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1948-05-26 第2回国会 参議院 司法委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年五月二十六日(水曜日)    午前十時二十九分開会   —————————————   本日の会議に付した事件裁判官刑事事件不当処理等に関す  る調査の件(尾津事件に関し証言あ  り)   —————————————
  2. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それではこれより裁判官刑事事件不当処理等に関する調査会を開きます。  今日御出頭願いましたのは、裁判所の処置について少しく調査することがありますから、その証人として御出頭願つた次第店ありますから、嘘偽りを言わないという宣誓書を各自御朗読願つて、御署名を願いたいと思います。では宣誓を願います。    〔総員起立証人は次のように宣誓を行なつた〕    宣誓書  良心從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 眞対 民治    宣誓店  良心從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 矢吹 正雄    宣誓書  良心從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 岡戸 竹治
  3. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 矢吹さんからお尋ねしますから、あとの方はちよつと控室でお待ち願います。矢吹さんどうぞお掛け下さい。嘘偽りがあると偽証の制裁がありますから、御注意申上げて置きます‥‥証人お年幾つですか。
  4. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) 四十五歳であります。
  5. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 刑務官をしていらつしやるのですね。
  6. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) ええ、そうです。
  7. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いつ頃からやつておりますか。
  8. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) 拜命大正十四年五月一日ですから、二十三年ばかりやつております。
  9. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 現在は何をおやりになつておりますか。職務‥‥。
  10. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) 刑務所の職務ですか‥‥戒護の方です。
  11. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) 拜命大正十四年五月一日で
  12. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 昨年の六月から九月の間は何をやつていましたか。
  13. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) 戒護の方の接見の係をやつていました。
  14. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは昨年の六月頃から九月十二日頃まで尾津が拘留をされまして、それに対して御関係になつたことがありますか。
  15. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) そうですね‥‥私共面会立会で大体一、二回立会つたと思います。
  16. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一、二回ですか。
  17. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) ええ、そうです。
  18. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一、二回人会われたときはどういう人ですか。
  19. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) 余り記憶ありませんけれども‥‥。
  20. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 弁護士ですか、個人ですか。
  21. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) 個人です。
  22. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういう人か覚えはありませんか。
  23. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) 奥さんだと思いました。
  24. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 弁護人か、子分の人、知人の人、そういう人に立会つたのじやないのですか。
  25. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) 知人の人に立会つたことはないです。
  26. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときの立会に際してお聞きになつたことで、覚えていることはないですか。
  27. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) 現在のところ記憶ありません。
  28. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 全然記憶ないですか。
  29. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) 記憶ありません。
  30. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津接見禁止になつてつたのじやないですか。
  31. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) 最初はなつてつたと思います。
  32. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その期間はいつ頃からいつ頃まで‥‥。
  33. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) それは分りませんけれども‥‥。
  34. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 接見禁止中に面会に來たことはないですか。許可を受けて‥‥。
  35. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) 私、記憶ありません。
  36. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 面会に來たときは尾津は体はどうでしたか。
  37. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) 体の工合ですか。
  38. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ええ。
  39. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) 体の工合は何でもなかつたですね。
  40. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何でもなかつた‥‥。
  41. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) 普通の状態です。
  42. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは接見禁止立会以外に何にもやらなかつたのですか。
  43. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) やりません。
  44. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津戒護や何かのことについて‥‥。
  45. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) 戒護といつて‥‥ただ夜勤のときちよつと立会いました。昨年の六月頃夜勤をやつておりましたから。
  46. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 夜勤中に尾津舎房を勿論見廻つて見たでしよう。
  47. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) 見廻つておりました。
  48. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どうですか、尾津のあれはどうでした。
  49. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) 健康状態ですか。
  50. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 夜勤中に見廻つて何か特段変つたことがありましたか。
  51. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) いや、別に変つたことはありませんでした。普通の状態です。
  52. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津横臥を許可されておつたのでしよう。
  53. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) 横臥を許可されておりました。
  54. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 夜苦しんでおるようなことはなかつたですか。
  55. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) そんなことは全然ありませんでした。
  56. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 夜眠られずに起きているようなことはなかつたですか。
  57. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) 起きているといつても、大体十一時頃まで起きていましたけれども、それ以後は殆んど寢ていました。
  58. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 寢ているのですか。
  59. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) はあ。
  60. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 覗いて御覽になれば、眠つているか、眠つていないか、分りますでしよう
  61. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) 分ります。
  62. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときに、あなたが巡視なさつたときに眠つているようでしたか。
  63. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) 大体寢ておりました。
  64. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 不眠で、ちつとも眠れんで困るなんということを言つておりませんでしたか。
  65. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) 言つておりませんでした。そんなこと一回も聞いたことはありません。
  66. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 病氣で唸つているようなこともないですか。
  67. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) そんなことはありませんでした。
  68. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 普通の状態つたですね。
  69. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) 普通の状態です。私の夜勤のときは‥‥。
  70. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 普通の状態において就寢しているわけですね。
  71. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) そうです。
  72. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どうも眠れんで困るからといつて、夜、夜勤の人に、巡視の人に訴えるようなことはなかつたのですか。あなたの担当のうちに‥‥。
  73. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) そんなことは昨年の六月以來一回もありませんでした。
  74. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう場合、夜眠れんとか、もぞもぞしているとかいうようなときには、何をやつているか注意されるでしよう。
  75. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) 注意しております。
  76. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本人から水を呉れとか、医者の薬とか、治療をして呉れとか、手当をして呉れとかいうようなことがなかつたですか。
  77. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) そんなこと一回もありませんでした。
  78. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは何時に交代なさるのですか。
  79. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) 只今は八時です。
  80. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その当時は‥‥。
  81. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) その時も八時です。
  82. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 朝交代なさるときに訴えたようなことはありませんか。
  83. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) 一遍もそういうことを聞きません。
  84. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一遍もそういうことはないですね。
  85. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) 聞きませんでした。
  86. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その他尾津について特段変つたことはありませんですか。
  87. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) 大体今申上げましたように私ら殆んど関係ないです。夜だけですから‥‥。
  88. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かお尋ねになることがありますか‥‥ありませんか‥‥それではどうも御苦労樣でした。それだけです。
  89. 矢吹正雄

    證人矢吹正雄君) 帰つて宜しいですか。
  90. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御苦労樣、御帰り下さい。    〔証人岡戸竹治君着席〕
  91. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 岡戸竹治さんとおつしやるのですか。
  92. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) さようでございます。
  93. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お年はお幾つですか。
  94. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 五十歳でございます。
  95. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御承知でしようけれども、嘘僞りがありますと、僞証の制裁がありますから、御注意申上げて置きます。  あなたと尾津君との間はどういう御関係ですか。
  96. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 私は尾津さんの店員でありまして、主人店員という関係であります。
  97. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは尾津組の副組合長をおやりになつてつたのじやないですか。
  98. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) ございます。
  99. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは今おつしやつた主人店員との関係と違うのでありますか。
  100. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) それは大体におきまして、あなた方の方で万事お分りだと思いますが、更に復習いたしまするというと、副組合長というものは、大体私が食品の方を担当しておりました関係上、他の問屋あたりと合うのに副組長という名称使つた方が、便利であるという、こういう目標で私が使つてつたものなんです。だから店員というものの順位から行きますと、一番上というような意味のものなんであります。併し実際面におきましては眞対民治君が全部出納から外交方面をやつてつたので、時に外渉関係に対して必要に應じて使用したという副組長ですね、そういう意味です。
  101. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、尾津君のところは、今仰つしやつた主人店員という関係の、個人立場の場合と、組の立場の場合と二つあるのでありますね。
  102. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) これは再三申上げておるのでありますが、裁判所でも‥‥。尾津組にはいわゆる稼業人マーケツト関係と二つあるわけであります。そこで今委員長殿が御質問になつておられる尾津組という、尾津組の主流をなしておるものは、今の侠客連ですね、私たちの場合はマーケツトを拵えた関係上、実業家連集つて團をなしておるものなんです。だから副組長というと誤解がありますが、これは、はつきりしておりますので、そうして尾津組と称するものの中に、尾津組マーケツトと、尾津組稼業人とこの二つあります。そうして私の方は前者に該当するわけであります。
  103. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの方は尾津組のものの中、営業関係の方の係ですね。
  104. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) そうでございます。
  105. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 時としては、外交の場合に、尾津組の副組合長という名前を使用する場合もあるけれども、本來は営業の方の主人店員との関係だと、こういうふうにおつしやるのでありますね。
  106. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) いや、今私の聞き違いかも分りませんが、今の尾津組ゴロタンボの連中の方のためにその副組合長という名義を使うのではないのであります。その点ははつきりお願いいたします。
  107. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると御商賣のために‥‥。
  108. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 商賣のため仕入れ関係のお偉ら方と会うために、一介の店員と称するよりも、副組長という名義を称する方が取引上有利であるというので、こういう立場上使つたので、そういうゴロタンボとは何らの関係がないのです。
  109. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、マーケツト以外の尾津組の方の親分子分というわけですね、その方はどういうふうになつておりますか。
  110. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) その組織はこれは盃というものをやつております。親分が盃を下げて、盃を下げなくても一應そういう仲間が團をなしておるわけであります。
  111. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは尾津君が直接支配しておるわけでありますか。
  112. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 直接尾津さんがやつておりまするし、その下を、マーケツトは、眞対君が露商の方の関係は牛耳つていたようですね。
  113. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その後、誰が牛耳つておられたのでありますか。
  114. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) その後はマーケツトが廃せられましても、半歳程は眞対君が露商の方をやつておりましたが、その後、私は露商の方はよく分りませんが、聞き及んだ程度で申上げますると、そうですね、河井だとか、小島、皆んな今來ておる眞対君の兄弟分ですから、その辺のところは詳細を欠くかも分りません、ただ、その底流は、流れが二つあつたことだけは間違いありません。
  115. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういう流れですか。
  116. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) やくざと今の我々の方の仲間、ただ尾津組という名称一つなのですが、内容において問答無用の型と商賣をやる方の側、そういうふうになつておりますのですが。
  117. 伊藤修

    委員長伊藤修君) やくざの方はどのくらいの子分衆、若しくは子分衆の中でも盃をやるのと、やらないのとありましようが、そういうのはどのくらいありますか、御記憶ありますか。
  118. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 私の見たところでは二、三十人じやないでしようか。
  119. 伊藤修

    委員長伊藤修君) やくざの方はどのくらいの
  120. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二、三十人ね、それは膝許の人ですね。それは自分周囲に始終おる人のことですか。
  121. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 始終周囲におらなくても、盃を頂載して、そうして方々へ行つておる人もありますので、大体において親分子分という名称を與えられた者は、私の知つておる限りでは二、三十人じやないかと思いますがね。
  122. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう人は一方の頭じやないのですか、二、三十人という人は‥‥。
  123. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) いや、殆んど頭じやないのです。
  124. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一朝事あるときには相当数の人が寄るんじやないのですか。
  125. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) さようなことはお目にかかつたこともありませんですから、果して召集が可能か不可能かということは現実には分りませんが。
  126. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 安田組との出入りのときはおいでになつたのですか。
  127. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 私おりました。
  128. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときには何か三百人くらい寄つたということですが…。
  129. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) さようなことはないですね。あの実情警察並びに裁判所の方でよくお調べのことと思いますが、私の知つておる範囲では、安田組の方から和田組の方に斬り込んで、そうして尾津組の方から和田組の方に應援が來たることを予想して、そうしてその流れ尾津さんの所へ、日は忘れましたが、何でも夜の八時頃ピストルを打込んだというので、抵抗はなし得なかつたのです。翌日警視廳の方から、警察から写眞班が來まして、あれを写して、そのときの実情はあるわけです。ことを予想して、そうしてその流れ尾津さんの所へ、日は忘れましたが、何でも夜の八時頃ピストルを打込んだというので、抵抗はなし得なかつたのです。翌日警視廳の方から、警察から写眞班が來まして、あれを写して、そのときの実情はあるわけです。
  130. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 結局血の雨を降らすこともなかつたのでしよう。手入れはなかつたのでしようけれども、その寸前まで行つたわけですね。
  131. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 正直にあの事件を解剖して見ますと、何ら対抗力というものは微弱だつたと私は思うのですね。
  132. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 無名が三百人づつ寄つたという話を聽いておりますがね。
  133. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) いやそれは違いますね。
  134. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 利害関係が何もありませんから‥‥。
  135. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どのくらい寄つたのですか。
  136. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 三、四十人じやないのですか。それは昭和二十一年の十一月の月末だと思つたですね。その話は昭和二十年十二月の二十七、八日頃の話なのです。
  137. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると尾津君の盃を貰つたという人は結局僅かのものですね。盃を貰つた人というのは、結局今あなたの仰つしやるのでは幾らもいないのですね。
  138. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 私が知つておる範囲では幾人もおらないのです。或いはもつと下げておるかも知れませんが、私に対しては必要がありませんし、私はそういうゴロタンボは適性でありませんので‥‥。
  139. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勿論あなたも貰つていないわけですね。
  140. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 勿論そういう無意味のものは‥‥。暴力否定を私はしておつたので、その実施のときにも親分に再三注意して、昭和二十一年の四月三十日の露商組合の理事長辞めるべしというのが私の主張でしたから‥‥。
  141. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君の兄弟分という人は相当あるのですか。
  142. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 私の知つておる範囲では七、八名ですな。
  143. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どんなような人ですね。
  144. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 淺草の芝山組、北海道へ行つておる小林平助星功、極東の関口愛治、向島の小笠原、名前分りません。その程度じやないですか。
  145. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 主だつた人はそのくらいですね。
  146. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) そうです。
  147. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君のいわゆる親分という人はあるのですか。
  148. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 尾津さんの親分という人は濫觴時代にはあつたでしようが、現在では家名を無視しておりましたから、いわゆる俺が関東一の親分だと呼称しておるのは、結局先代を認めないということでしようね。あれは飯島さんの小倉一家と、こう名乘つてつた。二代目か三代目かの尾津さんは子分です。ところが自分が盛んになつて來たものですから、今度は小倉を名乘らないで、関東尾津組と呼称したのではないかと思います。
  149. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、本來は飯島一家流れですね。
  150. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 出は‥‥。
  151. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 途中から親分になつてしまつたわけですね。
  152. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) そうでございますね。本家を凌駕したわけです。
  153. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本家は、今では現在では没落したわけですね。
  154. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) いえ、没落はしておりませんが、中堅どころで‥‥。
  155. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 名跡はあるわけですか。
  156. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 中堅どころで、飯島一家として存続しておりますけれども‥‥。
  157. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それを凌駕しておるわけですね、現在では‥‥。
  158. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) そうです。現在としましても、それは昭和二十二年の五月の二十六日以前の話ですね。尾津さんが檢挙されない以前の勢力下におけるところの比例です。
  159. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうようなふうだと、一朝事ある場合は、相当の人が寄り得る態勢にあるわけですね。
  160. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 一朝事ある時という、一朝の時というのは喧嘩を指しますか。
  161. 伊藤修

    委員長伊藤修君) やはり喧嘩というか、出入りをするとか何かでありましようが。
  162. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 誠に尾津氏に対してはお氣の毒ですが、尾津さんの人氣というのは、私はいつもこれは苦言を呈しておるのですが、そんなには誰も寄つて來んと私は思いますね。從つて客観的情勢から見て、尾津さんが自称するように、事あつた時、委員長のおつしやるように、出入りがあつた場合に何人集まるかということは、私は恐らくは保証の限りではないと思います。集まらんと思います。
  163. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういうわけでしよう。
  164. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) それは、やはり非常に親が親の分を盡さんわけですね。一貫してお分りでしようが、一年もこうやつてごたごたとしておるのですから、委員長殿始めお歴々にもお分りのことと思いますが、非常に親が親の分を盡さんわけですね。從つて子は子の分を盡せんという工合で、水も洩らさん態勢において、親子関係が結ばれるという、小説で見るような侠客氣質というものは見受けられませんね。
  165. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君は非常に怒りつぽい人じやないですか。
  166. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) はあ、完全でございます。完全に怒りつぽいようです。
  167. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 乱暴ですか。
  168. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 想像以上です。勿論これは普通の人が怒つた場合でも、狂人と人間の平常の差は紙一重ですから、怒つた人はすべて自分を失うのが常例です。それは、どういうところから起つて來ますかというと、我儘したいという氣持じやないでしようか。我々には、良心的にそれを抑圧する力が多大ですけれども、彼の場合には、怒つて乱暴をしてもよいのだというような一つ優越感を感じておるわけですね。それは腕力によるか何によるか分りませんが、何でも構わず怒つてしまう。從つて虎造の浪花節見たいに、白いものを黒いと言つてもこれを通すというところに駄々つ子ができ上ると思います。遺憾に思います。
  169. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、尾津君は、自分が怒れば何でも自分の思うように通るというふうに考えておりますか。
  170. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 考えておりますし、通します。
  171. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 実際思つた通り‥‥。
  172. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) はあ。
  173. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これは、通すということは、結局尾津君にそういう実際上の力はどうか知りませんけれども、そういう偉大な背景があるごとく世間に傳えられておるから、そういうこともやはり力をなすわけですね。
  174. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) さようではないでしよう。世間自分が買い被られておるということは、良心的に反省しておるのですけれども、もう一度親分子分という行き方を申上げますると、白いものを黒いと言つても通す、これなんです。それですから、自分の言うことは、善悪を問わず通るのだというような優越感的に考えられておられるのだと思います。
  175. 伊藤修

    委員長伊藤修君) けれども、まあ通される相手方から見れば、何かその人の個人の力とか、或いはその人の背景の力ですね。
  176. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 傳統の力でしようね。
  177. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 傳統の‥‥。
  178. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) そういう侠客傳統の力によつて、いわゆる絶対命令感でそういうふうに考えておるのですよ。聞くものが、たまたまこいつを絶対命令権のないところに発動した場合には誤解を招くわけです。例えば、先生尾津さんと会う場合、その時に自分子分に命ずるようなことを先生に申せば、先生は寄り付かないけれども、後日には分るが、その場合は発作的にそれをやらかすのですね。かような経緯です。
  179. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君は非常に財産作つたですがね。
  180. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 財産は作らなかつたです。内容分りませんが、私の見た眼では財産は皆目ないと思います。
  181. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 終戰以來めきめき財産作つたというのですが、
  182. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 作らないですね。作るだけの仕事をなすつておりませんよ。
  183. 伊藤修

    委員長伊藤修君) マーケツトとかいろいろの事業をなさつておりますから相当作つたと思いますが‥‥。
  184. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 作らないですね。それは税務署関係の者を呼び出せばはつきり分ります。それは微々たるものです。
  185. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ああいういろいろの事業尾津君の自分のものでしよう。マーケツトとかいろいろの事業をおやりになつて‥‥。
  186. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) それはその日稼ぎで、俗にその日稼いでその日に建設して行くのですから、ビジネス式の頭なんというものは誠に不謹愼な言葉で恐れ入りますが、彼は零です、私共の眼から見れば‥‥。ですから財産作つたという次第も、先生がどういうふうにして作つたのだということをお訊き下さればお答えできます。私総括的に申上げれば、彼は財政を建設する力はなかつた、こういうことは言えます。
  187. 伊藤修

    委員長伊藤修君) こちらからお尋ねしたいのは、終戰後どういうふうにあれを作つて來たかということを訊きたいのです。
  188. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 終戰後は調書でお分り通り初めは不法占拠の積りではなかつたが、事態が平常に帰ると同時に、いろいろの立法が現われ、或は臨時措置令が出るというので、それに順應して法規を尊重すべきところを歩む途を誤つてつた。それが先方の相手方にも絶対命令が貫徹するものと考えておつたわけであります。この現われが結局自分を誤つた。それがためにあの場所を借り入れる時に、何ら文献の交換がなかつた。それがために、あすこを告訴されたということは、昭和二十一年裁判所で分つたのですが、そうして葭簀張から始めて商賣をして、次に建築するという工合で、財産は元々ないから、金のできるわけがない、財産目の子勘定ならば直ぐ申上げられます。
  189. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その当時どれくらいありましたか。
  190. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 当時は一銭なしです。
  191. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう建物やなんか自分のものでしよう。
  192. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) ですから、一銭なしから商賣を始めて、資金の融通、資金の融通といつても表面化した資金の融通ではない。銀行から融通する或いは個人から融通するのでない、問屋さんの持つて來た品物を賣つて、次回の十日なら十日の支拂いまでの間にその賣上げが溜ります。これを活用したという範囲じやないかと思います。從つて当時は一ケ月六、七万円くらいの商いですから、七八千万円‥‥千二百万円くらいの商いじやないでしようか。
  193. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一ケ年に‥‥。
  194. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 微々たるものでありました。
  195. 伊藤修

    委員長伊藤修君) さつきのお言葉の中にもありましたように、法律を余り尊重しないようですね。
  196. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 完全に尊重しないですね。私完全にという言葉を特に委員長殿に念を押しますけれども、その点は非常に何ですね、無智と申上げたいが、何というか常識で判断できないわけですね。
  197. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 従つて警察や何かに対してもやはり強く自分の主張をするわけですね。
  198. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) それは結局警察の方で敬遠しておるのじやないでしようか。尾津さんが主張しないでも警察の方で何らか幽靈を見るように考えて敬遠するという行き方じやないでしようか。
  199. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 注意すべきことを注意しないわけですね。
  200. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) そうです。
  201. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今のお説のようなふうだから、建築物の一々許可が要りますね。
  202. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) そうです。
  203. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 建築法違反が七八件あつたのじやないですか。
  204. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 建築法違反が七八件あつたかというのですか。そんなものはないのです。以上三件です。
  205. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 三件あつたのですか。
  206. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) これは裁判所の昨年の八月頃の記録をお取り寄せになると、巨細に分ります。
  207. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それにはちつとも應じないのですね。注意を受けたけれども、應じなかつたのですね。
  208. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) そうでございます。
  209. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 無視していたのですね。
  210. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) そうでございます。
  211. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ、そんなような法律を尊重しないというようなことから、百崎という弁護士が事件を淀橋警察に告訴したわけですね。
  212. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) そうです。その内容は、百崎氏が告訴したという内容については、これはやはり弁護士として、法律家として作戰上の現われであるのです。民事ではなかなか進まないものですから、刑民両樣を併合して促進したわけです。これは專門家のよくやる手なのです。相手方の虚を衝いて刑民両樣を以て併合して有利に導く。だから第三者が公平に見ると、悪辣な手段とも言い得るのです。それが尾津氏の場合は完全に的中しちやつたわけです。
  213. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのとき、尾津君は何と言つていたのですか。
  214. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 告訴されましたのは、裁判所の記録で分つておりますが、昭和二十一年一月の二十日頃告訴しておる。ところが本格的に調べたのは半歳後ですから、緻密に調査が行われたわけですね。告訴に対しては、何とも申しわけもないのです。お調べに眞実にお答えするのは義務ですから、その義務の通りつたわけです。これはそのときの鈴木警部補だと覚えております。
  215. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは警視廳関係ですか。
  216. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) そうです。
  217. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その前に淀橋警察に告訴されておりますね。
  218. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 淀橋警察署では、告訴を受理はしましたけれども、本廳の方へ出して、淀橋署は取調べを行いません。
  219. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 行わなかつたのですか。一遍も行かなかつたのですか。
  220. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 呼出しがないから‥‥。本廳の方から直接‥‥。
  221. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これは淀橋署へ告訴状が出たということは知つてつたのですか。
  222. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 知らないと思います。私共もやはり世間の眼から見ますと、副組長とかなんとかいうと、とんでもないやつだと考えておられるので、被害甚大です。そういうわけで、尾津さんが本廳へ呼ばれるまでは、尾津さんに告訴をしたということを知らしめない方が有利だと考えたらしいです。それで鈴木警部が全部緻密に調査した結果、こういうことになつたのです。
  223. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それまでの間のことは知らなかつたのですか。
  224. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 知らないです。
  225. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうじやなくて、警察の方は、告訴を受けたけれども、尾津君に恐れをなしたかなんかで、よう手を着けなかつた尾津君と話合いでもあつて手を着けなかつたというわけではなかつたですか。
  226. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) そんなことはありません。ただ昭和二十一年の九月の十三日に仮執行をして來たのですが、民事の方が遅々として進まないので、告訴を用いたわけです。そういう結果ですから、今委員長殿の御質問になるようなことはなかつたのです。
  227. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かその告訴事件について、あなたに尾津君は相談したようなことがあるのですか。
  228. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 告訴事件に関してはありませんが、予めそのことのあり得べきことを私が予知して、人の所有権のことを侵害すれば、いずれにしても法規上の問題が起つて來る。そうして、その事前に向う樣の百崎氏と私が再三面会して、昭和二十三年つまり今年の十二月三十一日までは、地主側の方で無料で提供しよう。そうして借地権者並びに地主が十一名おるのですから、この人達が一尺五寸ずつ詰め、間口五間の奧行十二間半、これを尾津氏の新宿開拓についての功労賞として贈る、それだから昭和二十三年の十二月三十一日限り、無條件に引渡すことによつて、示談しないかというのが百崎氏の私に対する交渉でした。
  229. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それに対して尾津君は‥‥
  230. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) それに対しては、一撃の下に撃退しちやつたのです。怪しからんやつだと。その時にも、仮執行をなさしめたのは、岡戸が外部と連絡してマーケツトを横領する目的である、怪しからんやつだというので、大目玉を頂戴しまして、左遷されたことがある。そういうわけであつて、法律を無視しておるとか、法律の素養、常識法律もないということを、私が初め申上げたわけです。私は分懣に堪えないのです。
  231. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ、そんなような関係があるから、あなたに対しては、あまりそういうことは相談しないわけですね。
  232. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) いや、おつつかなくなれば相談します。ほかの者ではどうにもならないのです。
  233. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これは立入つてお尋ねするようですけれども、本件に対して、別に警察とか何とかへ積極的に働きかけたということはないですか。
  234. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) ないですね。必要としないのです。私は、合法的に、正攻法で行く人間ですから、警察を敵としたり何かして、非良心的な社会行爲をやるということは不利益であるし、事件が進みません。やはり正面からぶつかつて、そうして成功した後に示談するという程度の方がよいので、最初から無意味に必要以上に頭を下げるということはどういうものであろうか、仮に成功しましても、後日発覚することは、私の信念上、單に岡戸個人の作戰でなく、二十五年日蓮宗をやつておる人間としての私の行なつたことで、成らんということは絶対にない、こういう信念でやつておりますから、恐らく発覚する、良心的に苦しむようなことは、私は避けて來ておるわけです。正攻法でどこまでも行く。相手方に正面からぶつかるという方法をとつておりました。
  235. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたはそうですけれども、尾津君がその他の者に命じて、そういうことを‥‥。
  236. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) これは併し意識上の白痴的の考えで交渉しないというのは尾津さんでしようね。何ら指導性のない方法によつて、不文律の憲法で進むということが尾津さんの行き方ですから、警察如きは何者ぞという行き方ですからね。
  237. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 警察みたいなものは眼中にないわけですね。
  238. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 私の忖度する限り、ないようですね。
  239. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 從つて、特に警察に働きかけて何かするとか何とかいうことはないわけですね。
  240. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) あり得ないですね。向うで、警察の方で相手にしないです。表面ではこういうことを言つておりました。警察官にしろ拘置所にしろ、裁判官にしろ、後ろの方でいろいろ強権を発動して、尾津さんに対しては、例を挙げますと、特別の扱いをしておるように見受けると、拘置所ではこれを戒護上必要であるという名目でやつておるけれども、後ろの方では強権を発動しておるのだということが、尾津氏に対する処置法だから、これは例外の処置法ですね。
  241. 伊藤修

    委員長伊藤修君) さつきの告訴状が出る前に、マーケツトで賣られる品物の関係で、配給統制規則違反、そういうような問題で、淀橋署でごたごたしたことがあるのですか。
  242. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) ちよつと聽き取るのが私に不明瞭なんですが、もう一回一つ
  243. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 告訴状が出た前後、その頃に、マーケツトで取扱われる品物か何か存じませんが、配給統制規則違反の事件で淀橋署との間にごたごたしたことがあるのですか。
  244. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 私の知つておる範囲では一回ありますがね。
  245. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはどういう形でですか。
  246. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 私の担当部門の「いか」ですね。食べる「いか」、魚の「いか」ですね、あれをなんですわ、外の者は伊東から持つて來まして、前に並べて賣つてつたわけです。これが價格違反に問われまして、そうして処分されたことがあります。
  247. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 処分済みになつたのですか。
  248. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) はあ。
  249. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 処分済みになつたのですか。
  250. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) これが複雜経奇を極めまして、調査の資料もないから、放つてありますけれども、一遍行政処分が済んだのですが、ところが更に二世のM・Pがやつて來まして、又再檢を行なつた、そうして警察署の方でも一應在庫品を持つて、正規のルートに乘せたのですから、もはや必要がないというので勘弁をする程度で、一般経済の取締の当時の状況があつた。それを今度はM・Pの方でやかましいことを言うものですから、又結局再燃いたしたわけでありますが、この事件が起きて、誰も行く者がないので私が指名されたことがある。その程度です。
  251. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これは警察との間ではないのですね。
  252. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 警察です。
  253. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 警察ですか。
  254. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) はあ。
  255. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 淀橋警察
  256. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) そうです。
  257. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だから、結局警察や区役所が、尾津君をこわいと思つたか、どう思つたか知りませんが、触らぬ神に崇りなしというので、少々の違反やなんか見逃がしておるという傾きじやなかつたですか。
  258. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) その辺のところは分らないですな。これは尾津氏の批評は、私か個人の観察ですから或いは親分が又怒るかも知れませんが、当人の見方はどういうふうであつたかということは、私と一致しておるかどうかということは、恐らくは私には断言できません。
  259. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると尾津君が鈴木警察部補ですかに取調べを開始されて、留置されるということが予知しておつたのですか、もう。
  260. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 取調べ中には身柄を拘束されるということは予期していなかつたと思いますね、はあ。
  261. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、予期に反して拘束されたわけですね。
  262. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) そういうふうらしかつたのですね。
  263. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから拘束されてから、どんな運動をされたのですか。どういう手当をされたのですか。
  264. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) ええ。
  265. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 拘束されてからどういう手当をされたわけですか。
  266. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 警視廳‥‥
  267. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 警視廳でなくて、あなたたち家に残つた者として。
  268. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 尾津さんに対してですか。
  269. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ええ。
  270. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 尾津さんに対して手当は別にありません。
  271. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 弁護士に頼むとか、いろいろな方法を講じなくちやならんのですが、そういう方面に対してはどういう手当を。
  272. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 手当とは事柄が違います。我々の方としては、刑事訴訟法に基くとか、民事訴訟法に基くとか、それに対する準備だから、手当というと、何か運動したことに当るけれども、ただ手続をやる意味で弁護士を頼んだ。それから尾津さんが入獄後におけるいろいろの営業方面の改革とか、そういう方面をやつたわけです。
  273. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ営業方面のことは別といたしまして弁護士を頼んで‥‥、弁護士をお頼みになつたのですか。
  274. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) え、弁護士は頼みました。
  275. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたがお頼みになつたのですか。
  276. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) いえ、奥で‥‥
  277. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 奥というと‥‥
  278. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 奥というと尾津さんの奥ですね。それに当時の事情は非常に複雜しておりましてね、何をするにも、私には一銭も自由にならんで、金庫は眞対が押えておるし、銭の出し入れは、尾津さんが引かれた後は、奥で牛耳つてしまつたから、金銭のないところに運動は起りませんから‥‥。一應この問題は上條さんに頼みまして、そうして上條さんの‥‥私の頼んだのは上條さんに‥‥それから当時の人は皆行つちまつたので、余り記憶にありませんがね、上條さんだけは、これは顧問弁護士ですから、これに一應引かける日にも立会つて貰つたわけであります。最初は上條さんと外二、三の弁護士でしたが、その後、森山弁護人とか、又その後清原弁護人というものが登場して來たのであります。
  279. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは誰が頼んだのですか。
  280. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) それは奥で頼んで、それについては上條弁護士が私に文句を言つたことがある。主任弁護士の私に相談しないで、それで飛び入りを頼んでは困るということがありましたが、経緯がありましたが、どこまでも円満にやる意味において、奥で頼んだものだから円満に御努力を願いたいと取りなしたことがありますがね。
  281. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その当時‥‥。
  282. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) はあ。
  283. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 事件は勿論公判に廻つてからのことでしようが、事件になるまでは、誰しも先ず以て本人の身柄を釈放することに努力するものですがね。
  284. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) そうです。
  285. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうようなことについて、あなた達は御相談になつてわけじやないのですか。
  286. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 私は正攻法で行くのだから、奥でやるように、やつたか、やらないか分りませんが、奥で期待するような成績は挙らなかつた、成績が挙らなかつたということは、早く身柄を引出すことを多く私はやらんものだから、正攻法で行くのです、裏の方から行つても、一銭もないのだから、やりようがありませんから。まあお願いしますと言つて頭を下げる程度でしたから、思うように行からな。それで当事から‥‥今度は奥の方でごそごそ頼んでおつたのが森山さんという方、森山弁護人、それからその後出て來たのが清原さん。
  287. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 清原‥‥
  288. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) ええ。
  289. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ、そういう人に特にそれを頼んだわけですね。奥の方で‥‥
  290. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 勿論頼んだと思います。
  291. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは元林弁護士を知つておりますか。
  292. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 二回程会つております。
  293. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 元林弁護士とどういうような最初の話だつたのですか。
  294. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 元林弁護士と知合いになりましたのは、元林弁護士は奈良縣の人だそうであります。奈良縣の人で、これはその前に経緯があつたらしいのですが、弁護上の経緯でなく、問題の経緯でなく、露商組合関口愛治さんの知合いで、尾津さんと知合いになつたらしい。その人がたまたま東京駅から電話を掛けて來て、本宅の方へ電話を掛けて來まして、それで、こういうことを申込んで來たらしいのであります。そのときに、奥さんが自動車で行つたらしいが、お会いができなかつたので、その後事務所の方へ電話があつたと思います。そして事務所を通じて私は知合になつてのであります。
  295. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは本件の前のことですね。
  296. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 本件中。
  297. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本件中‥‥
  298. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) そうです。
  299. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで、あなたが会われてどういう話があつたのですか。
  300. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 私と会いまして、保釈の方法で、合法的にやる方法がある。これについていろいろ相談をしたいから、こういうふうで相談がありましたので、相談といつて、その間に何等いろいろの芝居がかつたことはなかつたのですが、奥へ話しましたところが、元林さんという人は大嫌いだ、こういう返答があつたものですから放つてつた。そうしますと、その後、五日程経ちまして元林さんから電話がありまして、小菅に行つて來た、小菅を行つておやじさんに面会して來た、それで弁護人を依頼された、こう言うておりました。弁護人を依頼されたならば、あなたに委任状を書いた筈だから、それはどうしたと言たつら、判こがなかつたから押さなかつた、それならば拇印でもよいじやありませんかと突つ込みましたら、そこまでに行つておらなかつたというお話でした。
  301. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは二回ですか。
  302. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) もう一回あります。
  303. 伊藤修

    委員長伊藤修君) もう一回、その次は。
  304. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) もう一回は、その打合せについて、いろいろと便法があるし、便法があるといつても、あなたの便法というものは、どの程度の便法であるか、相手方を買收するとか、何とかいうことには僕は不贊成だし、又あなたが幾ら骨を折つても金は一銭も出せません。そういう相談では駄目だ。併し奈良縣で立候補をした際には非常に尾津さんにはお世話になつておる。こういう経緯があるので、今度は銭金ではなく、献身的な努力をいたします。何とか恩返しをするにはこの際以外にないと存じ上げますというので、その日は丁度私が都合が悪くて行かれませんでしたから、翌日の午後二時に日比谷の陶々亭にお出でを願いたいというのでありました。そこで今申上げましたように、何んらのことが起りましても、こちらの方に彈丸がないのですから、頼む、頼まんということになれば、奥の意見もあるからして、そのときに、奥さんをお連れして、日比谷の陶々亭に私が罷り出た次第です。
  305. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときに、どういう話があつたのですか。
  306. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) そのときには金額のことは何にも話しませんでしたが、すでに親分の方が、前の仁義上の経緯があるので、元林氏を頼むべからずというふうになつたつたらしい。そこで、どうも元林氏の言つておるところは、不審の点があるから、殊に親分が元林氏を頼むべからずというような意見だから、この際あつさりとお断りした方がいいでしよう。こういう奥さん意見ですから、いずれにしましても、向う樣で好意的にお話し下すつておるものを、木で鼻を括つたように、もうあなたを頼まないと言うことは、私の性格上できないから、とにかくあなたと一諸に行つて、そうして元林さんにお会いして、そうして遠廻しにお断りしようというので行きまして、陶々亭で、元林さん、あなたの前では言いにくいけれども、親分があなたを弁護岸に頼まないという意見だから、この際は手を引いて貰いたいということを申述べて会見が終つた
  307. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その第一回‥‥三回お会いになつたそうですが。
  308. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) ええ、三回。
  309. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 第一回のときか、第二回のときか存じませんが、関係方面に歎願書を出すというような趣旨の話はなかつたのですか。
  310. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) どこへですか。
  311. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 関係方面へ‥‥、或る方面へです。
  312. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) そんなことはなかつたですなあ。
  313. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう話はなかつたですか。
  314. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 歎願書は私共の方で別に作つておりますから、敢て元林さんの應援を必要としない、私に関する限り‥‥。ですから元林さんの方はそういうわけで辻褄が合いませんから、奈良縣事件をお話し申上げましよう。ちよつと二、三分で済みますから。それは内容は分らないのですけれども、始めて私は聽いて知つたわけです。それは元林さんが予審刑事をしておられるときに、奈良縣知事に立候補をしたわけです。ところが元林氏は、委員長も御存じでしようけれども、元林氏は小さいときに東京へ來て、そうして学校を行つて判事になられたために、奈良縣に地盤がないわけです。そこで、警視廳の、名前は忘れましたが、或る役人が局長の関口さんと懇意なので、予審判事の元林氏が奈良縣から立候補するについて、地盤がない。何とかならないかということを警視廳の役人に頼まれて、そうして関口が或る顔役を、奈良縣の人を紹介した。それが縣知事の立候補の段階です。然るにみごと落選しまして、そうしてその紹介をした人が代議士なんですよ。今でも現代議士になつていますが、その代議士が、それでは私は奈良縣知事の現職知事から頼まれておるけれども、仁義上、元林氏を推そう、だから、私の所有権に対するものに対しては、大体縣内におけるものは、特別あなたに全部入ると思う。そうしてしたのですけれども、不幸にして落選した。ところが、その人は、応援をした人は、代議士に立候補しておるのですから、そこで縣知事に落選するや、飜つて直ぐに應援して呉れた代議士の地盤に切り込んだわけです。そこで依客連が怒つてしまつて、犬猫にも劣つた奴だというので、これが元林さんを信用しない動機なんです。ですから、尾津さんが怒つて、そういう犬猫にも劣つた奴だと言つておるのは、そういう動機を捉えて言つておられるのですから、もともと元林さんを頼むという意思は初めからなかつたと思うのです。それが元林さんを信用せざる、頼まなかつた原因です。
  315. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何度かあなたはお目にかかつたのですね、その間に‥‥。第二回目か存じませんが。
  316. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 第二回目に事務所に元林さんが訪ねて來た。
  317. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その時の話か存じませんが、百五十万円程要る、運動するのに‥‥。
  318. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) そんなことはない。そんなことは断じてございません。私が面会した範囲内では‥‥。百五十万円とそんな薄呆けたことはありません。
  319. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それを負からんか、百万円くらいにするというような話がなかつたですか。
  320. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) そんなことは断じてございません。但し今の経緯上は、私の知つていない方法で行われておるらしいですから、そこで語つたということは別ですよ、この点を一つはつきり御記憶願いたい。
  321. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたがおる時はそういう話はなかつた
  322. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 百五十万円とか、何か夜店の物を値切るようなことは、仮にも天下の予審判事を勤めた弁護士であるから、左樣なことを言わないと私は常識で信じております。從つて話もなかつた
  323. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 奥ではあつたかなかつたか、それを知らんですか。
  324. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 奥では面会をせないようですが。
  325. 伊藤修

    委員長伊藤修君) しない。
  326. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) ええ、それは一應お取調べ下されば分りますが。私の診断では元林氏がそういう嫌悪の立場であるから、奥に引見してそういう相談をすることはなかつたと思います。
  327. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 元林さんが檢事総長と面会をして來たというのは‥‥。
  328. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 元林さんが独断で刑務所でお会になつたらしい。
  329. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 檢事総長に尾津君の保釈のことで頼んだということはなかつたですか。
  330. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) なかつたですな。
  331. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなた達も‥‥。
  332. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) はあ、私はその力を信じていないし、それまでに運動する段階に到達していないと自分で決めておりますから、仮にそういう人があつても私は信じません。意味がないです。
  333. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 松本判事に非常に運動して來てやつたという話は聽かなかつたですか。
  334. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 聽かなかつたですな。松本判事殿に運動したということは聽きませんですな。
  335. 伊藤修

    委員長伊藤修君) けれども、元林さんが特にそうやつて自分が一生懸命にやつてやろうというのだから、一生懸命にやつたというか、何か実績がどういうものか、あなたにお話にならなかつたですか。
  336. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 実績は何ら示すことはなかつたですが、運動してやるということは、あなた方が聽かれまする所の運動方法であるかどうか知りませんけれども、運動してやるということは言いました。
  337. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 具体的にどういうことをしてやるということは言わなかつたですか。
  338. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 具体的にはどの方法で運動するということは言いませんでしたが、何らかの方法によつて運動してやるということは言つておりました。前言を繰返すようですが、尾津さんの肚の中に面白く思つていないにも拘らず、非常に恩願を感じておるからというような意氣込みでございました。
  339. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君と元林さんの思いは違うようですね。あなたのおつしやる通り、先程の奈良縣の立候補当時の経緯もありますから、尾津君の方では快く思つていなかつたらしい。
  340. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) はあ、何か利害関係は共通のようですか知りませんが、犬猿の樣相でした。
  341. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは、尾津君が釈放されて、一時出て來たことがありますですな。
  342. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) あります。
  343. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その時は九月十五日ですけれども、尾津君と一緒に自動車で葭町の小吉さんの所に参りまして‥‥。
  344. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 参りました。
  345. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのまま車で三河島の工場へいらつしやつたのですね。
  346. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 私だけ。
  347. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたと事務員の人が一緒に行つたのではありませんか。
  348. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 私だけです。
  349. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたともう一人乘つてつたのではありませんか。
  350. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) いや、私だけです。
  351. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 三河島へいらつしやつたのは、何の用事で三河島へ行かれたのですか。
  352. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) それは三河島のみなと工場、軽輪車の工場ですが、いろいろ経営難に陷つているのと、親分が主張しておるのとみなと工場で主張しておるのとは違うから、そこで雨が降つておりましたから、私は車をお借りしまして、三河島の工場へ行き、みなと工場の工場長に、明日九時までに東大病院の病室へ御出張下さるようにという連絡を取りまして、葭町の小吉さんの所へ車で行つたことは間違いありません。
  353. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾久の尾竹橋の工場というのは、尾津君が関係しておるのですか。
  354. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 尾久の工場ですか、それは軽輪車を尾津組で買つたのですから、山崎という工場長が出ておりますから、それははつきり分ります。
  355. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 帰りに又再び小吉さんの所に寄られたわけですね。
  356. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) それはその車を持つた行かなければ、返せないですから。
  357. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのとき何かお話なさいましたか。
  358. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) それは、お説のごとく親分言つておることと、みなと工場の言うことが違うから、明日、工場長が病院に参りまして親分面会なさるそうですから、と報告しました。
  359. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときに座敷へ上つたのですね。
  360. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 上りました。
  361. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのとき誰がおつたですか。
  362. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 尾津さんと小吉さんと並んでおりました。誰もおりませんでした。そのときには上條氏も一緒でございまして、工場へ行つたのは違いますけれども、上條氏も一緒です。
  363. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが再び帰られたときにはおりましたか。
  364. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) おりませんでした。
  365. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 再び帰られたときに、小吉さんと尾津君だけでしたか。
  366. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) そうです。
  367. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 座敷も片附いちやつたのですね。
  368. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 片附けてあつて、何もそこらへ散らばつているような樣子はなかつたです。これは恥かしい話ですが、盛んに肩を揉ましておつたのです。
  369. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 別に宴席やなんかも片附いておつたわけですね。あつたのですか。
  370. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 私が行つたときには、何も並んでいませんでしたが、酒を飲んだのではないでしようかな。上條さんが飲んだか小吉さんが飲んだか分りませんが、私は御馳走にならんから、飲んだところは分らんけれども。
  371. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 帰りに自動車で一緒にお帰りになつたのですか。
  372. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) それは病院の佐々博士との約束があつたから、公認として外出することは許せないが、併し人間だから運動させることは拘置所でも刑務所でもあるのだから、運動の範囲内で外出する分には差支えないということで、私が佐々博士に承認を得てお供したのですから。
  373. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、そのときに酒飲んでおるらしいですか。
  374. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 飲んでおつたらしいですね。
  375. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君はどのくらい酒飲みますか。
  376. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) まあちよつと一升ですね。
  377. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 酒の上は悪いですか。
  378. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 酒を二、三合飲むと、非常に大雄弁になるのです。眞の雄弁でなく、大雄弁になるのです。まあ五合くらい飲んで來ますと、非常に常識を逸脱するような状況になつて來ましたね。大体二、三合飲んだ時分には、一番雄弁になられるらしいです。
  379. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君は病院でも酒飲んでおつたようですが、どおでしよう。
  380. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 病院では、私が見ておる範囲では飲みません。病院で酒飲んだとは考えられませんですね。入院したといつたつて一畫夜ですから、入れた連れてつたですから、そんな余裕はないです。十五日に入れられて、十六日の午前中には警視廳に又持つて行つちやつたのだから。
  381. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君の交際の範囲は、まあ事業家の主だつた人とか、或いは政治家の主だつた人とかいうので、あなたの御存じの方はどんな方ですか。
  382. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 余りよく知らないですね。私が二、三紹介した方もありまするけれども、向うで私に叱言を言つて離れてしまうから駄目ですわ。逆に私は面罵されてしまうような立場になつてしまうから駄目ですな。
  383. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君はよく政治家の違い人の名前を言うそうですが、誰それ大臣に会つて來たというようなことをよく言うそうですが‥‥。
  384. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 我々前では言わんですね。
  385. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どんなような人と交際があるように‥‥まあ交際の程度にまで行くのか、或いは尾津君が独り善がりで言つておるのか知りませんが‥‥。
  386. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) まあ衆議院議員で立候補した当時に、たまたま逆に見せて貰つた方でしよう。おえら方に会つたのでなく、おえら方の方が尾津さんに見せたということで、この立場上知り合つて、その人達の名前を言う程度ではないでしようか。例を挙げますると、楢橋先生に会つたと、彼はちよつと見どころがあるというような状況ですな。石橋湛山に財政経済方面も一席やつたら、彼は感服したと、こういつたような調子です。そういうことは私は好まないです、人間の馬鹿と人間の計り方を知つておりますから。人間の逸脱したことは、メートルを当てますと、ここまでは馬鹿、ここまでは利口ということが分りますから、そういうことは好まないです。
  387. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、政治家で尾津君の口にしておつたような人はそんな程度ですか。
  388. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) まあしばしば口にしますけれども、余り関心を持ちません。私興味を感じませんからね。
  389. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 外に何かお尋ねがありますか。
  390. 小川友三

    ○小川友三君 今、証人の御発言の中で、怒りつぽい、想像以上であるということを力説せられたのでありますが、いわゆるあなたのお言葉使いをそのまま利用すれば、侠客である、尾津組の首領が侠客であるというようなことでありましたが、こういう人々が、今のお話から想像すると、法律を無視する行爲を敢てやるというわけでありまして、それで二、三十人の人々が尾津さんに盃を返しておるというようなことで、こうした人々の氣持は、尾津さんが怒りつぽいと、何回か実例を一つ示して頂きたいと思います。
  391. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 怒つた実例は、例えば無理なこと、相手方にはでき得ないような無理なことを、無理でないと尾津さんが命じたときに、それが完全にできなかつたときに‥‥その実例を申上げますか、或いは外のことでも経驗がありますが、お祭のときに、新宿復興祭のときに、山車を出す、ところが復興祭の日に出すべき山車が、尾津さんが命令したのと違つでできちやつたのです。ところが、それが翌日の九時までに間に合わないから、それに間に合わないというので、どこからかお帰りになつて來ましたときに、大いに怒られちやたつのです。それは無理なことです。夜明ししても間に合わないものを拵えろと、こういう命令を出すのです。無理なことを命令して、それが履行できないというと怒るという実例であります。
  392. 中村正雄

    ○中村正雄君 証人にお尋ねしますが、証人尾津君と知合いになつて事情はどうですか。
  393. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) それは、私は元、尾津さんと知り合いになつたのは、たまたま尾津さんと私前に知り合いになつた動機がありましたのですが、その後、私は学校に行つておりましたので、二十年間程会わなかつた。御承知の通り終戰という大難関に逢著したものですから、自分がやつておりました東京金属工業所という会社の事務をやつておりましたが、辞めたわけでありますが、新宿方面にたまたま参りますと、尾津さんが盛んにやつておる。まあ好奇心にかられて一度お寄りしたわけでありますが、よく訪ねて來て呉れた、そこで私が頼まれた仕事がある、それは警察から裁判所を一貫して縷縷私が説明して、証言は誤まりはありません。それは蛤を浦安漁業会から尾津組に賣つて呉れという話をされましたので、尾津さん、今浦安の漁業会の方から、統制も摘廃されたし、それは今のような統制撤廃でなく、当時完全に撤廃されたものですから、蛤を買つて呉れということを浦安漁業会から言つておるから賣つて呉れないか、それは結構だというので、蛤を浦安漁業会から尾津組に入れる経過によつて知り合いになつた、それが尾津組に入る始まりでありました。
  394. 中村正雄

    ○中村正雄君 陶々亭で元林と会うときは、奥さん同行されたわけですね。
  395. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) そうでございます。
  396. 中村正雄

    ○中村正雄君 奥さんと元林さんと話しておるときは、始終おられたわけですか。
  397. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) そうです。
  398. 中村正雄

    ○中村正雄君 そのときに奥さんには、元林に対して金額の点について話があつたわけですか、お聞きになりませんか。
  399. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 金額の話はなかつたのです。
  400. 中村正雄

    ○中村正雄君 あたなと奥さんと‥‥。
  401. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) すでに陶々亭に出張るときに、岡戸さん、断つて呉れというのが始まりですから‥‥。
  402. 中村正雄

    ○中村正雄君 元林さんから金額の点は言わなかつたわけですね。お聞きにならなかつたわけですね。
  403. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 言わなかつた。その点一つよく記憶をお願いしたいと思います。行くときに断わる目的で行つたのですから、元林さんは知らなかつたと思いますが、お断りを差上げたのであります。
  404. 伊藤修

    委員長伊藤修君) もう一点お尋ねしますが、あなたは尾津君と面会されたときに、桔梗寮の連中を取締つて呉れ、こういうようなお話があつたわけですが、その桔梗寮というのはどういうものですか。
  405. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) それは僕は困つてつたから再三言うたかも知れませんよ。桔梗寮を取締るということは、我々の手に負えないから‥‥。
  406. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 桔梗寮というのはどういうものですか。
  407. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 桔梗寮というのは、もう一回申上げますると、尾津組の形態が段々拡大されて來ましたから、マーケツトの方が‥‥。そうすると商業も簿記も知らない連中であつて、帳簿一つつかない連中もある。これでは私の考えるところ、本当の実業家として起ち上らせるには困難がある。これはお世辞も加味されておるかも知れませんが、今の連中ではとても商業として立つて行くわけには行かない。貿易も始まつて來るだろうし、帳面一つつかないような者では、とてもビジネスとして立つて行けない。そこで少くも最高教育を受けた者を事務員に置くくらいでなければやつて行けません。私の方の知人関係その他の者がおるのですけれども、お入れする氣持はありませんかと言うたところが俺の方に知つておる大学生が沢山あるから、それを入れて、それを教育しよう、こういう目的で親分が連れて來た連中です。事務所の方で使つてつたのでありますが、乱暴をするものだから、私の手に負えないというので、初めて今の無料診料所の後ろの六疊のところへやつらが寝ておつたわけであります。そこで親父さんの紋が「ききよう」だから、これは私は、言うのも快くないのですが、そういうお世辞的のことは‥‥。親父さんの紋が「ききよう」であるから、その寮だから桔梗寮だ、こういうので桔梗という名前を使つたらしいのですが、よくおべつか式のことは‥‥。
  408. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは盃を貰つた人ですか、貰う人ですか。
  409. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 正式に盃は貰わないでしよう。盃なんということは、桔梗寮の連中には分らないと思います。ただ並んであるところで一杯飲めというのじやないのですから‥‥。盃を楠木君も裁判所を通じて貰つた言つておりますが、本当の盃を下げたのじやないと思います。
  410. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの方に常盤会というのがありますか。
  411. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 常盤会ですか。私は知らないのですが‥‥。
  412. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 桂会というのは‥‥。
  413. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 知らないですね。
  414. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御存じないですか、あなたのマーケツトの方か、露商の方か‥‥。
  415. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) それは私が強制收容された後でできたらしいのですが、あの税金問題で‥‥。それですから当然私は知らない。
  416. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 桂会ですが‥‥。
  417. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 桂会も、桔梗寮も、何ができたか知りません。
  418. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何ができたか知らない‥‥。それじやどうも御苦労さんでした。
  419. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) このまま帰宅してよろしうございますか。
  420. 伊藤修

    委員長伊藤修君) よろしうございます。
  421. 岡戸竹治

    證人岡戸竹治君) 大変御無礼申上げました。    〔証人眞対民治君着席〕
  422. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お年はお幾つですか。
  423. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 四十六でございます。
  424. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これからお述べになることについて嘘僞りがありますと、僞証の制裁がありますから、御注意申上げて置きます。
  425. 眞対民治

    證人(眞対民治君) はい。
  426. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君と御関係になつたのはいつ頃ですか。
  427. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 丁度前の事件から帰つて來た直後でありますから、昭和十六年頃じやないかと思いますが‥‥。
  428. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから一緒に仕事をなさつたのですか。
  429. 眞対民治

    證人(眞対民治君) いや、全然別でございます。あそこになにしましたのが、昭和二十一年の一月でございます。
  430. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それからは一緒に仕事をなさつたのですか。
  431. 眞対民治

    證人(眞対民治君) そうでございます。
  432. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 昨年の初め頃から昨年の九月頃までの間に、どういう役をやつておりましたか。
  433. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 尾津組の支配人をやつておりました。
  434. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 会計も一切あなたが‥‥。
  435. 眞対民治

    證人(眞対民治君) やつておりました。
  436. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いわゆる尾津組やくざの方の関係の何か取締もやつておられたようですね。
  437. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それは全然ございません。
  438. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 店の方のお仕事に轉任というか変る前は、やくざの方の締りもやておられたのじやないですか。
  439. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それは要するに、それの方の会計であります。
  440. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君のお仕事、やくざの方じやない方ですね。お仕事の方はどんな規模ですか。
  441. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 仕事でございますか。
  442. 伊藤修

    委員長伊藤修君) うん。
  443. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 仕事というのは要するに、私の受持というものは、当時の雜貨の仕入れと、それから金庫の金の出入れ、それから無料診療所の仕事、それから助葬会の仕事をやつておりました。
  444. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それを一括して、尾津君の資産としてどのくらいあるのですか。
  445. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それは当時でございますか。
  446. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ええ、昨年の六月頃ですね。
  447. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 昨年の六月頃でごさいましたならば、資産として、要するに自分の、要するに正金としてはございませんが、建物だとか、或いはいろいろな物を合計しますというと、当時の金に見積りまして一千万ぐらいのものじやなかつたかと思います。
  448. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 不動産全部寄せて。
  449. 眞対民治

    證人(眞対民治君) はあ、全部入れます。
  450. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 商品は、
  451. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 商品は、昭和二十二年六月と申しますというと、殆どございませんでしたです。それは何故かと申しますというと、大体がもう店舗は委託式の営業をやつておりましたから、自分の商品というものは殆どなかつたのであります。
  452. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 負債は。
  453. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 昭和二十二年の六月頃の負債は、約六百万から七百万ぐらいの間でなかつたと思います。
  454. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは銀行からですか、個人‥‥。
  455. 眞対民治

    證人(眞対民治君) いや銀行じやなく、個人のいろいろ取引しておりましたところの負債と、それから税金の要するに不納でありましたですね、そういつたものを入れまして、そのくらいの額があつたのです。
  456. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 税金の不納は六百万円ばかりあつたのですが、それを入れてですか。
  457. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それが約五百六十万円だつたと思います。
  458. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 五百六十万円入れて六百万の負債ですか。
  459. 眞対民治

    證人(眞対民治君) そうです。それから六百万から七百万ぐらいの‥‥。商品の方では、当時は百二三十万ぐらいのものじやなかつたかと思います。
  460. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると六七百万の借金の中に、税金が五百六十万円ぐらい入つておる。賣上げはどのくらいあつたんですか。
  461. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 昭和二十二年の丁度六月頃と申しますと、賣上げは一日が二十万ぐらいのものじやなかつたかと思います。
  462. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 利潤はどのくらいありますか。
  463. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 利潤は大体一割五分から二割としておりました。
  464. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その他收入は。
  465. 眞対民治

    證人(眞対民治君) その他に收入というものは、軽輪車をやつておりましたが、当時私は軽輪車の方に全然関係がありませんから、軽輪車の方の実入りというものは殆どなかつたようであります。
  466. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 他に何か收入はないですか。
  467. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 他に收入と言つて別に何もございませんです。
  468. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 診療所関係や何かは。
  469. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 診療所は要するに無料診療所でありますから、利益というものはございません。
  470. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなた方の店員の方はどのくらいおつたのですか。
  471. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 店員でございますか。店員は多いときは二百五十名ぐらいおりました。
  472. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはその人事は、やくざの方と交流しておるのでありますか。
  473. 眞対民治

    證人(眞対民治君) いや、それは全然別でございます。それは要するに尾津組マーケツトというのは、やくざというものは一人も入れない。親分子分というものの盃のある者はマーケツトでは使用しなかつたんです。いくら使つて呉れと言つて來ても、当時は使わなかつたわけですから、やくざ関係の者は、露店商と申しましても、結局は新宿の盛り場で営業しておるのを指して露店商人と、それにはやはり責任者がおりまして、そうしてやつておりますから、マーケツトとは私等の方とは何等関係はないのであります。
  474. 伊藤修

    委員長伊藤修君) やくざの方はどのくらいの直系があるのですか。
  475. 眞対民治

    證人(眞対民治君) さあ、はつきり私には分りませんが、当時の若い者というのは、先ずそれは露店の者に聞いても分りましようが、先ず内などにおる者で二百人から三百人までの者が本当じやなかつたかと思います。
  476. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 幹部というのか、何というのか知らんが。
  477. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 幹部というのは、要するに約十名ぐらい作つてつたようでございます。
  478. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 十名ぐらいの幹部で、三百名くらいの人は、何れも盃を貰つておるわけですね。
  479. 眞対民治

    證人(眞対民治君) いや、本当の盃を貰つた者は、当時の六月頃でみますと、盃を貰つた若い者というのは、本当の三十人か四十人ぐらいじやなかつたかと思います。
  480. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 盃を貰つていない人は、どういう資格ですか。
  481. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それは、要するに、ただ営業するのに組の名前がないというとできなかつたので、営業が、要するに親分という者を持つていないというと結局営業ができなかつたものですから、それで各露店で営業する者は、要するにやはり親分というものを皆持つてものであります。但しこれは要するに親分子分の盃というものは、結局はお正月だとか、或いはお盆の七月だとかいうようなときにやるものでありまして、自体、内で、私の所の主人というものは、盃を下げるというようなことは余り重きを置いていなかつたらしかつたです。
  482. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君の、いわゆる尾津君の兄弟分と言いますか、どのくらいあるのですか。
  483. 眞対民治

    證人(眞対民治君) さあ、それははつきり私には記憶がございませんが、先ず東京で兄弟分というのは二十人ぐらいあるのじやないとか思いますが、
  484. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その主だつた人が。
  485. 眞対民治

    證人(眞対民治君) ええ。
  486. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 主だつた人名前は。
  487. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 主だつた人といつて兄弟分というと、盃してあるかないか、私には分りませんが、関口愛治さんとか、それから芝山さんだとか、今亡くなられましたが、千住におりました吉岡さんでしたかね、といつたような人を、私も名前もしつかり記憶がありませんが、そういつたようなのが兄弟分の縁があつたらしかつたです。
  488. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君は飯島一家だそうですね。
  489. 眞対民治

    證人(眞対民治君) そうでございます。
  490. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 飯島の直系ではないのですね。
  491. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 直系ではありません。分家です。
  492. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 飯島本流より凌駕したいい顔になつたわけですね。
  493. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それは、飯島一家と申しますのは、これは私の主人の先代の要するに親分つたわけです。ところが自分が、この前の事件つたと思いますが、そのときに、自分が刑務所に行きまして、そうして親分から煮え湯を飲まされたというようなのが原因で、出て來ても、要するに飯島一家でない、その本家というものを名乘らなかつたわけです。そうして自分尾津で以てずつと通して來たわけです。
  494. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今お聽きするような大体組織だつたのですね。
  495. 眞対民治

    證人(眞対民治君) そうでございます。
  496. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると関東では有数な親分なわけですね。
  497. 眞対民治

    證人(眞対民治君) まあ結局がよそというものが、東京露天商同業組合の理事長をしておりますから、一般的にはそう見えるかも知れません。
  498. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 從つてその勢力というものは、相当他の團体に対しては圧力を加える。
  499. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それは要するに世間で思うほどのあれではないのじやないかと私等は思います。
  500. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 安田一家との出入りの場合は、三百人ぐらいあつたという話ですが。
  501. 眞対民治

    證人(眞対民治君) その時には、安田との出入りの時は、人間というのは一人も私の方では集めなかつたです。当時私もその時には、まだこのマーケツトの方へ入つた直後でありまして、あれが私も今記憶があります。三月の何でも二十五日の、要するに給料日か何かのことでございましたが、その時にありましたが、淀橋の警察からも沢山警察の方も見えておりましたが、私は断乎として兵隊を集めたりするということはさせなかつたのです。
  502. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 集つていなかつたのですか。
  503. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 集つていなかつたのです。
  504. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か世間のあれは‥‥。
  505. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それで、その時に私は要するにこう言つて、來られた警察官に話した。とにかく僕の方は一人も兵隊もいないし、何も用意していないのに、安田の所ばかりどうしてああいう工合に大勢の人間が集つて、ガードの向うこつちに張つておるのに、あれをどうして黙つてつて置くのかということを私が話したこともありますから、そういうことは、警察でお聽きになつてもはつきりしておるのじやないかと思います。
  506. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ、そういうようなことから考えましてですね、一朝事ある場合だね、出入りだとかいろいろな揉め事があつた時には、相当人数の人を集め得る可能性はあるわけですか。
  507. 眞対民治

    證人(眞対民治君) まあ、結局は‥‥
  508. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君の号令一下、集まつて來る可能性はあるわけですか。
  509. 眞対民治

    證人(眞対民治君) まあ、結局は我々のそういつたような社会というものは妙なもので、何か手入れでもあるとか間違いでもあるとかいうようなことになると、まあ見舞とか何とかいつて應援だといつて來るのもありますが、まず結局は実際に間違いでもあつて、それじや尾津のところへ行つて一つ一肌ぬいでやろうかつていう程の者はないのじやないかと思います。
  510. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ないというのは何か事情があるのですか。
  511. 眞対民治

    證人(眞対民治君) というのは結局は自分が要するにマーケツトというものを持つてからというものは、やくざというような者は余り養成しないというような方面に頭を大分動かしておつたらしい。それだから、言つてつても元の尾津ならば、ねだれば小遣いは幾らか呉れたけれども、現在のあれでは行つても何にも呉れない。だから要するに身体を張るようなことは必要はないというようなものが多分にあつたように見受けられます。
  512. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、マーケツトに手を出してから尾津君は金拂い‥‥金がきれいに子分衆に渡らないわけですね。
  513. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 要するに、やくざといつたように方面には、余りああそうかと言つて小遣いをやるようなことはなかつたですね。
  514. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君は相当無理を言う人ですね。
  515. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 無理といつて、要するに自分で言つたことを通そうとするのはおやじの氣性でありました。で、私共はいろいろそうじやない、これはこうだと言つて話しても、なかなか聽き入れて呉れないような要するに性質であります。
  516. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一旦言い出したことはあくまで通すと‥‥
  517. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 通すというのが生れつきの氣性じやないかと思います。
  518. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 通すというのは相手方から見れば、結局尾津という者はそういう子分衆を沢山持つているし、大親分だということで、そういう背景的な力を自分が過信して、まあ信じてかそういうものを持つていて、自分の意見を通すという傾きがあるのじやありませんか。
  519. 眞対民治

    證人(眞対民治君) そういうわけでもありませんが、まあ自分としては言い出したことはどうしてもそれを退かないでやろうとする、又自分よりも一歩進んだ人に、どうもおやじに話してもおやじはうんと言わないから、一つ口きいて話して貰いたいといつて、第三者から話をすると、又それで納得するというようなことも多分にあつたのです。
  520. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 警察方面とか区役所とか、そういうものに対しても、尾津君が顔を出せば相当の無理はきいて行くのじやないのですか。
  521. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 要するに地元の警察署なんていうものへは殆んど行つたことがないのじやないのですか。よくよく何か呼出しでもあるとか何かの話でもあつてでないと、自分からまあ貰い下げに行くとか、そういうようなことは、私があそこに入りましてから殆んど見受けたことはないのです。
  522. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 区役所側から見ると、又警察の方から見ますると、尾津君を恐れて少々の違反やなんかは注意するということはなかつたのじやないのですか。
  523. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それはなかつたですね。まず尾津組といつたら目の敵のようにしておりましたですね。当時警察なんというものは、何かというと、何か尾津組で要するに闇でもやつてないかとか、或いは又何か事件でも起していないかというような目で見て、非常にそういう目で見て、まず他のマーケツトを見て歩くのは本当の名前だけで、尾津組にはもうこの事件の始まる前からでございます。もう何回となく來て、要するに闇のものとか何だかやつてないかということを調査しに來ておりましたです。
  524. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 事件直前はそうであつたろうけれども、それ以前は恐れをなしておつたのじやないですか。
  525. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それ以前というと私にはよく記憶がございません。
  526. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あのマーケツトを建てるのはめちやめちやに届けを出さずにどんどん建ててしまつたのじやないのですか。
  527. 眞対民治

    證人(眞対民治君) あれはマーケツトを建てる時には当時の区役所だとか或いは警察の方の要するに注意も別になかつたようですし、建てて第二工事に移つてからでしたか、区役所から無届け建築であるからというような話がありましたが、それ以前にはそういつたようなあれはなかつたのです。
  528. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だから要するに尾津君という人は、そういう法令規則を少しも考えず、無視して、自分思つた通り行動を執る人でないですか。
  529. 眞対民治

    證人(眞対民治君) まあ結局が自分で、まあ、どういう意思で建てるといつたか知りませんが、まあ、そういつたようなことも含まれているんじやないかと思います。
  530. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ家を建てるには、やはり届を出して許可を取るとかいうことは‥‥
  531. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それは自分では、まあ自分葭簀張りを、今の要するに建物に建て換えるというような、單純な考えで、当時まあ雨が降るというと、営業のできないような所では仕方がないから、マーケツトを建て直すというようなのが動機でありまして、そうして、それを建てるのに、中止が來るとか何とかいうようなことは、思つていないというようなことを、私には話しておりました。
  532. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かいろいろな経済統制の違反や何かでも相当つたらしいですがね。
  533. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 経済統制で要するに今度のあれで、なにしておりますのが、要するに醤油が少しあります。
  534. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今度の事件は別として、事件以外で警察から注意を受けたとか‥‥
  535. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それは、要するに、あれを受けたというようなことは、要するに、纖維製品を賣つてはいけないとか、それから革製品を賣つていけないというようなことはありましたが、要するに、その時には、又違反になるような物も扱つておりませんでしたから‥‥。
  536. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは、今度の事件が昨年六月起りましたですね、その当時やはり会計やつていたんでしよう。
  537. 眞対民治

    證人(眞対民治君) ええ、やつておりました。
  538. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 事件に対してどのくらいお金を出したですか。
  539. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 要するに弁護士さんに支拂うといつて、私の手許に取りに來た金が、金にしまして三、四万ぐらいのものじやないかと思います。
  540. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういう方面に拂われたんですか。
  541. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それは要するに、それをどういう方面に拂つたか私には、はつきり分りませんが、当時どこの支拂だと私が尋ねた時に、守屋弁護士さんと清原弁護士さん、上條弁護士さんに拂うんだということをいつて、四万円だつたかと思いますが、持つてつたように記憶しております。
  542. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは一回ですか、数回ですか。
  543. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それだけですね。
  544. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一回に四万円持つてつたんですか。
  545. 眞対民治

    證人(眞対民治君) さあ、その時には四万円一回だと思つておりますね。
  546. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その前後に一遍持つて行かないですか。
  547. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それから前後には持つて行かないです。
  548. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 奧とおつしやるんですね、奧さんの方は。
  549. 眞対民治

    證人(眞対民治君) はあ。
  550. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その奧の方の取扱として、別に取扱の金があるんですか。
  551. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それは要するに下の方の家計費ですね、家計費だとかいうものは、私の方から、向うから金が無くなつたから一万円貰いたい、或は五千円貰いたいといつて來る度に、それを出して‥‥
  552. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 家計費は月にどのくらい出すんですか。
  553. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 家計費は一番使つたので十五万ぐらい使つた
  554. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 六月頃は‥‥
  555. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 六月頃はやはり十万円ぐらい使つておりました。
  556. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 家計費の中から事件に繰合して行くということはできるわけですね。
  557. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それは殆どないんじやないかと思います。
  558. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ、できる可能性はあるわけですね。
  559. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 可能性はないのです。
  560. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういうわけです。
  561. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 一日食べる方が、一日の経費が五千円ぐらい掛つたのです。それはなぜそういうものにかかるかというと、結局は大勢の者の遠くから通つて來ております者に、夜宿直というものをさせまして、それが要するに人間が足りないものですから、翌日それをまた働いて貰うために、結局が家から二日分の弁当を持つて來られないというので、そういう者の御飯も全部下で賄つておりましたから経費というものは莫大に掛かつてつたように思つております。
  562. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 奧の收入というのはあなたの方から渡す家計費の收入は一本でございますか。
  563. 眞対民治

    證人(眞対民治君) そうでございます。
  564. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 他に收入はありませんね。
  565. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 他に收入はありません。
  566. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 直接取るところはないですね。
  567. 眞対民治

    證人(眞対民治君) ないです。
  568. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 奧には毎月十五万円程度のものでございますか。
  569. 眞対民治

    證人(眞対民治君) そうでございます。その中には、十五万円の中には、何です、まあガソリンだとか或いは自動車の損料とか、修繕料とかいうようなものも拂うらしいですが、そんなものは微々たるものだろうと思います。
  570. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 奧さん個人としての小遣いというものは渡さないのですか。
  571. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それは渡さないのです。その中から自分の小遣いも使い、そうしてやつて行くらしいです。
  572. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君の小遣いとしては‥‥。
  573. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 親父の要するに小遣いというのは、月に平均しまして二十万円くらいの小遣いを使つておりました。
  574. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると拘留になつてからその分はどうなつたのですか。
  575. 眞対民治

    證人(眞対民治君) その分は、結局が何ですが、いろいろ親父が向うに行きましてから店の信用というものも殆んどなくなつて來るし、古くからの借金も相当ありましたものですから、そういつたような方面の支拂いとか何とかいうようなものに向けまして、そうしてその時に金が幾らか何するというと軽輪車を購入するとか何かやつておりましたから、今日金庫が樂だなんといつたことは殆んど一日もなかつたのです。
  576. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 要するに六月から尾津君が使う小遣いと引当ての‥‥約二十万円くらいのものは別に渡さないのですか。
  577. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 渡さないんです。これは。結局がどういう方面にその金が使われておるかというと、結局は、まだその時に借りておりました要するに自動車でございます。そいつに拂う損料と、要するにガソリン代とか、或いは要するに面会に行く費用だとかいうような方面に使つてつたように思つております。
  578. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その六月から尾津君のためにどのくらい使つておりますか。
  579. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 結局は‥‥ ○委員 弁護料、弁護士に渡した金は別として‥‥
  580. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それは結局なんですね、まあ親父が刑務所の方に行きましてから、これといつて別に取りに來ませんが、結局が今の言う十五万円、最高使つた家計費の十五万円の中から結局が下で以て主人の身の廻りのことをしてやつてつたらしいです。
  581. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると拘留されてからは尾津君の使う小遣いというものは別に渡さないのですか、家計費の十五万円の中で賄つてつたというのですか。
  582. 眞対民治

    證人(眞対民治君) そうでございます。
  583. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君が外におる中からも自動車は常用に使つてつたのですね。
  584. 眞対民治

    證人(眞対民治君) そうです。
  585. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは一ケ月どのくらい拂うのですか。
  586. 眞対民治

    證人(眞対民治君) あれは確か損料としまして、何だ彼だ支拂つたものは二万円くらいじやなかつたかと思います。
  587. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 油は自分の方で、こつち持ちですね。
  588. 眞対民治

    證人(眞対民治君) そうです。
  589. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 運轉手は‥‥
  590. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 運轉手は私の方からも月五百円くらいの手当を拂つておりました。
  591. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 運轉手自動車の損料は二万円ですか。油はこつち持ちですね。拘留されてからは‥‥
  592. 眞対民治

    證人(眞対民治君) そうです。ここずつと車はまあ店のことや何かに使いましたが、ずつと家に置いておりました。
  593. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勿論刑務所の尾津君の関係にも使うのでしようね。
  594. 眞対民治

    證人(眞対民治君) そうでございます。
  595. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 弁護士がそこら中に走り使いに使つておるのでしよう。
  596. 眞対民治

    證人(眞対民治君) そうでございます。
  597. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一台ですか。
  598. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 一台でございます。
  599. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 病院の方はあなたが拂つたのですか。
  600. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 病院の方に拂つたというものは、あそこに拂いましたのが二千円くらいのものじやなかつたかと思います。それは本当に微々たるものです。
  601. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 病院の医者や何かに別に拂われないのですか。
  602. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 拂いません。
  603. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 謝礼とかいうものは。
  604. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それ何もしなかつた
  605. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 拂いませんか、謝礼は‥。
  606. 眞対民治

    證人(眞対民治君) ええ。
  607. 伊藤修

    委員長伊藤修君) さつきおつしやつた四万円以外に本件に関して謝礼とか遣い物というもので、お拂いになつたことはありませんですか。
  608. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 別にこれといつて金を弁護士の方に拂う以外に金を持つてつたということはなかつたですね。
  609. 伊藤修

    委員長伊藤修君) すると奧に使つた金は弁護士と十五万円という、約十五万円ですね。というものの外使つておらんのですね。
  610. 眞対民治

    證人(眞対民治君) そうです。
  611. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それ以外は一切あなたの方から出ておらん‥‥。
  612. 眞対民治

    證人(眞対民治君) そうです。
  613. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなた以外に金を扱う人はあるのですか。
  614. 眞対民治

    證人(眞対民治君) ありますけれども、殆んど出した用途というものは、私が休んだ翌日に行つて見ますから、又私が居ない時に金の出すようなことがあれば、大体私が話を受けますから。
  615. 伊藤修

    委員長伊藤修君) マーケツトからの、各部から入つて來る金は、一切あなたのところに集まるわけですな。
  616. 眞対民治

    證人(眞対民治君) そうです。
  617. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 出すにはあなたが認めたものでなければ出せないのですか。
  618. 眞対民治

    證人(眞対民治君) これは要するにこういうものが來ておるから拂つて呉れとか何とかいうようなことが、親父の方から連絡がありました時とか、何とかに拂いますが、それは要するに前の商取引した関係の残つておるやつを拂つておるものでありまして、その以外に拂う支拂いというものは、結局私が全部やつてつた
  619. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 例えば尾津君の奧さんや、岡戸君が何か機密の費用が要るという場合に外の賣場から上げて行つて拂うことができるのですか。
  620. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それはできないのです。默つて賣場から金を持つてつて支拂うということはないのです。
  621. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうことはない‥‥。
  622. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それは絶対にございません。
  623. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その他金のどこか收入のあつたところから上げて流用するということはできないのですか。
  624. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それは、要するにマーケツト以外の收入の途というものがありませんから、恐らくそういうようなことはないのじやないかと思います。
  625. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か寺銭とかそういうものは入つて來ないですか、やくざの方でいう寺銭というようなものは入つて來ませんか。
  626. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それは全然ない。マーケツトという別個のものでありますから。
  627. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 別個のものは奧の方に入つて來ないのですか。
  628. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それは分らない。
  629. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 要するに繩張りの冥加金というか。
  630. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それはないです。今、終戰後非常にやかましくなりまして、いくらいくらの金以上に取つてはいかんというようなのが出ておりましたから、以後会計をきつちりつけましてやつておりますから、出し入れの方は分りませんが、そういつたような金の残りとか余るようなことは恐らくないのじやないかと思われます。
  631. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 表面上取れんことになつておりますけれども、裏面に從來の仕事から言つて、そういうものが入つて來るのでしよう。
  632. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それは全然ございません。
  633. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ないですか。
  634. 眞対民治

    證人(眞対民治君) ええ。
  635. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 露店商人から場銭が取れることになつてつたんでしようが、これも取扱つておりませんか。
  636. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それは要するに主人の手許には一つも入つていないのじやないかと思います。露店の方の身入りというものは一つも入つていない。
  637. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 露商の何か掃除代とかいろいろ名目で露商から取上げるとか、そういうものが入つて來るのじやないですか。
  638. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それは入らない。それは要するに組の使つておる事務員の給料だとか、それから世話をやいておる人の正月とお盆との要するに手当とかいうようなものに振向けるのと一般的の組合の交際費というようなものに使つていたらしいです。
  639. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあああいう神農会、露商関係で、神農会あたりでもそうですね、親分衆は、これで贅沢な暮しをしておるのですか、尾津の場合はどうです。
  640. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 今はそんなのはないのじやないですか。
  641. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 昨年の夏頃の街の顏役衆の問題がやかましくなる前は。
  642. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 他はどうか知りませんが、尾津組はそれはなかつたです。
  643. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ただ金を取つたとしても、組合の方で使われるわけですね。
  644. 眞対民治

    證人(眞対民治君) そうです。
  645. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君が選挙に立ちましたね。その時はどの位使つたのですか。
  646. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 選挙の時に私のところから持つてつて出したというのは四、五万のものじやないかと思います。
  647. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それではできませんね。
  648. 眞対民治

    證人(眞対民治君) とにかく後はどういうふうにやりましたか分りませんが。
  649. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると何か外に余收があるのじやないか、四、五万円でできんということは常識ですね。
  650. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それはどういう工合でやりましたか、選挙ということに対して私が全然タツチしなかつたですから、新聞社の方も見えて、いろいろなことを聞いておりましたが、私は全然選挙ということについてはタツチしておりませんから、どういう方法でやられたか全然分りません。
  651. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは尾津ともあろう人が、人から金を貰つてやるというようなことはなかろうから、結局はどつかに金が出るところがあるのじやないですか。
  652. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それは本人じやなくちや分りません。
  653. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが扱つた範囲では、知らないですか。
  654. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 知らないです。
  655. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その選挙の時に、元林さんから三百万円とか、選挙運動費を頼まれたことを御存じですか。
  656. 眞対民治

    證人(眞対民治君) その時に私も一回そういう話を聞いておりましたが、私は元林さんと初めて会いました時に、御用件を私の方で尋ねましたら、三百万円の金が入用なんだというような話はありましたです。けれども尾津組にはそんな金は全然ないから、私の方から、すぐにはつきり断りましたところ、親分に一回会いたいというような話もありましたが、その後は、会われたか会われないか全然知りません。
  657. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今度の事件の際に、元林さんから百五十万円とかという申出があつたのじやないですか。
  658. 眞対民治

    證人(眞対民治君) その話は、百五十万円ということは、私は聞かなかつたですけれども、二十万円を出せば保釈にどうとかというような話はしておりましたようです。
  659. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 百五十万円という話は聞かなかつたですか。
  660. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 聞かなかつたです。
  661. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二十万円という話はありましたか。
  662. 眞対民治

    證人(眞対民治君) そういう話はありました。
  663. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 最初は百五十万円というのが二十万円とか三十万円とか、だんだん下つて來たのじやないですか。
  664. 眞対民治

    證人(眞対民治君) そういうことは、百五十万円とか大きな金額は、全然聞いた覚えもないです。二十万円ということはありましたです。
  665. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは誰から聞きましたか。
  666. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それは私が裁判所で、前の裁判の時に、法廷で主人が話をしておつたように思つております。
  667. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 法廷で、裁判所で話したのですか。
  668. 眞対民治

    證人(眞対民治君) ええ、裁判所で、なんでも裁判官にちよつと御注意申上げますとかいつて、そうして当時僕の弁護士としてやらしてくれというようなことを元林というのが言いよつた。それでこの人から手眞似で、こうやつて二十万円出せばどうとかという話がありましたが、尾津は、そんなものに厄介にならないと言つて、はつきり断つてしまつたというようなことを法廷で述べておりました。
  669. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君は実業家の人には、どういうふうな名士の人に関係あるのですか。
  670. 眞対民治

    證人(眞対民治君) いや、外の方の仕事はどういう工合にして歩いておりますか、はつきり分らないです。
  671. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 政治家の人との交際‥‥。
  672. 眞対民治

    證人(眞対民治君) どういうところへ政治家の人と歩いておるか、全然そういう方面は私には分らないです。
  673. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だからそういう方面に金を出すというような、あなたは金の出し入れを扱つたことはないですか。
  674. 眞対民治

    證人(眞対民治君) ありません。
  675. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 全然ないですか。
  676. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 全然ないです。
  677. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの金銭の出納というものは、マーケツトの出納が主たるものですか。
  678. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それは元帳一册で以て一切やつております。細かいものは、それこそ煙草から細かいものまで書いとありますから、それは一覧になれば、尾津組というものはどういう收入があつて、どういう支拂いをしておつたかということがはつきり分ります。
  679. 伊藤修

    委員長伊藤修君) けれども、それはマーケツト関係の收支のことであつて‥‥。
  680. 眞対民治

    證人(眞対民治君) いや、それはマーケツトだけではなく、すべての要するに支拂いというものは、外の会社のように、いろいろな帳簿を拵えまして、これは何の金の支拂い、これは何の金の支拂いというような帳簿ではなく元帳一册に全部が記載されておるものでありまして、それに家計のことでありましても、飲み食いのことまで、全部それに書いてあります。
  681. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 支出の方はそうでしようが、收入の方は‥‥。
  682. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 收入も明確に載つております。
  683. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 收入は、マーケツトの收入であれば、雜收入がありますか。
  684. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 雜收入はありましても、何々から買つたものということが書いてありますから‥‥。
  685. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その雜收入は、どういう方面から入るのですか。
  686. 眞対民治

    證人(眞対民治君) その雜收入というのは、特殊のもの、要するに伊東漁場から魚を引いたとか、銚子から引いたとかいうものは、特殊のものを拵えまして、要するに一切の特殊の收入として扱つてつたわけです。マーケツトというものは、ただ雜貨というようなものばかりを扱つてつたわけです。
  687. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたがお預かりになつておるものは、主として営業上の收益の雜貨ですね。
  688. 眞対民治

    證人(眞対民治君) そうでございます。
  689. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それ以外に、特殊の尾津君の個人関係で入つて來たものは、あなたの方へは入つて來ないわけですね。
  690. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それはやつてつたかどうか、私には分りません。
  691. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは尾津君が勝手に懐ろへ入れておるかも知れない‥‥。
  692. 眞対民治

    證人(眞対民治君) そうです。分らないです。
  693. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 他にお尋ねになる方はありませんか。
  694. 小川友三

    ○小川友三君 先程お言葉の中に、尾津さんは三百人か四百人の若い者があるというお言葉がありましたが、それは本当ですか。
  695. 眞対民治

    證人(眞対民治君) 三百人のなんのというような若い者は、おつたことはございません。要するに一番これがはつきりするのは、私の方の露店の方には、やはり会員名簿というものがありますから、それを見れば、六月在現でいいましても、二百名超えるようなことは、恐らくないだろうと思います。
  696. 小川友三

    ○小川友三君 それから今、安田一家との出入りの場合に、ほかでは若い者を出したというのを、あなたの方で、兵隊をという言葉を使います。兵隊を出したとか出さないとか、やくざは体を張るから兵隊というのでしようか、そのわけを一つ
  697. 眞対民治

    證人(眞対民治君) それは要するに、結局は、やくざ者が、親分のところに何か間違いがあつて行く者を、要するに当時まあこれは兵隊というのが通常であつたように聞いております。
  698. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは御苦労さまでした。これで休憩しまして、午後一時半から再開いたします。    午後零時二十八分休憩    —————・—————    午後二時一分開会
  699. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これより午前に引続きまして調査会を開きます。証人の方に申上げますが、本日は当調査会におきまして、裁判所の処置について少しく調査したいことがありますので、そのことについて証人として御出頭を願つたわけでありますから、嘘、僞りを言わないという宣誓を先ずお願いしたいと存じます。宣誓は各自御朗読をお願いしたいと思います。    〔総員起立証人は次のように宣誓を行なつた〕    宣誓書   良心從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 黒羽 関司    宣誓書   良心從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 鈴木太三郎
  700. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 鈴木さんはお忙しいようでありますけれども、黒羽さんは簡單ですから、黒羽さんからお尋ねします。ちよつと鈴木さん次でお待ちを願います。
  701. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御承知の通り僞証の制裁がありますから、どうぞ御注意願います。お年はお幾つですか。
  702. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) 三十七歳でございます。
  703. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 司法事務官をして、元はいわゆる書記として、どのくらい御経驗があるのですか。
  704. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) 裁判所事務官でございますか。
  705. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 事務官というのは最近の名前ですが、前に書記として‥‥。
  706. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) 一年三ヶ月でございます。
  707. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると裁判所へ入られたのは‥‥。
  708. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) 昨年の二月でございます。
  709. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 極く最近なんですね。
  710. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) そうでございます。
  711. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは尾津君の公判事件にはお立会になつたのでございますか。
  712. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) はあ、そうでございます。
  713. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 立合つた方はあなた一人ですか。
  714. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) その外おります。
  715. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 立会書記の方はあなた一人ですか。
  716. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) 私一人ではございません。
  717. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 外の人も代つてやるのですか。
  718. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) はい。
  719. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 昨年九月までに公判が何回開かれましたですね。
  720. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) さようでございます。
  721. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その間の公判全部にお立会になつたのでありますか。
  722. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) 全部ではございません。
  723. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何回くらいお立会になりましたか。
  724. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) 五、六回くらい立合つたように記憶いたしております。
  725. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その内、五、六回お立会になつた‥‥。
  726. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) そうでございます。
  727. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 立会われた時に、傍聽人は多かつたですか。
  728. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) 沢山おりました。委員長 常に法廷は一杯ですか。
  729. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) 殆んど一杯のような状態でございました。委員長 その傍聽人はどうですか、あなた方が御覧になつて、一般傍聽人ですか、尾津君の身内の子分衆というふうに考えられますか。
  730. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) 尾津組子分衆の方々が大部分じやないかと思いました。
  731. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そう思われたのですか。
  732. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) はい。委員長 傍聽人の人達は騒ぐようなことはなかつたですか。
  733. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) そういうことはございませんでした。
  734. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 靜粛にしておつたのですか。何か威圧を加えるような示威的なことはなかつたのですか。
  735. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) そういうことはございませんでした。
  736. 伊藤修

    委員長伊藤修君) なかつたのですか。
  737. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) はい。
  738. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたがお立会になつた時ですか、一度庄司という証人が調べられまして、その証人内容が氣に入らなかつたかどうかで、被告が椅子を持つて起ち上つたというよいなことがあつたのですか。
  739. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) それは私の立会の時ではございませんでした。
  740. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの立会のときではないのですか。
  741. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) はい。
  742. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どなたですか。
  743. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) 岡本光太郎という人です。
  744. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その人の立会の時でしたか。
  745. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) そうでございます。
  746. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは話をお聞きになつたでしよう。
  747. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) 承知しております。
  748. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どんなようなことをお聞きになりましたか。
  749. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) 詳しいことは存じませが、被告が証人の方に向きまして椅子を振上げて威嚇されたというようなことを聞きました。証言の内容に対して不満を持たれたような氣配を示しましたので。椅子を持つて何か憤慨されたというようなことを聞いております。
  750. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは証言中ですか、証言が済んでからやつたのですか。
  751. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) そうですね、はつきり存じませんが、私、立会つておりませんでしたから‥‥。
  752. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうようなことがあるので、尾津事件は公判については、相当あなたの方で警戒しておつたわけですか。
  753. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) 特に警戒ということもなかつたと記憶しております。
  754. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 子分の沢山傍聽に來ておるし、万一法廷の秩序を紊すというようなことを想像して開廷しておるのじやないですか。
  755. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) 特にそういうことのために感じたようなことはございませんでした。
  756. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうようなことを心配したこともないですか。
  757. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) ございません。
  758. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勿論手配もしないわけですね。万一騒擾に亘るような場合の手配は、予め警備を頼むとか、そういうことはしなかつたわけですね。
  759. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) 特別な方法というようなことはいたさなかつたと思つております。
  760. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、普通事件として公判を開いたわけですね。
  761. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) さようでございます。
  762. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かこの事件を取扱うについて、ああいうような多数の子分を持つた親分事件ですから、特段にあなたの方で公判を進行する上において阻害になつたようなことはないのですか。
  763. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) 公判の審理につきまして妨害があつたということ‥‥。
  764. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 妨害があつたか、若しくはあるような杞憂を抱いて、公判について相当の注意を拂つたということはございませんか。
  765. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) 特に感じませんでした。
  766. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かそういう脅迫的の手紙が來たことはありませんか。
  767. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) 私の方では主に書記としての書記課の事務の方の仕事をいたしておるのでございますが、特にそういう手紙は参りませんでございました。
  768. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 保釈の申請はあなたが取扱うのですか。
  769. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) さようでございます。
  770. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは相当激しく弁護人の方から申請であつたのですね。
  771. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) さようでございます。
  772. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは申請された場合に、判事とお会いになるのですか、あなたのところまでで止まるのですか。判事について一々面会を求めて事情を具申しているのですか。
  773. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) こういう申請があるということを判事の方に告げるのであります。
  774. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その時のその申請者以外に面会を求められますね。弁護人が……。
  775. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) はあ。
  776. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 申請のある毎の面会を求めているわけですね。申請しつ放しですか。
  777. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) 大概申請の度に面会されるのでございますが、又先に申請したのについて、後日面会されてお話されることもあります。
  778. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 少くとも申請がありば、それについてその日から後において面会をされるわけですね。
  779. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) さようでございます。
  780. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 申請事件について特段に弁護人の方からいろいろ注文しておるということはなかつたですか。
  781. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) 私の方では存じませんが……。
  782. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 又あなたの方としては、ただ申請書類を判事のとこらの取次ぐだけですか。
  783. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) そうでございます。
  784. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 別にあなたの方にいろいろなことを言つて來たことはなかつたですか。
  785. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) そういうことは一遍もありません。
  786. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 弁護人以外の身内の人や子分が、あなたのところに頼みに來たことはないですか。又別にあなたを脅かすということはないですか。
  787. 黒羽関司

    證人(黒羽関司君) 全然ありません。
  788. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 外にありませんか……、いやどうもお忙しいところを恐れ入りました。    〔証人鈴木太三郎君着席〕
  789. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御承知かと思いますが、偽証の制裁がありますから、どうかそのおつもりで……。お年幾つですか。
  790. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 四十五歳です。
  791. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 警察官としてどのくらいの御経驗がおありですか。
  792. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 昭和五年の拜命ですから十八年ばかりです。
  793. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二十一年の暮から二十二年にかけては何をお勤めになつてつたのですか。
  794. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 勤めた場所でありますか。
  795. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お仕事の方はどういうお仕事をおやりになつたのですか。
  796. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 刑事部の捜査二課において仕事をしておりました。その間において尾津事件も調べたことがあります。
  797. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津はその時初めて調べたのですか。
  798. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 調べるようになつた初めて知りました。
  799. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうですか。あなたが尾津事件の搜査主任をやられたわけですね。
  800. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) そうです。
  801. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その外にこの搜査に関與せられた人はどういう人ですか。
  802. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 初めのうちは私が全部やつたのですが、私の部下が四名ばかりおりました。それとあと第二回目の執行停止以後の事件については、外の主任がやるようになりました。それは私の責任の事件をやつておりまして、非常に多忙を極めて、両方の事件を持てませんでしたから、あとの搜査二課の樽という警部補が受持ちました。それは執行停止以後のことであります。
  803. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 執行停止以前の事件ではあなたが主任で、あなたの部下は何という人ですか。
  804. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 巡査部長の森田長治、同じく巡査部長の緒方愛吉、それから巡査で芳賀慶、巡査で嘉言春吉と申します。
  805. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この端緒はどういうところから端緒になつたのですか。
  806. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) この端緒は檢事局の方から話がありまして、淀橋の警察に最初告訴が出まして、その告訴を途中で淀橋の搜査主任の渡辺警部補が調べておつたようです。その後打ち合された結果、地元の警察でやるよりも警視廳でやるべきであるということから私のところに下命になつたようであります。
  807. 伊藤修

    委員長伊藤修君) すると最初は百崎弁護士から告訴があつたのですね。
  808. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) そうです。
  809. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それが端緒ですか。
  810. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) そうです。
  811. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その以前は調べていなかつたのですか。
  812. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 調べていません。
  813. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 全然手が著いてないわけですね。
  814. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) そうです。
  815. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから淀橋で二十一年の九月の末頃まで調べておつて、あなたの方で調べられたのが十二月頃ですね。
  816. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 十一月の中頃じやないかと思います。始まつたのは……。
  817. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その間中断しておつた理由はどういうわけですか。
  818. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 中断しておつたのは、外に取急ぎの事件がありまして、それを至急やるように下命されたこと……そういう事件が二回ありました。それから檢事局の方でも、檢事さんが度々変られたので、どうも一本調子で行く状態ではなかつたのです。そういうことから大分中断されました。
  819. 伊藤修

    委員長伊藤修君) すると仕事の関係上中断したわけですか。
  820. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) そうです。
  821. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津事件に特段の何か故障が起きたというわけじやないのですか。
  822. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) そうじやありません。そこで事件が二つ、突発事件が起りました。朝鮮人の首相官邸に毆り込んだ事件がありました。そんな事件と、それから繊維協会の事件がありまして、その二つの事件は急にやらなければならんし、身柄もまだ出ませんですから、内偵の期間でありますから、期間が遅れたのです。
  823. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 淀橋で最初手を着けて、あなたの方へ移送されたわけですか。それは淀橋ではできない、いろいろな尾津の勢力や、そういうような関係上好ましくないというので、あなたの方で手を著けたのですか。
  824. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) その眞意は分りませんが、私の感じでは警察ではできないということはありませんが、始まれば途中においていろいろ支障があるだろうということを予想されて、檢察廳の方でそういう方針にされたものと思われます。
  825. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その支障というのはどういうことを予想されたのですか。
  826. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) やはり地元で顔を知つておるということになると、調べる場合においてはいろいろ運動だとか、或いは手加減、そういうようなことがあるだろうということを感じられるのじやないかと思います。
  827. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは尾津の暴力團体の方で相当の組織を持つておるので、そういうようなことで相当の威迫的なことを、危險を感じたのじやないですか。
  828. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) まだ淀橋で調べておる当時は本当に潜行的な内偵的な調べですから、告訴人側を調べておる時分ですから、尾津の方にはそれが分らないから、そういう危險までなかつたでしよう。
  829. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 將來それが発展して表面化した場合には、そういう懸念があるわけですね。
  830. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) それで檢察廳の方で深く考えられたと思います。
  831. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 淀橋の方で相当証人を調べておりますね。
  832. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) そうです、殆んど告訴人側の大部分を調べらたと思います。
  833. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それだけその時淀橋の方で大体証人が纒まつておれば、なぜ尾津に手を著けなかつたのでしよう。
  834. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) それは私だけの想像ですが、淀橋の地方主任は断乎としてやる決心であつたようです。これは偏えに檢察当局の將來を慮つての措置であつたと思われます。
  835. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 檢察当局の將來ということは……。
  836. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) とにかく事件としては、当時風靡しておつた尾津組ですから、やはり大きい事件警視廳でやらせるという方針がありますから、それに副つたものではないかと思います。
  837. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 昭和二十一年七月の初め頃、尾津の新宿のマーケツトの建築違犯ですね、その中止や取締りについて淀橋署長が淀橋の区長、東京都の建設局長、これらが相当手を着けておつたのじやないのでございますか、それは御存じないのですか。
  838. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 署長も区長さんも後で問題はいろいろ聞きましたが、前署長さんの問題に関しては私も可なり調べましたが、最後の決は檢事さんにやつて貰うというところで私は打切りました。建設局長までは調べませんでした。
  839. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはあれですが、調べたのでしようがね、淀橋で……。
  840. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 淀橋では調べなかつたのであります。
  841. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 調べなかつたのでありますね。なぜ手を着けなかつたということをあなたの方でお調べになつたのでありますか。
  842. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) まだそういう段階ではなかつた時分に、事件が二課に行きそうになりましたから、いろいろ打合せの途中において、淀橋から警視廳に移管になつておりました。將來発展すれば、まだ或いは調べなければならん状態であつたかと思います。
  843. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だからそういうような建築違犯の事件についてはなぜ調べなかつたかというような問題について、あなたの方でお調べになつたのでありますか。
  844. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 調べました。それで事件は最初の告発だけでなく、調べた結果区長の脅迫事件、弁護士の脅迫事件、そういうようなものが派生的に発展して出て來ました。
  845. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの方の手で調べ上げたのでありますか。
  846. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) そうです。
  847. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 淀橋では結局やらなかつたのでありますね、それを……。
  848. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 淀橋は、ただ告訴だけの問題を吟味するだけであつたのであります。
  849. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 外のことはまだ手を着けなかつた……。
  850. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) まだそこまでは行つていなかつたのであります。
  851. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは殊更に署長や何かが手を着けなかつたというわけですか。
  852. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) いや、そうではありません。これは事件をやる場合にいろいろ檢事局と事前の連絡を取りますから、これからどうしよう、ああしようというような段階にある時に、事件が移管になつてしまいましたから、淀橋でやらなかつただけであつて、問題を考慮してやらなかつたということは私は感じられなかつたのであります。担当者の渡辺搜査主任も相当な決意を以つてつてつたようです。
  853. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 建築違犯やなんかのことはずつと前から起つておることでありましよう。
  854. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) そうです。
  855. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それだけで告訴になつてつたから、その前に着手すべきことではないかと素人考えでは思えるのですが……。
  856. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) これは警察としてはやらなければならんことであつたと思います。
  857. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それも小さな九尺二間ばかりの家ならばともかくも、あれだけの厖大な家を無茶苦茶に作つちやつたというようなところから、所轄警察としては、建設局からも言つておるんだし、区役所からも言つておるのだから、事前にお取調べ願わなければならんと思うのでありますけれども、それはしていなかつたのでありますね。
  858. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) していなかつたのであります。
  859. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その間にいろいろな政治的な交渉もあつたのでありますかね。
  860. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 尾津氏は各方面の有力者に折衝があつたわけですから、そういうことでいろいろ関係があつたじやないかと私が憶測するのであります。
  861. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで手を着けることが遅れておつたのでありますね。
  862. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) そんな工合に感じられます。
  863. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これは一般的の話ですけれども、尾津事件の捜査をあなたの方が担任して開始なさつたのでありますが、その捜査方針というようなものは、どういうところへ置かれたのでありますか。
  864. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) とにかくああして、社会、天下環視の只中にああいう事態は許されん。これを明瞭にしなければならんということで、本人の罪跡を求めるということに方針が決まりました。
  865. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ちよつと前に戻りますが、前署長の何か不正とか何とかいうことをお取調べになつたですか。
  866. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 不正ということは出て参りませんでしたが、噂がいろいろ当時流布されたようです。
  867. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはお取調べになつたのですか。
  868. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) それはもう檢事局も関與しておつたというようなことも聞いたり、それは檢事さんの方へ一切仕末を委しておつたのです。
  869. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの方はお取調べにならなかつたのですか。署長さんの建築の問題に関しては調べたのです。
  870. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 前署長の名前は何とおつしやつたのですか。
  871. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 安方四郎と言つたと思います。
  872. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それからあなたが執行停止以後にお調べになりましたね。
  873. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 執行停止後……。
  874. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お調べになりました経済違犯ですね。
  875. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 執行停止をやりました後は樽という警部補がやられた。
  876. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その経済違犯の事件ですがね、後に調べられた経済違犯の事件は、その前に判明しておつたんじやないですか。あなたが捜査なさるときから、淀橋警察におる時分に、すでにそういう事件は判明しておつたんじやないですか。
  877. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 私の当時はまだそれまで分つていなかつたのです。
  878. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは事件の捜査線上に現われて來なかつたのですか。
  879. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 現われて來なかつたのです。
  880. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうするとあなたが引継ぎというのですか、仕事の担任が変るまでは出て來なかつたのですか。
  881. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) そうです。
  882. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうような噂もお聞きにならなかつたのですか。
  883. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) いろいろ何かあるだろうというような話はありましたけれども……。
  884. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 的確なものは……。
  885. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) とにかく告訴の問題を片付けるということが、その当時の事件であつたのです。
  886. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 経済違犯なんかについての投書なんかなかつたですか。
  887. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) ありませんでした。而も当時選挙が始まるというので、彼が立候補するというので、まあまあこの程度でというような空氣もありましたので、あの程度にしたのであります。
  888. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 淀橋署では経済違犯のことなどは分つてつたものではないのでしようか。
  889. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) それはどうか分りません。
  890. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お分りになりませんか。
  891. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) ええ。
  892. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなた尾津をお調べになつた模様において、尾津が呼出しに直ぐ應じて参りましたですか。
  893. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 呼出しには應じて参りました。
  894. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お調べになる上においてどうですか、態度は傲慢、威圧するような、そういうあれはなかつたですか。
  895. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) これは初めから私の方針は、呼出しで調べるというのでは手温いというような感じでしたが、ところが檢事局の態度は、どうもそれだけの事実では拘束するわけに行かんというような方針でありましたために、自由な拘束で調べることになつたのです。当時まだ憲法改正にもなりません時代で、自由な拘束はできた時代です。天下の大物でしたから、とにかく呼出しくらいで簡單に應ずる筈がない。又調べを完了できる筈がない。私の方針としては、拘束で調べなければならんというつもりであつたのですが、それが許されませんでした。初め呼出しで調べる当時は、非常に從順に調べに服しました。併し問題を中心に関しては全く否認です。
  896. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 全部否認したのですか。
  897. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) ええ。態度は極めてよかつたであります。
  898. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 態度は普通であつたのですね。
  899. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) ところが、これが一旦令状を以て拘束するということになつた場合には、これは豹変してしまつた。それで私は非常に身の危險を感ずるような言動も受けたし、非常に威圧を加えた。
  900. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、非拘束でお取調べになつているうちは從順であつたけれども、一旦拘束になつたら、今度却つて反対に非常に狂暴な態度を表現して來たと、こうお聞きしてよろしうございますか。
  901. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) そうでございます。
  902. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それについてはあなた自身も身の危險を感じたと……。
  903. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) そうです。
  904. 伊藤修

    委員長伊藤修君) こういうふうに伺つてよろしいですね。
  905. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) そうです。
  906. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 例えばどういうようなことですか。
  907. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 例えば拘束して警視廳に來た場合、天下の國士を遇するの途を知らん。鈴木、貴様もやはりおれは分らなかつたか、この馬鹿野郎というような態度でした。檢事局へ行つても、おれを調べる判事は誰かというようなことで、傲然としておつたようであります。それで、当時身柄拘束しない場合に、一旦記録を送つたことがあるのであります。三月の十九日でしたか、そのことが各新聞社に報道されまして、その報道された朝私のところに子分が四名、はんてんを着てやつて來たのです。これは彼の親衞隊といわれる楠木というのですか、桔梗寮という寮がありまして、そこに親衞隊を置くという評判があつたのです。その隊長です。その楠木がはんてん着て、子分四名引連れて私のところへやつて來まして、これは私のところに來る前に、各新聞社を歴訪して、どういうことを言つたか知れませんが、つまり新聞に出たことについて相当にいやがらせを言つたのであります。そうして私のところへ來てから、今度親父が力候補するについて非常な宣傳になつた、ついては非常にあなたの御苦労に対して、我々は一席ねぎらいたい、今晩招待するから出席して呉れるというような話だつたのであります。それで、それをあとで彼を拘束した場合にそれを述懐して曰く、あのときお前をやつつけてしまうつもりだつたということを言つておるのであります。
  908. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは、親衞隊の連中は、尾津君が連れて來たのですか。楠木が……。
  909. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 楠木というのが連れて來たのです。
  910. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お宅ですか、役所ですか、
  911. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 役所です。
  912. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで、あとで述懐したのは誰が……
  913. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) あとで尾津が拘束されたときに述懐したのです。あのときお前をやるつもりだつたのだ。それから自宅に私が行つた場合も言つたのであります。大体君はここに來るなんということは恥知らずだ、おれがベルを一つ押せば、おれも駄目になるが貴樣も黒こげになるというようなことを放言したのであります。
  914. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが……
  915. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 尾津を勾引に行つたときに…
  916. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ベルを押せば両方が駄目になるというのですか。
  917. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) おれも駄目になるが貴樣も、両方が駄目になる……
  918. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういう……
  919. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 何か電氣仕掛でもしてというような意味……
  920. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 爆彈でもあるというのですか。ベルを押して爆彈でも破裂して…
  921. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) そういう意味があると思います。これは、貴樣の首を十万円賭けた……
  922. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたに……
  923. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 尾津本人でなくて、そういう噂があつたのであります。尾津でなくて、私の首に十万円賭けたという噂があつたのであります。
  924. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その他子分の連中から、あなたを脅迫するようなことはなかつたですか。
  925. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 子分から直接ありません。
  926. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 投書や何かなかつたですか。
  927. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 投書もありません。
  928. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今のお言葉にありました桔梗寮の親衛隊の連中ですね、それはどんなあれですか。
  929. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) これはあとで他の誰かが檢挙しましたが、前のことを言わんで呉れと、大分恐縮しておりましたが、これは元航空隊におつた將校らしいのですが、それが隊長で、年中尾津の秘書としてついていたようです。
  930. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 楠木というのが……
  931. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) そうです。
  932. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どのくらいおるのです。親衛隊ですか……
  933. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 何名おりましたか人数は分りませんが、桔梗寮という寮を作りまして、そういう若い連中を集めて住わせておつたようです。
  934. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 凡そ何名ぐらいおつたですか。
  935. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) これははつきり分りません。寮も余り大きいものでありませんから……
  936. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは結局親衛隊というのは命知らずの連中ですね。
  937. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) そういうことを言われておるのであります。
  938. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その後家宅捜査なんかなさつたのですか。
  939. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) やりました。
  940. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 武器や何か出ましたか。
  941. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 武器も何も出なかつたのです。
  942. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 現在そういうものは解散しているのですか。現在も尚且つあるのですか。
  943. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 今はないと思います。
  944. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、捜査をなさる上において、相当そういう意味の危險を勿論感じておられるし、それから犯罪事実に対しましても、証拠湮滅という点に対しては相当御注意になつたのでございますね。
  945. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 証拠湮滅ということは感じられませんでした。もう全部外部から証拠が固りましたから、そういう証拠湮滅のことについては心配はありませんでした。
  946. 伊藤修

    委員長伊藤修君) なかつたですか。そうすると、身柄を拘束するということは……
  947. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) これは最後に私が送致した書類を檢討されて、或いはその後に高木檢事さんも調べられて、確証を得て勾引状になつたのです。それで拘束をしたわけです。
  948. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、勿論拘束されるには証拠湮滅の点を懸念しておるでしようね。
  949. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) そうと思います。それは檢事局の意向でございますから。
  950. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それとも暴力を用いて、或いは闘爭するという意味ですか。
  951. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) それは檢事局の方針でございますから……
  952. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの方は。
  953. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) ただ命令を実行するだけであります。
  954. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたがお取扱いになつたところで、いろいろお分りになつたことと存じますが、尾津の一体團体の勢力というものはどんなものですか。
  955. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) それはただ尾津組々々々という名ばかりであつて、実体はどうであつたか、調査したこともないのです。それですから眞相は分りません。
  956. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、尾津のいわゆるやくざの方面は、あなたはお調べにならなかつたわけですか。
  957. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) その方まではやつておりませんでした。
  958. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津営業関係についてはお調べになつたのですか。
  959. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 営業状態は調べません。
  960. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、尾津のいわゆる財的の力というものはお調べになつたことはないのですね。
  961. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 財力ですか。
  962. 伊藤修

    委員長伊藤修君) え。
  963. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) ただ本人が言うのを聞いただけであります。
  964. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どんなことを言いましたか。
  965. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) まあ五千万円ぐらいあるだろうというようなことを言つておりました。
  966. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 財力がねえ。
  967. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 財産です。
  968. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、尾津の團体的の勢力はどんなものだということは、ほぼあなたの御推察から聞いたうちでないのですか。
  969. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) その数は分りませんが、ただ外部で尾津組々々々というだけであつて、本当の部下は居ないのだというようなことは聞いたことがありますが、その数の点ははつきり分りません。
  970. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 親衛隊というようなものもあり、その他子分相当あるものと想像できますね。
  971. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) そうです。
  972. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 相当なものであることは想像していらつしやつたのですね。
  973. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) そうです。
  974. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一朝間違えばどんなことを仕でかすか分らないという危險は感じておられましたか。
  975. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) それは元淀橋区長さんから私聞いた場合にも尾津がはつきり言つておりました。その立退きを阻止するならば、子分を動員して、血の雨を降らしてでも阻止するということを放言しております。
  976. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは誰に言つたのですか。
  977. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) それは元の淀橋区長です。
  978. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 区長に対して尾津の元の子分というのですか、尾津組の者を動員するというのですか。
  979. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) 尾津組を動員して血の雨を降らしても、この建築は完成する、遂行するということを発言しております。
  980. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そんなようなことがあるために、所轄の警察では手を着けていなかつたのではないですか。今建築違反とか、そういうことに対しても。
  981. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) まあこれは私のなんじやありませんが、東京都の建設局あたり、警視廳に対して協力を求めてやればできたのじやないかという感じを持たれます。
  982. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 先程から伺つて、当初あなたは身の危險を感じられたのですか。それに対して檢察廳に御相談になつたことがありますですか。
  983. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) その事情は話して置きました。
  984. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それに対して何か特別の措置をとられたですか、事件を捜査する上において。
  985. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) これは、態度が変つたのは檢挙後です。本人がいない場合ですから、收容されたあとですから、それだけのなには必要はなかつたのじやないかと思われます。
  986. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いわゆる本人以外の、子分たちの動搖ということに対して……。
  987. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) その点までは聞きませんでした。
  988. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 別に特段の手配はなさらなかつたのですか。
  989. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) なかつたようです。
  990. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その他子分から何か脅迫を受けたようなことはないですか。
  991. 鈴木太三郎

    證人(鈴木太三郎君) ありませんです。
  992. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 外に何か御質問の方は……。それでは、どうもお忙がしいところを有難うございました。それでは、元林証人が今來るという電話が裁判所からかかつて來ておるのですが、來るまで少し休憩いたします。    午後二時四十三分休憩    —————・—————    午後三時三分開会
  993. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは休憩前に引続き調査会を開きます。    〔証人元林義治君着席〕
  994. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本日証人として御出頭願つたのは尾津事件に関しまして、裁判所のとられた処置について少しく調査する必要がありまして、関與されましたあなたの証言を求めるために御出頭を願つたわけでございます。
  995. 元林義治

    證人(元林義治君) そうすると裁判所のとられた処置に対しての事実の調査でございますね。
  996. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうでございます。
  997. 元林義治

    證人(元林義治君) それについて私証人として宣誓をし、証言をする前に、一應私の意見を述べて置きたい。裁判に関しては國会はこれに対する指揮監督その他調査の権限がないものと私は思料しております。それでここで質したいことは、委員長にどの法條に基いて尾津事件に関する裁判所のとられた処置、即ち裁判に対して証人をお調べになるのか、この根拠を明らかにして頂きたいと思うのであります。
  998. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 当委員会におきましては、裁判そのものについて取調べるのではないのですから、裁判所がとられた行爲について、國家の最高機関として、國家の一機関がとられた行爲について、調査の必要がありとする場合において、調査ができると考えておりますから……。
  999. 元林義治

    證人(元林義治君) 今私が反問いたしました裁判所のとられた処置、即ち裁判であると言いました通り、裁判に関しては國会は何ら関與する権限がないものではないか、憲法上の根拠を明らかにして頂きたいのであります。
  1000. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 憲法上は六十二條ですね。それに基いておるのです。
  1001. 元林義治

    證人(元林義治君) 分りました。六十二條には國政に関する調査と書いてあります。裁判は國政に関するものでないという私の見解を持つておりまして、この國政は即ち國の行政であつて、地方自治團体の自治に相対應するところの言葉であると私は解釈するのであります。裁判所のとつた処置、即ち裁判は國政に関するものでないと私は思うのであります。
  1002. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはあなたの御見解でありますから、こちらといたしましては、廣くこれを司法行政という面に対しまして、國政と解釈しておるのでありますから。
  1003. 元林義治

    證人(元林義治君) 私の見解が正当であるならば、この司法委員会は憲法を無視したところの委員会である。私は憲法の精神に基いて、この委員会の存在を否認せざるを得ないのであります。よつて私はここに最後の結論は申しませんで、留保いたしますが、証言の拒否をせざるを得ん結果になるのではないかと心配しておるのであります。ただここに附け加えて置きたいことは、この事実の眞相については、私は何らかの方法によつて明白にして、社会の誤解を解くことが國家のため、司法裁判のために必要でなかろうかと思つておりますから、私のこの証言、その内容の点について拒否したいというのではなくして、憲法の精神に基いて、この司法委員会の証人訊問は憲法であるという立場から、証人の証言を拒否したいと思うのでございますが、裁判は國政の範囲に入りますか、それをお尋ねいたしたい。
  1004. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 裁判そのものは、我々としては関係しておりません。
  1005. 元林義治

    證人(元林義治君) 次にお尋ねしたいことは、私に尾津事件に対する裁判所の処置、即ち裁判について訊問した結果、どういう司法委員会とし、委員として処置をおとりになるのか、目的をお聽きしたいのであります。
  1006. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは、あなたに質問を受ける理由ではないのです。
  1007. 元林義治

    證人(元林義治君) 理由ではございませんか。私は新聞記事が間違つておるのか、裁判を裁く議会のごとく一般國民が誤解しております。これは議論でなくして現実の社会の実相であります。三権分立は日本の憲法、これは旧憲法及び現在の新憲法においても、間違いない原理だと思うのでございます。そのとつた裁判所の処置に対して、議会の國家の最高機関であると雖も、三権分立の立場をとつた以上、その裁判に対して干渉すべき筋合いでなかろうかと私は思つておるのでございます。司法官が非常に廉潔な生活せ維持し、その職務の執行に当つて、実に公明正大であつたということは、私二十数年司法部に勤めておりまして、実に自分ながら感心しておるのであります。これは偉人はおりませんけれども、我々司法部の全体は、先輩がよき傳統をお残しになつたということに対して、私個人とし感謝し、國民として感謝しなければならないのではなかろうかと思つております。私の例を以て言いますならば、私が二十数年司法部に勤めておるうちに、事件関係人で私の家を訪ねた人はたつた一人であります。それは某田舎裁判所に勤めたときの出張裁判の調停事件だそうであります。事件内容さえ知らないのでありますが、或る爺さんが何か持つてつて來て、家内が断わり切れないで、私が日曜日に出まして、どうかそれはして呉れるなと手を合わすようにおがんだ結果、毒は入つていないからと言つて、捨てるようにして帰られた爺さんがあります。これが一件であります。弁護人事件のことで判事の私宅を訪ねたことはたつた二回であります。それは戰爭中に召集令状が來たからということで、私がどういう処置をとつたか、弁護士さんの名前も覚えておりません。それが一つであります。他の一人は有名な方でありますが、執行停止をした被告人が逃走した、こういうので日曜日か祭日に私の私宅をお訪ねになりました。その二件であります。誠に司法部は廉直な公正な態度をとつて來たのであります。一般社会も、もう裁判に移つた以上はどうにもならないという、こういう観音を持つて來たのが日本の現在に至るまでの実情であります。殊に敗戰後軍隊を廃止した日本においては、何によつて治安の維持をするか、これ司法部より外にないのではありますまいか。この司法部の威信を傷付けるような処置は何人もとるべからざるところであることは論を俟たない。然るに國家の最高機関であり、國政を牛耳るところのこの議会において、その司法部の威信を傷付け、司法官の國民から寄せられるところの信頼を傷けられるような処置をとられたことは、私は甚だ遺憾に思うのであります。私は希望を申上げますならば、即刻にこの司法部に関する、即ち裁判に対する議会の司法委員会を解散されんことを希望いたしたいのであります。結局証人としては、おのおのその機関の行動は目的を持つてなされておるので、その目的を明らかにするにあらずんば、証人として証言することができないのであります。その証言が苟くも國家存在に関する議会の精神に悖り、憲法の本旨に反し、司法部の威信を傷付けるようなことがあつては、内容については供述したいことは山々でありますけれども、この存在を無視して拒否せざるを得ないのではないかと考えるのであります。よつて私は重ねて委員長に、これを調査せられた結果、議会として、司法委員会として如何なる処置をおとりになるか。それを明確にして頂かなければ、私も公人としてここで証言をするについて、何の目的があつて、何の社会的の理由があつて、何の國家的に貢献すべき理由があつて、証言するのか迷うのであります。どうかこの司法委員会が尾津事件に関して、裁判所のとつた処置に対して証人をお調べになつて、その結果如何なる処置に出てられるかについては、是非明らかにして頂きたいと、私は再び要求する次第であります。があつて、証言するのか迷う
  1008. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 外にありませんか。
  1009. 元林義治

    證人(元林義治君) それだけ。まあとにかくこの結果はどうなるか、そこのところを明らかにして貰わなければ、如何に証人が供述業務があるといつても、私は國家全体の存在に関する意味からして悪い結果を及ぼすようなことについては、供述いたしたくないのであります。
  1010. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お答えする義務があるかないか分りませんけれども、一應そういうお問いがありますから、申上げるだけは申上げて置きますが、我々といたしましても、司法の独立に対するところの信頼というものに対しては、相当強く抱いておるつもりです。今日お説のように、日本のすべての機構の上におきまして、司法権に対する依頼心というものが、尊敬心というものが、我我としてあなた以上に持つておるつもりです。故に当委員会におきましては、日本の司法権の威信をより以上に高めんとして、あらゆる面に対して努力しておるつもりです。今日までもその行動に出ておると思います。その線に副うて、我々は今日まで立法せんとし、或いはその他の面におきましても、非常な関心と努力を拂つて來たつもりです。又第二点の、一体國家といたしまして、立法、司法、行政とこうある場合におきまして、これはあのおの相独立しておるのでありますが、併しながら、それは一に國家の機関であります。國家の一つの使用であります。その場合におきまして、國民の主権を代表するところの國会が、この三つの機関を平等に行使し、運用し、働かしむるということは、正に必要欠くべからざることとも思うのであります。その場合に司法権のみが、國家の進むべき道と相反する行動に出でるというようなことが、若しありといたしますれば、これに対しましては、國家といたしまして、相当の勧告もしなくてはならん。又注意もしなくてはならん。又とるべき手段もしなくてはならん。立法措置も必要である。例えば、國家として進むことの大本は定つておる。然るにも拘わらず司法権のみがひとり軍國主義に走る、或いは共産主義に走つて行くというようなことがありといたしますれば、これに対しまして國家の最高機関として評判を加え、或いはこれに対して適当な措置をとるべきことは当然の義務ではないかと思うのであります。又卑近な例を以ていたしまして、國家の我々が尊敬するところの司法官に対しまして刑事上の疑いがあるというような場合、或いは道義的の疑いがあると、司法官としてなすべからざるところの行爲をなしておると、こういう場合におきましては、正に國会としまして、國民の代表として、又最高機関といたしましても、これに対しまして評判を加えるところの資格は十分に備えているものと考えるのです。故に我々といたしましては、國家の最高機関としてこれに対するところの必要な調査をするということは、正に私達としては当然の職務を履行しているに過ぎないと思います。又その調査の目的がどこに落着くかということについては、証人たるあなたに釈明する必要はないと思います。これは私から國会に対して報告いたしまして、その際國民にそれを表明することによつて責任は果されるのですから、それはあなたの質問に答える義務はないと思うのです。  以上の次第ですから、あなたに証言を求めますから、あなたはそれによつて証言を拒否なさるならばなさるでよろしいですから、明らかにして頂きます。
  1011. 元林義治

    證人(元林義治君) これは私の見解でありますが、裁判に関しては上訴する方法があつて、保釈の決定が間違つておるならば、檢察官側において抗告する権利が認められておる。おのおの裁判所の階級制度に基いて、是正し得る途が訴訟手続上開かれております。これに関して議会が調査をなされ、そうして又とるべき手段をおとりになると委員長が仰せられた。これは私は議会の司法権に対するところの審判であろうと私は考えるのであります。が故に、私はそのような筋は速かに解消して頂く、こういう希望を申述べて置きます。事実社会において、私が先程申上げましたように、司法官ほど潔白な廉潔な生活をしている者はなかろうと思います。幾多の、何十万という官吏のうちに統制経済のこの法規を遵守して餓死した、こういうことは皆樣も御存知でございましよう。全く裁判官より外にはないと私は信じます。大阪に参りましたが、二十一人すでに病氣になつて欠勤している。このような非常に清廉潔白な……。
  1012. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 我々その点はあなた以上によく調査して十分承知しておりまして、近くそれに対するところの措置を考慮しようとしているのですから、今あなたからお教えを受けるまでもないことです。私共十分了承しております。
  1013. 元林義治

    證人(元林義治君) それに対して呉解を受けているという現実の事実に対しては‥‥。
  1014. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは当調査会が発表されることによつて、國民の誤解というものはおのずから解けるのです。新聞紙上に傳えられたところを臆測して國民が判断を下しているのですから、その点多少の誤解があるかも知れませんが、当調査会において発表されることによつて、おのずから解けることで、又あなたが再三主張されるところの裁判に対するところの審判だとおつしやるけれども、裁判に対する審判があるや否やということは、我々の調査報告によつて批判さるべきことであつて、あなたの今日の批判はまだ先走つてはいないかと思います。
  1015. 元林義治

    證人(元林義治君) それでは、裁判所の例によりましても後においても宣誓をせられるのでありますから、後に宣誓さして頂きたいと思います。訊問にお答えいたします。
  1016. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 先ず宣誓をお願いいたします。宣誓を拒否なさるなら拒否なさるで、それから決定いたしましよう……。
  1017. 元林義治

    證人(元林義治君) 宣誓は拒否いたしませんが、私は今言う裁判に関する証言については、私は部分的に拒否せざるを得んのではないかという……。
  1018. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは内容については又別問題でありますが。
  1019. 元林義治

    證人(元林義治君) 先に宣誓して置きましよう。私も急ぎますから。
  1020. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは宣誓書を朗読して下さい。    〔総員起立証人は次のように宣誓を行なつた〕    宣誓書  良心從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 元林 義治
  1021. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 申すまでもなく、宣誓に違うと僞証の制裁がありますから……。お年幾つですか。
  1022. 元林義治

    證人(元林義治君) 五十二歳です。
  1023. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 学校はどちらをお出に……。
  1024. 元林義治

    證人(元林義治君) 学歴としましては、日本大学法文学部法律科を卒業しております。
  1025. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 学校をお出になつてから司法官をおやりになつておられたのですか、いつ頃からおやりになりましたか。
  1026. 元林義治

    證人(元林義治君) 昭和四年の試補であります。その後判事に任官して以來昨年奈良縣知事に立候補するまで、昨年の三月十二日まで勤務しておりました。
  1027. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 弁護士はいつ頃から御開業になりましたか。
  1028. 元林義治

    證人(元林義治君) 弁護士は昨年の七月二十五日に登録になつたと記憶しております。
  1029. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたと尾津君とはいつ頃からのお知合ですか。
  1030. 元林義治

    證人(元林義治君) 知事の立候補を決意して、資格申請書を出した後のことで、退職する直前であります。
  1031. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その頃即ち昨年の三四月頃のことですが、あなたは予審判事の肩書のある葉書ですか、手紙ですか、お出しになつて尾津面会をお求められたことがありますか。
  1032. 元林義治

    證人(元林義治君) 記憶しておりませんね、それは。
  1033. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津がその招待に接して、尾津があなたの所にお伺いして、御馳走になつて選挙の立候補の話をなさつたのではないのですか。
  1034. 元林義治

    證人(元林義治君) 私が伺つたのではなくして、誰か露店商組合ですか、それの斡旋かで皆んが集つて、そこで初めて顔を知つたので、私は伺つておりません。
  1035. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの方に來たわけでありませんか。
  1036. 元林義治

    證人(元林義治君) 私の方へはこの会に來たのが初めてです。
  1037. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 知事の選挙に立候補なさいましたね。
  1038. 元林義治

    證人(元林義治君) そうです。
  1039. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから衆議院の選挙にも立候補なさいましたか。
  1040. 元林義治

    證人(元林義治君) 立候補いたしました。
  1041. 伊藤修

    委員長伊藤修君) すの直後尾津に選挙費用ですか、何か三百万円程融資を求められたことがありますか。
  1042. 元林義治

    證人(元林義治君) 選挙費用ではございません。それは或る会社を建てるについて資金が誤算のためにできなかつたために投資を求めたのです。
  1043. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう投資を求められたのですが、三百万円の投資を求められたわけですが、尾津相当資産を持つておるというお考えであつたのですか。
  1044. 元林義治

    證人(元林義治君) そう、社会では千万円も持つておるというような噂を聞いておりました。結果はそうでないような私は結論付けました。
  1045. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 当時として相当資産を持つておるというふうに考えられましたが。
  1046. 元林義治

    證人(元林義治君) そう考えておりました……。
  1047. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どのくらい……。
  1048. 元林義治

    證人(元林義治君) 今言つた通り千万円持つておるというような世間の噂がありましたから、大体そう信じておりました。
  1049. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのくらいに考えておりましたか。
  1050. 元林義治

    證人(元林義治君) 考えておりました。
  1051. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあそういうふうですから、御存知ないかも存じませんが、尾津がどういうふうにして財産を作られたということは御存知ないですか。
  1052. 元林義治

    證人(元林義治君) それは何も分りませんね。
  1053. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津は一面街の顔役と俗にいつておりますが、要するにやくざの中で勢力を持つて相当子分を有しておるということは御存知ですか。
  1054. 元林義治

    證人(元林義治君) そこが非常に認識不足であつたのですが、ただ露店商組合という合法的な一つの地方の組合長であつて、露店とか、或いはその他のああいう事業によつて金を儲けておることで、親分ということについては何ら考えていなかつたのです。私としては。
  1055. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、あなたとしては一つ事業家というふうに考えておつたのですね。
  1056. 元林義治

    證人(元林義治君) そうです。そこで附加えて申上げることは、なぜ私が知事に立候補するときに、尾津氏は初め十何人かの露店商組合の役員が見えましたが、その介在した目的は、自分は知事に当選し得る自信を持つて立候補したのでありますが、その後の地方自治團体の行政、又直接政見発表に対するところの材料を得たい、こういう関係で意見を聽いたのです。私の郷里は農村でありまして、兄が非常に農村政行に熱心なものですから、その方からの知識、生産者の知識はあります。それで消費者側の意見を聞きたい、こういう考えから私は、露店商組合の人達が團体を作つておるから、一番手取早いと思つて聞いてみたのであります。
  1057. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ尾津に言わしめると、あなたを相当選挙の際に後援しておるようなことを言つておりますが、それは金銭ですか、或いは運動の面において應援したという意味ですか。
  1058. 元林義治

    證人(元林義治君) 金銭は一文も貰つておりません。
  1059. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、地盤関係の應援ですか。
  1060. 元林義治

    證人(元林義治君) 地盤関係の應援のみに止まります。
  1061. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 昨年六月尾津が檢挙されたことは、いつ御存じですか。
  1062. 元林義治

    證人(元林義治君) 丁度奈良縣から初めて引揚げて帰つてのは六月の二十五六日頃でありましたが、そのときに新聞記事によつてつたのであります。
  1063. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津の弁護をなさるのは、あなたが從來の選挙の厚誼上の関係から、あなたから進んでなされたのか、或いは向うから依頼を受けたのですか。
  1064. 元林義治

    證人(元林義治君) 私は落選はしましたが、恩義に報いてみずから進んで弁護人になつたのであります。附加えて申上げて置きますが、私は郷里に帰つて、新聞記事を見ておりませんが、弁護士元林という資格の下にいろいろな記事をお書きになつているようですが、今委員長のお尋ねで明らかのように私は当時、結局知事になる自信を持つて、落ちたときは弁護士をする考えは毛頭なかつたので、弁護士の登録をしておりません。であるから、この尾津の裁判に対しては、弁護士の資格において私は裁判所において交渉したことはございません。特別弁護士の許可を受けまして、單なる特別弁護人として関係したのでありますから、新聞記事も非常にそこに誤解しておるのではないか。これは私のとつた行動は決してやましいところはない、正しいことであるから、本日申上げたいと思つておるのでありまするが、それが誤解をされて、弁護士という資格者において、悪い影響を及すようなことがあつては私は誠に申訳ない。全体私が弁護して非常に心配しておりますが、新聞記者の方もその点を明らかにして、当時私は弁護士でなかつたのであるということだけをはつきりいたして置きたいのであります。
  1065. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、特別弁護人として許可を受けられたときは、まだ弁護士の登録はなさつておられなかつたのですか。
  1066. 元林義治

    證人(元林義治君) 手続はとつておりますが、何分奈良のことでございますから、いつ登録になつたか分らなくて、まだ登録になつておりませんでした、結果から申しますと。
  1067. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それが故に特別弁護人の許可を受けた、こういう意味ですか。
  1068. 元林義治

    證人(元林義治君) そうです。
  1069. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勿論そういう関係ですから、普通弁護士としての報酬契約とか、弁護契約というものはおありにならないのですね。
  1070. 元林義治

    證人(元林義治君) 何もいたしておりませんし、取るべきものではございませんね、特別弁護人は。
  1071. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうですね。尾津の特別弁護人になることは、尾津から承諾を得たわけですか。承諾を得たわけでございますね。家内から依頼されたというか、家内から承諾をとつた……。
  1072. 元林義治

    證人(元林義治君) そこのところははつきり分りませんが、どちらが先になつたか。尚名前は記憶ございませんが、あすこに相当口をよくきかれる副組合長と申しますか……。
  1073. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 岡戸というのですか。
  1074. 元林義治

    證人(元林義治君) 相当堂々として……。
  1075. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 副組合長岡戸でありませんか。
  1076. 元林義治

    證人(元林義治君) ちよつと違うように記憶しますが、その方と直接の交渉があつたのです。誰から依頼されたこともなく、結局面会に行つて尾津氏の署名を貰つて出したか、妻君の署名をその人を通じて貰つて出したか、この点は記憶しておりません。
  1077. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 特別弁護人になられましてから、尾津に何回ぐらい、九月十二日までですね、昨年の九月十三日まで、いわゆる仮釈放になるまでですね、その間何回ぐらい会われたですか。
  1078. 元林義治

    證人(元林義治君) そうすると、今の九月十二日というのが、仮釈放になつた期限を申すのですか。
  1079. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうです。
  1080. 元林義治

    證人(元林義治君) 大体細かなことはあとでお答えいたしますが、この点だけ御了解願つて置けば、おのずからこれからの証言が明らかになると思うのであります。私は松本判事に二回会つただけで、公判には一回出ただけしかありません。当時殆んど奈良へ行つておりまして、そうして第一回の公判のときには、証人、証拠の準備のため弁護人が続行を求められて、暫く期日未定で、第二回以後は私に期日の通知がなかつたのです。私が知らないうちに、いつか裁判所へ行つてひよつと覗いたら、尾津の法廷があるので、自分に召喚状がない、期日の通知がないので不思議に思つて、僕が出ないから誰か解任してしまつたかと思つたくらいで、私は弁護人届を出すとき拘置所へ行つて、一回か二回会つたくらいだろうと思つておりますが、ここのところは、私は例の二十万円の話のときも、ちやんと二十万円と書いておられたのを記憶しておりますが、一回か二回だろうと思います。尾津自身に会つたのは。
  1081. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 或いはあなたのお氣持か、或いは尾津関係者のお氣持かは存じませんが、要するにむしろあなたに特にお願いするという点はですね、尾津が仮釈放になるという点はですね、尾津が仮釈放になるという点に重点を置いておるのじやないでしようか。
  1082. 元林義治

    證人(元林義治君) それは先方の方とで私は分りませんが、私自身としても、そのときは尾津を釈放してやりたいという氣持から弁護人になつたわけでございます。
  1083. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 公判の進行というより、その面の方へ多く努力が注がれた、そういうふうに伺つてよろしうございますか。
  1084. 元林義治

    證人(元林義治君) そうなんです。
  1085. 伊藤修

    委員長伊藤修君) こういう話はありましたですか。裁判所には知つておる人がおると、松本裁判長は、自分が元使つてつた男である、私が盡力してやると、こういうようなことを尾津尾津の家内か、岡戸か、どなたか尾津の方の関係者におつしやつたことがありますか。
  1086. 元林義治

    證人(元林義治君) それは絶対にないのであります。併しそういうような記事が出たが、或いは私の知らない公判廷で尾津自身がそういうことを言つたというようなことから、私の耳に入つておるものですから、私はあの公判で尾津が私を非常に中傷したそうでありますが、その動機、原因は未だに分らないのであります。そのときにおいて私のとつた処置は公明正大であるから、どこへでも、誰にでも申上げられる。又すべてを人にも言つておりましたけれど、ただこれがそういうふうに、自分が最近まで裁判所に勤めておつた関係上、裁判所を特に動すか関係とか或いは力があるというふうに社会に誤解を受けるような、或いは又そういうような言葉を弄して依頼を受けるというようなことがあるとか、若しくは又社会に、依頼人に、そういう事実の力があるように思わしめておるならば、これは先程申す司法権の公正な行使ということに対して、社会に疑惑を及ぼすことであるから、この点だけは何かの機会に釈明したいと、こう思つておりますが、決してそう申しておりません。私はむしろ逆のことを始終言つておる。私、今静岡でも奈良でも大阪でも事件が起きておりますが、他府縣の方が弁護士として活躍がしやすいのです。東京で顔見知りの裁判官であつたら、却つて君損だよとこうも……。從來我々の先輩が築いたところの傳統であります。知つておる人間が弁護に來ると、決して刑は軽くなるものではございません。結局知つておる弁護人だから刑を軽くされたというような誤解を社会的に及ぼしてはいかんという裁判官の心持、私自身はそうでありました。であるから決して得でもない。この間保釈を頼みに來ましたが、駄目だよと言うと、ああそうですかというので直ぐ帰りました。廊下で待つておる他の弁護士が馬鹿に早いのですね、駄目だよと言われたから……。知らん顔をすることもできないし、無理できるわけでもなし、結局そういう態度をとつておるので、依頼人、殊に事件の依頼人が直接言うことはありません。被告人の間に何人かが介在しております。そういう人達が非常に間違つたことを依頼人に傳えたり、世間誤解を及ぼすようなことがあつた、或いは依頼人にそういう心持があるかも知れませんが、元の司法官であつた弁護士は決してそういうようなことを口にするものではありません。ただ私が今から考えるのに、やはりどういう判事さんかというようなことが質問され、或いは話題になつたときには、或いは何年頃の判事さんでどういう経歴を持つておる判事さんであるということも言つたかも知れません。私が特殊関係に基いてこの裁判を有利にするような力があるようなことは絶対に申しません。
  1087. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その際関係者の人がこういうことをあなたに申したようなことはないのでありますか。どんな方法でもよいから、一日も早く身柄を出れるようにして呉れというような意味のことを言うたことはないのでありますか。
  1088. 元林義治

    證人(元林義治君) そういう依頼は絶対ありません。
  1089. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津からもないのでありますか。
  1090. 元林義治

    證人(元林義治君) ありません。私むしろこの事件はそういうような方法をとらなくても、私は保釈し得るものである、又保釈するのが裁判所の当然の処置であると信じてこの事件に掛かつておりました。
  1091. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 又尾津の身内の者が、金は幾ら掛かつてもいいから早く身柄を出して呉れというような趣旨の注文はなかつたのでありますか。
  1092. 元林義治

    證人(元林義治君) それも絶対ございません。第一、先程から申します尾津の身内の者とは私は交渉はございません。副組合長というのは白い服を着た人でありますが、その人と殆んど交渉しておりまして、面接いたしておりません。恐らくそういうことを言つたとか、そういう心持があつたり、そういうことを言つたとするならば、相手のことや本当に珍らしい程多数の弁護人がつきましたが、他の弁護人に対しては申されたかも知れませんが、私はそういう依頼を受けておりませんし、私自身は当然釈放になる事件で、釈放することが当然の事件であるということを信じておりましたから、そういうことは耳にいたしておりません。
  1093. 伊藤修

    委員長伊藤修君) こういうようなことはありませんでしたか、昨年の七月頃尾津の妻と子分岡戸というこの両名が、同時に言うたか、同席しておつて一人が言うたか存じませんが、あなたがその両名に対して本件は……ちよつと速記を中止して……。    〔速記中止〕
  1094. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 速記を始めて。本件は関係方面の誤解を受けているが、関係方面に対しては金より外に助ける手段がない。百五十万円程入用だというような話があつたのではないか。
  1095. 元林義治

    證人(元林義治君) そういう話はございませんが、それに関する、その保釈に関する金銭上の交渉をしたことはございます、それは今自分から申上げてよろしうございますか。
  1096. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや、そういう話はなかつたのでありますか。
  1097. 元林義治

    證人(元林義治君) ありません。
  1098. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 仮に金額は違つても、その他の例えば百万円とか六十万円とか、或いは二十万円とかいうような話はあつたのでありますか。
  1099. 元林義治

    證人(元林義治君) いや、先程の御質問の御趣旨が分らなかつたのであります。もう一度お願いいたします。二人がどうのこうのおつしやつた……。
  1100. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二十二年の七月頃尾津の妻及び子分岡戸、この両名に対して、本件は関係方面の誤解を受けておるが、関係方面に対しては金より外に助ける手段がない、百五十万円入用だとうような趣旨のことをお話になつたんじやないかどうか。
  1101. 元林義治

    證人(元林義治君) それは絶対ございません。
  1102. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それと、金額は違つても同樣の趣旨のお話は出なかつたかどうですか。
  1103. 元林義治

    證人(元林義治君) 趣旨は全然違います。
  1104. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 併し両名の現われたときにどんな話があつたのですか。
  1105. 元林義治

    證人(元林義治君) 私両名列席の上会つたのはただ一回と記憶します。それは私クラブ、満州クラブ、当時の言葉の満州クラブ、今の陶々亭でございますが、それはすでにその以前に、そういうような金についての交渉があつたのであつて、いつ、どこで、誰に対して、どう言つたという記憶は私は全然ございませんが、金銭のことであるから尾津自身についても承諮を得なければならんからというので、金二十万円の程度において実費を出すことができるかどうかという交渉をいたしましたことがありますが、その填末については幾らでも申上げます。
  1106. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは後で……。そのときにもう少し負からんか、百万円くらいにはならんかというような話があつたんじやないですか。
  1107. 元林義治

    證人(元林義治君) とんでもない、そういう百万円という金額が出たことはございません。
  1108. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういたしますと、今お話に少し出て参りました今度二十万円の問題ですが、それはどこで話があつたのですか。
  1109. 元林義治

    證人(元林義治君) 先程申しましたように、その話は一回に交したのではなくして、何回か岡戸氏らを通じての話であつたのでありますが、いつ、どこで、誰と、どういう話をしたという記憶は今ございませんが、大体の筋道だけは今記憶憶しております。
  1110. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それをおつしやつて頂きます。
  1111. 元林義治

    證人(元林義治君) 先程の御訊問にありました、関係方面の方で問題にしておる事件だからむづかしいというような話、これは私はむしろ岡戸氏ら依頼人の方から聞いて初めて知つたことであるのであります。私は純粹の日本の刑事問題だと最初は信じていたのであります。殊に私が土地や家屋の民事訴訟の片割とでも申しますか、その民事の相手が告訴になり、告訴からこの事件が生れたものであつて、刑事問題よりもむしろ純粹な民事問題だと解釈しておつたのであります。であるから、私はこの事件に関しては保釈は当然であり、簡單であると考えておりました。関係方面で干渉しておるとか支持をしておるというようなことは自分では考えたのでも、自分からそれを知つたのでもなく、むしろ相手、依頼人の方から聞かされたことであります。第一その点を釈明して置きます。それからそのことを実際に確かめました。そのことは当時某檢事でありますが、何という檢事でございましたか、この事件を扱われた檢事にも会いました。その主任檢事に対し、こんな民事事件の後仕末について拘留するなんというのは少し行き過ぎではないかというようなことを、恐らく私がなじつたのでございましよう、そうしたら、いや僕もそう思うんだ、この事件に限つて在宅が相当だと思う。これは間違いない、私の耳に残つておる言葉であります。私が事件の見通しをつけ、主任檢事がそう言われるから、ますます私は在宅が相当であり、保釈は当然できるかと思つてつたのであります。ところが、その某檢事の言葉にやはり困難なところがある。若し自分が在宅起訴するならば、自分というものの地位にも関係する、恐らく裁判所でもこれを保釈するならば、同樣な危險があるのではなかろうかというような話をいたしました。で、私は松本判事に会いましたが、そういうようなことを申しませんが、やはり同樣、これはもう保釈して然るべきではないか、私はこの事件に対して、被告人自身を愛する心持よりも、むしろ新宿の発展のため尾津氏の釈放を勧めなければならん、帝都復興のために、尾津氏を一日も早く社会人としなければならんという大きい政治的の考えを持つてつたのであります。尾津氏も、あのマーケツトの申しますか、家で、あの年の十二月に、危險だからあれはそつくり一文の金も貰わずに、相手方に、土地の所有者に上げてしまうのだ、もう少し待つて呉れればよかつたのだと、いつか面会のときに話したことがあります。ですから、私は在宅起訴、或いは拘留で起訴されれば、すぐ保釈されることが相当であると思つて、松本判事にそのことを申しました。そうしたら、冗談であつたか、あとで笑われたのですが、檢事が相当の意見を附けて來れば保釈しますよと、こう言う。それからその当時檢事局のあれこれの噂を総合して、結局岡戸氏も申しましたが、尾津一人の問題でなくして、先程申された親分の救済、これはもう私は歴史的に当然だと思つて進めておりました。こういうような方に或る方面の力が動いておるのであります。保釈はむずかしいと言うのであります。併し私は妙に尾津氏を愛しておりました。ああいうさつぱりした氣持でございます。で、あの過去の経歴などもその後に私は知つたことでありまして、殆んど私は知らなかつたのであります。これは最初の委員長の訊問にもありましたように、私は当時親分という考えは持つておらなかつた。非常に或る方面の誤解を受けておるのではなかろうか、尾津が社会的の事業をしたり、私がその奔走をしておるときに、盲人が、白衣の軍人が私の檢事局や裁判所に押寄せました。私はそれを案内した覚えがございます。非常に社会的の事業、救済事業、そういうことについては相当な金額を尾津氏は投じております。私は彼は悪人だとは思つておりませんが、仮に間違つたことをしたとするならば、間違つたことをする人はやはり善にも強いという考えを持つております。でありますから、尾津のいいところを関係方面にはつきりと言うならば恐らくその了解を得られるのではなかろうか、話は元へ戻りますが、私は或る方面で干渉をしておるということについては信じなかつたのであります。むしろ日本の檢察官や裁判所が誇大にこれは評價してあるのではなかろうか。次にそういう個個の事件には某方面では何ら関係せん。保釈しようが、在宅にしようが、何ら関係せんという御了解を求めた書面を持つて來れば、保釈の申請に対して檢事も相当の意見を附けられるのじやないか。先程の、松本判事が言われるように、そうすれば私はして呉れるであろう、こう思つて、そこで私はその筋の了解を得ることに努力してやろうと、こう考えたのであります。そこで誰に話したか記憶はありませんが、一体金が要るだろうかというような話をしましたが、あれこれの話はありましたが、私は大体選挙で金も掛かりましたが、官吏をしておるときの頭よりも、やはり金に対しての價値を安く、多額に金というものは要るものであるというような考えで当時おつたときでありますから、先ずあの厖大な記録を謄写にして、その全部を英訳にする、そうするならば私は莫大なこれは金が掛かる。そうして今でもガソリン車一台使うに殆んど私は一万円近い金が要ります。代燃車のぼろ自動車一台傭つて相当の金が掛かる。又政令違反になるかも知れませんが、場合によつては御馳走もしなければならん。そうすればその経費は殆んど私は想像がつかなかつたのです。先ず二十万円は要るのではなかろうか。当時私は借金こそあれ、金はございません。そこまで又自腹を切つて尾津氏に好意を寄せなくちやならんだけの力もなかつたものでありますから、まあ依頼人からその方を出して呉れるならば、努力して見よう、足りなくなれば又出して貰えばいいんじやないかと、こういう関係で、二十万円程は出せるだろうかと、こういうようなことを岡戸氏であつたか誰かに話をしたところが、一向その解答もないのであります。私も当時奈良縣へ帰るような非常に忙しい体でありましたから、少し性急なものでありますから、直接刑務所に行きまして、看守の立会のときでございましたが、聞いた、どうだ、二十万円程の金を出さんか。そのときに関係方面の了解を求める云々の言葉は看守が書くのですから、或いは差控えたかも知れませんが、運動費として、実費として二十万円程の金は出す氣はないか、こういうようなごとく聞いて要求しました。私は同氏としては相当な資産を持つておる人間ですから、そのくらいの金額は端た金であるから、よろしいと承諾すると思つたところが、ちよつと澁つたのであります。私は案外なものだなという考えを持ちました。その後であつたでありましよう、細君が面会に來、その話もしたのでありましようが、結果は、私の所へそれを断わりに來ました。それも家内が、又私が奈良へ行つた不在中に、あすこの職員が一人が面会に來て、断わりに來たというので、それきりになつております。
  1112. 伊藤修

    委員長伊藤修君) よく分りました。その際ですか。歎願書を出してやるとか出したとかいう話はあつたんですか。
  1113. 元林義治

    證人(元林義治君) 歎願書のことは、私は殆んど関係いたしておりませんね。そういうようなことは、外の弁護人の言われることであつて、そういうようなことは、殆んど私の頭にございませんでした。
  1114. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 檢事総長に会つて頼んでやつたという話はありましたか。
  1115. 元林義治

    證人(元林義治君) 頼んだのでありません。檢事総長に会つて、大体これが某方面の指示による事件であるかどうかということを打診したわけであります。その打診はその他の檢事にも二三会つて打診いたしました。
  1116. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 又こういうようなお話もあつたのですか。高木檢事に会つて、そこで十日間ぐらい経てば保釈の見込はあると、こういう話もあつたんではないですか。
  1117. 元林義治

    證人(元林義治君) そういうことは絶対に申しません。弁護人としては、そういう見込などということは言うべきことではございません。未だ曾て私はそういうことをどの依頼人にも申したことはありません。判事の胸三寸にあることを、弁護人が如何にも自信あるようなふうには絶対に申しません。
  1118. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 先程のお言葉から推察いたしますと、医者やそういう関係の人に、交渉の関係の人にお会いになつたことはないですね。
  1119. 元林義治

    證人(元林義治君) 絶対にないです。
  1120. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 判事に先程二回お会いになつたというんですが、そのときはどういう話だつたのですか。
  1121. 元林義治

    證人(元林義治君) その第一回の交渉は、公判を早く開いて貰いたいというようなこと、それから併せて保釈の申請を出して置くからと、こういうことだつたのですが、要は公判を早く開こうということになり、それから保釈のことは拒絶されたのではないかと思つております。その保釈に対する挨拶が未だに來ないのであります。却下になつたとも、許されたとも、未だに保釈の決定を……。私自身が解任されておるということも、最近白河判事に会つて、僕のは一体どういうことになつておるかというと、あなたのは解任になつたよということでした。私は申訳なかつたですけれども、それほど公判に援助することができなかつたのであります。
  1122. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 保釈の申請があなたから出ておる理由は。
  1123. 元林義治

    證人(元林義治君) 今それを、恐らく今日の訊問に出るだろうと思つて考えてみたのですが、思い出せないのでありますが、要するところ、民事的にあの爭いを解決すれば、刑事事件も軽微で済むものであるという考えを持つておりましたから、そうして又新宿の発展のため本人を一日も早く出して、民事的にあれを解決する機会を與えて貰わなくちやならんというような理由じやなかつたかと思うのであります。病氣云々のことは、これはよく保釈には附きものの言葉でございますが、被告人は長期の勾留に堪えられないとか、暑さに堪えられないとかということは、これは普通の弁護人の書く言葉であるから、書いたかも知れませんが、私の主要なるところの信念を以て書いた理由は、恐らく新宿発展のために、民事的に解決をしたいから保釈して貰いたいということであつたろうと思います。
  1124. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう理由が主たるもので、病氣の方は余り重きを置かれなかつたのですか。
  1125. 元林義治

    證人(元林義治君) 一般的にいえば、多分そうだろうと思います。記憶ないものですから……。
  1126. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この事件に対しまして、結局御説を伺つてみますと、金銭的、物質的には、少しもあなたは関係ないわけですね。
  1127. 元林義治

    證人(元林義治君) それはむしろ私の方が出した形にはなつております。
  1128. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの方に御挨拶したようなことはないわけですね。
  1129. 元林義治

    證人(元林義治君) それはあるのであります。それは私の帰つておるときに、断わりに來たときに、金一千円を書籍代として持つて來たのです。それで私は、案外金にはそうきれいな人でないと思つて、不思議に思いました。
  1130. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それきりで……。
  1131. 元林義治

    證人(元林義治君) それきりでございます。それも家内が持つてつて返そうと言つたのでありますが、とても忙して体であつたものですから、そのままになつておりまして、金は恐らくないだろうと思いますが、包紙くらいは書棚にあるだろうと思つております。
  1132. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、今までお聽きしたようなお金は、話はあつたけれども、現実に受授はしなかつたわれですね。
  1133. 元林義治

    證人(元林義治君) 勿論であります。
  1134. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かお尋ねになる方はありませんか。
  1135. 小川友三

    ○小川友三君 只今証人は、〇〇のその筋方面に御馳走もしなくちやならない、政令に触れても、というような意味のお話がありましたが、それは後で悪いことだとお思いになつたと思いますが、その点について、所感をお伺いいたしたいと思います。一件書類の英訳をして、そうして二十万円の費用を以つそれに充て、そうして自動車賃も含めて、まあ御馳走をすれば、政令違反の闇物資も使らなければならんと思つたが、やつて見たいと思つた。それで二十万円の費用が大体……、足りなければ又出して貰う考えであつた、というその中で、御馳走もし云々という言葉を、今はどう思つていらつしやいますか。
  1136. 元林義治

    證人(元林義治君) そういう感想を述べることは、証人の義務でありませんから私は申上げませんが、今の御質問には誤解がございます。私自身が直接或る方面に交渉する何らのつてもございませんから、新たにいろいろな人を又求めなければならん、その人がやはりそういうことに金がかかるのじやなかろうかという想像を持つてつたが、自分でそういう御馳走するという考えはなかつたのであります。
  1137. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 他に御質問ありませんか。
  1138. 元林義治

    證人(元林義治君) 私は最後に、やはり眞に司法部を思うために一言申上げたいのであります。遅くなつて甚だ恐縮でございますけれども、聽いて頂きたいことがございますが、簡單でよろしうございますから、お聽き願いたいと思います。
  1139. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 極く簡單に一つ
  1140. 元林義治

    證人(元林義治君) 司法委員会というものが余りに活動し過ぎますと、結局裁判所の威信に関係いたします。これは理論ではありません。現実の社会でございます。殊に新聞の記事が私は正当だと思つておりません。新聞記者の方がここに列席なさるならば、非常にそれは愼重に扱つて頂きたい。誠に日本のこの治安の維持は、司法部より外ないと私は思つております。現在のすべての社会情勢を見まして、全く私の知事の選挙に申した通りであります。すべて道義は頽廃しております。これを孤疊を守つておるのは司法官だけであります。でありますから、どうか司法部の威信に関係するようなことは、少しお愼しみ願いたい、こういうことであります。  第二には、本当の司法部の人は廉直で、正しい生活をしております。今のインフレ時代に本当に苦闘しております。餓死して判事もあり、その他餓死に瀕しておる者が大部分であります。どうか待遇を改善するために、この司法委員会が全力を注いで頂きたい。私が曾てから説きまして司法官の属寮根性をなくするためには、半年で昇給するとか一年で昇給するというような、馬鹿らしい小刻み的の待遇は止めて貰いたいということは通りましたが、このインフレについて行くことができないのではありましようけれども、待遇の改善につきまして、この司法委員会が全力を注いで頂きたい。そうして三権分立が憲法の根本方針であろうと思いますから、どうか裁判所に対して國民がどこまでも信頼するというふうに、議会が導いて頂きたい。議会が國家の最高機関であるというような單なる字句に捉われないで、もう少し司法部の威信を高める、これが本当に日本の国家の進むべき道ではなかろうか。戰爭を放棄した日本の國、これが本当に独立國として……、私の政策は、すでに腹は決まつておりますが、この政策から考えても、司法部の優遇が、今日本において最大問題であろうと考えております。どうかよろしくお願いいたします。大変暴言を吐きまして失礼いたしました。
  1141. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御苦労さまでした。では本日はこれで散会いたします。次回は明後日午前十時から開会いたします。    午後四時八分散会  出席者は左の通り。    委員長     伊藤  修君    委員            齋  武雄君            中村 正雄君            鬼丸 義齊君           前之園喜一郎君            松村眞一郎君            宮城タマヨ君            星野 芳樹君            小川 友三君            西田 天香君   証人    東京拘置所看守    部長      矢吹 正雄君    尾津組組長  岡戸 竹治君    尾津組支配人  眞対 民治君    地方裁判所書記 黒羽 関司君    警視廳警部補  鈴木太三郎君    弁  護  士 元林 義治君