○
松下松治郎君 私は社会党にいながらこういうことを言うのじやないということを前提に置いてお聞き願いたいと思います。過日來
矢野議員、
千田議員、
三好議員のように、
水産に余り直接
関係のない方々から、
水産に対しまして活溌なる御
意見と好意ある御助言を頂きまして。私は感銘しておる次第であります。併しながら
水産は一般の商工業とは非常に異
つた存在でありまして、抽象的に議論をなさ
つておることは大分趣きを異にしておると私は思うのであります。(「抽象じやない」と呼ぶ者あり)默
つて聞いて下さい。あなたの言うことを默
つて聞いてお
つたのだから、默
つて聞いて下さい。いま少しく掘下げて
水産の
実情を把握して御檢討を願いたいと思うのであります。過日も「まぐろ」
漁業者及び以西底曳網
漁業者がたびたび上京されまして、一航海で七、八十万円も赤字が出て、引合わんから
魚價を改訂せよ、又リンク
資材が欲しいという陳情を頻りにしておられる。又
水産委員会の方へも陳情せられておるのであります。この件に関しまして
一言私見を申述べたいと思うのであります。
私は親子数代の
漁業者であります。
漁業以外に私は何にも知りません。知らん者でございます。今でも家に帰りますれば、漁夫と混りまして沖へも行
つております。又底曳もやり、定置も相当に持
つております。そうかとい
つて一本釣の経営を私はや
つておる者でありまして、事
水産の実際面に関する限りは、私は他の
議員にも引けを取らないという、うぬぼれか知らんが、確信を持
つておる次第であります。その
経驗からしまして、一航海に百万近い赤字が出るというようなことは、どうしても私は理解ができん、というよりもむしろ不思議に思うておるぐらいであります。勿論多少の赤字は出ます。又経営もなかなかやりにくいということは事実でありますけれども、かかる大きな赤字が出、又厖大な欠損をするというようなことは、我々のような
水産の專門業者はちよつと、納得が行かん点があるのであります。それは他に重大なここに原因があるのであります。それは技術
方面に非常に欠けておる点があると私は
考えておるのであります。古來
水産業者間では「船を買わずにいつそ船頭を買え」というような諺があるのであります。「かに」を取るにはどうしてもそのおる場所に網を入れなければ絶対に取入れないのであります。我々
漁業者は、「たい」が必要だから取
つて來いと言えば、必らず「たい」を取
つて來るのであります。それほど
経驗を得てや
つておるのであります。現
段階において多少の損害の行くということは我々も
認めますが、一航海に百万円も五十万円も赤字が出るというような
漁業は、將來は事業として絶対的に成り立たないことを私は確言して憚らないのであります。眞面目に將來も
漁業を生業としてやりたいという人であれば、いま少しく
漁業を技術的に又科学的に相当に研究する必要があるし、研究して頂きたいと思うのであります。
それから
水産局長に特に頼んで置きたいのでありますが、一例を申すならば、終戰後私の郷里の福井縣の附近におきましては、
漁業は有望である、ぼろいという言葉に駆られまして、單純に
考えまして、新興
水産会社が雨後の筍のようにできておるのであります。かかる会社は、私の調べたところでは、例外なくして赤字が出ておるような有樣であります。甚だしい会社は、計画の一割も
漁業をやらず、あまつさえ貰
つた資材を横流ししておる、横流しして食
つておるということを私は聞いておるのであります。かかる新設会社は往々にして政治的に多少の繋がりがある。中央に運動しまして、復金から或いは中金から金を借りる。又地方の銀行から、融資を受けるという他力主義、依存主義でや
つておる者が多いのであります。甚だしいものは、我々の聞いたところでは、復金から借りた金は出しても出さなくてもいいのだ、ただ
金融さえ受けたらいいのだというずるい
考えを持
つておるものが多いのであります。実際の我々
水産人は極めて純眞で眞面目な性格を持
つておるのでありまして、これは中央に運動することすらも分
つておらんというように私は思
つておるのであります。中央に運動に出て來るような人は、大半の人が政治的な繋がりを持
つておる。今新興会社で、わけも分らずに
漁業に携
つておる人が多いように思われるのであります。自己の技術の劣
つておるということを言わず、赤字が出るとすべて
政府の
責任であると他に轉嫁しておることは、私は断じていかんと
考えておるのであります。
主食代替の主たる補給源を担当する
水産業者の我々は、自己の
責任の重大であるということをつくづく又深く
考えまして、自己反省をして檢討をする必要があるのではないかと私は
考えておる一人であります。これら技術の低い者も高い者も
資材の割当、融資の割当を得ておるのだ、又却
つてそういう人は中央に繋がりがあるために、
資材の
配給を優先的に受けておるのだと我我は聞き又見てもおるのであります。これを重点的に
資材の
配給をしたならば、現在の漁獲は倍加するのではないかという点も
考えられるのであります。これに対しまして
水産局長は、戰後にかかる濫立しました泡沫会社とでもいいますか、新興
水産会社の整理統合ということに対して、何か御
意見があるかということをお伺いしたいのであります。又
矢野さんからお叱りを受けましたが、
水産関係の
議員の方々にも、特に
水産の実相をいま少し深く掘下げて御檢討を
一つお願いできれば私は非常に結構であるというように
考えておるのであります。
それから特に、和田安本長官がおりませんので、安本の木村さんに
一つお聽きしたいのでありますが、私の申しますことは血の叫びであるというようにお
考え下さ
つて、肝に銘じて
一つや
つて頂きたいということ、又これに対する御
答弁をお願いしたいというように
考えるのであります。たびたび
千田委員その他から
質問しておりますが、
政府は昨年の十一月二十八日に、地方長官
会議の席上におきまして、
生鮮食糧品の取締の強化方針を御指示にな
つておるということは、現在の
日本の國情において、これは万止むを得ない次第であると私は想像はしております。併しながらその際
資材のリンクということを御発表にな
つておるはずであると思います。それに対しまして、
資材というものはどれだけ出ておるかということに対して、我々はただ新聞で見ただけであり、又
政府当局の当院の
答弁によりましても、御発表に
なつた一割も出しておらん。取締はどうかというと、強化に強化の一途を辿りまして、このままに放
つて置きましたならば、
水産業者というものは全然破滅してしまう。
水産業者の破滅はいいが、前途憂慮すべき問題が起きて來るのじやないかというように私は
考えておるのであります。
政府、殊に安本の木村さんはこれに対して
責任を感じておるのかおらんのか。又感じておるとしたならば、いつ頃出せるか、どれだけ出せるかという、その時期等も
一つ御
答弁をお願いしたいと思うのであります。
又
水産局長にお願いしますが、この問題に関しまして当面の
責任者であります
水産局長は、当時安本あたりの御方針に同調せられたのでありますが、かかるリンク
資材の裏付けに対しまして、安本又
関係官廳から確たる言質を取
つてあるかないか。的確な見通しを以てこの取締の強化に同意されたかどうかということに対しまして、
一つお聽きしたいと思うのであります。