○
政府委員(
宮下明義君) 第六章
書類及び送達という章は、
現行法の
書類と、それから送達の章を一諸に併せて
規定したのでありまして、その
内容につきましては大部分の
規定を
裁判所の
規則に讓りまして、重要な點だけを
法律に殘したわけであります。
從つて規定は
現行法よりも非常に簡單にな
つております。主な點を御
説明申上げますと、第四十
七條は
現行法を變えまして、
公判前の
訴訟記録の公開について
但書を設けて、公益上の必要がある場合には、
捜査官の判斷によりまして相當と考えられる場合には公開してもよろしいという
但書を附けたわけでございます。これは
國會法百四條等で、
國會が
捜査機關に對して
捜査中の記録の取寄せを求めた場合に、これに應じなければならないという
國會法百四條の
規定等の
關係を考慮いたしまして、その場合に
國會の要求が公益上の必要から相當という場合には、これに應じなければならないという
建前を明らかにいたしました。又
裁判所等が民事の
訴訟或いは行政
事件の
訴訟等で
起訴前の記録を取寄せるという場合も、適當な場合がございますので、このような
但書を設けたわけでございます。
四十
八條は
現行法と
趣旨においては異
つておりません。ただ
現行法のように、
公判調書の記載事項を細かくは書いておりませんが、すべてこれらの點は
規則に讓りまして、
裁判所の
規則で適當に決める。こういう
趣旨であります。
公判調書の整理期間も
現行法のような五日という畫一的な、而も
實際に行われておりません期間というものは
法律に
規定いたしませんで、
法律では、ただできる限り速かに整理しなければならないという
規定だけを設けまして、これも
裁判所の
規則によ
つて適當な實行可能な期間というものを決める
建前をと
つているわけでございます。
次に四十九條は、從來
公判調書は
辯護人のみが閲覧權を持
つておりまして、
被告人の閲覧權を持
つておらなか
つたのでありますが、
被告人に
辯護人がない場合に、
被告人に
公判調書を見せませんと、十分な、
防禦ができかねるというところから、
辯護人のない
被告人にも
公判調書の閲覧權を
規定したわけであります。而も
被告人が讀むことができない場合、或いは盲である場合などには、
裁判所に對して
公判調書朗讀を
請求することができる、こういう
規定を設けたわけでございます。
次に五十條の
規定は、新らしい
規定でありまして、この五十條及び五十
一條によりまして、
公判調書の正確性を擔保しようという
趣旨でできておる
規定でございますが、第五十條は、
公判調書が次囘の
公判期日までに整理されなか
つた場合に、
檢察官、
被告人又は
辯護人の
請求がありますると、
裁判所書記は、次囘の
公判期日の初めにおいて、又はその期日前の適當なる
機會に、前囘
公判調書の、證人の供述の要旨を告げなければならない。それで、その告げられた
内容に不服がある場合には、異議の申立をして、その異議があ
つたことを調書に止めて置く。これによりまして、この
事件が上訴された場合に、その
公判調書の記載の正確性というものが、上訴
裁判所において、爭があ
つたということがはつきりいたしまして、上訴
裁判所の注意を促し得るわけであります。
次に第五十
一條は、
被告人及び
辯護人兩方の出頭がなくて開廷した
公判期日の
公判調書は、次囘の
公判期日までに整理されなか
つた場合は、次の
公判期日の最初又はその前の適當の期間に、
被告人又は
辯護人に審理の重要な事項を告げなければならない。これによ
つて被告人の
防禦權を十分考慮してやろう、こういう
趣旨で新らしい
規定を設けたわけでございます。
次に五十
二條の
規定でございまするが、この
規定は
現行法の
規定を少し變更いたしまして、
公判期日における
訴訟手續であ
つて、
公判調書に記載されたものは、
公判調書のみによ
つてこれを證明することができるという
規定に改めました。
現行法では、
公判期日における
訴訟手続は、
公判調書のみによ
つてこれを證明することができるとな
つておりまして、
公判調書以外の資料によ
つて、
訴訟手續の正しく行われたかどうかということを爭い得るかどうかについて、學説においてもいろいろ
論議があ
つたのでありまするが、その點を解決する
意味におきまして、
公判調書に書かれておる
訴訟手続は、
公判調書以外の資料によ
つて爭い得ない。併しながら書かれていない事項につきましては、他の資料で爭い得るし、又その事實を證明することができるという
趣旨を明らかにしたわけでございます。この五十
二條の
規定は、
訴訟手續に關するだけの
規定でありまして、その
訴訟において行われました
被告人の供述の
内容とか證人の供述の
内容等は、この五十
二條の
範圍外でありまして、それは他の資料によ
つてその正確性を爭い得るのでという
解釋をと
つております。要するに五十
二條の
規定は
訴訟手續に關する限りの
規定であると、このように
解釋いたしております。
次は五十三條の
規定でございまするが、これは全く新らしい
規定でございまして、
被告事件がすべて終結した後に、その確定記録を
一般國民に公開する
制度を新たに
規定したわけでございます。勿論、記録の保存或いは
裁判所、檢察廳の事務に支障を生じてはなりませんので、その支障のない場合に
限つて、何人も
訴訟記録の閲覽を
請求することができるという
趣旨の
規定を設けたわけであります。而して第二項において、辯論の公開を
禁止した
事件の
訴訟記録及び
一般の閲覽に供しては適當でないと考えられる
事件で
禁止をしたもの、それらについては、特に
許可した場合でなければ閲覽を許さない。併しながら
日本國憲法八十
二條の第二項
但書の
事件は、政治的な
事件でありまするので、このような
事件は絶對に閲覽を
禁止することはできない、必ず公開するという
建前をとりまして、裁判の公明明朗を期待したわけでございます。
次は五十四條でございまするが、
書類の送達につきましては、
裁判所の
規則で或る特別の定めをいたすことを
豫定いたしまして、原則として
民事訴訟に關する法令の
規定を準用するということにいたしました。而して
現行刑事訴訟法で
民事訴訟法の送達に關する特例を設けておるわけでございますが、
裁判所の
規則においても、大體現行刑訴の特例と同じ
程度の特例が定められるというつもりでございまして、最高
裁判所の事務當局の方にも、その連絡をいたしております。且つこの中にごごいまするように、この
法律で、特に
刑事訴訟につきましては公示送達という
制度は認めないことにいたしました。この點は
被告人の保障を厚くするという
趣旨によりまして、
刑事訴訟法上は公示送達という
制度を全種廃止したわけでございます。
次に第七章、期間。これは
現行法と殆んど變
つておりません。ただ五十六條の附加期間につきましては、
現行法のように
法律で一律に定めませんで、
裁判所の
規則に讓りまして、その土地土地の具體的な
事情等を十分考慮いたしまして、
裁判所の
規則でそれぞれ決めるところに
從つて期間を延長することができるという
趣旨に改めたわけでございます。
次は第八章の
被告人の召喚、勾引及び
勾留の
趣旨を御
説明申上げます。この章におきましては、
規定の順序を
現行法と幾分變えておりまするが、大體の
内容は
現行法を踏襲いたしまして、細かい點におきまして、
憲法の
人權尊重の精神に從いまして、いろいろ修正はいたしておりまするが、大體の
内容は
現行法と大差ございません。尚、
被告人の勾引という
制度は、すべて
起訴後の
制度というふうに改めまして、
起訴前には
被疑者の逮捕ということはございまするが、
被疑者の勾引という
制度はなくしまして、從いまして勾引という
制度は、
被告人を審理のために
裁判所に勾引する
制度ということにはつきりさせたわけでございます。
五十
七條は
現行法の八十三條の相當する
規定でありまするが、特に
被告人の保護を考えまして、
裁判所の
規則で定める相當な猶豫期間を必ず置きまして、
被告人を召喚することができるという
規定に改めまして、この相當の猶豫期間というのは、
裁判所の
規則で、それぞれ具體的な場合に應じまして、適當な期間が定められることを期待しております。
次に五十
八條の勾引であります。これは
現行法の八十六條及び八十
七條に相當する
規定でありまするが、
現行法の
罪證湮滅及び逃亡、又は逃亡の虞れという
事由を
被告人の勾引原由とはいたしませんで、
被告人が住居不定の場合及び
被告人が正當な
理由がなく、召喚に應じないとき、又は應じない虞れがあるときと、この二つの
事由がある場合にだけ
被告人を勾引することができるという
建前に改めたのでございます。この
意味は、勾引という
制度は、要するに審理のために
公判廷に
被告人の出頭を確保するという
制度と考えまして、證豫湮滅の虞れがあるから勾引するという考え方は止めたわけでございます。要するに
公判期日に
被告人の出頭を確保するという
制度として勾引の定義を明らかにしたわけでございます。
五十九條は
現行法八十九條に相當する
規定でありまするが、
現行法においては
裁判所に引致してから四十八時間以内に訊問をすればよか
つたのでありますが、
改正案におきましては
被告人の保護を考えまして、引致後二十四時間と半分の時間に制限いたしたわけでございます。これによりまして、
裁判所側においては
現行法よりも時間的に可なり制限を受けるわけでございまするが、二十四時間の餘裕があ
つたならば、その時間内に
勾留状を發するか、或いは訊問を濟ませてしまうということができ得るということを期待いたしまして、このような
改正をいたしたわけであります。
次に第六十條の
勾留でありますが、これは
現行法の九十條に相當する
規定であります。
勾留につきましては、
現行法のいわゆる
勾留理由というものを改めまして、罪を犯したことを疑うに足りる相當な
理由がある場合には
被告人を
勾留することができると、ただに
犯罪の嫌疑のみを
勾留理由といたしまして、その半面、實質的に
勾留された
被告人の保護を計る
意味におきまして、
保釋或いは
勾留の取消、その他の
制度を設けましたことは、先に提案
説明において詳細
政府委員から申述べましたところでございまするので、ここでは省略いたします。
第六十
一條は
現行法の九十條に相當する
規定であります。
趣旨とするところは
現行法と變
つておりません。
第六十
二條は
現行法八十四條、八十
八條、九十
一條を整理して一ヶ條にいたしましたけで、
現行法と變りがございません。
第六十三條は
現行法第九十
七條に相當する
規定であります。その
内容においても
現行法と大差ございません。ただ召喚状の記載
内容といたしまして、
法律に列記する
事由の外、
裁判所の
規則でこれ以上に適當な事項を附加できるという
趣旨を明らかにいたしたわけであります。
六十四條は
現行法九十
七條に相當する
規定であります。この條文の
内容も
現行法と大差ございませんが、ただ勾引状、
勾留状につきまして、
改正案においては有效期間というものを
法律上明らかに記載することにいたしまして、その有效期間が過ぎました後は勾引状、
勾留状の執行に著手することができないで、その令状はこれを發した
裁判所又は
裁判官に返還しなければならないということを明らかにいたしたわけでございます。
次に六十
五條でございまするが、これは
現行法の九十九條及び八十四條二項、三項を一緒にいたしまして、召喚状を送達、及び送達に代る
方法について、一つの條文に纒めて
規定を整理したわけでございます。
次に六十六條は
現行法の九十四條に相當する
規定でありまして、
規定の
内容は
現行法と變りがございません。
次に六十
七條は
現行法九十六條に相當する
規定であ
つて、ただ
被告人を引致したときから二十四時間以内に、その人違いでないかどうかを
取調べなけけばならないというふうに、時間を
現行法の四十八時間の半分といたしました點が、先程の
一般の勾引状と同樣であるだけであ
つて、それ以外の點は
現行法と變りがございません。
次に六十
八條は
現行法百六條に相當する
規定でありまして、
規定の
内容は
現行法と變りがございません。
次に六十九條は
現行法の九十三條に相當する
規定であります。
次の第七十條は
現行法百條に相當いたしておりまして、その
内容につきましては
現行法と變りがございません。
七十
一條は
現行法の百
二條に相當する
規定であ
つて、
内容は
現行法と變りございません。
七十
二條は
現行法の九十
五條に相當いたします。
現行法においては、
應急措置法以前においては、
檢察官にも勾引状發布權というものを認めてお
つたのでありまするが、
憲法の
關係から、
檢察官が勾引状を發布するという
權限を全部否定することになりましたので、七十
二條におきましては勾引状の執行の囑託をするという
制度に改めたわけであります。七十三條は
現行法百三條に相當いたしまして、勾引状、
勾留状の執行
方法に關する
規定であります。
七十三條第三項は新らしい
規定でありまして、現在までは勾引状、
勾留状を必らず所持しておりませんと、その執行ができなか
つたわけでありまするが、一旦勾引状、又は
勾留状が發布されておりまする場合には、たといそれを所持いたしませんでも、一應
被告人を勾引又は
勾留いたしまして、その後に、できる限り速かに勾引状又は
勾留状を
被告人に示すという
制度にいたした方が、いろいろな點で便宜がございまするので、第七十三條第三項の
規定を新たに設けたわけでございます。この
規定が逮捕状にも準用にな
つておりまして、逮捕に際しましても、一通逮捕状が出ておりますれば、その警察等におきましては、全警察官に指令をいたしまして、逮捕すべき人間を逮捕させるという措置が講ぜられまするのでこのような
規定を設けたわけでございます。
七十四條は
現行法百
七條に相當しております。
七十
五條は
現行法百
八條に相當いたしておりまして、
規定の
内容も
現行法と變りがございません。
七十六條は
應急措置法第六條の
規定を更に敷衍いたしまして、整備した
規定で、
現行法にない
規定であります。
被告人を勾引したときは、直ちに
被告人に對して、
公訴事實の要旨及び
辯護人を
選任することができる旨竝びに
貧困その他の
事由によ
つて、自ら
辯護士を
選任することができないときは、
辯護人の
選任を
請求することができる旨を告げなければならないという
規定を新たに設けて、
被告人の保護を計
つたわけでございます。この
規定は尚
憲法の要求しておる
規定でございます。
次に七十
七條は、これも
應急措置法第六條の
規定を更に敷衍整備した
規定でありまして、逮捕又は勾引に引續いて
勾留する場合を除いて
被告人を
勾留するには、
被告人に對して
辯護人を
選任することができる旨及び
貧困その他の
事由により自ら
辯護人を
選任することができないときは、
辯護人の
選任を
請求することができる旨を告げなければならないという
規定を新たに設けたわけでございます。
次に七十
八條も新らしい
規定でありまして、勾引又は
勾留された
被告人は、
裁判所又は監獄の長、若しくはその代理者に、
辯護士又は
辯護士會を
指定して
辯護人の
選任を申し出ることができるという
規定を新たに設けまして、
被告人の
辯護人選任權を確保しようといたしたわけでございます。
次に七十九條も新らしい
規定でありまして、
被告人を
勾留した時は直ちに
辯護人に
被告人を
勾留したことを通知しなければならない。
被告人に
辯護人がないときは、その
法定代理人、
保佐人、
配偶者、親族等の中で
被告人の
指定する者一人に
被告人の
勾留の事實を必ず通知しなければならないという
規定を新たに設けまして、
被告人の保護を計
つたわけでございます。
次に八十條は、先程第四章
辯護の章の御
説明の際觸れました通り、
勾留されておる
被告人と、
辯護人以外の第三者との
接見又は
書類、若しくは物の
授受に關する
規定でありまして、
現行法の百十
一條に相當する
規定であります。そうしてこの場合には第八十
一條によりまして、
現行法通り逃亡又は
罪證隱滅を疑うに足る相當な
理由がある場合に、
檢察官の
請求又は職權で
接見禁止その他の
處分ができるという
規定を設けたわけでございます。
次に八十
二條以下の
勾留理由の
開示の
制度は、
應急措置法第六條第二項においてすでに認められておりました
制度を整備いたしたわけでございます。この
制度は
日本國憲法三十四條が要求いたしております
制度でありまして、要するに
勾留されている
被告人は
裁判所に
勾留の
理由の
開示を
請求することができる。これによりまして
被告人は公開の
法廷において
勾留理由の
開示を受けることができて、それによ
つてその後
保釋の
請求をするなり、或いは
勾留取消の
請求をするなり、適當な
防禦の
方法を講じ得るわけでございます。この
勾留理由の
開示につきましては、第八十
二條から八十六條までに可なり詳細な
規定を設けまして、この
制度が確實に
運用されることを期待いたしたわけでございます。
次に八十
七條でありまするが、これも新らしい
制度でありまして、
勾留の
理由又は
勾留の必要がなく
なつたときは、
裁判所は
檢察官、
被告人若しくは
辯護人等の
請求により、又は職權でその
勾留を取消さなければならないという
規定を新たに設けたわけでございます。これによ
つて、一應
犯罪の嫌疑によ
つて被告人を
勾留いたすのでありまするが、その
理由が
なつなつた場合、或いは
勾留の必要がなく
なつた場合に、
勾留を取消すということにいたしまして、實質的に
被告人の保護を圖らうといたしたわけであります。
次に八十
八條から九十四條までは
保釋に關する
制度でありますが、この
保釋制度につきましては、
現行法を更に一歩進めまして、
犯罪の嫌疑によ
つて被告人を
勾留する半面、
事件によりましては、
保釋を
被告人の
權利と
規定してその保護を圖
つたわけでございます。即ち八十
八條におきましては、
被告人だけでなく、その
辯護人、
法定代理人、その他の親族に對して、
保釋の
請求權を認め、第八十九條におきましては、第八十九條第一號乃至第五號に掲げる以外の
事件につきましては、
保釋の
請求があれば必ず
保釋を許さなければならないということにいたしまして、この場合には
權利として
保釋を
請求することができるという
制度を設けたわけでございます。併しながらこの
權利保釋の
制度につきましても、餘りに
被告人の
人權の尊重の言い過ぎますと、半面、治案維持という點につきましても、心配がありまするので、八十九條第一號乃至第五號という條件に當て嵌る場合に、
裁判所の裁量に委せまして、
裁判所の適當な判斷によ
つて裁量
保釋をいたすという
制度にいたしたわけでございます。
次に九十條はこれも新らしい
制度でありまして、
現行法では
保釋は必ず
請求に俟
つていたすとありましたが、
事情によりましては
裁判所に職權
保釋を認めた方が適當な場合もございまするので、職權によ
つて保釋を許すことができるという
制度を、九十條で新たに認めたわけでございます。
次に九十
一條は、
勾留による拘禁が不當に長く
なつた場合に、
被告人又は
辯護人その他親族等から請水があ
つた場合、又は職權で、その
勾留を取消し、又は
保釋を許さなければならないという
制度を新たに
規定いたしました。これは
日本國憲法三十
七條が迅速な公開裁判を受ける
權利があるということを
規定いたしておりまするし、又
憲法三十
八條第二項におきましては、不當に長い拘禁中の自白の
證據力を否定いたしておりまする精神を酌みますると、
日本憲法は拘禁が不當に長く
なつた場合には、その拘禁を解けということを命じておる
趣旨を考えまして、この九十
一條の
規定を新たに設けたわけでございます。然らば如何なる場合が不當な長い拘禁かということは、具體的
事件の輕重又はその
事件の難易等とも睨み合せまして、具體的に決定されなければならない問題と考えております。何ケ月ならば一律に不當な長い
勾留というようなことは言えないのではないかと考えております。
次に九十
二條は
現行法百十六條の第一項に相當する
規定でありまするが、この
改正案におきましては、
現行法上
裁判所がいろいろな決定をいたします場合に、
檢察官の意見を聽かなければならないという
規定が隨所にございましたのを、
當事者對等主業の見地から、
檢察官のみの意見を聽くという
規定を大部分削除いたしております。そして
裁判所が決定する際に
檢察官又は
被告人の意見を聽くかどうかということは、すべて
裁判所の
規則に讓
つたのでありますが、
保釋に關するものは特に愼重を期しまして、
檢察官の意見を聽かなければならないという
規定を九十
二條に存置いたしたわけでございます。
次に九十三條は
現行法百十六條第二項に相當する
規定でありまして、
内容は
現行法と大差ございません。
九十四條も
現行法と殆んど變りのない
保釋決定の執行についての
規定でございます。
次に九十
五條は
勾留の執行停止に關する
規定でありまするが、
現行法上は
勾留の執行停止と、その外に責付という
制度が
規定してあ
つたのでありまするが、
改正案におきましては、責付という言葉を止めまして、すべて
勾留の執行停止一本にいたしました。併しながら責付の
内容は
勾留の執行停止の中に繰り入れまして、
勾留の執行を停止する場合に、
被告人を親族、保護團體その他の者に委託し、又は住居を制限して、
勾留の執行を停止するという
制度に整理いたしたわけでございます。
次に九十六條は、
保釋又は
勾留の執行停止の取消に關する
規定でありまするが、これは
現行法と殆んど變りのない
規定であります。
次に九十
七條は、上訴の
提起期間内の
事件で、まだ上訴の
提起がない場合、及び上訴中の
事件で
訴訟記録が上訴
裁判所に到達していない場合について、どの
裁判所が
勾留を取消し、
保釋若しくは
勾留の執行を停止し、又はこれを取消すかということを
規定した條文でありまして、考え方は
現行法と殆んど變
つておりません。
次に九十
八條は、
現行法の
解釋といたしまして、幾分
解釋上、又
從つて運用上疑義がありましたところを明らかならしめる
意味において、新たな
規定を設けたのでありまして、即ち「
保釋若しくは
勾留の執行停止を取り消す決定があ
つたとき、又は
勾留の執行停止の期間が満了したときは、
檢察事務官、
司法警察職員又は監獄官吏は、
檢察官の指揮により、
勾留状の謄本及び
保釋若しくは
勾留の執行停止を取り消す決定の謄本又は期間を
指定した
勾留の執行停止の決定の謄本を
被告人に示してこれを收監しなければならない。」という
手續に關しまして、新らしい
規定を設けて、
解釋竝びに
運用上の確實を期したわけでございます。