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説明員(
三枝三郎君)
只今御紹介に預りました
三枝であります。総監は今日横浜で六大都市の
警察長会議が朝からありまして、どうしてもそちらの方に出なければならので、私が
代りに参
つた次第であります。これから
警視廳管内おける最近の
治安状態につきまして、
簡單に、極めて大
雜把に御
説明申上げようと思います。それで
警視廳としまして、現在どういうような
根拠で最近の……先程
委員長からお話がございましような非
日活動に関連するような、
事態にタツチしておるかと申しますと、現在
東京憲兵司令官の口頭による
指令に基きまて、
警視廳管内で
集会とか、
デモンストレーシンヨを催す場合に四十八時間前に
所轄の
警察署にその
責任者が
届出でなければならないことに
なつております。そうして
警視廳としましは、
届出でられた
集会なり
デモンストレーシヨンの
責任者の名とか、
簡單な
内容とか、
デモの場合はそのコースとか、そうい
つたものを二十四時間前に
東京憲兵司令官に報告しまして、そによ
つて承諾、或いは非
承諾をするのであります。それでその続きによりまして、本年三月から九月までに
警視廳管内において行なわれました
デモンストレーシヨン、或いは
集会の開催された数を一
應申上びますと、
デモは三月が十一件四月は九件、五月は十五件、六月は六件、七月は六件、八月は四件、九月は五件、九月
末日までで
合計五十六件ということに
なつております。この
デモの中には、例えばメーデーというような非常に大きなものから、或いは数百名の小さなものもございます。それから
集会は、これは非常に数が多いのでありまして、平均一日二、三十件あるのであります。そうしてこの
集会の数を
労働組合関係の
集会と、それ以外の
政治、或いは
文化関係その他の
集会に分けて統計して見ますと、
労働組合関係の
集会につきましては、三月が百六十九件、四月は百七十件、五月は百二十三件、六月が百六十三件、七月は九十九件、八月は百五十件、九月が三百十件、
合計百八十四件という数になります。この
労働組合関係の
集会の
内容を大
雜把に申上げますと、特に最近につきましては
國家公務員法の
改正問題を繞りまして、
労働組合が今後如何なる
方針の下に行かなくてはならないかということを
議題にした
集会が大多数であります。
次に
政治、
文化その他の
関係の
集会の数を申上げますと、三月は百八十五、四月は百五十八、五月は二百五十四、六月は百八十一、七月は百四十七、八月は百九十三、九月は百六十五、
合計千三百十三件と
なつております。この
政治、
文化その他の
関係の
集会の中、最近著しく特徴づけられておりますのは共産党によりますところの街頭の
演説会が数が多く
なつておる事実であります。このような
デモ、
集会或いはそれ以外の
管内に起きましたいろいろな
事態を基礎にしまして、最近の
治安情勢を
簡單に申上げて見ますと、
先づ第一に我々としまして非常に憂慮しておりました問題は、いわゆる八月攻勢の流れとも考えられましたところの
國鉄、
全逓両
労働組合の
職場離脱の
鬪爭がどのような形で
中央に波及して來るかということであります。結論的に申上げますと、幸い
警視廳の
管内においては
職場離脱の実際の
行動はなか
つたのでありますが、その結果になるまでにも、やはり
都下において北海道とか或いは
福島方面の
職場離脱者が上京して参りまして、特にその一部は
青年行動隊員と称されるような、極めて若い
血氣盛りの
人達がや
つて参りまして、
國鉄の各
職場とか或いは
都下の比較的急進的な
人達のおりますところの
印刷工場などで
アジ演説をや
つてお
つた事実があるのであります。しかし何れも大した劾果を挙びることもなく終りまして、又一面
都下の
いろいろ労働組合の一部でも
急進分子が相当胎動した事実があるのでありますが、結局全体的に見ますと実際
職場離脱の
行動に
移つたということはなくて済んだのであります。
第二番目に問題と
なつておりますのは電産の
停電ストであります。若し
都下におきまして非常に長い
間期に亘
つて全面的な
電源ストが行なわれるとしたならば、先ず第一に
交通機関が止ることになりまして、これは
治安維持上非常に影響がありまして、若しそのような具合に発展したならば、我々としては何とか考えなくてはならないと深く憂慮してお
つたのでありますが、幸い九月二十二日と九月二十五日に御
承知の通り極めて小規模の
停電ストがあ
つただけで、その後は現在のところ格別の動きを示しておりません。私共としましては
中央労働委員会のとき調停が一日も早く行われまして、早期の解決ができますことを望んでおる次第であります。
次に順序が少し前後しますが、
國鉄全逓両
支部の一部の者がいわゆる
傾斜鬪爭と申しますか、
さみだれ戰術と
言つておりまして、二人々々が各自
要求を持
つて來まして
所属長に対して
鬪爭する、一人一
要求の
鬪爭が現在行われておるのでありますが、これは詳しく申しますと、
國鉄では
新橋の
管理部長に対して、
全逓につきましては
東京逓信局長に対して
地域的な個人的な
要求を掲げまして、大きな場合は四、五十人の者が、小さいものは四、五人ぐらいの者が個々にや
つて來まして、廊下その他のところに坐り込んで
要求をするのでありますが、
逓信局の方は今月の二日にはつきりと
要求を断わりましたので、その後はや
つておりません。ただ
新橋の
管理部におきましては、今でも執拗にそのような形の
要求を
行なつておりますが、全体的に見ますと、いずれも
職場内のものでありますし、規模も小さいので、今直ぐ
警視廳として何とかしなければならないというような
程度のものはございません。
次に米寄こせ
運動についてお話し申上げますと、いわゆる
救護米寄こせでありまして、
救護米の
制度は全國的にはないのでありますが、特に
東京都においてこれは全面的に各
地域に取上げられておる
闘爭でありますが、これが取上げられたのは今年の七月末頃からであります。そうしてそれが最高潮に達したのは八月末から九月の初めにかけてでありまして、
警視廳として取上げた
事件が
一つあるのであります。その
一つは品川、
荏原地區で数千名の者が無届りの
集会を
行なつたわけであります。無
届けの
集会と申しますのは、先程初めに申上げましたように、四十八時間前の
届出でをしないところの一部の
指導者による
集会でありますが、この場合に
大田區區役所の
荏原支所の
関係係官に対して彈圧的に
救護米の
配給を
要求いたしまして、その場合は無
届け集会によるこの
集会を解散しないということで、進駐軍の
指令を破るものとして
責任者が一名逮捕されまして、これは
軍事裁判の方に現在かかることに
なつております。もう
一つの
事件といたしましては、九月十日に
澁谷の
區役所に対して約六十名ぐらいの者が押しかけて、やはり
救護米の強要したのでありますが、これは
前々日の九月八日の日にあの
地區の者は
配給を受けておるのでありまして、米がないという
理由は成り立たないのでありまして、全く計画的なこれは米寄こせの
闘爭であ
つたのであります。この場合は
區役所の助役、或いは
会計課長とい
つた幹部に対して数名の者が來て強圧的に手足を捉えたり、その他暴力に訴えて
要求をしたのでありまして、
所轄の
支部や
警察署から参りまして
業務執行妨害で五名の者を檢挙いたしました。更にそれの
釈放方を
要求して
警察署に数十名の者が押しかけたのであります御
承知のように赤旗を立てて参
つたのでありますが、これもそれぞれ解散を命じたのでありますが、それに應ぜず遂にやはり
公務執行妨害で五名の者が檢挙されたのであります。
合計十一名の者が檢挙されたのでありますが、この場合警察官も二名怪我をしております。これは
國内法で全部や
つておりまして、十一名の中三名の者が起訴されました。
あとの者は
起訴猶予ということにな
つたのであります。併し現在米寄こせ
運動は
澁谷の
事件以來漸次平静に復しているような情況であります。
次に反
税闘爭について申上げますが、これは今年の春頃一時盛んに活溌に惡税
反対の
闘爭が行われまして、特に
中小工業者が、これに意識的に、或いは知らず知らず参加して相呼應して、あちらこちらで
集会をやるということがあ
つたのでありますが、夏頃になりまして比較的平静にな
つたのであります。ところが最近これは
東京財務局と
警視廳と打合せもあ
つたのでありますが、この九月、十月には昨年度の滯納者が
滯納処分を強行するという
方針が示されまして、それが現在強行されておりますが、その結果又春のような
惡税闘爭というものが
各地に起きるのではないかと愼重に我々はその動向を見ております。
次に
治安維持上やはり考慮しなければならない問題としまして、第三
國関係の問題がございます。御
承知のように
朝鮮は南北に分れまして八月十五日に
南朝が独立して、アメリカがこれを承認する。それに次いで
北鮮もソ連の擁護によ
つて独立したのでありますが、その微妙な
空氣が
そつくりそのまま國内の
朝鮮人の各
團体に現われておりまして、御
承知のように
北鮮を代表するものとして
朝鮮人連盟、
朝鮮民主青年同盟それから
南朝を代表するものとして
居留民國及び
建國促進青年同盟の二つの陣営に分れておりますが、この対立がしばしばやはり手を付ふなければならない
不法行爲を生み出しておるのであります。すでに
建國促進青年同盟が、八月十五日
以來勢いを盛り返しまして、
都下の
各地區で
支部の未
結成の所を
結成するように
なつておりましたところ、それに対して
連盟側が
実力でこれを妨害するという挙に出でたのであります。それで例えば
台東地區において、或いは中野の
地區において
結成式を妨害するところの
トラブルが二三あ
つたのでありますが、それが漸次激化して行くような向きが現在見られるのであります。特に最近
連側がすでに各
支部において二、三ヶ所
北鮮の
人民共和國政府の樹立を祝賀するところの
集会を開いておるのでありますが、
都下全体の大きなやつをこの十七日に催す予定に
なつております。これに対して
反対側であるところの
居留民國と
建青は若し
GHQ憲兵司令部、或いは
警視廳においてこの
集会を許可するならば、たとえ許可しても
実力を以て
自分たちは絶対に
反対をするということを、すでに
幹部中にも
言つておる者があるのでありまして、同日或いはそういうようなことの
トラブルが起きるのではないかということを心配しております。結局最近におきまして
都下の
集会とか、
デモとか、或いはその他のいろいろの
事件を通して見ましたところの
治安の
状況というものは、概括的に平穏な
状態にあるということが言い得るのでおりますけれども、ただ最近この政情が不安な
状況にありますので、或いは
公務員法の
改正がいよいよはつきりして來ますと、それに対するところの
反対闘爭というものが活溌に行われるというようなことで、現在の平静さを以て、將來はその侭で大丈夫であるというような工合にはいかないのでありまして、我々としましては、先程申上げましたような、例えば
労働運動に伴うところのいろいろな
活動或いはその他の
市民闘爭、或いは一般の
中小工業者と結び付けられたところの
闘爭そうい
つたものに対して、今後十分に注意して行くよう
なつもりでおります。非常に
簡單でありますが概活的に申上げた次第であります。