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1948-06-24 第2回国会 参議院 司法委員会 第46号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月二十四日(木曜日)    午前十時十八分開会   —————————————   本日の会議に付した事件刑事訴訟法改正する法律案(内閣  送付) ○青年補導法案鬼丸義齊発譲) ○松島丸事件に関する派遣議員の報告   —————————————
  2. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) それじやこれより司法委員会を開会いたします。本日は刑事訴訟法改正する法律案について、前回に引続き審議を継続いたします。先ず政府委員説明を求めます。第三編上訴第一章通則の御説明を願います。
  3. 宮下明義

    政府委員宮下明義君) 第三編上訴以下の説明を申上げます。  第一章通則につきましては、三点の改正を除きまして、その他の部分は現行法と殆んど変りはございませんので特に改正点につきまして、御説明申上げたいと思います。その第一点は三百五十三條の規定でございます。現行法の三百七十八條によりますると、被告人法定代理人保佐人等被告人のために独立して上訴をすることができるとなつておつたのでありまするが、今回の改正案におきましては、被告人法定代理人、又は保佐人につきましても、原審における被告人代理人又は弁護人と同様、被告人の意思に反しない限度において、被告人のためにする上訴をすることができるというふうに改正いたしました。この趣旨は、刑事訴訟法においては被告人、本人の意思を飽くまで尊重すべきものであるという趣旨に基いておるのでありまして、又一面被告人が欲しないのに法定代理人が強いて上訴をいたしまして被告人利益を害する場合も考えられますので、このような改正をいたしたわけでございます。  次の改正点は三百五十九條に関連いたしまして、現行法が認めておりました上訴権放棄制度を今回の改正案は廃止いたしました。改正案によりますると、極く軽微な事件を除きまして、判決言渡しの際には必ず被告人出頭を要することといたしましたが、これは被告人上訴権を保護しようという趣旨に出でておるのであります。この趣旨を更に一歩進めまして、改正案においては被告人上訴権放棄制度を廃止いたしました。從いまして今後は、控訴又は上告の期間十四日内には被害人は十分考えまして上訴をするかどうかということを決することができるのでございます。この十四日間というものが、上訴権放棄ということができなくなりましたので、苦し被告人が拘束されておりまする場合等においては不利益を受くることが予想されますので、特に四百九十五條規定を設けまして、その間の未決勾留日数を当然本刑に通算することにいたしましてその間の調和を図つた次第でございます。  次の改正点は三百六十八條以下の檢察官のみが上訴をした場合において、上訴が棄却されたとき又は上訴の取下があつたとき、言い換えますると、檢察官上訴が不成功に終つた場合におきましては、國家当該事件被告人であつて者に対しまして、上訴によつてその審級において生じた費用の補償をするという制度を、新たに設けたわけでございます。これによりまして、檢察官上訴は今後從來以上に愼重を期することとなりましようし、又檢察官判断が誤つておりまして、檢察官上訴のために被告人に思わざる不利益、図らざる費用を掛けた場合におきましては、國家がこれを補償してやるということにいたしたわけでございます。これに関する詳細の規定が三百六十九條乃至三百七十一條規定いたしてあるわけでございます。  次に第二章控訴の章を御説明申上げます。從來御説明申上げましたように、改正案におきましては控訴制度を、現行法覆審制度から、原判決当否を批判する事後審制度改正いたしたわけでございます。  その理由の第一は、第一審の公判手統公判中心主義、直接証拠主義を徹底いたしまして、極めて詳細な丁重な手続をいたしまするので、控訴審においては最早これと同じ程度の事実審を繰返す必要はないのではないか。その必要がないばかりでなく、実際の現在の日本の裁判所人員等を考えますると、或る程度不可能な事情も考えられまするので、後來の覆審を止めまして、原判決当否を批判する事後審という審級に改めたわけでございます。第二の理由は、今回の改正におりますると、第一審の公判手続におきましては直接審理主義を採用いたしまする結果、相当多数の証人、言い換えますれば、一般國民にその公判手続参與を求めまして、証人としてこれに協力して頂く必要があるわけでございます。今控訴をいたしました場合においてすべての事件について第一審と同じような事実審理の過程を踏みまして、すべての証人控訴裁判所出頭を求めるということにいたしますると、被告人側利益はそれによつて十分満足されるでありましようけれども、一般國民は半面非常な負担を被り、非常な迷惑を受けるわけでございます。刑事訴訟法におきまして被告人利益を十分考慮しなければならないことは、申すまでもない事柄でございまするが、それと同時に一般國民側利益もこれを考慮しなければならないことは、申すまでもない事柄でございまするので、今回の改正案におきましては、その両者の調和を図りまして、一般國民の直接の参與を求めて、詳細な事実審理をいたしまするのは、少くとも第一審においてやつて頂く。控訴審におきましては、この第一審の判決当否を批判いたしまして、その批判いたしました結果、直ちに第一審と異なる判決をすることができる場合におきましては、第二審において直ちに破棄自判をいたしまするが、更にそれ以上の事実の取調を必要とする場合には、第一審に差戻し又は移送をいたしまして、証人が手近におる場所におきまして、改めて事実の取調をするという立て方を採つたわけでございます。尚理論的に申上げますると、今回の改正案は、第一審において起訴状一本主義を採用いたしておるわけでございまするが、控訴審におきましてはすでにこの起訴状一本主義の原則を貫きますることは、事実上、理論上も、不可能な事柄でございまするので、全然第一審と同じ状態において何らの予断を抱かず、それ以前の記録を全然見ないで、控訴の事実審をするという建前は取り得ないことは、御了承願えると思います。このような事情によりまして今回の改正案は、現行法控訴覆審制度を改めまして、控訴事後審制度といたしたわけでございます。  以下控訴審の概要について御説明申上げますると、三百七十一條は「控訴は、地方裁判所又は簡易裁判所がした第一審の判決に対してこれをすることができる。」といたしまして、引続いて御審議を願う予定になつておりまする裁判所法改正によつて、この控訴はすべて高等裁判所管轄するというふうに改正いたしたいと考えております。その意味は、後來のごとく覆審でない事後審でございまするので、第二審は高等裁判所において丁重にいたしたいという趣旨に出ておるわけでございます。  三百七十三條は現行法控訴提起期間が七日でありましたのを十四日と延長いたしまして、改正案によりまする控訴は、控訴申立後に詳細な控訴趣意書を提出いたさなければなりませんし、十分に第一審判決を熟読玩味し批判して、控訴が立つものは控訴して頂くという趣旨におきまして、控訴提起期間を十四日と延長したわけでございます。  三百七十四條は「控訴をするには、申立書を第一審裁判所に差し出さなければならない。」といたしましたが、これは現行法と変りございません。  三百七十五條におきまして「控訴申立が明らかに控訴権消滅後にされたものであるときは、第一審裁判所は、決定でこれを棄却しなければならない。」という規定を設けました。これも現行法と同樣でございまして、即ち第一審裁判所控訴権消滅後になされたことが明らかである控訴申立決定で棄却する制度をそのまま存置したわけでございます。三百七十六條は「控訴申立人は、裁判所規則で定める期間内に控訴趣意書控訴裁判所に差し出さなければならない。」という規定を新たに設けまして、而して第二項によりまして、「控訴趣意書には、この法律又は裁判所規則の定めるところにより、必要な疏明資料又は檢察官若しくは弁護人保証書を添附しなければならない。」という規定を設けたのであります。この詳細は三百七十七條以下に規定があるわけでございます。控訴趣意書提起期間法律によつて一定いたさなかつたのは、記録作成期間等事件の軽重によりまして必ずしも一定ではございませんので、訴訟の実際を十分に熟知しておりまする裁判所によつて將來十分研究の上、適当な控訴趣意書提出期間を定めて頂くという趣旨におきまして、裁判所規則で定める期間というふうに、裁判所規則讓つたわけでございます。  三百七十七條乃至三百八十三條は控訴申立理由規定いたしますると同時に、その各條に掲げられました理由によつて控訴申立をいたしました場合における控訴趣意書記載方法に関する規定でございます。改正案におきましては控訴申立人に十分なる責任を負わせまして、現行法のごとくただ第一審の判決が何となく不服であるからという理由で一應控訴申立をして置くという考え方を捨てまして、控訴申立人控訴申立をいたします場合には十分愼重な考慮をめぐらし、十分なる根拠に基いて控訴申立をして置くという趣旨におきまして、三百七十七條以下において控訴趣意書記載方法について規定を設けたわけでございます。併しながら三百七十七條以下の要件を備えた控訴趣意書が提出されまするならば、控訴裁判所は必ず檢察官及び弁護人口頭弁論を聽かなければならないのでございまして、決して控訴審書面審理であるという非難は当らないと考えております。この改正案について弁護士会等におきまして、場合によりましては書面審理控訴棄却をしてしまうのではないかという非難があることを耳にいたすのでありますが、苟くも法律が予定いたしまするところの控訴趣意書を提出いたしまするならば、必ず控訴裁判所口頭弁論を開かなければならないという建前になつておりまするので、書面審理という非難は当らないと考えております。  三百七十七條は訴訟手続法令違反の中、特に重要なものでありまする「法律從つて判決裁判所を構成しなかつたこと。」「法令により判決に関與することができない裁判官判決に関與したこと。」及び、「審判の公開に関する規定違反したこと。」、この三つの場合を理由として控訴申立をいたしまする場合には、控訴趣意書にその事由を十分証明することができるという保証書を添附しなければならないという規定を設けたわけでございます。この保証書の詳細につきましては、更に裁判所規則によりまして詳細なる規定が設けられることを予定いたしております。  三百七十八條は同樣、訴訟手続法令違反理由とする控訴申立でございまするが、その訴訟手続法令違反中「不法管轄又は管轄違を認めたこと。」、「不法に、公訴を受理し、又はこれを棄却したこと。」「審判請求を受けた事件について判決をせず、又は審判請求を受けない事件について判決をしたこと。」及び「判決理由を附せず、又は理由にくいちがいがあること。」を理由として控訴申立をした場合におきましては、控訴趣意書に、原審訴訟記録及び原裁判所において取調べ証拠に現われている事実でございまして、而も控訴申立をいたしまするその事由があることを信ずるに足りるものを控訴趣意書において援用しなければならないという規定を設けたわけでございます。從いまして、第一審におきましては、檢察官弁護人はすべての可能な証拠を第一審に集中いたしまして、苟くも自己の主張或いはその主張を立証せんとする証拠は、すべて第一審に提出いたしまして、これを記録に留め、その証拠取調べて貰つて置きまして、而も第一審の判断が不服であるという場合には、この規則に現れておりまする事実、取調べられた証拠に現れておりまする事実を援用して、三百七十八條に規定するごとき事由控訴申立理由といたすわけでございます。  三百七十九條は前二條以外の訴訟手続法令違反理由として控訴申立をする場合でございまするが、この場合におきましては前二條の場合と異りまして、特にその訴訟手続法令違反判決影響を及ぼすことを必要といたしているのであります。そしてこの場合におきましては控訴趣意書原審訴訟記録、又は原裁判所が取り調べました証拠に現れている事実でありまして、明らかに判決影響を及ぼすべき法令違反があることを信ずるに足りるものを、援用しなければならないということにいたしたのであります。  三百八十條は訴訟手続法令違反と異なりまして、法令適用誤りがあることを理由といたしまして、控訴申立をする場合でございまするが、この場合におきましても、その法令適用誤り判決影響を及ぼすことを必要といたしておるのであります。この場合におきましては、控訴趣意書にその法令適用誤りを指摘いたしまして、而もその誤りが明らかに判決影響を及ぼすべきことを示さなければならないこととなつているのであります。  三百八十一條は刑の量定の不当を理由とする控訴申立に関する規定でありまするが、この場合におきましては控訴趣意書原審訴訟記録、及び原裁判所において取調べ証拠に現れている事実でありまして、刑の量定が不当であることを信ずるに足りる事実を援用しなければならないということにいたしたのであります。  三百八十二條は事実誤認理由として控訴申立をいたします場合でありまするが、この場合におきましても、その事実の誤認判決影響を及ぼすことを必要といたしているのであります。そして控訴趣意書には前同樣、原審訴訟記録及び原裁判所において取調べ証拠に現れている事実でありまして、明らかに判決影響を及ぼすべき誤認があることを信ずるに足りるものを援用しなければならならいということにいたしたのであります。  三百八十三條は再審事由、及び判決後の刑の廃止若しくは変更、又は大赦を理由として控訴申立をいたしまする場合でありまするが、この場合におきましては控訴趣意書にその事由を疏明する資料を添附しなければならないということにいたしたわけでございます。このように控訴趣意書はすでに法律自体において可なり嚴格方式を要求いたしておるのでありまするが、この趣旨とするところは、控訴申立人に明らかに責任を持つて控訴申立をして頂く、ただ漠然と第一審の判決が不服であるというのではなくして、根拠に基いて控訴申立をして頂くのである、という趣旨において、三百七十七條乃至三百八十三條の規定が設けられたわけでございます。  三百八十四條は、控訴申立は只今御説明申上げましたところの訴訟手続法令違反法令適用誤り、刑の量定の不当、事実誤認再審事由、及び判決後の刑の廃止、若しくは変更、又は大赦、この理由以外で控訴申立をすることはできないという規定を設けたわけでございます。  三百八十五條控訴申立法令上の方式違反し、又は控訴権消滅後にされたものであることが、明らかなときは、控訴裁判所は、決定でこれを棄却しなければならないという規定を設けました。この場合におきましては控訴申立法令上の方式違反いたしておりますし、又控訴権消滅後にされたものであることが、明らかでございますので、必ずしも口頭弁論を開かず、決定控訴を棄却するわけでございます。  三百八十六條は控訴裁判所口頭弁論を開かず、決定控訴を棄却する場合に関する規定でありますが、その第一号は控訴申立人裁判所規則で定める期間内に控訴趣意書控訴裁判所に差し出さないときは、決定控訴を棄却いたします。  第二号は控訴趣意書がこの法律若しくは裁判所規則で定める方式違反しておるとき、又は訴控趣意書に必要な疏明資料若しくは保証書を添附しない場合におきましても、決定で訴控を棄却いたします。  第三号におきましては、訴控趣意書に記載された訴控の申立理由が、明らかに三百十七條乃至三百八十三條に規定する事由に該当いたさないときにも、決定控訴を棄却いたすのであります。第三号の一つの例として、例えば第一審の判決をした裁判官が気に食わないというような理由のみで控訴申立をいたした場合には第三号の決定控訴を棄却されるわけでございます。  次に三百八十七條は、控訴審では、弁護士以外の者を弁護人に選任することはできないという規定を設けたわけでございます。この点は、特別弁護人は総則の規定によりましても、簡易裁判所及び地方裁判所以外の裁判所において弁護人に選任することはできないということになつておりまするので、これを受けまして三百八十七條の規定を置いたわけございます。  三百八十八條は、控訴審では、被告人のためにする弁論は、弁護人でなければ、これをすることができないという規定を設けたわけでございます。後に三百九十三條で御説明申上げますように、控訴裁判所が事実の取調をいたす場合がございますし、又被告人出頭を特に必要と考える場合に被告人出頭を命ずるわけでございますか、この場合におきましても、被告人自分自身弁護をすることができませんで控訴審における弁論はすべて弁護人がこれをするということにいたしたわけでございます。  三百八十九條は、公判期日におきましては、檢察官及び弁護人は、控訴趣意書に基いて弁論をしなければならないということにいたしました。前に申上げましたように三百八十五條又は三百八十六條に該当いたさない場合には、控訴裁判所は必ず口頭弁論を開きまして、檢察官及び弁護人弁論を聞かなければならないわけでございます。三百八十五條、三百八十六條に該当いたしまする場合にのみ、決定控訴が棄却されるに過ぎないのであります。  三百九十條は、控訴審においては、被告人は必ずしも公判期日出頭することを要しないということにいたしました。併しながら裁判所は、五千円以下の罰金又は科料にあたる事件以外の事件につきまして、被告人出頭がその権利保護のため重要であると認める場合には、被告人出頭を命ずることができるという規定を設けたわけであります。  三百九十一條は、弁護人出頭しないとき、又は弁護人の選任がないときは、特に法定弁護事件の場合、又は裁判所決定弁護人を付けた場合を除きまして、檢察官の陳述のみを聽いて判決することができるという規定を設けたのであります。  次に、特に重要な点は、三百九十二條及び三百九十三條の規定でございまするが、この点に関しまして、一般の弁護士会等におきましても、この改正案について、いろいろな誤解があるやに聞き及んでおりますので、特に詳細に御説明申上げたいと思います。先ず三百九十二條は、控訴裁判所の調査の範囲に関する規定でありまするが、第一項におきまして、控訴裁判所が義務として調査をしなければならない範囲は、控訴趣意書に包含された事項でございます。併しながら第二項におきまして、控訴裁判所は、控訴趣意書に包含されておらない事項でありましても、訴訟手続法令違反法律適用誤り、量刑不当、事実誤認再審事由、又は刑の廃止等事由があるかないかということに関しましては、職権で調査することができるという規定を設けまして、必ずしも控訴趣意書に包含された事項のみを調査すれば、控訴裁判所は事足りるというのではございませんで、更に進んで職権で他の控訴理由、即ち原判決を破棄する理由があるかないかということを職権で調査することができるということにいたしたわけでございます。  而して三百九十三條におきまして、前條の調査をするについて、必要のあるときは、職権で事実の取調べをすることができるという規定を設けたのであります。この事実の取調べは、いわゆる証拠調べでございまして、控訴裁判所は必要に應じまして、証人尋問、檢証、押收、捜索、すべての証拠調べをいたすわけであります。而してこの三百九十三條に基きまする証拠調べは飽くまでも原判決当否を批判する限度に限られるのでありまして、控訴裁控所原審訴訟記録及び原審において取調べました証拠によつて、一應第一審判決当否を批判いたすのでありまするが、それのみではどうも第一審判決が正しいのか不当であるのか判断が付かないという場合におきましては、訴控逢判所職権で進んで証拠調べをいたすわけであります。これによりまして、この附加的にいたしました証拠調べによりまして、訴訟裁判所が第一審判決を破棄すべきものであると考えた場合には、これは破るわけであります。而して第一審判決を破棄いたしました場合において、すでに第一審の訴訟記録及び第一審で調べました証拠及び控訴裁判所が補充的に取調べをいたしました証拠によつて、直ちに判決をすることができる場合におきましては、直ちに第二審判決をいたすわけであります。併しながらこの補充的な証拠調べによつても、まだ第二審判決をするのには、不十分であると考える場合におきましては、それ以上の取調べを進めるために、その事件を一審裁判所に差戻し、又は移送をすることになつておるわけでございます。この点について、なぜ改正案当事者証拠調べ請求を認めないのかという非難を聞くのでありまするが、改正案考え方といたしましては、三百九十三條の証拠調べは飽くまで原判決当否を審査する限度における証拠調べでありまして、控訴裁判所手続というものは、現行法覆審と異なりまするので、若し当事者証拠設べの請求を認めますると、結局現行覆審と殆んど変りない運用になつてしまうということを心配いたしまして、三百九十三條におきましてはこの補充的な証拠調べ職権に限るという立て方を採つたわけでございます。勿論当事者といたしましては、第一審が終りました後で、重要な、新たな証拠を発見いたしまして、これを調べて呉れたならば、必ずや第一審判決と違う判決を得たであろうと考える場合におきましては、進んでこの職権の発動を促して頂くということになろうと考えております。  次に三百九十四條の規定は、第一審におきまして嚴格な証拠能力に関する規定を設けたわけでございまするが、第一審において証拠とすることができる証拠は、控訴審においてもこれを証拠とすることができるという規定を設けたのであります。例えて申上げますれば第一審当時、証人外國等におりまして三百二十一條規定によつて証拠能力を得ておつた書面等は、控訴審当時その証人が外國から戻つて來ておりましても、改めてその証人控訴審で呼ばなくても、これを証拠とすることができるということにいたしたわけでございます。  三百九十五條は、控訴審において口頭弁論を開いた結果、やはり控訴申立法令上の方式違反し、又は控訴権消滅後にされたものであるということが明かになつた場合におきましては、判決控訴を棄却するという規定を設けたのであります。  三百九十六條は、控訴申立理由がない場合におきましては、判決控訴を棄却するという規定を設け、三百九十七條におきましては、控訴申立理由がある場合におきましては、判決原判決を破棄するということにいたしたのであります。  三百九十八條は、不法管轄違を言い渡し、又は公訴を棄却したことを理由として原判決を破棄する場合におきましては、判決でその事件原裁判所に差し戻さなければならないということにいたしました。  三百九十九條は、不法管轄を認めたことを理由として原判決を破棄する場合におきましては、判決事件管轄第一審裁判所に移送しなければならないということにいたしたのであります。  第四百條は、前二條規定理由以外の理由原判決を破棄する場合においては、判決で、原裁判所に差戻し、又は原裁判所と同等の他の裁判所に移送いたしまして、改めて第一審の審理をさせるということにいたしたのであります。併しながら但書において、控訴裁判所訴訟記録及び原裁判所控訴裁判所において取調べられた証拠によつて直ちに判決することができると考える場合におきましては、その被告事件について直ちに本案の判決をすることができるということにいたしたのであります。  四百一條規定は、現行法の四百五十一條と同趣旨規定でございます。  四百二條規定は、現行法と変りなく、被告人控訴をし、又は被告人のために控訴をした事件につきましては、原判決より重い刑を言い渡すことができないという不利益変更の禁止の規定をそのまま存続いたしたわけでございます。  四百三條は、原裁判所不法に公訴棄却の決定をしなかつた場合におきましては、決定で公訴棄却をしなければならないという規定を設けたわけでございます。  四百四條は、控訴審判につきまして、この法律で只今御説明申上げましたような、いろいろな特別の定めがある場合を除きましては、第一審の公判に関する規定を準用するという立前を採つたわけでございます。  次に第三章、上告について御説明申上げます。以上御説明申上げましたように、控訴審覆審から事後審という制度改正いたしました結果、上告審はこれを憲法違反及び判例違反理由とする上告を審査する審級ということに改めたわけでございます。  先ず四百五條におきまして、高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対して憲法違反又は憲法の解釈に誤りがある場合、最高裁判所の判例と相反する判断をした場合、又は最高裁判所の判例がないときには、大審院若しくは上告裁判所であるところの高等裁判所の判例、又はこの法律施行後におきましては控訴裁判所である高等裁判所の判例と相反する判断をした場合におきましては、上告の申立をすることができるということにいたしたのであります。憲法の違反と申しまするの、は判決手続を含めまして訴訟手続が憲法に違反しておる場合を考えております。憲法の解釈に誤りがあるというのは、その判決の内容となつておりまする判断の中の憲法の解釈に誤りがあるということを意味しておるのであります。この條文において判例違反を上告理由といたしておるのでありまするが、判例と申しますのは、或る事案につきまして最高裁判所又は本條第三号に掲げるそれぞれの裁判所が、すでに或る判断を示しておる判決がある場合には、これを判例と考えております。必ずしもその判断が繰返しなされたことを必要とはしないと、このように考えております。而して判例のない場合においては困るのではないかという御意見があろうかと思いまするが、その場合におきましては、次の四百六條によりまして、法令の解釈に関する重要な事項を含むと認められる事件につきましては、特に最高裁判所の方がみずから上告審としてその事件を受理することができるという規定を設けましたので、この條文の活用によりまして救済できるものと考えております。  次に四百六條は、憲法違反又は判例違反がない場合でありましても、法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件につきましては、その判決確定前に限つて裁判所規則の定めるところによつて、最高裁判所がみずから上告審として事件を受理することができるという規定を設けたのであります。これは憲法違反、判例違反がない場合でございましても、最高裁判所といたしまして、法令の解釈に関する自己の見解を表示いたしまして、法令の解釈の統一を図る必要がございまするので、特にこのような規定を設けたわけでございます。裁判所規則によつて如何なることが規定されるかということは、將來の規則制定委員会に讓られておるわけでありまするが、現在予想いたしておりまするのは、この受理を求める手続は、当事者からペテイシヨン、請願と申しますか、或るペテイシヨンが規則によつて認められる、そのペテイシヨンを受けまして、最高裁判所がこれを判断して、その事件を上告審として受理するかどうかということを決するということになろうと考えております。最高裁判所がその事件を上告審として受理すると決しました以上は、その事件は通常の上告事件としてその後の審理がなされるわけでございます。  四百七條は、上告趣意書についての特別規定でありまするが、この上告審の審判について、原則といたしましては、控訴審審判規定を準用いたしておりまする結果、特に上告趣意書については、四百七條の特別の規定を設けまして、その詳細は裁判所規則で定めるということにいたしまして、その趣意書には上告申立理由を明示しなければならないということにいたしたわけでございます。  四百八條は、上告裁判所が上告趣意書その他訴訟記録によりまして、上告の申立理由がないことが明らかであると認めるときは、弁論を経ないで、いわゆる書面審理によつて判決で上告を棄却することができるという規定を設けました。この規定控訴書にはない規定でありまして、特に上告裁判所のみに認められておる書面審理に関する規定であります。  四百九條におきましては、上告審においては、控訴審と異なりまして、公判期日被告人を召喚することを要しないということにいたしました。  四百十條は、上告裁判所は、四百五條各号に規定いたしまするところの憲法違反又は判例違反がある場合には、判決原判決を破棄しなければならないという規定を設けました。併しながらたとえ憲法違反又は判例違反がございましても、その違反判決影響を及ばさないことが明らかな場合には、必ずしも原判決を破棄する必要がないという立前にいたしたわけでございます。而して四百五條第二号、又は第三号に規定する判例違反だけがございまして、憲法違反による上告でない場合におきまして、上告裁判所が從來の判例を変更して今問題になつております原判決を維持するのを相当と考えた場合におきましては、必ずしも原判決を破棄する必要はない、言い換えますれば判例が間違つておつたのでありまして、原判決が正しいと思い直したわけでございまするから、この場合におきましては、必ずしも原判決を破棄しないという、その判決において判例を変更することができるということにいたしたわけでございます。  四百十一條は、特に新らしい規定でございまして、上告裁判所は四百五條各号に規定いたしまする憲法違反、又は判例違反のない場合でございましても、第一号乃至第五号の事由がありまして原判決を破棄しなければ著るしく正義に反すると認められまする場合においては、判決原判決を破棄することができるということにいたしたのであります。而してその事由と申しまするのは、判決影響を及ぼすべき法令違反、刑量が甚だしく不当である場合、判決影響を及ぼすべき重大な事実を誤認がある場合、再審事由がある場合、及び判決後に刑の廃止、若しくは変更、又は大赦がある場合でございまして、これらの事由があつて原判決を破棄しなければ著るしく正義に反すると考えまする場合においては、たとえ憲法違反がなく、又は判例違反でない場合でありましても、上告裁判所原判決を破棄することができるということにいたしたわけでございます。  四百十二條不法管轄を認めたことを理由として原判決を破棄する場合におきましては、その事件管轄控訴裁判所、又は管轄第一審裁判所に移送しなければならないということにいたしたのであります。これは現行法の立方と変りございません。  四百十二條におきましては、前條の理由以外の理由によつて原判決を破棄する場合におきましては、判決事件原裁判所、即ち原控訴裁判所、若しくは第一審裁判所に差戻し、又はこれらの同等に他の裁判所に移送しなければならないということにいたしたのであります。併しながら上告裁判所訴訟記録並びに控訴裁判所及び第一審裁判所において取調べ証拠によつて、直ちに判決することができると考えまする場合においては、被告事件について直ちに判決することができるという破棄自判の規定を設けたわけでございます。  八百十四條は、上告審の審判について特別の規定がある場合を除いて、控訴審規定を準用するという規定を設けたわけでございます。  四百十五條乃至四百十八條は、いわゆる上告裁判所における判決訂正に関する規定でございまして、これは現行法に全然なかつたところの新たな制度であります。この制度につきましてもいろいろな批判があるわけでございまするが、英米の制度におきましては上告審に限らず、第一審裁判所におきましてもいわゆるニユー・トライヤルという制度がございまして、場合によりましては判決の訂正を許している先例もございまするので、特に改正案においては上告審の判決についてのみ訂正の判決を認めるということにいたしたのであります。いろいろ立案の途中におきまして議論がございまして、上告審の判決のみでなく、第一審又は控訴審判決についても訂正を許すべきではないかという主張もあつたのでありまするが、刑事裁判においてはそう簡單に一旦下しました判決を訂正すべきものではないという立前を尊重いたしまして、第一審、控訴審におきましては判決訂正という制度を設けなかつたのであります。併しながら上告審においては、それが最後の審級でありまするので、特に上告審の限つて判決訂正という制度を設けたわけであります。即ち四百十五條におきましては上告裁判所判決の内容に誤りのあることを発見したときは、当事者申立によつて判決でこれを訂正することができる。この申立判決宣告のあつた日から十日以内にこれをしなければならない、第三項におきましては、適当と認めるときは申立によつてこの十日の期間を延長することができるということにいたしたのであります。  而して四百十六條におきまして、訂正の判決は必ずしも弁論を経なくてもすることができるということにいたしたのであります。勿論必要に應じまして弁論を経てもいいことになるわけであります。  四百十七條におきましては、訂正の申立がありましても上告裁判所が訂正の判決をしないと決しました場合においては、速かに決定申立を棄却しなければならないということにいたしました。  四百十八條は、上告裁判所判決は宣告があつた日から四百十五條期間を経過したとき、又はその期間内に判決訂正の申立があつた場合には、訂正の判決、若しくは申立を棄却する決定があるまでは確定しない。この訂正の判決若しくは申立を棄却する決定があつたときに、初めて確定するということにいたしたのであります。  次に第四章、抗告の章について御説明申上げまするが、この章は殆んど現行法と変つておりません、從いまして特に改正案におきまして現行法を改めておりまする重要を点についてのみ触れたいと考えております。その第一点は、四百二十七條におきまして、「抗告裁判所決定に対しては抗告をすることはできない」という規定を設けたわけであります。決行法におきましては四百六十九條の規定がございまして、勿論原則としては再抗告を許さないのでありますが、例外として幾多の決定について再抗告を許しておつたのでありますが、改正案におきましては、抗告裁判所決定に対しては、もはや抗告を許さないという立前を貫いたわけであります。  次は四百二十八條の規定でありまするが、「高等裁判所決定に対しては抗告をすることはできない」ということにいたしまして、その第一項において、即時抗告をすることができる旨の規定がある決定及び第四百十九條及び四百十二條規定によりまして、抗告をすることができる決定であつて高等裁判所がしたものに対しましては、その決定をした高等裁判所に異議の申立をすることができるという規定を設けたわけであります。從いましてこの場合においては、最高裁判所に抗告をすることはできないのでありまするが、その決定をした高等裁判所に対して異議の申立をいたしまして、その裁判所において再び判断を受けることができるということにいたしたわけであります。  次に改正の主な点でありまするが、それは四百三十三條の規定であります。即ち「この法律により不服を申し立てることができない決定又は命令に対しては、第四百五條規定する事由」即ち憲法違反又は判例違反があることを「理由とする場合に限り、最高裁判所に特に抗告することができる」という規定を設けました。この規定は應急措置法第十八條においてすでに設けられた、憲法違反の場合における特別抗告の規定でありまするが、これを更に拡張いたしまして、憲法違反に限らず判例違反理由とする場合においても、特に最高裁判所に特別抗告をすることができるというふうに拡張いたしたわけであります。
  4. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 以上第三編についての説明に対する御質疑がありましたら、どうぞお願いいたします。
  5. 星野芳樹

    ○星野芳樹君 個別の質問をする先に政府委員の今後の説明にちよつと希望があるのです。政府委員説明は、以前の法案と変りがないというと、ずつとそれで済ましてしまうようですが、この刑事訴訟法改正というものは、新憲法発府によつて根本的に國の立前が変つておるから改正するので、むしろ改正しないところを何故このまま保たなければならないかという説明も必要だと思いますから、その点を注意して置きます。それから個別的には第三百十三條、これは弁論を分離したり併合したりすることができるという項ですが、この項に対して政府委員説明では、親分、子分などがあつて、分離しないで併合してやると、子分の利益が十分護られない虞れがある。そういう場合に分離する、つまり目的は被告の計利の擁護にあると説明されたのでありますが、それならば裁判所は適当と認めるときは檢察官被告人若しくは弁護人請求による、檢察官の要求によるという項は必要ないのじやないか。檢察官は被告の罪状を追究するものである、これが分離を要求する、これは決して被告の保護に要求ではない。若し被告自身或いは弁護人自身から分離を要求すると、それは、それを認めた方がそういう親分、子分というような関係で、被告の権利が保護されるかも知れませんが、これは原則的には併合として、そうして檢察官の要求によるということは除くのが至当ではないかと思うのであります。更にそうなると、三行以下のことも無用のことになるんだと思いますが、この点政府委員は如何考えておられるでしようか。
  6. 宮下明義

    政府委員宮下明義君) 誠に御尤もな御質問でありまするが、前回私が御説明申上げました数人の被告人利益が相反する場合において、裁判所がその弁論を分離しなければならないという点について、敷衍して説明申上げましたのは、三百十三條第二項に関する御説明であつたのでありまして、この場合におきましては、前回御説明申上げましたような事例がございまして、被告人の権利が互いに相反しておる、そうして被告人の権利を保護するために必要があるという場合におきましては、裁判所規則の定めるところによつて決定で必ずその弁論を分離しなければならないという義務を裁判所に負わせておるわけでございます。而して第一項におきましては、必ずしもそれのみ、言い換えますれば、被告人の保護のみに関する規定ではございませんで、檢察官側といたしましても、数人の被告人を同一の訴訟において分離を進めますると、その立証に困難を來す場合が考えられますのるで、そのような場合には、檢察官側の、言い換えますれば國家側の利益を考えまして、その弁論を分離いたしまして、有罪とすべきものは正しく有罪とするという途を講じたわけでございます。從いまして第一項において檢察官請求又は裁判所職権ということも当然必要と考えておるわけでございます。
  7. 星野芳樹

    ○星野芳樹君 只今のお答えでこの條は決して被告人の権利を守るためではなく、むしろ從來の分割裁判による治安維持法当時の裁判方法を復活せんとするものであることがはつきりしたようでありますが、この被告の権利を守るという点から考えますと、初めの檢察官というものは絶対に必要がないし、又三行以下の「裁判所被告人の権利を保護するため必要がある」という、これは濫用される虞れがあると思うのであります。裁判所の方では、被告の権利を守ると考えても、併し実は被告の権利を守ることにならない、この実例は治安維持法の当時にあつたと思うのでありまするが、裁判所の方では、併合審理をすると、なかなかその関係者が全部顔を合せるし、群衆心理であくまで轉向しないという行き方で、これを一つ々々分離した方が被告の利益だと、こういう解釈がある、併しそのために被告同志が共同に裁判所に出て、当然権限を擁護すべきところを、個別撃破に権限を失わせられて來た、こういうことがあつたと思うのであります。その意味において、これだけでは非常に弊害が出る虞れがあると思うのですか、如何ですか。
  8. 宮下明義

    政府委員宮下明義君) 只今星野委員から三百十三條の規定の背後と申しますか、眞意は、治安維持法当時の刑事訴訟法の運用のごとく、主として國家側の利益を考えて、多数の被告人の公判を適宜分離して、被告人の権利の保護というよりは、むしろ國家の都合を考える規定ではないかという御議論があつたのでありまするが、立案当局といたしましては、この三百十三條の規定を設けまする場合において、決してそのようなことを念頭には置かなかつたのであります。立案当局といたしましては、最前御説明申上げましたように、適正なる刑事訴訟の運用を達成することを考え、又同時に被告人の権利の保護を十分に保護しようということを考えてこの條文を設けたのでありまして、特に國家側の便宜なり、或いは底意を以てこの規定を設けた趣旨では決してないのでありまして、その点誤解のないようにお願いいたしたいと考えます。
  9. 小川友三

    ○小川友三君 第百四十九條につきまして政府委員にちよつとお伺いします。百四十九條の、医師、歯科医師の項ですが、他人の秘密に関するものについては証言を拒むことができるというところに、旧法におきましては、全國に約五万の薬剤師があり、藥剤師の條項が明記されておつたのであります。藥剤師の條項に明記するのは非常に正しいと思いますが、この案には落してありますが、藥剤師を否定したものであるかどうか。もう一つは藥剤師が処方箋によつて調剤する、その処方箋によりましてレプラとか、結核であるとか、或いは秘密の病気が一切処方箋によつて分るのであります。それをその藥剤師が他人の秘密に関するものについては証言を拒まないで堂々と喋つて、これではよいということになりますが、それでは非常に危險でありまして、基本人権を侵してしまう、憲法に触れるということになると思いますが、藥剤師の職責につきまして、本案立案者は無知識に近いのではないか、かように思いますが、藥剤師の処方箋によるところの病気の判断は極めて專門家であります。この点につきましてどうして落してしまつたかということにつきまして明確なる御答弁を切にお願いする次第であります。  それから第二百八十九條、これは弁護人がなければ開延することができないという條項ですが、誠に賛成であります。併し全國に犯罪が非常に氾濫をいたし、又激増の一方でありまして、大体國費は相当莫大に要ると思いますが、政府の御調査によりまして、大体全國六千人の弁護士さんに対しましてお願いをすることになりますが、一ケ年に、昭和二十三年度の見込はどのくらいであるということを御答弁をお願いいたしたいのであります。  それから、ちよつと簡單ですから……。第三百四條でありますが、証人、鑑定人というところがありますが、これは御承知の通り、日本の裁判におきましては、化学樂品、本当に專門的な化学藥品につきましては判事さんも知りません。又各鑑定人が非常に不適格な鑑定人を選んでおる判決例が沢山あります。そこで鑑定人を取り換えて貰いたいということを被告は要求する場合は勿論でありますが、この場合に鑑定人を数回取り換えられるかどうかということはここに載つておりませんが、これについてお伺い申上げます。例えば藥品に関する事件に関しましては、或いは微生物に関する事件という場合になりますと、裁判官は知識を持つておりませんので判決はできない、鑑定人の力を借りるという場合が想像されるのであります。  それから三百十一條でありますが、被告は裁判官の質問に対し供述を拒むことができる、これでは裁判が非常に遅れてしまつて困ると思います。これにつきまして政府委員の御答弁をお願い申上げます。  それから三百十五條ですが、判決宣告をする場合は、この限りでない、判事さんが代つた場合に形式的に判決をするということは聞いておりますが、本案におきましては一回くらい公判を判事さんが代つた場合にやつて、それから判決宣告をするということにしたら最も公平ではないかと思います。それに対して御所見を承りたいと思つております。  それから三百九十一條弁護人出頭しないとき、又は弁護人の選任がないとき」というところですが、弁護士さんはやはり人類でありますから病気になつて休む、そのときにいきなり今度は檢察官の陳述を聞いて、判決が決まるという例がこの三百九十一條と思います。この点につきまして、とにかく弁護士さんが少いのですから、沢山の犯罪があつて弁護士さんは誠意があつても來られない、或いは病気で來られないということを留保した場合、これは別だと思います。これにつきまして御意見を拜聽したいと思います。  それから三百八十七條に、弁護士の外の者を弁護人に選任することはできないことになつております。これは勿論ですが、特に余裕を以て例えば医師会の事件があつた場合、その医師会の会長、專務理事が弁論に立つ、弁護人として取入れるというようなことはできないものでしようか、御意見を拜聽したい。
  10. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 最後の総則にありますから。
  11. 宮下明義

    政府委員宮下明義君) お答えいたします、先ず第百四十九條の他人の秘密に関する事項について証言を拒むことができるものの中から藥剤師を削つておるが、これは改正案が削除した趣旨かどうかという御質問に対しましては、改正案におきましては、現行法にございました薬種商、藥剤師等の証言拒否権を否定した趣旨でございます。その理由は、この百四十九條の御説明の際にも触れました通り改正案におきましては、一面被告人の黙祕権を非常に強化いたしております関係上、裁判所といたしましては、でき得る限り証人の証言を求めまして、これによつて有罪の認定をいたさなければならないという立前になつて参りました関係上、合理的な範囲内において、從來の現行法の証言拒否権を整理いたしまして、從來よりも、より以上証言を求めることができるという立て方を採りましたので、百四十九條につきましても、從來ございました藥剤師宣は藥種商等の証言拒否権を否定いたしたわけでございます。然してその理由は、藥剤師、藥種商等は、医師、歯科医師、助産婦、看護婦、弁護士、弁理師等に比しまして、その他人の祕密に触れまする程度が、必ずしく強くないという理由から、これを削除いたしたわけでございます。  次に二百八十九條の國選弁護人の運用について、政府として自信があるかという御質問に対しましては、只今直ちに資料を取寄せまして、お答えいたしたいと思います。  次に二百四條の鑑定人が、例えば化学藥品の性統等についての鑑定について、その鑑定人の知識経驗が、必ずしも適当でないという場合に、その鑑定人を取り換えてくれという請求ができるか、或いはこれを取り換える場合があるかという御質問に対しましては、三百九條によりまして、証拠調べについては、異議を申立てることができまするし、今後の証拠調べにおいては、この鑑定人の十分なる資格、知識、経驗ということについて、両当事者から從來よりも強く爭われることになろうと考えておりまするので、御質問のごとく、事情によりましては、鑑定人を取り換えまして、再鑑定をするということも当然予想いたしております。  次に三百十一條被告人の黙祕権というものは、改正案が行き過ぎておるのではないかという御意見でございまするが、すでに憲法において、被告人不利益な供述を強要されないと規定いたしておりまする以上、これを実施いたしまするところの刑事訴訟法においても、被告人の黙祕権を認めざるを得ないわけでございまして、今後の訴訟の運用、或いは犯罪を立証いたしまする責任を持つておりまする檢察官側としてしましては、必ずしも被告人の自白乃至供述に頼らず、その他の証拠によりまして、例えば証人の証言により、他の物証等によりまして、その犯罪事実を立証して行かなければならないという運用になつて参ると考えております。その場合におきましても、捜査官側といたしまして、或いは攻撃者側といたしまして、十分に捜査の研究をいたし、立証の研究をいたしまして、一面憲法の線に沿いまして、被告人の人権を尊重すると同時に、又罪ある者は、必ずこれを罰するという気概を以ちまして、公共の福祉、治安の維持も亦これを全たからしめるというふうに運用できるものと考えておるわけでございます。  次に三百十五條但書きにつきまして裁判官が代つた場合に、その後直ちに判決の宣告をする場合でありましても、一回だけは公判手続をやつて、その上で判決の宣告をした方がよいのではないかという御意見でございまするが、若し公判手続の途中において、言い換えますれば、審理の途中において裁判官の更迭がございますれば、必らず公判手続を更新いたしまして、すべての手続をやり直さなければならないわけでございまして、その上で判決の宣告という段取りになるわけでございますが、すでに弁論が終結いたしておりまして、結論まで出ておるという場合においては、その後裁判官が代りましても、直ちに更新をせず、判決の宣告をしても、少しも差支ないというところから、この但書の規定が設けられておるわけでございます。  次に三百九十一條につきまして、弁護人、言い換えますれば弁護士も又人である以上、病気になることもあるのではないか、弁護人が病気等のために出頭しないからといつて、直ちに檢察官の陳述を聽いて判決をしてしまうのは如何なものかという御議論でございますが、勿論この場合におきましても、法律によつて必らず弁護人を必要とするという事件につきましては、改めて國選弁護人を選任するか、又は公判期日を延期いたしまして、弁護人出頭を待つ以外に方法はないのでありまして、又その他の事件につきましても、裁判所が第二百九十條の規定がありまするように、特に弁護人を附するのを適当と認める場合におきましては、改めて決定弁護人を附しまして、その手続を進めるわけでありまして、必らずしも御心配の点はないのできはないかと考えております。  三百八十七條につきましては、特別弁護人は特に簡易裁判所及び地方裁判所にのみこれを認める。御意見のような、例えば医師とか或いは十分な科学的な知識を持つた人も、必要によつて特別弁護人として、被告人の権利の保護に当つて頂くわけでありますが、これは簡易裁判所及び地方裁判所、言い換えますれば、第一審に限つて頂く控訴審におきましては、可なり法律技術を必要といたしまするので、控訴審及び上告審においては、弁護士だけが弁護人になれるという立前を取つたわけでございます。  次に二百八十九條の國選弁護人の運用についての見通しについてでありますが、昭和二十一年度における長期三年以上の事件被告人の数は、十一万二千七百七十二名でありまして、現在日本全國の弁護士の数が六千三百十九人、これを只今申上げました二十一年度中の人員数をこの弁護士数で割りますると、一人の弁護士が一ヶ年間に國選弁護人として担当して頂く人員が十七人八分ということになるわけでございます。今後弁護士の方々が、少くとも法律上、この十七今八分という法定弁護人を担当して頂かなければならないわけでありまして、かなり負担にはなろうと考えておりますが、必ずしも運用上不可能ではないという結論を持ちまして、この二百八十九條の規定を設けたわけでございます。
  12. 小川友三

    ○小川友三君 今の二百八十九條ですが、「裁判長は、職権弁護人を附しなければならない」というのですが、この十一万二千七百七十二名の昭和二十一年度の例は、昭和二十三年度はもつと遥かに増加しておるはずと想像するのでありますが、一人の者で十七人八分の担当をやつて貰うという意味ですが、これは官選の場合は、公定價格は弁護料にはないはずですが、一人が幾らで政府は弁護士さんにお願いする予算を立てていらつしやるか、一人三千円でありますると、約四億円程度かかりますけれども、ちよつと予算をお伺いします。政府はいつも不渡りで、頼みつ放しで、土木建築にしても頼みつ放しですから、ちよつと……
  13. 宮下明義

    政府委員宮下明義君) 御指摘の通り、昭和二十一年度よりも、昭和二十三年度においては、犯罪が逐次増加いたしておりますることは、その通りでございまするが、その比率を申上げますると、昭和二十一年度に比し、昭和二十二年季の犯罪増加率は、刑法犯において二三%増加、特別法犯につきまして一九〇%増加ということになつておるのでありまするが、この特別法犯は、殆ど大多数が略式命令で片付きまする事件でありますので、さしてこの國選弁護人の必要のために運用に困ることはないのではないかと考えております。從いまして刑法犯に二三%増加というのが問題になつて参るのでありまするが、これを概略いたしますると、多くても三〇%程度の増加と、こう考えております。從いまして最前申上げました十七人八分が三〇%程度殖えるということになろうかと考えております。  次に長期三年以上の事件につきまして、法律弁護人を必要といたしました場合における予算の点でございまするが、只今計算いたしておりまするところでは、一件平均七百五十円として計算いたしまして、八千四百五十七万九千円という数字を出しております。この昭和二十一年度における、長期三年以上の事件被告人数十一万二千七百七十二名というのは、全部の数でありまして、この中に私選弁護士が附けられる事件を含んでおるわけでございますから、從來のパセンテージといたしまして、二一%私選弁護人が附くという計算をいたしますと、只今申上げました、八千四百五十七万九千円から、二一%を差引きました、六千五百四十六万四千円という数字が、この國選弁護人費用として、一應の数字を出しておるわけであります。
  14. 小川友三

    ○小川友三君 関連して……一件七百五十円でやることは、それは昔の七円五十錢以下ですが、こういう三年以上の大きな事件に対して、或いは死刑も無期もありますが、不可能であると思います。ただ政府が八千四百九十七万円と言いますが、それは予算を取つての話で、通らなければ一錢も出ないのでありますから、この点については、先輩諸君と共に、愼重審議いたします。この点については、大体はそれだけ。
  15. 星野芳樹

    ○星野芳樹君 第三百九十條の控訴審の場合、裁判所が、被告人出頭が、その権利の保護のため重要と認めるときのみ、被告人出頭を命ずることができるのは、甚だ人権擁護の立場から不十分ではないかと思います。なぜ被告人或いは弁護人から出頭の要求があつたときには、これをしなければならないというようになさらなかつたのか。
  16. 宮下明義

    政府委員宮下明義君) 控訴審におきましては、三百八十八條規定がありまするように、「被告人のためにする弁論は、弁護人でなければ、これをすることでがきない」ことになつておりまして、被告人出頭裁判所が命ずる場合は、三百九十三條一項によりまして、事実の取調を始めまして、特に被告人の供述を聽いて見たいという場合には、この三百九十條但書の規定が働いて來るのでありまして、それ以外の場合には、被告人出頭を命じて、控訴審公判期日は、被告人出頭を求めましても、被告人はただその公判期日に出て参つて、公判延に立会つて、その審理の模樣を聞いておるというだけに過ぎないのでありますから、必ずしも弁護人乃至被告人側から、出頭請求権を認めるというまでの必要はないのではないかということころから、このような立て方をいたしたわけでございます。
  17. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) では爾余の質疑は次にこれを讓りたいと思います。  では次に鬼丸議員提案にかかります青年補導法案を議題に供します。
  18. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 只今議題となりました青年補導法案の提案理由を御説明いたします。現下の犯罪の激増振りは、曾てその例を見ないほどの状態であります。中でも青年の犯罪が極めて多いこと及び初犯の累犯の割合が戰前の三対七に頃べて七対三と逆轉いたしておりますことは、誠に民主日本の再興の上におきまして、大きな暗影を投ずる問題でありまして、誠に遺憾に堪えないところであります。この問題の原因は種々ありましようが、一般的に申しまして、現在我が國の置かれておりまする政治的、経済的乃至は社会最情勢、例えば國民道義の頽廃、政局の不安定物價の奔騰、失業の瀰漫、深刻な生活苦等を挙げることができると考えるのであります。殊に誤れる一部の指導者によつて惹き起された戰爭に駆り立てられて、終戰と共に家を、家庭を、職業を奪われた青年は、全く前途の目標を失いまして、そのまま社会悪の渦中に投ぜられ、遂に道を踏み誤つて罪を犯すに至つたのであります。このような事情によりまして罪を犯しまする青年に対し、直ちに刑を科しますることは果して適当でありましようか、そもそも罪を犯した者に対し刑罪を科する所以のものは復讐的又は應報的観念によるべきものではなく、社会的に犯罪を防衞すると共に、犯罪者を教化して正常な社会人として再出発せしめることにあるのでありまして、学者間におきましてもこうした考え方が支配的になりつつありますることは御承知の通りであります。併しながら飜つて我が國の行刑の現状は必ずしも満足すべきものではありません。その効果につきましても幾多の疑問の点があるのであります。ここにおいて行刑制度及で犯罪者の予防更生制度の根本的改善の必要が痛感されるのでありまするが、更に又刑を科しますることは、その者に前科の刻印を押することもなるのでありまして、社会の嫌悪を買つて結局再び悪の道に踏み込ませる結果となる虞れが多いのであります。このような現状から申しまして、前途洋々たる青年が罪を犯しましたる場合に、これを犯罪と社会悪の中から救い上げて正常な社会生活を営ましめますためには、直ちに執行楢予を言渡してそのまま身体の自由を與えることは累犯の虞れがなしといたしません。又一般の懲役刑を科することが眞に行刑の目的を達成する所以でもない場合が非常に多いのであります。ここに刑罰に代えまして、職業補導を中心といたしました適切な施設に收容して、正常な社会人として再生せしめる処分が絶対に必要であると考えられるのでありまして、本法案提出の理由も亦ここに存する次第であります。  法案の内容につきまして、簡單に御説明申上げます。法案は一、処分の性格、二、青年補導所の構成、三、補導及び処遇の内容より成つておるのであります。  先ず第一に処分の性格でありまするが、処分は手続その他につきましては刑罰に準じた取扱をいたしまするが、純然たる保護処分でありまして、刑罰に代えてなされるものであります。先に述べました本法案の目的から生ずる当然の帰結であります。  第二点の青年補導所の構成でありますが、これは法務総裁の管理に属する國立の施設でありまして、その運営に関しましては、青年補導所運営委員会を置きまして、所長の專断に陷らしめず、極めて民主的に運営する立前になつております。  第三に補導及び処遇の内容でありまするが、補導は必要な教養を施し、勤務で規律ある生活の下に主として在所者に適廳いたしました職業の補導を通じまして、正常な社会人として再生させるようにこれを行うのであります。その処遇につきまして重要なる事項は、補導所運営委員会の議を経ることにいたしまして、公正な取扱が行われるようにいたしてあります。  尚第一回國会におきまして提案いたしました際と内容の違つた点がございます。第一に仮退所の規定を削除いたしました点でありまするが、これは犯罪者の予防更生事業の全面的なる再檢討が目下関係方面におきまして考慮せられつつありまして、仮退所者につきましてはその制度にすべて讓ることにいたしたいと考えたのであります。第一に補導所には、この法律規定のみでなく、他の法律によつて適当と認めまする者をも入所せしめ得る途を拓いた点であります。これは、この施設を余するところなく利用することを期待した趣旨からであります。  以上青年補導法案の提案の理由につきまして御説明申上げましたが、何卒愼重審議の上速かに御賛同贈らんことをお願い申上げます。
  19. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 本案につきまして尚内容の逐條説明は明日に讓りまして、然る後に御審議を願いたいと思います。    〔「異議なし」と呼び者あり〕
  20. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 次に裁判官の判事事件の不当処理等に関する調査会を開きます。本調査会につきまして、先に松島丸事件につき、岡部委員並びに來馬委員の御出張を願いましたのですが、その出張の結果の御報告を願うことにいたします。
  21. 岡部常

    ○岡部常君 松島丸事件に関しまする裁判官の刑事事件不当処理等の調査に関しましては、來馬委員並びに本員が命を受けまして、六月十四日と十五日の両日、木更津市並びに千葉市に出張いたしまして、更にその補足的調査を行いました。その結果をここに御報告申上げます。詳細につきましては書面を以て御報告いたしますが、極くそのあらましを申上げたいと思います。  先ず日程を申上げますと、第一日、六月十四日には、松角檢事並びに石橋事務官の両人を証人として取調べました。又辛島判事、古賀判事に対しましては実情調査を行なつたのであります。第二日、六月十五日には、杉井卯之助並びに松島嘉久藏を証人として取調べました。又庄司久滿は参考人として取調べをしたしました。更に六月二十八日には最高檢察廳の竹内檢事につきまして実情調査を行いました。調査の場所は木更津市においては裁判所の廳舎、千葉市においては千葉刑務所内において行いました。調査の方針につきましては最高裁判所の「松島嘉久藏事件調査について」と題する報告書に基きまして先般当事件につき作成いたしました松島嘉久藏事件調査要領に基いたものであります。本件につきましては次の三要綱を中心といたして調査を行いました。その要綱は、  第一、本件に対する裁判所の國際的関係の認識について。  第二、裁判遅延の理由について。  第三、裁判が正当な事情の下に行われたかについて。 右の三要綱に基きまして次の事項調査いたしました。  第一、裁判遅延の理由。 その内訳といたしまして  (1) 捜査の経過  (2) 第一審裁判所の構成及び審理の経過  (3) 第二審裁判所の構成及び審理の経過  第二、本件に対する係判檢事書記の取扱は如何であつたか。  (1) 松角武告檢事について   (イ) 本件調査事情   (ロ) 区檢察廳に事件送致の経緯   (ハ) 略式命令による公訴提起の理由及び改めて公判請求の経緯   (ニ) 木更津支部檢察廳と千葉軍政部との打合せの事情   (ホ) 事件に対する認識の程度 について調べました。  (2) 木更津簡易裁判所辛島男司判事について、本件を千葉地方裁判所木更津支部移送の経緯 について調べました。  (3) 千葉地方裁判所木更津支部古賀清三郎判事について   (イ) 事件審理の経過   (ロ) 調書作成の遅延の事情   (ハ) 事件に対する認識の程度 について調べました。  (4) 千葉地方裁判所木更津支部書記石橋平八郎について   (イ) 調書作成遅延の事情   (ロ) 当時の事務の繁閑の状況   (ハ) 事件に対する認識の程度 について調べました。  (5) 千葉地方裁判所木更津支部上席判事については   (イ) 当時の事務の繋閑の状況   (ロ) 人員配置の状況   (ハ) 事件に対する認識の程度 について調ベました。  第三、関係方面の連絡の事情。   (イ) 檢察廳と関係方面との連絡事情   (ロ) 裁判所と関係方面との連絡事情 について調べました。  第四、古賀判事、松角檢事、被告人又はこれの属する会社との関係の有無については。   (イ) 判事、檢事と会社及び被告人弁護人との関係   (ロ) 庄司久滿 について調べたのであります。  この詳細は、先程申上げましたように、書面を以て詳細報告いたしますが、極く概括した調査の結果を申上げますと、裁判の遅延の理由につきましてはこれはこの事件には限つたわけではありませんが、実際上必ずしも完璧ではなかつた。相当事情もあることではありますが、少々時間が掛り過ぎたという非難は免れないと感じたのであります。  それから國際的関係、この認識につきましても詳細取調べましたが、我々が想像する以上にその筋との連絡は付いておつたように受取れるのであります。併しながらその後発展いたしました國際情勢等から見まるする、結果におきましては、必ずしも満点ではなかつたかた考えられるのであります。その点結果的に見まして、遺憾の点なしとしないと考えておるのであります。  併しながら最後の点でございます裁判が正当な事由の下に行なわれたか、この間に何らか疚しい不正のことでもあつたかどうかという疑念に対しましては、いろいろな方面から調査いたしました結果を綜合いたしまして、私共は何らここに疚しい点がなかつたという結論に到達いたしたのであります。以上でございます。
  22. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) それじや以上の御説明に対しまして、十分一つ御檢討を煩わしたいと思います。では本日はこれを以て散会いたします。明日午前十時から開会いたします。    午後零時十八分散会  出席者は左の通り。    委員長     伊藤  修君    理事            鈴木 安孝君            岡部  常君    委員            大野 幸一君            中村 正雄君            遠山 丙市君            鬼丸 義齊君           前之園喜一郎君            松村眞一郎君            宮城タマヨ君            星野 芳樹君            小川 友三君   政府委員    法務廳事務官    (檢務局刑事課    長)      宮下 明義君