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1948-06-23 第2回国会 参議院 治安及び地方制度・司法連合委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月二十三日(水曜日)    午後一時三十八分開会   —————————————   本日の会議に附した事件警察官等職務執行法案内閣送付)   —————————————
  2. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) これなり治安及び地方制度並びに司法連合委員会開会いたします。前回に引続きまして、警察官等職務執行法案を議題に供します。本法案につきまして先般來質問をして頂いて参つたのでありますが、尚御質問のある方はお述べを願いたいと存じます。尚この連合委員会は大体本日で打切られることになるかと思つておりますので、司法委員方々等におきまして本法案について御意見等もありましたならばこの際お述べを願いたいと存じます。
  3. 星野芳樹

    星野芳樹君 その前に、合同委員会は今日で終りだというのですが、もつと討議する必要があると思うし、今日は司法委員長伊藤修氏も欠席であるので、極力もう一回ぐらい開く必要があると思いますが如何ですか。
  4. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 司法委員長とよく談合いたしまして、でき得る限り皆さんの御意思に副うように運びたいと思つております。それについて御希望等ありましたら…
  5. 星野芳樹

    星野芳樹君 この前、刑事訴訟法を改正する法律案司法委員会に付託されたときは、法案重要性に鑑みて、公聽会を開いておるのでありますが、この警察官等職務執行法案というのは、小さいけれども、やはり重要性が相当あるので、世間にも輿論いろいろとあるので、治安委員長公聽会を開く意思はおありですか。
  6. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 只今までの本法案審議の過程におきましては、治安及び地方制度委員会委員方々の間からは、そういう御意見の御開陳はなかつたのであります。私としては特別に考えておりませんが、委員方々、多数の御意思であるならば又考えるべきであると考えております。ただ御承知のように、会期が非常に切迫いたしておりまするし、司法委員会も又我々の委員会も多数の法案を抱えて審議の始末に、非常に多忙を極めておりますので、時間の関係上 公聽会開会ということは相当困難じやないかと思つているわけであります。尚公聽会開会につきましては、相当新聞廣告等関係もありますから、今日からそれを発意いたしまして、今月中にそれを開くことは実際上不可能じやないかと考えております。
  7. 星野芳樹

    星野芳樹君 その事情が説明されましたが、治安委員会にこの法案が付記されたのは何日ですか。
  8. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 今その期日は、はつきり記憶いたしておりませんが、そう遠いことではなかつたのであります。それ以來、今申しましたように公聽会開会等につきましては、委員方々からも御意見の御開陳もありませんでしたし、私といたしましてはさつき申しましたように公聽会開会は今まで考えたことはございません。
  9. 星野芳樹

    星野芳樹君 今のお答えを聞きますと、付託された日が遅過ぎて日にちが足らなくて公聽会が開けないとすると、かかる重要な問題を、余り深く審議する暇を與えずに通そうとする政府の何というか、官僚的意図が正しくないものである。若し日にちがあつたとしたらば、労働組合等で相当問題になる性質のものであるに拘わらず、それを感知しなかつたという治安委員会及び委員長の無感覚に対して甚だ不満を表して置きます。
  10. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) お答えいたします。無感覚云々という、あなたの御意見には何とも御答弁申上げる限りではないのでありますが、重要性という点から言いますと、我々の委員会には尚委員の多数の方々が重要と思われておりますところの法案が、他に幾多ございますので、若し委員方々全部の意思として、更に時日を長く持つて、より愼重な審議を要するものであるというようにお考えになりますならば、審議未了或いはその他の方法が、いろいろ考えられるだろうと思うのです。ただ私がお答えいたしましたのは、只今まではどなたからも公聽会開会意思の御発表はなかつたのであります。それであなたから、今日初めて御発表になつたのでありますが、只今から発意いたしますものとしては、会期が今月中であるとすれば、それだけの時日がないということを、申上げて置くわけなんでありますから、どうぞさよう御承知願います。
  11. 岡元義人

    岡元義人君 この法案審議されますにつきまして、委員長にお願いがあるのです。つい先日浅草に起きました丁度夜明け方のいわゆる不審訊問に際して、警官が遊底を引いて訊問を始めたときに、暴発と言いますか、腹部を貫通して重傷を負つたまでは知つておるのでありますが、その後どういうふうに、あの経過なつたか知りませんが、あれはこの法案審議に対して、重要な資料を提供するものであると私考えるのであります。この点できますならば、政府当局からその後の経過、そのときの状況をば詳しく委員に話して頂けば、非常に参考になりはしないかと思いますので、委員長に取上げて頂きたいと思います。
  12. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) その点は、私の方に何ら連絡がございませんので、警視廳の方に連絡いたしまして、詳細を承知いたしましてお答えいたしたいと思います。
  13. 岡元義人

    岡元義人君 附言いたして置きますが、あの事件が起きましてから警察の者に訊問されるということが、非常に戰々兢々とした気持を抱かしておるということを聞いておるのであります。今度は武器使用という問題もありますので、この法案ではどの程度武器使用するかということ、例えば武器使用すると言いましても、その使用程度が、遊底を引いてすでに発射する用意をするのか、拳銃を携帯して十分な用法で、これに当るというところが、非常に曖昧だと思うのです。ああいう事件が起きました際でありますから、是非一つ詳細に警視廳の方からもよく調べて頂きまして、参考資料にさして頂くようにお願いしたいと思います。
  14. 中村正雄

    中村正雄君 私は最初から聞いておりませんので、重複するか知れませんが、一應御質問いたします。一般的な問題ですが警察官等職務執行法が出されているわけですが、これが現在におきまして警察官職務執行する場合、どういう法規によつてやられているのかこの点についてお尋ねしたい。
  15. 柏村信雄

    政府委員柏村信雄君) 行政執行法に代るべき法律といたしまして、只今ここに御審議を願つております警察官等職務執行法案を提出いたしておるのでありまするが、行政代執行法が五月十五日に公布になりまして、一ヶ月後にこれが効力を有するようになりました。その行政代執行法の附則におきまして、行政執行法が廃止されることになつておりますので、五月十六日からは行政執行法規定する警察官職務権限というものは、一應法律規定がないということになるわけであります。併しながら警察法におきまして警察官職務というものは定められておりますので、一般人を強制するというような権限は、勿論行使いたしませんが、併しながら事案常識的に考え警察官がその職務を行うのに適当であるという程度事実行爲は行なつているわけであります。
  16. 中村正雄

    中村正雄君 私のお尋ねしている要点もこの法案の中に載つている強制力を用いるべき事案をさしているわけなんですが、これが通らない場合は、いわゆる強制力使用することは、警察官ができ得ない状態にあるわけだろうと思うのです。從つて現在、強制力を使うという場合は、全然法規根拠がないわけで、その行使はやつておらないのかどうかという点をお尋ねしているわけなんです。
  17. 柏村信雄

    政府委員柏村信雄君) この警察官等職務執行法規定いたしまするのは、警察官一般的な職務的職権規定いたしているのでありまして、その他刑事訴訟法等規定によりまして警察官に與えられた強制力というのは、当然それらの法律によつて効力を有するわけでありまして、この警察官等職務執行法による権限行使はしないが、その他の法律規定に基きまする権限行使はこれは当然行われることになつております。
  18. 中村正雄

    中村正雄君 そうしますと、警察官等職務執行法というものがなければ、どういう不便があるかという点についてお尋ねしたい。
  19. 柏村信雄

    政府委員柏村信雄君) 只今申しましたように、それぞれ特別の法令に基きまして権限は與えられている部分があるのでありますが、併しながら警察法におきましては、警察職務というものについて、警察の任務ということについて、規定をいたしておりまするが、一般的な質問をする権限とか、或いは保護をしなければならないという規定であるとか、そういうものがないわけであります。この警察官等職務を行法におきましては、警察官職権規定するということも勿論でありまするが、警察官がそれによつてその職責を遂行するに必要な規範となるべき事項、むしろ警察官としてはこうすべきであるというような面に亘つてまでも規定をいたしまして例えば第三條におきまする保護のごときに至りましては、警察の当然職務とは考えられるのでありますが、併しながら、これについて保護をしなければならない、こういう場合に当つて保護をしなければならないということを規定いたしまして、警察官職責をはつきりする、而もその保護について從來、ややもすると職権濫用の嫌いのありました保護が長引くことによつて人権を蹂躙するような恐れがあるというようなことにつきましては、今回の規定においてその保護の時間等を制限いたしまして、むしろ早く警察以外の方面に引渡すというようなことを規定いたしているわけであります。それから第四條の避難等の措置につきましても、当然緊急止むを得ざる場合において、警察官他人の損害にならないような問題については、これは当然行うでありましようが、併しながら一般人に対して制止或いは必要な警告を発するということを明示いたしまして、警察官がそういう権限を持つておるということを自覚し、一般人に対してもそういうものについて合理的にこれに從うことになるということを考えたわけであります。五條、六條におきましては、この規定がない場合において相当不都合の起る場合も予想されますので、警察官が急を要するごとき場合におきましては、必要な行爲制止を行うということであるとか、他人の土地、建物に立入権限があるというようなことを規定いたしたわけであります。
  20. 中村正雄

    中村正雄君 只今の御説明によりますと、本法ができておらない現在において、三條、四條、五條、六條という事案に対して何ら警察官職務執行する根拠がないのだという結論のように解釈してもいいわけですか。
  21. 柏村信雄

    政府委員柏村信雄君) この三條につきましては、法律規定に基いて保護する義務があるというふうに直接の規定はないわけであります。警察官として公安維持、人民の身体財産安全保護という点から、こういう保護はやはり警察出目の立場として行うべきものであろうと考えております。
  22. 中村正雄

    中村正雄君 本法案の内容を見ますと、一面は警察官に対する義務規定すると同時に、他面には一般國民に対する強制力行使規定しておる。而も後者の方が非常に多いように思われるのでありまして警察官として治安維持に当るということは、これは警察官の使命から言つて、当然であります。私の尋ねておる点は、本法ができなければ、今本法規定しておる事態に対しては何らの職務を行うべき法的根拠がないのかどうかということを尋ねておるのであります。
  23. 柏村信雄

    政府委員柏村信雄君) この職務執行法において規定しませんでも、警察官職務を行うのに支障のない規定もございますし、この規定があることによつてその権限行使できる規定もあるわけであります。第六條第二項のごときにおきましては、こういう規定がなければ立ち入るということは果してできるかどうかということは非常に問題となるであろうと考えます。
  24. 中村正雄

    中村正雄君 実状についてお尋ねします。こういう法律がない現在におきまして、警察官職務はどういうふうに執行されておるか、言い換えれば本法規定されていない事案があつた場合、警察官はどういう処置を取つておるか、実際の問題につきまして御説明願いたいと思います。
  25. 柏村信雄

    政府委員柏村信雄君) 先程も申しましたように刑事訴訟法その他の法規に基く行爲は別といたしまして、その他の法律ができた場合における権限行使等につきましては、事実上一般人としての常識からして行動しておるというふうに考えざるを得ないと思います。
  26. 中村正雄

    中村正雄君 それで警察官職務執行支障があるとお考えになつておるかどうかという点をちよつとお尋ねいたします。
  27. 柏村信雄

    政府委員柏村信雄君) やはり警察官というものが職権行使する非常に重要な職責を持つております関係からいたしまして、通常考えらるべき規範となるべき規定というものは、これは明定いたして置きまして、警察官の拠るべき基というものをはつきりさして置くことが適当であると考えます。
  28. 中村正雄

    中村正雄君 本法案第一條の第二項に、この法律濫用という点を戒めてある條文があるのでありまするが、二條以下を見ますと、殆んどの場合、警察官主観に委されておる、こういう事態があるかないかということの判定が、警察官主観に委されておる、而もこの法律に代るべき前の行政執行法その他が、いわゆる惡法であつたと言われる点は、濫用された点にあつたわけでありますが一般的な濫用と、もう一つは、判断警察官自体に委しておつたという点にあると思うのであります。從つて本法を運用するにつきまして、警察官判断につきまして、いわゆる間違いのない判断をさすという点につきましてどういうことをお考えになつておるか、警察官の教育その他についてでありますが、この点につきまして、政府の所見を伺いたいと思います。
  29. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 本法を施行いたしまするにつきまして、警察官が十分なる常識を備え、それによつて適正な判断を下すということの必要なことは申すまでもないのであります。新らしい警察制度の施行後は尚更のことでありまするが、終戰後警察官教養ということが、民主々義的な警察官を作り上げる上の最も大切な要件であると考えまして、我々初め関係方面その他におきましても、警察官教養第一ということを主眼にいたしておるのであります。今日までまだ時日が浅いのでありまして、十分の成果を挙げたとは申し難いと存じますけれども、相当警察官教養程度も高まつておると考えるのであります。今後ますますこれを高めて参りたいと存ずるのであります。尚今一面におきましては、警察運営は市町村及び府縣公安委員会が責任を以て運営に当つておられるのでありまするが、この民主主義的な組織におきまして、警察官を日常の行動において指導し監督し、惡いところは又個々の場合に應じてこれを矯正して行くという手段があるのでありまして、我々はこの公安委員会の今後の活動、又この公安委員会成果というものに非常な期待を持つておるような次第であります。
  30. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 前の連合委員会におきまして、第六條に規定しておりまするところと憲法との関係につきまして、鬼丸委員より法務廳法制長官に対する質問がありましたので、この際法務廳法制長官の、これについての答弁を願いたいと思います。質問者鬼丸委員は本日見えておりませんが、質問の要旨につきましてはかねて御承知のことと思います。
  31. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) この立入の問題は、第一回國会以來いろいろな取締法規條文が出ております関係上、各種の委員会におきまして御心配を頂いて來た問題であります。今回お尋ね憲法との関係も、恐らく憲法三十五條との関係においての御疑問が重点をなすのではないかというふうに推測いたされますので、その方から申上げて見たいと思います。新憲法が制定されまする当時から、まあこれは歴代政府ということになりますが、歴代政府におきまして、この三十五條に対して考えておりまするところは、憲法第三章の中で、第三十三條から後の部分は、文字にも窺われますように刑事訴追の手続の関係のことを規定したものというふうに考えて参つておるのでありまして、憲法制定の際における当時の帝國議会における委員会答弁においても、三十五條についてお尋ねがありまして、國務大臣から、これは刑事訴追関係であるというお答えもしておる経緯があるのであります。序ででありますが、例えば三十五條逮捕條項がございますが「現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。」ということがございます。逮捕についても丁度立入と同じような問題が想像されます。例えば精神病者監護法によつて監置されておる精神病者が、逃げ出した場合に、それを連れ戻すというような問題は多々あるのでありますが、さような場合には、この三十三條は適用になり得ないわけであります。何となれば、「犯罪を明示する令状」というような言葉を使つておりますから、事柄自身は、当てはまらないというようなことも、一つの御説明の手がかりになると思うのであります。要するに三十五條そのものは、一般行政目的のための立入というものには直接には関係がないという考えで、今日まで参つております。併しながらこの一定の場所立入るということは、國民の自由或いは権利に対して大きな影響を及ぼすことでありますことは当然であり、又この憲法第三章自身國民の自由、権利というものを保障しておりますることも、申すまでもないことであります。從いまして三十五條適用がないからといつて一般行政目的立入等を自由にやり得るというような、考えを持つておるわけでは毛頭ございません。で、各般の行政上の目的のためにどうしても必要な立入を要するという場合は、先程申しましたように、いろいろな法律案條文の形で出ておるのでありますが、三十五條精神、少くとも憲法第三章の精神を酌みまして、例えばその立入の場合において、緊急の場合に限るとか、或いは又平時におきましても、立入場所営業所というようなものに限定いたしますとか、或いは又、立入の際には必ずその身分を示す証票を持たして身分を明らかにして立入をするとかというような、その目的を差し得る最少限度のいろいろな條件をつけまして、條文を設けて参つておるわけであります。而して、これらの多数の取締法規は、第一回國会以來國会の手によつて成立さして頂いておるわけであります。今回の第六條におきましても、さような考え方でおるわけであります。即ち第六條の第一項におましては、いろいろ諄いくらい條件を付けておるわけであります。前二條規定する危險事態が発生しておちなければいかん、それから生命、身体財産に対して危害が切迫しておらなければならん、或いはその危害予防被害者の救助のためという目的の限定もしておるわけであります。それから止むを得ないと認めるとき、合理的に必要と判断される限度においてというようなことで、少し諄過ぎるくらいに限定しておるわけであります。又第二項におきましても、先程も触れました趣旨から、多数の客の來集する場所、対象の場所を限定しております。その時期も公開時間中というように限定いたしております。又目的としても危害予防のためというような形にしておりまして、今申しました趣旨から、憲法第三章の精神に副うことにあらゆる角度から努力をして、かような形になつておるわけであります。一應お答えを申上げると以上のようなことに相成るのであります。
  32. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 他に御質疑ございませんか。
  33. 星野芳樹

    星野芳樹君 第七條のは恐ろしくひどい法案だと思うのですが、その中で一号に、「死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁こにあたる罪を現に犯し、若しくは既に犯したと疑うに足りる充分な理由のある」、この十分な理由があるというのは、先程中村委員が指摘されたごとく、單なる警察官判断で、これをどういうふうに審査する法規があるかどうか、疑うに十分であつたということが適当であつたかどうか、審査する法案があつたかどうか、それからこれに対して警察官職務執行に対して抵抗し、若しくは逃亡しようというようなときには武器が使えるというわけであります。そうしますと、犯人と目される人が身に寸鉄を帶びていないでただ逃げる、而も警察官判断して三年以上の刑に当りそうだと、そうすれば殺しでもいいということになりますが、この結果非常な人権保護のために危險が生ずるということを政府委員はお考えにならないでしようか。
  34. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 只今お尋ねは一應御尤ものようでございますが、本法で申します武器使用と申しまするのは、先程ちよつとお尋ねがございましたが、これは例えばピストルなら現実にこれを射つことであります。從いまして普通でありまするならばこれは、刑法上の何らかの犯罪になるのであります。ところが警察官がこういう目的のために、而もこういう場合にこういう條件が揃つてつたというときには、それが犯罪にならないということなのであります。從いまして、疑うに足りる十分な理由があるということは、警察官主観的なあれではなくて、裁判所において、そういつたような外界の状況があるとぎに、警察官はこれは犯罪を犯したものである。或いは犯そうとしているということを考えるのは当然であるということを裁判所判断をするべきで、又同じように他に手段があつたかなかつたか、拳銃を射たなくても逮捕ができた場合に無闇に射つていろいろ傷害をせしめるという場合には、これは過剰行爲でございます。その点におきましては、やはり刑法の処罰を警察官が受けるのであります。從いましてその判断はすべて裁判所判断によるのであります。
  35. 星野芳樹

    星野芳樹君 今私の質問の半分にお答えになつて、結局理由が適当であつたかどうかの判断に対しては、裁判所が判決を下すということになつて、若し警察官武器を使う、それが十分な理由がなかつた裁判所で認めれば、警察官刑法によつて処罰される。この点は御答えになつたわけですが、後の質問は、この長期三年以上の懲役に処せられる罪を犯したらしいという者が、身に寸鉄を帶びないで、ただこれをこの條文では逃げたというだけでも今政府委員が言われたように武器使用というのはピストルを射つことだ、射つというからには射つてつても、これはこの條項に照らせば何の罪にもならない。だから殺してしまつても罪にならない。身に寸鉄も帶びない者が逃げる、それを射殺してもいい、こういう解釈になつて差支ないのですか。
  36. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) その場合に、この第一号の終りの方に書いてありまするように、これを逮捕するために他に手段がないということを警察官において信ずるに足る相当な理由があるということでなければならんのでありまして、武器使用しなくても逮捕ができるというような場合には、武器使用できないので、尚第七條の前提には、やはり相当な理由ある場合においては事態に應じ合理的に必要と判断される限度でありますから、その限度を超えた場合にはやはり合法的な武器使用にはならないのであります。
  37. 星野芳樹

    星野芳樹君 今のお答えで以て、他に手段がない、こういう規定があるということになりますか、他に手段があるかないかというのは結局裁判所判定することになる。裁判所判定は公正なものと我々も考えますが、裁判所判定が公正だからといつて法律が全然必要ないのではない。やはりその規範として法律が必要である。他に手段がないだけで委せて置いては非常に危險だと思うのであります。例えば、犯人武器を持つて抵抗した場合とか武器を持つて逃走した、こういう規定があれば、まだ武器使用というのが理由が附きますが、この條文では、本当に身に寸鉄帶びていない者が、これを射ち殺すことができるということになりますか、如何でしようか。身に寸鉄帶びてない者は、武器を使わなくてもいいというはつきりした他に手段がないということにでも認められておれば別ですが、これでは身に寸鉄帶びてなくても、掴まえる他に手段がないということも、判定できるわけですが、これで十分だとお思いでしようか。
  38. 柏村信雄

    政府委員柏村信雄君) 只今質問でありますが、身に寸鉄も帶びてなくて抵抗して來る、そうした場合に客観的に見て、これに対して武器使用しなくても逮捕できるということが常識的には一般にそう考えていいであろうと思うのであります。だから從つて普通の場合におきましては、そういうような場合には武器を使わないということが当然の結論となるであろうと思います。
  39. 星野芳樹

    星野芳樹君 それでは、それをはつきりと規定に謳つたらどうですか、武器を持つて抵抗したものとして、その場合は武器使用がいい。こういうことになつておれば結構ですが、今では常識でそういう判断になる。併し常識というのも、その時々の社会情勢によつていろいろと変改ることもあります、非常に危險が含まれておると思いますが。
  40. 柏村信雄

    政府委員柏村信雄君) ただ武器を持つておらん時にはいいというようなお話でありますが、相手が大勢であつて、こちらが一人であるというような場合には、必ず武器を持つていないから向うを屈服させ得るということにもならないと思うのであります。やはりその時の事情によつて非常に違うのじやないかと考えるので、特に第七條の本文におきまして、「抵抗の抑止のため必要であると認める相当な理由のある場合においては、その事態に應じ合理的に必要と判断される限度において武器使用することができる」だから殺すということは勿論極端な場合でありましようし、傷けるというような場合も極端な場合である。ただ威嚇発射というようなことについてもこうした注意をしろということでありまして、但書において、本当に危害を與えなければその職務執行ができないという場合を規定いたしたわけでありますので、これは裁判所判断によつて考えられる條件を、個々の警察官についても日頃の教養において、そういうことを、今具体的に法律で細かい所までそうしたことを、兇器を持つておるか持つておらんかというようなことだけについてまで規定するということは実情に合わない場合が出て來やせんか、こう考えます。
  41. 星野芳樹

    星野芳樹君 只今政府委員が、武器を使う、殺すとか傷けるというのは極端な場合である。併しこの法文によれば武器使用というからには傷けてもこの法文によつた場合には、何ら処罰にならないということが明瞭であります。ですから、それが極端だから、これは心配ないという論旨は、何ら理由がないわけであります。それから、そう細々法律規定しないでもと言いますが、武器を持つて抵抗するかしないか、これは重大なる差だと思うのであります。而も基本人権が守られるか守られないかのきわどい境であります。而もそれをそう細々する必要はないという名の下に、暗黙の中に折角新憲法によつて保障された基本人権の確立をこれでは非常に破るものと考えられますが、如何でしようか。
  42. 柏村信雄

    政府委員柏村信雄君) 何度申上げても同じかと思うのでありますが、私は細々したことまで規定する必要がないと、こう申上げたのではなくて、実情が非常にその時その時によつて違いはしないか。具体的な場合に当つてそれを判断されるべきものであつて武器を持つて抵抗したからと言つても、武器使用せずにやる手段もありましようし、武器を持つておらない場合でも武器使用せねばならんような場合もあるだろうと思う。從つて只今お話のような規定をここに挿入することはどうかと思います。
  43. 星野芳樹

    星野芳樹君 今の政府委員の先のお答え武器を持つてても使用しないでもいいことがある。これは結構な場合であります。私共警察官がこういうふうに出て行くことを望みますが、武器を持つてないでも警察官の方でピストルを射つ必要がある場合、こういう場合はどういう場合ですか、具体的に例を引いて説明して頂きたい。
  44. 柏村信雄

    政府委員柏村信雄君) 例えば多数の者によつて抵抗されるというような場合におきましては、やはり武器使用する必要が起る場合があると思います。
  45. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 只今憲法に保障されております。基本的人権という見地から武器使用を余りに濫りに認める虞れはないかという御趣旨であると思いますが、先程第六條につきまして法制長官から説明がありましたように、第七條におきましてもできる限りの縛る條件を付けておるのでありまして、それは御承知の通りだと思うのであります。而もこの対象になりまするものは憲法に保障されておりまする基本的人権を侵した者、或いは侵そうとする者に対する措置であるのであります。死刑、無期若しくは長期三年以上の懲役禁錮等に当る犯罪を犯した、或いは犯そうとするというような者なのであるのであります。從つてここに基本的人権の尊重というものとは私は競合しておると思うのであります。こういう者をそのまま放置して置くということは基本的人権を保護しないものである。從つて一般の基本的人権を保護するために止むなく或程度手段を講じて、こういう者を逮捕しなければならんという両方の見地から行くのであります。かような場合に、その基本的人権を侵した、又は侵そうとする者が、これを保護しようとする者に対して抵抗するとか、或いは争闘するというような場合におきましては、誰が考えても、と申しますのはあれでございますが、ここにありますように、裁判所が相当の理由のある場合、而も法理的に必要と判断される限度である、而も、それは武器使用することについて、他に手段がないとそう認められる場合ということでありますれば、この程度でその人権の保障の競合の点を解決するしか途がないではなかろうかと私は感ずるのであります。
  46. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 尚この際法務廳の佐藤法制長官は、他に公務があつて行かれるそうでありますから、憲法本法との関係その他のことにつきまして、特に法制長官に御質問のある方は先にお述べを願いたいと思いますが、ございませんか。
  47. 星野芳樹

    星野芳樹君 質問がないようでありますから続けます。今の政府委員答弁では、大体犯人が基本人権を破つた人間であるから、それを捕えるというのは基本的人権の擁護だというような思想根抵があるようであります。併し基本人権の擁護というのは、そういう者には、匁には匁という思想とは根抵的に違うものであると思います。その思想では、昔は人を殺した者は殺されるというような、古代的な思想じやないかと思うのです。それですから、そういうことに囚われず、基本人権を護り、法律執行する上には、敢えて犯人が基本的人権を破つた者と限定されず、飽くまで基本人権を護るという態度に出なければならんと思います。只今答弁は全く意味をなさないないものと考える者であります。
  48. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 只今私が申上げましたことにつきまして御了解を頂けないことは、誠に私は残念に思います。ただ私は決して基本的人権を停止するという意味で申上げておるのではないのであります。基本的人権を保障するために、而もその場合におきましても他の基本的人権は成るべく尊重しなければならん。從つてここであらゆる限りの手段を盡して、その保障を與えておるというのであります。
  49. 星野芳樹

    星野芳樹君 どうも幾度もしますがもう一度だけしますが、先程の政府委員お答えに、武器を使わないでも、群衆として、大勢で抵抗する場合がある、その場合に生命に危害を及ぼさない何らかの手段考えられないでしようか。これでは、ピストル武器ですから、使えば生命に危險を及ぼす、虞があるのですな。そういう武器を使わんでも、大勢の抵抗というか何らかこれ鎭める方法は、現在のいろいろの技術の進歩した現在考え得る筈です。それを考えないで、直ちに人の生命をも害し得る武器を使う。武器を使うということは我々平和國家を宣言しておるのですから、もうこれは極限にまで縮めて行かなければならん。むしろ徹底的に否定しなければならないという憲法の建前、があるのです。それを集團的に抵抗するという場合、これは籍口にならないと思います。その外何らかの、もつと生命に危險を及ぼさないで一應その抵抗を排除するという方法も考え得る、而もそれを考えず、直ちに武器使用すると、これは誠に平和憲法に反すると考えますが、如何ですか。
  50. 柏村信雄

    政府委員柏村信雄君) 只今他に方法を考えずに、武器を使うというふう、なお話がありましたが、そういうことは、毛頭考えておらないのでありまして、他に手段がない場合にのみ使う、それから只今のお話にも、集團的というお話がありましたが、別に集團的というわけでなくて、警察官武器を使わない場合の実力以上の実力を持つごとき力を以て來られる場合、若しこれが度を過ぎて警察官が圧倒されて、警察官の身に危害が及ぶという場合におきましては、これは正当防衛になりますが、そうじやなくて、どうしても逮捕しなければならない場合におきまして、而も力の及ばないという場合には止むを得ず武器使用する場合も、事情によつては起り得るということを申上げておるわけです。例えば先般栃木縣下におきまして、警察官が闇屋に襲われまして、河に投げ込まれて殉職したというような例もあるのであります。このときに武器を使うことが適当であつたかどうかということは、又問題になるかも知れませんが、そういうふうな事例もありますので、警察官が相手が凶器を持つていない限り武器を使えないというふりに制約されることは、これは場合によつて、非常に不都合な事態を生じやしないか、こう考えるわけであります、決して何を措いても武器を使う、武器を使うことを奬励するという趣旨ではないのであります。その点は御了承願いたいと思います。
  51. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 星野君に申上げますが、決してあなたの発言を封ずるわけではありませんが、この前の連合委員会に御出席になつておりましたか。
  52. 星野芳樹

    星野芳樹君 なつていないのです。
  53. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 今の問題については、他の委員から随分いろいろ御質疑があつて重複する個所が相当あると思うのですが、大体このくらいでお打ち切りを一つ願いまして、あなたがこの法案について何かこのように修正したいという、御意見がありましたら、司法委員長を通じて、我々の委員会に反映するように、一つ御取運び願つたら如何かと思うのですが、如何でしよう。
  54. 星野芳樹

    星野芳樹君 大体他の委員質問があればそれで……
  55. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 大分質問の御希望があるようでございますから。
  56. 星野芳樹

    星野芳樹君 他の委員質問が終つたら又……
  57. 中村正雄

    中村正雄君 只今星野君の質問にありました第十條関係ですが、十條の本文によりますと、いわゆる武器使用ということを、こういう條件を附して認められておる。人に危害を加えてはならない、こうなつておりますが、但書におきまして、緊急避難の場合と正当防衛の場合、及び、一号、二号の場合には人に危害を加えていいとなつております。ただこの場合考えられます点は、正当防衛及び緊急避難は刑法上止むを得ない行爲、いわゆる法認行爲とされておるわけでありまするが、この一号、二号は、この場合におきましては、積極的に危害を加えてもいいのだというふうに解釈されるわけです。併し緊急避難、正当防衛は刑法上止むを得ない行爲、法認行爲である、然るに一号、二号の方は積極的に危害を加えてもいい、こういうふうに規定されておること自体が、これが人権の保護につきまして、果して妥当なる條文であるかどうかという点につきまして、政府の所見を伺いたい、かように考えます。
  58. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 先程から中村委員の御質問にもお答えいたしております通り、積極的と申しまして無用に危害を加えるわけではないのでありまして、人権を擁護するために、止むなく、他に手段がないという場合においてのみなされる、こういうわけであります。
  59. 中村正雄

    中村正雄君 そういたしますと、この一号、二号の場合も、いわゆる緊急避難及び正当防衛の場合と同じように止むを得ないという條件があるように解釈していいのですか。お尋ねしたいと思います。
  60. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 他に手段がない場合にということをはつきり明記いたしておるのでありまして、その点は御意見の通りであります。
  61. 中村正雄

    中村正雄君 そういたしますと、一号、二号も形法上の緊急避難、正当防衛と同じように法認行爲だと、こういうふうに解釈していいわけですか。
  62. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 法認行爲と申しますのは、どういう定義か私よく存じませんが、正当防衛や緊急避難は、刑法ですでに法認行爲となつております。本法におきまして、第十條によりまして、一号及び二号がありますために、緊急避難や、正当防衛と同じように、この條件の下においては免責されるこういうわけであります。
  63. 中村正雄

    中村正雄君 そういたしますれば、一号、二号の場合を詳細に檢討いたしますれば、この條文がなくても、いわゆる正当防衛並びに緊急避難、この條文及び、或いは又公務執行妨害という、刑法関係だけで職務執行できるのしやないか、言い換えれば、第七條は本文だけでいいわけで、但書以下はなくても、こういう場合があるならば、当然武器を使つて相手方に危害を加えても罪にならない。これは刑法上から言いまして、緊急避難、正当防衛と同じように罪にならないというふうに考えられますので、何も一号、二号及び但書というものはなぐてもいいのじやないか。こういうふうに思えるわけです。ただ一号、二号の場合と刑法上の正当防衛、緊急避難とは別に、積極的に、こういう場合には武器使用すべしというふうな規定であるとすれば別でありますが、止むを得ないという條件が付いておるのだというふうに解釈すれば、無用な條文ではないかと、私はかように考えますが、如何ですか。
  64. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 常識的に申しますると、一号、二号は、正当防衛或いは緊急避難と殆んど同じだと考えますが、刑法学上の今日の解釈におきまして、又正当防衛及び緊急避難の條文規定そのものから申しますると、一号二号はそのままピツタリ正当防衛又は緊急避難には当らんのでありまして、特にこう書くことによりまして、正当防衛及び緊急避難と同じような結果になるのであります。常識上は殆んど同じであると私は思つております。
  65. 中村正雄

    中村正雄君 実際上緊急避難又は正当防衛と同じであるならば、こういう條文を書かない方が、却つていいんじやないか。と申しますのは、こういう條文があるがために、これは端的に申しますならば、警察官自体が、この條文があれば、この場合は相手に危害を加えてもいいんだ、言い換えれば、ピストルを射つてもいいんだ、又射つべきである、射つべき義務があるのだというふうにまで、考え危險があるのと、又他に手段があつても、やはり人というものは、安易な手段を取りやすい。追つかけて行くよりピストルを射つた方が早く逮捕できるし逃亡を防げるというような、安易な手段を取りやすいために、却つて人権保護にならないという意味で、これはあつてもなくても刑法上の緊急避難、正当防衛とう関係刑法上の罪にならないものと解釈できるし、又警察官職務といたしましては、こういう場合はどこまでも、警察官としてはこれだけの職務執行しなければならんという義務を持つておるわけですから、だからこの一号、二号の場合は武器使用してもいいんだということ以外には、これは意味がない條文ですから、同じであるならば、この條文はない方がいいんじやないか、私はかように考えるわけですが、如何ですか。
  66. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 一号、二号がなくても、正当防衛又は緊急避難に当るのだと私が申したとおつしやいましたが、それは全然間違いでありまして、一号、二号がなければ、正当刑衛及び緊急避難には法律上に当らない、常識上は非常に似ておるが、法律上の刑法の三十六條、三十七條には一号、二号は当らない、それでここに特に明記いたしたい、こういう趣旨であります。
  67. 小川友三

    ○小川友三君 ちよつとお伺いしますが、第七條の問題に関連しまして、警察官よりも、もつと力の強い集團的な人々が、武器は持つていなくても、警察官武器使用する場合もあるという御答弁のようでありましたが、そうしますると、労働組合運動に対しまして、労働組合の十名か或いは二三十名が交渉に行つたときに、警察官がそこへ現われて、警察官が一人現われた場合、労働組合の中央執行委員方々が十名程度であれば、まさに労働組合員の方が、腕力でも十倍の強さを大体持つておるとみなされるわけでありますが、その場合に警察官は、これをピストルで威嚇してよいか、或ひはそのときの状態で重傷を與えてよいか、殺してしまつていいかという、この解釈に対して、明確な答弁を願いたい。  それから警察官には善良ならざる不良警察官が千名ほどあつて、これを退官させたという新聞記事か昨日か、今日出ておりましたが、千人だけか、或いはその外に相当いるのではないかということを思われるのでありますが、そうした不良なる、善良ならざる警察官が、このピストルを持つて、よしというので出動をして、とにかくこの條文によりますると、或いは政府委員の御答弁の通り、向うは三人だ、俺は一人、力及ばないのである。先ずピストルを持つて、或る会社の労働爭議に出動して、中央執行委員長を初め幹部に威嚇射撃又に重傷を加える、或いは生命を取る。いわゆる裁判官以上の、いわゆる判決権のような、殊に命を取る、というような、新憲法に触れるようなことを敢えてやられた場合にどうするか。現在の警察官の素質が非常に優秀な者も沢山おられます、併し優秀ならざる者も御当局の認められる通り相当交つておるのであります。いわゆる反動分子と申しますか、不良の徒輩が警察官の中に採用されておるものが類例がないとは言えないのであります、こうした反動を、正しい労働組合運動の幹部、今後たびたび大きな犠牲を拂われるということは、先ずこの法案、法文のまま、現在の警察官の低級な警察官の現状のままで行かれたならば、血を流す闘爭が無益な闘爭が展開されるのではないか、この点非常に本員は心配するものであります。又労働組合におきましても、本案に対しましては、眞向から反対いたしまして、本案の撤回を要求せられておる動きが盛んのようでありまして、そうした國民の叫びを、國民の代表の立法府の議員として反映いたしまして、政府委員のその間における見解並びに不良警察官が全國にどれくらいまだ退官しないでおるかという見通しも御答弁願いたいのであります。この間から御承知の通り齊藤長官がいらつしやいますが、上野の警察官内において、警察官二名ピストルで殺されておるということを聞いております。或いは二十名の警察官が傷害を受けて大きな犠牲を佛つておる、そうした場合を想像した場合に、勿論善良なる警察官がこれに対して武器を持つて戰う、武器を持つて抑えるということは非常に結構なことでありまして、勿論賛成いたしますが、それは上野公園に巣を食う無頼の徒輩でありまして、何れもが手に負えない代物なのであります。政府がこの建前で労働組合、善良なる労働組合に対してどういう態度をお取りになるのか。この法案をどういう工合に適用するかということを最も御親切に御答弁をお願いいたす次第であります。
  68. 柏村信雄

    政府委員柏村信雄君) 労働爭議行爲につきましてこの條文適用の問題をお尋ねでありますが、警察官等職務執行法は労働爭議の取締ということを目的として考えたものでは毛頭ないのであります。元來労働爭議行鳥というようなものは、労働組合法によりましても正当なものとして、合法的な爭議行爲は認められておるわけでありまして、そうした爭議というものについては、できるだけ労資間で迅速円満に解決されることが望ましいわけであります。又必要のある場合におきましては労働委員会が調停なり、仲裁なりの任に当るというのが原則でありまして、暴力行爲が行われるというような具体的にそこに犯罪が発生するというような事態に立ち至らない限り、警察官がこれに干渉することは適当でない、こういうふうに、考えておるのであります。又干渉すべきものでないのであります。從いまして只今爭議團の代表が数名会社側に談判に行くような場合に、警察官がそこに立会つて拳銃で威嚇するというような事態は到底考えられないのでありまし、暴行なり、騒擾なり、刑事上明らかに違法行爲が行われようとする場合におい、客観的に合理的であると認められる範囲においてのみ警察権というものが発動されるということを、特に御了解を願いたいのであります。又先程の他の委員からの御質問にもありましたが、結局この第七條規定は、前文だけであります場合におけるよりも、もつと厳格にその武器使用して危害を與える場合を規定しておるというふうに私共は考えるのでありまして、合理的に必要と判断される限度において武器使用することができる、ただ單にそれだけであります場合に、合理的と判断される限度というのは、どうかという問題が起つて來るであろうと思うのであります。この一号、二号によりまして、正当というものの範囲が、武器使用された場合に、どこまでが正当と考え得るかということの限界をここに示しておるものでありまして、決してこれによつて武器使用を慫慂する、或いはそれで警察官を元気付けるような趣旨規定では毛頭ないのでありまして、一その点を御了承願いたいと思うのであります。尚、不良警察官の問題につきましては、これは本日新聞紙上等にも出ておりましたが、私共の方に只今正確な資料も参つておりません。從いましてどの程度のものであるかということはここでお答えすることはできないのでありますが、今後におきまして、警察官の採用、教養というような点につきまして十分注意をいたしまして、警察官たるものは苟しくも不良呼ばわりされることのないように、これは中央の者としても、考えなければなりませんし、又地方における各教養機関等においても、そういう点は十分考慮して行きたいと、考えております。
  69. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 私は第七條に関して一つの疑いを持つております。本文におきまして、正当防衛とか、緊急避難とかいうことがありますが、これは一般的に見て警察官判断において左左右されるものでないと思いますが、これは如何ですか。
  70. 柏村信雄

    政府委員柏村信雄君) 但書の條文におきまして、正当防衛、緊急避難に該当する場合というのは注意的、念のための規定でありまして、これは警察官判断によるものでなく、客観的な事態について判断されるわけであると考えております。
  71. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 それでは第一号、第二号におきましては、警察官において信ずるに足るべきというように、警察官判断に委しておるのはどういう意味ですか。客観意味において、何人が見ても相当のものであるということにならないというと、警察官判断に委すということはよくないと思います。すべてこの條文は、どこを見ましても大抵客観的に書いてある。それが突如として第六條に至つてすべて主観的に書いてある。これは非常に危險だと思います。例えば第七條の第二行目を見ると、「抵抗の抑止のため必要であると認める…」とあるが、「認めらるる」としなければ私はいかんと思います。警察官が認めても、世間が認めないという場合もある、それを、これで以て、第七條というものは合法的にすることになる。尚「合理的に必要と判断される限度において」で、「される」ということは客観的でしよう。警察官においてされるのじやない、文字から見てもそうです警察官はされるということはありません。この合理的に必要と判断されるということは、これは客観的でなければならない。正当防衛なり、緊急避難ということは、すべて客観的に見なければならないと思います。特に警察官等において信ずるということになると、警察官以外の者はそれを信じないかも知れません。私はこういう文字があることはよくないと思います。警察官判断させるということでなくて、一般の目で見て信ずるに足りるということにしなければならんから、第一号、第二号において「警察官等において」という字は削らなければならん。何の必要によつて警察官等」というふうにお書きになつたのでありますか。
  72. 柏村信雄

    政府委員柏村信雄君) ここに「警察官等において信ずるに足りる相当な理由のある場合」、こう書いてありまして、警察官等が他に手段がないと信ずるに足りる相当な客観的理由こういうことであります。即ち一般人ならば或いはこうした場合に逮捕する場合当然使わなければ逮捕できないだろうと思うような場合でも、警察官としてその場に臨んで 専門的な逮捕技術を持つている者が、尚且つ他の手段がないというふうに信ずる相当な理由こういうことでありまして理由はあくまでも客観的な理由であります。
  73. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 それであるというと、警察官というものは外の人と違つた判断をするということを前提にしておらるべきものと私は考えます。先程あなたは正当防衛なり緊急避難なりの場合においては、これは客観的に、見ると言われておる。そういう場合も又警察官一般人とは違うということを言わなければならない。そういうことは私は言えないと思います。緊急避難なりや、正当の理由なりやということは、警察官判断に委すべき問題じやない。國民判断しなければならんと私は思う。それ故に、あなたのおつしやるようなことであるならば、警察官等において信ずるということは要らない。警察官が相当と認めることは一般の人も相当と認めるでしよう。そういうことでなければいけないので、警察官においてということを書く必要はない。警察官において信ずるに足りる相当な理由がありさえすれば、外の人は信ずるに足りる理由がなくてもいいということになる。文字としてもそうである。そういうこことは非常に危險なことであつて、その第七條規定は、武器使用するという非常に危險なことがある上に、主観的なことばかり書いてある。第十條はこれが非常に他に濫用されることがあると思います。これはよく御覧になれば分ると思いますが、ここまで來る間はすべて客観的に書いてある。先程申上げましたごとく第二條の二項でもそうですが、「認められる」と書いてある。「認める」ではありません。「認められる」と書いてある。それから第三條では「相当な理由のある者」、この理由は、警察官理由があるというのではなく、客観的に見て相当の理由ということです。他に第三條の第二号を見ますと、「要すると認められる者」と書いてあります。いわゆるこれは客観的のことである。そういうように始めの中は非常に客観的に愼重な規定をしながら、武器を持つところに至つて、突如として主観的なことを書かれるということは、私はよくないと思います。殊に第四條の終りの方の、「危害防止のため通常必要と認められる措置」、この「通常」というものは世間が見と通常です。殊に「認められる」と書いてありますから、私はやはりこの法文は非常に世間で濫用される虞れのある規定でありますから、警察官等において信ずるに足りるというような文字は、これは誤解を招くと思います。削るべきものであると考えます。
  74. 柏村信雄

    政府委員柏村信雄君) そういう只今お話のような誤解があるということは非常に遺憾なことなのでありまして私共は、むしろこなれによつて警察官等において信ずるに足りる……」専門的警察官等においてすら必要であると信ずるに足りる相当な理由のある場合というふうに、むしろ狭く考えたつもりでおります。その点は一つ御了承を願います。
  75. 松村眞一郎

    ○松村眞一君 そういうことならばそういう心配は要らないということを申上げます。警察官の方において狭く考るというような、そういうふうには読めない。警察官というのは一般人よりも限定された人間でありますから、限定された人間が信ずるに足りるということは、警察官であるが故に、却つて大事を取るというよりも、警察官であるが故に慌てるかも分りませんが、そういうことで、はつきり武器を持つておるということは、すでに危險性を持つておるのでありますから、そういう虞れがあるものならば、あなたの御議論であれば、警察官であるが故に尚更大事を取るというようにお考えになりますけれども、私の方の考えは、警察官であるが故に尚この文字があるから、警察官が信ずるに足りればいいではないか、世間が何と言つてもいいではないかという、軽卒に解釈することもできるのであつて若しそういう解釈を許すものとするならば、むしろ客観的に直した方がいいと思いますから私は削つた方がいいと思います。警察官が大事を取るというような御心配には及ばないということを、私は申上げる。警察官一般的に判断して頂きたい。警察官だけでそう大事をお取りになる必要はない。すべて平等に考えて頂きたい。誰が見ても乱暴な者は止めて、警察官だけ特に乱暴と認めるというような特殊な判断警察官に持たせる必要はないと私は思います。そういう意味において、そういう警察ならばますます不必要であるということ断言いたします。
  76. 大野幸一

    ○大野幸一君 前質問者政府委員との應答の間において看取されるところでも分りますごとく、これは警察官をして非常に制限をせしめようと思つておるが、質問者の方からいうと、いわゆる委員側からいうと、國民の代表からいうと、これはどうも警察官が勝手に解釈する虞れがあつて警察官職権濫用して不安を與えるというふうに解釈されるのであります。いや、あなた方実際政府委員のお方、あなた方の気持は分るが、実際警察官がこれを執行する時には、これは重大なる錯誤に陷つておいでになる。それは警察に縛られたり警察に追いかけられたり捕えられたりしたのは官僚の人じやない、國民である。國民はそれを体験しておるからこそ心配するんです。從つて國民から言われるような文章に直さなければならない、こういうことを私も考えます。そこで私も偶然でした、  これは警察官側において要らないものである チェツクしようと思つた。あなたのおつしやるのは警察官の立場から見て他に手段がないと信ずるに足りると、こういうその警察官というものは國民保護するんだから、余計保護しなければならんというのですが、一体警察官はこれを読みますと、これはうまいことがある、こういうことがある、これでは気が弱くしてもいい場合があるということがある。これは重大なることです。それは裁判所判断しろというような説明、第七條第一項にあるようですけれども、一体先程、前委員が申されたように、捕えるとき武器を持つておる片方は武器を持つている場合もあれば持たない場合もあるでしようが、一生懸命逃げようとするその時の瞬間に、誰が裁判所が後になつて判断をするというような冷靜な判断がその場合に求められますか、凡そ警察官でなくても過ちを犯す度に興奮状態で、その興奮状態に行つて自己の気の緩み、精神の緩みから犯罪が起るのです。それは裁判官が認める相当な理由……相当な理由ということは、なかなか解釈がむずかしい、その事態に應じ、合理的に必要と判断される限度において……これはなかなかむずかしいんです。そうしたときに、警察官にこの判断権を委ねてそれから一体その時の瞬間のことを、後になつて裁判所判断するのであつては、これはもう効果がないのであります。それで私から言えば、やはりこういう場合こういう場合と何條でもいいじやないか、それを規律して訓令のごとく出してそうしてこれをしなければ國民は不安で堪らないということがあります。それでは私の方から政府委員一つ設例を設けましよう。こういう場合にはどうですか。大衆が議会へ押しかけて来た、そこでどうしても阻止し切れないで入る、その場合に、この制止をするために武器を放ち、一人二人は殺してもどうせこれは侵入を防げないという場合には、この法案から見るとどうお考えになりますか。これをお伺いしてその次の質問に入りましよう。
  77. 柏村信雄

    政府委員柏村信雄君) 先程申上げましたように、そういう大衆運動を直接取締るための規定ではありませんので、ぴつたりしないかと思うのでありますが、併しながら若しもその群衆によつて犯罪が行われる虞れがある、或いは生命身体に或いは財産に重大な損害を受ける虞れがあるという場合には、これを極力制止する、その行爲を抑止するというような場合も起るかと思うのであります。
  78. 大野幸一

    ○大野幸一君 その武器を発射してもよいかということです。これを作つたお方ですから、気持は分るでしよう。直ぐ答えられると思う。
  79. 柏村信雄

    政府委員柏村信雄君) これは併し武器の場合におきましては、第七條に書いてありますように、「犯人逮捕若しくは逃走の防止、自己若しくは他人に封ずる防護又は公務執行に関する抵抗の抑止のため必要である」という場合でありまして、場合によりましてどうしても犯罪がそこに行われるような場合でありますれば、場合によつて威嚇発射等の武器使用ということは起り得るかと思います。
  80. 大野幸一

    ○大野幸一君 私の聞いたのは、威嚇発射ではなく、射つて危害を加えてもよいかというのです。
  81. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 只今の御質問の場合には、武器使用できないと思います。又いたさないわけであります。
  82. 大野幸一

    ○大野幸一君 それならばよろしい。そういうふうに政府委員でも両方の答えをされる。ましてや警察官は、この法律は分る筈がない。だから議員たる我々國民の代表としては、不安に思う法律であることは、私は首肯できると思う。そこで、この警察官に対する、この法律に間違つて過ちを犯した場合の制裁は、この法律にはないのでしようが、それは一般刑法に委せればよろしいというようなお話があるでしようが、一体警察官はこの法律を読んでやはり自分に間違いがあつた場合には自分達にも、こういう制裁があるということをこの法律で知らして置かなければ効果が薄いのでしようが、こういう点について考慮をされなかつたのでありましようか。
  83. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) それは当然のことでありまして、当然のことを書いても何も惡いことはないのでありますが、現在でもすでにピストルは携帶をいたし、それから正当防衛及び緊急避難に当る場合にはこれを使用いたしておるのでありますが、併しながら、往々にして過剰行鳥になる場合があるのであります。又誤つて用いるという場合があるのでありまして、さような場合には、いつも檢察廳或いは裁判所において取調べられる問題に、場合によりましては、或いは過失傷害或いは過失致死罪というようなことによつて警察官は問われておるのであります。さような関係から、警察官武器使用いたしまするにつきましては、むしろ非常にその点を虞れておると申しますか、自戒をいたしておるのでありまして、ここに特に書くまでもなかろうかと私は考えております。
  84. 大野幸一

    ○大野幸一君 とにかくこの法律を施行される場合には、細心の注意を拂われるお考えがあるでしようか。例えば今の訓令において設例をして、十分を注意を拂われるというような御用意がありますかということをお伺いして、私の質問終ります。
  85. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) いろいろ御心配の向きも多いと存じますので、我々はさような点につきましては、只今お話のありましたように詳細な例を設けまして、かような場合には使用してはならんというように、十分注意をいたしたいと思います。
  86. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 簡單な問題ですが、第六條の第二項の「興行場、旅館、料理屋」というようなことを書いてございますが、同じような種類に見えますけれども、私は旅館はもう少し性質が違うのではないかと思います。客の來集をする場所であつて、公開の時間中という意味から推察しますと、旅館でも、もうすでに客が入つて、おつてそこに自分の住宅と同じような程度まで落着いておるものを、何どきでも入つていいということは私はないと思いますが、それはどうでしよう。「公開時間中」というのでありますけれども、旅館のごときものは、もうすでにそこに旅人が入つてしまえば、これは一つの自分の住宅と同じなんです。それをただ管理者が同意したからといつて客のおる中に踏み込むということはこれは私は間違つておると思います。それを防ぐために「公開の場所」ということを書いて置かなければいかんと思う。客のいない場合には入つてもよいが、客の入つた場合には公開の場所ではないのですから、「公開の場所及び時間中において、」ということに改めなければ私はいかんと思うのです。それはいろいろな場合を想像するが、料理屋でもそういうことが場合によつてはあるでしよう。ちやんと席を設けて家庭的に入つておれば、それをただ管理者だけの同意を得て、そこにおる人の承諾を得ないで入るということはこれは行き過ぎておると思いますが、どうでしようか。
  87. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 松村委員に申上げますが、前の連合委員会において大体同様の御質問があつたのでありますが、併し尚この際政府委員よりお答えをいたさせます。
  88. 柏村信雄

    政府委員柏村信雄君) 旅館の居室等は、当然今お話のように住居と考えまして、これに入ることを認める意志はないのであります。
  89. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 これは私が旅行中に入つて来たから申上げるのであります。警察官というものは、やはりこういうことが書いてあると、すぐ入つて來ます。旅館と書いてあるのであります。私は被害者の一人であります。旅館で食事をしておりましたら、酒を飲んでいやせんかということで警察官が入つて來た。それでありますから、私は質問ではないのでありまして、委員長の御注意でありますが、修正意見であります。「公開の場所及び時間中に沸いて、」と、場所ということを入れなければいかんという修正意見を申上げたのであります。
  90. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 他に御質疑御意見等ございませんか。
  91. 小川友三

    ○小川友三君 第七條の二項ですが、逮捕する場合に、「警察官等の職務執行に対して抵抗し」というわけですが、ちよつと抵抗しても射ち殺されるとか、重傷を負わされるとかいうことになると、これは非常に範囲が廣過ぎまずので、「甚だしく抵抗し」というように、文字の訂正をお願いいたします。「若しくは逃亡しようとするとき」ちよつと逃げるくらいのを一々殺されたのでは、まるで武家政治の斬捨御免の政治になります。逃げようとするのは、逃がしやつてもよろしいですから、逮捕状を持つておれば又帰つて來るだろうし、「逃亡しようとするとき」ということで、第三者がその者を逃がそうとしておるのを一々殺されるということでは、丁度戰國時代の斬捨御免よりもつと甚だしいと思いますが、甚だしく抵抗した場合には威嚇くらいはよいけれども、ちよつと抵抗すると、煙草をぽんと顔に投げてやつてもぱつとやられてしまうということになると大変だから、これは「甚だしく抵抗するとき」として、あとの條項は全部削ることを提案いたします。
  92. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 只今のは、先程からいろ御説明申上げておりますように、抵抗をいたしましても、武器使用するより他に手段がないと認める、相当な理由があるときであります。從つてそういう武器使用しなくても澄む場合に使用すれば、これはやはり過剰行爲になつて、いけないのでございます。
  93. 星野芳樹

    星野芳樹君 今の小川君の質問に關連しますが、政府委員答弁は、抵抗の方にだけは答弁されましたが、逃走に対して必要があるかという点には何ら答弁がないわけです。逃走の場合にこれは「無期若しくは長期三年以上の懲役」というのですが、三年以上の懲役は、必らずしも人の生命を害するというものじやないと思ひます。そうすると、泥棒はしたかも知れませんが、人の生命身体を害する虞れのない者が逃亡する、それを射つてもよいということになると、甚だ不公平というか、行き過ぎだと思うのであります。若しこれが強盗殺人というような本当に人を殺す人間で、逃げれば又殺すかも知れないというならば、まだ生命の維持保護というために目的がやや適いますが、そこまで至らない、人の生命とか身体を害さないでも、三年以上、だつたら……と認められれば殺していい、ということになると、甚だ危險なことでないかと思いますが、如何ですか。ですから私共は逃亡は除いた方が適当じやないかと思います。
  94. 柏村信雄

    政府委員柏村信雄君) 逃亡は除いた方がいいじやないかという御意見ですが、やはり警察官職責として逮捕ということは、重大な点なのであります。併しながら只今お話の中に、危害を加える場合が起るにしましても 何も必ず殺すという意味ではなくて、とにかく若干ひるませてこれを逮捕するということが相当合理的に必要と判斷される場合はその限度に止めるべきであるというふうに考えます。
  95. 小川友三

    ○小川友三君 この武器というのは、これは催涙弾の方でしようか、ピストルの方ですか。武器というものは両方含まれておるのですか、それから棒も武器でありますか。この三種類が武器の方にのつておるのでしようか、ちよつと解釈が……。催涙弾と棍棒とピストルと三種類ありますが、武器という言葉の中に三つが入つておるのでしたら、棒でちよつと押されるのなら止むを得ませんが、武器というのは全部含んでおるのですか。それから武器警察官は三人に一挺ずつしかないという話を聞いておりますが、今度は全部持つておりましようかどうか。それからこの警察官は昨日なつたばかりで一人前にぼんぼん射たれては困りますが、字句を巡査部長という工合に訂正をしたら、もつと教養のある警察官になりますから、そういう工合に字句を訂正されることを希望いたします。
  96. 柏村信雄

    政府委員柏村信雄君) 武器の範囲でありますが、現在のところは拳銃はこれは武器考えております。それから警棒、警縄はこれを武器として使用することができるということになつておりますので、やはり武器の一種であると考えてよろしいと思います。催涙彈は將來研究の余地があるのでありますが、現在においてこれを使用するところまではまだ至つておりません。
  97. 原虎一

    委員外議員(原虎一君) 特別に労働委員会としてお聞きいたしたい点がありますので、御了解願いたいと思ひます。
  98. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) よろしうございます。
  99. 原虎一

    委員外議員(原虎一君) 先程から各委員から質問がされております。要するに警官の常識と その常識から來るところ判斷による警察官行爲というものが問題になる。そういう点が想像されたと思われる点は、第一條の二項の終りの方に「いやしくもその濫用にわたるようなことがあつてはならない。」 と、すでにこの法律案を作られるときに濫用することがあつてはならないという用心をされてあるのであります。そういう点から考えまして、濫用をされたらばこれは、大変なことになるという、前提があるわけであります。一般國民としての個々の行爲のときの問題と、我々労働者として労働運動の場合とを分けて考えるということは説明の場合にはよくありまするが、実際法律が施行されますというと、そういうことがなくなる虞れがある。この濫用してはならんという点を、私共殊に労働組合運動に濫用される虞れがあるのであります。先程から政府委員は、大衆運動については取締を目的としていない、こう言われたのですが、その條項一つもどこにもないわけであります。大衆運動の中にも、先程デモンストレーシヨンを行なつて議会へ陳情團が來た場合を仮定して話がありましたが、例えば正当なる爭議行爲におきまして、その組合の中に始めはストライキ團に、いわゆる罷業團に参加しておつたが、種々の事情で裏切り者となつた場合に、これに対して罷業團が勧告し警告する場合がある、会社がその裏切り者を使用する場合、このときに門の前でいわゆるピケツアイングをして、それらの入場を阻害するこういうときにおいては、第二條なり、第五條なりが運用できるのではないか。そうして我々の労働組合運動は大衆運動の場合もあり、そういう個々の行爲もあるのであります。こういう点についてのいわゆる労働組合運動、大衆運動には、そういう問題についても適用しないのでありますか。この目的としていないということを明らかにするところの意思があるかどうかという点を明らかにして頂きたいと思います。
  100. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) この法律は大衆運動を、なんと言いますか、彈圧するとがなんとか、そういつたような意図が全然ないことは私断言を申上げたいと思うのでありまして、專ら警察官職責を遂行するために必要な手段規定しておるだけでありまして、今日の合法的な法律によつて保護されておりまする労働組合運動は勿論のこと、その他大衆運動でありましても、この法律のためにその運動を彈圧するというようなことは全然ないと思うのであります。
  101. 原虎一

    委員外議員(原虎一君) 彈圧するという言葉が抽象的なんです。彈圧じやなくして、この法律に反するからやるということはできるのであります。そのとき労働組合運動に対する認識がない警官はどういうことをするかということは、過去の経驗によつて明らかであります。殊に今日の警官は、今日新聞に出ておりました質が良い、惡いということは別問題としましてやはり相当年輩から言つても若い者であります。社会常識がどの程度あり、労働組合法のどこどこを調べて、そうしてこれがいいとか惡いとかいう判断が付く警官は少いのであります。それから昔のように、制度のいい惡いは別として、専門の労働組合運動の係を置いて、特高係が來てその場の判断をするというようなこと…これは善惡は別であります。そういう專門家があるわけじやない。從つて彈圧する意思があつてつたのではないことは、これはもう私共も説明を聞かなくても我々彈圧する意思があつてつているとは思わない。でありますから最初申しましたのは、第一條の二項にあります濫用してはならんという濫用の問題が起つて來るということは、これについてここに労働組合運動大衆運動について濫用され易いものだということについてちつとも考慮が拂われない。而も一般國民の……先程いろいろな場合が想像されて質問されているのですが、不備な点が多々あるのであります。だから適用しないというなら我々も分ります。労働組合運動にはこれは適用しないのだというのなら分りますが、労働組合を彈圧しようという考えはないのだということでは了解できんのでありますが……
  102. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 法に許されておりまする正当な労働組合にこの法律適用しようがないと私は考えております。
  103. 原虎一

    委員外議員(原虎一君) そこで私は今言いましたように、警察官にそういう認識がないときに、労働運動はあとから考えても、警察官は間違つたことをしたと言つたのでは間に合わない。その時の問題であります。例えば裏切者が会社の中に入つた。まあ、これは会社にでも監禁されて仕事を明日からやろうとするときに、これを入れてはならない。それを阻止するときに、危害を加える虞れがあると言つて檢束して行つた。それで入つてつた。労働組合にとつてはその問題で勝負は決するのであります。それをあとから訴えて、その警官は怪しからんのだ、これを濫用してはならんと言つても始まらん。そういうことまでこれは考慮されなければならん法律だということを、申上げた。他にも用事がありますから細かい点については、他の機会にいろいろお聞きしたいと思いますが、そういうことがあり得るということをお考えになつていないということを今までの御答弁では、一向に私共了解できない。これは正当なる労働組合運動というものは勿論刑法第三十五條適用を受けるのでありますが、併しところが個々の問題、今申上げましたような警官の卒爾の行動が労働組合に取つて非常に不利益を與える場合がある、こういう場合におけるところのことをお考えになつて作られたものでないということが、どうも先程からの御答弁の中に考えられますので、もう一度お尋ねして、尚個々の問題については或いは次の機会にもつと詳しく質問したいと思います。
  104. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 労働組合運動から派生をいたしまする或いは違法行爲若しくはそれに近いと申しますか、そういうような行爲が起りました場合に、普通の場合には当然警察官がその職責の遂行としてやります事柄につきましても、労働組合に対しましては特に愼重に事を構えまして、正当なる労働組合運動なるが故に、これに附隨する、普通であれば違法と思われる事柄も、違法性が阻却される場合が多いという考えから特に愼重を期しでおるのであります。警察官権限行使いたします際には、特に裁判所の仮執行の判決があります場合とか、明らかにこれは法律に違反をしておるという場合でありませんと、これには関係をしないような状態に現在おるのでありまして、勿論これらの本法規定しておりまする事柄につきましとは、そういつた労働爭議の結果から派生をして参ります違反行爲のために生命の危險が迫つておるというような場合には、本法の当該條文によることもありましようけれども、さような場合を予想いたしましても、私は労働組合の立法精神を十分体認いたさせておりまする以上はかような心配がないものと考えておるのであります。  殊に労働組合運動のごとき場合におきましては、これは單なる警察官個人の判断によりまして、そこに出向いて行つてどうするということはないのでありまして、これは警察署長なり或いは公安委員会なりの判断の上で警察権を行使をする、若し範囲を逸脱しまして違法行爲に互るという場合には、署長なりその他の責任者の判断において行なうのでありまして、警察官個人が軽卒な判断でさような場合に権限を行なうということはこれは絶対にないと確信いたしておるのであります。
  105. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) 尚他に御質疑がなければ、本日は大体これで本案に対するところの審議を中止することにいたしたいと思いますが、尚この法案についての議定権を委員会として持つておりまする治安及び地方制度委員会におきましては、でき得る限り、司法委員会方々及び特に本日予め御要求がありまして御出席になつたのでありますが、労働委員会の代表である原労働委員長等を通じて、司法委員並びに労働委員方々の御意思のあるところをも十分この法案審議に反映さして頂きたい、かく望んでおる次第でございます。本日は司法委員長の伊藤君がお見えになつておりませんので、十分御相談申上げることができないのでありますが、この連合委員会を今後どのように、取扱いますかということにつきましては、尚形式の上におきましては存続いたしてあるということにいたしまして、両委員長の間におきまして今申しましたような司法委員その他特に御意見のある労働委員方々等の御意見を議案の審議に十分反映せしめるようにいろいろ御相談いたしまして取決めたいと思つておりますが、大体そのようなところで取運びましてよろしゆうございますか。    〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  106. 吉川末次郎

    委員長吉川末次郎君) それではそのように伊藤委員長その他と御相談いたすことにいたしたいと思います。本日はこれで散会いたします。    午後三時二十六分散会  出席者は左の通り。   治安及び地方制度委員    委員長     吉川末次郎君    理事            中井 光次君            鈴木 直人君    委員            羽生 三七君            村尾 重雄君            岡田喜久治君            草葉 隆圓君            黒川 武雄君            岡本 愛祐君            岡元 義人君            柏木 庫治君   司法委員    理事            鈴木 安孝君            岡部  常君    委員            大野 幸一君            中村 正雄君            遠山 丙市君            松村眞一郎君            宮城タマヨ君            星野 芳樹君            小川 友三君   委員外議員    労働委員長   原  虎一君   政府委員    國家地方警察本    部長官     斎藤  昇君    國家地方警察本    部警視    (國家地方警察    本部総務部長) 柏村 信雄君    法 制 長 官 佐藤 達夫君