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1948-05-22 第2回国会 参議院 司法委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年五月二十二日(土曜日)    午前十時三十七分開会   —————————————   本日の会議に付した事件裁判官刑事事件不当処理等に関す  る調査の件  (尾津事件に関して証言あり)   —————————————
  2. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これより裁判官刑事事件不当処理等に関する調査会を開きます。  本日は証人として、高木八郎君、野崎陽之輔君、菊地甚一君、中島常三郎君、金子儀太郎君、石原洽子君、以上六名を証人としてお調べをいたします。証人の方に申上げますが、本日御出頭をお願いしたのは、裁判所の執つた処置について少しく調査する必要がありまして、それについて皆様の御出頭願つた次第でありますから、先ず御証言を願う前に宣誓をお願いいたしたいと思います。宣誓書は各自御朗読願つて署名捺印をお願いいたします。では宣誓をお願いいたします。    〔総員起立証人は次のように宣誓を行なつた〕    宣誓書   良心從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。         証人 野崎陽之輔    宣誓書   良心從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。         証人 金子儀太郎    宣誓書   良心從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 中島常三郎
  3. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では金子さんからお尋ねいたしたいと思いますから、あとのお二人は隣りでお待ち願いたいと思います。宣誓をなさつた以上は、御承知の通り僞証の制裁がありますから、そのおつもりで願います。  お齢はお幾つですか。
  4. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 数え歳三十九歳です。
  5. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 刑務官としていつ頃なられましたですか。
  6. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 拜命ですか。
  7. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうです。
  8. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 昭和十三年四月十三日拜命です。
  9. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 現在の刑務官の職務は何をおやりになつていますか。
  10. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 看守部長です。
  11. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 看守部長ですか。何か教護課とか戒護課とかいろいろな課がありますね。
  12. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 戒護課に勤務しております。
  13. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは尾津という者は以前からお知合ですか。
  14. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 以前からじやないです。中に入つてから知つています。
  15. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、尾津がいわゆる町の顔役として相当勢力を持つて無理を通しているというようなことは御存じなかつたのですか。
  16. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 中に入つて來てから段々と分つたのです。
  17. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その以前は新聞やなんかで……。
  18. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) ええ知りませんでした。
  19. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 新聞に出ていることも御存じなかつたのですか。
  20. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 知りませんでした。
  21. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津入所したのはいつ頃ですか。
  22. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) はつきりしたことは記憶にないのですが、多分昨年の七月頃じやないかと思つていますが、はつきりした記憶はありません。
  23. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 六月の末頃ですか。その頃勿論あなたは勤務していらつしやつたのですね。
  24. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) そうです。勤務しておりました。
  25. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津面会にあなたはお立会なつたことはありませんか。
  26. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) あります。
  27. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その際七月の二十三日頃と思いますが、元林弁護人から面会があつて、それにお立会になつたのですか。
  28. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) たしかそのとき一回会つたと思います。
  29. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときの状況ちよつとあなたから簡單に申して頂きたいのですが。
  30. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 古いことではつきりした記憶がないのですが、接見要旨は、大体そのときの重要なことだけは書き留めてあつたのですが、今殆んど記憶がないのですが……。
  31. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この前何かのことであなたがそのことを尋ねられたことがありますね。
  32. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) あります。
  33. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときに述べておいでになりますが、今日は忘れられているのですか。
  34. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) いやもう大分古いことですから……。記憶を喚起して申上げると、多分保釈についてのことで弁護士面会に來たのです。そのときに口頭でなく、手眞以でこう何かやつたということを記憶しております。そのことをこの前調べを受けたときに申上げてあるのですが。
  35. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その状況お話し願いたいのです。あなたはこの前昨年の十月十四日に述べられておりますがね。殊にこれは社会の耳目を聳動しておるような事件でして、そう記憶が薄れるということはないと思うのですがね。
  36. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 何でもそのときに、弁護人でしたか、両手を挙げて、これを二回やりまして、これが僕の想像では、後で想像して見たのですが、金を意味するのじやないかということが、一つの焦点としてこの前調べを受けたときに申上げましたが、尾津の方では最初は分らなかつたのです。二回これ、両手を挙げてやりました。それで後で想像したところが金を二十万ということを相手に傳えたのじやないかということを、この前調べを受けたときに申上げたのでありますが、大体の要点として記憶しているところはその点だけであります。
  37. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、二回やつたというのは、この掌は一つが幾ら、五万円と見た……と。
  38. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 五万円と見た。そのときは弁護人も言いません。尾津最初は会得できなかつたようです。重ねて二回、三回くらいやりました。
  39. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 掌はこうやつて挙げたのですか。
  40. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) これ。
  41. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その五万円ということはどうして分つたのですか。
  42. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) それは後で想像したのですけれども……。
  43. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの想像ですか。
  44. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 想像です。
  45. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 当事者應答の結果、被告弁護士とが應答の結果、五万円ということが推測できたのですね。
  46. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) そうです。それで接見立会の記録にもそう書いて置いたのです。はつきり金額について五万円とか二十万円ということは言いませんですから……。
  47. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは最初は二万円かと思つたというのですね、そのことを‥‥。
  48. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) そんなこと思つておりません。最初から五本のものを四倍掛けたものだから、二十万円だと私は見たのです。
  49. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この片手が單價五万円ということが、最初はそれを五千円と見て二万円で‥‥。
  50. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) それでは余り評價が安過ぎると、五万円と見て二十万円と‥‥。
  51. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはあなたが主観的にそういうことをお考えになつたのか。何かそのときの應答の話の内容について、そういうように察しられたのですか。
  52. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) そうです。保釈で出るのはそのくらいの運動費が必要だということが暗に僕に分つたのです。
  53. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは尾津はやはり二十万円程度のことを土台にしての話をしておつたわけですか。
  54. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 尾津の方からじやないです。弁護士の方からそうしたと思います。
  55. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津は何と言いましたか。
  56. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 最初は何だか分らないで聞き返しておりました。それで最後に「ああそうか」‥‥。
  57. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 「ああそうか」というのは。
  58. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) それが何遍もやつてなかなか意思が通じなかつたのです。二回か三回やつたと思いました。これの四倍だということを‥‥。
  59. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 両手を挙げて四倍ですか。
  60. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) はあ。
  61. 伊藤修

    委員長伊藤修君) すると数字が違つておりませんか。
  62. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 片手の四倍ですから二十万円。
  63. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは何に使うというのですか。
  64. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) そのときの状況では、まあ保釈するための運動費じやないかと思つておりましたが、そういうことははつきり言いませんでした。
  65. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはこうやつてですね。金のことでしようね、それは‥‥。
  66. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) その金が必要だ‥‥。
  67. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 金が必要だということは、保釈に必要だというのですか。運動費に必要だというのですか。
  68. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) それははつきり言いません。
  69. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か必要だということは、その必要の理由を挙げて言わなくちや‥‥。細かい理由はなくても、名目だけでも言わなくちや分らないのでないですか。
  70. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) まあ尾津としてはそれが分つておるでしようが、僕としては、立会としては、そのことについて別に追及。質問する権利もなし、必要もなかつたのですから、そのまま鵜呑みを自分だけで‥‥。
  71. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 面会立会わすということは、当事者暗号意思表示を交換するということは、正にあなたが立会う事項じやないか。
  72. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) それはそうですが‥‥。
  73. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 暗号でやつたやつを、默つて見過すというわけに行かないでしよう。
  74. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) そのとき「何んですか」と僕は言つたんですが‥‥。
  75. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは当然のことですな‥‥。
  76. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) はあ、「別に‥‥」というようななんで、尻を濁したんです。
  77. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ結局、それが前後の話ぶりでそれが運動費である、保釈運動費金額であるということは想像できたわけですね。
  78. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) そうです。
  79. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それをどういう方面に使うという話があつたですか。
  80. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) それまでは、そのとき話さなかつたと思います。
  81. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときは、そういう暗号の会話をする場合にですね、何か保釈のことで話しておりませんでしたか。
  82. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 別にはつきり言わなかつたと思いましたが‥‥。
  83. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはどのくらいの時間を要したですか。
  84. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) それは五分間ぐらいです。
  85. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その外に、尾津面会立会われたことはありましたか。
  86. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 一回だけです。
  87. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときはどういうことでしたか。
  88. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) いや、そのときだけです。
  89. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それ以外にないですね。
  90. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) はあ。
  91. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津とその後あなたはお話なつたことがありますか。
  92. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 自分受持区域におりますから、よく視察しておりますが、別に話したことはありません。
  93. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津入所中の状況は、特段に何か変つたことはありますか。
  94. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 大してないと思います。
  95. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 中でわめいたり‥‥。
  96. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) いや、そんなことはないです。至極從順にしております。
  97. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 或いは病氣で呻吟しているということはあつたですか。
  98. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) そういうことも聞きません。
  99. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで独房におるのですか。
  100. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) そうです。
  101. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 独房というのは一人ですか。
  102. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 一人です。
  103. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今、過剩拘束で独房でも二、三人入れているようですが‥‥。
  104. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 尾津は現在一人です。
  105. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 日中でも正坐しているのですか、横臥さして‥‥。
  106. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 横臥はしておりません。
  107. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本人からは横臥許可の申請も出ていないのですね。
  108. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 出ていないと思います。
  109. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津はあなたの担当区域ですね。
  110. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) そうです。
  111. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それであなたの知る範囲においては、横臥していなかつたというわけですね。
  112. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) そうです。していません。
  113. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 差入れとかそういうものはどうですか。
  114. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 差入れ相当來ております。
  115. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 差入れられた食事はしておりますか。
  116. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 大分沢山來ているので、食い余しておるということは‥‥。
  117. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは沢山來るので、食い余すのですね。
  118. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) え。本人も言つております。こんなに沢山來て困ると‥‥。
  119. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで、日常の食事普通人と同樣に攝取しているわけですね。
  120. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 現在お粥を請求しておると思いました。
  121. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その当時は‥‥。
  122. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 現在です。
  123. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 現在を聞いておるのでなく、その当時のことを聞いておるのです。
  124. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) その当時はちよつと記憶ありませんですが‥‥。
  125. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今の話は、現在の話ですか。
  126. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) そうです。現在も前も同じです。
  127. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 同じですか。
  128. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) はい。
  129. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今の横臥していないとか、別に異状のことはなかつたとか、今お話なつたことは‥‥。
  130. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) ちよつと持つて下さい。その当時には横臥していました。保釈になる前は‥‥。
  131. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 保釈前ですね。
  132. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) はい。横臥していました。していました。
  133. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 私の今お尋ねしているのは、保釈前の話です。
  134. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 前には横臥していました。
  135. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、保釈前においてはその他に変つたことはないですか。
  136. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) はい。
  137. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 食事や何か‥‥。
  138. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 食事もお粥を攝つていたと思います。
  139. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは間違ないですかね。
  140. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 間違ないです。僕の知つている範囲で申上げたんですから、知つている範囲では間違ないと思います。
  141. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは保釈前ですね。
  142. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 保釈前です。今は横臥しておりません。
  143. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 保釈前においては、その他には異状はないわけですね。
  144. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) そうです。
  145. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、今日は、改めて入所してからは、先程おつしやつた通りですね。
  146. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) そうです。
  147. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津の釈放の話を、九月十二日の夕方出所する前に、聞いたことはありますか。
  148. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) ないです。
  149. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何人からも聞いたことはないですか。
  150. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) なかつたです。
  151. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本人からも聞かなかつたですか。
  152. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) ないです。
  153. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いろいろその噂も傳わつて‥‥。
  154. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 新聞で初めて分つたんです、尾津保釈なつたこと‥‥。
  155. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの担当区域ならば、丁度被告が‥‥。
  156. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 丁度僕が、一晝夜勤務しておりますから、丁度その空きのときに出たと思いました。
  157. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 空きのときに、非番のときに‥‥。
  158. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 非番のときに‥‥。
  159. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは尾津身内の人に会つたことはありましたか。
  160. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 会つたことはありません。
  161. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 訪ねて來たこともないですか。
  162. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) ないです。
  163. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 身内以外の人で尾津のことで何かあなたを訪ねたようなことはないですか。
  164. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) ないです。
  165. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津拘置所の中で、ああいう親分というような人が拘置所へ入りますと、相当顔がきくために、特別の、他の被告とは変つた取扱いをしておるようなことはないですか。
  166. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 変つたといいましても、別に取上げていうこともないですが、今までは、保釈前には今申上げた通り接見なんかも一般の接見と同じにやつておりますが、現在は、その後は課長が立会つて、別に立会つてつておるということですね、後は‥‥。
  167. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 私の聞いておるのは、主として保釈前の話を聞いておるのですよ。観念をごつちやにせないようにね。
  168. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 別に差別待遇していません。
  169. 伊藤修

    委員長伊藤修君) よくああいう顔のきく人は、特別の取扱いをいておるようなことがありますがね。
  170. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) していないです。
  171. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ありませんですか。
  172. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) はい。
  173. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いわゆる直接の担当看守の人がありますですね。直接の担当看守の人や、医者の人が、特に被告に対して好意を持つて待遇しているようなことは、見受けられませんでしたか。
  174. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 特別というようなこともないと思いますが、その点分らないのです。
  175. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは看守部長でいらつしやるのでしよう。
  176. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 部長といいますが、晝間は接見の方へ行つておりす。夜間だけ‥‥。
  177. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 夜間でもあなたの部下の担当看守というものがあるでしよう。それが好意を持つておるとか‥‥。
  178. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 尾津に対して特別ということはやらせません。
  179. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 医者が特別丁寧ということも感じませんか。
  180. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) そういうことも聞きません。
  181. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ああいう顔役の人が中に入りますと、特別に中で勢力を持つておる、昔でいえば牢名主というような待遇を與えて勢力を持つておる、そういうことで恐れられるというような傾向はなかつたですか。
  182. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) そういう傾向は今嚴正独居でいるときですから、そういうことは殆んどないですね。
  183. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 独居といつても、事実上の問題としては独居でおつても、隣りの部屋と連絡したり、廊下で話をしたりすることを見受けられますが‥‥。
  184. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 事実上において尾津はそういうことはいたしません。
  185. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お湯など入るにも幅をきかせて、第一番風呂に入れるとか‥‥。
  186. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) そういうこともありません。運動も別にやつておりますし、接見も特別‥‥。
  187. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 運動の話がありましたが、毎日缺かさずやつておりますか。
  188. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) やつております。
  189. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 横臥中にもやるのですか。
  190. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 横臥中には病人はやらないのです。
  191. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津について特段に、いわゆる被疑者として変つたことはお聞きになつたことはありせんか、あなたの注意を引くようなことは‥‥。俗にああいう大者が入つて來ると、係官のあなたたちは相当注意もするし、関心も持たれることと思いますがね。
  192. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 取上げて特別どうということもないですが‥‥。
  193. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一般普通の被疑者と同様平凡な男なのですか。
  194. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) 同じです。取扱いは同じにします。
  195. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 特設な何はなかつたのですか。するということは規則上当然のことですから‥‥。
  196. 金子儀太郎

    證人金子儀太郎君) ないです。
  197. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 証人にお聞きになることはありますか。    〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  198. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それではあちらの控室でちよつとお待ち願います。    〔証人中島常三郎君着席〕
  199. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 中島常三郎さんですか。
  200. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) そうであります。
  201. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お年は幾つですか。
  202. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 三十一歳。
  203. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 刑務官にはいつなられましたか。
  204. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 昭和十二年十月二十五日です。
  205. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それからどういう仕事をなさつておりますか。
  206. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 昭和十六年の七月に應召しました。應召の前は‥‥全部の経歴でありますか。
  207. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは尾津入所当時はどういう仕事をなさつておりましたか。
  208. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 担当主任をやつておりました。
  209. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津入所する以前は尾津という人間を御存じですか。
  210. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 知りません。
  211. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津が階の顔役として相当勢力を持つてつたということは知つておりましたか。
  212. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 聞いてはおりましたけれども、ただ聞いておることくらいで、あとは全然知りません。
  213. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津入所したのはいつ頃ですか、知つておりますか。
  214. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 入所したときには、私休暇中でおりませんでしたけれども。
  215. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いつ頃から尾津担当になられたのですか。
  216. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 七月一日です。
  217. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 七月一日から保釈になるまで……。
  218. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) そうであります。
  219. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、あなた以外の尾津担当に係り合つた人はどういう人がありますか。尾津入所してから、尾津保釈になるまでの期間、あなた以外にどういう人が担当になつておりますか。
  220. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 担当になられた方は、私の休暇中の十日間だと思います。
  221. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それ以外はみなあなたですか。
  222. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) そうです。
  223. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 休暇中の十日間は誰ですか。
  224. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) はつきり覚えておりません。
  225. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは役所の帳簿で分りますね。
  226. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 分ります。
  227. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが尾津担当に就かれてから、いろいろ沢山被疑者扱つておいでになりましようが、他の被疑者に比べてどういう点が違つておると思いましたか。
  228. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 被疑者と申しますと……。
  229. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 被告ですね。
  230. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 別に変つた待遇はしておりません。
  231. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 待遇のことではありません。担当する被告として、外の被告と何か変つたことはありますか。
  232. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) ありません。
  233. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津のような有名な人を取扱う場合には、特別上司から注意を受けるようなことはありませんか。
  234. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 独居拘禁に付される者についての注意はありました。
  235. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一般的の注意ですか。尾津についてですか。
  236. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 一般的の注意であります。
  237. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今度尾津が入つて來たら、これに対しては町の顔役であるから、こういう点において十分注意しろとかいう特別の注意はありませんか。
  238. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 聞いておりません。
  239. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ただ普通の被告として受取つたわけですね。
  240. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) そうです。
  241. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 独房におつたというのですが、独房生活状態はどうでしたか。
  242. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 七月一日私が行つたときには普通と思いました。
  243. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これは起きていましたね。
  244. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 起きていました。
  245. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 横臥したようなことはありますか。
  246. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 横臥は、日は忘れましたが、七月の末か八月頃から横臥し始めたと思います。
  247. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それ勿論横臥許可を取るのですね。
  248. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) それは勿論取ります。
  249. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 七月の末か八月の初めから横臥したのですか。
  250. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 七月の下旬から横臥許可がありました。
  251. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは出所するまで。
  252. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) そうであります。
  253. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 保釈になつて出所するまで‥‥。
  254. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) そうであります。
  255. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その間はどうしておりましたか、食事は‥‥。
  256. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 食事粥食であります。
  257. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 粥食は勿論あれですね、雜役か何かが持つて來るのですね。
  258. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 医務所の方の診察の結果許可を得て、それで攝るのであります。
  259. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは中でできる粥食ですね。差入れ屋の粥食ですか。
  260. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) いや官食であります。
  261. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 官食ですね。粥食を持つて來るのに‥‥。お粥を食べるときに、お粥の上の水ばかり持つて來たり、殊更下の方を掬つてつて來るという手心はありますか。
  262. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) ありません。
  263. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや規則上はありませんが、普通一般、中の顔のきく者がやるのですがね。
  264. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) それはありません。私が立会つて粥食のあれを配当しますから‥‥。
  265. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの方も雜役を使つておりますね。
  266. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) そうです。
  267. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのために雜役に顔をきかしてそういう手心はなかつたですか。
  268. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) ありません。
  269. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときにはもう差入れは何も食べなかつたのですか、粥食ばかりですか。
  270. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 果物は食べておりました。
  271. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 卵とか‥‥。
  272. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) そうであります。
  273. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 外の差入れは食べなかつたのですね、弁当とかいうようなものは‥‥。
  274. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 七月の初めの頃は食べておりました、差入れ弁当を‥‥。
  275. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お粥になつてからは食べないのですね。
  276. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 殆んど攝つてないでろうと思います。
  277. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それまでは、お粥になるまでは食事は十分しておつたのですか。
  278. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 私が行つたときにはお粥になつておりましたですが、七月の初めのときは‥‥。それを附け加えて頂きます。
  279. 伊藤修

    委員長伊藤修君) すると、さつき‥‥横臥前にお粥になつたのですか。
  280. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) そうです。忘れておりました。私が行つたときにはお粥になつておりました。
  281. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、まだ横臥しない前からお粥を食べて、七月の末頃から横臥するようになつたと、こう聞いてよろしいのですか。
  282. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) そうです。
  283. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勿論差入れ弁当は食べないのですね。
  284. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 差入れ弁当はおかずだけは攝つておりました。
  285. 伊藤修

    委員長伊藤修君) おかずだけは‥‥。
  286. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 幾分かありました。
  287. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 差入れ沢山つたそうですね。
  288. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 果物やら何か來ておりました。
  289. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 差入れはあなたの方の帳簿に控えてありますか。
  290. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 上司にあるだろうと思いますが、私の方にはありません。
  291. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういう物が差入れになつたということは‥‥。
  292. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 私らの方にはありません。
  293. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの方にはないけれども、役所の方にあるのですね。何と何が入つたということが分つておるのですね。
  294. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 分ります。
  295. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは担当しておる間に尾津のからだの模樣はどうでしたか。
  296. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 保釈で出る前の頃から幾らかやつれの見えたことは私にも分ります。
  297. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ拘置所に入れば誰しも、十人が十人必らずやつれますがね。その程度ですか。それともより以上やつれたというのですか。
  298. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 衰弱は見受けられました。
  299. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 衰弱というのはどの程度の衰弱ですか。拘禁ずるに堪えない衰弱ですか。面やつれしたという程度ですか。
  300. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 面やつれよりもちよつと程度を越しておるかと思いました。
  301. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 長く留置されておりますれば段々やつれて参りますがね。あなたの素人考えとして、あれですか、その程度の衰弱は被拘禁者として見受けられる程度でしたか。
  302. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 一般のですか。
  303. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ええ、一般の‥‥。
  304. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 一般よりは幾らかやつれが越しておるかと思いましたけれども‥‥。
  305. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いわゆる病人というふうに考えられたのですか。
  306. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 重病人とまでは行きません。
  307. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 考えなかつたですか。
  308. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) はあ。
  309. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それに対してあなたはあなたの責任において、医者の診断を受けるべきか、或いは本人の申出で診察を受けたというようなことがありますか。
  310. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 診察は全部本人の申出であります。
  311. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では本人の言うまでは、別にあなたの方から手配するわけではありませんね。
  312. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 毎朝診察の受附をやつておりますから、そのときに全部申出るのであります。
  313. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 申出るのですね。いや、あなたが医者を連れて來て診さしたということはないのですね。
  314. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) ありません。
  315. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 常に本人の申出によつてですね。
  316. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) そうです。
  317. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何回くらいあるのですかね。
  318. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) さあ、数は分りませんです。
  319. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 相当つたのですか。
  320. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 相当あります。
  321. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一日置きとか、二日置きとか‥‥。
  322. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 毎日であります。
  323. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 毎日診たのですか。
  324. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 毎日診察を申出たか出ないかは分りませんけれども、毎日診察をとつておりますから、その都度出ておると思います。はつきりしたことは分りません。帳簿がありますから、その帳簿に控えてありますが、名前を‥‥。
  325. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それも帳簿にあるのですね。
  326. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) あります。
  327. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 診察は医務室へ連れて行くのですか。そこで診察するのですか。
  328. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 舎内で治療できるものは舎内でやつておりました。
  329. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津の場合はどうでした。
  330. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 一般的にですね、舎内でやれるものはそこで治療して、できないものは医務室に連れて行く‥‥。
  331. 伊藤修

    委員長伊藤修君) で尾津の場合はどうでした。
  332. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 尾津の場合は連れて行つておりました。
  333. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはその度に‥‥。
  334. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) そうです。
  335. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一遍公判廷に出なかつたことがあつたのですね。
  336. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) ありました。
  337. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときもあなたの担当でしたのですか。
  338. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) そうです。
  339. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはどういう模樣でした。
  340. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 胃の辺りが差込んで堪えられないということを愬えてでありましたのですが‥‥。
  341. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたへの申出には‥‥。
  342. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) そうです。
  343. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 胃の辺りが差込む、胃が痛むというのですか。
  344. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) そうです。
  345. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 外の理由はなかつたですか。
  346. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 聞いておりません。
  347. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたには、胃の辺りが差込むから今日は出られない、そういうことだつたのですね。
  348. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) そうです。
  349. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときも横臥しておつたのですか。
  350. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 横臥しておりません。
  351. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが見てどうですか。出廷不可能のように思われたのですか。
  352. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) さあ、その当時の記憶を忘れましたが‥‥。
  353. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうことは外の被告でもたまたまありますか。
  354. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) あります。
  355. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 運動はどうでしたか、被告運動は‥‥、尾津運動はどうですか。
  356. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 運動は三十分やつておりました。
  357. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 毎日やつておるのですか。
  358. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 毎日やつておりましたけれども、たまたま病氣のために出られなかつた場合はありました。
  359. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで横臥になつてからはどうなのですか。七月の末から横臥したというのですね。それからは運動に出たことはないのですか。
  360. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) あります。
  361. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どのくらい出ていますか。
  362. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) その回数はちよつと忘れましたのですが‥‥。
  363. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 運動に出たときは帳面に付けますか。
  364. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 付けておりません。
  365. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 外へ運動に出るのは帳面に付けないのですか。
  366. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 付けないのです。
  367. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 担当の控えかなんかないのですか。
  368. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) ありません。
  369. 伊藤修

    委員長伊藤修君) すると、たまたま出たのですか、一日置きくらいに出たのですか。どういう記憶です。
  370. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) その方の記憶は、どの位の回数で出ておりますかちよつと忘れました。
  371. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの担当として受取つている被告中でも大物ですね、相当あなたも関心を持つて被告を取扱つておられることと思いますが、課の普通の被告人とは違うのですから、少くとも尾津に関いることについては、御記憶相当明確でなくてはならんと思うのですがね‥‥。
  372. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 回数の方は忘れました。
  373. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 相当出ておりましたか。八月の初旬から九月の十二日まで四十日間ありますね、その間どの位出ておりますか。
  374. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) さあその記憶はつきり私には分りません。運動というのは運動担当という者が別におりまして、一人でやつておるのじやありませんから、交代時間の場合とか、或いは留守にした場合がありますから‥‥。
  375. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや運動担当は、運動を見張つている人は別にありましようが、運動に出すのにあなたが取扱うのでしよう。
  376. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 交代時間がありますから‥‥。
  377. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや運動担当は、運動を見張つている人は別にありましようが、運動に出すのにあなたが取扱うのでしよう。
  378. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 交代時間がありますから‥‥。
  379. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 人のことは別として、あなたが取扱つた中で‥‥。
  380. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) あ、私が取扱つた中でですか。半数以上は出ていただろうと思います。確実じやないですけれども‥‥。
  381. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは確実じやなくても、あなたの御記憶ですからね‥‥。房内で大きな声を出したり、唸つたりしたことはありませんか。
  382. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 病氣のためにですか。
  383. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや病氣のためか、怒つてどなるとか、どちらでもよろしいが‥‥。
  384. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) ありません。
  385. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そんなことはないですか。
  386. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) ええ。
  387. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 又亢奮の余り大声を出してわめくようなこともなかつたですか。
  388. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) ありません。
  389. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 病氣のために唸つたり何かするということはなかつたのですね。
  390. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 病氣を訴えた場合はありますけれども、そうしてあれは余り記憶がありません。
  391. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは夜でもずつと、あれは何遍か廻つて見るのでしようね。
  392. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 私は晝間だけであります。
  393. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 夜はやらないのですか。
  394. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 夜はやりません。
  395. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 夜の人は違うのですか。
  396. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) そうです。
  397. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 夜眠れんで困るということを訴えたことはありませんか。
  398. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) それは夜間担当者で、私一、二回は聞いておりますが、細かいことは聞いておりません。
  399. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは夜間担当者から聞いたのですか。
  400. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) そうです。
  401. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 被告から聞いたのですか。
  402. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) いいえ、夜間担当者が引継ぎがありましたので、一、二回記憶しております。
  403. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ尾津のような大物をお預かりになりますと、相当注意されるのでしようね。特段に注意されることがないですか。
  404. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 担当者として注意は十分しております。
  405. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津氏は御承知の通り相当顔きく人だし、相当長くああいう方面の経験を持つておいでになりますね。だからああいう方面では顔がきくわけですが、あなた達としてどうですか。取扱いの上において‥‥。
  406. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 別段変つたことはありません。
  407. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いわゆる所内において各係員が尾津に対して恐れをなしているとか、敬意を拂つているとかいうようなことは見受られませんか。いわゆる親分とかいうようなそんなふうな感じの態度もないですか。
  408. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 見受けておりません。
  409. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津氏が保釈になるということはいつ知つたのですか。
  410. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 当日であります。
  411. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その前にそういう噂はなかつたですか。
  412. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 聞いておりません。
  413. 伊藤修

    委員長伊藤修君) よく房内で、どこそこのあれはもういつ頃出られるとかいうようなことは、中で全般に傳わるものですがね。
  414. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 私は聞いておりません。
  415. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津に対して特別の、他の被告変つた待遇をあなた達がしたようなことはないですか。
  416. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 変つた待遇は増し蒲團が一枚余計にあつたわけでございます。それは医務所の増し蒲團の許可があつて、一枚余計に與えたわけであります。
  417. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津から何かいろいろなことを頼まれるようなことはなかつたですか。
  418. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) ありません。
  419. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津の関係者に会つたことがありますか。身内の者とか、子分衆とか、同業者とか‥‥。
  420. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) ありません。
  421. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津の関係者若しくは関係者以外の人から、尾津のことで頼まれたことがありますか。
  422. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) ありません。
  423. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津について房内とか所内で以て何かいろいろな噂を聞いたことがありますか。
  424. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 別に変つたことは私聞いておりません。
  425. 伊藤修

    委員長伊藤修君) くどいようですけれども、ああいうような大物を引受けた場合において、特別に注意を受けたことはないのですね。
  426. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) ありません。
  427. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなた達も別に、特別に注意してその担当の任に当つたという心構えもないのですね。
  428. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 私の場合は独居の舎房でありまして、死刑囚と一緒でありましたから、十分その方の注意はやつておりました。特殊な拘禁場所でありますから、私の受持つてつた場合‥‥。
  429. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 重大犯人ですね。
  430. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) そうです。
  431. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 重大犯人を取扱う舎房の担当ですね。
  432. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) そうです。
  433. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それと同樣の取扱をしておつた、こういう意味に受取つてよろしいですか。
  434. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) そうです。
  435. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 十分取扱において警戒しておいたわけですね。
  436. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) そうです。
  437. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは所長の指図ですか、檢事の指図ですか。あなたが勝手にそこに入れるというわけじやないでしよう。
  438. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 担当ですか。
  439. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや、そういう重大犯人を入れる独房へ拘禁したということは、あなたの勝手の取扱じやないでしようね。
  440. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) そうじやありません。
  441. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 誰の命令です。
  442. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 所長の命令であります。
  443. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは所長の命令で、檢事局の指図であるのですか。それは御存じないですか。
  444. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 分りません。
  445. 伊藤修

    委員長伊藤修君) とにかく所長の命令であつたのですね。
  446. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) そうです。
  447. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 証人に対してお聞きになることはありませんか。
  448. 小川友三

    ○小川友三君 尾津が入つておるときに弁当を差入をする、官弁を持つて來るという場合は、雜役がやつたのですか。それは受刑者の雜役がやつたのかどうか。入所中に雜役で満期になつてつた者が何人ありましたか。それを伺いたい。それから尾津の衣類の差入が何回ありましたか。その衣類を出所する場合点檢して、確実に枚数が合つてつたかどうかということをお聞きしたい。それから尾津程度の病人で保釈を許されない者が、あの程度の犯罪人で何人くらいあなたの地当区域にあつたかということ。それから差入の果物の中に手紙が入つてつたことはなかつたか。卵の中に手紙が入つてつたことはなかつたか。煙草を何回差入れをしたかどうかということをお尋ねいたします。
  449. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今のお尋ねになつたことにお答え下さい。今そちらからお尋ねになつたことをお答え下さい。
  450. 小川友三

    ○小川友三君 ちよつとお伺いいたしますが、弁当を運んで來るのは受刑者がやつたのでしようか、受刑者の雜役人‥‥。
  451. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 官食でありますか。
  452. 小川友三

    ○小川友三君 官弁‥‥。
  453. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 官弁は受刑者であります。
  454. 小川友三

    ○小川友三君 受刑者がやつておりまして、その受刑者が尾津入所中に何人満期除隊しましたか。それは分りますか。何人出ておりますか。或いは軽い犯罪の連中が雜役をして弁当を持つて來ます。被告が入つておるときに、隨分出て行く。それが被告と緊密な連絡をとるという危險が刑務所は多いのであります。それは何人出たかということは直ぐ分りませんか。
  455. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 確実にあれは分りません。四人だろうと思います。
  456. 小川友三

    ○小川友三君 そこで、こういうことが起つた、出廷しなかつたということが一回ありましたね。出廷をしなかつた前に一人ぐらい出ておりましよう。出廷を拒んだことがありますね。
  457. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) そういう記憶はありません。
  458. 小川友三

    ○小川友三君 それは一つ調べて下さい。出廷しなかつた一回が、外の被告と同じように見た場合に、それは保釈が遅れているために保釈の材料を得るために、病氣で出られない、材料を得るためにそうしたものを保釈の材料を作るためにやつておるのだというような感じがあなたに受けられませんでしたか。ちよつと保釈の材料を得るためにやつたという感じがしませんでしたか。
  459. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) その場合にはしません。
  460. 小川友三

    ○小川友三君 それから尾津保釈になる病氣の程度が、外の被告から比較して、保釈を許されない被告から比較して大体同じくらいの病氣ではなかつたのでありますか。
  461. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) わしの取扱つた範囲の中で‥‥。
  462. 小川友三

    ○小川友三君 そうです。
  463. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) わしの取扱つた範囲の中では、恐らく重犯罪人でありまして保釈になるやつは余りおりませんでした。それは死刑囚に近いやつでありまして、全部そんなやつばかりでありますから、保釈のあれは余りありませんでした。
  464. 小川友三

    ○小川友三君 手紙を書く時間がありましたね。あの手紙は何回書かせましたか。一日置きですか。毎日ですか。一週間に一遍ですか。
  465. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 一週間にあの当時は二回だろうと思います。三回だつたと思います。
  466. 小川友三

    ○小川友三君 その写しは刑務所にありますか。その後二回になつておりますか。
  467. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 三回になつたかと思います。
  468. 小川友三

    ○小川友三君 その写しは刑務所にありますか。
  469. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) あるだろうと思います。
  470. 小川友三

    ○小川友三君 それから衣類の差入れでございますね、衣類を差入れまして、その衣類が帰るときに減つておりませんでしたか。その理由は、弁当を差入れたときの受刑者が帰るとき着物がない、それで足袋を呉れ、靴下を呉れというので、それを請求いたしまして、そうしてそれを着て出て行くのです。受刑者の着物がないわけでありますから‥‥。それで枚数が減つておりはせんかと心配しますが、その点につきまして点檢を完全にやつて、その差入れをやつた者は、着て行つた数と出した数がぴつたり合つておりますか。
  471. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 合つております。わしのところから宅下げした衣類については確実にそれは合つております。
  472. 小川友三

    ○小川友三君 それから房の中で紙と鉛筆を自由に使わせましたか。
  473. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 紙と鉛筆は許可になつて入れております。それは期間はいつまでだからよつと忘れましたが、控えのあれがありましたから、それは入れました。
  474. 小川友三

    ○小川友三君 それで出所するときに、紙を使つた枚数と残りを引比べて見ましたか。便箋を入れた枚数と、それを使つた数と引比べないと、雜役の弁当を入れる受刑者に渡す虞れがありますから、それを点檢をして、枚数をきちんと、渡すときの枚数はお調べになつておりますか。返すときの枚数をお調べになつたでしようか。
  475. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 枚数は調べておりません。分りません。
  476. 小川友三

    ○小川友三君 読書は、どういう本を読んでおりましたか、房の中で‥‥。
  477. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 本の名前は記憶いたしません。沢山來ておりましたから‥‥。その方の控えは取つてありますから分ります。
  478. 小川友三

    ○小川友三君 煙草は吸わせましたか。
  479. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) 吸わせません。
  480. 小川友三

    ○小川友三君 何か請求して睨みつけられたり威嚇されたようなことはなかつたですか。
  481. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) ありません。
  482. 小川友三

    ○小川友三君 それから差入れ弁当の中に手紙は入つていませんでしたか。
  483. 中島常三郎

    證人中島常三郎君) ありません。これは私が全部檢閲したわけです。差入弁当は‥‥。
  484. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは控室でお待ち下さい。    〔証人野崎陽之輔君着席〕
  485. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 野崎陽之輔さんでありますか。
  486. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そうです。
  487. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたはお歳は幾つですか。
  488. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 五十です。
  489. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは失礼ですが、学歴と医者の御経驗をちよつと簡單に‥‥。
  490. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 学校は慈惠医大の卒業です。
  491. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから医師になられたのは‥‥。
  492. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 卒業した年であります。
  493. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 現在に至るまで‥‥。お勤めは。
  494. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 昭和六年に司法省に勤めました。そのときはずつと司法省の行刑局の方に勤めておりました。
  495. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勿論医者としてですね。
  496. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はあ。
  497. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 開業医をなさつたことはありませんか。
  498. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) ございません。その前に病院に二年近くおりました。
  499. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 以來ずつと行刑局にお勤めになつておるのですか。
  500. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そうでございます。それから昭和六年に刑務所の方に参りました。
  501. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなた、今問題になつております尾津と前に面識ありますか。
  502. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 刑務所に入る前でございますか。
  503. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 前です。
  504. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) いやございません。
  505. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ありませんですか。尾津が街の顔役相当勢力を持つておる、一言でいえば偉い親分だというようなことは御存じですか。
  506. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) それは多少聞いておりました。併し本当によく聞いたのは刑務所へ入つてからです。
  507. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 入る前は新聞で知る程度ですか。
  508. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そうです。
  509. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津が入つたのは六月二十七、八日頃ですか。
  510. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 二十七日でございます。
  511. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 昭和二十二年の六月二十七日。それから尾津が出所する同年の九月十二日までの間に、あなたが刑務所の医者として何回くらい診察しましたですか。
  512. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はつきり回数の記憶はございませんですけれども‥‥。
  513. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが最高裁判かの人に聞かれたことがあるでしよう。
  514. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) ございます。
  515. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときにあなたから述べられておるのは‥‥。
  516. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はあ。
  517. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 六月二十六日、六月二十八日、七月二日、八月十二日、八月十四日、八月二十三日、九月四日、九月十二日と、こういうように診察しておられるように見ておりますが。
  518. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) それは今はつきり日にちの記憶はございません。
  519. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのくらいはしておるわけですね。それは何かの診療簿に基いて言われたのでしようね。
  520. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そうでございます。
  521. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 診療簿に載つておるのですね。
  522. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) ございます。
  523. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 初めから八回ですかね、八回の順序を追つて、大体の本人を診られた状況を簡單にお話し願いたのですが。
  524. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 入つた翌日に初めて診たのでございますが、そのときは確か胃が惡かつたように本人が申しておりまして、胃の所が痛いとか、食慾がないという訴えがございました。それで診たのでございますが、別に潰瘍のような状態でなく、普通の胃カタルの状態であろうと思つて投藥して置いたのですが、その翌日、はつきり日にちは分りませんから、その二、三日してから非常にめまいがするとか頭が重いとか、そういう訴えがありました、それから何か足が痺れるとか、肩が張るとか、そういう訴えがあつたので診ましたが、特別に多角的にどうという症状ははつきり分りませんでして、血圧などを調べたのですが、そう高くもありませんでしたし、その後糞便檢査をしましたが、潜在出血もありませんし、胃の方は普通の胃カタルであるし、それから頭の工合も別に、特に脳溢血とかそういう心配はないように思つておりました。で、その間まあ頑癬のようなものがあつたり、それから胃の方は大体段々良くなつて食慾も出て來たようでありますが、めまいがするとか、頭が重いとか、よく眠れぬという症状が段々ひどくなつて來るように思つたのであります。で、それはどうも何といいますか、はつきりこちらにも病名が付れられなかつたりして対症的な療法をやつてつたようなわけであります。
  525. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 八回の診察の結果は大体そんなような程度ですか。
  526. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はあ。
  527. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その診察に至つた動機は、看守の申出によつて診たのですか。
  528. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) え。一番初めは入所のときに、本人のそういう訴えがあつて、それで診察したのでありますが、その後は、そういう状態ですから、私のところには保健助手というのがあり毎日舎房を廻つております。それに注意をさせて、変つたことがあるというようなときに診察しておりました。それから裁判所から診断書を求められる、病状書でございます。病氣の状態に問われることがあります。そのときに特別に診てやる、そういう状態であります。
  529. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 裁判所から何回くらいそういう御要求があつたのですか。
  530. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 九月に出るまでには五、六回あつたのではないかと思います。
  531. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 檢事局からありましたか。
  532. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 檢事局としては、私特別に記憶はありませんのですが、檢事さんが來られて、病状書を出せと言われたような記憶があるのですが‥‥。
  533. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると裁判所に出されました病状書というのがありますですね。その度には必ず診ているのですね。
  534. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 診ております。
  535. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その病状書をお出しになつたのは八月十四日、八月二十三日、九月五日、九月十二日と、こうなつておりますが‥‥。
  536. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 九月十二日はございませんでしよう。
  537. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 五回出ておりますがね。
  538. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そうですか。
  539. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 最後の出ておる日も診ておりますね。
  540. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はあ。
  541. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これは相違ないですね。
  542. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そうでございます。
  543. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この胃の痛みとか、頭痛とか、めまいとか、不眠とか、食慾の不振ということは、いずれも本人の申出によつてそう認識したのですか。
  544. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そうです。
  545. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの外診の結果判定されたのですか。
  546. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 胃の惡いのは診察したところで‥‥、外観的に多少そういう傾向は認めております。それから不眠とか、頭重とか、めまいとかいうことは、これは外観では分りません。本人の訴で‥‥。
  547. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ただ本人の申出によつてそう認定しただけですか。別に外診によつて認定できなかつたのですか。
  548. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) それは分りません。
  549. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 胃の痛は。
  550. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) それは痛いということは自覚症状でございますから、外観的に分りませんが、外診したときに胃にそういう傾向があつたりしますから、それで胃に多少惡い所があるということだけは分ります。
  551. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 多少惡いと、その他は本人の申出によつて判定したと。こう伺つてよろしいのですね。
  552. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そうです。
  553. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうことになりますと、いわゆる本人の申立というものが、外診によつて判定ができないということになりますれば、大人の申出というものが、誇張されておるというふうにはお考えになりませんか。
  554. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 特別にそういうふうに考える‥‥。
  555. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 惡くいえば、嘘を言つておるというふうには考えませんか。
  556. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そういうふうには考えておりません。
  557. 伊藤修

    委員長伊藤修君) よく受刑者はそういう手を用いますですね。そうは考えませんか。
  558. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そうまでは考えておりません。
  559. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 多少誇張があるとは考えたのですか。
  560. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そう言われれば、後では分りますけれども。
  561. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 結果を推してはお氣の毒だけれども‥‥。
  562. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そのときにはそう特別に考えたこともなかつたのです。
  563. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ今日の結果から見ると‥…。
  564. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) あつたかも知れませんし、或いは‥…。
  565. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 誇張したように、平たくいえば嘘を言つてつたように考えられなかつたわけですか。
  566. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そこまでは考えませんのですが、ただ時期が違いますと全然違いますが、そのときにきそうであつたぐらいには考えております。
  567. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 九月十二日附の病状書ですかね。これは一般的状態の不良とはどんなことを言つておるのですかね。
  568. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) つまり衰弱とか、それから‥‥まあ大体衰弱でございます。
  569. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、結局尾津の病名は何になるのですか。
  570. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) まあ診断書にもございますけれども、これがやはり拘禁性の神経症というふうに考えているのです。
  571. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、主なるものは拘禁性神経症というのですか。それがまあ主たるものですか。
  572. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そうです。
  573. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一般ら拘禁せられた者は、最初の中は多少精神的に昂奮しておりますですね。そうして又精神の悩みからいたしましてやつれて行く。いわゆる拘禁性精神症ということになるのは、どんな被告でもそれは皆が罹かるところの病氣じやないのですか。
  574. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) いや、そうでもございませんですが‥‥。
  575. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから、あそこへ行つて朗らかになつて愉快に生活をするという人はないですから‥‥。
  576. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) それはまあ恐らくないと思いますが、併しそういうふうに‥‥。
  577. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 殊に普通のチンピラやなんかならともかくも、社会的に地位を持つたり、賛沢な生活をしたり、大きな事業をしているという人程、ああいう所に拘禁されますれば、精神的な悩みというものが、事業上の悩みとか、或いは名誉的の悩みとか、いろいろな悩みで以て、その悶えから來るところの精神的の神経症になつて來るのじやないでしようか。
  578. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) それは多少はあると思います。併し‥‥。
  579. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや、多少じやないでしよう。我々考えるところでは、それが多いのじやないでしようか。
  580. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 本人から余り苦痛なんか訴えて來なければ、私共はそう影響はなかつたのだというふうに考えますのですが。
  581. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 誰しも悩むことは当り前のことです。悩まないのが不思議で、それは痴呆状態の人です。むしろその方が病氣です。
  582. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) それはそうであるかも知れませんが、本人が何も別に苦痛を訴えなければ、まあ‥‥。
  583. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だから私の言うのは、苦痛を訴える訴えんに拘わらず、あの程度の拘禁性神経症というものは、さような地位を持つている人はあり勝ちのことではないかということをお聞きするのですが‥‥。
  584. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 特別に訴えて來ない者もありますから、多少によつて‥‥。
  585. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 訴えると、やはり拘禁性神経症になるわけですね。そういうことになるのですか。
  586. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) まあ他に病氣がなければ、私共の方じやそういうふうに考えるより仕方がないのです。
  587. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 殊に拘禁してあつた所が、重罪犯人を拘禁しておつた所だそうですね、舎房は‥‥。
  588. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) あそこは全部そうでございます。
  589. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 重罪犯人を拘禁する舎房に拘禁してあつたのですね。
  590. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はあ。
  591. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 他の被告はそういうような神経症であるとかいうような、やはりそういうような傾向があるのじやないですか。
  592. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 全部そういつたことは余り考えないのでございますが。
  593. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうような状態で、尾津病氣が普通一般の病氣より重いという認定がどうして付くのですか。
  594. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 重いということは‥‥。
  595. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ平たくいいますれば、拘禁に堪えないということがどうして言えるかというのです。
  596. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 非常に、そのなんですか、まあ今言つたような睡眠が不足だとか、頭が重いということを訴えて來ますし、そうして食慾がなくつて、身体が衰弱する傾向があるものですから‥‥。
  597. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その程度でどんどん釈放しておつたら一人も留置することができないですね。
  598. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 私はそれですから別に釈放ということは‥‥。
  599. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 釈放は結果ですけれども、その程度で拘禁に堪えないという診断があるとすれば、恐らく地位ある人や事業をやつている人やというような人は、到底拘禁することはできないということになつちやうですね。
  600. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) まあそうなればそうなりますですね。
  601. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一体その程度で今まで釈放になつた人がありますか。
  602. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) まあその程度に行つてなくても出る者もあります。
  603. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 他の理由で出る者もありますけれども、その程度の病氣を主たる理由にして、病氣なるが故に拘禁に堪えないといつて釈防するような例があるのですか。まあ他の理由があれば別問題ですが‥‥。
  604. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 釈放の点ははつきり分りませんですが‥‥。
  605. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたがお取扱になつている、あの現在の拘置所においてそういう例がありますか。
  606. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 病氣だけですか。
  607. 伊藤修

    委員長伊藤修君) え。
  608. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 病氣だけで出ているか、何で出ているか、その点が私にははつきり分りません。
  609. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 病人をお取扱になつているから、そのお取扱になつた病人の中で、ある程度の病人なるが故に出たというようなものは御存知じやありませんか。
  610. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そうでございますね。たびたび申上げますが、あの程度のものもあの程度でなくても出る者もあります。
  611. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは勿論あります。
  612. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 肉体的にもつと重い病氣でも出ない人もありますし、私の方で病氣によつて出るのか何か、そういう点がはつきり分りません。
  613. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ですから話を縮めて要約して申上げますれば、病氣だけの理由で出たということの、あの程度の病氣だけで出たという実例をあなたは御承知ですが。
  614. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 病氣だけで出たか出ないかということがはつきり分らないのですか。
  615. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが取扱つている病人は。
  616. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) それは出ております。
  617. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 結局何の原因で出たか分らないから、その比較はできないと、こうおつしやるのですね。
  618. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はあ。
  619. 伊藤修

    委員長伊藤修君) さような性質の病氣ですが、それは一体病氣ですかね。拘禁性神経症という、そういう病氣はいつ頃から、そういう病氣の名前が出たのですか。
  620. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 実はそういう病名がはつきりあるということは‥‥。
  621. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 医学上そういう病名があるのですか、
  622. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 実は私にもはつきりあるとは申上げられないのでありますが、それより外に名前が付けようがありませんから。
  623. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう名前は以前から使われているのですか。
  624. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 余り聞いたことがないのですが、前にもあつたようには思いのです。
  625. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの創作ですか。
  626. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 創作と言われるとちよつと困るのですが……。
  627. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どつからこういう名前で出て來たのですか。
  628. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) その病氣の症状ですから、そうじやないかというふうに判断しているのです。外に拘禁性精神病とか、精神にあるような名前を付ける程の病氣でありませんし、外に精神にあるような病名として付けるあれがなかつたのです。それと前に何か先輩の人達にですね。そういつたことを言つた者があつたように思つたものですから、そういう名前を付けたのです。
  629. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 我々素人から考えますれば、いわゆる拘禁によつて異常に神経が昂ぶつて來るから、それが精神作用に影響を及ぼす、そういう病氣だというのですか。
  630. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そうであります。
  631. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうように伺つてよろしいですか。
  632. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はあ。
  633. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 拘禁性神経症の定義ですね。
  634. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はあ。定義か何か分りませんが……。
  635. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、今の前提から考えますれば、拘禁を解かれれば直ぐなおつちまう病氣ですか。
  636. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 大体私はそう考えております。
  637. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 拘禁している中はそういう病氣は持続しているけれども、拘禁を解かれれば直ぐなおる病氣ですね。
  638. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 直ぐかどうか分りませんが、なおる病氣と思います。
  639. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、結局は拘禁されている者はそういう病氣に罹かり易いわけですね。
  640. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) まあさうなります。これは人によつていろいろあります。
  641. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 先程申上げたように精神的打撃を受ける率の多い人は罹かり易いわけですね。
  642. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はあ。
  643. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それが医者としての医学的見地から考えて、そういう病氣が拘禁を持続することによつて生命に危險を及ぼすというようなことはあり得るのですか。
  644. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 今までそういう生命にまで及ぼした例はございませんから、そうまではないとは思いますけれども。
  645. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうは考えられない。まあ健康にはよろしくないということは、我々素人の常識でも考えられる。
  646. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) それから又神経症にも、もう少し進んだらどうなるかということも多少考えないでもありませんが、拘禁性精神病というものがございますので、その程度まで行くか行かないか、はつきり分りませんが。
  647. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 拘禁性精神病というものはございますか。
  648. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) ございます。
  649. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは、拘禁によつて、精神に異常を來すわけですね。拘禁という恐怖の観念によつて
  650. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そうでございますね。原因は外にあるかも知れませんが、まあ、そういう名前を付けております。
  651. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津が左樣な病氣に罹つているが、今あなたの言う拘禁性神経症に罹つておることによつてですね。それが、拘禁を継続することによつてだね。先程お伺いしたけれども、身体の生命の危險がある心配までは絶対にないわけですね。
  652. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 絶対とは申上げられませんが、これは早急にそういうことはないと思います。
  653. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 早急というのは、どのくらいのことを言いますか、
  654. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) まあ、それはそうですね、一月か二月でそういうことはないと思つております。
  655. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 左樣な病氣に罹つておるからといつてですね、拘禁を絶対に継続して行く場合において、中が以でそれは治らないでしようかね。
  656. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 絶対に治らないということはございません。
  657. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 中でもね。
  658. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はあ、いわゆる何と言いますか。精神の変換と言いますか。轉換と言いますか。その人の氣持の持ちようによつてつて來るのではないかと思います。なかなか治らない場合もあるかも知れません。
  659. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あるかも知れませんが、例えば運動をよくするとか、いわゆる精神の轉換を図つて、精神状態の安定を図ることによつて、治療ができるわけですか。
  660. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) それから、それと、裁判の審理の工合によつても変つて來るのではないかと思います。
  661. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これはまあ犯した罪に対して審理を受けるのであるから、それがために拘禁されておるので、この裁判の悩みというものは、これは自分の精神的悩みで、当然のことですね。
  662. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そういうようなことでも変つて來るのではないかと考えております。
  663. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 裁判の悩みでそれは治らないということになれば、恐らく被告の全部が治らないということですね。
  664. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) その点は、ちよつとはつきり分りません。
  665. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そこでしよう、裁判を受けるために入つておるのですから、証拠湮滅とか、逃走とかいう虞れがあるという理由のために、拘禁されておるのであるから、そうすると裁判の結果に対する悩み、審理に対する悩みというものであつて、治らなかつたということになれば、凡そかような被告人に対して、拘禁性神経症というものは治り得ないということになる。  裁判の継続中は。
  666. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) その継続中と申しましても、何か途中でやはり変つて來るんじやないかと思います。
  667. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは、法廷の刺戟によつて変ると、こうおつしやるんですか。
  668. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) じやないかと思います。
  669. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今日の裁判は不利であつたとか、今日の裁判で追及されたとか、或いは自分の意に満たない証言があつて、憤慨したとか、そういうことによつて、昂奮したというのですか。
  670. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 無論そういう原因もありますし、本人が多少その間に氣持が変つて來ることもあるんじやないかと考えられますが。
  671. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津が、脳溢血で、二十一年十二月頃ですね。倒れたということは、御存じですね。
  672. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) それは私は見ておりませんから、本人からそういうことを聞いておりますだけです。
  673. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本人がそう言つたのですか。あなたの診察中に。
  674. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はあ、診察を受けた來たときには。
  675. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 言つたわけですね。その症状はどうですか。
  676. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 一番最初の診察のときであつたと思いますが。
  677. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 第一回の診察のときに、そう言つた……それはその症状がありましたか。
  678. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) それは、頭が何か重いとか、手足が痺れるとかいうようなことから、疑いもないことはないので、血圧も調べた。本人が非常に酒呑みであつたという点から、血圧も調べた。その血圧も低かつたから、今そう急にあることはないとは思いましたが。
  679. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本人からそういう訴えがあつたが、あなたが医者としての医学的見地から、そういう特段の症状がなかつたわけですね。
  680. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そういうのではなく、今急に起るとは考えなかつたわけです。
  681. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一体脳溢血というものは、血圧が高い場合が多いんでしよう。医学上のあれはどうですか。
  682. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そう大体考えておりますが、そう高くなくても起る場合もあります。高い場合が、普通だと思います。
  683. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 低い場合もあり得るですか。
  684. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 非常に普通よりも低い場合に起すということもあり得るが、低いから起すということは、余りないんじやないかと思います。
  685. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 低い場合には、脳溢血が起らないのが普通じやないですか。
  686. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) それは起らない方が多いです。
  687. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 多いという、要するに、脳溢血の危險性がないですね。むしろ貧血の方が多いですね。
  688. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) それは低ければ、貧血があるかも知れません。
  689. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう症状から言つても、あなたの診断の症状から言つても、その当時は、結局脳溢血の本人の訴えはあるけれども、外診の結果としては、そういうように考えられないと、こう伺つてよろしうございますね。
  690. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はあ。
  691. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本人が、公判廷で卒倒したことは、お聞きになりましたか。
  692. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 聞きました。本人が訴えておりますし、それからあとで聞いたが、檢事さんからも言つてつたように思います。
  693. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 高木檢事から‥‥。
  694. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 檢事さんの名前は、私ははつきり覚えておりません。
  695. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの所へ來た檢事なら、高木檢事より外にありません。
  696. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 私は、そういう記憶はありませんが、卒倒したその日には本人から聞きましたし、それから裁判に出廷した檢事も言つているし。
  697. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そんな事実はありませんがね。卒倒したという。脳貧血みたなものを起したという‥‥。
  698. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 原因は分りませんが、先に卒倒したということは傳わつておりますが、そういう事実はないように思います。
  699. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうですか。私はただ、現場は知りませんから、ただ脳貧血ぐらいで倒れたのではないかと思つておりましたよ。
  700. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はあ。
  701. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 目眩いしてから、ふらふらつとしたのであるかも知れませんが、卒倒という、倒れたという、脳溢血の症状の仕方で倒れたというようなことはないですがね。
  702. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 脳溢血で倒れたというような、これはもう卒倒という言葉も変かも知れませんが、今申上げたように、脳溢血で倒れたという程度じやないかと、その時は思いました。
  703. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから、結局あなたは、本人のそういう申出でと、檢事が名前が分らんけれども‥‥。
  704. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 檢事からのは、私はあとから聞いたことであります。その日じやありません。
  705. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そんなことを聞いた。それで、そのようなことを言うと、こうおつしやるんですね。
  706. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そうです。
  707. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 事実がどうか分りませんね。
  708. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) それは、現場を見ておりませんから。分りません。
  709. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 事実はなかつたらしいですがね。
  710. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はあ。
  711. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの見たところでは、尾津が、胃潰瘍に罹つたということはありませんか。
  712. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 前にあつたと言われた。それで先程申しました糞便檢査をやつたが、出血しているような状態もありませんから、その時は、胃潰瘍がないと思いました。入つてからはです。
  713. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本人が、胃潰瘍だという訴えがあつたけれども。
  714. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) それは、前にあつたという訴えでありましたが。
  715. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 既往症としては胃潰瘍があつたということが、あなたの見たところでは、そういう胃潰瘍はなかつたというわけですね。
  716. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はあ。
  717. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは、そういう既往症があるということは、本人以外には聞かないですね。
  718. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 聞かないように思います。
  719. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本人から。
  720. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はあ。
  721. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勿論あなたは脳溢血及び胃潰瘍ということは、過去の既往症の本人の訴えのみであつて、あなたが診察されたときには、そういうことが認められなかつたのだから、それによつてこれが惡化するとか、これが危險だとかということは、お考えにならなかつたわけですね。
  722. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) それらの心配は余りしておりませんでした。
  723. 伊藤修

    委員長伊藤修君) していなかつたわけですね。その点に対する心配はなかつたというように伺つてよろしいですね。從つて胃潰瘍や脳溢血を理由にして、保釈をするというようなことは考えていなかつたわけですね。
  724. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) それはございませんでした。
  725. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうことですね。以上大体伺つたことによつて尾津の病状が、拘禁すれば結局惡くなつて行く、惡化して行く、いわゆる拘禁に堪えないのだというふうに考えて、これが釈放すればよくなつて行くというようにお考えになつたんですか。
  726. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) ひどく惡くなるとは考えておりませんでしたけれども、出れば治るということは考えておりましたです。
  727. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 先程の御説明のように、出ればすぐ治り得るように考えておられたのですね。そうすると拘禁に堪えないということは言えないわけですね。
  728. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そこまでは考えておりませんでした。
  729. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今度再拘禁されてからの健康状態はどうですか。
  730. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) やはり今言つたような症状は相当続いておりましたですが、大体本年に入つてからは、別にそういつたような訴えはないようです。
  731. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いわゆる拘禁性神経症というものもないわけですか。そうすると心の平靜が保たれて來たわけですね
  732. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そうじやないかと思います。
  733. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 観念してしまつたわけですね。
  734. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そうでございますね。別に特別の扱いもしておりませんから。
  735. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、その前は出たい一杯で、裁判よりも、むしろ何とかして釈放にならないかというこの悩みが多くて、そういう病氣になつたわけですね。
  736. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そうではなくて、裁判に対して、非常に‥‥。
  737. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 関心を持つていたですか。
  738. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 何時も不満を持つてつたように聞いておりますから。
  739. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 裁判に対して観念してしまつたわけですね。
  740. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はあ。
  741. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうなると、再拘禁からはそういう症状はないわけですね。
  742. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 一時ございましたけれども、段々よくなつて來ております。
  743. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今日のところでは。
  744. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 今のところでは特別にそういう訴えは言つておりません。時たまいろいろ腹が痛いとか、そういう点はございましたけれども。
  745. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いわゆる釈放前は、先程他の看守から聞きますと、七月の終いか、八月の初めから横臥許可したそうですね。出るまで。
  746. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) それは日にちは、はつきり分りませんが、私は初めから横臥させたんじやないかと思う節もあるのでございますが。
  747. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは診察は舎房へ行つて診察するんですか。
  748. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 大体こちらへ。
  749. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの医務所の方へ。
  750. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はあ。
  751. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、現場は御覧にならないわけですね。
  752. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 現場も一、二回は覗いたことがあります。
  753. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときは横臥しておつたんですか。
  754. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はあ。寢かせてありました。
  755. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今度再入所からはどうですか。横臥を許してありますか。
  756. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 横臥を許してありましたと思うんですが。
  757. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 許してある‥‥現在もそのままですか。
  758. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 今はちよつとその点は、私うつかりしておりますが、今はそう寢ていないんじやないかと思いますが、はつきり知らないんですけれども。
  759. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 許可し放しですかね。
  760. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 起きろというあれをしておりませんでございます。
  761. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、再入所のとき横臥許可をし放しで今日に至つておるわけですね。
  762. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そう思います。
  763. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの今のお話では、横臥許可を取消してもいいわけですね。
  764. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そうでございます。
  765. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 昂奮しておつたようですね。
  766. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はあ。
  767. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 特別の取扱をして甘やかしておるようにも見えますな。
  768. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 甘やかしておるわけではないですがね。
  769. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 相当この事件は関心を持つておるのですから御注意になつた方がいいですよ。
  770. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はあ。
  771. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 現在のあなたの医療設備は、先だつて私はちよつと拜見したことがありますのですが、相当の設備があるのですから、相当程度までの治療はできるでしよう。
  772. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 現在のとこ内科だけの治療が主でありまして‥‥。
  773. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは專門はどちらですか。
  774. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 專門という程のこともございませんけれども‥‥。
  775. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 大体‥‥。
  776. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 大体内科でございます。
  777. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 内科ですか。
  778. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はあ。
  779. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 内科に関しては或る程度までできるのではないですか。
  780. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 内科のことは大体できるつもりであります。
  781. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう設備は相当おありになるようですから‥‥。
  782. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) ただ藥品とかそういう点が不足しておるというだけです。
  783. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは、まあどこでもそうですね。
  784. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) ‥‥。
  785. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 係の判事があなたを訪ねたことはありますか。
  786. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 判事‥‥あつたと思いますが‥‥。
  787. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 八月十五日、八月二十九日、九月十二日と三回訪ねておられるようですがな。
  788. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) その記憶は、はつきりございません。
  789. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その時は誰と誰です。
  790. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) その方ですか。名前はちつとも記憶がないですが。
  791. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 第一回の時は何人見えたです。
  792. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 何人ですか。人がですか。
  793. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ええ。数。
  794. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そういう点もはつきり‥‥。一人でも來られた方もあるし、書記さんのような人を連れて二人で來られたこともあります。私何人ということははつきり分らないです。
  795. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 三人一緒に來られたこともありますか。
  796. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 二人であつたかと思いますが、三人であつたというようなことはよく覚えておりません。あつたかも知れません。
  797. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一人で來たり二人で來たりしたことがある。三人のことは覚えがないですか。
  798. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 一遍ぐらいあるかないか‥‥。
  799. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一遍ぐらいあつたと思うですか。
  800. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はつきり分りません。それから判事さんであつたか、檢事さんであつたかということもはつきり記憶がないです。檢事さんも來られたように思うのであります。
  801. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その第一回の時から、あなたは名前が分らなければ、一松判事と伊藤判事ですね、が見えた時に、こういうことは言わなかつたですか。審理を急いでおるから、問診のみでなく、十分診療して、一日も早く出延させるようにということを頼んで、暗に甘い診断をせずに、医師として良心的な診断をして貰いたいという氣持を仄めかしておるというようなことはなかつたですか。
  802. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 特別にそう‥‥。そういう点ははつきり記憶がないのでございますが。
  803. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その頃尾津がいわゆる頭痛のために‥‥、外の病氣か知れませんが、出延ができなかつたということがありますか。
  804. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 一回か二回何か裁判所で非常に昂奮したことがあつたり、何か椅子を振り廻したということがあつた。その時帰つて來てから、頭が重くて行かれんというようなことを言つてつたことがございまして、その旨を裁判所の方へお傳えして出延しなかつたことがございます。
  805. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その時勿論診察されたのですね。
  806. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はあ。
  807. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それらは出延不能という状態であつたのですか。
  808. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 私は休まして置かなければならんと思つたものですから、そう言つたのでございます。
  809. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ただあなたの感じだけですか。
  810. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) ‥‥。
  811. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 病状は左様な出延が不可能だという絶対性を持つたものですか。出れば出れる状態であつたのですか。
  812. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) それは勿論連れていけば出延できないこともなかつたと思いますが、精神状態から考えて、少し休ました方がいい、こういうふうに考えたのであります。
  813. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは出延不能証明書というものを書かれておりますね。
  814. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はあ、出しております。
  815. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 要するに本人の氣ままを、あなたが、本人を恐れてか何かして、氣ままを看過してという程度ではないですか。
  816. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そういうことは私は考えておりません。ただ精神の安靜を保つために、休まして置いた方がいいように思つたのです。
  817. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはいいには違いないでしようが、強いて出廷ができないという不可能な状態ではないですね。
  818. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) それは無理に連れて行けば、できないことはないと思います。そのときは、そこまで考えなかつたのでございますけれども。
  819. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ結果から見ますと、本人を少し甘やかし過ぎておるというふうには考えておるのですね。
  820. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 甘やかしたというふうには考えておりませんが、ただ安靜にした方がいいということだけを考えておりました。
  821. 伊藤修

    委員長伊藤修君) こちらで書面は分つておりますけれども、裁判所で病状について見えたときに、どんな口頭の報告をされたのですか。
  822. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 大体いま申されたような程度です。
  823. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 大体いま言われたような程度。
  824. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はあ。
  825. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、いま私がお尋ねしたような認識は、裁判所が持つたわけですね。
  826. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そうだと思いますが‥‥。
  827. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 要するに私のお聞きすることは、拘禁に堪えないということをあなたが強く主張されておるのか、今ここであなたが証言なさつた程度のことを言うたやつを、裁判所がそれを重く感じたのか、その点を伺うのです。
  828. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 私は拘禁に堪えないということまでは考えておりませんです。
  829. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや、その報告の状態を聞いておるのです。言葉の報告の状態はどうです。
  830. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) それは拘禁に堪えないという程度ではなくて、私としては、つまり外に出したら治ると、こういうふうなことを考えておりました。
  831. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その治るといいことも、その言葉の應答の中において、要するに拘禁に堪えないような報告を、どうもあれは置いとくというと危險だというような趣旨のお話をなさつたのか、まあ外へ出れば治るとか‥‥。
  832. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 外へ出した方がよいだろうということは申上げたように思います。治るという点からですね。
  833. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは、まあ單に病氣を治すということ。問題は、拘禁して継続できるかどうかということを心配して裁判所は再三あなたの方に行つたわけですね。だから裁判所があなたの方に行つたことも、そこに重点があるのですから、そこを相当強く掘り下げてあなたに質問しなければならん筈であるし、それに対して、あなたも相当のお答えがあつた筈ですがね。
  834. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 私としては極く惡くなるとは思いませんでしたけれども、まあ出した方が早く治るのではないかと、そういうふうに申上げたように思うのですが、そういう氣持がその当時あつたのでございます。
  835. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ医者本來の立場から行けばそれは当然のことでしようが、問題は、裁判所がそういうふうに被告について病氣の状態を始終調べに來ることはあり得ないのでしよう、どうですか。
  836. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) まあ直接來られて調べるということは、たまにはございますけれども、しよつちゆうはございません。
  837. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 例の少いことですね。それを裁判所が二回も三回も特にその病状を聞きに行くということは、結局保釈をしようという、若しくはしてならんのかということを決定するために、その心証を得るために、裁判所はあなたの方に訪ねて行つたのですね。
  838. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 私、そういう点だけははつきり分りませんです。まあ大体医者としての立場ばかり考えておりますから。
  839. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それからあなたの御報告は、相当重いような御報告じやないのですか、その当時としては。
  840. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そうでしようかしら。
  841. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうお考えにならんですか。それとも今おつしやつたような報告をしたわけですか。
  842. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 特別に重く診たというふうには報告してないつもりなんですがね。
  843. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今日ここで御証言なさつた程度の報告をしたわけですか。
  844. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そうです。
  845. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、裁判所がそれを聞き違えたか、そういう軽いものを重く感じたのでしようかな。
  846. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) その点はちよつとはつきり申上げられません。私の氣持だけでございますから、裁判所の方の氣持はよく分りませんです。
  847. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 私は、裁判所の氣持は分らんから、あなたの言つた報告のそのときの氣持を聞いておるわけです。
  848. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 特に重く書くたというふうですか。
  849. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 書いたことは、この文面で分りますから、あなたの報告の氣持を聞いておるのです。
  850. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 重く報告したということは、私はないと思います。
  851. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本人は元、横痃とか淋病に罹つておるわけですね。
  852. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 性病のことははつきり聞きませんでした。
  853. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは聞いておりませんか。
  854. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 梅毒をやつたという程度ぐらいしか聞いておりませんです。
  855. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 性病はあなたの方で調べるのではないですか。
  856. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 一應はそういう点も聞くのでございますが、ただ梅毒をやつたということだけは聞いておりますが‥‥。
  857. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 性病は進駐軍の方でやかましく言やしませんか。
  858. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 現在は大体本人の訴えによつていろいろ調べておりますから‥‥。
  859. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ、そのときには既往症として梅毒をやつたということは聞いておるけれども‥‥。
  860. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 現在は別に何もないというふうに私共診ておつたわけです。
  861. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう淋病とか梅毒とかいう関係から脳溢血なんかに影響あるのですか。
  862. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 梅毒はございます。
  863. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 梅毒はある。
  864. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はあ。
  865. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 第二回目に判事が三名して來たときに、三名の判事が尾津病氣を尋ねて來たのですが、そんなときに、こんなことをおつしやつたのでございますか。どんな病氣でも拘置所では駄目だということは言えないが、実際上思うように行かん、今のところ危險はないが、低血圧でも淋毒菌が脳溢血の症状を起すことがあるから油断できん、拘禁神経症は治しにくい、そういうような話をされたのではないのですか。
  866. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) その淋毒がということは、私はちよつとないように思うのでございますが。
  867. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうことはおつしやらないのですか。
  868. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 淋毒が脳溢血にですか。
  869. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ちよつとこれは医学的には‥‥。
  870. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 私、医者としては、そういうことを言つたようには思いません。
  871. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 医学的にはちよつと変だと思いますがね。
  872. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そういうことを言つたことはないと思います。
  873. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、裁判所の方の聞き違いか。
  874. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 私に言わせると、自分でそういうことを言つたことはないと思うのです。
  875. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 脳溢血の現象としてはちよつと変に思えるのですがね。私素人ですがね、他の專門家に言わせると。
  876. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はあ。
  877. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたも医者ですからね。
  878. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 私はそういうふうに言つたように思いません。ただ梅毒の場合には脳梅毒というのがありますから‥‥。
  879. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは、こういうことを言うた覚えはないとおつしやるわけですね。
  880. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 記憶はございません。
  881. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 又仮にあつたとしても、これは医学的に違つておると、これは言えますね。
  882. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はあ、それは言えます。
  883. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 外に特段の話はありませんでしたか。
  884. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 別に特別な話というものはなかつたように思います。その記憶は全然ございません。
  885. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 高木檢事は八月の二十二日にあなたを訪れたことがあるのですね。そのときには、どんなふうに報告されましたですか。
  886. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 八月二十二日でございますか、さあ日にちが‥‥。
  887. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これは一回きりですから‥‥。
  888. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そういうことになると、記憶はつきりないのでございますけれども。
  889. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 九月の六日に、檢事から電話で以て尾津の病状を照会して來たですね。
  890. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 六日でございますか、五日でございますか。
  891. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 九月の六日でございますね。
  892. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) さようでございますか。
  893. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときに電話の回答は、九月五日附の病況書をすでに送付したが、相当惡化して拘禁継続は不適当の旨を回答されたそうですね。
  894. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) その病況書のことは、私ちよつと記憶が、病況書を見てからでないとはつきり分りません。
  895. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは、これが問題になつたことは十分御承知で、関係方面においてもこれに重点を置いておるのですからね。これも詳細な報告書で出ておりますし、報告書にない以外のことを大体お聞きしておるのですからね。
  896. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 多分そのときには大分衰弱が増して來たのじやないかというふうに考えておりましたですが。
  897. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう趣旨の返事はなされたのですか。
  898. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 病況書にある程度で、病況書に書いた程度には申しております。
  899. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 病況書にはそういうふうには書いてないですけれどもね。けれども電話では病況書の通り‥‥もう一遍申上げますが、九月五日附の病況書をすでに送付したが、これまでは病況書で分るという意味ですがね‥‥。が、相当惡化し、拘禁継続不適当の旨をあなたが回答されたと、そこがあれですね、中心ですね。
  900. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) さあ、そういう電話は‥‥。
  901. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 病況書に対してこれだけのことを加えておるわけですね。
  902. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そのことは、はつきり私記憶にございませんですけれども。その病況書以外にそれ程に言つたようには私記憶ございませんですが。大体病況書の通りに申上げたと思います。
  903. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうことは言わないと‥‥。
  904. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 言つてないように思いますが。
  905. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 言つてはないとこう伺つて宜しいのですか。
  906. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) これははつきり記憶はしませんが。
  907. 伊藤修

    委員長伊藤修君) もう病況書の通りには勿論書いていたが、そういうことを附け加えた強い意味の言葉は附加したようなことはないと‥‥。
  908. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) それ程のことには言つたように思つておりませんけれども‥‥。
  909. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや、なければないで宜しいですけれども、附加したことはないと伺つて宜しいですね。一松判事が三回目に來られたですね。そのときはどういう話をされたですか。
  910. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 私、判事さんの名前やその日にちのことがよく分らないのですか‥‥。
  911. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 三回目は一番終いでしよう。
  912. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) それは幾日頃ですか。
  913. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 九月十二日でしたか。
  914. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) ああそうですか。それは出る日か前の日ぐらいのことですか。
  915. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 出る日でしよう。
  916. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 多分、確か尾津保釈で出る、こういうようなことをおつしやつておられたように思うのですが‥‥。それで、もう一遍病況書を出して呉れとおつしやつて、そのとき又病況書を書いてお渡ししたように思うのですがね。
  917. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 出ておりますね。
  918. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そのときは私は九月五日頃出しておりますから、別に特別の病状は書きませんでした、ただ‥‥。
  919. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたがお渡しになつた中で一番簡單な病状ですね。
  920. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) それは詳しく私共一遍前に出ておりますから、詳しく書く必要はないと思つて書いてお渡ししたのです。
  921. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、そのときの一松判事の話は、保釈するのだから。
  922. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 病院までも指定したという話を‥‥。
  923. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 病院まで指定したが、特に変つたことはないか。もう一遍診断書を出して呉れと、そういうのですか。
  924. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) もう一遍診断書を出して呉れとおつしやつて、それで、そのときに書いてお渡したのです。
  925. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 病氣は変つておるとか、何とか聞いたのですか。
  926. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 特別に変つておるということはなかつたと思います。
  927. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 病氣の模樣はどうだと言つて聞いたのですか。
  928. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) いや、もうそんなに詳しくお聞きにならなかつたように思いますが‥‥。
  929. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 聞かずに、ただ、あなたに会われてどういうことを‥‥。
  930. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はつきり記憶がないのですが、私の今頭に残つているのはですね。もう病院を指定して今日出すのだということで、それで、まあ診断書を、病況書を出して呉れという、そういう記憶があるのですが‥‥。
  931. 伊藤修

    委員長伊藤修君) すると、もう保釈をすることを前提にして來ておるわけですね。それで、もう一辺診断書を出して呉れということを依頼に來た‥‥。
  932. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そういうふうに記憶しておりますが‥‥。
  933. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうふうに記憶している‥‥。
  934. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) ですから、前に出ておりますし、特に病況のことを詳しく書かずに出して‥‥。
  935. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 私の方でお伺いすることは、特にその日に今日の現在の病状を聞いて、それを参考にして保釈の決定をするというために、あなたに聞きに來たか、そうでなくして先に既に決定して、そうして、それに基いてあなたのところに、その材料の状況診察書を取りに來たというのか‥‥。
  936. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そのあとのように私は思います。
  937. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あとの方に記憶している‥‥。これは立入りますけれども、尾津の細君とか、家族の者に会つたことがありますか。
  938. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 一、二回ございます。それは病氣のことを聞かれまして、病氣のことをただ話をした程度でございます。
  939. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その前の日には会いませんですか。
  940. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 前の日‥‥その釈放のですか。家族にですか。家族には会つておりません。
  941. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 弁護人にも会いませんか。
  942. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 会いません。
  943. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一、二回家族に会われたというのですが、妻に会つたのですね。そのときはどういう話をしたのですか。
  944. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 身体の工合はどうだということを聞かれまして、病氣のあらましを傳えて、そう心配することはない、こういうふうに家族には言つておりました。
  945. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 病氣のあらましを言うたわけですね。
  946. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はあ。
  947. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは役所でですか。
  948. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 役所でございます。
  949. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お宅に訪ねて行つたことはありませんか。
  950. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) ございません。
  951. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのほかに誰かお宅でお会いになつたことはありませんか。
  952. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) ございません。
  953. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 身内の人に会いませんか、一回も‥‥。
  954. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 会いません。
  955. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勿論手土産を持つてつたということはございませんか。
  956. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) ありません。全然家へ來たことはありません。
  957. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その他の全然身内の人でない、関係外の人から、一つ何とかお願いしますということを言つて、あなたのところへ來たことはありませんか。
  958. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) ありません。絶対にありません。
  959. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたと細君とお会いになつたとき、誰かほかの人がおつたのですか。
  960. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そうでございますね。
  961. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お二人いるところで、対談ですか。
  962. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) いや、何か家の者がおつたようにも思いますが。
  963. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 医療部の人がおつたですか。
  964. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 私共のですか。いやございませんです。
  965. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたと尾津の細君と二人きりの対談ですか。
  966. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 二人きりでなくて、尾津の妻と誰か一緒に來ておつた人があつたように思います。
  967. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二回とも誰かついて來たのですか。
  968. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そうでございますね。まあ会つたのは一人ということはないように思うのでございますが‥‥。
  969. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは、あなたの方の医療部の人はおつたのですか、そこに‥‥。
  970. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) おりませんです。医療部の方へは、医務所の方へは連れて参りませんですから‥‥。
  971. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなただけ‥‥。
  972. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 面会所で会つただけですから‥‥。
  973. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 向うは二人ですね。
  974. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 二人だと思いますが、その点ははつきり記憶しませんですが。‥‥
  975. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どんな人ですか。御存じありませんか。
  976. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) それは記憶しませんです。
  977. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの長い間の刑務所の医官としての御経驗からして、被告にかように裁判所が診断病況書を数回に亘つて‥‥五回ですね、取つておるというような、いわゆる裁判所が三回も病状を調べに來るというような被告に出会つたことがありますか。
  978. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 私、被告を扱つた経驗はまだ二年くらいでございますけれども、そう二、三回くらいのもありますし、拘禁が長ければありますけれども‥‥。
  979. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 短かい期間で‥‥。
  980. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そう短かい間に沢山というのは今までないように思いますが‥‥。
  981. 伊藤修

    委員長伊藤修君) こんな短期間のうちに、こう‥‥いわゆる來ること三回、病況書を出すことが五回、病氣に関して八回、あなたの方に文書なり、面会なりしたわけですね。その他に電話もありますがね。かような例がありますか。
  982. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 二年の間にはございませんが‥‥。
  983. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 絶無ですか。
  984. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) はあ、二、三回くらいのはございますが。‥‥
  985. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうところから考えて、一体裁判所は何とか理由が付けば釈放してやる。その理由をあなたに再三尋ねて來るというふうには感じなかつたのですか。
  986. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そういうふうには考えておりませんでした。
  987. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういうふうに考えておりましたか。
  988. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) ただ特別の被告だから、裁判所で非常に注意しておられるのだというくらいに考えておりました。
  989. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 各被告に常にそうやつておると裁判所はいくら体があつても足りません。それ程親切にやつて呉れるのだと結構だが‥‥。
  990. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) ああいう被告ですから、特に裁判所でそういうふうに見ておられると思つておりました。
  991. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勿論あなたはお医者ですが、被告人に対して親切でなければならないが、特段に便宜を図つたということはございませんか。
  992. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そういうことはございません。実は少し私共は親切が足りないくらいだと思つておりました。
  993. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 別にこれらの関係で相当親切にされておりますが、被告の脅迫とかそういうことを恐れておるというような意味ではございませんね。
  994. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そういうことは絶対ありません。
  995. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 他にお聽きになることはございませんか。
  996. 小川友三

    ○小川友三君 この診断書を拜見いたしますと、この頑癬、神経症と言いますと、これは病氣の中に入らないと思つております。大体こういうような病氣は敗戰後の日本人は娑婆におつてもこのくらいは持つております。それで大したものではない、病氣の心配はないと思う。尾津君の久子夫人に。
  997. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 意見を止めて下さい。
  998. 小川友三

    ○小川友三君 対症療法というのは、どういう対症療法をやつたか、それは水藥、頓服等の分かつた範囲内においてお話しを願いたいと思います。
  999. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) その藥品を申上げますと、胃カタルに対しては重曹、ジアスターゼ、エビオス、頑癬にはテール膏、神経症には鎭靜剤として臭剥を與えております。
  1000. 小川友三

    ○小川友三君 水藥はクミチンキはどのくらいやりましたか。
  1001. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 大体一日一グラムです。
  1002. 小川友三

    ○小川友三君 それで、クミチンキは御承知の通り、彼処で一番求められる酒ですが、これを幾日ぐらい與えられましたか。
  1003. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) そう継続的には與えておりません。
  1004. 小川友三

    ○小川友三君 九八%のアルコールを含んでおりますからね。
  1005. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) 四日ぐらいやつて休んでおつたように思います。私に訴えて來た時に又やるようにしておりました。そうずつと継続しておつたように思いません。
  1006. 小川友三

    ○小川友三君 何回やつた記憶がございませんか。
  1007. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) ちよつと記憶がございませんが‥‥。
  1008. 小川友三

    ○小川友三君 それから差入が多い被告でありまして、差入が多いために、運動がなくて食べ過ぎた、これが原因であると思いますが‥‥。
  1009. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) ところが入所した時にすでにあつたのでございます。
  1010. 小川友三

    ○小川友三君 それから頑辯は攝護腺に対する夢精によるところの不潔による頑辯ではなかつたでしようか。
  1011. 野崎陽之輔

    證人野崎陽之輔君) その点ははつきり原因は確めなかつたです。
  1012. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは御苦労さんでございました、それではこれによつて休憩いたしまして、午後は一時半から開会いたします。    午後零時四十四分休憩    —————・—————    午後二時七分開会
  1013. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これより午前に引続き調査会を開きます。今日証人の方に御出頭願いましたことは、御承知でありましようが、裁判所の処置について少しく調査することがありますので、それであなた達の御関係になつたことについて御尋ねしたいと思いますので、証人として御出頭願つたわけですが、先ず宣誓書を御朗読願つて、書類に捺印して頂きたいと思います。    〔総員起立証人は次のように宣誓を行なつた。〕    宣誓書   良心從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 菊地 甚一    宣誓書   良心從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 高木 八郎    宣誓書   良心從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 石原 洽子
  1014. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では石原さんからお尋ねいたしますが、菊地さんと高木さんは次の控室でお待を願います。  では石原さん、お聽きする前に、ここで証言なさることも、やはり嘘僞りがありますと、刑法上の責任がありますから、そのおつもりでお述べ願いたいのです。  石原さんはお年はお幾つですか。
  1015. 石原洽子

    證人石原洽子君) 三十六歳でございます。
  1016. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 看護婦としての御経驗は。
  1017. 石原洽子

    證人石原洽子君) 十三年です。
  1018. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 十三年ですか。あなたの病院に尾津君が入院いたしましたのですね。
  1019. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ。
  1020. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津という人は御存じですか。
  1021. 石原洽子

    證人石原洽子君) 新聞などでお名前だけは聞いておりました。
  1022. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 相当乱暴な怖い人だということを御存じですか。
  1023. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ。新聞などではそういつた印象を受けましたが、入院なさつて、私達が接しますときはそんな感じはいたしませんでした。
  1024. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうですか。尾津はいつ入院しましたですか。
  1025. 石原洽子

    證人石原洽子君) 九月十三日頃から。
  1026. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 朝ですか。
  1027. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ、午前中でございます。
  1028. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 十時頃ですか。
  1029. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ、多分そのくらいだと思いました。
  1030. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで退院するまでですかね。
  1031. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ。
  1032. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが專門の係りで。
  1033. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ、受持ちでございました。
  1034. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 受持ちですか。あなたの見たところでは尾津君はどうでしたか。そう病人のようでしたか。
  1035. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ、普通にしていらつしやいますとそんなに惡いように思えませんでしたけれども。
  1036. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ普通あなた達のお取扱になる病人として、そう惡くは思えなかつたのですか。
  1037. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ。
  1038. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 非常に元氣だつたのですか。
  1039. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ非常にお元氣でした。
  1040. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 毎日お客は沢山來るそうですね。
  1041. 石原洽子

    證人石原洽子君) 大抵四、五人はいらつしやつたように思います。
  1042. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 多いときは十人ぐらい來るというような話。
  1043. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ、延べにしますと、そのくらいになるかも分りません。
  1044. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 延べにするとね。それはどんなようなお客さんですか。
  1045. 石原洽子

    證人石原洽子君) よく分りませんけれども、何か子分のような方がよくいらつしやつたように思います。
  1046. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 子分のような人が多いのですね。
  1047. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ。
  1048. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その人らはどんな話をしておりましたか、主に……。
  1049. 石原洽子

    證人石原洽子君) 確かお仕事の用にちらつと‥‥。檢温などに伺います時だけに伺うのですから、よくそのお話の内容を聽くことはございません。
  1050. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か尾津が、勾留されて非常に怪しからん、それから裁判所、檢事局、警察の、刑務所の、そういうような話はしておりませんでしたか。
  1051. 石原洽子

    證人石原洽子君) 全然そういうことは聞いたことございません。
  1052. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうことは聞いたことないですか。それからあなたのいない時もあるのですね。
  1053. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ、ございます。
  1054. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今度釈放されてですね、入院したんですがね、その時はそのことについて話したことはないのですか。
  1055. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ、全然尾津さんから伺つたことございません。
  1056. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いえ、あなたが横におつて、そういうことは聞いたこともないですか。
  1057. 石原洽子

    證人石原洽子君) そういう状態でお入りになつたということを伺いましたけれども、尾津さんからは何も伺いませんでした。
  1058. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 子分の人からも‥‥。
  1059. 石原洽子

    證人石原洽子君) 子分の人からも伺いません。
  1060. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう話をしておつたことは、あなたは氣が附きませんでしたか。
  1061. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ。
  1062. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 弁護士の人も來たのですか。
  1063. 石原洽子

    證人石原洽子君) さあ、いらつしやつたかも知れませんが、私共は一々どういうふうな方がいらつしやつたかということを氣を附けておりませんから分りません。
  1064. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ではあなたがですね、おいでになるうち、そういう保釈のことを聞いたことはないですか。
  1065. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ、ございません。
  1066. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君は、何か大きい声を出して非常に昂奮しておつたという話ですが。
  1067. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ、私達に対しては別に何ともございませんけれども、よくお客様がいらつしやつてお話をしておる時は、昂奮していらつしやることが多かつたように思います。
  1068. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは殆んど毎日のようですか。
  1069. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ、そうでございますね。
  1070. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは地声ですか、昂奮しておる‥‥。
  1071. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ、地声が大きいということはおありになると思いますけれども。
  1072. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それとも特段に怒つておるようなことはなかつたのですか。
  1073. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ、一度子分のような方に、大きな声で怒つていらつしやるところをドアーの外から聞いたことがございます。
  1074. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう場合の態度は怖いですか、どうですか。
  1075. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ、見ておると怖いように思います。
  1076. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今にも毆りそうなんですか。
  1077. 石原洽子

    證人石原洽子君) ただ声が大きいかも知れませんが、乱暴、手を挙げたりなさるような氣配は見えません。
  1078. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か特段に密談しておつたようなこともないですか。
  1079. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ、見たこともございません。
  1080. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの外に附添つた人は、誰が附添つてつたですか。
  1081. 石原洽子

    證人石原洽子君) 私達は附添ではなくして、受持でございまして、で、当直が三日に一度になつておりますから、私のいない日に当直の人が、代りが二人おるわけでございますから‥‥。
  1082. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはどういう人ですか。
  1083. 石原洽子

    證人石原洽子君) 看護婦でございますけれども。
  1084. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何という名前ですか。
  1085. 石原洽子

    證人石原洽子君) その当時は、時々変りますので、はつきり覚えておりませんけれども。
  1086. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その人は今でもおるのですか。
  1087. 石原洽子

    證人石原洽子君) 一人はもうおりませんです。
  1088. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一人の人は何というのですか。
  1089. 石原洽子

    證人石原洽子君) 辞めた人は覚えておりますけれども、いる人の、もう一人の代りは誰か覚えておりません。
  1090. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 辞めた人は。
  1091. 石原洽子

    證人石原洽子君) 倉持睦子というのです。
  1092. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どこですか。
  1093. 石原洽子

    證人石原洽子君) 家は茨城だと思いましたけれども、今辞めまして、帰りましておりません。
  1094. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 病院では分りますね。その住所分るのですね。
  1095. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ、分ります‥‥。その人達も別に何もそういうようなことを言つておりませんでした。
  1096. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君の附添としては誰が來ておるですか。
  1097. 石原洽子

    證人石原洽子君) 奥さんが附いていらつしやつたです。
  1098. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 奥さんだけですか。
  1099. 石原洽子

    證人石原洽子君) それからあと一人か二人、子分のような方だと思いますけれども、男の方がいらつしやいます。
  1100. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その名前は分らないですか。
  1101. 石原洽子

    證人石原洽子君) 全然分りませんでした。
  1102. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 入院中に外出したことありますですね。
  1103. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ、ございます。
  1104. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 外出ができないということは御存じないですか。
  1105. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ、こちらへ断わらないでお出になつて‥‥。
  1106. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや、大体尾津君はですね、裁判所の関係で願つておるわけでしよう。それで外出のできない、本來外出のできないということは御存じでしたか。
  1107. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ。
  1108. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると知つている‥‥。
  1109. 石原洽子

    證人石原洽子君) こちらで知らない間に、默つてお出になるんですから。
  1110. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはあとでお尋ねしますが、あなたとして、外出のできない人であるということは知つておるのですね。
  1111. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ。
  1112. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは誰から聽たのですか。
  1113. 石原洽子

    證人石原洽子君) お入りになる時に、患者さんとして、一般にどなたも外出できないことになつておりますから、そのつもりでおりました。
  1114. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや、患者としてですか、特段に裁判所から外出のできないというような話は聽いてないですか。
  1115. 石原洽子

    證人石原洽子君) させないようにというふうにも伺いましたけれども。
  1116. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや、病人として、ただ普通の患者として、默つて外出はできないでしようけれども、そうでなくして、尾津君については、その外に裁判所から特にそういう外出ができない人だと、病院におることになつておるということは聽かなかつたですか。
  1117. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ、改めてはつきり伺つてないと思います。
  1118. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう注意は受けたのでありましよう。
  1119. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ、どういう所を通つて入院なさつた方かということは伺いました。
  1120. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは主治医の人から、何か注意があつたですか。
  1121. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ、お入りになる時伺つて‥‥。
  1122. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 誰ですか。
  1123. 石原洽子

    證人石原洽子君) 高木先生から伺いました。
  1124. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 高木さんからね。無断外出したのは何回ぐらいありますか。
  1125. 石原洽子

    證人石原洽子君) はつきり覚えておりませんけれども、三回ぐらいあつたように思いますけれども。
  1126. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 前にどなたかですね、尋ねられた時にですね、九月の十五日正午頃、自動車に乘つて病院を出て、午後四時頃帰りましたと、第二回目は、九月三六日午後四時頃、自動車で病院を出て、午後八時頃帰りましたと、尚あなたがですね、外出の途中に、午後の七時三十分頃ですね、尾津の乘つた自動車を文京区切通坂、岩崎邸横で見たことがあると、そういうようなことは間違いないですか。
  1127. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ、確かに。
  1128. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その、今読み上げたですね、この外にまだ出たことありますか。
  1129. 石原洽子

    證人石原洽子君) 日が経ちましたから、はつきり覚えておりませんけれども、そのくらいしか覚えておりませんです。
  1130. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ少くともこれだけは出ておることは‥‥。
  1131. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ、三回ぐらいは確かにお出になつたと思います。
  1132. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まだその外にも出たことがあるように思いますか。
  1133. 石原洽子

    證人石原洽子君) と思いますけれども、そこはよく分りません。
  1134. 伊藤修

    委員長伊藤修君) で、あなた方は外出することをとめなかつたですか。
  1135. 石原洽子

    證人石原洽子君) 知つておればとめますけれども、知らない時、默つてお出になりますから。
  1136. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのいずれも知らない時に。
  1137. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ。
  1138. 伊藤修

    委員長伊藤修君) で帰つて來た時には、それは何と言うのですか、そういう場合にはあなたは‥‥。帰つて來ました時には、あなたはおいでになるのですか、その時はなんと言うのですか。
  1139. 石原洽子

    證人石原洽子君) なんとも申しませんです。併しお入りになりました時には黙つて外出なさつたものですから、私じやない看護婦が御主意申上げますと非常にお怒りになりましたのです。
  1140. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 注意したのですね。
  1141. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ。
  1142. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 黙つて外出したらいけないと‥‥。
  1143. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ、非常にお怒りになりましたものですから、申上げても結局駄目だと思いまして、その後は申上げませんでした。
  1144. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 怒られた時は怖かつたですか。
  1145. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ、私じやございませんから‥‥。
  1146. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 怒られたのはもう一人の人ですか。
  1147. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ。
  1148. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたも怒られたことがありますか。
  1149. 石原洽子

    證人石原洽子君) 全然ございません。
  1150. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その時注意したのは他の看護婦ですか。
  1151. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ。
  1152. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その怒られたという人は今辞められておる人ですか。
  1153. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ、先程申上げた看護婦でございます。
  1154. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その人が怒られたのですか。
  1155. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ。
  1156. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 外出して帰つて來た時には酒でも飲んで來たようなことがあつたのですか。
  1157. 石原洽子

    證人石原洽子君) なんだかいつも酒を飲んでいらつしやるように見えたものですから、よく区別は分りませんでした。
  1158. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 病院でも酒を飲んでおるのじやないのですか。
  1159. 石原洽子

    證人石原洽子君) いらつしやるかも存じませんけれども、それはよく分りません。
  1160. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが附添の看護婦として、受持としてそういうことを御注意になつたのじやないのですか。
  1161. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ、随分沢山お酒を召上つてお体にしてみておるということを廻りの人がうつしやつたこともありますから‥‥。或いはその時少しくらい召上つたのか分りませんけれども、相当召上つたらしいという感じのすることはございました。
  1162. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ、しみておると言つても二ヶ月も三ヶ月も酒がぷんぷん匂うわけではありませんが‥‥。
  1163. 石原洽子

    證人石原洽子君) 常にお酒の匂いのような感じはございました。
  1164. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると部屋にお酒を持つて來ておるのですね。
  1165. 石原洽子

    證人石原洽子君) いたと思いました。
  1166. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 外出した場合のみでなく、お客の見えた時でも隠して飲むのですね。飲むところは見たことがないが、酒氣を帶びておるというふうに感じられるのですね。
  1167. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ。
  1168. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どうですか、入院中尾津氏という人は皆さんに対する態度はどうですか。
  1169. 石原洽子

    證人石原洽子君) 私達は別になんでもございません。
  1170. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 別に呶鳴つたり、威嚇したようなことはございませんか。
  1171. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ、お熱なんか聞きましても、普通に靜かに答えていらつしやいます。
  1172. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの見たところでは、尾津という人は新聞でさつきも大変恐い人のように見えたと言いましたが、見た時の感じはどうですか。
  1173. 石原洽子

    證人石原洽子君) そんなではございませんです。ただ子分の方を使つていらつしやるような時には非常に怖いという感じは受けましたのですが‥‥。
  1174. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ大親分というような感じを持つたのですか。
  1175. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ。
  1176. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 大体威圧されるような感じですね。
  1177. 石原洽子

    證人石原洽子君) 確かに人をああして使つていらつしやる人はこんなものでなければ駄目なんじやないかと思うような、こう大人の人をがつちり押えていらつしやるところは偉いんだというような感じを受けます。
  1178. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 偉いということは人格的に偉いということでなくて、一つの親分的な、そういうふうに感じられたのですね。
  1179. 石原洽子

    證人石原洽子君) はあ。
  1180. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 他にお聽きするところはありませんか。
  1181. 小川友三

    ○小川友三君 尾津さんが初め病人のようでなかつたということは、最後まで、退院するまで病人のようじやなかつたんですか。
  1182. 石原洽子

    證人石原洽子君) 尤もどの患者さんでも、どこが惡いか分らないというように元氣で入院していらつしやる方も随分多いのでありますから、そういうような感じでございます。
  1183. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは‥‥。    〔証人高木八郎君着席〕
  1184. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 宣誓をなされました以上は、これから証言なさることに間違いがありますと、僞証罪の制裁がありますから御注意申上げて置きます。  お歳はお幾つですか。
  1185. 高木八郎

    證人高木八郎君) 三十八歳です。
  1186. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 医者としての御経驗は‥‥。
  1187. 高木八郎

    證人高木八郎君) 学校出てからずつと今までやつて参りましたけれども、その間戰爭へ行つておりましたから、作戰の関係上で本当に医者として患者を見ない期間も少しはございました。
  1188. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 学校はどちらをお出になつたんですか。
  1189. 高木八郎

    證人高木八郎君) 東京帝大です。
  1190. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何年にお出になつたんです。
  1191. 高木八郎

    證人高木八郎君) 昭和十三年に出ました。
  1192. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 十三年に御卒業になつた‥‥。それから戰地に行つてつた以外は臨床しておりましたのですね。
  1193. 高木八郎

    證人高木八郎君) ずつと昭和二十一年に復員するまでは大体軍隊におりました、昭和十三年の十月から昭和二十一年の三月復員するまでは軍隊に行つておりました。
  1194. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 軍隊では医療関係でしたか。
  1195. 高木八郎

    證人高木八郎君) そうです。
  1196. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 軍隊の方でも‥‥。
  1197. 高木八郎

    證人高木八郎君) はあ。
  1198. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そちらでも御経驗があるわけですね。
  1199. 高木八郎

    證人高木八郎君) はあ。
  1200. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御專門は‥‥、
  1201. 高木八郎

    證人高木八郎君) 内科です。
  1202. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたのところへ御厄介になつた尾津君は、以前は御存じでしたか。
  1203. 高木八郎

    證人高木八郎君) 全然知つておりません。
  1204. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御存じない‥‥。
  1205. 高木八郎

    證人高木八郎君) はあ。
  1206. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君の人柄は新聞やなんかでは御存じですね。
  1207. 高木八郎

    證人高木八郎君) はあ、ちよちよいは読んでおりました。
  1208. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 昨年の九月の十二日に尾津を入院さしたいからと言つて、一松判事から相談を持ちかけられたことがありますですね。御存じですね。
  1209. 高木八郎

    證人高木八郎君) そのことは今沖中内科の講師をしておる中尾という方が、その入院することに主として当りまして、私は入院してから初めて知つたようなわけです。というのは、当時私は一等の病室受持つておりましたから、その病室にたまたま尾津氏が入つて参りました。
  1210. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、その入院するに至るその事情は聽いていないですか。
  1211. 高木八郎

    證人高木八郎君) 少しは聽いておりました。中尾さんから‥‥。
  1212. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが、中尾さんからお聽きになつた話はどういう内容ですか。
  1213. 高木八郎

    證人高木八郎君) 小管の刑務所らか出て來た尾津という方がいろいろ詳細に檢査のために入つて來たから、それで君の部屋に入れるからよく詳細に調べるようにと、そういうことでございました。
  1214. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その通の話は尾津の釈放は大体決つておるような様子で、だから尾津をこちらへ入れるから預つて呉れと、而して診療をして呉れと、こういう意味ではなかつたのでありますか。あなたの今仰つしやる刑務所におつた人だということだけでなくして、刑務所を仮に釈放して寄越す人間で、身体が惡いのでこちらに預つて診療して呉れと、要するの仮釈放の人だと、そういう意味じやないのでありますか。
  1215. 高木八郎

    證人高木八郎君) まあ大体そういう意味です。
  1216. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 要すれば、仮釈放をして、あなたの方の病院に住居を制限せられており人だということは御存じですね。
  1217. 高木八郎

    證人高木八郎君) 住居を制限されておるということは……。
  1218. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そこにおるということを制限を受けて入院しておることは御存じですか。
  1219. 高木八郎

    證人高木八郎君) 私としては普通の患者が入つて來るように入つて來たものと‥‥。そういう立場で診察すればいいと、そういうようなふうに言われておりました。
  1220. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 診察の態度はそうでしようが、診察するに至るまでの事情としては、そういう事情の人だということは分つておりますか。
  1221. 高木八郎

    證人高木八郎君) 簡單に仮釈放になつて、一松判事と院長の依頼を受けて、沖中内科に入るようになつたから、当然君が受け持つてつて呉れと、それだけの話でした。入院するの至るまでの経路については、私は殆んど関與しておりません。
  1222. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それに当つた人はどなたです。
  1223. 高木八郎

    證人高木八郎君) 中尾さんでした。
  1224. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 中尾何と仰つしやるのですか。
  1225. 高木八郎

    證人高木八郎君) 中尾喜久、多分そうだつたと思います。中尾喜久と申します。
  1226. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 「きく一」ですか。
  1227. 高木八郎

    證人高木八郎君) 中尾喜久、喜ぶという字と久しいという字です。
  1228. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは事務の人ですか。
  1229. 高木八郎

    證人高木八郎君) いえ、当時そのときは医局長が休みであつたものですから、その代りに中尾さんが医局長に代理をしたわけであります。
  1230. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お医者さんですね。現在もお出でになりますか、沖中内科に‥‥。
  1231. 高木八郎

    證人高木八郎君) 沖中内科におります。
  1232. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、今のあなたのお話を伺つておると、尾津が來る前の日の話ですね。それは‥‥。
  1233. 高木八郎

    證人高木八郎君) そうです。
  1234. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 入院してからの話じやないのでありますね。
  1235. 高木八郎

    證人高木八郎君) 入院する前の日にそういう話がありました。
  1236. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 前にあつた。あなたの方では午後六時からの入院は受付けないのでありますか。そういう前から話があり場合に‥‥。
  1237. 高木八郎

    證人高木八郎君) 急患は受付けます。
  1238. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 急患とは。
  1239. 高木八郎

    證人高木八郎君) 急患というのは至急の患者でございます。
  1240. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だけれども今の場合は前から予約しておるわけですね、今日來るからという予約をしてあるわけでありますね、そういう場合に午後六時過ぎると受付けないのでありますか。
  1241. 高木八郎

    證人高木八郎君) その辺の経緯は私存じません。
  1242. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう習わしがあるのでござりますか。そういう規則かなんか。‥‥。御存じないのでありますか。
  1243. 高木八郎

    證人高木八郎君) 知りません。
  1244. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう急患でない人で午後六時から入つて來るような人がありますか。
  1245. 高木八郎

    證人高木八郎君) 大低は急患でないような場合は、約束した時間に來ることが多うございます。
  1246. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その日に約束があるのですね。十二日という日は約束があるのでありますね。
  1247. 高木八郎

    證人高木八郎君) その辺は私知りません。
  1248. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや、例えば約束のあつた日、今日來るから、夕方來るから、夕方になることは間違いないのでありますから、夕方來るから入るという場合に六時という門限があるのでありますか。
  1249. 高木八郎

    證人高木八郎君) そういう方面は主として看護婦がやつておりますから‥‥。
  1250. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 看護婦ですか。
  1251. 高木八郎

    證人高木八郎君) はあ。医者は入院してから、看護婦から知らせがありまして、そうしてから診るような習慣になつております。
  1252. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津はその翌日の十三日の朝十時頃來たそうですね。
  1253. 高木八郎

    證人高木八郎君) ええ、参りました。
  1254. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その時に附添つて來た者は、誰が附添つて來たか御存じないですか。
  1255. 高木八郎

    證人高木八郎君) 何か二、三人附いておつたんじやないかと思いますけれども‥‥。
  1256. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 入院されて、どうなさいましたです。
  1257. 高木八郎

    證人高木八郎君) 入院してから直ぐいつものように診察を始めました。その時入つてから暫く経つて佐々教授が直接診ようというようなお話でして、直ぐ中尾さんと一緒に尾津氏を佐々教授の前に連れて参りまして、それで診察を受けました。
  1258. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたも御覧になつたのですね。
  1259. 高木八郎

    證人高木八郎君) ええ、私もその時佐々教授の脇におりました。
  1260. 伊藤修

    委員長伊藤修君) なんだか、佐々教授のなんでは、あなたの方がよく御存じだというのであなたの來て頂いたわけですがね。
  1261. 高木八郎

    證人高木八郎君) ええ、それは受持としてやることはやりますけれども、やはり佐々教授も回診をしますし、又直接診ることも診ました。
  1262. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 診ましたでしようが、あなたも勿論御覧になつたことも‥‥。
  1263. 高木八郎

    證人高木八郎君) 診ました。
  1264. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その時の状態はどうでしたか。
  1265. 高木八郎

    證人高木八郎君) 佐々教授と話した時の樣子でございますか。
  1266. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 最初あなたが診察した時の状況は‥‥。
  1267. 高木八郎

    證人高木八郎君) 大体前の診断書に病歴経過を書いたような通りでございますけれども‥‥。
  1268. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうでございますか、その時に非常に昂奮しておるようなことはなかつたのですか。
  1269. 高木八郎

    證人高木八郎君) 佐々教授と会いました時は、大変昂奮しておつたように思います。
  1270. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはどういうことで昂奮したおつたのですか。
  1271. 高木八郎

    證人高木八郎君) 最初挨拶しまして、それから話を始めてから非常に能弁になつて、又自分の話に引込まれて段々昂奮して行つたような工合です。
  1272. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 話の経過の過程においてですね。
  1273. 高木八郎

    證人高木八郎君) ええ。
  1274. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは拘禁の話か何かですか。
  1275. 高木八郎

    證人高木八郎君) それは佐々教授が話をしないのに、尾津氏がいろいろ自分で話して行つたように思います。
  1276. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 刑務所に拘禁されたことについて‥‥。
  1277. 高木八郎

    證人高木八郎君) いえ、今の敗戰後の日本を自分を救わなければならないとか、何かそんなようなふうだつたと思います。
  1278. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 裁判のことじやなくて‥‥。
  1279. 高木八郎

    證人高木八郎君) ええ。
  1280. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 日本の現状を憂えての話ですか。
  1281. 高木八郎

    證人高木八郎君) そうでございます。
  1282. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう方面の話のためにみずから自分の喋べつておることに昂奮しておつた、こういうふうに仰つしやるのでございますか。
  1283. 高木八郎

    證人高木八郎君) そうでございます。
  1284. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津は、勾留は不当だと憤慨し、拘禁中の食欲減退とか不眠とか、そういうことは訴えなかつたですか。
  1285. 高木八郎

    證人高木八郎君) そういうことで訴えなかつたように思いますけれども、まあ私の今の記憶では訴えなかつたように思います。
  1286. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本人の榮養状態はどうだつたですか。
  1287. 高木八郎

    證人高木八郎君) 榮養状態は良好でした。
  1288. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 良好でしたか。
  1289. 高木八郎

    證人高木八郎君) ええ。
  1290. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その時既往症とかいうものですね。そういうものをお尋ねになるわけですね。
  1291. 高木八郎

    證人高木八郎君) そのときは現症を診察することが主でございます。
  1292. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 既往症のことは聽かなかつたですか。
  1293. 高木八郎

    證人高木八郎君) 聽きませんでした。
  1294. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その後お聽きになつたですか。
  1295. 高木八郎

    證人高木八郎君) 既往症は私が聽きました。
  1296. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういうことを言つてつたですか。
  1297. 高木八郎

    證人高木八郎君) それも病歴経過に書いてある通りでございます。
  1298. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 頭痛とか、胃病とか、眩暈とか顏貌蒼白浮腔状だとか、或いは顏面右側の痙攣、低血圧、吐氣、心臓苦悶等、そういうようなことを言うたですか。
  1299. 高木八郎

    證人高木八郎君) 私もその頃の病歴経過報告書を持つておるのですが、私の聽いた現病歴というのは、去年の二月以来箸を落すことがあつたとか、それから去年の十二月酒を飲んだ際突然倒れて三十分ぐらい意識不明になつたとか、こういうふうに、その後ずつとこの病歴経過報告書に書いてある通りでございます。
  1300. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、ここに書いてある通りですね。それはこういうふうな文面だつたですか。    〔委員長伊藤修君が証人高木八郎君に尾津喜之助病症経過報告書の三十八丁以下を示す〕
  1301. 高木八郎

    證人高木八郎君) ええ、そうでございます。
  1302. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうするとこの既往症とか現症というものは、本人が言うておる通りとお認めになつたですか、どうですか。
  1303. 高木八郎

    證人高木八郎君) 言うた通りに書きました。
  1304. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 診断の結果はどうでした。
  1305. 高木八郎

    證人高木八郎君) 診断の結果は、現在症に書いてある通りでございます。
  1306. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 脳溢血の病症はなかつたですか。
  1307. 高木八郎

    證人高木八郎君) それはなかつたと思います。
  1308. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 胃潰瘍の現症はどうですか。
  1309. 高木八郎

    證人高木八郎君) 胃潰瘍はありませんでした。慢性胃炎の症候は認めましたけれど‥‥。
  1310. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一般状態の不良とは、どんなことを言つておるのですか。
  1311. 高木八郎

    證人高木八郎君) 一般状態の何ですか。
  1312. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 不良というのは‥‥。
  1313. 高木八郎

    證人高木八郎君) 一般状態の不良ですか。
  1314. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ええ。
  1315. 高木八郎

    證人高木八郎君) ちよつと漠然として分りませんけれども、質問の意味が‥‥。
  1316. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの中にも拘禁性神経症というのがありますね。それはどういうことですか。
  1317. 高木八郎

    證人高木八郎君) それはこの尾津の場合でございますか。尾津の場合の拘禁性神経症というのは、どういう意味かとお聞きになるわけですか。
  1318. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうです。
  1319. 高木八郎

    證人高木八郎君) これはまあ、私は尾津氏が特に見たところ怒りつぽかつたり、それから感情が非常に轉換し易かつたり、非常に昂奮性だつたり、そういう程度が人一倍、普通程度以上だつたように思いまして、まあ今までの既往歴などや何かを綜合して、こういうことも考えられるのじやないかと思いまして、ここに診定し得ると書きましたけれども、併し確定的なことば言い得ない状態だつたと思います。それでいつでも大学病院に入院した患者は、その專門々々の方に診て貰いますから、私としてもその内に又神経科の方のどなたかに診て貰おうかと思つておりました。併しまあこういう拘禁性神経症と診定することもできる、そういう可能性があると思いまして、ここにこういうように書いて置きましたが、前に言いましたように、確定的な判定を下し得ないというようなことで、医学的常識から言いましても、四日かそのくらいでは非常にむずかしい問題だと思つております。
  1320. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう拘禁性神経症と推定せられるというのですか。確定的ではないが‥‥。
  1321. 高木八郎

    證人高木八郎君) 確定的ではないけれども、そういうふうな可能性もあるのじやないかと思われるのです。
  1322. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 医学上拘禁性神経症というのはあるのですか。
  1323. 高木八郎

    證人高木八郎君) あります。
  1324. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはどういう文献がありますか。
  1325. 高木八郎

    證人高木八郎君) 文献ですか。
  1326. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その根拠がどこにありますか。そういう病名のあれがあるのですか。
  1327. 高木八郎

    證人高木八郎君) ええ。まあ神経科の方で精神病学の方で、そういうことは学んでおります。
  1328. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういうことを言うのですか。
  1329. 高木八郎

    證人高木八郎君) それは拘禁されたような場合に、それが原因となつて、いろいろ精神的な異常を來すような場合があります。
  1330. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは拘禁性精神病じやないのですか。
  1331. 高木八郎

    證人高木八郎君) そうです。精神病とは言いますけれども、それはいろいろ系統があると思います。
  1332. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今あなたの御説のような御説明は拘禁性精神病の方を指すのじやないのですか。神経症というのを聽いているのですよ。
  1333. 高木八郎

    證人高木八郎君) ええよく分ります。まあ軽いという程度でございますね。それから精神に変調を來した場合の、軽い場合の神経衰弱樣のものが來得るのじやないかと私は考えておりますけれども‥‥。
  1334. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると精神病に至らない極く軽いものですか。
  1335. 高木八郎

    證人高木八郎君) はあ。
  1336. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると普通の神経衰弱の程度ですか。
  1337. 高木八郎

    證人高木八郎君) まあそうです
  1338. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう病氣が非常に惡化するというふうに考えられますか、例えば拘禁を継続することによつて‥‥。
  1339. 高木八郎

    證人高木八郎君) 考えられます。
  1340. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはどういうふうな場合にですか。
  1341. 高木八郎

    證人高木八郎君) 私も神経科の方は專門でないから余り詳しいことは分りませんけれど‥‥。
  1342. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 要するにあなたの診断書に書かれているこの文字は、結局あなたがそういうように想像された、一つ想像に過ぎないんですね。断定的にそういう病氣があるというように断定されるのですか。
  1343. 高木八郎

    證人高木八郎君) 診断のことは佐々教授が責任を持つていつでもやりますから‥‥。
  1344. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ええ、責任者は佐々教授らしいですけれども、主として当られたのはあなただから、あなたに聽いて呉れというお答えですからおいで願つたのですが、それがあなた達の病室においてそういうことが断定されるのか、そういう想像だけだつたのですかということをお聽きするわけです。
  1345. 高木八郎

    證人高木八郎君) そういう可能性があると思いました。併し断定的なことは言い得ない。ということは本当に断定的なことを言おうと思えば、拘禁中のことや、とにかくその患者の全経過を見なければ言えないことだと思います。
  1346. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはあなたが本人の訴えを聽いて、そういうことを想定するに至つたのですか。それともあなたが外診の結果そういうことを想定するに至つたのですか。
  1347. 高木八郎

    證人高木八郎君) まあ非常に当時患者としては私が見た当時は普通以上に昂奮性であつたり、それから感情が轉換し易すかつたり、それから怒りつぽかつたり、それから少しややこう誇大的なところもあるように見受けられまして、まあそういつたようなところから、而も今まで拘禁されておつたというような状態からして、こういう拘禁性神経症というような可能性があると考えたからでございます。
  1348. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは外診の結果そういうように考えたのですか。
  1349. 高木八郎

    證人高木八郎君) そういうように患者を観察した結果考えたのです。
  1350. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 観察ね、そうすると、そういう拘禁神経症が見られるというならば、あなたが見られた当時の状態において、この人の拘禁を継続することは非常に危險だと思われたのですか。生命に危險を生ずるように思われたのですか。
  1351. 高木八郎

    證人高木八郎君) まあそういう可能性もあると思います。
  1352. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういう根拠で可能だと考えられるのですか。
  1353. 高木八郎

    證人高木八郎君) そういうことが予想されるんじやないかとも考えられます。
  1354. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、それほど重いのですか。
  1355. 高木八郎

    證人高木八郎君) それは將來のことですから、想像に過ぎませんので……。
  1356. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 将來これからどのくらい拘禁されたら、そういう危險を生ずるか、十年七二十年も拘禁したら出るとか、或は一月でも二月でも拘禁を継続すれば、そういう状態に入るというんですか、その將來ということは、どのくらいをあなたは想定して言われるんですか。
  1357. 高木八郎

    證人高木八郎君) その点は、私余り経驗者じやないから分りません。そういう可能性があるということは……。そういうことが予想されるということは考えられます。
  1358. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 予想されるというんだから、それは予想されることが、どのくらいの継続によつて、それが実現するかという可能の状態がいつ來るのかということは、どういう予想があるのかと尋ねるのです。もう一日も置くわけに行かないというほどのものであるか、一月や二月は差支ないものであるか、一年や二年は大丈夫のものであるか、医者としてどういうふうにお考えになつたのですか。
  1359. 高木八郎

    證人高木八郎君) それはやはり病状によると思います。
  1360. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや本件の、尾津の場合に、あなたが診断されまして……。その結果をお聽きしているのです。
  1361. 高木八郎

    證人高木八郎君) ちよつと私にはそこまで制定できません。
  1362. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それではまあ平たく言つて尾津病氣というものは、そうひどくなかつたのではないんですか。
  1363. 高木八郎

    證人高木八郎君) まあ拘禁神経症としては軽度な方だつたと思います。
  1364. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その他の健康状態は、その他の病状も、いわゆる大病人とか、病人という程のものではなかつたんじやないですか。
  1365. 高木八郎

    證人高木八郎君) いやそれは慢性氣管枝炎とか、そういう程度においては、相当やはり眞実と思われる症状は備えておつたと思います。内科的疾患としては……。
  1366. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それがその当時の健康状態に著しく現われておつたのか、どうかということですね。
  1367. 高木八郎

    證人高木八郎君) まあここにつけた慢性氣管枝炎という症状は相当はつきりしておりました、というのは、微熱もありましたし、それから後……。
  1368. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君は非常な元氣であつて、酒飲んだり、話もしておつたり、子分と相談もしておつたり、外出もしておるようですが、いわゆる病院に入院しなくちやならん程のものじやないんじやないかとお聽きするんですが……。
  1369. 高木八郎

    證人高木八郎君) ええ、まうそういう意味では、非常に軽い方だつたと思います。内科的の疾患としては……。
  1370. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 入院しなくとも治るような程度のものですか。
  1371. 高木八郎

    證人高木八郎君) いやそれは更に檢査をして見なければ分りませんものでありますけれども……。
  1372. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが医者として、尾津君の病氣というものは、そう重いものじやないということが考えられるんですね。
  1373. 高木八郎

    證人高木八郎君) そうです。
  1374. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ贅沢に病院に入つておるというふうじやないんですか。
  1375. 高木八郎

    證人高木八郎君) いえ、まあとにかく症状は備えておつたと思います。
  1376. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは執行停止の正本を見られたことはありますか。
  1377. 高木八郎

    證人高木八郎君) ありません。
  1378. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ないですか。
  1379. 高木八郎

    證人高木八郎君) ええ。
  1380. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 被告が執行停止になつて住居の制限を受けて、病院に住居することを制限されておるのですが、それについて病人の看守や何かは裁判所の方でやるということを聞いていなかつたですか。
  1381. 高木八郎

    證人高木八郎君) 看守は付いておるということは聞いておりました。
  1382. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは裁判所の方でやる……。
  1383. 高木八郎

    證人高木八郎君) それはどこか分りませんけれど……。
  1384. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 病院の方では責任は負わないというのですか、負うのですか。
  1385. 高木八郎

    證人高木八郎君) 負いません。佐々博士が、最初尾津氏が入つて來た時言いましたように、診療に関して必要な場合はあなたに外出を禁止する場合もあるし、事診療に関しては少くとも医者の言うことを聞いて貰いたいということをはつきり言いました。それ以外のことに関しては何も言いませんでした。
  1386. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津が外出したことは御存じですね。
  1387. 高木八郎

    證人高木八郎君) ええ、知つております。前の日……私に一度断つて出たことはあります。
  1388. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは許可されたのですか。
  1389. 高木八郎

    證人高木八郎君) 許可しました。
  1390. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういう意味で……。
  1391. 高木八郎

    證人高木八郎君) その日は別に、他に診療するようなこともありませんでしたし、まあ今の状況では外出しても差支ないと思いましたから……。
  1392. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 外出してはならんということは裁判所から特に注意していないのですか。
  1393. 高木八郎

    證人高木八郎君) それは聞いておりませんでした。
  1394. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 自由に外出さしても良いと思つていたのですか。
  1395. 高木八郎

    證人高木八郎君) 私は診療のことに差支ない程度において、良いと思つておりました。
  1396. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 別に特段に外出してはならんとか、外出する場合は報告しろとかというようなことは注意を受けていなかつたのですね。
  1397. 高木八郎

    證人高木八郎君) ええ。
  1398. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 病院でも外出先でも酒を飲んでおつたようなことがあるのですか、あなたが主治医としてそういうようなことは見受けられましたですか。
  1399. 高木八郎

    證人高木八郎君) 病院で飲んでおるのは見受けたことがありました。
  1400. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 病院で飲んでおつたことは見たことありますか。
  1401. 高木八郎

    證人高木八郎君) あります。
  1402. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 外出先から飲んで帰つたようなことは‥‥。
  1403. 高木八郎

    證人高木八郎君) それは見ませんでした。
  1404. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どのくらい酒が行けると言つているのですか。
  1405. 高木八郎

    證人高木八郎君) 量は聞いておりません。
  1406. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 病院で飲んだのはどのくらい飲んだふうですか。
  1407. 高木八郎

    證人高木八郎君) その量は知りません。併し‥‥。
  1408. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 相当飲んでいるようですか。
  1409. 高木八郎

    證人高木八郎君) ただ私は、そこに酒瓶があつたり、肴のようなものがあつたのを見ただけであります。
  1410. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは子分の人やなんかと飲んでおつたのですか。
  1411. 高木八郎

    證人高木八郎君) 飲んだ直接の現場は見ませんでした。
  1412. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 酒や器の状態で、沢山の人が飲んだようなふうですか。一人が、自分が飲んだというふうですか。
  1413. 高木八郎

    證人高木八郎君) はつきり記憶しておりません。
  1414. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 要するに尾津は病人らしくない病人じやないですか。病院で酒を飲んだり、外出を自由勝手にしたり、特段これという程の既往症のあるということはあるか存じませんけれども、現在としては寢ていなくちやならんという程の病人でもないのじやないですか。
  1415. 高木八郎

    證人高木八郎君) それはその人の考えによると思うのです。内科的に疾患がやはりあれば、その人がやはり寢ているのが当り前じやないかと思います。
  1416. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君は寢ておつたですが。
  1417. 高木八郎

    證人高木八郎君) 寢ておつたこともあります。
  1418. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 酒を飲んだり出歩いたりなどして、寢ている方が少いようですね。
  1419. 高木八郎

    證人高木八郎君) 私が診察に行つと時は寢ておりました。
  1420. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが尾津君を見て、いわゆる親分らしい人だ、非常に威圧を感ずるようなことはなかつたですか。
  1421. 高木八郎

    證人高木八郎君) そういう感じはなかつたです。
  1422. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 普通平凡の人のように‥‥。
  1423. 高木八郎

    證人高木八郎君) そういう印象を受けました。
  1424. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 他にお聽きになる方がありますか。    〔小川友三君発言の許可を求む〕
  1425. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういう点ですか。
  1426. 小川友三

    ○小川友三君 非常に氣分が変る、怒りつぽいという点でプラウニング法で反應を見ておりますが、ワツセルマン反應を見たでしようか。
  1427. 高木八郎

    證人高木八郎君) ワツセルマン反應を見ました。
  1428. 小川友三

    ○小川友三君 書いてありませんか。
  1429. 高木八郎

    證人高木八郎君) 書いております。
  1430. 小川友三

    ○小川友三君 それは陰性ですか陽性ですか。
  1431. 高木八郎

    證人高木八郎君) 陰性でした。
  1432. 小川友三

    ○小川友三君 それからここに出ておりますが、原因を除去せざる限り病勢進展することあるを予想すということでありますが、原因を除去せざる限りと申しますか、これは、ここに書いてある三つの病状においては、対症療法で十二分に治つた病例がありますが、この尾津君の場合は対症療法では治らないものと断定したのでしようか。経過報告書に、高木先生の捺印の押してある写を持つておりますが、原因を‥‥尾津君の場合は、これを釈放を長くしてしまう、長期に釈放するという場合は想像されますけれども、そうしなくちやならないと医者は断定したのでしようか。そうしなければ病勢が進展することを予想するという意味でこれを‥‥。
  1433. 高木八郎

    證人高木八郎君) それは飽くまで予想だけでございます。
  1434. 小川友三

    ○小川友三君 対症療法はどういうことをやつておられましたか。
  1435. 高木八郎

    證人高木八郎君) まだ診断が確定しておりませんから、特に療法としてはやつておりませんでした。
  1436. 小川友三

    ○小川友三君 投藥はしなかつたのですか。全然‥‥。
  1437. 高木八郎

    證人高木八郎君) ええ。
  1438. 小川友三

    ○小川友三君 全然投藥しなかつたのですか。
  1439. 高木八郎

    證人高木八郎君) そうです。
  1440. 小川友三

    ○小川友三君 注射も‥‥
  1441. 高木八郎

    證人高木八郎君) 佐々内科の‥‥。
  1442. 小川友三

    ○小川友三君 病人は藥も受けないで六日間、藥を飲まないで外出したり酒を飲んだりしておつたわけですね。
  1443. 高木八郎

    證人高木八郎君) 診断を確定してから、すつかり檢査が終つてから投藥するつもりでおりました。
  1444. 小川友三

    ○小川友三君 投藥は一回もしていないのですか。ビタミンの注射はしていないのですか。
  1445. 高木八郎

    證人高木八郎君) 私の記憶ではしなかつたと思います。
  1446. 小川友三

    ○小川友三君 そうですか、まだ病氣の判定ができていなかつというわけですね。
  1447. 高木八郎

    證人高木八郎君) そうです。
  1448. 小川友三

    ○小川友三君 病人の形体が全部具備していなかつたということは結論的に言えるわけですね。
  1449. 高木八郎

    證人高木八郎君) 診断が確定しなかつた。詳細に檢査が終了していなかつた
  1450. 小川友三

    ○小川友三君 病人の資格を完備していなかつたわけですね。半病人というわけですね。つまり直ぐ投藥しなくちや間に合わないという病人じやなかつた‥‥。
  1451. 高木八郎

    證人高木八郎君) そうです。
  1452. 小川友三

    ○小川友三君 六百間に一度も投藥しないというのですから、これはというわけですね。
  1453. 伊藤修

    委員長伊藤修君) もう一つお尋ねしますが、あなたの入院料とか謝礼関係はどうなつておりますか。
  1454. 高木八郎

    證人高木八郎君) それは皆看護婦がやつております。
  1455. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 差に特段にあなたに謝礼したようなことはないですか。
  1456. 高木八郎

    證人高木八郎君) ありませんでした。
  1457. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐々博士にもやはりしたようなことはないですか。お世話になりつぱなしですか。
  1458. 高木八郎

    證人高木八郎君) 佐々教授のことは知りません。
  1459. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの時は‥‥。
  1460. 高木八郎

    證人高木八郎君) 私の時は医局に子分の方が「ぶどう」の一盆くらい持つて來まして、お世話になるからと言うて医局に言つて寄越しまして、そうして中尾さんに私がそのことを連絡しまして、中尾さんが室長でしたかと思いますが、そういつて受取つてその時皆で喰べました。それだけでございます。後は何もありません。
  1461. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 全銭なんかはどうですか。
  1462. 高木八郎

    證人高木八郎君) 金銭なんかは絶対にありません。入院料のことは会計の方でやつておるわけですが、看護婦が‥‥。
  1463. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それ以外に特段にあなた個人に謝礼したということはありませんか。
  1464. 高木八郎

    證人高木八郎君) ありません。
  1465. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 看護婦のことはどうですか。
  1466. 高木八郎

    證人高木八郎君) 知りません。
  1467. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは‥‥。    〔証人石原洽子君着席〕
  1468. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたにもう一点お伺いしたいのですが、あのあなたの病院は夜六時から入院させないのですか。
  1469. 石原洽子

    證人石原洽子君) いいえ、何時でもよいと思います。
  1470. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何時でもよろしいのですか。
  1471. 石原洽子

    證人石原洽子君) はい。
  1472. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 殊にこの尾津君の場合は十二日に來るということになつてつたのですか。
  1473. 石原洽子

    證人石原洽子君) さあそれは私存じません。
  1474. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 前に約束があれば尚更よいわけですね。
  1475. 石原洽子

    證人石原洽子君) はい。
  1476. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 六時過ぎても入院できるわけですか。
  1477. 石原洽子

    證人石原洽子君) 何時でも当直しておりまして、入院いたせます。
  1478. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何時でもよいのですか。
  1479. 伊藤修

    證人伊藤修君) はい。
  1480. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 間違いないですね。
  1481. 石原洽子

    證人石原洽子君) はい。
  1482. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 会計のことは御存知ですか。
  1483. 石原洽子

    證人石原洽子君) 会計の方は看護室で取扱いますから‥‥。
  1484. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君の入院料は尾津君の方から拂つておりますか。
  1485. 石原洽子

    證人石原洽子君) 特別に覚えておりませんから、普通お会計は済んでおると思いますけれども。
  1486. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 特にあなた達に謝礼‥‥大体そういう習慣になつておりますが、謝礼ということはございませんか。
  1487. 石原洽子

    證人石原洽子君) 頂いた覚えはございません。
  1488. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お世話になりつぱなしですか。
  1489. 石原洽子

    證人石原洽子君) お帰りになる時は慌だしくお連れになりましたから、普通ちやんと病歴なんかも整理もできましてお帰りになるのですが、そういうことなしに直ぐに連れていらつしやいましたから、いらつしやる時は私はいないのでございます。
  1490. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 結局はお世話になりつぱなしで何のお礼もせずに行つてしまつたわけですね。
  1491. 石原洽子

    證人石原洽子君) はい。
  1492. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君は入院中に藥を飲んでいたんですか。
  1493. 石原洽子

    證人石原洽子君) 召上つていたと思いますけれども、正しくは召上らない時がございました。
  1494. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 飲んだ時はございませんか。
  1495. 石原洽子

    證人石原洽子君) 時々拔かしたりなさる。三度々々正しく召上る時はなかつたようです。
  1496. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういう藥をやる‥‥。
  1497. 石原洽子

    證人石原洽子君) どんな藥でしたか、その処方を覚えておりませんが、やはり胃の藥や何かだと思います。お藥のことは先生にお聞きにならないと‥‥。
  1498. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 高木さんは投藥した覚えはないと言つておりますがね。
  1499. 石原洽子

    證人石原洽子君) 時が経つておりますから、私も記憶しませんけれども、入院なさつてもいろいろ調べる間お藥を上げないということがございます。
  1500. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 高木さんは投藥しないと言つておりますがね。
  1501. 石原洽子

    證人石原洽子君) そうかも知れません。時が経つておりますから、お藥を何日から上げたかそういうことは覚えておりません。
  1502. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今高木さんにお伺いするとね、住居は制限されておるということは知らないと言うておるのですがね。
  1503. 石原洽子

    證人石原洽子君) ただ外出をさせないようにというお話だけ伺いました。
  1504. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それではまあ‥‥。    〔証人菊地甚一君着席〕
  1505. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御承知でしようが、宣誓をなさつた以上は刑罰の責任がありますからどうぞ御注意なさつて下さい。お年はいくつです。
  1506. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) 六十一歳。
  1507. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 医者としての御経験は。
  1508. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) 大正三年に医師の資格を得まして、その後帝國大学の精神病学教室に研究生として入つて、大正八年同研究室を松澤病院と分離しましたので、松澤病院には行きませんで、その後私は自分の学問の專攻が犯罪に関する精神病学をすることになりましたので、教室とは関係なく自分の独自の研究をしておりました。大正十四、五年頃から裁判所の鑑定人の嘱託をやりまして以來今日に及んでおるのであります。
  1509. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると御專門は‥‥。
  1510. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) 精神医学です。
  1511. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君は以前御存じですか。
  1512. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) へ。
  1513. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津喜之助を以前から御存じですか。
  1514. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) 存じておりません。
  1515. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君の人柄はよく存じておりますか。
  1516. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) 存じませんです。
  1517. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが尾津君を知つたのは‥‥。
  1518. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) 診察をして初めて知りました。
  1519. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その時まで知りませんか。
  1520. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) 知りませんでした。
  1521. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 新聞や何かに出ている程度のことは‥‥。
  1522. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) その程度は承知しておりました。
  1523. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが裁判所に出されたのですがね、二十二年の十月八日附ですね。これはあなたがこの通りのものをお出しになつたのですかね。それは写ですから、内容をお尋ねしておるわけですが。
  1524. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) はい。大体そうです。
  1525. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それを御覧になつても宜しいですが‥‥。
  1526. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) 私写を持つております。
  1527. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それによりあなたの鑑定された御説明を願えませんでしようか。
  1528. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) はい、鑑定じやございませんが‥‥。
  1529. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 診察ですかね。
  1530. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) はい、最高裁判所の刑事課長岸盛一氏から依頼がありまして、東京拘置所で二回その被告人に会いました。診察をいたした結果がこの診断書であります。それで裁判所の知りたいところは、本人に拘禁性の精神異状があるかどうかということを先ず知りたいということでありましたので、その点を説明の中に加えて置きましたが、多少拘禁の影響を及ぼしておることはありますが、精神の異状というものはないというように説明したと記憶しております。それからその次には、身体の方が拘禁に耐えられるかどうかということを知りたいということでありましたので、その説明は、これは私の專門じやないのですけれども、関連しておることですから、若干の説明を加えたのです。当時相当な不眠症を持つておりました。それから栄養状態が非常に衰えておりました。それから胃の病氣を訴えておる等の理由によりまして、尚これは私ども外來で行つた、外から行つた医者が見ただけではよく分らん、これは精密な檢査を要する意味において、然るべき設備のあるところでよく診察を受けた方がよかろうというような意味を説明に加えて置いたと思います。大体以上であります。
  1531. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの診察の結果は拘禁性神経症ですね。
  1532. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) 神経症じやない。精神異状はない。
  1533. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう神経症という病氣が‥‥。
  1534. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) 異状はないということでした。
  1535. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは拘禁性神経症という病氣があるのですか。
  1536. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) 神経症ということは、まあつけてもいいと思います。例えば夜眠れないとか、氣がふさぐというくらいな程度ですね。併し我々はこれを病的だと、病いは病的には違いないのですけれども、神経症と言つてしまえば、殆んど多くの被告というものは拘禁された当時は皆起るのです。特別この人に起つたわけじやないのです。
  1537. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると拘禁性神経症というものは、凡そ被告たる者は皆大なり小なりそれに罹かつておるわけですね。
  1538. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) 罹かります。事実罹かります。
  1539. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 罹かる可能性があるのですね。あなたのはそれ以上に進んだ拘禁性精神病があるかないかということをお調べになつたのですね。
  1540. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) そういうことを裁判所が求めておるように聞きましたので、それはないということで、從つて精神状態の異状によつて拘禁を解く必要はないということになるわけであります。
  1541. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ここに予後注意すべきものあり、これはどういう意味なんですか。
  1542. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) これは、これも後で刑事課長から説明を求められました。前申上げたように、私どもはいろいろな訴えをなす、病氣の訴えをなす人を見た場合に、その本体を突き止めなければ、生命上のことも考えなければならんということ等の意味で私は説明の中に書いて置きましたが、五十を超えた人が胃が非常に惡い、食慾がない、而も時々胃が痛むというようなことを聞く場合には、先ず胃の瘤腫じやないか、胃瘤じやないかということを疑う必要がある、これは常識だと思う。それで精密な檢査を要するというような意味で、予後頗る注意を要する、こういう意味です。
  1543. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると胃瘤を中心としての……。
  1544. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) 胃瘤と栄養状態の低下ということです。
  1545. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 胃瘤と栄養状態の低下、そういう点を中心にして特別の注意を要する、そういう意味ですね。そうすると現在の尾津の健康状態そのままでおつしやつたわけじやないのですね。
  1546. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) その当時のですか。
  1547. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その当時にそういう病氣があるならばということですね。
  1548. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) あるならばじやなく、あるかどうかを見分ける必要があつた
  1549. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あつた場合においては注意するということですか。
  1550. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) それもありますし、医師としてあつたことを知らずにおるということは、非常な責任を感ずるものでして、その意味でも、予後頗る注意を要する状態であると書いたのです。
  1551. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 注意しておけば間違いない話ですが……。それからその当時の健康状態は非常に注意を要するというように、強くこれを読む必要はないのですね。
  1552. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) そういう意味であります。
  1553. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが御覽になつた当時、被告の健康状態は非常に注意を要するというように読む必要はないのですね。
  1554. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) その程度はどういうような申してよろしいか、精神に異常があるかないかという意味ではなかつたのです。
  1555. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どうですか。概括的に言つて尾津の健康状態は非常に惡いとか、軽度のものとかというような程度の、御判断としてはどういうような状態でしたか。
  1556. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) あの時は拘留後約三ケ月ぐらい経過した後と思いますが、なにしろああいう特別な人ですから、拘禁を受けたからといつて、そんなにふさげるような筈はないと思うのです。普通一般の相当の社会生活をして來た人が拘禁された場合には、相当精神的にも、肉体的にもふさげるのが普通でありますが、それも一ケ月、二ケ月経つと安定して來るわけであります。尾津喜之助という人は、前に刑務所生活も相当長くやつておりますし、二ケ月や三ケ月くらいの拘留そのものによつて、あの程度に健康が冒されるということは、これは相当考えなければならんのじやないか、こう私が判断したのです。予後頗る注意を要するというのはそういう意味であります。
  1557. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると拘禁によつて多少身体が惡くなつたというのですか。
  1558. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) 惡かつた
  1559. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その程度は……。
  1560. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) その程度は、ですからね、普通の人ならばあの頃から段々恢復して参ります。それは拘禁というものの影響を受けたために低下した体力の低下ならば、それはそう心配することはないと思いますが、何か外に体力を低下させる原因があるとするならば、それは事態容易じやないということに考えなければならん。その原因を確かめる必要があるという意味で書いたのです。
  1561. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それが胃瘤とか、そういうことを指すわけですか。
  1562. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) 栄養状態が惡い、栄養失調が起つたのです。
  1563. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 栄養状態は非常によかつたのじやないですか。
  1564. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) 私診た時は惡かつた
  1565. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたはいつ診られたか。再び入所してからですか。
  1566. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) 入所した直後です。
  1567. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 栄養状態がよいようなことを聞いておりますが……。
  1568. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) あの状態をよいと言うのはどうでしような。
  1569. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうですか。
  1570. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) 私はそうは思いません。
  1571. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 非常に贅沢しておるようですが……。
  1572. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) それから申し落しましたが、もう一つあの人は脳溢血に罹かつたという既往症を訴えました。併しこれは果して脳溢血であるかどうかは身体の上では証明できませんので、家内に会いまして、その当時の状況をよく聞いたことがあります。それから同時にその時診たお医者さんの診断書を貰うことを要求しました。それで私の方が、これを続けて参りましたのでありますが、それによりますと、その当時見たお医者さんは、脳溢血と診断したようであります。そういうことがありますので、若しですね、そういうことを若し再発されるとすればですね、これも亦困つたことであるという意味も……。
  1573. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一体脳溢血は、こういう血圧の低い人にも起り得るですかね。
  1574. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) それは起り得るでしよう。
  1575. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その可能率はどうですか。
  1576. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) それは極く少いでしようけれども……。
  1577. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 少いですね。大体血圧の低い人が少いと見ていいですか。
  1578. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) 大体少いですね。けれども起らないとは限らない。併しこれはですね。氣が附いたから申上げたんですが、果して脳溢血であつたかどうかは、私には判断が付かないのです。当時診たお医者さんは、脳溢血の診断をしたのですけれども、ちよつと判断は付きません。
  1579. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 或いはですね、貧血の状態であつたかも分りませんですがね、それを誤つて脳溢血と診断をしたかも分らんですね。まあ二、三回そういうことがあつたということを言つておる人がありますが、その当時の模樣を聞いて見ると、何だか、むしろ貧血の状態に近いように聞いておりますがね。
  1580. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) お医者さんが、どのお医者さんも脳溢血のことを言つておりますし、かかつた医師は、脳溢血であつたということを診断書に書いておりました。何しろ診た当時、そういうことであつて、私はその診たお医者さんの観察も尊重しなければなりませんが、又、下手な臆測はできません。脳溢血であつたということも、私の観察で判断が付きかねます。
  1581. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 付きかねるというわけですね。外にお尋ねの方はありませんか。
  1582. 小川友三

    ○小川友三君 東大の高木医師の証明から比較しまして、先生の診断から見まして、催眠剤を與える必要があつた。ビタミン補給の必要があるということを問合せまして、ちよつとお伺い申上げますが、そういう大体催眠剤の、いわゆるそのクローム剤程度の補給を要するものが、頗る注意を要すべき病状であるかどうかということですね。
  1583. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) それはですね。何しろ本人の言うことを私どもも先ず仮に信じてやつたことであります。とにかく夜は眠れんということでありましたから、夜眠れないで、ああいう状態で長く置くと、非常に体に影響する。それは勿論催眠剤を飲んで夜寢る必要があつたわけです。  それと、今お尋ねにありましたが、栄養状態は、そう惡くなかつたんじやないかということですが、これは、私の観察では、相当栄養失調状態にあつて、顔が青く、それから筋肉が極く痩せておりまして、もつと前は肥つてつた人だと思います。
  1584. 小川友三

    ○小川友三君 それから、拘置所独房の中だから、日が当らないと思いますがこの被告の中で、頗る注意を要するということを診断書に書く場合は、コレラとか、ペストとか、或いは盲腸炎なりというふうになつているというような場合に示すべき最後の言葉であつて尾津さんの場合には、差入れが多くて、食い切れない。もう毎日玉子が入る。果物が入るという、カロリーの総攻撃を告げておるというふうな栄養の状態であつた
  1585. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) ちよつと申上げて置きますが、栄養失調ということは、栄養不足ということと全然意味が違いますから、物があるから、栄養失調を起さんというように、お取りにならないように‥‥。
  1586. 小川友三

    ○小川友三君 それは無論そうです。そうですが、外の医師が診た時に、栄養は優良であつたということを診断に言われておりますが、その場合に、先生が、頗る注意を要する重大病人であるかのごとき印象を書類に残したということについて、ちよつと所感を伺いたい。それだけです。
  1587. 菊地甚一

    證人菊地甚一君) 先程も繰返して申上げましたように、私どもは診断すべき診斷を、成し遂げなければならんことを成し遂げないでいるということは、医者の責任から言つても、重大なことであります。それが因で若し本人に、本人の身体が惡くなつて來たというようなことがあるとすれば、そういう意味で私は書いた。今死ぬからという意味では勿論ありません。
  1588. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その答弁はまあいいじやありませんか。では、外に御質問はありませんか、それでは、明後日は午前十時から警察関係の、大谷菊夫、大澤常太郎、それから待合小吉の吉田チヨ、それから望月作平と、それらを証人として喚問することにいたします。それでは本日はこれを以て散会いたします。    午後三時三十七分散会  出席者は左の通り。    委員長     伊藤  修君    理事            鈴木 安孝君    委員            齋  武雄君            中村 正雄君           前之園喜一郎君            宇都宮 登君            來馬 琢道君            鬼丸 義齊君            松村眞一郎君            宮城タマヨ君            星野 芳樹君            小川 友三君            西田 天香君   証人    東京拘置所看守    部長      金子儀太郎君    東京拘置所看守    部長      中島常三郎君    東京拘置所医務    課長      野崎陽之輔君    東京大学医学部    副手      高木 八郎君    東京附属病院看    護婦      石原 洽子君    医     師 菊地 甚一君