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1948-07-05 第2回国会 参議院 治安及び地方制度委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年七月五日(月曜日)    午後二時七分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○地方自治法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○地方税審議会委員候補承認の件 ○地方自治法第百五十六條第四項の規  定に基き、経済査察廳法第十三條第  一項の規定による地方経済査察廳の  設置に関し承認を求めるの件(内閣  提出衆議院送付) ○地方財政法案内閣提出衆議院送  付) ○地方税法を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○地方配布税法案内閣提出衆議院  送付) ○警察官等職務執行法案内閣提出、  衆議院送付)   —————————————
  2. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) これより委員会を開会いたします。   速記を止めて下さい。    午後二時八分速記中止    ——————————    午後四時五分速記開始
  3. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 速記を始めて下さい。他に御質疑はございませんか。他に御質疑もなければ本案について討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います……別に御意見もないようでありますから討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 御異議ないものと認めます。それではこれより採決に入ります。地方自治法の一部を改正する法律案を可決することに御賛成の方は御起立を願います。    〔総員起立
  5. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 全会一致と認めます。よつて法案は可決と決定いたしました。  尚本会議における委員長口頭報告内容は本院規則第百四條によつて、予め多数意見者承認を経なければならぬことになつておりますが、これは委員長において本案内容委員会における質疑應答要旨討論要旨及び表決の結果を報告することにして御承知願うことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 御異議ないと認めます。それから本院規則第七十二條によりまして、委員長議院提出する報告書には多数意見者署名を附することになつておりますから、本案を可とする方は順次御署名を願います。    〔多数意見者署名
  7. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 署名洩れはございませんか。ないと認めます。  次に地方税審議会委員会候補荒井誠一郎君、木村清司君、鈴木武夫君の三君を、本委員会といたしましては承認いたしますことに決定いたしましてよろしうございますか。    〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  8. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 御異議ないと認めて決定いたします。それでは先に引続きまして三法案討論を続行することにいたします。
  9. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 私は本三法案賛成をいたしますが、地方財政基礎がこの三法案によりましてやや確立をいたしたことになるそうであります。これは過般野溝國務大臣にその点を御質問いたしたのでありますが、野溝國務大臣においてはまだ地方財政基礎は確立しないということを予算委員会で御答弁があつたのであります。併しそうなりますと、警察法並びに消防組織法におきまして、地方財政基礎が確立するまでは從前通り、この地方自治体警察、並びに消防に対しまして、國庫から補助をしなければならないということになるのでありますが、それは後で政府委員並びに大藏大臣から御訂正がありましたから、先ず不満足ではあるが、この國家財政の困難な時代においては、地方財政基礎は一應確立したのであるとこういうふうに了承いたしまして、この三法案賛成をいたします。  尚この機会に希望を申して置きますが、これも先達つてこの委員会で質問いたしまして、案はその後予算委員会なんかで忙がしくて私は直接答弁をお聞きしなかつた、同僚の鈴木委員から政府委員答弁を又聞きに聞いたのでありますが、その点はこの地方配付税法案の第三條に「毎年度分として配付すべき配付税の額は、前前年度において徴收した所得税及び法人税の百分の三十三・一四に相当する額とする。」こうあるのであります。これがインフレの激しいこの時代におきまして、この今年配付すべき配付税の額を前年度に徴收した所得税及び法人税基礎としてやるということは甚だ不適当でございます。そこで第三十八條ができておりまして、この昭和二十三年度においてはその「百分の三十三・一四」というのを「百分の二百三十・九三」というふうに読み替えるのでありますかという御質問をいたしました。それに対してまあ大体そうだという御答弁であつたそうでありますが、そういたしますと昭和二十四年度におきましてそれが「百分の四十九・七七」に減つておるのであります。これなんか非常におかしくないか、今からインフレの動向、俄かに幾らになるということは勿論予測はできませんけれども、これはその時に應じて率を替えられまして、そうして十分な配付税地方に與えられるということを要望する次第であります。これは前前年度という標準を採つたことが止むを得ない事情に出るとは言え、こういうインフレ時代においては不適当であるということを物語つておるのであろうと思います。いろいろこの三法案について御苦心の点はよく分りました。別に修正案を出したわけでも何でもありませんが、そういう点をよく考慮されまして、二十四年度のときにその負担をなさるというふうに十分に御注意あらんことを希望いたします。以上希望意見を附しまして賛成をいたします。
  10. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 先には羽生君から三法案に対する賛成意見開陳がありまして、今又岡本愛祐委員より今のような御発言があつたわけでありますが、討論を打切りまして採決いたしてよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 鈴木直人

    鈴木直人君 私もこの三法案賛成するものであります。その理由は、只今岡本愛祐君が述べました理由と一致しておるのであります。殊にそれに附加えて申上げたいと思いまするのは、政府原案に対して衆議院修正をして参議院に廻付されたのでありますが、その衆議院修正案に対して、私は非常に賛成をいたしておるのであります。元來人場税移讓或いは酒、煙草消費税というものの創設というようなことは、是非今後地方自治体財源伸縮性を保つ上において必要な税であるから、これを実現したいと自分は考えておつたのであります。併しながら政府においていろいろの関係がありまして、入場税移讓されましたが、酒、煙草消費税創設はできなかつたのであります。然るに衆議院におきまして酒の消費税創設されて、そうして國民の輿論となつておるところの府縣市町住民税を軽減をされたところの案が修正されたわけでありまして、私は十分ではありませんが、政府原案よりもよいよい案であることを考えておるのであります。できるならば事業税も全面的に止めるべきであると考えておつたのでありますが、これは関係方面との折衝もあつて実現がなかなかできなかつたということでございまするが、私はこの衆議院修正案を認めまして原案全部に賛成をいたすものであります。
  12. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 岡元さんよろしうございますか。
  13. 岡元義人

    岡元義人君 この非常に地方財政の逼迫しております折柄、この法案は一刻も早く出してやらなければならんということは十分、分つておりますが、私は地方財政法、それから先程説明いたしました修正案も別に出しておりますが、これについて反対するものであります。というのはこの地方財政法及び地方税制の中に盛られております内容については、戰爭犠牲者であるところの、又特に引揚げて來た六百二十万の同胞が非常な注視の的になつておる問題であります。僅かに法案の一部で済むことでありますけれども、これが全然考慮されないということであります以上は、この法案賛成するわけに行かないのであります。地方財政法の問題は生活保護法については國庫負担にすべきである、分割負担すべきではないというのが、私の趣旨でありまして、これは当委員会においても縷々述べて参りましたけれども、留守家族や遺家族、戰災者引揚者等生活保護を受ける者は、非常に精神的な苦痛、圧迫をば受けておる。又地方財政も非常な逼迫状態にあり、この際同じ分與税を以て補填するのであるならば國庫が一本で負担すべきであるというのが、私の主張であります。尚今後帰つて來るところの八万乃至九万人の引揚無縁故者に対しましては、政府は片一方におきましては当然これらを收容するために住宅費まで予算に計上しておるのであります。それも尚予期しないところの地方町村が、こういう闖入者に対しまして、地方財源を以て尚生活保護負担をしなければならんというような矛盾した事実に対しまして、私はこの法案賛成するわけにいかないのであります。以上反対の意見を述べました。
  14. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 他に御意見の御開陳がなければ、これより採決に入りますが……、野溝國務大臣より発言を求められましたからこれを許します。
  15. 野溝勝

    國務大臣野溝勝君) 岡元委員にこの際御了解を得ておきたいと思います。戰災者に対して特に考慮を拂つてない、例を挙げれば住民税生活保護をする國家的な政策に背反するではないかという御意見でございますが、実は四十七條には別に引揚者とは謳つてありませんが、「貧困に因り生活のため公私の救助を受け又は扶助を受ける者に対しては、この限りではない。」という制的規定がありますので、実際上の生活状態はそれを許さない事情にありますならば、免除をすることもできるのでありますから、その点御了承を願つておきたいと思います。
  16. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) まず岡元義人君提案の修正案、それは三法案地方税法の第四十七條及び第百二條の修正案でありますが、岡元義人君の修正案採決いたしたいと思います。岡元義人君の修正案に御賛成の方は御起立を願います。    〔起立者少数
  17. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 少数と認めます。よつて岡元義人君の修正案は否決されました。それでは三法案を一括して採決いたします。政府原案衆議院修正案を含めまして、衆議院より回付の法案に対して、御賛成の方の御起立を願います。    〔起立者多数〕
  18. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 多数と認めます。よつて法案は、三案とも可決確定いたしました。法規によりまして御署名を願います。    〔多数意見者署名
  19. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 尚本会議における本日いたします委員長報告は御一任を願いましたことに解しましてよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) それではそのように解釈いたします。尚本日は最後の日でございまして、残つております議案は、先程の警察官等職務執行に関する法案と、それから請願及び陳情が数件ございますので、早速これを御審議を願うことにいたします。  それから尚もう一つ経済査察廳法による地方の出張所について、地方自治法に基くところの承認を求めるところの議案がございますが、経済査察廳法衆議院でその名前が変りまして、目下決算委員会審議中でありまして五時頃でないとはつきり分ちないそうでありますから、然る後に皆さんに改めて御審議を願うことに本法案につきましてはいたしたいと存じております。  それでは早速引続きまして残つておりまするとろこの本委員会に付託されました陳情並びに請願につきまして上原專門調査員の説明を聽くことにいたします。速記を止めて下さい。    午後四時二十八分速記中止    ——————————    午後四時四十五分速記開始
  21. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 速記を始めて下さい。他に御質疑はございませんか。他に御質疑もなければ本案について討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにして御述べを願います。別に御意見もないようでありますから討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議ない」と呼ぶ者あり〕
  22. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 御異議ないと認めます。それでは、これより採決に入ります。「地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、経済査察廳法第十三條第一項の規定による地方経済査察廳設置に関し承認を求めるの件」を承認することに御賛成の方は御起立を願います。    〔起立者多数〕
  23. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 多数と認めます。よつて本件承認することに決定いたしました。  尚本会議における委員長口頭報告内容は、本院規則第百四條によつて、予め多数意見者承認を経なければならぬことになつておりますが、これは委員長において本案内容委員会における質疑應答要旨討論要旨及び表決の結果を報告することにして御承認願うことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 御異議ないものと認めます。それから本院規則第七十二條によりまして委員長が、議院提出する報告書には多数意見者署名を付することになつておりますから、本件を可とする方は順次御署名を願います。    〔多数意見者署名
  25. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 署名洩れはございませんか。ないと認めます。速記を止めて下さい。    午後五時零電速記中止    ——————————    午後五時十九分速記開始
  26. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) では速記を始めて下さい。鬼丸委員
  27. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 政府委員にお尋ねいたしますが、この第七條警察官等武器使用によつて人危害を加えてよろしいという範囲は、ひとり正当防衞緊急避難のときのみならず、その他の場合において、「死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁こにあたる罪を現に犯し、若しくは既に犯したと疑うに足りる充分な理由のある者がその者に対する警察官等職務執行に対して抵抗し、若しくは逃亡しようとするとき」……刑法の所定の刑期におきまして、長期三年以上の刑に当りまするという者は、概して刑法中の殆んど大部分の犯罪がこれに含まれるのであります。その刑法の大部分の刑に当りまする刑を犯しましたる者なりと認めまする警察官の認定によりまして、そうして而もその者が逃走しようとするときは、殆んどそうした被疑者を調べまする場合は、大部分從順逮捕に應じまする者は概して少い、こういうようなことからとかくにして逃走しようとする者というふうに認める場合が、警察官には多いのであります。そういう名の下に武器を使用いたしまして、これで人を殺傷いたしましても尚且つその責任なし、それは義務上の行爲なり、法令上の行爲なりということによつて、無罪になりまするならば、それ程危險なことはないのであります。いわゆる「危害」とは何ぞや、言葉を換えるならば殺傷、殺してもよろしい、傷害を與えてもよろしいということであります。現在の警察官教養程度におきまして、果してそれだけの大きな権力を與えてやつて何ら危險ないと御覧になつておるか、先ずその点を伺いたいと思います。尚武器とは一体何を指すのであるか、この二点について先ず伺いたいと思います。
  28. 柏村信雄

    政府委員柏村信雄君) 先程議院修正案を御説明申上げた際にお話申上げたのでありますが、原案におきましては「死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁こにあたる罪」と單に書いておりましたが、衆議院におきまして「禁こにあたる兇悪な罪」というふうに言葉を入れたわけであります。そういたしまして例えば窃盗にいたしましても單なる野菜を盗みに來たというような者について、これを適用するという考えは毛頭ないのでありまして、先般茨城縣の水海道に起りましたような、トラツク等を使用した集團窃盗、而も武器も持つておるというような者につきまして、必要ある場合にこの適用考えるということであります。勿論御心配のような警察官教養程度というようなことも十分考えなければなりませんので、これらについては十分今後においても、この規定適用問題等については、十分教養をいたして行くつもりでありますが、この規定そのものにおきましても「これを防ぎ、又は逮捕するために他に手段がないと警察官等において信ずるに足りる相当な理由のある場合。」ということに限定をいたしておりまするし、七條の本文におきましても「その事態に應じ、合理的に必要と判断限度において、武器を使用することができる。」といたしておるわけであります。決してどんな場合でも射殺権があるのであるというふうに單純に考えておるわけでは毛頭ないのであります。勿論危害を加えてららない場合に危害を加えれば、当然これは過剩の行爲になりますし、例えば逮捕のため止むを得ず足であるとか手であるとかいう生命に支障のない程度危害を與えて、逮捕を全うするというようなことが必要である場合におきまして、生命を奪うということになりますれば、その範囲において過剩の行爲考えられるわけでありまして、十分その点はこの規定を愼重に運営上においても考えて参りたい、こう思つておるわけでございます。  それから武器範囲でございますが、只今使用いたしておりまするものは、挙銃と警杖、警棒であります。これも將來或いは研究の結果、警察官の使用し得る適当なる武器というものが考案されるかも知れませんが、現在におきまして使用いたしておりまするものは、その範囲でございます。
  29. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 衆議院の方でこの第一項の場合に「兇悪」という文字を入れるということでありまするが、兇悪とか或いは非兇悪とかいうものは程度の問題でありまして、勿論法的根拠がない。さような法的根拠のなきものに対しまして、刹那の出來事の場合に、刹那の間に判断し、なさなければならないことが多いのであります。そういう場合に非常な解釈において困難なようなことの、殊に法律的根拠も指針もないようなことによつて、それが而も憲法の保障に係りますうちの、最も重大となりまするとこその生命身体に対しまする問題等に係つておりまする場合ならば、一段とその点は法を作ります場合に注意を要しなければならんと思います。成る程正当なる理由であるとか、或いは相当なる理由であるとかいうような規範一つ條件があるようであります。併しながらこれは誠に実際問題といたしましてはむつかしい問題でありまして、私は幾多事例を知つておりまするが、警察官職務に忠実でありますために、一つ被疑者逮捕するという場合に刹那の出來事でありまするので、職務に忠実なるために往々にしてその規範というものを逸脱いたしまするのが殆んど大部分である。そこで嚴格なる規定一つ設けてありましても、尚且つその範囲を超えまして、從來幾多の問題を起しております事例は乏しくない。從來は帶劍を佩せられておりましたのでありまするが、今後は武器となりますれば、只今までは挙銃である、或いは機関銃等もやがては持たせなければならん場合もあるでありましよう。その他の武器も相当なる威力のあるものを持たせるということになるでありましよう。而もこの規定には何もございませんから、時に應じてその武器というものを決める必要があるのであります。そうしたような場合には從來帶劍を命ぜられております時においてすら、幾多越権或いはその規範を脱しまして問題を起しておるのでありますからして、況んやまだこういうような法律がないにも拘らず、その間におきましてすら各所にいろいろ挙銃使用によりまする、いわゆる脱線的行為がありまするような事例があるのです。でありまするから、ここに一つ法的権力を與えまするには、相当な嚴重な規範を與えて置いてすら、私は尚且つ職務に忠実のために、その範囲を越えはしないかということを憂うる者であります。その意味におきまして、私はこの長期三年以上というようなふうなことになりますると、先程申上げました通りに、殆んどもう刑法処罰になりまする、反則行爲というものは大部分これに当るのでありまするが、それにしては危害を與えてよろしいということになりまするのは、余りにもこの権利が強過ぎはしないかと、必ずや私は、この法律を制定いたしますることによつて警察官に対しまする、いわゆる越権と申しましようか、とにかく規範を脱しまする幾多事例の起つて参るのであろうことを憂らるものであります。  故に私は、若しこういうことに対しまする規定をどうしても置かなければならんとするならば、尚このいわゆる過剩殺傷の場合における規定ですね、これは少くとも何故この本條に置かなかつたか。先回私はこの委員会においてお尋ねいたしたのでありますが、それはもうすでに当然であるから、その結果として、必ず超過の罪については、責任を負うべきであるということを御説明しておりましたが、刑法にありますごとに、正当防衞、或いは緊急避難の場合にその限度を越えまするならば、その責任を免れることができないということが明記してありまするごとくに、この場合にも明記しておかないと、法から與えられたる一つ権利であると、こういうふうに解釈する虞れがあります。で、あるから、一つの何を抑えんとすれば、結局この過剩の処罰に対しましては、当然最小限度において、私は規定しなけれれば、危險この上もないものであると思います。政府の所信はどうでありましようか。
  30. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 只今の点につきましては、誠に御尤もの次第であります。我々も本案を立案をいたします際に、その点を考えたのでありますが、法制局におきましても、それは当然であつて、この法律限度を越えた場合には、必ず刑法の各本條で処断されることになるということで、我々はこれを取止めたのであります。併しながら実際それを書いて置くということは、当然のことを書いて置くことも差支ないじやないかと私は考えまして、丁度衆議院において修正をされます際に、そういう御意見もありましたので、むしろ我々の方から、それじやこの際に本法の各本條規定を越えて、人権蹂躙亘つた場合には、刑法の罪を免れることができないんだということを、はつきり第九條を設けて明記をして貰つたらどうだろうということさえも申したのでありまするが、その際も法制長官は、それは法律上は当然のことであつて、書くには及ばない、それから衆議院議員の方におかれましても、それは当然だから止したらよかろうというので、丁度その際は、衆議院の方は司法委員会委員の方も御列席の上で、そういう内協議をいたしまして、そういうダブるような罰則は止しましようということに帰着いたしたのであります。我々の考えと、今日に至りました経緯をお傳え申上げます。
  31. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) ちよつと鬼丸委員に申上げますが、先程あなたがお述べになりましたこの審議を続行することに関してでありますが、只今そのために委員部長参つたのでありますが、結局委員部長が私に申しておりますところでは、その筋のアプルーヴアルを得るという手續については、仮決定を願つて、そうしてアプルーヴアルを得るということに仮定を置いていいんであるということを申しておりました。尚その時、本日は採決に入らずして、審議を打切るべきであるというような意見の御開陳がありましたのですが、若しそういうことに御賛成の方があるようでございましたら、この際採決して、審議を続行すべきか、或いは審議を打切り、採決は本日すべからずとするかというようなことについて、お決めを願うようにしたらどうかと思うのですが……。
  32. 松井道夫

    委員外議員松井道夫君) ちよつと今外と話しておりますから、一点だけを質問さして頂きます。
  33. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 併し今のことが決まつてから後にして頂きましようか。あなたは司法委員で……。
  34. 松井道夫

    委員外議員松井道夫君) 私は直ぐ外へ参りますから。
  35. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) ちよつと待つて下さい。重要なことですから、大変恐縮ですが、この際若しその点について採決するのでしたら、ちよつと……
  36. 松井道夫

    委員外議員松井道夫君) ちよつとその前に……。
  37. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) それじや簡單に一つ
  38. 松井道夫

    委員外議員松井道夫君) 第七條について、論議で相当闘わされておつたように拝聽しておるのであります。私、実は他の委員会関係で、ずつとこの合同委員会に出席できなかつたことを甚だ遺憾に存じておるのでありますが、この七條の、人を危害することができるという場合は、これは警察官としての正当の行爲刑法でいうと、三十五條の正当の行爲規定したものであると、私解しておるのであります。併しこの点において、どうしても私の理解の行かないことは人を殺害してもよろしい、射殺してもよろしいということが、正当の行爲として認められるという点であります。人を殺す場合は、この條文にも出ておりまする、これは刑法第三十六條、同法店三十七條の場合が規定しておるのでありまして、この以外に、警察官の正当の行爲として人を殺害する場合までも認めることは、これを逃走の場合に例をとつて考えて見ますと、如何にも危険千万なことであるのであります。この正当の行爲を認める根本の理由からいつて、行過ぎるという私考えるのであります。例えば足や、或いは肘のあたりに外傷を與えれば、それで目的を達することが多い。本当の氣持で射つているんだなと感じさせる程度のことで結構な場合が多い筈であります。何故に人を射殺までしなければならんのか。それを正当と見なければならないのか。その理由は到底理解できないのであります。人の生命を軽んずるという印象を少しでも與えますことは、新らしい憲法の、國民の基本的人権を確保いたします、その精神からいいまして、非常に有害であるのであります。人の生命ということを最も重要なものだという考えをここに強く印象付けなければならんのであります。人を殺してしまつてはこれは最後なのでありまして、國家の政治も憲法自身も、國民の幸福ということを考えておる、公共の福祉によつて関係でこういうことが認められるという議論が出て來るのでありますが公共の福祉は個人の福祉の集積であると考えなければならんのでありまして、この個人をば、こういう段階で射殺してもかまわんということは、頗る危險なのであります。先程も申上げましたように、人の生命を軽んずるという印象を少しでも與えることは、非常に恐怖感を却つて瀰漫させるようなことにもなるのであります。人の生命の重要さというものの認識が薄くなつて参りまして、強く罰すれば罰する程、死刑を多くすれば多くする程人の生命を害するような犯罪が起て來たというようなことは、昔の警察國家でその例が多いのであります。
  39. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 松井君に御注意いたしますが、成るべく簡單にお願いいたします。
  40. 松井道夫

    委員外議員松井道夫君) 私のお尋ねいたしますことは、要するに正当なる行爲として人を殺害してもよろしいということを設けなければならない理由をお尋ねいたしたいと思います。
  41. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 誠に重要な点でありますので、私からお答え申上げたいと存じます。これは当然に射殺をしてよろしいという規定ではないのでありまして、第七條に伊「相当な理由のある場合においては、その事態に應じ合理的に必要と判断される限度」でありまして、この「限度」を超えますると過剰行爲になつて刑法犯に問われるのであります。從つて單に殺人犯が逃走して行く、これは非常に兇悪犯であつて、何とかしてこれを捕えなければならんといつて、昔なら警防團や何かと一緒に山狩をしてこれが飛出して來た。逃げて行く、こういう場合には或いは足ぐらいを射る場合があるかも知れませんが、さような場合には危害を加えてもこれは正当な行爲である、すべてそれはそれらの周囲の事態に應じまして、合理的だと一般に認められるという場合でなければ、若し誤つて逃亡する者を射つ殺したということであれば、これは過剰行爲として私は過失傷害致死罪になるべきだと、かように考えておるのであります。その点を申上げて置きます。
  42. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 大体あなたの御質問は大分前からいわれていることでもありますし、司法委員会を代表して鬼丸さんに又御意見を述べて頂くという形になつておりますから……。
  43. 松井道夫

    委員外議員松井道夫君) 要するにそういう、人を殺害するという場合には、この正当防衛に限つてよいのではないか。警察官の正当の行爲として今の逮捕乃至は現行犯といつたような場合の正当行爲として、傷害の程度ならいざ知らず、殺害の程度まで認めなければならない理由が、私にはどうしても分らないのであります。その点をお尋ねしておるのであります。
  44. 柏村信雄

    政府委員柏村信雄君) お話の点は御尤もだと思うのでありますが、ここで書いております「左の各一号の一に該当する場合を除いては、人に危害を與えてはならない。」といいまして、前の第三十六條、即ち正当防衛の場合も含んで今の殺害ということをいつているわけであります。危害の中、人を殺す場合もあるということは、殆んど正当防衛の場合以外に「その事態に應じ合理的に必要と判断される限度」として、人を殺すということはあり得ないと思います。
  45. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 重要な採決をしなければなりませんから、それが済んでからお願いいたします。ちよつとお待ち下さい。大変恐縮でございますが……。
  46. 松井道夫

    委員外議員松井道夫君) 明らかに注文に反した御解釈のようであります。一言だけ申上げて置きます。
  47. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 先程御相談いたしたのでありますが、鬼丸さんから本議案審議を打切つて採決すべからずというような御意見の御開陳があつたのですが、それについて採決いたしますか。或いは採決せずしてこのまま審議を続行いたしましたものでしようか。それについて一つ意見を承わりたいと思います。
  48. 中井光次

    ○中井光次君 先程鬼丸さんからそういう座談的にお話がございましたが、皆さんもすでに審議を進行されておるのです。特に御異議もないようでありますから、そういう固い形を採らないで審議を進行されたら如何でしようか。(「賛成」と呼ぶ者あり)
  49. 羽生三七

    ○羽生三七君 先程鬼丸さんが、修正案について、関係方面との折衝その他本質上の審議が、いろいろ形式上、とやかくいわなくても実際上可能だということを、再三繰返されておるのでありますから、それに基いて一應態度を決定したいと思います。
  50. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 私はこんな重要なことは会期の終りにおいても、もう少し研究する必要があると思います。少なくとも、質問におきましてもまだこの程度におきましては到底私共質疑打切りの動議に賛成し難いのであります。私共としては少なくとも、もう少し……
  51. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) ところが事実上今日一ぱいで終りになるわけでありますから、本会議にも入らなければなりませんし、又我々といたしましては報告いたすことの準備もいたさなければなりませんし、続行いたすならば徹底的に十二時まで続行して結構なんですけれども、若し先程のお考のように、又羽生君から御意見の御開陳がありましたように、本日採決すべからずというところの御意見が多数なようになりましたならば、決して無駄ではありませんけれども、まあそういうことに時間を多く費しておる暇はないんじやないかと思いますので、御相談申上げたわけであります。
  52. 岡元義人

    岡元義人君 議事進行について……一應委員長採決をなさつて進められたらどうですか。
  53. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) その点をですか。
  54. 岡元義人

    岡元義人君 そうです。
  55. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 併しなかなか容易じやないと思います。人の身体を殺傷するというようなことを許されておるのは、判決がとにかく正当防衛か緊急の以外にないのですから、これが本当に法的根拠を與える新らしいものとするならば、余程愼重を期さなければならないと思いますので、少くとも私共まだ異議を多分に持つておるのであります。この程度で私は採決せずして審議を続行することを提案いたします。
  56. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) そうするとあなたのいわれておることを私が誤解しておるような形になるわけなんでありますが……。
  57. 中井光次

    ○中井光次君 鬼丸さんの御意向は審議を打切らがやりたい、併し採決して時間が迫れば……。
  58. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 採決というのは審議を続行するかしないかということを採決するわけなんです。
  59. 中井光次

    ○中井光次君 それは異議がないとおつしやつておられますわけです。([審議続行異議なし」と呼ぶ者あり)
  60. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) それでは審議を続行いたしましてよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  61. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) それでは審議を続行いたしまして……。
  62. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 司法委員会の方で最後の採決がありますから、私はこれで……。
  63. 鈴木直人

    鈴木直人君 司法委員会がこうだからといつてここを休憩して又行かれるということは非常に困る、それは困る。それならとにかく打切るならば打切りの動議を出して頂きたい。
  64. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 それでは仕方がありません。
  65. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 質疑は大体盡きたんじやないんですか。
  66. 岡元義人

    岡元義人君 この辺で打切つて頂きたしと思います。動議を提出いたします。(「賛成」と呼ぶ者あり)
  67. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) それでは質疑を打切るということについて御賛成の方は挙手を願います。    〔挙手者多数〕
  68. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 多数と認めます。それでは質疑を打切ることにいたします。  つきましては直ちに討論採決に入りましてよろしゆうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  69. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) それではこれより討論に入ります。警察官等職務執行法案につきまして御意見の御開陳を願いたいと存じます。
  70. 羽生三七

    ○羽生三七君 この法案につきましては專門家の立場、即ち司法委員の方々の御意見によつてすでに明かなごとく、各條文に多くの矛盾を孕んでおります。又司法の專門家でない私共素人の人間が見ましても、この法案が成立した場合におきましてはその警察官の素養がこれに伴わなければ、極めて危險な状態を招來することが十分看取されるのであります。それがどの項目であるかということは、時間がありませんから私は詳細には申上げませんが、恐らくこの法案の随所にその危險性を暴露しておると思います。從つて私はこの法案に反対なのであります。併し私は正常なる行爲が不当なる拘束を受けることには反対いたしますが、兇悪なる犯罪まで見透すということを正当化するものではないのであります。これは恐らく私と同樣の反対論者でも、誰が見ても万人悉く兇悪なる犯罪と看取されるものを見逃すために反対しておるのだというふうにお考え下さる方はないと思います。私達は正当なる正しい行爲すら、警察官の素養如何によつては誤つて解釈され、又誤つたよう行爲をとられる危險性十分内包しておる、この法案には賛成することはできないのであります。この法案をなぜ早急にそのように決定を急がれるのか私は疑問でありますが、今日までとにかく現行法でやつて來たのであります。若しこれは足りない、警察官が十分に職務を果せないというならば、私は警察官の待遇などを改善して、長い目で見て今後警察官が自主的な判断と、正しい見識によつてその運用を誤らざる方法を期待すべきだと思うのであります。日本が曾ての軍國主義、官僚主義の時代から民主主義に轉化する過程におきまして、今日著しい兇悪犯罪を逮捕する場合に、極めて多くの困難があるということは私も承知しております。併しこの民主主義の過程には多少の犠牲は止むを得ざるものでありまして、これは暫く將來警察官の素養等に十分な努力を費して、常識的なる判断ができることによつて、かようなる法案を制定せずとも、その精神は十分果し得ると思うのであります。以上の意見にをきまして私はこの警察官等職務執行法案に反対いたします。
  71. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 尚私、言い遅れましたので申上げたいと思います。司法委員の方々から、多数の修正案等が出ておりますが、修正案提出の資格ある者は、法規的に治安及び地方制度委員会の方ばかりであります。他の委員会の方は、それより離れたるところの意見として御開陳を願つたことになつております。尚只今御討議を願つておりますところの警察官等職務執行法案討論採決におきましては、衆議院修正案を包括しているものと御解釈を願いたいと思います。他に御意見がありましたら、お述べを願いたいと思います。
  72. 岡元義人

    岡元義人君 私はこの法案賛成いたしますが、この際日本の國情からいたしまして、警察力を強化しなければならぬということは、非常に大事なことだと思うのであります。併しながら当委員会におきましても意見を述べましたように、若し間違えますと、却て役に立てなければならぬ法案が、悪い結果になるというような懸念が多分に含まれている。そういう関係上、今日まで審議の上にもそれが反映して來たと思うのであります。本案が成立いたしましたならば、十分にこういう點をば勘案されまして、特に周圍の解釈が、折角民主化されました警察が、又元の姿に還るのではないかというような懸念さえも抱かしめているという実情があるのでございます。こういう點につきましては十分当局は注意を要する。  尚もう一點、拳銃の取扱ということにつきましては、尚一層細かに訓練する必要がある。こういうことばを述べまして、この法案賛成いたします。
  73. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 他に御意見の御開陳はございませんか……。なければこれを以て直ちに採決いたしたいと思いますが、よろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  74. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) それでは警察官等職務執行法案を、衆議院修正案を一括いたしまして採決いたします。本法案に御賛成の方は御起立を願います。    〔起立者多数〕
  75. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 多数と認めます。よつて法案は可決せられました。尚多数賛成人の署名を法規上要しますので、御賛成の方だけ御署名を願いたいと思います。    〔多数意見者署名
  76. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 委員長の本会議においていたします口頭報告内容につきましては、御一任を願つたものと解してよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  77. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) ではさように解釈いたします。(「反対があつたことは委員長報告の中に入れておいて下さい」と呼ぶ者あり)  では、これで本委員会に付託されました第二國会における議案は全部議事いたしたわけでございます。大変御苦労さまでした。(拍手)これを以て散会いたします。    午後五時五十七分散会  出席者は左の通り。    委員長     吉川末次郎君    理事            中井 光次君            鈴木 直人君    委員            青山 正一君            羽生 三七君            村尾 重雄君            岡田喜久治君            大隅 憲二君            草葉 隆圓君            黒川 武雄君            奧 主一郎君            鬼丸 義齊君            岡本 愛祐君            岡元 義人君            柏木 庫治君            駒井 藤平君            阿竹齋次郎君   委員外議員            大野 幸一君            中村 正雄君            松井 道夫君            小川 友三君   國務大臣    國 務 大 臣 苫米地義三君    國 務 大 臣 野溝  勝君   政府委員    地方財政政務次    官       西郷吉之助君    國家地方警察本    部長官     斎藤  昇君    國家地方警察本    部次長     溝淵 増己君    國家地方警察本    部警視    (國家地方警察    本部総務部長) 柏村 信雄君