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1948-10-04 第2回国会 参議院 司法委員会資格審査不実記載に関する小委員会 閉会後第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年十月四日(月曜日)   —————————————   本日の会議に付した事件資格審査表不実記載に関する調査の  件   —————————————    午前十時三十四分開会
  2. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これより裁判官刑事件不当処理に関する調査に付き小委員会を開会いたします。  本日は資格審査表不実記載事件の小委員会としての審議をいたして参ります。先ず本日証人として御出頭願いました高瀬傳氏並びに長野一之氏、御両氏の証言を求めたいと存じます。証言を求める前に宣誓をお願いいたします。宣誓書を各人御朗読をお願いいたします。    〔総員起立証人は次のよう宣誓を行なつた〕    宣誓書  良心從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。         証人 長野 一之    宣誓書  良心從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。         証人 高瀬  傳
  3. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは高瀬さんからお尋ねいたしたいと思いますが、長野さんは控室の方へ……どうぞお掛け下さい。
  4. 高瀬傳

    証人高瀬傳君) そうですか。
  5. 伊藤修

    伊藤委員長 高瀬さんは衆議院議員をお勤めになつていますね。
  6. 高瀬傳

    高瀬証人 そうです。
  7. 伊藤修

    伊藤委員長 平野力三氏といつ頃からお知り合いですか。
  8. 高瀬傳

    高瀬証人 私は社会党入党以來御昵懇に願つております。
  9. 伊藤修

    伊藤委員長 平野氏は追放問題が起つて参りましたですね。それが表面化したからには、平野氏からその問題についてお話になつたことがありますか。
  10. 高瀬傳

    高瀬証人 大いにあります。
  11. 伊藤修

    伊藤委員長 いつ頃から、どんなお話ですか。
  12. 高瀬傳

    高瀬証人 あの追放問題が起きた頃から、私は大いに話しました。
  13. 伊藤修

    伊藤委員長 どういうよう事項ですか。
  14. 高瀬傳

    高瀬証人 つまり私の意見といたしましては、この日本政治家というものが、將來の政治あり方について、ポツダム宣言の枠内において、大胆率直に政治あり方について意見を述べることができないならば、眞の民主主義の確立或いは日本の國際的な立場の高揚というものができない、こういうふうな私は政治的信念を持つておりますために、平野氏の問題に対して強く反対の意見を表明いたしておりました。現在もその心境については変りはありません。
  15. 伊藤修

    伊藤委員長 平野氏が起訴された当時、平野氏にお会いになりましたか。
  16. 高瀬傳

    高瀬証人 起訴されたときも会いました。
  17. 伊藤修

    伊藤委員長 そのとき平野氏はどういうふうなお話がありましたか。
  18. 高瀬傳

    高瀬証人 甚だ不当だというようなことを漠然と言つておられました。
  19. 伊藤修

    伊藤委員長 何か理由を述べておいでになりましたか。
  20. 高瀬傳

    高瀬証人 別に私はその点については深く質したことはありませんが、甚だ不当だ、そして私自身も甚だ不当じやないかという意見を持つておりましたし、現在も持つております。
  21. 伊藤修

    伊藤委員長 不当というのは、内容に立至つて不当だというのですか。
  22. 高瀬傳

    高瀬証人 つまり何が故に平野氏だけが、ああいうふうな資格の、例えば「皇道」の発行編集人ということを記載しなかつたために、何故に平野氏だけが起訴されるかという理由について、確然たる理由を発見できなかつたため、甚だ不当なりと私が考えておりましたし、現在でもそう考えておる一人であります。
  23. 伊藤修

    伊藤委員長 その一点だけですか。
  24. 高瀬傳

    高瀬証人 それから先程申上げました理由ですね。
  25. 伊藤修

    伊藤委員長 平野氏からそれに対して何か御意見はないのですか。
  26. 高瀬傳

    高瀬証人 別に私は平野氏から依頼されたこともないし、例えば追放問題にしても、或いはこのいわゆる脱漏といいますか、記載洩れの事件について、高瀬ああやつて呉れ、こうやつて呉れというような依頼を受けたことは毛頭全然ありません。
  27. 伊藤修

    伊藤委員長 その頃ですか、その後ですか、日にちは分りませんが、鈴木法務総裁から、平野氏は懲役一年になると言つていたという話があつたということは、あなたが平野氏にお話しになつたことがありますか。
  28. 高瀬傳

    高瀬証人 この点は私自身としては非常に、平野氏や或いは鈴木氏とも今立場は違つておりますが、社会党の同志として非常に親しく附合つてつた方です。從つて私はこういうような、鈴木氏がどういうことを言つたかどうかというようなことを公式に証言するということについては、非常に鈴木氏に対しても私は心が進まない、つまり心苦しく考えている一人なんです。だからできればそういうような問題についてですね。公式な、こういうような席上でお話しすることは私は政治家としてあまり好ましくなく思つている一人なんです。
  29. 伊藤修

    伊藤委員長 併し当委員会としては、理論がどうであろうと、あなたに事実をお述べ願い、それがどういう影響があるかということは論外としまして、ただあなたが見聞されましたことの事実を、ここで御表明願う、こういう点にあるのですが。
  30. 高瀬傳

    高瀬証人 それならば止むを得ませんから、私は申上げざるを得ないと思います。実はこの平野氏が記載洩れで起訴されました直後だと思います。日にちも忘れました。それから何の本会議であつたかも私は忘れました。併しながら丁度社会革新党の議席の裏を鈴木法務総裁通りましたので、私は鈴木氏を本会議議場で掴えて、ちよつと掴えたというのは言葉の表現があれですが、鈴木氏に、実は平野氏は追放なつているのじやないか、然るに脱漏記載洩れであるとか、何とかいう理由で、又訴追するというのは少し酷過ぎはしないかということを、私は鈴木氏とは非常に昵懇であるために、友人としてそういうことを言いました。ところが鈴木氏は、いや実は或る筋の意向平野氏を訴追せざるを得ない。而も懲役にしろと言われているのだ、併しながらこれでは甚だ氣の毒だ、だから自分はできるだけ努力して、第二審ぐらいでは罰金刑くらいで済ませるように努力してするのだ、するつもりだ、こういうことを言われたのであります。そして私がそれはそうか、併しそう人を追討するようなことはよしたらいいじやないか。もう追放で十分じやないか、こう言つたのです。それで私は何氣なく或る時に平野氏に出会いましたから、法務総裁がこんなことを言つておりましたぜというようなことを簡單にお話ししたのです。それだけで私はまあおつたわけなんですが、たまたま今回平野氏が裁判所の法廷で、この裁判を受けることを好まない理由一つとして、私からの言辞が引用されたことを発見したような次第です。で成る程平野氏として見れば当面のこの渦中に入つている方でありまするし、その鈴木氏の言を重大に考えたということは私は当然だろうと思います。併しながら私は平野氏に対して、これを裁判遅延の材料に取上げた方がいいとか、或いは何とかそういう意見がましいことは一つも述べておりません。從つてこの鈴木氏の言を平野氏が取上げて裁判に出廷しない理由とされたことは、これは平野氏の責任と創意によつてなされたことでありまして、私自身は何ら、ただそういうことを言つてつたぜということを話した以外に、それ以上何ものでもありません。
  31. 伊藤修

    伊藤委員長 その際一年の懲役に処せられるということをはつきり言つてつたのですが、どうですか。
  32. 高瀬傳

    高瀬証人 その点は記憶にありません。ただ懲役ということが非常に私には頭にぴんと響いただけです。
  33. 伊藤修

    伊藤委員長 そうすると懲役ということは、一審は懲役になるが、二審において……。
  34. 高瀬傳

    高瀬証人 或る筋の意向で、一審は懲役にしろと言われたということを言つたよう記憶しております。
  35. 伊藤修

    伊藤委員長 一審は懲役にしろ……。
  36. 高瀬傳

    高瀬証人 一審はというより、懲役にしろ、併し二審は何とかつまりあれだから、とにかく罰金刑くらいで収めたいと思つておるのだ、こう言つたと思います。
  37. 伊藤修

    伊藤委員長 数字は言わなかつたですね。何年という。
  38. 高瀬傳

    高瀬証人 数字の点については記憶ありません。
  39. 伊藤修

    伊藤委員長 平野氏は、あなたから一年に処せられるということを明言したと平野氏は言つております。
  40. 高瀬傳

    高瀬証人 その点は記憶ありません。懲役ということが強く頭に響いたのであります。
  41. 伊藤修

    伊藤委員長 ただあなたは一年ということはおつしやつておりませんか。
  42. 高瀬傳

    高瀬証人 そういうよう記憶がないようであります。
  43. 伊藤修

    伊藤委員長 平野氏にさようお話になつたことはないですか。
  44. 高瀬傳

    高瀬証人 その点記憶がありません。
  45. 伊藤修

    伊藤委員長 平野氏には再三お尋ねしたのですが、一年ということはあなたから伺つた、こう言つております。
  46. 高瀬傳

    高瀬証人 その点はどうであるか、私には記憶ありません。
  47. 伊藤修

    伊藤委員長 その時の模樣はどうでしよう鈴木さんとあなたの対談の模樣は、冗談というより軽い意味言つておるのですか。
  48. 高瀬傳

    高瀬証人 軽い意味で、つまり心配して、本当にいわゆる内幕の話を、眞実を語られたように私は受取りました。
  49. 伊藤修

    伊藤委員長 要するにあなたから質問したから。
  50. 高瀬傳

    高瀬証人 私が聽いたからです。聽かなかつたら言わなかつたでしよう。私は人を追討するようなことは好い加減にしたらいいじやないかということを言つたのです。
  51. 伊藤修

    伊藤委員長 弁解の意味も含まれておるわけですか。
  52. 高瀬傳

    高瀬証人 一応そう取る外ないと思います。
  53. 伊藤修

    伊藤委員長 進んで向うから、あなたにそれを告げて、あなたから又平野氏に対し、それが伝わり、平野氏を威かすというそういう意味でなく……。
  54. 高瀬傳

    高瀬証人 そういう意味はなかつたろうと思います。私が掴えて聽いたから、そういうことをふいと言つてしまつたと思います。私自身がこれを表面化して、こういう所で言つた、言わないということを言うことは、全く氣が進まんのです。実際。
  55. 伊藤修

    伊藤委員長 あなたが只今お話になりました通り、あなたにさような御意思はなかつたことは認められますが、平野氏は、それが裁判を受けない理由一つに掲げられておりますから、それであなたの御出頭を願つたわけであります。
  56. 高瀬傳

    高瀬証人 はい分りまりた。
  57. 伊藤修

    伊藤委員長 衆議院場所はどの辺ですか。
  58. 高瀬傳

    高瀬証人 場所社会革新党の席です。ですから法務総裁の席から向つて左の方の階段を、鈴木総裁が小さなドアーを開けて降りて來た時に掴まえて言つたのです。立話で。
  59. 伊藤修

    伊藤委員長 廊下立話ですか。
  60. 高瀬傳

    高瀬証人 廊下でなく、本会議議場内です。
  61. 伊藤修

    伊藤委員長 議場内ですか。
  62. 高瀬傳

    高瀬証人 そうです。
  63. 伊藤修

    伊藤委員長 他にお尋ねになることがありますか。
  64. 來馬琢道

    來馬琢道君 ただ私共の聞いておりますことは、程度問題だけですね。
  65. 伊藤修

    伊藤委員長 何か証人の方にお尋ねになることありませんか。
  66. 來馬琢道

    來馬琢道君 程度問題だけでございます。只今私お聽きして置きたいことは……。
  67. 高瀬傳

    高瀬証人 程度問題とおつしやると…。
  68. 來馬琢道

    來馬琢道君 雑談ように言われたのか、確信を持つて言われたのか、あなたと法務総裁との間に……他人の罪に関することを笑いながらということは済みませんが、あれは君、こんなふうなことだという程度のお話なのか、それとも本当にこうなるだろうと思つて心配するよう態度で言われたのか。
  69. 高瀬傳

    高瀬証人 心配したよう態度でした。雑談言つては何ですが、立話ではありましたけれども、非常に法務総裁は困つた面持で、私を威かしてそれを間接に平野氏に伝えさして、それで平野氏を威かす、こういう意思はなかつたろうと思います。併し鈴木法務総裁は困つておるよう面持で言われたから、私はそれを額面通り受取つたのであります。
  70. 伊藤修

    伊藤委員長 今の法務総裁から聞いた話を、平野氏にいつ頃伝えられたのですか。
  71. 高瀬傳

    高瀬証人 あの当時ですから、直ぐだつたと思います。
  72. 伊藤修

    伊藤委員長 外にお尋ねになることはありませんか……それではどうもお忙がしいところを……。
  73. 高瀬傳

    高瀬証人 委員長、私実はこの機会を拜借いたしまして、聊か私のこの追放問題に関する所見を、この参議院司法委員会に対して述べさして頂きたい。かように考えますが、お許しを頂けますか。
  74. 伊藤修

    伊藤委員長 平野氏の問題に関連して一つ
  75. 高瀬傳

    高瀬証人 実は私自身は先程申上げましたように、この平野氏の追放というのは非常に不当な追放であるという堅い信念を持つておるわけなんです。これは如何なる日本政治家がああいう目に遭つても、私は擁援したいと思います。而もその後引続きこの資格の問題がかくの如く起訴された。併しながら私をして言わしむるならば、こういうよう脱漏というようなことで、平野氏のみが起訴されるならば、二三日前の裁判でも、片山氏が日本農民組合の会長ということを脱漏したよう事件もありまするし、その他例えば例を上げれば、三木さんであるとか、或いは笹森氏とか、西尾さんであるとか、これは單なる例であります。その人らは脱漏しておるのではありませんが、併しながらこの資格申請といういわゆる審査書ですね。この書に対する平野氏の記載と、外の只今例を上げたような方、例えばこれらの人の起訴がどちらも良心的にできておるかというようなことも、私は参議院司法委員会で調べ上げた上に、これを問題にして頂きたいということが一つ、それからもう一つは根本的に、例えば平野氏のあの最後の資格審査委員会における決定状況を見ましても、頗る私は了解できないのであります。大河内一男氏の手記を見ましても、或いはあの牧野委員長決定の際の四対四に対して、この牧野委員長決定によつてすべてが決つた。私は大学時代牧野さんに刑法を習いましたが、いわゆる被告と原告の立場が大体同じような場合は、裁判長というものは被告の味方をする。それによつて正義を擁護するということは、私は大学時代牧野委員長から刑法で教わりました。從つておの状態を見ましても、明らかにこの可否同数な場合は、平野氏は被告立場にあつたと思います。從つて私が大学時代に教わつた正義擁護者である裁判長にも類似すべき牧野委員長の取つた態度というものは、頗る私は了解に苦しむわけであります。從つてこういうふうな脱漏事件の問題で鈴木氏が言つたとか、言わんとか、そういうことをお調べになることは、これは頗る結構でありますけれでも、参議院司法委員会としては根本的に、百尺竿頭一歩を進めて、一体平野氏の追放というものが頗る合理的に、民主主義的に行なわれておるかどうか。これは非常に日本國際的立場を高め、日本の眞の民主主義を確立する上において、非常に重大なる私は基礎をなすものであると思います。尚最近の河上丈太郎氏の追放のごときは、明らかに翼賛会の総務であるとか、或はい翼政会の発起人であるとか、翼賛政治会の顧問であるとか、或いはその点で、資格の点で間違つておるか合りませんけれども、この三つの資格が、どれがあつたも当然形式的に衆議院議員追放に値するものであるのであります。然るにも拘わらず、これらの明白なる事実があるにも拘わらず、或いはこれは自分で進んでなつたんではない、彼はキリスト教社会主義者であるとか、何とか彼とか言つて、とにかく追放を免除して、而も政府官報にまでこれを発表した事実が、今年の夏に起つたことは委員長も御承知であろうと思います。而も官報に発表して二、三日ぐらいの間にこれを取消したがごとく、日本追放という問題が非常にでたらめである。私は外務委員会でこの問題を芦田総理に質問いたしました。ところが芦田総理は、でたらめという人もあります。併しながら若し高瀬君が、これがでたらめだと言われるならば、議員には内閣を彈劾する権利があるから、内閣を彈劾して貰つたらよいというようなことを言われましたので、私は一方的に今の政府のやつておる追放問題に関する限り、すべてとは申しませんが、でたらめである。この意味においてでたらめである。日本國際的立場を高め、民主主義を、眞の民主主義を確立する所以にあらずという一方的な結論を私は下したわけであります。そういう点で、願くは参議院の権威ある司法委員会におかれまして、一体日本追放問題が、さような角度において國際的立場を高め、眞の民主主義を確立する立場において行われておるかどうか、例えば平野氏の場合には脱漏という問題を取上げられるということも、私はこれは去ることながら、根本的に日本追放問題が正しく行われておるかどうかということを、参議院司法委員会の権威の上に立つてお取上げあらんことを、私は証人の一人として甚だ僣越ながら希望意見を述べさして頂きたいと思います。
  76. 來馬琢道

    來馬琢道君 ちよつと一言高瀬氏の終りの発言に対して、司法委員の一人として申し上げて置きますことは、この平野問題は非常に微妙なところに至つておると思います。それは皇道会という会を、初め解散を命ぜらるべき、いわゆる追放せられる団体ではなかつたのでありまして、平野氏が確認を得られるときには、その問題は重大でなかつたのであります。然るところその解散を命ぜらるべき団体の追加がありまして、その中に皇道会が入つて來たのである。平野氏の先達つて証言によりますと、御自分経歴の中にはちやんと皇道会の理事になつていたことは書いておられます。而も常任であつたか、常務であつたか專務であつたか、つい私は失念いたしましたが、いずれにしても皇道会幹部であつたということは記載してあつたのです。ただ問題は皇道という雜誌の編輯兼発行人という署名したことを書いておらなかつたという点に、この問題が集中されておるようであります。それで追加せられた団体ということと、その平野氏が経歴を書かれるときには解散を命ぜられるべき団体でなかつたということとの、この微妙な関係において我々は余程考察しなければならないということを思いまして、これは一片の、只今高瀬さんの言われましたような概論的な法理論でなくして、細かいところへ入つて考究しなければならないのだということについて相当苦しんでおります。その前の前段にお述べになりました牧野委員長態度につきましては、司法委員会の方では又別に考えるところがありますが、大雜把に、これは取上げるべき程のものでないというには、少し我々は眞劍に考究しておるということを、どうぞ御承知を願いたいと思います。
  77. 高瀬傳

    高瀬証人 決してこれは取上げるのがいかんというよう意見で申上げたのではありません。
  78. 伊藤修

    伊藤委員長 高瀬さんの御意見はよく分りまして、我々当委員会におきましても、この不実記載事件につきましても、今御指摘よう内容についても調査しておるのです。それで我々が調査した結果によりますと、非常に杜撰なところもありますし、取扱が区々の点もあるし、この追放の目的が、いわゆる公正でないということは、恐らく認められる点が多々あるのであります。これらの点はいずれ調査の結果において指摘いたしまして、御指摘ような部面についての國民の期待を裏切らんつもりでおります。当委員会において、ただ平野氏の今日の問題は、たまたま平野氏の一ケースの又一部分について伺つたに過ぎないのでありまして、さように御承知を願います。
  79. 高瀬傳

    高瀬証人 大変余計なことを申し上げまして、有難うございました。
  80. 伊藤修

    伊藤委員長 御苦労様でございました。    〔証人長野一之君著席〕
  81. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 長野さんでいらつしやいますか。
  82. 長野一之

    証人長野一之君) そうであります。
  83. 伊藤修

    伊藤委員長 お歳と職業は。
  84. 長野一之

    長野証人 弁護士です。五十九才。
  85. 伊藤修

    伊藤委員長 あなたは政治関係していらつしやるのですか。
  86. 長野一之

    長野証人 政治には全然関係しておりません。
  87. 伊藤修

    伊藤委員長 若し関係ないといたしましても、現在の日本政党の中において、どの政党に好意を持つていらつしやいますか。
  88. 長野一之

    長野証人 私は朝鮮に長くおりまして、内地人でありながら、実際におけるところの選挙権というものを持つていなかつた。約三十年間も朝鮮におりまして、全然政治というものにはタッチすることのできないよう状態に置かれておつたがために、どの政党に対しても関心を持つていないのです。
  89. 伊藤修

    伊藤委員長 全然各政党に対して白紙でいらつしやいますか。
  90. 長野一之

    長野証人 そうであります。
  91. 伊藤修

    伊藤委員長 何らの関心をお持ちにならないのですか。
  92. 長野一之

    長野証人 ええ。
  93. 伊藤修

    伊藤委員長 あなたは現在の日本政治家の中で、御交際になつておる方はおありになりませんですか。
  94. 長野一之

    長野証人 全然ありません。
  95. 伊藤修

    伊藤委員長 あなたは昭和二十二年六月二十六日附、東京檢察廳の檢事正でしたかね、平野力三氏を不実記載の罪名で告発なさつたことがありますね。
  96. 長野一之

    長野証人 あります。
  97. 伊藤修

    伊藤委員長 その告発の要旨はどんなですか。
  98. 長野一之

    長野証人 これが告発しましたのは、平野氏が資格審査申請書に、当然起載しなければならない事項記載しなかつたということであります。これだけの事実であります。
  99. 伊藤修

    伊藤委員長 どういうことですか、どういうことを記載しなかつたのですか。
  100. 長野一之

    長野証人 その記載しなかつたのは、つまり皇道会機関雜誌である「皇道」という雜誌著作人発行人であるに拘わらず、その事実を記載しなかつた。これは一般の問題といたしましても、僅かに年齢の詐称といつたような問題で起訴されて処罰を受けておるのです。然るにこういうような重大な問題が、而も大臣の現職にある人が、そういう面を記載せずして、平然としてその地位に留まつておるということは許さるべき問題でない。私は法の前には常に万人平等でなければならんという信念を持つておる。この意味において告発をしたものであります。
  101. 伊藤修

    伊藤委員長 告発内容はその一点だけですか。
  102. 長野一之

    長野証人 それだけです。
  103. 伊藤修

    伊藤委員長 その他にはないのですか。
  104. 長野一之

    長野証人 その他にはありません。
  105. 伊藤修

    伊藤委員長 あなたは平野さんを御存じですか。
  106. 長野一之

    長野証人 全然知りません。
  107. 伊藤修

    伊藤委員長 そうすると、今の告発の事実ですね、どうして御存じになつたのですか。
  108. 長野一之

    長野証人 これは私は、この事件の動機については申上げなければならんと思いますが、大体朝鮮に長い間おりまして、そうして私は朝鮮民族というものが世界の最劣等國民であるということを私は常に考えておりました。この劣等國民となつたところの原因というものは、從來の朝鮮政治というものが、かくよう國民性を作つたものであるという事実を私は知つておる。敗戰によつて私は裸一貫で引揚げた者であります。そうして内地のこの現状を見たときに、如何に國民道義が頽廃しておるか、官紀が紊乱しておるか、如何に國民が我利々々亡者の集団であるかということを私は痛切に感じまして、これは朝鮮人以下の劣等國民ではないかということを私は信じたのであります。そこで私はせめて自分の住んでおる附近の部落だけでも、社会だけでも、明るい社会、氣持のよいところの社会を作りたいという一念から、青年学校先生達、小学校の先生達を集めて、又青年男女を集めまして、日本人としての進むべき道、覚悟というようなことについていろいろ話をしたのでありますが、なかなか國民が附いて來ない。なぜ附いて來ないかと申しますると、それらの者が、あなたの言うことは分る。併しながら今日の社会というものは眞面目に、正直にやつてつたならば食えない。我々は生活ができて行けない。又社会から馬鹿者と言われる。これであなたの言うように眞面目に、正直に一体生活ができるかということでありました。成る程私も日本の國内の全体の状況というものを見なくして、一部だけの改革をしようということに考えたのが間違いであるということを痛感したのであります。とにかく当時の國内の情勢というものは、道義の頽廃、官紀の紊乱というものはすでに病膏肓に入つておる。いつかこれが糜爛して、毒が流れ出る時代が來るということをその当時私は考えたのであります。上におる者が不正なことをして、そうしてこれが平然としてその椅子に着いておるというようなことから、下これに倣うということは、これは昔からの古諺であります。かようなことで一体日本の再建というものができるかということを痛感しまして、たまたま六月頃でしたか上京したときに、平野氏に対するところの非難というものが囂々たるものがあつた。と申しまするのは、私の聞いたところでは、平野氏の杉並におけるところの住宅というものは、あすこに戰災者や引揚者がおつたのであるが、それを警察官を連れて來て、そうして強制立退きをやらして、そこに住宅を造つた。当時そこに住めなくして、それらの住民の反感があるので住めなくして他に住まつておるということを私は耳にしました。又汽車の中でも、皇道会幹部として帝國主義を盛んに宣伝をし、指導されておつたところの者が、現在大臣としてその職に勤まつておるというようなことは一体何事かという國民の声を聞いた。これが動機になつて私は調べて、あの告発となつたのであります。
  109. 伊藤修

    伊藤委員長 どういう方法で調査なされたのでありますか、告発事項内容は。
  110. 長野一之

    長野証人 これは「皇道」という雜誌を私はたまたま小学校の先生から貰つたのです。
  111. 伊藤修

    伊藤委員長 どこの小学校ですか。
  112. 長野一之

    長野証人 私のところの小学校の先生、小松スマ子という人から貰つたのであります。併しながらその資格審査を調べるのは、これは誰でも調べ得る当時状態にあつたのです。
  113. 伊藤修

    伊藤委員長 あなたが調査なすつたのですね。事実をお述べ願いたいと思う。どういう方法で調査なすつたのか。
  114. 長野一之

    長野証人 これは私は当時東京には六月か來ましたけれども、そんな調査のために調べに來ることができないために、やはり小松スマ子という先生が東京に知つておるものがあつて、それに頼んで調査をして貰つた。それで直ぐ分りました。
  115. 伊藤修

    伊藤委員長 小松スマ子ですか。
  116. 長野一之

    長野証人 そうです。
  117. 伊藤修

    伊藤委員長 女の人ですね。
  118. 長野一之

    長野証人 そうです。
  119. 伊藤修

    伊藤委員長 東京にいらつしやるのですか。
  120. 長野一之

    長野証人 私の村のところの小学校の教員です。
  121. 伊藤修

    伊藤委員長 その人がどうして調査したのですか。
  122. 長野一之

    長野証人 それは東京に沢山知り合があつて、それで調べてやろうというので調べて貰つたのです。
  123. 伊藤修

    伊藤委員長 その人が調査報告書を入手したのですか。
  124. 長野一之

    長野証人 調査報告書は入手しません。別に……資格審査の中にこういう事項が書いてある、こういう事項が書いてないということがはつきり分りましたので、それで、それに基いて告発したものであります。
  125. 伊藤修

    伊藤委員長 その内容は何か調査報告書でも貰つて、その調査報告書に基いてあなたが告発なさつたのか、ただ口頭でその人のおつしやることを信じて告発なさつたのか。
  126. 長野一之

    長野証人 それは調査報告書を貰いました。それによつたものであります。
  127. 伊藤修

    伊藤委員長 調査報告書にはどういう種類のものがあるのですか。
  128. 長野一之

    長野証人 それは資格審査の樣式に基いて、平野氏の出されているところの内容記載したものを送つて來たものであります。
  129. 伊藤修

    伊藤委員長 資格審査表の内容というものを報告で聞いたわけですね。
  130. 長野一之

    長野証人 そうです。
  131. 伊藤修

    伊藤委員長 それだけですか。
  132. 長野一之

    長野証人 その記載のしてあるところは記載し、記載のないところは記載しなくて送つて來ましたから、直ぐ分つているわけであります。
  133. 伊藤修

    伊藤委員長 だから要するに資格調査表の、そのままの写しを貰つたようなものですね。
  134. 長野一之

    長野証人 まあそういうことになります。
  135. 伊藤修

    伊藤委員長 そうすると、その調査表に記載のない事項として、只今あなたのおつしやつた告発事項がないということを見て告発なさつたのですか。
  136. 長野一之

    長野証人 そうです。
  137. 伊藤修

    伊藤委員長 そうすると、その告発事項がどうして問題になるとかいうことをお考えになつたのですか。
  138. 長野一之

    長野証人 告発事項が問題になるというのは、当然記載しなければならん事項記載されていないのでありますから、これは誰でも分ることであろうと思いますね。
  139. 伊藤修

    伊藤委員長 当然記載されていないということは雜誌で見たのですか、皇道会があるということは。
  140. 長野一之

    長野証人 そうであります。
  141. 伊藤修

    伊藤委員長 そうすると、皇道会平野氏がどういう地位にあつたかということは。
  142. 長野一之

    長野証人 そんなことは知りません。ただ発行人編集人として、の「皇道」という雜誌に、はつきりと記載されておりまするから、それで私はそれを信じてやつたものであつて、当時の皇道会幹部であるとか、実際に発行しておつたものかどうかということは、その点まで穿索しておりません。
  143. 伊藤修

    伊藤委員長 ただそういう雜誌に署名があつたから、その事実を捉えて、そうして一面先程の調査をした人の報告によつて、その調査表の中に書いてないから、それで告発なさつた、これだけですか。
  144. 長野一之

    長野証人 そうであります。
  145. 伊藤修

    伊藤委員長 そうすると、別にそれに対して、それが眞実であるかどうかということをお調べになつたわけではないのですか。
  146. 長野一之

    長野証人 これは私その点をはつきりと調べて貰つたのですから、これは眞実であるということを私は信じてやつたのであります。
  147. 伊藤修

    伊藤委員長 ただ形式的に名前だけを使つてある場合も往々ありますね。少しも何ら活動しないという場合もありましよう。ただ名前を漫然使用しておつたという場合もありましようから。
  148. 長野一之

    長野証人 そんなことまで私は穿索する必要はないと考えたのであります。
  149. 伊藤修

    伊藤委員長 だから、私のお尋ねすることは、雜誌に現われている形式を捉えて告訴なさつたのか、眞実調査なさつて告訴したかということを聽いたのであります。
  150. 長野一之

    長野証人 私は苟くも編集兼発行人として出されている以上は、これは眞実にその関係者であるということを信じてやつたのであります。
  151. 伊藤修

    伊藤委員長 それを御信じになつた以上は、外は御調査をなさつたのではないのですね。
  152. 長野一之

    長野証人 外に調査しておることはありません。
  153. 伊藤修

    伊藤委員長 そうすると、平野氏の思想系統とか、皇道会における活動とか、過去の政治活動というものはお調べになつておるのですか。
  154. 長野一之

    長野証人 全然私はそういうよう政党関係もないし、何もない。ただ私はそういう掲載しなければならないところの事項というものを漏してやつて、そうして平然として大臣の椅子にいるということは、法律の上から言えば非常に不平等であるという点だけで告発したものでありまして、世間においては、ややもすると政爭の具に供するためにやつたとか、或いは共産党員としてやつたものであるというような、いろいろなデマを飛ばしておりますが、全然そういうよう意味合によつてつたものではないのであります。
  155. 伊藤修

    伊藤委員長 ただあなたが先程前提に申された、いわゆる現下の國情に対して憂えられたところのお言葉を拝聽しましたが、それと平野氏の告訴とは余り何だかかけ離れているように思われるから……。ただその一点を捉えて、以てどうというふうなことは少しかけ離れておりはいないか。
  156. 長野一之

    長野証人 私は全然かけ離れておるとは思いません。そういうような一般に國民が、僅かに私のところでは年齢を詐称したというので、代議士に出馬しまして、その年齢が一つか二つか違つたということで、一つつたということで、処罰を受けておる女の人もあります。そういうような点から見て、この法の前に万人平等でなければならんという趣旨に反することとなり、こういう上に立つ者が不正をして平然としておられる社会では、ますます政治は腐つて來る。
  157. 伊藤修

    伊藤委員長 あなたのお考から言えば、相当批判すべき人も質すべき人もありますが、取りわけ平野氏の資格審査の問題を取上げて、以てあなたの考え方をそこに具現しようというのが、どうも何かの因縁がなければならんように考えるが。
  158. 長野一之

    長野証人 別に因縁も何もありません。たまたま私が六月に上京したときに。
  159. 伊藤修

    伊藤委員長 巷間伝えられるところによりますと、共産党の委託を受けてなさつたとかいう噂があるが、それはそういうところから出て來るのではないかと思いますが。
  160. 長野一之

    長野証人 共産党という問題が出ましたから申上げますが、丁度この問題が起つた当時に、平野氏が新聞記者に対しまして、あれは共産党員ではないか、高知縣の一共産党員がやつたものであるというようなことを出されたために、私のところに沢山の新聞記者が押掛けて來まして、そうして、こういうような話であるがどうかということを聽かれたのであります。私は何にもそんな問題について、昔から共産党員であるとかないとかいうことを弁明する必要を認めん。併しただ私は今私のところの庭に咲き誇つている菊、何十年來愛して作つておる。今日食うに困る現状であつても、菊だけは愛して作つておる。菊というものがどういうような事柄を象徴するものであるかということは、あなた方でも御存じであろう。私は天皇制そのものに対しては一つ信念を持つておるが、併し天皇を尊敬をする念においては今日國民として変つていない考である。で、あなた方が共産党員と見るなら見てもよし、外の人が共産党員として考えられるなら考えてもそれは御勝手である、別に弁明する必要を認めんということを私は話したことがある。
  161. 伊藤修

    伊藤委員長 あなたがこの告発なさるのには、他に協議してなさつたのですか。他の委託を受けてなさつたのか、あなたの單独の意思でなさつたのですか。
  162. 長野一之

    長野証人 私の單独の意思でやりました。
  163. 伊藤修

    伊藤委員長 少くとも先程の何か調査を依頼した人とは協議なさつたか。
  164. 長野一之

    長野証人 これは多少遠い縁故関係があり、多少私の引揚げてから後の行動に対しても、言動に対しても、非常に共鳴をしておつた人であります。
  165. 伊藤修

    伊藤委員長 その人は教員ですか。
  166. 長野一之

    長野証人 教員です。
  167. 伊藤修

    伊藤委員長 お幾つぐらいですか。
  168. 長野一之

    長野証人 四十なんぼになりましたか。五、六になりましたか。
  169. 伊藤修

    伊藤委員長 その人の思想傾向はどういう傾向を持つておりますか。
  170. 長野一之

    長野証人 その人は長い間教員をしておりまして、さあどういうように、別にやはり國家とか、或いは民族とかいつたような問題については、相当熱心に考えているような今です。
  171. 伊藤修

    伊藤委員長 じや東京のお知己の人はどういうふうな関係の人が多いのですか。
  172. 長野一之

    長野証人 それは私は詳しく聞いておりませんが、大森にも知つた人があるし、どつか市内にも知つている人があるような話でした。
  173. 伊藤修

    伊藤委員長 その人が主としておやりになつて、あなたがまあたまたま弁護士をしていらつしやるから、あなたに事件事件といつてはおかしいが、委託したのではないのでしようか。
  174. 長野一之

    長野証人 そういうよう関係はありません。それはただ私がわざわざこちらに、あまりそういうような頼む人もなかつたから、その知合で何しただけで、私は当所まだ弁護士を開業しておりませんでした。
  175. 伊藤修

    伊藤委員長 あなたの告発状の野澤信雄という人が、資格審査委員会に対して抗議を申込んだその何か控が付いておつたのですね。
  176. 長野一之

    長野証人 全然存じませんが。
  177. 伊藤修

    伊藤委員長 あなたは野澤信雄を御存じですか。
  178. 長野一之

    長野証人 小澤ですか。
  179. 伊藤修

    伊藤委員長 野澤信雄です。
  180. 長野一之

    長野証人 どういう人か全然知りません。今名前を聽くのが初めてです。
  181. 伊藤修

    伊藤委員長 その人はやはりあなたと同じように、平野氏の資格審査に対して、資格審査委員会に抗議を申込んでいるのを御存じありませんか。
  182. 長野一之

    長野証人 はい。
  183. 伊藤修

    伊藤委員長 そうすると、結局あなたは平野氏の從來の政治行動とか、平野氏の実際上の皇道会におけるところの活動状態とかいうことは、全然お調べになつておられないのですか。
  184. 長野一之

    長野証人 そういうことは全然。
  185. 伊藤修

    伊藤委員長 端的に言えば、形式だけで告発なさつたのですか。
  186. 長野一之

    長野証人 そうであります。そういうよう政治関係から私はやつたものではない。そういう方面は全然承知しておりません。
  187. 伊藤修

    伊藤委員長 專らあなたが誰からか委託を受けて、告発の衝に当つたということを言つておりますが。
  188. 長野一之

    長野証人 全然ありません。私の自分信念の下にやつたことです。
  189. 伊藤修

    伊藤委員長 東京にいる人ならともかくも、遠方の四國あたりにいらつしやる方が、中央の人を告発するということは、ちよつと普通では考えられないことですからね。
  190. 長野一之

    長野証人 これは一面から考えますれば、私がやりましたのは、私がこれまで大臣とか何とかいう者を相手にしてやつた場合には非常なる彈圧があり、いろいろ却つて反対に國民そのものが……
  191. 伊藤修

    伊藤委員長 現在はそんなことはありませんから、大臣であろうが、すべて法の前には平等ですから、その杞憂は少しもありませんから。
  192. 長野一之

    長野証人 國民そのものがそれだけ認識しておりません。
  193. 伊藤修

    伊藤委員長 認識しております。その点は十分今日の行動によつても明らかです。
  194. 長野一之

    長野証人 そういう意味を含めて、大臣であつて國民であつても、皆これは平等にすべて行動ができるものだということを、一般に知らす意味においても必要だという考えからやつたのです。
  195. 伊藤修

    伊藤委員長 その小松スマ子という人の住所は。
  196. 長野一之

    長野証人 これは安芸町です。
  197. 伊藤修

    伊藤委員長 どういう字を書くのですか。
  198. 長野一之

    長野証人 仮名で書きます。
  199. 伊藤修

    伊藤委員長 町の名前、所です。
  200. 長野一之

    長野証人 安芸町、穴内という所です。
  201. 伊藤修

    伊藤委員長 現に学校に奉職していらつしやるのですね。
  202. 長野一之

    長野証人 いや、これは現に奉職しておりません。
  203. 伊藤修

    伊藤委員長 現在、何をやつていらつしやいますか。
  204. 長野一之

    長野証人 昨年の十二月に亡くなつたのです。
  205. 伊藤修

    伊藤委員長 亡くなつたのですか。
  206. 長野一之

    長野証人 ええ。
  207. 伊藤修

    伊藤委員長 そのマス子というお方から、あなたが入手された報告書を、お手許に持つていらつしやいますか。
  208. 長野一之

    長野証人 そういうものは全然持つておりません。
  209. 伊藤修

    伊藤委員長 先程報告書を入手したとおつしやつたじやありませんか。
  210. 長野一之

    長野証人 報告書は貰いましたが……
  211. 伊藤修

    伊藤委員長 それはお宅に持つておられますか。
  212. 長野一之

    長野証人 持つておりません。
  213. 伊藤修

    伊藤委員長 どうなさつたのですか。
  214. 長野一之

    長野証人 これは一年も過ぎ去つたことで、保存する必要もないと思われましたから。
  215. 伊藤修

    伊藤委員長 それは大切な基本書類ですから、保存する必要がないと云うのは、殊に弁護士をおやりになつておられれば、書類の大切なことは御存じでしよう
  216. 長野一之

    長野証人 もう事件が済んで……。
  217. 伊藤修

    伊藤委員長 事件は済んではおりません。事件は進行中です。而もあなたが事件の起訴をなさつたのですから。
  218. 長野一之

    長野証人 これは当時誰でも調べられるよう状態にあつたものですから、そうそれが重大な問題であるとは考えておりませんでした。
  219. 伊藤修

    伊藤委員長 それでもあなたが、一國の大臣を國民に代つてやるという大切な仕事をなさつたのですから、その基本をなした参考資料を破棄なさつたということは、ちよつと考えられんじやないですか。
  220. 長野一之

    長野証人 それは併し考え方で、私はそれが誰でも、資格審査の問題は調べられるよう状態に置かれておつたものですから、それを手紙で調べたからと言つて、いつまでも保存しなければならぬという観念は持つておりません。
  221. 伊藤修

    伊藤委員長 関係書類は何もお持ちにならんのですか。
  222. 長野一之

    長野証人 何もありません。
  223. 伊藤修

    伊藤委員長 それは不用意ですね。
  224. 長野一之

    長野証人 私はこの事件は單純な問題であつて、大体司法委員会において國政の問題として取上げられるということ自体が、どうも私は、実はどういう意味においてなしたものかということを私は考える。ただ私が告発した事実は、ただそれだけの事実に基いてやつたものであります。
  225. 伊藤修

    伊藤委員長 まあ、司法委員会としましては、この種の事件が裁伴所において、どういう考えで審理されるか、又この種の事件が國家の民主主義再建の上にどういう観点から立つて処理されておるかという点を調べておるわけです。その一内容として今日御出頭願つて、あなたがどういう環境の下に告発なさつて、その事件が起きたかという根本も調査したわけです。
  226. 長野一之

    長野証人 私はその入手したというような問題については、そんな重大な問題ではないと考えておる。
  227. 伊藤修

    伊藤委員長 ただ事をあなたが先程重大に御主張なさつたから、それ程重大に御主張なさつたならば、やはりそれに関する書類は重要に取扱われることと常識的に考えられますから、お尋ねしたわけです。
  228. 長野一之

    長野証人 あれが今言うように政爭の具に供するとか、何とかいう目的でやつたものであるとか……
  229. 伊藤修

    伊藤委員長 あなたの告発したのは、六月頃ですね。
  230. 長野一之

    長野証人 そうです。
  231. 伊藤修

    伊藤委員長 それからこの事件裁判所において、檢事局において着手されたのは十二月頃ですね。
  232. 長野一之

    長野証人 そうですね、十一月頃です。菊がまだ咲いておる時です。
  233. 伊藤修

    伊藤委員長 その間に檢事局に督促か何かお出しにはなりませんか。
  234. 長野一之

    長野証人 別に出しておりません。
  235. 伊藤修

    伊藤委員長 そのま放任して置いたのですか。
  236. 長野一之

    長野証人 ええ。
  237. 伊藤修

    伊藤委員長 告発しつ放しになさつのですか。
  238. 長野一之

    長野証人 当時ですね。私はこの木内という檢事正がおりまして、その檢事正に実は面会をして、告発状を渡したわけです。それは木内檢事正にも当時申上げましたが、これは極めて簡單な事件であつて、何もあなたの手許に直接渡す必要もない問題ではありまするが、ただ証拠書類が付いておりまするので、途中で粉失するとか、何とかいうようなことになると困るから、直接実は持つて参りましたと、それで若しお調べの必要があれば、高知縣からわざわざ來るということも困りますから、今直ぐお調べを願えませんかという話をしましたら、いやそれはまだ係檢事も決めなければならんし、そういう必要はないと思う。若しそういう必要があれば、高知の方の檢察廳に廻して調べて貰つてもいいから、そのままに置いておいて下さいという話でありましたから、そのまま渡して帰つたのであります。その後全然……
  239. 伊藤修

    伊藤委員長 十二月に着手されたものは、督促も何もされませんか。
  240. 長野一之

    長野証人 督促も何もしません。
  241. 伊藤修

    伊藤委員長 出頭も何もしませんか。
  242. 長野一之

    長野証人 出頭も何もしません。
  243. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かお尋ねになることは、別に……それじやどうもお忙しいところを……それではお諮りいたしますが、今日の高瀬傳氏の証言で、大体法務総裁の言われたことは、お分りのことと存じますが、これ以上法務総裁を喚問するかどうかということですね。
  244. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 それには及ばんと思いますがね。
  245. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 大体話の内容の程度は、今日の証人でお分りと思いますが、如何ですか。
  246. 來馬琢道

    來馬琢道君 委員長はどうお考えになりますか、私の質問に対しては、軽さ重さについてはどうですか。雜談として見るのでありますか、心配して、眞面目になつて見られるのか。
  247. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ちよつと速記を止めて頂きたい。    〔速記中止〕
  248. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 速記を始めて、法務総裁の出席を求めて釈明を求めることに決定いたします。それでは二時半まで休憩いたします。    午前十一時四十六分休憩    —————・—————    午後四時三十七分開会
  249. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それじや午前に引続きまして開会いたします。法務総裁お尋ねいたしますが、平野力三氏を証人として取調べましたところ、向氏は裁判を遅延せしめる一つの主たる理由は、法律総裁が、曽つて議会の廊下か、或いは議場において、高瀬傳氏に平野氏は一年の懲役を受けるだろう、こういうことを言われた。さような予断を抱かれておることは、自分として忍びがたい、こういうような供述をしました。高瀬氏を初め証人として調べましたところ、高瀬氏は一年ということは聞かなかつた関係方面から懲役というような話しがあつた、法相においては罰金ぐらいになるであろうというような話しがあつた。こういう私がまあそこにありましても、事前に刑の量定についてお話があつたということについて、その当時の模樣を総裁にお伺いしたい。こういう趣旨で御出席願つたわけであります。
  250. 鈴木義男

    ○國務大臣(鈴木義男君) そのことにつきましては、今どうも記憶がはつきり出て來ませんので、いつであつたかということは申上げ兼ねるのでありますが、いつか余程前のことですが、高瀬君が衆議院の二階の廊下で、私と通り違います時に、鈴木さん、平野氏の問題は何とかならんか、こういうような話があつたのですが、私立止まつて、誠にお氣の毒だが、どうもあちらの方でも睨んでおるのでね、というようなことを言つたよう記憶いたします。それで高瀬君は、一体どんなものなんだというふうに聽いたよう記憶いたしますが、それはどんなふうな処罰を要求するのか、こういうよう意味に私は取つたのであります。別に裁判などは無論私は干与したことはなし、裁判の結果などは予断も、予見などもできるものではありませんから、ただ檢察当局として、何かどのくらいのことにするのかというよう意味を聽かれたと思つたので、併し私は何もその当時は別に具体的な求刑の内容とか、そういうことを知つてつたわけじやなし、報告を受けておつたわけでもないのですから、ただ私が扱つておる他の、あの種嘘記事件のものと比較いたしまして、大体の見当が付きますものですから、高瀬君はそれをはつきり聽いたかどうか分りませんが、まあ一年ぐらいのところかなあというくらいなことを申したわけであります。それは全く私のその時における一つの推測に過ぎないのでありまして、決してそれが檢察当局の決まつた方針でもなし、何ら根拠のあるものではないのであります。で、私は弁護士としての経驗もありまするから、どうしてもああいうふうな、この政治的な意味を持ちました事件におきましては、一審ですぱつと助かるということはむずかしいものでありますから、まあ一審ではそんなところを云われるかも知れんが、二審にでもなれば助かるかも知れん、こういうようなことを、極く高瀬君を信用して、友人として心安だてに申したのでありまして、それが私の法務総裁としての正式の発言であるというふうに高瀬君も取らなかつたと信じますし、私もそういう意味で云つたつもりはないのであります。裁判内容、結果等については、只今も予見いたしておりませんし、その当時も何ら予想したことはないのであります。それが実情であります。
  251. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、当時関係方面のそういう示唆であるとか、或いは檢察廳のそういう求刑意向であるとかいうようなことはおつしやらなかつたのですか。
  252. 鈴木義男

    ○國務大臣(鈴木義男君) そういうことまでは申しませんつもりです。
  253. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 高瀬君は議場でという話をしておられますが。
  254. 鈴木義男

    ○國務大臣(鈴木義男君) その場所ははつきり記憶しておりますが、衆議院の二階の通路であります。エレベーターを降りてから、こつちに歩いてくるあの通路……
  255. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 時は、起訴直後の時だというような……
  256. 鈴木義男

    ○國務大臣(鈴木義男君) そのくらいの時です。
  257. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か外にお尋ねになることがありますか……それではこれを以て散会いたします。    午後四時四十五分散会  出席者は左の通り。    委員長     伊藤  修君    委員      來馬 琢道君   委員外委員            大野 幸一君            宮城タマヨ君   政府側    國 務 大 臣 鈴木 義男君   証人    衆議院議員   高瀬  傳君    弁  護  士 長野 一之