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專門調査員(
泉芳政君) 第一點でありますが、「
法律上正當は
手續によらないで、」ということの
要件は、事を
刑事手續の場合に限
つて考えますならば、
拘束が
形式的に
法規の
根據に基いておるかどうかということ、それから
法律の定める
手續方式の
從つておるかどうかということ、
竝びにその令状が權限ある者によ
つて發せられておるか、どうかという點などが
考えられねばならんと思うのでありますが、如何なる場合に
逮捕状が出せるか、又
勾留状が出せるかということは、御案内のように、
刑事訴訟法或いは
應急措置法等において、それぞれその
要件が
規定されておりまするので、
本法による
救濟は、その
要件を充足しておるかどうかということの
判斷によ
つて決まるのではないかと思います。
從つてお
言葉のように、全然
犯罪の
嫌疑がない、それが
客觀的に明瞭であるというような點は、やはり
形式的な
價値として
考えられるのじやないかと思います。それが
實體的な
判斷であるか否かということは、結局非常に微妙な點になるわけでありまするが、今申上げた客観的に明瞭な
嫌疑なしという
一つの
形式的要件を缺いておる場合には、
本法は
適用されて然るべきだと思うのであります。そこの線は、實際問題としてはかなりデリケートなものがあるだろうと思うのでありますが、理論的に突詰めますと、そういうことにならざるを得んと思います。
それから第二の
一事不再理の問題につきましては、
本法ではお
言葉のように
一事不再理は
考えておらないのでありまして、そこで非常に多くの
事件が發生することを豫想されないこともありませんが、その點は第二條で、實はそれを戒めた
意味におきまして、責任ある
辯護士を
代理人としてこれをしなければならないというところで一縛り縛
つたわけであります。尚
管轄の
規定も可なり廣く
規定はされておりまするが、一應のそこに枠を設けました。ただ誰でもがこの
人身保護の
請求ができるという點は、
憲法の三十四條にも「
何人も、正當な
理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その
理由は、直ちに本人及びその辯護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。」という
規定の「
何人も」を受けて、實は
制限しないで、誰でもができるということに
規定したのであります。
憲法の三十四條は、
日本文で續みますと、どうもちよつと「
何人も」が今申上げたような
説明にぴ
つたりしないものがあるように讀めるのでありますが、實は英文の方を讀みますと、やはり「デマンド・オブ・エニイ・パーズン」ということが書いてあります。つまり
不法に拘禁されておるというようなものに對しては、誰でもその
理由の解疑を求めることができるというふうに讀むべきであろうと思うのであります。そういたしますると、これは
憲法上、すべての人に與えられた一種の權利ということが言えると思いますので、
本法でもこれを受けて、第
一條の第二項に、
何人も被
拘束者のために、
人身保護の
請求をすることができるというふうに書いたわけであります。
イギリス法では、赤の他人はいかんというふうな
制限があるようでありますが、この
法案では、そこのところが抜術的に非常にむずかしく感ぜられましたので、別に
人身保護の
請求をする
請求權者については、
制限を設けなか
つた次第であります。そこでお話のように、非常に廣く
なつたわけでありまするが、
事實上の取扱としては、その
保護の
對象になる被
拘束者のために一度
請求がなされれば、これは相當愼重にやるだろうと思います。二度、三度ということになると、やつ
ぱり決定を以て却下する
五條或いは
準備調査で棄却するなどの
手續が、相當有效に働いて來るのじやないかと思われますので、御心配になる程、非常に混雜するということもないのじやないかと思うのであります。