○尾形六郎兵衞君
只今千田君より
お尋ねになりましたことにつきまして御
答辯がありましたのですが、大都市集中の魚の
配給ということについて、一月に
波多野氏に私は同樣なことを質問しました。で、そのことを話しますと、君、ああいうことにな
つてるのですか。僕は全然知らなかつた。こういう話であります。私は博士でありますあの方が、
水産のそういう細かいことを知らないことを不思議には思わないのでありますけれ
ども、どうぞこの
機會に新
大臣によく頭の中に入れて貰いたいのは、全く現在のお魚の政策というものは六大都市と海なし縣のみに集める政策である、値段についても、報奬物資についても金を貸すにも……。我々山形縣でありますが、
金融の順位が丙種でありまして、
荷受しましても金を借りることができません。そのために農民はお魚を食べ得ないので、非常に嘆いております。私實は山形縣に歸る度にお魚の
配給が悪いと言うて責められますので、非常に
氣持が悪い。東京で何もしないわけではありませんが、どうも
自分の如きは力がないとみえまして、いくら主張しても通じないのでありますが、私どうしてもこの際
永江大臣にこの點はまず早速に
一つ變えて欲しい。
一般論によりますけれ
ども私都市の形成というものは田舎の培養によ
つて成り立つものと思います。米を
増産する農民、石炭を掘る坑夫、材木を切る樵夫、この運搬人がいずれも蛋白質の缺乏に嘆いております。私先月休みのときに山形縣の炭鑛に行
つて座談會をしまたしたところ、そこの婦人會の連中が集ま
つて、どうも、先山と申しますか、山へ掘りに行
つておる
自分の夫になんにも魚を喰わせることができないので、甚だ氣の毒に堪えない、なんとかお前の力でできないかということを始終言われます。大問題も相當ありますが、こういう問題については
農林省だけではできないのじやないか。或いはこれに對して先程青山議員が言われた
通りに、
安本方面の力が相當かか
つておると私は思います。私も青山君のようなことを
考えてお
つたのですが、いろいろや
つて見まして、我が敵は正に本能寺じやない、
安本にあるのじやないかと、こう
考えるのであります。本常であります。あの本能寺溝の深さという詩を思い出しまして、どうも我が敵は
安本にあるのじやないか、こういうことを感じております。
去年平野農相に話しましたが、やがて北洋の水もぬるんできまして「にしん」がとれます「にしん」のとれたあとに「みがきにしん」がとれます。去年はとうとうその「みがきにしん」を東北の農民は
配給では食べることができなかつた。なぜかというと、
安本がその方の實權を握
つておる。八月が濟んでからその「にしん」を
配給しました。東北の農民はとうとう「にしん」を正式の
配給で受けることなしに、漸く流れた「にしん」を、季節はずれの味の悪く
なつた「にしん」を食べて濟んだのであります。どうぞ稻を肥やす前にまず人間に活力を與える方法、政策を
一つ……、去年からのお約束でございますから、平野さんが罷めましても
農林大臣に違いはない。どうぞ
水産局長忘れずに今年はああいう弊に陷らないように、今からはつきり政策を
一つ立てておいて頂きたい。
次に先程新
大臣は
農林省を
配給省でなく、
生産省にしたいという
お話でありました。
波多野前
大臣も
大臣にな
つてみて、一番
自分が意外に思つたことは、要するに
農林省というものは米を出せ、お魚を出せと言われる省であ
つて、
資材の
配給計畫もなし、現物も持たざる最も弱い省なることを認めた、こういうことを述懐しておりますが、どうぞ
生産省にするためにいろいろな政策が實現できるように十分なる政治力を發揮するように願いたい。
次にアメリカの對日政策の大轉換によりまして、今正に我が
日本の經濟界というものは、蘇
つて來たかの感がありますが、何といいましても、今日の
日本の
水産物の
生産額が戰前に比較しまして、約半額とな
つております所以のものは、いろんな原因がありますけれ
ども、漁區が非常に狹いことが最も大なる原因であろうと思います。これにつきまして、漁區の擴張問題は、極めてデリケートな問題でありますので、アメリカの援助だけではできないことも多少ありますけれ
ども、この
機會を掴みまして、成るベく功妙に漁區を擴張できるように
農林大臣として善處願いたい。殊に東經百六十五度の線、或いは北緯二十二度のこのマツカーサー・ラインを擴大して、「まぐろ」を澤山獲りますことの如きは、敢て面倒でもなかろうと思いますので、こういう點につきましても、
一つ十分お骨折りを願いたい。これは私のお願いであります。今日は時間がありませんのでこの邊で私質問を打切ります。