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1948-06-10 第2回国会 参議院 通信委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月十日(木曜日)    午後一時二十七分開會   —————————————   本日の會議に付した事件連合委員會開會に關する件 ○電信電話料金法案内閣送付) ○郵便法等の一部を改正する法律案  (内閣送付) ○遞信職員訓練法案内閣送付)   —————————————
  2. 深水六郎

    委員長深水六郎君) それでは只今から通信委員會開きます。議題に入る前にちよつと御報告申上げますが、前囘の委員會のときに、今度料金値上げ關係公廳會を開くという問題につきまして、委員長竝びに理事にいろいろなことを一任されたのでありますが、公廳會を開くことに取計らいまして、六月の十六日の午前十時から開くという手續をとつておきましたから、御了承を願います。それから六月八日に決定委員會豫備審査のために付託になりました遞信省設置法案について、連合委員會を開くように申入れするかどうか、皆さん方の御意見を伺つて決めたいと思いますが、これは連合委員會を開くことを申入れることにいたしますかどうか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 深水六郎

    委員長深水六郎君) それでは連合委員會を開くように申入れすることにいたします。
  4. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 遞信省設置法案連合委員會は結構です。その外に正式の審議がむつかしければ通信委員會の方で……、仕事に非常に關係がありますから打合會なり何かの形で以て、通信委員會で十分檢討して參つた方がいいと思います。
  5. 深水六郎

    委員長深水六郎君) それではそういうようなことにいたします。それでは郵便法等の一部を改正する法律案竝びに電信電話料金法案議題といたします。先ず政府提案理由の御説明を願います。
  6. 下條恭兵

    政府委員下條恭兵君) 只今議題となりました郵便法等の一部を改正する法律案竝びに電信電話料金法案につきまして、一括して提案理由を御説明申上げます。  通信事業は明治十八年遞信省創立以來多少の消長はありますが、一貫して黒字を出して來たのでありまして、公益性要求を充たしつつ企業的にも採算が採れていたのであります。然るに昭和二十年度以降は各年度共引續き缺損を生じまして、昭和二十二年度におきましては、六十六億九千五百六十三萬三千圓という巨額の赤字を出したのでございます。このように終戰後連年赤字を出している原因は、戰爭による被害、戰爭中の設備酷使等によりまして、收入が減少して參つております半面、インフレの昂進により人件費及び物件費が急激に上昇したことによるのであります。終戰以來遞信省設備復舊サーヴイスの改善に努めておりますが、通信事業取扱物數について見ましても、電報が良好な復興を示しているのみでありまして、郵便及び電話は戰前の水準に到達するには今後相當努力と年月とを要するのであります。  ところで收入の元をなしておる各種通信料金について申上げますと、現行料金昭和二十二年度初めにおきまして、千二百圓の給與水準と、昭和二十一年十月の物價水準に對應して、從前の約三倍に改訂されたものでありまして、このときの基礎となつた給與水準物價水準とに變化のない限り、收支はほぼ相償う見込でありました。ところが給與水準年度當初において早くも一千六百圓に引上げられ、更に七月以降において千八百圓水準に改めると共に、物價水準もいわゆる新物價水準の設定に伴いまして、大幅に引上げられたのであります。その後生活補給金二・八月分を支給した外、本年一月に遡つて二千九百二十圓給與水準を採用することになつたのでありますが、通信料金はその間ずつと据置きになつていたので、收入不足を補填する財源は、專ら一般會計よりの繰入金及び借入金によつて賄わざるを得なかつたのでありまして、結局昭和二十二年度通信事業特別會計損益勘定(特第十號補正豫算)の收支は、收入において百三十七億二千四百七十一萬二千圓であり、支出において二百四億二千三十四萬五千圓でございまして、差引不足額六十六億九千五百六十三萬三千圓となつたのであります。然らば昭和二十三年度の收支見込はどうかと申しますと、現行料金を据置くとしますれば、二千九百二十圓の給與水準と現在の物價水準によりましても、收入の百七十八億五千三百六十萬一千圓に對しまして、支出が三百三十三億七百四萬二千圓となり、差引百五十一億五千三百四十四萬一千圓の不足を生ずるのであります。  このような状況では特別會計建前である獨立採算制は無意味となり、徒らに一般會計の負擔を大きくする結果になりますので、速かにできるだけ事業收支の均衡を圖り、現在のゆがめられた姿を改める必要があります。そこで近く改訂せられる給與水準及び物價水準をも考慮して、通信料金の概ね四倍の値上を計畫した次第であります。通信事業收支は今囘の値上げ實施しましても、尚五十億圓の赤字を生ずるのでありますが、これは一般會計から繰入金によつて補填いたしたいと存ずるのでございます。  以上の如く通信料金改訂は、各種料金とも概ね四倍引上を原則として策定いたしたのでありますが、料金政策上、或は徴收技術等の點を考慮に入れまして、個々の料金値上げ率の間には若干の開きを見ることとなりました。今その主なるものの中先ず郵便に關する料金について拾つて見ますると、第一種郵便物、即ち封書は料金徴收上の便宜から、現行一圓二十錢のものを五圓に引上げることといたしましたが、速達、配達證明内容證明等のごとき一部特殊取扱料金については、その取扱に要する手數、その他利用價値などの點を勘案いたしまして、これらの料金は三倍乃至三・七五倍程度に止めることといたしました。尚料金引上げに關連いたしまして、書留郵便物を亡失又は毀損いたしました場合における損害賠償額は、現行百圓となつておりますものを四百圓に改めたのでございます。  次に郵便爲替及び郵便振替貯金關係改正料金でありますが、他の通信料金と異なり、もともと送金制度であります關係上、直接金錢に繋がつておりますので、極端な引上げは許されない事情にあり、殊に郵便官署を利用する小口送金でありますだけに、國民大衆の利益を格別に擁護する必要があると考えました結果、郵便爲替については、平均引上倍率を一・八三倍、郵便爲替貯金については、同じく三・八四倍といたしたのであります。  次は電信關係の、改定料金でありますが、これ亦現行料金の四倍という建前によりましたことは、郵便料金の場合と同樣でありますが、この際料金制統竝びに利用制度合理化を圖るため、至急電報料は現在普通電報料の三倍となつていましたものを、今囘はこれを二倍とすることとし、又新たに市内電報及び抑日配達電報制を創設いたしまして、その料金はそれぞれ一般電報の約三分の二程度に止めることにいたしました外、時間外の制度を廢止いたしまして、夜間におきましても特別の附加料を課することなく電報を受付けることといたしたのであります。以上のごとき低額電報制度創設等による電信收入の減少を補い、全體として四倍引上げ收入の確保いたしますため、普通電報料現行料金の五倍に引上げることといたしたのであります。次に電話料金でありますが、電話使用料竝びに附加使用料とも加入關係料金につきましては、概ね四倍の値上げをいたすこととしましたが、公衆電話その他郵便局署取扱に係る市内通話料は、主として加入電話を持たん一般公衆の利用せられるものであり、その大衆負擔を聊かでも輕減いたしまするために、現行五十銭を一圓に引上ぐるに止めました。又市外通話料につきましては、キロ當り單金の平準化を圖りますために、十二キロまでの區間については現行の三倍、八十キロまでの區間現行の五倍に、八十キロ以上は現行の四倍に引上げたのであります。又豫約新聞通話料一般と著しく不均衡な低率料額となつておりましたので、若干これを是正する意味で、一般の六分の一程度まで引上げることとしたのであります。  以上料金改訂に關する主なる點を申上げましたが、電信電話料金法案は、從來命令を以て規定せられておりました電氣通信に關する料金を、財政法第三條の規定が施行せられましたに伴い、法律を以て定むるの必要を生じましたので、今囘の料金改訂機會に、新たに法律を制定せんとするものであります。  又郵便法等の一部を改正する法律案は、すでに郵便法竝びに郵便貯金法に規定せられておりますところの料金等改正を行わんとするの外、目下御審議を煩わしております郵便振替貯金法案竝びに郵便爲替法案が制定せられるものとして、同法案に規定せられておりまする料金につき所要改正をなさんとするものであります。  以上、兩法案提案目的内容につき御説明いたしましたが、何とぞ十分御審議の上、速かに御贊成下さるようお願いする次第でございます。
  7. 深水六郎

    委員長深水六郎君) 次に豫備審査のために付託になつております遞信職員訓練法提案理由をお聽しまして、そうしてその提案理由が濟みましてから、各法案別に質疑を行いたいと思います。
  8. 下條恭兵

    政府委員下條恭兵君) 只今議題となりました遞信職員訓練法案提案理由を御説明申上げます。  從來遞信省におきましては、その業務特殊性に基き、從業員專門的技能を與えることの缺くべからざる重要性を鑑みまして、從業員に對し所要訓練を施して参つてのであります。即ち古くから當省固有養成機關を設け、事業各般に亙り、各種程度訓練を行うの外、必要に應じては、現場において特殊の專門的技能を修得せしめ、事業運營を直ちに活動し得る從業員養成して來たのであります。  尚これら養成機關におきましては、遞信事業文化的意義と、從業員學歴等を勘案し、單に技能的訓練に止まらず、一般普通数養學科についても、或る程度教授することの必要を認め、これをも併せ施し、以て従業員素質、品位の向上に努めて來た次第であります。申すまでもなく遞信事業運營圓滑に遂行されるか否かは、事業の性質上、政治、經濟その他に影響するとこと多大であり、これを眞に能率的に、合理的にサーヴイス本位運營して行きますためには、今後と雖もますます從業員素質技能との優秀を確保して行かねばなりません。  然るに先般日本國憲法が公布施行せられ、各般法制的改革の必要が生じて参つたのでありますが、これら從業員に對して行う訓練につきましても、その目的範圍、その他訓練實施に關する遞信大臣の職責、權限等に關し、明確にこれを法定するを至當と認められるに至りましたので、ここに本案を提案する次第であります。  今法案内容について申上げますと、第一の要目は、訓練の對象を遞信職員に限定いたしたことであります。即ち從來自己の從業員のみならず、無線電信技術者養成という部外者に對する訓練をも行なつて來たのでありますが、教育基本法の精神からして、かかる一般教育體系の編入するを至當認むるものについては遞信省所掌よりこれを文部省の所掌に移すのを適當と認め遞信省訓練に關する所掌は、事業に從事するものにのみ限定さるべきものと思料したのであります。  第二に、訓練内容についても、いわゆる六・三制の義務教育實施に伴いまして、從來遞信省訓練機關において施して參りました普通教養學科に關しては、これを一般教育體系に委ねるを至當と考え、甫に事業遂行に直接必要なる專門的なものに限ることといたしました。又その訓練についても、でき得る限り教室における座學を少くし、現場における實地訓練を主とすることにいたして、訓練能率化圖つたのであります。  第三に、従業員訓練につき、一般學校その他教育研究機關等從業員を派遣し、專門の事項を研修させ得ることといたしました。即ち事業に關する知識及び技能は、必ずしも部内においてすべてを蔽い盡し得るものではないので、部外に優れたる教育その他の研究施設があります場合には、その知識若しくは技能の吸收のため、從業員部外のそれら施設に委託して研修させることにしたのであります。  尚訓練實施に際しては、毎年、訓練人員訓練課程訓練期間等に關し實行計畫を立て、以て年毎に進展して行きまする遞信事業内容變化に伴う、要員の需給に、機動的に對處することとし、事業運營に遺憾なきを期しておる次第であります。  以上簡單でありますが、法案について御説明いたしました。何とぞ十分御審議の上、速かに御贊成下さらんことを切望する次第でございます。
  9. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 この前お願いして置きました五坪政務次官の御報告一つ承りたいと思います。
  10. 五坪茂雄

    政府委員(五坪茂雄君) 一昨日御質問になりました全遞の動き山猫爭議に關するその後の状況でありますが、その當時十分調査をいたしておりませんでしたので、誤つた報告を申上げて、皆様方や、或いは全遞方面に悪い影響を與えてもお氣の毒と考えまして、今日まで猶豫願つた次第でございます。その後勞務局長調査をして貰いまして、大凡その状況をはつきりすることができましたので、只今御囘答申上げる一第であります。  全遞の動きといたしまして表面に現われた最近の大きな問題といたしましては、第一に遞信省設置法案に對する反對であります。これについては、電氣通信事業を民主的一元化するという、中勞委に對する調停申請事項とも關連いたしまして、遞信省機構改革が表面化するに從いまして、四月の末頃から組合としましても非常な關心を深めて参りまして、その後、文書を以て設置法案に反對するの旨を申入れて參りました。又省當局ともしばしば交渉を行なつてつておるのであります。  次に遞信職訓練法案に對する反對であります。只今國會に提出されておりまする遞信職員訓練法案は、遞信從業員質的低下を來すものであるとして、強硬に反對しておることは、すでに皆さんも御承知通りであります。恐らく皆様方の方へもいろいろ申出ておることと思いまするが、各方面に向つて廣く反對運動を展開しておるような状態であります。  次には通信料金値上げに對する反對であります。料金値上げ反對につきましては、全遞といたしましては、去る二月の湯河原における中央委員會以來、反對の態度をとつて來たのでありますが、今囘の四倍値上案が明らかにされますと、五月十日には値上げ反對の聲明書を發表いたしまして、全國各支部にこれを掲示して大衆にこれを訴える、そうして又署名運動を展開するというような指令を發した模様でもあります。尚その聲明書におきましてはかように申しております。即ち「通信事業はこれまで國民生活に必須な基礎産業として、その公共的性格に重きが置かれて來た。然るに政府は大金持のために多額の國家豫算を濫費しながら、一方我々のために大切な六・三制や通信事業豫算を使うことなく、國家財政の困窮に名を藉りて、官業の獨立採算制を唱えて値上げしようとしている。他の物價上つたからといつて料金値上げされれば、又物價の高騰することは火を見るよりと明かである。」と謳つておるのであります。  次に遞信勞働協約締結交渉状況でありますが、遞信勞働協約は去る三月十三日を以て有效期間が終ることになつていたのでありますが、併し新協約が成立するまでは尚その協約が有效であるとの條項、即ち第三十二條であります、それに基きまして現在においても昨年締結された勞働協約は有效であります。この協約改訂に關しましては省當局組合と兩方の案を提出いたしまして、二月末から三月にかけて數囘折衝いたしました。更に五月七日に改めて交渉を的なつたのでありますが、なかなか妥結するに至りません。これは極く最近でありますが、再び具體的問題について交渉をいたしまして局面の打開を圖りつつあるような状態であります。恐らく近く締結する運びに至るのではないかと考えられます。  次に新賃金水準五千二百圓の申入れをいたしております。五月二十六日の中鬪會議で、新賃金水準として、四月に遡つて五千二百圓、これは手取り平均家族二・五人ということにいたしております。これを決定いたしましたが、これは來る六月二十二日から金澤で開催されまする、全國臨時大會において討議決定されるものと思われるのであります。  次に不法彈壓反對鬪爭であります。これは去る三月鬪爭における東京搬送工事局國際電氣上福岡受信所札幌電話局等不法行爲によつて組合員が檢擧された事件、それから朝鮮人騒擾事件における大阪地協村上會長外二名の逮捕事件、その他の檢擧事件に關しまして、これを資本攻勢の現われであるといたしまして、盛んに反對鬪爭を展開しつつあるような情勢であります。  次に第五囘臨時全國大會の豫想でありますが、來る六月二十二日から金澤市で開催されることになつておりますが、第六囘中央委員會、これは福島でやりましたその決定に基きまして(組合規約第九條)、臨時全國大會を開くことになつておるのでありますが、この際三役始め組合幹部改選が行われる豫定であります。全國大會を控えまして各地連及び地協支部では、大會準備のためにいろいろの動きを見せておるようでありますが、その年なるものを擧げますというと、大體次のようになるかと思います。一つは第二囘地連地協代表者會議、これは五月二十日から三日間長野縣の上諏訪において八十五名の代表者が參集いたしまして、組合規約改正、それから運動方針その他大會準備事項について協議をいたしております。次には擴大青年部全國大會を開催いたしております。これは五月二十五日から三日間日光湯本において百九十餘名の代表者が集まりまして、鬪爭方針或いは役員改選等が議せられた模樣であります。三番目といたしまして婦人部代表者會議を開催いたしております。これは六月二日から三日間千葉縣の鴨川において開催いたしまして、運動方針改正や新役員改選等が協議された模樣であります。  次にこれは今まで申上げた事柄とはちよつと違うのでありますが、項を大きくいたしまして全遞左傾化原因及び現状について申上げたいと思います。その一つといたしまして、共産黨としては黨勢擴張或いは革命遂行のために全遞や國鐡組合を利用すべく、一般地組合以上に努力を拂つている模樣がこれも明らかに着取されるのであります。次に遞信從業員從來から待遇が他の比較して悪いようであります。而も年少者が多いので、從つて共産黨の指導する鬪爭方針には自然に興味を持つと申しますか、それに同調するような傾向があるのであります。次に全遞幹部には共産黨員が多くあります。例えば全遞本部について見ましても、執行委員約八十名中共産黨員約二十五名、容共左派とも見られるような方々が約三十名もあります。地連地協支部等におきましても全遞本部と大同小異の比率にあるようでありますので、共産黨の思うように組合を動かし得る現在の状況であるように考えられます。  次に過去一年に亙る全遞の極左鬪爭と申しますか、そういつたよう鬪爭の結果、全遞内部においても反共的運動が起りつつあります。即ち去る二月十三日全遞民主化連盟が發足いたしました。そうして一つ組合政黨及び官廳の御用化しておるということから防禦し、その組合自主性を確立するということと、それから勞働者の自主性を壓殺する共産黨フラク組合から排除すると、こういう二つのことを目的として運動相當に展開しておるようであります。又三月鬪爭以降におきましては、民主化連盟と同調する運動が全國各地、最も著しいのは千葉、茨城、鹿兒島大阪というような地區に起りつつあるようでありますが、これらの運動はその組織がまだ十分に確立されておりませんために、今囘の金澤の全國臨時大會でその成果がはつきり現れるというようなふうには考えられないのであります。從つて金澤の全國大會では、これはこういうことは申上げん方がいいかと思いますけれども、率直に申上げますというと、現在の幹部がそのまま居座るのではないかというふうに考えられるのであります。  次に第二の御質問でありました全遞の地域鬪爭即ち山猫爭議状況、その後の現状でありますが、地域鬪爭戰術という言葉が使われ出しましたのは、昨年六月の全遞の松江市における大會からであると思われます。共産黨の戰術といわれるこの地域鬪爭が何故とられなければならなかつたかと申しますると、二・一スト以後の政治情勢と、インフレが昂進して各地物價に大きな開きが出て參りました。從つて賃金鬪爭にいたしましても、組合員の意識の盛上り方に、各地域で大きな差が見られる状況がありましては、全國的な統一鬪爭は非常に困難であつたのであります。で、全逓の場合地域で別々に二四〇〇カロリー確保をするために、最低賃金制要求をその職場の長に提出いたしまして、これが容れられない場合には、地方勞働委員會に提訴すると共に、各地域別爭議行爲に入つたのであります。又食糧事情等のために生活の逼迫した地方では、これ以上働けないから金を出して呉れという要求職場の長に提出いたしまして、容られない場合には部分的爭議行爲に出たのであります。で、本年三月までの爭議はいはゆる山猫爭議で、一部の職場又は局所單位集團缺勤、早退であるとか或いは職場大會、安全通信集團的團體交渉というような、組合正式指令に基づかないで、自然發生的に起つたものであると組合側では主張しておるのであります。  三月鬪爭状況でありますが、以上のように各地鬪爭意識が高まりまするにつれまして、二四〇〇カロリー鬪爭、二四〇〇カロリーよこせという鬪爭が次第々々に本格化いたしまして、地域別に獲得した爭議權に基きまして、地域別スト段階に入つたのであります。三月一日には大阪地協の一齊二十四時間ストを皮切りにいたしまして、各地波状的ストが起つたのであります。このように全國的に次第にストが擴大いたしまするや、全遞本部では、本部統制下において、三月二十五日からは、本部指令下從來ストを次第に集約いたしまして、三月末には全國一齊にストに移ることになつたのであります。併しこのストにつきましては、御承知通りにマーカツト少將の覺書によりまして、これが禁止せられました。これが禁止せられまするや、全遞では本部統制を外しまして、又元の地域ストに再び返つたのでありますが、二千九百二十圓ベース妥結によりまして、一應爭議の解決を見たのでありますが、從つて現在ではここ平靜を保たれているようでありますけれども、今後の動きはどういうふうになるか、今のところ豫測し難いのであります。  以上簡單でありますけれどもお答え申上げた次第であります。
  11. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 政務次官に大變詳しい資料を提供して頂いて有難うございましたが、第二點の質問山猫爭議によるところの業務上の支障を、どの程度まで復活しているかという点が脱けておつたようでありますが、現在ではすつかりもう囘復しておるんですか、それとも尚そういう故障が殘つておりますか。更に囘復にはどのくらいの日數なり時間なりを要しましたか。それをちよつとお聞かせ願いたいと思います。
  12. 五坪茂雄

    政府委員(五坪茂雄君) 詳しいことは聞いておりませんですが、關係從業員も非常に熱意を以て囘復努力した模様でありまして、今のところでは殆んど囘復されているのではないか。どの程度期間囘復されたかということは、ちよつと今調査しておらんのでありますが、又後程その點は一つ御囘答申上げたいと思います。
  13. 千葉信

    千葉信君 只今大變參考になる御報告を受けた次第でございますが、その中ではつきり承わつておきたいことは、今年の三月に大體解決しなければならない時期に來ている勞働協約の問題ですが、この勞働協約がまだ今以て締結にならないようですが、政府と全遞との間に、どういう意見食違いがあつて、この勞働協約は未だに結ばれないのか、その點一つはつきりお示しを願いたいと思います。
  14. 五坪茂雄

    政府委員(五坪茂雄君) 本省としましては、一日も早く締結をしたいと思つたんですけれども、いろいろの意見食違いがありますので、それで向うの方からそんなことなら中止しようじやないかということで、中止になつておるのでありまするけれども、恐らく極く近い將來において再開されて、妥結に至るんじやないかと、かように考えております。
  15. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 特に政務次官にもう少しお尋ねしたいですが、現在全遞において非常に思想が赤化方面、左傾方面に向つておるということは、國民の齊しく認めておるところでありますが、ややともすればいわゆる赤化思想者の指導者が、壓力を以て從業員に臨んであるというようなことも、しばしば耳にしておるのです。こういう點に關しまして、遞信當局は何らなすところなく、いわゆる誤れる民主化というようなことによつて、全然任せつきりにしておくのでありますか。それともそういう點の運動等におきましても、誤つた方向に向かないように、要するに壓力を以て從業員の思想等を動かすというようなことのないように努めておられますか。その點ちよつと重ねてお願いいたします。
  16. 五坪茂雄

    政府委員(五坪茂雄君) 御質問の要旨は誠に御尤もであり、私共もそういうことを常に考えておるのでありますが、先にも申上げましたように民主化連盟運動が盛んに行われて來ておりますので、それらと關連いたしましてこれは何とか一つ強力にそういう點を處置して行かなければいかんとかように考えております。これも將來において、近く具體的な問題を研究したい、こういうふうに考えております。
  17. 千葉信

    千葉信君 只今の問題に關連いたしますが、實は油井委員の質問にありましたように、非常に共産主義的な指導者が強力に指導しているから、全遞の運動が熾烈な方向に向つて行く、こういうことについて政府においてもそういうふうな見解をとつておられるようでありますが、その點についてそれは本當に組合内部に對して、勞働運動状態を把握しておられるかどうかということを、私は一つの例としてここに違つた私の立場から見ておる事實を特に申上げたいのでありますが、それは私は、北海道でございますけれども、例えば北海道にも全遞の連合會がございますが、この北海道の現在の勞働運動状態というのは、特に全遞は非常に北海道において指導的になつておりますし、それから又最近の全遞の大會であるとか、或いは代表者會議、その他の状態を見ましても、北海道の連合會の全遞に對するイニシアテイヴというものが、最近大體において非常に他の地區組合員の容認するところとなつて、等しく認めるところとなつておるような状態にあるのでございますが、從つて北海道の非常に煽動的な、而も他に影響力を持つている中身というものは只今のお話から申しますと非常に左傾的な、或いは又共産主義的な指導者がやつておるかという結論に結び附くようでありますが、實はその點は全く反對でございまして、北海道の連合會の場合には、執行部に三十數名の執行部員がおりますが、この中で本當に共産黨員というのは二名乃至三名というような、これが事實なんでございまして、而もこれは連合會の執行部ばかりでなく、北海道全體の連合會の中に本當の共産黨員といえば數える程しかおらない、こういう事實を政府ははつきり把握しておられるかどうか、そうして又簡單に結論が出て来るところの、非常に鬪爭が熾烈であるとか、主張が強硬だということを共産黨と結び附けたり、或いは又共産主義を持つている指導者が一方的に引ずり廻しているとか指導しているということの結論を早計に出されるということは、誠に組合に對する勞働政策の一環としての基本は、そういう點を十分な考慮を拂わなければならんのぢやないか、私はこういうふうに考えておりますが、その點に關して政府の方では、全遞に對する從來の勞働行政のあり方というものが、必ずしも私は成功だとは見ておらない。少くとも現在の全遞の動きそのものが非常に尖鋭に向つて來ておるということは、これは從業員全體の生活の苦しさということも一面にありましよう。けれどもやはり遞信省としては一つの勞働行政というものもこの際ある程度の反省が必要なんじやないか。私が只今申上げました一つの例は、そういう部分もはつきりと把握して頂き、必ずしも政府の見解が私としては正しいと思われないような場面もあるようですから、そういう點について將來の勞働行政ということについて、本當の把握というものを政府の方で十分お考え願いたいというふうに存ずるのであります。
  18. 五坪茂雄

    政府委員(五坪茂雄君) 先の御質問共産黨の非常な壓力が組合を指導しておる、それに對して當局はどうするかというお尋ねのようであつたのでありますが、それに對しましてはこの全遞の中にも、この反共思想を持つてそうして民主化連合運動を起しておる、而もその目的組合政黨及び官廳の御用化しているということから護る、その實勢を確立すると、こういうことをいつておるのであります。それから勞働者の自主性を壓迫する共産黨フラク組合から排除するということの目的として、全遞の中にこういう一つ動きが流れておる、そういうようなことを考えまして、そうして私は今の御質問を受取りまして、只今のようにそういうことがあるならばこれは本省としても大いに考えなければならない、恐らくこれは政府としても餘程調査をして適當な方策を構じなければなるまいというような意味を申上げたわけでありまして、只今の御意見拜聽いたしまして、もう誠にその通りでありますので、若し共産黨が非常な壓力を加えて組合を悪い方向に動かしているというような事實があるかどうか、それを詳しく調査するということが勿論先決問題である、かように存じております。そういうことを度外視してもう一も二もなく、共産黨がやつておるのだから共産黨を彈壓しなければならん、こういつたような意味で申上げたのでは決してないのでありますから、その點十分御了承願いたいと思うのであります。
  19. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 もう一つ五坪政務次官にお尋ねしたいのですが、又賃金ベースの確定等に從つて、場合によると勞働攻勢が盛んになりはしないかという懸念が各方面に起つております。これに對しまして又例の波状ストライキというようなものが各地に起るというような場合、一度ストライキが起きますと、この囘復が非常に日數を要するということも從業員諸君もよう分つておると思う。そういう點を十分、各地における今までの經過等を調べまして、成るべく平和的解決手段をとるということに政府が特に力を盡さなくてはならない、こういう點につきましては如何なる方策をお持ちになつておられますか。
  20. 五坪茂雄

    政府委員(五坪茂雄君) 今の御質問は誠に御尤もでありまして、遞信省といたしましても十分な用意と、それから用意だけじやないどんどんそういう方面の對策を講じて行かなければならないのだと考えます。二千九百二十圓から御承知のように三千七百円ということに引上げておりますけれども、併し先にも、申上げますように五千二百圓と内定をして、恐らく六月二十二日から開かれる金澤における全遞の臨時大會にはこれを決議して、強くこの要求を迫るのではないかと、かように考えるのであります。又それが容れられんときには、今のお話のようないろいろな形で爭議が起きて來るのじやないかと、實は心痛をいたしておる次第であります。これはもう私が御説明申上げるまでもなく十分に御承知のことと思いますが、どうにもならんことでありますので、今五千二百圓を支持することができるかどうかということを冷静に考えて見ても、はつきり分る問題だと思うのでありまして、私は何かとこれは全遞の方々に國家財政状況や、敗戰後の今日、國民が本當に苦勞して、過重な負擔をも敢て忍んでやらなければならんこういうときであるから、一つ何とかよく了解をして貰いたいというふうに働きかける必要があると思うのであります。恐らくアメリカがイギリスから金を借りて、アメリカの建設を考えておつたときには今のような状態ではなかつたかと思うのであります。八時間、九時間、或いは十時間も働いていたのではないかと考えるのであります。我が國はもうすつかり敗戰いたしまして、物もなく外地から多數の人々が引揚げて來て、狹い土地にうようよやつておるのでありまして、然るにこの勞働の能力が擧らなかつたり、或いはその勞働の時間を八時間を或いは實質的に六時間にするとか、或いは五時間半にするとか而も賃金を二千九百二十圓から三千七百圓に上げる、更に五千二百圓を要求するというようなことをやつて、果してそれが日本再建のためになつて行くのかどうかというようなことは、誰が考えて見てもはつきり分ることなんでありまして、私はそれを生活に苦しいことは十分承知いたしておりますけれども、そこを忍んで力を合せて再建に努力して行かなければならんのじやないか、かように考えております。
  21. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 幸い大臣がお見えになりましたから、今囘の通信料金値上問題について一、二御質問申し上げたいと思います。  今度の通信料金の値上問題は政府部内において檢討の上お出しになつたことと思うのですが、中の從業員の方々においてこれを反對されておるという點が國民に對しまして、非常に値上げに對する疑惑の目を以て見るという原因になるのであります。これに對しまして末端まで政府の意圖するところ、或いは値上をどうしてもやらなくちやならないというところが滲透して、遞信省が一固まりとなつて、この値上げ理由というものを国民大衆にも了解して貰うという方法を今までお取りになつたかどうかということについて御回答を頂きたいと思います。
  22. 冨吉榮二

    ○國務大臣(冨吉榮二君) 只今のは極めて御尤もな御指摘であると思いますが、通信料金の値上をしなければならない理由につきましては、政府委員から御説明申上げて大體御了解は願えたと思うのでありますが、全遞の中から、即ち從業員にしてこれに反對をする向きのありますことは、誠に遺憾なことではあるが事實であると思います。私のところにもそういう申出をして來た向きもございましたので、私はその根據について詳しく聞き質したのでありまするが、遺憾ながら私はその反對の理由について了解しかねるのであつて、殆んど具體的に別にこうというのでなしに、ただ國民大衆生活を厖迫するという、大體常識論が多いようでございます。然らば現在の通信會計の状態がこうなつておるが、これを一體如何にしてその通信料金値上げに要する經費、つまり現在のままにおいて出て來ます赤字をどうして克服して行くかということを聞いて見まするというと、それには具體的な案を持つておらないようであります。そうしてそれは自動車を乘り廻しているブルジヨア階級から取るべしだとか、闇屋を抑えればいいといつたような極めて世間にありふれた議論が多くてどういう點で通信會計を活かして行くかということに對する積極的な意見がないようでございまして、ただ私をして言わしむれば反對せんがための反對、何でも經營者がすることには反對をする、個人々々に會いますというとそれはもう誠に止むを得ないといいますけれども、何か決議とか何とかになりますとえらい景氣よく反對というようなことになりまして、その點私は民主主義の十分に滲透していない我が國における現状として、誠に遺憾ではありまするが、事實であると思うのでございます。  そこでお尋ねのどういうことを處置をしたかというお話でございますが、實はこれが關係方面との折衝に今日まで費やしたような次第でございまして、組合に對してはその都度都度話合をして實は決めておるのでございますけれども、大體組合という機關を通さずに國會に先ず御説明申上げ、發表をいたさない前にこれを豫め從業員に表立つて一般大衆に目に見えるようにいたしますことは、どうかというようなことを實は考慮いたしましたので、今日まで積極的にはそういう工作をいたしておりません。併しながらすでに御審議に著手して頂きましたので、これと同時にこの國會の審議を通して理解して貰うのみならず、私が大臣として責任の所在を明らかにしつつ、この事情について從業員が十分納得し得るように努力をいたしたいと、かく考えておる次第でございます。  ただ併しながらここで申上げておかなければなりませんことは、どうも政治意見を異にするといつたような者が、御案内のごとく多少ございますので、自分では一應理解して納得しても、これを或いは更に悪意に宣傳をしたりする者、或いは當然の理由を隱して、その止むを得ざる面を糊塗して、直ちに生活に響いて來る面だけを取上げて強く言う者、そういうような者も多少存在いたしておりますので、私、率直に申上げますと、今の全遞從業員組合必ずしも健全でないという考えを持つております。これは健全化に向つては絶えず不斷の努力を續けまするけれども、必ずしも全遞から通信料金値上のために大いに協力するというような聲明を期待することは、或いは困難ではなかろうかというふうに私は考えておるような次第でございます。
  23. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 只今のお話竝びに前の五坪政務次官からの御説明によつて段々明白になりましたが、先程政務次官からのお話にもありましたように、値上反對というような點については、中央から末端の方まで指令が行つて郵便關係の全國津々浦々、山の中でもどこでも掲示が出て、この値上げというものが國民のために、非常に、ならないものだという宣傳が行なわれております。そうしますと一般國民というものは、もう通信料金値上げということは、いけないものだという先入觀に捉われてくるような状態になりまして、我々國會におきましてその値上問題を審議する際におきましても、何か政府と國會議員という者との間に、只今闇取引みたいなものでもありはしないかというような感まで抱かせるような状態になつておる。そういたしますと一方的に全國に宣傳機關を持つてこの値上反對というようなことをする人に對しまして、政府が何らの手を用いないで拱手傍觀しておるということは、甚だ當を得ていないというような感じを持たれますが、これについて對策を講じられた方がよろしいのではないか。
  24. 冨吉榮二

    ○國務大臣(冨吉榮二君) 先程來申上げた通りこれは講じないというのではないのでして、國會の方に提案理由を説明申上げない前に組合幹部に非公式には了解を求めましたけれども、遞信大臣がこれは實際こういうわけでああするのだ、或いはプリントを以て或いは新聞を以て通知して、或いは又指令を發してやりますことは、國會の審議權に對する考慮から實は私今日まで控えておりましたが、それは直ちにその宣傳については、周知徹底方につきましては處置をとる考えでございまするから、さよう御了承をお願いいたす次第で、何も決してそれをやらないというのではございません。  ここで甚だ餘議のようでございますけれども、例えばストライキをやります際にも、本部指令地方に流しますというと、地方支部におきましては、非常に健全な人々もある。國家財政の今日を考慮いたし、又通信機關の非常な重大性に鑑みて、徒らにストライキをやるがごときことは避けなければならんということを、眞面目に考えておつてくれる從業員相當ございまするのでありまして、遞信從業員組合四十萬悉く赤化しておるわけでは、私、ないという確信いたして、大部分は極めて健全であると思うのでございまするが、遺憾ながら我が國の現在の民主化は未だ板に附かないものがございまして、役員選擧その他等におきましても、必ずしも一般組合員の意思が代表されているとばかりは、全然、いないとは申上げませんけれども、いるとばかりは考えられない節もございまするので、そうした組織機關を通じた命令といつたようなものに對して、必ずしも妥當でない指令等も相當あるのじやないか。併しながら、それを批判しつつも尚且つ、それはいけない、それは實に本部指令は間違つておるから、我々はかくのごときことは取消されたいというふうな、健全なる、旺盛なるいわゆる民主主義の線に副つた勞働組合運動の形は、未だ現われていないということは、甚だ遺憾なことでありまして、こうした面からいたしまして、私は油井さんの御意見從つて、又私自身が考えておつたように、周知徹底方を努力はいたしますが、そういうことによつて決して、ただ結果的に言つて、それじや全遞は料金値上反對は取消して、遞信大臣の値上案を支持するというまでには了解を得るには至らないだろうという見通しを考えたのでございまするが故に、非常に賑かにポスターその他等を貼り廻らして、專從員も澤山おりますので、手足もあり、反對をいたしておるようでありまして、そうした一部の人々の、いわゆるといいますか、そのことをよく内容等も御觀察願いまして、公正な御處置が願いたい、こういう意味で申上げたのであります。
  25. 千葉信

    千葉信君 只今の値上問題に關する大臣のお話を承わつておりますというと、私すでに承知しておる限りの話とは少し食違いがあるようであります。それはどういう點かと申しますると、大臣は只今從業員の諸君が値上げの問題にただ反對せんがために反對するというような情勢があつて、而もそういう組合員の主張の中に、それでは遞信省の仕事自體をどういうふうに持つて行けばいいのかという具體的な方針もなく反對しておる、こういうふうなお話でございますけれども、從業員諸君の主張しております大事な點は、要するに遞信事業をどういうふうに持つて行くかということについては、これは大臣であろうと郵便配達の諸君であろうと、電報配達の諸君であろうと、皆等しく遞信事業の再建ということには同じ熱意を持つておる、その場合に問題になるのは、その財政上非常に困難な遞信事業を、それではどういうふうにして持つて行くかということの基本的な問題について、大臣のお考えになるのと組合員諸君のお考えになるのとは、少し食違つておるようであります。組合員諸君の言うのは簡單にいうと、この遞信事業特別會計を維持するということのために、どうしても獨立採算制建前から通信料金値上げをやらなければならないこともあります。通信料金値上げとか或いは又その他の運輸料金値上げという問題は、これはどうしても最後には循環して國民生活に對する壓迫となつてくる。そういう點について實は大臣から、組合の考えておる主張というものが、正しくここに報告されていないという感銘を受けるのであります。その點について大臣は組合の主張をどういうふうにお考えでありましようか。
  26. 冨吉榮二

    ○國務大臣(冨吉榮二君) 只今お述べになりました悪循環の法則については、私共も了解いたしておりまするが、それはひとり通信料金が經濟の悪循環の原因になるか、他の諸物價の高騰というものが遂に通信料金を上げざるを得なくするかということに對する、經濟上の一つの見解の相違であろうと思います。私の申上げていることは、現在のままにおいて、政府はどうしても今度物價改訂もしてこれを上げなければ日本の産業がいよいよ破綻する。産業が破綻することによつて勞働階級の生活も脅かされるので、現在赤字を持つているところの本來の價格改訂を行う。價格改訂を行うためにはどうしても、この行うことによつてそれが他の又物價への影響等もある。これは鐵道運賃を引上げるというような結果と、物價のはね返りというものを考えて、通信料金がその後に來た問題なんです。由來御承知通り通信料金皆さんの御努力によりまして、獨立採算制從來つて來て、昭和十九年までは黒字で續いて、一般會計に對しても相當の御奉公を申上げているのです。にも拘わらず、昭和二十年から起りました終戰後のインフレーシヨンのために、今日やつて來ているので、或る程度インフレーシヨンを急速に抑えることができないという建前から、非常に速い足取りを緩漫にするという政策は、どうしても或程度續けられなければいけない。つまり世間一般竝びに私が從業員組合等から承わりまするのは、原則論なんです。原則論は私共はよく了解しております。その原則論で只今の經濟が賄われる段階でないということが、今日ある。それでは現實の問題で、通信料金を何から賄うか。百五十五億の赤字が出て來るが、この赤字をどうして消すかということになれば、私が今言つたようにそれはブルジヨアから金を取ればよい、一般會計から取ればよい、「どういう財源から持つて來るか」ということをいえば「それは政府の責任で我々の知つたことではない。我々は値上反對である。」とこう來るのであるということを私は申上げているのであつて、いわゆるインフレの原則論を私は決して否定しようとする者ではありません。原則論においては完全に一致しておる。私も全遞も……、併しながら例えば賃金の問題にしても、最低賃金制そのものが賃金體系の基幹として正しいことも、私自身理論的に認めております。併しその最低賃金制も今日の我が國の經濟状態においてやれることかやれないことかということになりますと、直接國の財政經濟の責任を持つておりまする大臣の大人といたしまして、遺憾ながら組合と、根本的には理論を一つにしておるけれども、實際上の問題としていけないものである。そういう點に對する私は現實上の問題を申上げているのでありまして、基本的な理論的な別段の相違があると言つているのではございません。その點どうぞ誤解をなさらないようにお願いいたします。
  27. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 只今の油井君の質疑に關連いたしまして、二、三伺いたいのであります。  從業員一般が今度の料金値上げの趣旨につきまして、大臣の今御説明のように、大分違つた方向で動いておる。これは何といいましても、從業員諸君がやはり通信事業内容を十分に理解をすることが必要であろうと思うのです。いろいろ措置を取り又今後も考えるというお話でありますが、從來と雖も經營協議會というような式のものもあるように伺つております。又一般事業會社等におきましては、相當範圍從業員が、自分の會社の經濟状態はどうであるか、事業内容はどうなつておるかというようなことにつきまして、相當つておる。ところが、我我各地の現業廳なんか廻りましても、自分のやつている電信、電話郵便等の事業内容從業員で本當に掴んでいる人は極めて少い。これはやはり管理者側におきまして、不斷の努力が足りないためでないかと私は考える。全遞を通じまして經營協議會等の際に事業内容を十分に説明をし、そうしてできるだけお互いによく認識し合つた一つの方向で、方針を決めて、それを全遞を通じて各組合員に傳えるという方法もありましようが、全遞を通じなくても、むしろ不斷からその事業の從事員であります管理者側におきまして、事業の實體というものを、現在はこうなつておる、今後はこう進まなければならんだろうということぐらいは、不斷から管理者側において從業員に徹底させて然るべきではないかと、私はそういうふうに考えるのであります。その點につきましての大臣の御見解を伺いたいと思います。  尚もう一つ、先程油井君及び千葉君の勞働爭議に關します質疑に關連いたしまして、大臣からでも政務次官からでもお答えを願いたいと思うのでありますが、先般この委員會におきまして、本年の初めでありましたか、全遞の地域闘爭がありました際に、二、三の所で組合員の手によりまして自動電話のスウィッチが切られて、自動電話が通じなかつたというようなことがありました。これに關しまして、當時質問をいたしましたところが、遞信次官から、まだ政府のこれに對する確たる方針は決まつていない、これが勞働關係の法規に違反するものであるかどうか、その點を今政府において研究中であるが、自分の個人的見解としてはこれも或いは違反するように思うという御答辯があつたのであります。今後いうまでもなく、この組合運動なり、それから勞働爭議の行爲を最も秩序あらしめるためには、こういう嚴然たる法規の解繹につきまして、曖昧な状態で放つておくということは一番いけないことだと思うのであります。それが法規に違反しない、つまり正當なる爭議行爲であるということであれば、そのことを御發表になるのがいいと思います。又正當でないというふうに解繹が決まつたといたしますれば、遞信省といたしまして、それに對してどういう措置をお取りになりましたか、今後お取りになろうとするか、その二つの點をお伺いしたいと思います。
  28. 冨吉榮二

    ○國務大臣(冨吉榮二君) 先ず第一問の、從業員に對する周知徹底の件でございまするが、誠に御指摘の通りであると思います。私は從來ややともすれば、これ等の事柄が從業員に周知徹底されてなかつた憾みがあると思うのでございまして、就任以來はできるだけこれを民主的に運營いたしまするように注意をいたして參つておるのでございますが、何樣この改革とか何とかいうような問題は、そう短日月に効果が擧つて參らないのでございまして、遺憾な點が多々あると思います。併しお言葉もございまするので、私共は御趣旨に從いまして、ますますこの民主的な運營を圖つて參りたいと、このように考えておる次第でございます。  尚別途御審議を願う筈になつておりまするところの遞信省設置法案のごときも、その間の責任の所在、或いは事業内容のはつきり法規に基く點、それ等の事柄についても今まで遞信省が電信電話、爲替、貯金などといつたような五つの異つた事業を經營していて、この經營の組織が極めてごちやごちやでありましたものを、今囘は整理いたすということに中心をおいてございますので、それ等のシステムの方からも相當周知徹底させますために、我々は意識的に教育活動を一つ起こして行きたいと、このように考えておりまするし、更に又勞働組合との間の組織であります經營協議會等も、何か中絶の形になつておりますから、それも復活して參りたい、こういうように考えております。さよう御了承願いたいと思います。  第二の、爭議中の自動電話を切つた問題に對するお尋ねでございますが、この問題は實は甚だ遺憾なことでございまするが、多少法規上にも疑義がございましたことは只今お述べの通りでございます。それで私は、民主主義が、いわゆる權利と義務とのはつきりした限界の上に立たなければならないという主張を持つ一人でありまするが故に、組合員の權利はこれを尊重するが、行き過ぎたるところの内容はこれを大いに是正するという建前から、法規が嚴格に守られなければならないということは、これは全くお説の通りである。併しながら今囘のことは今申上げました通り、その解繹に多少疑義のある點が實はございましたので、そうした官側、指導者側において多少疑義のあるような問題を、直ちにこのいわゆる反動的な方法で以て處斷するというようなことは、勞働政策上これは必ずしも當を得ていないというような結論に實は達した次第でございます。それと同時に先ず勞働爭議というものが、これは非常にデリケートな問題でありますので、この間の處置というものは單なる法律や單なるいわゆる權利義務だけでは律せられない。殊にその點が日本人の間には厄介な感情問題といつたようなものもございますので、緩急自らよろしきを得て行くことが、組合の健全化に向つて役立つのではなかろうか。或るときは秋霜烈日のごとく斷乎としてやり、或るときは又大いに寛大なる處置をとり得ることが、我が國における、少くとも責任者が考慮しなければならないことではなかろうか、こういうふうに實は考えて參りました點等を御了承願いまして、今囘の私共の方の處置を御了承願いたいと思います。
  29. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 遞信大臣のお述べになりました趣旨は私もよく了承いたしますが、私は何も、假にそれが違法な行爲であるといたしましても、關係從業員を處罰して頂きたいということを要求しておるのではないのであります。今後もこういつた問題が再々起るであろう、又他の形においても同じような種類の問題がやはり起つて來るだろうと思うのです。そういう場合に、或るときにはそれが違法になり、或る時にはそれが違法でないというように運用されますと、これは自然行政方面から見ますと非常に獨斷的なことになります。行政官廰と國會との意思が、或いはそこで違うということになるかも知れません。で、この勞働爭議というものは、大臣の仰せられましたように、最もこれを民主的又秩序あらしめて行わして、初めてそれで意義のあるものでありますから、そういう意味におきましては、この、爭議行爲の範疇というものを一應これを明確にして置く必要がある、これは社會秩序を維持するために是非必要だと思うのであります。そういう意味におきまして私は將來の問題として私の意見を申上げたわけであります。その點十分お考えを願いたいと思います。
  30. 深水六郎

    委員長深水六郎君) 外に御質疑のある方はございませんか。ございませんならば、實はこれから豫算委員會が始まるそうでありまして、そちらの方にお出掛けの人もあるようでありますから、今日はこの程度で散會して、料金問題についての資料を要求される方がありますならば、委員長の方にこれを申出て頂いて、要求しておくことにして、次に讓りたいと思いますが如何でございましようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 深水六郎

    委員長深水六郎君) それでは本日はこれにて散會いたします。    午後二時五十一分散會  出席者は左の通り    委員長     深水 六郎君    理事      千葉  信君    委員            水橋 藤作君            大島 定吉君            鈴木 順一君            油井賢太郎君            井上なつゑ君            新谷寅三郎君            堀越 儀郎君            藤田 芳雄君   國務大臣    遞 信 大 臣 冨吉 榮二君   政府委員    遞信政務次官  五坪 茂雄君    遞信政務次官  下條 恭兵君