廣く今まで行われている審理の方法でございまして、向うでヒアリングと言つておりますが、極く簡單に申しまして、申請者或いは関係者、そういう当事者の意見、或いは不服を、正式に十分聽いて、そうしてそれを記録に取りまして、その記録をよく分析檢討して判断を下す、こういう手続でございます。今まで私共がこういう許認可を行います場合に、大体申請書だけを一應読みまして、そうして申請者の説明を聽きまして、後はいろいろの情勢などを判断いたしまして、一方的に許認可を決める、或いはひどいときには、修正認可と称しまして、申請の内容政府側で勝手に変えまして認可する、こういうようなことも行なつておる次第でございますが、そういうようなことは、一切放送に関しては今後止めまして、若しこの放送事業の申請というものがこの法規に合わないと考えられます場合には、委員会はその合わないと考える点を指摘いたしまして、申請者に通告いたします。そうしまして申請者は、その通告に基きまして、弁護士を雇うのもよろしうございましようし、然るべく代表者を使つてもよろしいし、又みずから陳弁してもよろしうございますが、その放送委員会意見につきまして、証拠等を挙げまして十分に陳述する機会を公の席で與えるわけでございます。これは原則として公開でございます。そうしてこれを記録いたしまして、必要があれば参考人、或いは第三者の意見も聽きまして、その結果によつて最後の判断を下す、こういうふうに規定したのがこの審理手続でございます。  それから、そういうふうにやりましても尚間違いが起り得ますし、又法定いたしました審理手続を必ず行うことを法定いたしました以外の委員会行政処分につきましても、独断も起り得るし、又間違いも起り得ると思いますので、只今申上げましたような手続を一切の放送委員会処分に関して適用し得るようにいたしまして、これを不服の審理とここで呼びまして、そうして凡そ放送委員会処分に不服のある者は、放送委員会に申出まして、只今のような手続を取らせるということができるようにいたしました。これが不服の審理でございます。そして裁判上はこれを以て行政裁判の第一審の形といたしまして、今後裁判所に訴え出ますには、この不服の審理手続を経てからでなければ裁判所への訴えはできないようにいたしております。從つて、裁判所の裁判は第二審から始まるという形に相成ります。そうして尚放送委員会というものは、凡そ放送ということにつきましては日本の最高権威でございますので、放送委員会が事実に対してなした判断は、十分な証拠がある限り裁判所を拘束することにいたしております。裁判所の裁判の主たる目的は、法律の解釈の問題になつて参ります。このようにして、放送委員会処分というものを独断から防ぎますと同時に、紛爭というものを、複雜な裁判手続を経ないで、比較的短期日間に、尚経費を掛けずに解決し得るように考えましたのが、この第五章でございます。  第六章の罰則につきましては、先程御説明いたしました八十八條以外には、特に御説明申上げますような條項はございません。  第七章の雜則に参りまして、九十九條に、これは今までの法律に余り例のないような規定がございます。この法律の改廃、これはちよつとお読みいたします。「第九十九條内閣総理大臣は、この法律施行の日から五年以内において、放送に関し識見がある十五人以上の國民各層を代表する委員会から成る審議会を設置して、放送に関する政策を調査せしめ、この法律の存続、改正又は廃止についてその勧告を求め、且つ、放送委員会意見を徴さなければならない。」、こう規定いたしました。こういう規定を置きました理由は、先般來御説明いたしましたように、放送事業というものの規定の仕方につきまして、世界に二つの大きな潮流があるわけでございます。  一つは、ヨーツロパ諸國で行われておりまして、殊にイギリスのやり方が典型をなしておりますところの、特殊なパブリツク・コーポレーシヨンと申しますか、公共的な法人を作りまして、これに独占的に行わせる、その代りに、この機関は飽くまでも独立した政府の別動隊であるというような形で行なつております。これが一つの行き方でございます。  もう一つは、アメリカ合衆國がやつておりますのが典型をなしておる自由競爭の放送のやり方でございまして、すべて民間のコムペチシヨン、競爭原理によつて放送を行わして行くという行き方でございます。日本は、從來前者を採つております。ところが、今度の戰爭の終結の結果を見ましてもお分りになりますように、前者を採りました國は、すべて放送通信に関する技術が極めて遅れまして、現在アメリカだけが通信技術につきまして、抜群の立場に立つております。このよつて來るところは、やはり通信というものが自由企業であつて、その刺戟によりまして技術の進歩した面が極めて大きいのでございます。それと同時に、通信技術の進歩というものが、單なる通信だけの恩惠だけでなくて、これが國民のらあゆる生活部面に入つて参りまして、最近では、通信技術から発達した高周波の技術というものは、アメリカの國民生活のあらゆる部面に浸潤いたしまして、生活の文化程度を上げるのに大きな貢献をいたしておるわけでございます。  それから次に考えられますことは、昨日も電波局長が申上げましたように、両方の折衷案を採つておるところがございます。これはオーストラリヤを典型といたしまして、カナダその他ございますが、これはいずれも余り成功しておるとは見えないのでございます。この度日本におきまして、両者の折衷案を御提案申上げたわけでございますが、これは、從來の歴史から申しますれば、この折衷案が將來非常によい効果を挙げるということは、大きく期待はできかねるかとも思われるのでございます。併し日本におきましては、今まで自由な放送事業というものの経驗を全然持たないのでございまして、今後日本放送というものを、イギリス流の公益独占の事業で行くか、或いは民間に委せまして本当のフリー・レイデイオーで行くかということを決めます前に、先ず日本では民間放送というものはどういうふうに伸びて行くだろうかということを一應見て、その実際の資料もよく取りまして、これを綿密に分析いたしまして、そうして將來日本の永久的な放送政策をどうするかということを御決定頂きたいと考えまして、そうして只今御審議頂いております法案を御提案いたし、この成果を五ケ年間綿密に注意深く見て参りまして、その結果を判断いたしまして、最後の永久的な放送政策というものの御樹立を頂きたい、こう考えておりますのがこの第九十九條の趣旨でございます。  以上お疲れのところを主な点だけ御説明申上げましたが、尚細かい点につきましては、又御質問を頂きまして、御説明申上げたいと思います。
  8. 深水六郎

    委員長深水六郎君) それでは、午前中の会議をこれで終りまして、一時半から再開いたします。    午後零時十七分休憩    —————・—————    午後二時十七分開会
  9. 深水六郎

    委員長深水六郎君) 只今から通信委員会を開きます。政府委員の方からちよつと先刻の説明に附加して、御説明したいことがあるそうですから……。
  10. 鳥居博

    政府委員鳥居博君) 先程の法案説明にちよつと二、三附加させて頂きたいと思います。第九十九條のこの法律の改廃ということに関連してでありまするが、先程時間もございませんので、私の言葉が足りませんために、この法案公共機関による独占的な行き方と、それからアメリカのような民間にすべて委す自由企業の行き方と、折衷したものであることを申上げましたが、これは濠洲、カナダその他の例で見ますと、余り芳ばしい成績を挙げていない、こう申上げましたので如何にもこの法案自身も自信がないような御印象を或いは與えたかと思いますので、二、三附言さして頂きたいと思います。今日の日本を見ますと、終戰後民主國家として立ちます、こういう大原則は新らしい憲法により、定められたのでございますが、この立場からいたしますと、凡そ民主國家基礎になりますものは豊富は情報でございまして、ニユース、その他の情報というものが、限られた機関、極く少数の統制された機関から、國民に提供される、こういう状態では民主主義基礎をなす通信というものに、欠けるところが考えられるわけでございます。從いまして原則といたしましては、情報ニユースというものは無制限に、あらゆる方面から豊富に國民に提供され、而して國民がそれを取捨選択しまして、ここに一つ考えをお作りになることが、凡そ民主主義的な國の情報といつものの基礎になると考えられるのであります。從いましてこの放送もやはり報道の機関の凡そ職能を担当いたします、又文化部面におきましても大きな分野を担当いたしますので、できるならばこれも限られた極く少数の独占という形ではなく、非常に自由な豊富な供給源を持ちます組織でありたい。こういう点から將來の日本にとりまして、いわゆる民間放送というものの存在は、好ましいことでございます。それから又他面考えますと、現在は敗戰直後でございまして、思想的にも、経済的にも、社会最にも、あらゆる部面で、未だ混乱期を逸脱してはいないと思われるのでありまして、このような時期に、無制限に自由競爭を放送企業だけに委すということも、又一面危惧もあるわけでありまして、こういう事情から見ますと、極く國民の中から選ばれた理想的な人によつて公共に盡すという観念の下に運営されるところの公共的な放送機関というものの存在も、是非とも必要ではないか、こう考えられるわけでございます。このような事情から現在におきましては、この法案に盛りましたような両建ての行き方が、日本に最も合つたものである。こういう確信の下にこの法案を作つているのでございます。他の外國の例が、こういう方は割合にうまく行つていないから、ほんの試驗的にやるものだという考えでは毛頭ございません。尚このように折衷の案を作りますにつきましては、濠洲、或いはカナダ等でこのような行き方をして幾分失敗をした。その失敗した原因と、悪い点を十分調査研究いたしまして、そういう事情が日本において起らないように、愼重に者慮を拂いまして、この法案で將來進めても十分にうまく行く、こういう信念の下に出しております。この点先程の御説明で言葉が幾分不十分でございましたので、附加えさして頂きます。
  11. 深水六郎

    委員長深水六郎君) それでは只今から本法案に対する質疑に入ります。質疑のおありの方はどうぞ。
  12. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 ちよつと伺いますが一般放送局というのが、放送料金を取立てることはでないような組織になつているのですが、そういたしますとなかなか今の物價高の情勢からいたしまして、一般放送局が、大体どういうふうな施設とか、或いは計画というようなことを決めたとしても、実際行われるかどうか、疑問のように思われますが、これに対してはどういうふうなお考えを持つておられるのでありますか。
  13. 鳥居博

    政府委員鳥居博君) お答えいたします。今の御質問は一般放送局が聽取料或いはそれに類似のものを取り得るかどうかということが一つと、次は一般放送局というものが経済的に成り立つかどうか、こういう二つの御質問と考えます。  先ず第一の御質問でございますが、この法律では一般放送局は聽取料を取れない、こうは規定してないのでございます。取つていいとも悪いともこの法律では規定しておりません。從つて法規上の立場から申しますれば、一般放送局も聽取料を取り得ることになります。併し先程も申上げましたように、これは自由競爭になりますから、例えば東京に一般放送局というものが一つとは限らないわけであります。或いは三つ、四つ、こうできるかも知れませんし、それに又日本放送協会放送もあるわけであります。この場合に一般放送局の、例えばAという局が聽取料を月何円か取る。こう決めましても聽取者に取りに行つた場合に、私はBの局を聽いておるから拂わんと言われた場合に、強制的にそれでも取るという根拠は全くないわけであります。これに反しまして日本放送協会の方は、先程も御説明申上げましたように、日本放送協会の行う放送を聽くことのできる受信設備をした者は、必ず協会の聽取料を拂わなければならない、こう規定してございますので、日本放送協会に対して、私はAの放送を聽いておるから聽取料を拂わないということはできないのであります。その結果といたしまして放送協会だけが聽取料が取れて、他の一般放送局は聽取料が取れなくなるだろう、こういうことになるわけであります。法規上は禁止しておりませんが、実情は困難になる。從いまして放送業務の種目によりましては、聽取料も取り得るかと思います。例えば日本放送協会と競爭になつておらない種目もございます。これはこの放送法にも、定義のところに書いてありますが、今日本放送協会がやつております業務は標準放送と申しまして、普通の國民型の受信機で聽ける放送だけでございます。この法案によりますと、その外に短波の放送もございますが、或いは超短波による電話の放送、或いは画像を送りますフアクシミル、或いは映画のようなテレビジヨン、こういう放送ができるわけでございます。これも競爭相手がないうちは、何分の料金を取ることも可能になるわけでございます。放送の業務によりまして多少相違があるかと思います。  それから一般放送局が経済的に成り立つたかどうかということでございますが、これは一に日本の経済事情によることでございまして、ここで以てこの事業は必ず経済的に成り立つということは申上げられないと思うのでありますが、これは一般企業がやはり同じでございまして、如何なる企業も必ず成り立つというものはないわけでございます。併し必ず成り立たないということもないと、私は考えております。一にこれは企業を行うとなさる方の、御判断によるわけでありまして、法律といたしましては、ここに一應そういう事業を行うことのできる途を開いて置きまして、そうして國民の中に然らばこういう事業をやつて見ようという方に、やられる余地をここに開いて置くということでございまして、経済が今後の移り変りによりまして、如何樣にも変つて行くかと、かように存じております。
  14. 深水六郎

    委員長深水六郎君) 大臣がお見えになりましたが、党の幹部会があるそうでありますから、大臣に対する質問を先にいたしたいと思います。
  15. 新谷寅三郎

    ○新谷寅三郎君 いろいろお尋ねしたいことがございますが、中で総括的な問題から伺つて置きたいと思います。今度の法案で初めて説明のありましたように、一般放送局というものを作る途を開いて、日本放送協会と並行的に放送事業をやらせるということになるわけでありますが、これはいろいろ御説明もありましたが、只今の状況では非常に困難ではありますが、將來の日本放送事業考えますと、非常に結構なことではないかとも考えられるのであります。併しこれを実現いたしますのには、これは資金の面でも、資材の面でも、又技術的な電波の割当の問題から言いましても、実際上非常な困難が伴うだろうと思うのであります。ここに法律案として明瞭にこういう途を開かられた以上は、逓信省としては、少くとも或る程度の一般放送局は、この法律案が法律として出ました場合には、実現させる、又実現し得るのだという見通しの下に書いておられるものだと思うのであります。それに対して逓信大臣はどういう御意向でおられますか、先ずその点から伺つて置きたいと思います。
  16. 冨吉榮二

    國務大臣(冨吉榮二君) 極めて御尤もなお尋ねだと存じますが、これは何といいますか、アイデイアといいますか……の問題が主として中心になつて出て参つたのでありまして、いわゆる独占企業を排除するという精神が中心であり、そして又かくのごとき文化機関というものには、できるだけあらゆる方面の力を動員するということが思想的な一つの中心でありまして、この途を開きましたわけでございまして、必ずしも直ちにそのことによつて効果といいますか、具体的にどういうものができるかということを期待するという程の実は的確なことを申上げる段階にまだ到達しておらないのでありますが、大体電波の問題にいたしましても、資材の方面から行きましても、或る程度の要求には應じ得る余力があるという情勢でございまするし、又そういう要求を持つて願い出をする向きなどもございますので、或る程度のものができるのではなかろうかといつたようなところにまでしかまだ至つておりませんが、全然ただ体面をつくろつたというふうにも考えておらないのであります。今日は、誠に不徹底でございますが、この程度で一つお許しを願いたいと思います。
  17. 新谷寅三郎

    ○新谷寅三郎君 大臣のお話のように、これは逓信省の方からむしろ非常に慫慂して、或いは積極的な援助をして、一般の氣運が熟さないに拘わらず、とにかく無理矢理に拵え上げるということはできないと思います。私の知つております範囲でも、数個の申請が出ておるように伺つておるのであります。そういつたものの中で、先程からお話があつたように、この法律に書いてあります基準に合致するものがあつた場合は、逓信省としては、それに対して積極的に援助をされて、例えば電波の割当について、今非常に窮屈になつておりましようが、どこからかなり電波を割いてその事業がやつて行ける程度にするという、積極的な熱意がなければならないと思います。又大体においてこの法律案によりますと、そういう一般放送局はやはり自分で施設を持つのが原則でありますので、その施設を持ち、機械類を揃えて行くということには、やはり相当重要な資材がかかると思います。今日一つのスタジオを作るにも資材面で相当行詰るのではないかと思いますが、恐らく現在の放送協会の資材に対しては、逓信省の方で枠を取つておられるのではないかと思いますが、それと全然同じような意味において、やはり資材を逓信省の枠から與える、それから資金面においても、國家の資金計画全体の上に、そういう資金が日本放送協会と同じようなレベルで優先的に考慮されるというようでないと、実はここにいろいろ理想的ないい考えをお出しになりましても、事実上実行できないというのでは、折角独占禁止法の関係でそういう條文を入れたのだという話でありますが、事実上やはり独占禁止條項に触れて來るということになるわけでございますので、書いた以上は、いいものがあれば、積極的に援助し、できるようにしてやるということが当然だと思います。その点の御用意は勿論あろうと思いますが、逓信大臣からもう一度お答えを願いたい。
  18. 冨吉榮二

    國務大臣(冨吉榮二君) 極めて御尤もなお尋ねでございますが、御案内のごとく本法案は、実は作つて大いに仕事をやろうというのではなくて、作り上げてそつちの方に遺産を相続しようというのでありまして、逓信省自体としては、今後は技術方面のお手傳いをすることを許されるだけでありまして、本法案に書いてありますように、放送委員会になるのが今お尋ねのような方向を決定し、企画いたしますことに相成るのでありまして、逓信大臣はこの法案を作るのでありますが、難儀して作つた実は人樣にお渡しする役割だけでございますので、その点一つ余りここでほらを吹いても、理想を申上げて見ても、始まらないと思いまするし、ただ國家全体として、現在國務大臣の一人として考えますことは、何と申しましても、文化に重大な関係を持つ事業でございまするし、殊に文化國家建設の上から言つて放送事業というものは重大な役割を果すのだということは、大いに考えまするし、從つてその文化機関の発達、整備に対して、國家が力を入れなければならないということは、全くお説の通りでありまして、資金の面から、或いは資材の面から、種々なる御援助を申上げるという立場は、これは敢えて逓信省ならずとも考えなければならないのでありますが、特にこの放送委員会を育て上げまする私共としては、そこに非常な熱心な意図を持つておることだけは御了承を願いたいと思います。
  19. 大野幸一

    ○大野幸一君 逓信大臣も忙がしいと思いますから、早く帰られては困ると思いますので、これは緊急質問ということになるかも知れませんが、本月二十二日附マツカーサー司令官からの書簡によりますと、逓信者においても相当影響するところがあると思います。あの書簡の逓信省関係に対する逓信大臣の所感及びそれに対するお考えがありましたならば、この際ここで御説明願いたいと思います。
  20. 冨吉榮二

    國務大臣(冨吉榮二君) 大体この書簡を受取りまして、いろいろ研究をいたしておるのでありますが、先ず基本的な問題と現実の実際問題との二つに分けて実は考えて見たのであります。  そこで基本的な問題としては、この書簡が直ちに法律的な効果をもたらすものであるかどうかという点を先ず考えなければならないと思います。若しその効果をもたらすとすれば、現行の労働法規の三法を全面的に排除するものであるかどうかというような点から先ず考えて見たのであります。勿論これはただ私共が私共なりにものを考えただけでは收まりが付かない問題で、これは関係方面ともいろいろ折衝して考えておるのでありますが、正直に申上げまして、実は未だ結論に到達しておらないのであります。いや、結論に到達していないところと、いたしておるところとあるのであります。大体に申上げまして、いわゆる逓信省の從業員が所属しまする全逓從業員組合といつたようなものが、團体交渉権を持ち、罷業権を現在持つておると解釈されておるのでありますが、これがそれを失うということだけは、はつきり実はこの手紙によつていたしておるのでありますが、後の方に謳われておりまするところの逓信省機構の問題につきましては、今日必ずしもはつきり具体的に言われておりませんし、同時に関係方面でもまだ「ことが望ましい」といつたような書下しでございまして、実際的にそれではどう組織を作つて行くかということについては、現在のところまだ結論に達しておりません。  そこで先ず基本的な問題として考えますことは、今申上げますように、このマツカーサーの書簡が法律的な効果を直ちにもたらすかどうかということでありまするが、これが法律的効果をもたらすかどうかは、どうも私共は法律家でないからよく分らないが、少くとも実際的な効果だけは持つということはもう爭われないと思うのであります。  次は、この書簡が國内的に法律的な効果を生ずるには、日本政府として公務員法が議会を通過するまでの何らかの立法的措置を必要とするのではなかろうかというようなことから、いわゆる労働組合法第四條第二項による政令を出すかという問題がその次の問題になりますが、これはひとり逓信省の問題ばかりでなく、関係が非常に深いのでございますが、政府全体として、この問題は目下いろいろと研究を続けておるのでございまして、大分これについて政令を出さなければなるまいというふうの意見が相当強いということを申上げて置きます。  それから第三番目には、この書簡によりまして、法律第三百十一号による取扱いが直ちにできるか。即ち占領政策に違反する者を処罰するというあの規定でございまするが、法律第三百十一号はそういうことになつておるようでありまするが、これが直ちにできるかどうかということを考えますと、これは非常なデリケートな問題でございまして、私共といたしましては、その直ちに取扱うことによつて犠牲者が出ないような措置をできるだけ速かに講ずべきであろうというような考えを持つておるのであります。  それから、公務員たる逓信從業員は組合を作ることができるか、つまり團結権は許されるのかどうかということでありまするが、これは私共、團結権は許される、つまり團体交渉権と罷業権は奪われると、こういうふうな見方を持つております。從つてその組合なるものは、つまり何と言いますか、從來の観念の普通の労働組合というのでなしに、友誼的な、親睦的な組合というふうなものになるのではなかろうか、併しその中から主たる目的としないところの政治活動、社会活動というものが相当できて來るものであろうと、併しながらこれは労調法の第百二條によるところのいわゆる政党献金その他の問題等の或る種の制限を受けることは止むを得ないであろうというようなところまで現在到達いたしておるのであります。  それから実際の問題といたしまして、この書簡によりまして、現在逓信省と從業員組合との間に結ばれておりますところの労働協約が直ちに失効するかどうかという問題でありますが、これもまだはつきりといたしておらないのですが、大体先の基本的な問題で申上げたところの、この書簡が法律的な実際的な効果をもたらすということになれば、これは当然團体交渉を基礎とした協約でありますから、それを又前提ともいたしておりますから、この協約は失効するのではなかろうかと、このようなふうに考えておるのであります。  それから團体交渉に、本省の大臣といたしまして、又地方の逓信局長などが應ずべきであろうかどうか。これは、どうも應じられない。いわゆる話合いというか、ジヨーイント・ネゴシエイシヨンと書いてあるようでありますが、この程度を出られないのではなかろうかというふうに解釈いたしております。今まで團体交渉の結果で地労委に訴えて裁定を仰いでおる組合が問題です。或いはこれから起るかも知れない問題に対して、逓信省地方出先官廳はこれに應ずべきであるかないか。現在の労調法によりますれば、これは應じなければ労調法違反になるのでありますが、これを一体どう取扱うべきかということでありますが、基本の團体交渉権というものが絶対いけないと、占領目的がそれをいかんということに相成りますれば、これ亦当然應ずる必要もないが、結局そういう交渉が、或いは行懸りが、全部失効すると、こういうふうに解釈するより外はない。  それから経営協議会が成立するかどうか。これは、どうも一應現在は中止するも止むを得まいということを考えておるのであります。  それから、組合がストライキその他山猫爭議に出た場合に、官側の措置はどうするか、これは直ちに政令第三百十一号を適用すべきであるかどうか。これらに関しましては、政府は親切な態度を以てこれに対する向うとの話合の結果についての結論をできるだけ速やかに明らかにして、政府從業員の進むべき問題を解決して行くようにしたい、このように考えております。それから組合の專從者の問題をどうするか、これは私は專從者という問題に対しては、初めから從業員組合に対しても大胆卒直に申述べておりますが、組合というものの本質から言つて、これは專從者という、政府から月給を貰つて職場を持たないで労働組合運動をするというようなことはこれは健全な行き方ではないという所信を初めから持つておりますので、どうしても組合專從者というものはこの際なくなるのではなかろうか、このように考えておるわけであります。  逓信省の從業員は、公務員法と基準法というものを併用して適用して行くのかということでありますが、これはどうしてもやはり今度のあの手紙の狙いから行きますというと、公務員法一本で行くのではなかろうかというふうに現在考えております。いずれにいたしましても現在のところまだ決定的にこの労働問題の取捌きに対しては十分になされておりませんが、今申上げることはいわゆる團体交渉権と罷業権を奪われるところの公務員法の改正の中に逓信省が入るということだけは明々白々たる事実でございまして、それまでの暫定的な、法律が改正されるまでの間の暫定的な措置をどうするかということに掛かつておると思いますので、この点に関してはできるだけ國会の方の審議権を冐涜せず、而も又從業員組合等に対しましても親切な態度を持つて、この書簡の線に沿つて実効を挙げて行きたい、このように考えております。  組織の問題でありまするが、この組織の問題は実はなかなかよく分つておらないので、関係方面でも実はまだ十分に議が熟しておりません。ただ私の構想といたしますところは、私は公團若しくは民営的な方向は全然考えておりません。私はこれはやはり國家機関として存続せしめたいということと、今一つは、從來通信事業に対しましては、或いは通信院だとか逓信院だとかいろいろなふうで組織をいじくつておりまして、その長たる人が閣議において内閣で発言権を持たない人を入れるというふうな場合もありましたし、又これはそういうことをもこの手紙の中では一應考え得られると思うのでありますが、これは併し決定的なことを書いてない、望ましいというような書き方でございますので、私は事業別に、つまり郵政と電氣通信との二つに分けて、これを逓信省という一つのもので統轄して行き得るのではなかろうかということも考えておるのでありまするが、若しそれ無理やりにどうしてもこの郵政と電氣通信とを分けなければならないと考えるならば私は二省にして頂きたい。二省にしておのおの大臣を置いてここでやつて貰いたい、こういう実は構想を持つておるのであります。それは決して私は逓信省のセクシヨナリズムの建前からやるのでなくして、今日まで通信事業に対するこうした理解が割合に薄く、割合に軽視された結果が通信行政をして今日の弱体を演じておると思うのであります。すでに申上げるまでもなく御承知と思いまするが、我が國の通信事業というものは著しく劣勢に置かれておることはこれは十目の一致するところでございまして、私はどうしても文化國家日本が目指す以上、通信を重要なる國家事業としてこれに大いに力を入れなければならないと考えておるのであります。從來、差障りもあるかと思いますけれども、この通信事業を軽視いたしました結果が、現実の問題として我が國におきましては電話の普及率のごときは世界の二十一番目という、南米のアルゼンチンにも劣つておるというような状態でございまして、五ケ年計画を立てて昭和十二年度に復旧せしめて見ても十七、八番目というところしか行かないという情けない状態でございまして、これを文化國家として眞に発展せしめるためには、どうしても閣議に発言権を持つ長がおるということが絶対必要條件と私は考えておるのであります。又從來この全逓從業員組合というものが、非常に戰鬪的、或る意味においては軌道を外すような、やけくそ的な方向になるというその原因の一半は、私は通信行政を軽視したということに対する自然的な一つの現象であるというふうにも考え得ると思うのでございます。この両者の問題、殊に四十万の從業員を擁する通信事業をただ二つに分けて、これを小さく内閣の一外局として置くというがごとき姑息な手段を用いんか、この從業員の意氣は消沈して、遂に通信事業に一大危機をもたらすものであるという考えから、私は現在御提案申上げておりまする逓信省設置法の構想を大体とるか、それをとることができなかつたならば、どうしても二省にして独立せしむる、こういう実は考え方を持つておりますので、特に議員各位の御支持御声援をお願いいたしたいと思います。
  21. 大野幸一

    ○大野幸一君 逓信大臣社会党出身閣僚であるけれども、從來労働組合に対して阿諛迎合することなく進んで來られたことに対しては本員も滿足しておるわけであります。併し今度のマツカーサー司令官の書簡は、一体この書簡の内容に立帰ることが官公労働組合として本然の姿に帰るのだということを徹底的に一つ政府としても盡して頂きたい、罷業権團体交渉権を剥奪されるというけれども、日本の労働組合は先程逓信大臣も言われた通りに、全く行過ぎになつていた、心ある者は誠に顰蹙に堪えないと思つておつたのであります。日本責任ある政府というものは、敢て総理大臣以下閣僚だけを指すのでなくして、その下部に至るまでの一政府の役人も、みずから政府を背負つておるという心掛けなくしては、完全なる政府ということはできないわけであります。そこで政府の一部、政府の内部であるところの官公労働組合の人々が、みずから罷業権を以て自分の武器に……。而もこれを濫用したことは間違いないのでありまして、今度剥奪されるというけれども、剥奪されるのではない、政府職員として当然のことだということをもつと政府としては勇敢に教育するというか、指導して貰うと共に、これを下部組織のいわゆる組合の人々にも徹底さして頂きたいと思う。將來を見れば分る、即ちすべての主権が國民に移り、その國民から國会、我々が審議をし、給料を決めるわけであつて、又我々は國民の意のあるところ、事情の存するところを知つてそれを審議し給料を定めるということになれば何も好んで我々が無理をするわけじやない、そこで我々はみずからが決めると同じことになるのであつて、罷業権を行使しなくても満足が行かれるということは、着々証明されて行くであろうと私は思うのであります。こういう意味で、官公労働の諸氏に対して大胆卒直に政府としても見解を述べられて、これが即ち今度の公務員こそ本然の公務員たる姿に立ち返るのだということを一つ自信を以てやつて頂きたいと思うのであります。私の質問に対する逓信大臣の答弁は重ねて満足であることを表明いたします。
  22. 冨吉榮二

    國務大臣(冨吉榮二君) 只今大野氏から御意見を拜聽いたしまして、確かに一つ意見だと思うのであります。私はお言葉を返すようで甚だ恐入りますが、私は卒直に私の氣持を申しますと、実は私が逓信省に入りまして、全逓の諸君にも常に申して参つたのであります。私は大体諸君の團体交渉権、或いは罷業権というものを奪いたいという精神は毛頭持つていないのだ。併し大体團体交渉権、罷業権というごときものは、これは傳家の宝刀であつて、容易に拔くべからざるものである。然るに諸君は常にこれを拔き放つて、どうも世間を騒がしているのでありますが、床の間に飾つてある傳家の宝刀は大いにいいし尊重もするが、それをときどき引き拔いて暴れられるのではどうも床の刀掛のそれも取つてどこかへ隠さなければならないような次第に陷る虞れがある。心身に錯乱状態を來した際にはいつでも取つて隠すということはあり得ることで、そういうようなことは、何も團体交渉権を否認するとか、否認せぬとかいう問題とは別に、諸君が社会に危害を與えないような良識と叡智によつて運動が進められる限り、我々は何らそれに対して干渉し得るという考え方は持つていないのだということを私は大胆卒直に、実は健全なる労働組合の発展のために申して來ておつたのであります。然るに今回そうした杞憂が完全に的中いたしまして、実はその方々の刀が取上げられたという姿になつて來るのでありますが、錯乱状態が若しこれで目覚めればまあよろしいのでありますが、依然として錯乱状態が続きますと、又棒切れを以て立ち廻りを演ずるというようなこともあるように、基だ不幸な状態を惹起する。要するにすべて法律を使う手によつて非常によくもなれば、或る意味においては禍いをなすということがあり得るのでございまして、民主主義の基本原則である良識と叡智とを練磨することなくしてこの與えられた傳家の宝刀を濫りに拔き放つがごときような行爲がかくのごときことをせしめたのであつて、私は必ずしも非常な満足すべき次第というふうには考えないので、これは誠に私はかくのごときことによつてのみ日本の安全が保たれるということに対しては、私、現在政治の一人の席を持つ者として、みずからの責任を非常に痛感し、実はこの点においては遺憾の意を表する次第であります。併しそれは決してマツカーサーの書簡それ自体に対する遺憾の意ではなくて、かくのごとき事態を惹起せしめなければならない日本の現状に対しまして、私共も亦責任を感ずるのでございまして、この精神によつて、今後労働者の問題は今お話のごとく國会にお願いをいたしまして、眞に彼らをして安んじて仕事をせしむる方向に進むという努力を我々も亦惜まないものであることを申上げたいと思うのであります。從來官廳の俸給というものは、私は常に考えておるのでありますが、これは生活費というのではなくして、実は呼吸費であつて、酸素を吸入して炭酸ガスを吐き出す呼吸作用を営むだけを実はやつておるように思うのでございまして、これらの点に対しましては、私共政府の者といたしましても、又、私二重席でございますが、國会議員といたしましても、この問題は一つ、眞に國民のサービスをして呉れる公務員に対しまして、我々が先ずでき得る限りの生活を向上せしむる線に沿うて、このマツカーサーの指令が出て團体交渉権、罷業権を剥奪されたことによつて、寄貨措くべしとなすところの反動的な、右翼的な偏向が出て來ないように、飽くまで中止にして而も正しき建設に欣然として政府從業員が協力して呉れるような態勢のために、諸般の政治的考慮を拂つて進みたい。このように考えております。
  23. 新谷寅三郎

    ○新谷寅三郎君 いまの大野君の質疑のマツカーサー元帥の書簡でありますが、これにつきまして私も多少政府のお考えを伺つておきたい点もあるのでございますが、それは他日に讓ります。併しこの書簡が全官公の労働運動に非常に大きな変革をもたらすこともありましようし、本委員会として逓信省設置法案なども採上げておる次第でありますから、相当重要な関係がありますので、マツカーサー元帥の書簡の写しの原文を資料として出して頂きたいと思うのであります。最近新聞に報道せられますところはいろいろ区々になつておりまして、政府の方でも解釈上、この書簡に対して御審議中であるということを承るのでありますが、本委員会でも、原文によりマツカーサー元帥の眞に言つておられるところを十分に理解しておく必要があると思います。原文と、できればその仮訳のようなものがあれば仮訳を附けて、できるだけ早く配付して頂きたい。
  24. 冨吉榮二

    國務大臣(冨吉榮二君) 承知しました。
  25. 深水六郎

    委員長深水六郎君) 大臣に対する御質疑はありませんか。それでは大臣は明日お願いすることにして、この法案に対する質疑を継続いたします。
  26. 新谷寅三郎

    ○新谷寅三郎君 電波局長にお願いしたいのですが、先程あなたがおられないときに大臣にお尋ねしたことでありますが、一般放送局の関係でここにこれだけ明確な規定を置かれました以上は、これを実現するために必要な、例えば電波の割当とか、資金とか資材とか、こういつたものについて逓信省として、或いは政府といつた方がいいかも知れませんが、政府として相当に御用意があるものと考えなければならないと思うのですが、逓信大臣逓信省立場から、ここまでの十分な用意があるということを明言することを避けられたのです。併し少くとも電波に対しては、逓信省としては相当に考慮せられ、実現の可能性があるという電波だろうと思うのでありますが、この電波に関しまして一般放送局に割当の可能性があるかどうか、どの程度までやれるか、成るべく具体的にお答えを願いたい。それから資金とか資材に関しまして、必要がありますれば、大藏省或いは安本から説明をして貰つてもいいのでありますが、逓信省の方で、若し答弁し得る範囲で何かありますれば、それも併わしてお答えを願います。
  27. 網島毅

    政府委員(網島毅君) 今の御質問にお答えいたします。現在逓信省にいわゆる民間放送として出願されておりまするものは、七つばかりございます。その中最も早く出願されましたものは昭和二十一年の春でございまして、これらのいわゆる民間放送の出願に対しまして、逓信省としましてはこれをどういうふうな取扱いにするかということを、いろいろ考究して参つた次第でございますが、関係方面の意向もあり、かたがたできるだけ早くこの新らしい放送法國会で御審議願い、その法案從つて処理した方がいいという考え方から、今日までこれらに対しましては保留という形になつてつて次第でございます。ところでこの民間放送に対しましては、昭和二十年の秋に当時の閣議におきまして、この民間放送を普及発達さした方がいいという決定が行われておりまして、逓信省といたしましては、その閣議の決定の趣旨に基きまして、周波数その他の問題について、いろいろ準備をした次第でございます。御承知のように現在日本放送協会施設といたしまして、すでに百六個の施設を持つておりまして、これらに対しましては、相当多数の周波数がすでに使われております。併しながら現在の中波放送、いわゆる法案で申しておる標準放送のバンドの中において、余つておる部分が絶対ないかと申しますと、そうではございませんで、まだ若干の空隙がございます。更に昨年アトランテイツク・シテイ会議で決定された國際周波数割当によりますと、今の標準放送のバンドが若干拡大されまして、その部分からも將來は更に何がしかの新らしい放送周波数というものが、獲得できる情勢にございます。從いましてこれらのことを考慮いたしますれば、周波数の面から考えますと、新らしい放送のためのバンドが絶対ないということは、ないのでございまして、勿論数には限りがございますが、若干のものは使用し得るという状態にございます。更にこの法案に記載されましたところの起短波放送という部面になりますと、現在日本にはまだ一箇所もございませんで、起短波の放送割当のバンドは將來相当大幅に民間放送その他に利用できると考えている次第でございます。  次に、この民間放送に対しまして資材とか、資金という面で、何か考えているかというお話でございまするが、現在私共の考えといたしましては、民間放送に対しましては、日本放送協会と違いまして、これはその事業を計画し、これを推進して行く方々の全く自由意思に任すべきものではないか、というふうに考えておりまして、資金とか、資材という問題につきまして、現在特にどうこうということは考えておらないのでございまするが、御承知のように無線の機械は、一般の通信機械その他に比べまして、資材の面では比較的少くて済む利便を持つております。從いまして將來経済状態が好轉した曉におきましては、これらの問題も逐次解決できるのではないかというふうに、考えている次第でございます。
  28. 新谷寅三郎

    ○新谷寅三郎君 只今の御答弁で周波数に関する問題は、一應余裕があるようでありますから、何れ他日どの程度の余裕がありますか、具体的にお聽きしたいと思うのでありまするが、資金とか、資材とかに関しましては、別に逓信省としては用意がない、或いは逓信省仕事であるか、他の省の仕事であるか分りませんが、電波局長の御答弁がそのまま政府の御意向であるというふうに考えるのは早いでありましようが、併しいろいろ建設をするとか、この建設をするにいたしましても、これは相当大きな資金が要ると思うのであります、その資金なり、資金の枠を全然一つも面倒を見てやらないということになりますと、例えば資材について、統制物資を得ようと思えば結局、闇で買つて來る、これ以外にないということになる。金融についてもやはり同様だろうと思うのであります。そういうことは政府としては、やはり免許を與えた以上はこれを実現させるために、何処かで世話をしてやらないで、勝手にやれということでは、絶対に実現しつこはない、これは明瞭だろうと思うのであります。この点につきましては本委員会におきましても、他の機会に安本なり、大藏省なりから、特別に出席して貰つて意見を聽くつもりでありますが、この世話役である、逓信省におかれましても、只今からその点につきまして、免許を與えた場合には、それに対して資材の配当も或る程度してやらなければならん。資金、資材についても相当優先的に考慮してやらなければならんということを、お考えになつて、その点の折衝をしてその結果を、他の機会に御報告願いたいと思います。
  29. 網島毅

    政府委員(網島毅君) 先程私の申上げましたのは、逓信省として申上げた訳でありますが、日本政府として申上げたのではないので、その点御了承願いたいと思います。それから現在無線に関する限り全部政府の許可を必要とすることになつております。そのことは放送についても同様でございます。從いまして政府に対しまして許可申請をする場合には、現在経済安定本部からの訓令と規則によりまして資材の面につきまして、経済安定本部の工事の認証を必要とするということになつております。從つてその計画は経済安定本部に廻されまして、経済安定本部の方で資材の面からこれが可能であるかどうか見て、そうしてそれが可能であるという場合に、工事の認証をすることになつております。從いましてこの問題は今お話のように逓信省だけではいけませんで、資材の面につきましては経済安定本部がこれを承認をいたし、承認した場合には経済安定本部の方でいろいろ資材の面倒を見てやるということになつております。
  30. 新谷寅三郎

    ○新谷寅三郎君 お話はよく分るのですが、私の申上げているのは大体資金でも、資材でも相当窮屈でありますから、そういつたものが全然予定されておりませんと、資金、資材を出すということは、事実上不可能となつて來ると考えられるのであります。お話のような周波数の点から言つても、そう無制限にこういつた一般放送局ができる訳はない、やはり限られたものだろうと思うのであります。仮に実現するといたしましても、新箇所か三箇所できるだろう。又的確なものが出るだろうというお見込みであれば、今からでも大藏省とか安本に対しては、そういつた場合には大体どの程度の資金が要るだろう、或いは資材が要るだろうということを予め言つておかれまして、そうしてこの法律案が施行されました場合には、第三・四半期になるか、第四・四半期になるか知りませんが、その場合に申請が出ても資金、資材がないためにただ徒らに延び延びになるということを避けられるようにされるのがいいのじやないか、そういう意味で申上げておるのでありますから、これは権限があるとか、ないとかいうことを別にして、世話役である逓信省としては、その位のお骨折りをなさらないと、折角いろいろ理想的にお話になりますけれども事実上はできないことにしかならないだろうと思います。そういう点について特に御盡力を今からして置かれたらどうかということを申上げて置きます。
  31. 網島毅

    政府委員(網島毅君) 御趣旨はよく分りましたのですが、卒直に申上げましてこの法案國会を通過いたしますと、民間放送その他放送に対する政済は逓信省の手を離れまして、放送委員会に移ることになる次第でございます。従いまして逓信省といたしまして、將來放送委員会が果してどういう政策放送に対してとるか、ということにつきまして憶測するということは、非常に行き過ぎたことでないかと考えておりますので、今お話の趣旨はよく分るのでございますが、そういう面は一應逓信省といたしまして放送委員会の方に移したい、放送委員会でやつて頂くようにしたいと考えております。
  32. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 この法案に盛られておる精神をいろいろ拜見すると、大体民間放送局を作ることができるような趣旨の下に作られる案だと思うのです。併しながら只今政府委員のお話によると、すべて放送委員会で、これからの構想を新たにするということです。例えば先程私が質問したように、聽取料というものについても、日本放送協会放送受信する設備のある者は、日本放送協会に料金を支拂わなくてはならない。オール・ウエーブの機械がある場合とか、短波なら短波だけ受信される機会を設備しておつても、やはり日本放送協会にすべて料金を支拂わなければならない結果になるのですが、そういう観点からしても、放送委員会の構想は分らないが、將來民間放送はどうなるのか分らないということに帰着してしまうのでありまして、これでは民間放送というものを認める建前だと言われるが、結果において日本放送協会以外は設立が不可能だというふうにも解釈される。これについては政府委員側として、この法案をお作りになるときの構想はどういうふうでありますか。
  33. 鳥居博

    政府委員鳥居博君) 只今の御質問にお答えいたします。民間放送と、ここに法案に掲げました新らしい日本放送協会放送というものが、完全に業者の競爭事業にするとは考えておらないのであります。そうして民間放送根拠はどこに求めるかと申しますと、これは現在アメリカその他で行われておりますと同樣に、聽取者からは費用は取らない。これは民間放送一つである場合には、成る程日本放送協会と競爭して取つたらいいじやないかという考えも起るのでありますが、民間放送、この法案で申す一般放送局というものには制限を設けておりませんので、一地域に原則として幾つもできるわけです。この幾つものものが皆聽取料を取る、こういう建前にいたしますと、どれも取れなくなります。從いましてこの一般放送局というものは、原則としては聽取料の收入によつて営業をして行くというのではなくして、現在自由企業として行われておる國のすべてがそうでありますように、廣告放送の收入によつて営業して行くのが原則である、こう私共は考えております。廣告放送と申しますと、日本で今まで余り経驗がございませんので、非常に危惧はあるのでございますが、これは今まで世界中の他の國でも同樣でございまして、一番初めから廣告放送で非常に立派な放送局ができて、進歩発達したとは考えておりません。最初はやはり苦しい時代もございましようし、又廣告の内容にも洗練されていない耳ざわりな内容も出て來るかと思うのであります。併し現在アメリカその他で行われております廣告放送のやり方を見てみますと、極めて洗練されまして、そうして経常的な基礎も確立されておる。これは一つ一つの何か新らしい品物ができた、さてこれを宣傳して買つて貰うように廣告しよう、こういうような廣告が主にはなつておりませんので、主に放送せられます廣告の主眼となつておりますものは、或る会社、或いはその他の企業体の信用を維持して行く、こういう点に主眼が置かれてあると思います。日本にはこういう廣告業というものは現在ないのでありまして、放送というもので、そういう廣告ができるようになりまして、今度初めて有効に行われて行くものであると考えております。從いましてこういう基礎の上に、一度一般放送局というものが誕生して延びて行きますならば、日本でもそういう分野の開発というものは極めて廣いのではないかと、こう考えております。從いましてこの法案でも一般放送局は廣告放送又は放送時間を他人の使用に供して料金を取ることができることを規定し、日本放送協会の方は一切の廣告放送禁止しております。この点で経営の基礎も違いますし、又営業の方法も違つて來ると思いますので、只今御懸念になりましたように、日本放送協会のみが料金が取れるから、從つて一般放送局というものは成立しないだろうというふうには、私共は考えておらないわけでございます。
  34. 井上なつゑ

    ○井上なつゑ君 只今の一般放送局のことでございますけれども、各地方に幾つも幾つもできるようなことがございますと、いろいろ廣告放送とは言つておられますが、その廣告なるものが、いろいろな意味に変じて、一つ政党の独占物になるような虞れはございませんでしようか、承わつて置きたいと思います。
  35. 鳥居博

    政府委員鳥居博君) 只今の御質問は、廣告放送を行う結果、廣告主の影響のために放送がその方面の独占下に置かれはしないかという御質問であると思うのであります。これにつきましては、私共そういう点を考慮いたしまして、愼重に考えたのでございますが、法律で以て規定いたしております範囲は、飽くまでも放送不偏不党に行え、こういうことのみを規定いたしました。尚それをどういうふうに実現するかという細かいことは、委員会規則に譲りまして、そのときの情勢に合うように規則を変えながら定めて行ける、こういうようにいたしたいと思うのであります。それで原則といたしましては、例えばこの放送局は誰かが作つた、從つてその人の非常に知り合いの人の放送だけをする、或いは或る勢力関係のものだけをやる、そうして外の方は断わる、こういうことはできない建前にしております。これは一般の商品と同じように、例えば一時間なら一時間の放送料をするのに放送料は幾ら、こういう料金表のようなものを作らせまして、これによりまして、申込みによつて一切の利用者を公平に扱う、こういうのが原則でございます。そうやりました結果、例えば或る政党だけの申込みがあつて、外の申込みがなかつために、或る政党放送だけに偏して來た、こういうことは、事実の結果においてはあり得るかと思いますが、併し、それは他の政党が御利用なさらなかつたということだけでございまして、法規的にはそれは不公平であつたということにはならないと思います。法律的には、不公平が起るような懸念はないように考えたと思つております。
  36. 新谷寅三郎

    ○新谷寅三郎君 今の井上さんからお尋ねのあつたことは、相当重大な問題だと思うのであります。建前からいうと、只今おつしやつたようなことは、法律の表には何も出ていない。これは規則で決めるとおつしやるけれども、先程のお話によると、規則というものは放送委員会が決めるのでしようから、逓信省としては、それに対して何らの権限もないし、又それに対して関與されるような機会もないと思うのです。それでやはりこの法律案を正面から通読しましても、これは一例ですが、或る政党だけが放送局設置を認められ、或るものが認められないということになりますと、井上さんの御心配のような弊害が出て來ることは明瞭だと思います。若しそれをいけないのだというふうにお考えになり、又それが正しいものであるとするならば、むしろそれは法律にその点を明瞭にして置いた方がいいのではないでしようか、その辺のお考えを承りたいと思います。
  37. 鳥居博

    政府委員鳥居博君) 只今の御質問は、放送局設置者が或る政党色、その他の勢力影響にある者、こういう者が設置をする場合に、当然不偏不党というものは実現されそうもないから、それに関する制限規定を入れたらどうか、こういう御質問と承わりました。  これについてお答えいたしますが、この法案では、第五十六條を御覧下さいますと、申請の審理の仕方の規定が書いてございます。この第一号には、申請があつた場合には、「当該放送局設置が、第一條原則に合致するものであること。」と、こうなつておるわけでありまして、この一條原則に外れるものは当然免許されないという建前をとつております。第一條原則と申しますのは、先程も御説明申上げましたが、その中の第二号に、「放送を自由な表現の場として、その不偏不党眞実及び自律を保障すること。」これがこの法律の大目的なのでございまして、こういう目的が達成されないということが明らかに考えられるならば、その放送局設置は免許されない、こういう立場をとりまして今のお説を立法化したつもりであります。
  38. 新谷寅三郎

    ○新谷寅三郎君 そうすると、放送委員会規則で決められることは、それの手続とか、そういう細部のことであつて、今の政府委員のお話では、一政党が自分の党の宣傳に供するために放送局の申請をしても、それは五十六條の規定によつて基準に合致しないから免許はされないのだというふうに考えてよろしいのですね。
  39. 鳥居博

    政府委員鳥居博君) そう考えて結構だと思います。
  40. 新谷寅三郎

    ○新谷寅三郎君 そういつた場合に、尚もう一段深く考えますと、考慮しなければならんと思いますのは、今のような或る政党、或いは政党色の強い團体、又は個人が申請をされまして、実際やはり廣告放送として申請をされる、先程貴方からお話があつたように、それを利用するしないは廣告する人の自由であるから、たまたま利用しなかつただけで、これは一般には開放しているのだ、併し結果としては或る政党の宣傳だけが非常に強く出たのだということになりますと、今の形式論は免れることになつて、而も結果は一政党の宣傳の具に供せられるということになるわけですが、その点については如何でしようか。
  41. 鳥居博

    政府委員鳥居博君) お答えいたします。これは法理論と申すよりは、むしろ結果の処置如何ということで、今後の放送委員会の重要な任務の一つになると思うのでございますが、只今の御質問のようなことを防ぎ、又処理いたしますために、放送委員会は、各放送局放送内容、それから放送のやり方、それからその組織、それから背後の團体、こういうような勢力関係を日常注意いたしまして調査し、そうしてそれに基きまして、必要な勧告を業者に行いますと同時に、國会に対しましても、これを公文を以て報告させることにいたしております。そうしてこの輿論の結果いろいろの声も出ることと思うのでありまして、若しそういう放送放送委員会がこれを放任して置きまして、依然としてそういう一方に偏した傾向的な事実を放つて置く、こういうことが起りました場合に、國民に若しそれが不服であります場合には、これを放送委員会に提訴いたしまして、先程申上げました審理手続を経まして、一般の輿論並びに参考人、或いは識見者の意見を採入れまして、そしてこの放送局の免許を取消し、或いは止めさせる、こういう行政処分を発動させ得る規定を作つたのでございます。
  42. 新谷寅三郎

    ○新谷寅三郎君 只今の御答弁で、一應措置はしてあるように伺いましたが、その点は別に意見を申上げません。序でにもう一つ御伺いして置きますが、先程の御説明の中で、日本放送協会の性格について一應説明があつて、これは特殊法人で、資産は現在の放送協会のものを引継ぐのであるけれども、資産のない法人として、今度は社團でも財團でもない特別の新らしい観念で以てこの法人を作るのだというように拜聽いたしましたが、現在の日本放送協会の資産につきましては、これは創立以來恐らく聽取者から出した聽取料が基になつて、初めの出資金から段々膨れて今日のような状態になつておるのではないかと思います。いわば國民殆んど全体から出した聽取料によつてでき上つた資産でありますから、資産について別に何らの法律規定もない特別の法人だというお話でありますが、その資産が非常に國民としては関心を持ち、又それだけこれを管理される新協会でも相当に責任を持つて管理されなければならないことは当然だと思うのであります。然るに、この法律案によりますと、資産の管理につきまして殆んど見るべき規定がない、勿論その理事者は、当然の職責としてその資産を有効に運用し、又それを管理するという責任はありましようが、場合によりましてその資産の一部分を処分して新らしい事業をやつて行こうということに対しまして、これは殆んど法律面では放任されておる。この資産の処分などについての取締規定を置かないと、國民としてはその点について安心ができないというような感じもするのでありますが、その資産に関しまして、これはどこかに法律の明文でもありましようか、或いは放送委員会で何かこれを取締るような方法をとるということになつたおるのでありましようか、御伺いしたいと思います。
  43. 鳥居博

    政府委員鳥居博君) 只今のは、新らしくこの法律規定いたします日本放送協会の資産についての規定でございますが、これについてお答え申上げます。  先ず最初に、新谷委員の申されました通りに、現在の放送協会の資産内容を、先般お手許に差上げました資料によりまして御覽になりましても明瞭な通りに、会員の出資金というものは僅がでございまして、僅か百数十万円でございます。それに対しまして、新谷委員の申されました旧來の聽取料の積立金、こういうものが前年度までに約一千二百万円、本年度の決算で八百万円ございますから、大体二千万円、こけだれのものが從來の聽取料の積立金になつております。その外に借入金が非常に大きいのでございまして、これが正規の借入金だけで約五千万円を超えております。その他業務上の債務を入れますと、これが相当の額になりまして、すべての合計が約二億八千万円という資産内容になつております。從いまして、この協会を見てみますと、いわゆる基本金に相当するものが殆んどないのでございます。先程法案の御説明を申上げましたときにも申上げましたが、この法人は資産を持たないのではないのでございまして、基本金を持たない。法人としては財産を持ち得るわけなのであります。資本金というものを持ちません。それは、現在の日本放送協会がすでにそういう性格を持つておるわけでございまして、この性格を引継がした形でございます。  それから次に新らしい法人の資産でございますが、この財産につきましては、この法律では、先ず第四十九條に放送設備の讓渡その他の制限を掲げております。そうして「協会は、放送設備の全部又は一部を賃貸し、担保に供し、その運用を委託し、又は方法の如何にかかわらず他人の支配に属させることができない。」、こうはつきりいたしまして、財産の目に見えない手による支配というものを抑えまして、第二項では、「協会は、放送委員会認可を受けなければ、放送局設備の全部又は一部を讓渡又は処分することができない。」こう規定いたしまして、凡そ放送に使う財産の処分につきましては、放送委員会認可を必要とする、こう制限いたしました。これは、事務所その他の直接放送に使うものでない設備につきましては適用されません。  それから尚この資産につきまして一番大事なことは、経営内容でございまして、経営がまずくなりますと、資産内容は悪化いたしまして、結局これは廣い意味での國民の負担を増すことになるわけでございまして、その結果は、聽取料の値上げとか、或いは借金に対する利息が嵩むと、こういうことになりまして、その結果は國民の負担を増大することになるわけであります。そういう意味での資産というものを保護いたしますために、放送協会放送委員会に決算の報告をする義務を付けております。そうして同時に、放送委員会はその決算を監査いたしまして、これに対しまして意見を付けて、これを國会に報告する、同時に國民に公表する、こういう保護規定を入れております。但し、從來と異りまして、これを認可制度にはしてございません。この点が、從來と幾分異つて参ります。併し、若し経営内容に不良のものがあると認められます場合は、放送委員会は何時でも必要な資料を取りまして、調査いたしまして、同時に日本放送協会に対して適切な勧告をいたすことができます。この勧告は、干渉ではないわけでございまして、日本放送協会に対しまして放送委員会國民を代表して國民の意思を傳える、こういうふうに私共は解釈いたしております。この勧告を採らないかは、放送協会の幹部の任意でございますが、そういう勧告を何度も受けまして、而もそれが改善されないという場合には、これは國民の前に放送協会の役員が適切に業務を行なつているかいないかを判断する重要な資料になると考えております。放送協会の役員が適切にその業務を遂行しない場合には罷免の原因になるわけでございます。それは日常の業務についてでございますが、次にこのようにして構成されております日本放送協会の実質的な財産というものは、飽くまでも公共財産であるという考えを堅持いたしております。從いましてこの法人を解散するような場合は、任意にこれを分割したり処分できないようにいたしまして、これを第五十二條に、「解散については、別にこれを法律を以て定める。」といたしまして、若しこの協会を廃めますような場合には特別の法律を出しまして、法律によつて残有財産を処分する、こういうふうに規定いたしまして、協会の資産並びに財産につきましては國民的な立場から十分に保護したつもりでございます。
  44. 新谷寅三郎

    ○新谷寅三郎君 先程の御説明でこの放送債券、放送協会の発行する債券十五億円ということについてちよつと伺いたいのですが、これは今日でなくて結構ですから、十五億というものを限度にされた算出の根拠、それを成るべく数字でお知らせ願いたい。私の考えておりますところによりますると、この十五億というような程度では今後の建設が非常に不十分ではないか、この十五億の債券を償還して行く場合にも相当の資金が要るだろうと思うのであります。それは今後全部聽取料で賄つて行くのだというようなお考えもありましようが、これも又別の問題として後でお聞きしたいと思うのであります。とにかく建設資金として十五億というもので果していいのかどうか、十五億で一体どこまで建設できるのかということを考えますと、今感の悪いところとか或いは全然聞こえないところが相当あるのですから、到底これでは不可能ではないかという氣がするのであります。これについてもう少し具体的の資料を頂きたいと思うのであります。  それから聽取料のことでありますが、これは理屈は止めまして、要するにこの日本放送協会の方は一般放送局と違つて、相当公共的な見地から或る程度國がやつてもいいような放送協会にやらせるのだから、特別に恩典としてそれに必要な経費は強制的にこれを徴收するとこういうお考え方ではないかと思うのでありますが、併し実際上この法律案を見ますと、この聽取料で以て結局日本放送協会の支出に充てて行く以外には方法がない、営業放送はやれないのですから、これ以外に收入はない、そういたしますと、日本放送協会の行なつておりますすべての事業が、いずれも國家的のものであるかということになりますと、必ずしもそうではないという感じがするわけであります。その一例として考えられますことは、そういう國家的のものであれば、むしろ日本放送協会に集中してやらせるべきでありますが、一般放送局でもやるような仕事がやはり日本放送協会の方でもやつてもよろしいというふうになつておるのであります。そうしますと一般放送局の方は、同じ仕事を聽取料を取らないでやらなければならないのだが、日本放送協会の方は、これは堂々と支出が多くなればそれだけ聽取料にかぶせて安心してどんな仕事もやつて行けるというようなことにもなるのではないかと思う、從つてそういう点から見ますと、例えばテレヴイジヨンというような問題につきましては、これは一般もやつてよろしいし、日本放送協会がやつてもよろしいということになりますが、実際上一般放送局がやろうと思つて日本放送協会に太刀打ちできないのは、これは当然のことと私は考えるのであります。從つて聽取料で以て賄う経費といいますか、この聽取料の使途といいますか、そういうものはここでむしろ法律で制定するなり、どうしても法律でいかなければ、或いは規則で決めるなりして、國家的な公共的なものはこれは聽取料でやつてもよろしいが、その範囲はこの程度であるということを明瞭にして置いた方がより民主的であり、更に一般放送局の発展もこれによつて、間接的ではありますけれども期待し得るのではないかと思うのでありますが、この点についての御意見如何でございましようか。
  45. 鳥居博

    政府委員鳥居博君) 只今新谷委員から御質問のございました点は御尤もと思いますので、法案にも私どもとしてはできるだけ御趣旨の点を盛り込んであるとこう考えておりますので、例えば第二十五條を御覽頂きますと、これに「(協会の業務)」という規定がございまして、日本放送協会はここに挙げました十一項目の業務だけに限定されまして、これ以外の業務はできないわけでございますが、尚念のためにこの第二項には「協会は、前項の業務を行うに当つては、営利目的としてはならない。」とこう決めまして、第三項に「協会の剩余金その他の收入は、すべて本條第一項に掲げる業務遂行のために用いなければならない。」こういたしまして、聽取料收入その他のすべての收入はこれ以外の目的に使えないということを限定いたしました。尚第二十五條の業務につきましては、相当二十五條では大幅に書いてございます。そのために只今御質問のありましたように、一般放送局がやれるようなことを日本放送協会も同じようにやるのではないか、それでは意味がないという御質問も御尤なんでございますが、第二十五條に書きましたことは、先ず放送をやる設備を作つてよろしいということと、放送番組を独自の立場から編集してそれを放送してよろしいということと、その放送を行なうのに必要な範囲内で以て劇團、音樂團、そういうような文化團体を維持養成することができるということと、次には放送の進歩発達を図るために技術の研究所を設置することができる、それからその次には公平で正確で正しいニユース放送するために、ニユースの蒐集に関する機関を設けることができる、こういうことが主な項目でございます。そうしてここでは放送をどういうようにしようということは特に規定してございませんが、第四十六條に協会放送番組の編集という一條を特に設けまして、日本放送協会がこのような方針の下に番組を編集しなければならないという制限事項を明記いたしました。その第一項では凡そ日本放送協会放送は公衆の要望を満たすものでなければいけない、そのために定期的に継続して科学的な世論調査を行なつて、それに基いて番組の編集をしなければいけない、こういう大きな制限を設けまして、飽くまでもこの放送國民放送であるということを実現しようと図つております。それから次には日本放送協会では無記名で、自分の意見として時事問題その他について放送をすることができないということと、すべて論爭のあるような問題につきましては一方的なものだけの放送ではなくて、係爭になつているすべての点を各方面から採り上げて、全部の係爭点が明らかになるように放送しなければならない。又成人教育や学校教育にも寄與するような放送をしなければならない。それから今度は音樂その他の演藝的な放送につきましては常に最善の文化内容を保持するものでなければいけない。こういうような規定を設けまして、一般民間放送局とは非常に性質が違うものであるということを明らかにいたしました。大体これで御懸念の点は解消するのではないかと存じておりますが、尚不足の点がございますればお教え願いたいと存じます。
  46. 新谷寅三郎

    ○新谷寅三郎君 只今意見を申上げることは差控えますけれども、或る程本來の目的が違いますし、特殊の法人でありますから二十五條二項、三項のごときはこれは当然のことであります。併しこれによつて放送協会の行います事業一般放送局との間の区別が非常にあるのだということにはならないのであります。それは目的が違いますけれども一般放送局でも、営業の目的を以てやつても差支ないけれども、それが公共的な目的を以てやつてもこれは差支ないわけであります。その間に殆んど実際問題としては差別をつけることが困難だろうと思うのです。その場合一方は聽取料で何もかも賄うし、一方は廣告收入以外にないということでは非常に偏頗なことになるのではないかということが私の懸念するところであります。それだけならばよろしいのでありますが、日本放送協会一般放送局とがともすれば將來対立的になつたという場合を仮定いたしますと、ここで日本放送協会の方は聽取料を相当沢山取つて將來に対する技術研究などをやる、その結果できたものは一般放送局にその技術を使わせないというようなことになつて來るとこれは非常に聽取料の使い方が悪いということになる。今のは一例に過ぎませんけれども、聽取料を使つて技術研究を大いにやるというようなこと。そのできた結果というものはむしろ一般に公開して一般放送局においてもこれを十分使わせるというような、つまり國に代つてやるのだというような反面を持つていないと、こういう特殊の、聽取料を取れるというような特権は持ち得ないのだと思う。そこらの点が法律上明確を欠いておりますから今申上げたような質問をしたわけですが、これについての御意見は又別の機会に……、私はこのくらいで……。
  47. 鳥居博

    政府委員鳥居博君) 今の研究の点につきましては四十五條に、今の御趣旨と幾分違いますが、放送の進歩発達に極めて大事なものにつきましては、國費を以てこの放送協会の研究所に研究を命じよう、こういう考えでございます。これは國費を出す。その代りにその研究の成果はすべての一般放送事業者に全部公開する。こういう建前で特に四十五條規定いたしました。
  48. 深水六郎

    委員長深水六郎君) では本日の委員会はこの程度で散会いたします。明日は午前十時より開きます。    午後四時五分散会  出席者は左の通り。    委員長     深水 六郎君    理事      千葉  信君    委員      大野 幸一君            大島 定吉君            油井賢太郎君            井上なつゑ君            新谷寅三郎君   國務大臣    逓 信 大 臣 冨吉 榮二君   政府委員    逓信事務官    (臨時法令審査    委員会主査)  鳥居  博君    逓 信 技 官    (電波局長)  網島  毅君   説明員    逓信事務官    (電波局管理課    長)      莊   宏君