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國務大臣(
冨吉榮二君)
只今の
新谷さんの御
質問といい、又先程の
千葉さんの御
質問といい、
逓信事業に対する非常な御理解と、そうして
從業員に対する御
同情溢るる点からの御
質問等承りまして、私は謹しんで敬意を表します。固より私共この
訓練法を制定しまする
ゆえんのものは、世間で一部に誤解のありまする、いわゆる單なるこの
機関として作れば、それで足りるという
意味合においてするのではございません。
仕事は、ただ單に
技術、
知識というだけで問題が解決されるのではなくて、いわゆる人格の
陶治及び思想の
堅実化、そうした問題の基礎の上に立
つての
知識教養、
技術というものがあることは申すまでもないのでございまして、その点に関しまする
熱意におきましては、私共決して欠くるところはないとみずから信じておるのでございます。ただ、この法制を出しまする
ゆえんは、たびたび
政府委員の方からも御
説明申上げたと思いまするが、
從來の
教育の
程度において欠くるどころがあるためと、今
一つは
從業員に
一つの大きな
希望と抱負を與えたいという
建前から、
講習所というものの設置はされたものと
考えまするし、その点に関しまして、非常な貢献をなし來
つたことは、私これを認める次第でございます。併しながら御
案内のごとく、新
憲法が
実施せられまして、いわゆる官僚のセクシヨナリズム、或いは畸型的な
人物の
養成ということが揚棄されて、そうして普遍的に
教育基本法に基くものによ
つて、
一つの
一般的な
教養を高めて、その上に就業せしめるというのが
教育の
理念であろうかと思うのであります。この
意味におきまして六・三制の
実施、或いは
新制高等学校、或いはその他
実業專門学校、大学というようなそれぞれの課程におきまして必要なる
一般教育は施されるわけでございまして、更に
通信事業上必要とする
教科目を
訓練するというのが大体の主眼でございます。併しながらこれは、今
千葉氏もお述べになりましたように、現在の
過渡的形態の下においては、必ずしも六・三制の
実施により
教養が高ま
つて來るとは思えないので、この点においては、この
運営の面において、大いに我々が
苦心努力をしなければならんところかと思うのでありまして、この点に関しましては、私共できるだけの
努力をいたしまして、この御心配に
なつたような点を排除して参りたいとこう思うのでございます。
第二点のいわゆるこの
逓信省がこういうものを持
つておるために、いわゆる就業しながら向学して、
学問を修得して、社会的な立派な
人物になれるという
一つの
希望に対する失望と言いますかそういう点でありまするが、それは、いわゆる
從來通信事業なるものが、著しく劣悪なる
労働條件の下に置かれたということは、私は大胆に認めなければならん点であろうかと思うのでございます。從いまして私共はこの
通信事業の
重大性と、つまり
文化國家の
神経系統を扱うこの
通信事業の
重大性が、
社会一般にも認識されまするし、
國家の施政といたしましても、この
事業に対する十分なる
配意が行われるということを前堤とし、又現実の問題といたしましても、私は必ずしも
逓信從業員が十分な、或いは他の省より待遇が優れているとは決して
考えておりません。多少不足の点がございまするとまだ
考えておる一人で、この問題の解決には、
努力しておるつもりでありますが、
給與の面におきましても、著しく劣悪な
條件ではないと今日
考えておる次第でありまして、その
要員の
獲得等に関して、この
講習所なるものがなく
なつたということによ
つて、著しく障害を來さないものと
考えるのであります。併しながら何を申しましても、御
案内のごとく、四十万の
從業員によ
つて、この人の協力を
予算の
関係から見ましても
物件数が三三%、
人件費が六七%を占める点から見ましても、この人の質に依存する点が
通信事業は非常に多いのでございまするが故に、この
人物の
養成につきましては、これは大なる関心を持たなければならないと思いますので、今
新谷さんが
お尋ねの、そのいわゆる
委託制度というものは、実は我々も非常に骨を折りまして、その
関係方面に折衝いたしまして、この項を入れたような次第でありまして、このことは、
國家財政の許す限りにおいて、私は
一般的に、普遍的に、一部のただ英才を目的とするということでなしに、できるだけ多くの人に向学の
機会を與えるように
努力をいたしたいと念頭する一人でございます。又私共の命数もいつまでか分りませんけれども、恐らくこの精神は、遞信省の
事務当局においても引継かれて、いや増すこの
通信事業の
從業員の
人的素質の向上といいますか、そういう
方面に向
つては、
努力をしない限り、我が國の遅れたる
通信事業を世界各國の
通信事業に伍して、本当に完璧を期し得るということは不可能と思います。こうした
至上命令の
建前からも、この
機構の
運営如何というものは、非常に重大な
関係があると思いまするので、
事務当局においても、永久にこの問題を有用に
活用するものと私は
考えておる次第でございます。