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1948-05-21 第2回国会 参議院 司法委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年五月二十一日(金曜日)    午後一時二十九分開会   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件裁判官刑事事件不当処理等に関す  る調査の件(尾津事件に関し証言あ  り)   ―――――――――――――
  2. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ではこれより司法委員会を開会いたします。本日は裁判官刑事事件不当処理等に関する調査会を開きます。先ず本日喚問してあるところの証人上條弁護士尾津さんの奥さんの両名を証人訊問いたします。証人の方に申上げますが、本日は当委員会におきまして、御主人事件につきまして裁判所処置について調査する必要があります。それにつきまして御両人の御出頭願つた次第であります。先ず証言をお願いする前に嘘、僞りは言わないという宣誓をお願いいたします。宣誓書は各自御朗読をお願いいたします。    〔証人上條貢君、尾津久子君は次のように宣誓を行なつた〕    宣誓書   昭和二十三年五月二十一日司法委員会、   良心從つて眞実を述べ、何事も隠さず又何事も附加えないことを誓います。         証人 上條  貢    宣誓書   昭和二十三年五月二十一日、司法委員会、   良心從つて眞実を述べ、何事も隠さず又何事も附加えないことを誓います。         証人 尾津 久子
  3. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは尾津さんの奥さんからお尋ねいたしますから、上條さんは次でお待ち下さい。  大変御主人のことで御心配の中を御出頭願つて御迷惑と存じますが、別に御主人事件の判決の内容に立入つて、それがどうこうとかいうことを当委員会調査するのではございません。ただ御主人事件を審理するに当りまして、裁判所の取られた処置について当委員会で少しく調査する必要があり、それがためにお呼びした次第でありますので、御心配なく事実をありのままに……。
  4. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私ちよつとわからないことが多いのでございましい……。
  5. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 成るべく御存じのことをおつしやつて下さい。勿論知つておることを嘘をおつしやればいけませんし、又知つておることを言わなくとも僞証で処罰されますから御注意願います。  失礼ですけれどお年はお幾つですか。
  6. 尾津久子

    證人尾津久子君) 三十九です。
  7. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御主人と御結婚になつたのはいつ頃ですか。
  8. 尾津久子

    證人尾津久子君) 昭和十八年です。
  9. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから籍はいつお入れになりました。
  10. 尾津久子

    證人尾津久子君) 籍は子供ができまして昭和十九年頃に入りました。
  11. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勿論お連れ合いのことですから、よくお分りのことと存じますが、御主人の御性格はどんなふうですか。
  12. 尾津久子

    證人尾津久子君) とつて不断は温厚な人でして、ただ短氣が缺点じやないかと思います。不断はとても人に対して、誰に対しても、もの静かな人でして、皆さんにとても褒められるぐらい、とにかく静かな人です。
  13. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 短氣というと、どういうようなことですか。
  14. 尾津久子

    證人尾津久子君) ただちよつと何というのでしようか、何て言つていいのでしようか。かつとすると、どなる癖がありましてね。
  15. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときには手でも振り上げるのですか。
  16. 尾津久子

    證人尾津久子君) そういうことは絶対にいたしませんです。それで、後で自分で叱つてみて、怒つてみて、ああ悪かつたといつて謝るような人です。
  17. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは御家族に対してですか。
  18. 尾津久子

    證人尾津久子君) 家族ばかりではございません。誰にでもそうです。不断は無闇に怒つたりしたことない人です。
  19. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今まで人を毆つたり、傷つけたり、人を殺したりというようなことは……。
  20. 尾津久子

    證人尾津久子君) 一切そんなことは絶対にないです。ただ間違つても言いつけたことをしませんと、かつとして怒りますのですの。
  21. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 子分の衆を毆るようなことはありませんか。
  22. 尾津久子

    證人尾津久子君) ええ、絶対に毆つたことはないです。私が一緒になつてからは。
  23. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御主人の御趣味はどういうような趣味ですか。
  24. 尾津久子

    證人尾津久子君) 趣味といえば、やつぱし本だとか、俳句だとか、そういうものが好きです。
  25. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 演劇や活動は。
  26. 尾津久子

    證人尾津久子君) は。
  27. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 芝居とか、活動……。
  28. 尾津久子

    證人尾津久子君) ああいうものは嫌いです。
  29. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 絵とかそういうものはどうですか。
  30. 尾津久子

    證人尾津久子君) 絵も好きですね。
  31. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お描きになるのですか、見ることが好きですか。
  32. 尾津久子

    證人尾津久子君) 自分で絵を描くときもありますけれども、今は全然描きませんです。
  33. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 派手好みの方ですか。
  34. 尾津久子

    證人尾津久子君) 派手といえば派手でようが、地味というほどではないでしようね。
  35. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御婦人関係相当おありになりますか。
  36. 尾津久子

    證人尾津久子君) それは、ないことはないです。
  37. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうことでお家でもつて喧嘩になるとか、昂奮するとかいうようなことはありませんか。
  38. 尾津久子

    證人尾津久子君) そういうこともありません。ああいう性質ですから、私共がそういうことに口をきいたりするとやかましいですから、私は一切自由にさせて置くわけです。
  39. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 世間では相当こわい人のように言うておりますが、御主人のことを……。
  40. 尾津久子

    證人尾津久子君) どういうのですか、皆さん、そう言う人が多いのですが、私たちにしてみれば、つき合つてみれば実はよい人だと皆さんおつしやるのですが、とつつきが悪いんじやないでしようか。
  41. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ、今のあなたのお答えですと、至極円満の、やさしい人のように見えますが、世間では非常に恐ろしい鬼のような人だというふうに考えておるようですが。
  42. 尾津久子

    證人尾津久子君) 知らない人は、そうお思いでしようけれども、会つて見て、ああ、この人は人格者だという方が非常に多いのですが。
  43. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御主人の今までなさつて來たお仕事の大体は御経歴を簡單に、お分りになつておる点をお答えを願いたいと思います。
  44. 尾津久子

    證人尾津久子君) 戰災のとき、私痩せました。四貫目も痩せました。それから後、自分の夫の新宿の土地に、一足も他所に行かずに住んでおりました。それで困つている方に、できないながらも、うち皆さんをお助けして、皆さんと働いて、新宿を発展させなければならないというので、そこに「光は新宿から」というものを自分で作つたわけです。そうしてうるうちに、自分社会のために盡して、金がなくてもいいから、自分が取らないでもよい、会社の人のために食べさせてあげないといけないというので、自分で一生懸命汗水垂らして自分自身で働きましたのです。随分困つた人に施したのですけれども……。
  45. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 戰災後のお仕事もどういうことをなさつたのですか、例えば建築業をやつたとか、マーケツト業をやつたとか、そういうお仕事種類とか……。
  46. 尾津久子

    證人尾津久子君) マーケツトをやりました、マーケツトをやつて復員軍人とか、傷痍軍人でお困りの方を店員にして、事業員にして、皆の食べることをつぐなうために働かしていたようなわけです。それからもう一つは社会事業として除掃会、それから診療所をやつておりました。この無料診療所で全部困つている方を助けました。
  47. 伊藤修

    委員長伊藤修君) もうそれ以外におやりになつていないですか。
  48. 尾津久子

    證人尾津久子君) はあ、私の知つていることでは。
  49. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 終戰以前はどういうことをおやりになつておりましたか。
  50. 尾津久子

    證人尾津久子君) 終戰以前露店を私やつておりました。終戰前は私と一緒露店を商賣をしておりました。
  51. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その露店種類は。
  52. 尾津久子

    證人尾津久子君) 雜貨類です。
  53. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ずつと以前から。
  54. 尾津久子

    證人尾津久子君) 以前からではないです。前の刑を着て帰つて來てから、私一緒になりましたもんで……。
  55. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その以前は……。
  56. 尾津久子

    證人尾津久子君) その以前は知りませんです。
  57. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 終戰後大変お金ができたとおつしやるのですが、どうですか。
  58. 尾津久子

    證人尾津久子君) ところが、お金言つても、私には分りませんですね。もう私達の方へ、奥へ入れてくれる金なんて、お恥かしい話ですが、やり繰りして私達暮しておつたのですから……。
  59. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 相当世間では何億という資産ができたとかいう噂ですが、どうですか。
  60. 尾津久子

    證人尾津久子君) まあ私にすれば、そんな噂はデマだろうと思います。私達が現在やつてつて、買う物の金もようよう貰つていたくらいなんですから……。
  61. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 資産として、あなた御家内ですから、自分主人がどのくらい持つているという凡そ見当ぐらい付くでしよう。
  62. 尾津久子

    證人尾津久子君) そういうことは全然関係させないものですから、ちよつと私には分りませんです。
  63. 伊藤修

    委員長伊藤修君) けれども、あなたのお連合い資産がどのくらいという想像は付くでしよう。自分主人はどのくらい持つているということは……。證人尾津久子君) そのことは私ちよつと分らないのですが。ただ私は自分家庭のだけしか貰つていないし、財産がどれくらいあるかということも全然聞かして呉れていませんでしたから、分らないです。ですから世間の方が金があるだろう、私は金が幾らあるだろうと言われるけれど、実に辛かつたのです。
  64. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 凡そ何百万円あるとか、一億円あるとか、一千万円ぐらいあるとかいう見当は付きませんか。
  65. 尾津久子

    證人尾津久子君) 凡そ金がないと言つていいでしようね。
  66. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 全然ないということはないでしよう。ないという程度ですね。
  67. 尾津久子

    證人尾津久子君) それが私に分らないのですけれど……。商賣をしておつたのですから、ないとは言えないでしようけれど、私にはそういうことについて一切口をきかせなかつたのです。
  68. 伊藤修

    委員長伊藤修君) けれど、御主人が現に経営なすつておる事業そのものは御主人のものであるということは、御存じでしよう。
  69. 尾津久子

    證人尾津久子君) そう思つておりましたが、主人も商賣しておつても、自分自分の金でありながら自分でどのくらいうちに金があるかということは分らない人ですから……。みんな事務の者に委しておつたものですから……。
  70. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、自分で計算できない程の多額の資産があるというふうにも考えられるですね。あなたのお言葉のあれから……。
  71. 尾津久子

    證人尾津久子君) とにかくみんな社会のために使うということは私聞いておりましたけれど、それこそ何百万円あるということは、私噂は聞いておりましたが、事務の者にも聞いたことがないから……。ただ私達の家庭のだけしか貰つておりませんから、幾らあるかということは分らないと言つて、教えて呉れなかつたのです。
  72. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 借金はどのくらいあるか分りませんか。
  73. 尾津久子

    證人尾津久子君) 借金は現在でも、拂わないから、相当あります。
  74. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはどのくらいですか。
  75. 尾津久子

    證人尾津久子君) 少くとも五、六百万円あるのじやないかと思います。
  76. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、常識から考えて、借金が五、六百万円ありますれば、資産もそれ相当資産があり得ることは想像できますね。
  77. 尾津久子

    證人尾津久子君) 主人はあれだけの、人に知れるようになつたのだから、ないということの言えない人で、なくてもあるというような顔をする人ですから、それは私には分りかねます。
  78. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 俗に尾津組子分衆と言われる者はどのくらいありますか。
  79. 尾津久子

    證人尾津久子君) うちには子分というものはいないのです。私が一緒になつてからはいませんでした。
  80. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津組組合員はどのくらいおりますか。
  81. 尾津久子

    證人尾津久子君) 組合員というのは……。名称ですか。
  82. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津組と称している露店商人です。
  83. 尾津久子

    證人尾津久子君) 露店商人は、私が知つている範囲では、二百人いるかいないでしようか。併しそれはうち子分じやないけれど、うち子分といつているのは、店員のことをうちでは言うわけです。
  84. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあそういう人々が尾津組絆纏やなんか着て、街の交通整理に当つて見えますですね。ああいう人は……。
  85. 尾津久子

    證人尾津久子君) それは主人が看板としてですね、お葬式だとか、婚礼だとかに着せるだけしか使わせないわけです。ほかに着せるということはないのですけれど……。
  86. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう人は店員ですか。
  87. 尾津久子

    證人尾津久子君) それは店員にやらせておるんです。相当うち名前も使つておる者もあるらしいですけれどね。
  88. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今の露店商人、そういう人とは親分子分の盃はしていらつしやるのですか。
  89. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私が來てから、そういうのはないです。盃をしているのは、それは先の露店商親分子分つたんじやないでしようか。私よくその方は知らないですけれど……。全然出入りはしていないのですから……。現在……。先も……。
  90. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ尾津組といえば、いわゆる親分子分団体があつて、勿論その中においては盃をしておるというような関係が想像されるのですがね。世間一般もそう思つているでしよう。
  91. 尾津久子

    證人尾津久子君) うちにはそういうのは……私と一緒になつてから……。
  92. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 現にお使いになつている名前店員とか、社員とか、組合員とかいう名前をお使いになつておるでしようけれども、その間に仁義関係はあるのでありませんか。
  93. 尾津久子

    證人尾津久子君) 店員関係には全然ありません。
  94. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それ以外の露店関係の、いわゆる俗に香具師仲間の人には、そういう関係があるんじやないでしようか。
  95. 尾津久子

    證人尾津久子君) うちじやないですね。私の知つておる範囲では……。
  96. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは世間で何故尾津組というものをそうい香具師団体のように言うのでしようね。
  97. 尾津久子

    證人尾津久子君) それは私に分り兼ねますけれど、どういうわけで、うちをそういうふうに思うのかということが、私にどう考えても分らないですね。
  98. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かの新聞か雜誌でも見たことがあるようですが、関東の大親分のお身内だということは、殆ど公然になつているんでないでしようか。
  99. 尾津久子

    證人尾津久子君) それは全然なつて……。全然ありません。出入りして呉れないのです。若しそうだつたら、出入りするのが当り前ですけれども、一遍も……。家庭でも、子分になれば、うちが困つておればやつて呉れるんですけれども、全然そういうことをして呉れません。主人が何年の刑を着て帰つて來たか私は知りませんけれど、その時分から全然出入りして呉れないのですから……。主人としても露店のそういう方の連中には出入りさせたくないと言うのです。ですから、子分としては、どういうように思つておるか知りませんが、全然來ませんです。
  100. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ、あなたは子分でないと仰しやるか知れないけれども、いわゆる尾津組の率いる香具師仲間団体があつて、それと外のあれと出入りしたというような話もあるのでありませんか。
  101. 尾津久子

    證人尾津久子君) そういうのは私余り聞かないですけれど……。
  102. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは全然そういう団体はないとおつしやるのですけれども、世間一般ではそういうふうに考えておりますがね。
  103. 尾津久子

    證人尾津久子君) ……。
  104. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津組というものに対して、名前を聞くだけでも怒れをなすというふうに世間では思つておるのですがね。
  105. 尾津久子

    證人尾津久子君) それはどういうわけなんですか、私にちよつと分らないのですけれど。
  106. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今のあなたのおつしやつただけだと、單純に店員だということになりますね。
  107. 尾津久子

    證人尾津久子君) そうです。
  108. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、尾津組威力とか尾津組の勢力というものは、そう考えられないのですがね。あなたのお言葉だけだとするさ……。
  109. 尾津久子

    證人尾津久子君) でも私、私そうだとしか見られないのですけれど……。主人に関して……。
  110. 伊藤修

    委員長伊藤修君) けれども、御主人の号令一下、相当の人が動くということは考えられるのでないですか。
  111. 尾津久子

    證人尾津久子君) そんなことはないと思いますけれど……。
  112. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ただ、親分子分の盃は交してあるかないか存じませんが、少くともそういうことがないとしても、御主人命令一下、相当の人が動員でき、手足のごとく働くということは、考えられるのでないですか。
  113. 尾津久子

    證人尾津久子君) 余り頼りにならない人ばかりですからね。私が知つてからというものは全然……。
  114. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや、現在御主人の御不幸であつて、出入りする人は或いは差控えておるか知れませんが、少くとも終戰後……。
  115. 尾津久子

    證人尾津久子君) 終戰後もなかなか、そういう人があれば、私たちの事でも何でも心配して呉れるだろうと思うのですけれど、全然そういうことはないですね。わりに薄情です。はつきり申上げますれば……。若しそれが子分としたら、それがもう私達の主人がいなくても守つてくれるのが当然じやないかと思いますけれども、そういうことが全然ない連中ですから、私はないと思つております。
  116. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、こういうふうにお聞きしてよろしてのですか。結局あなたのお言葉では子分衆は一人もない、勿論盃をした人もないと……。
  117. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私が知つているのではそうです。
  118. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 失礼ですが、あなたを姐御と立てるような人があるのじやないですか。
  119. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私は姐御と言われても、氣の小さい方ですから、そういうことにかけては嫌ですから……。有名なんです。氣の小さいのでは……。
  120. 伊藤修

    委員長伊藤修君) でも世間の風評に聞きますと、御主人相当のそういう子分を持つてつて、その子分衆団体的背景を以て、無理押しをするというふうに世間では取つておりますし、又御主人もそういうような力を持つておるから、警察やなんかも相当圧迫を受けて、警察では御主人関係については手が付けられないというようなことがあるんじやないんですか。
  121. 尾津久子

    證人尾津久子君) それは昔はあれだつたんじやないんですか。私はよく昔のことは分らないのですけれども、きつかつたんじやないんですか、相当
  122. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御主人がですか。
  123. 尾津久子

    證人尾津久子君) ええ、若い時分相当きつかつたんじやないんですか。
  124. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だから前提にお聞きしたでしよう。御主人の御性格を聞いたのですけれども、あなたの先程の御証言では性格は非常におとなしいというのですけれども、人の怒れる程きつかつたというのは、どういうわけでしようかね。
  125. 尾津久子

    證人尾津久子君) なんというのですか。そこは分らないですね。
  126. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ただ一人きり、御主人一人がどれだけの乱暴者が存じませんが、それだけで警察心配する程の威力というものは考えられないです。何か御主人命令一下動く人が実際あるかないか存じませんけれども、そういうような形があればこそ、警察やなんかが、一般市民でも怒れをなすのじやないのですか。
  127. 尾津久子

    證人尾津久子君) そうですね。私にはそれらのことはちよつて私分らないですね。
  128. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この現在の御主人の御不幸の事件ですね。一番最初の警視廳で調べたのは何時頃ですか。
  129. 尾津久子

    證人尾津久子君) 何時頃でしようか……。
  130. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御主人身辺警視廳調査しておるというようなことをお聞きになつておるでしよう。
  131. 尾津久子

    證人尾津久子君) 警視廳に行くというのは聞いておりましたが、なんで行くかということは知らなかつたのです。
  132. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それを聞いたのは何時頃でしよう。
  133. 尾津久子

    證人尾津久子君) それは五月頃でしたかしら。
  134. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二三月頃のことじやないのですか。
  135. 尾津久子

    證人尾津久子君) 家に第一いない人ですから、私にはよく分らないのですよ。
  136. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの大切な御主人身辺に、そういう危險があるということは、お連れ合いとして御心配になる事項ですから、それくらいのことは、薄々素振りでも感じられることじやないのですか。
  137. 尾津久子

    證人尾津久子君) とにかく家になんか何時もいないし、警視廳行つて來るということは聞いたことはありましたけれども、なんで行くかということは本人も言いませんし、家へ帰つて來ないから、なんにも言わないで分らなかつたのです。
  138. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 子分衆な、支配人、店員の人からそういうことを、聞いたことがないのですか。
  139. 尾津久子

    證人尾津久子君) 全然聞かないですね。
  140. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたのお言葉を聞いていると、御主人に対して全然無関心のように見えますね。
  141. 尾津久子

    證人尾津久子君) ええ、よく無関心と言われとおります。警視廳行つて私はよく言われました。あなたはなんにも知らないのですね、あなたは随分ぼやつとしておると言われましたけれども、本当に知らないのです。私は家のことしかやつていないんですから。
  142. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御主人が拘束されるまで、若しや拘束されるようなことがあるというような御心配はなかつたのですか。
  143. 尾津久子

    證人尾津久子君) 聞かなかつたです。偶然に來られたので私はびつくりしました。なんで連れて行かれたのかということを聞きましたけれども、本人は何も言わなかつたですから。
  144. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 引張られるまでは分らなかつたのですね。
  145. 尾津久子

    證人尾津久子君) 分らなかつたです。家庭に愛がないものでございまして、今まで。
  146. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御主人が拘束されてからあなたはどういうことをなさつたのですか。
  147. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私は主人が一日も早く帰つて來るようにと祈つておりましたです。
  148. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのお氣持があるのですから、誰かに御相談になつたでしよう。
  149. 尾津久子

    證人尾津久子君) 弁護士さんにお願いしましたです。
  150. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはどなたに頼まれたのですか。
  151. 尾津久子

    證人尾津久子君) 弁護士さんですか。
  152. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうです。
  153. 尾津久子

    證人尾津久子君) 上條先生顧問をしていらつしやいましたし、それから森山さんという方をお願いしましたです。今亡くなりました。
  154. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 上條さんにはどこへ頼みに行かれたんですか。
  155. 尾津久子

    證人尾津久子君) 上條さんという方ですか。
  156. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 上條さんにはどこへ頼みに行かれたですか。
  157. 尾津久子

    證人尾津久子君) あの方はうち顧問弁護士で、よく遊びに來ていらつしやいました。
  158. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 拘引された日にもおられたんですか。
  159. 尾津久子

    證人尾津久子君) いらつしやいません
  160. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 翌日にも來ましたですか。
  161. 尾津久子

    證人尾津久子君) お電話をかけて來て頂きました。
  162. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 翌日というのは拘引された翌日ですね。
  163. 尾津久子

    證人尾津久子君) はあ。
  164. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういうわけで來て貰つたのですか。
  165. 尾津久子

    證人尾津久子君) どういうわけですか、主人が引つ張つて行かれたのはどんなわけか聽いて呉れといつて頼みました。
  166. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 引つ張られた理由を聽いて呉れと……。
  167. 尾津久子

    證人尾津久子君) はあ。あとお願いしません。まだその時には……。
  168. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 森山弁護士に対しては……。
  169. 尾津久子

    證人尾津久子君) 森山さんはずつとそれから後でございました。上條先生一人でいけないので……。
  170. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どのくらいあとですか。
  171. 尾津久子

    證人尾津久子君) そうですね。あれから一月ばかり経つてからじやないですか。
  172. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その外にあなたは直接にお頼みになつた弁護士はないでしようか、
  173. 尾津久子

    證人尾津久子君) ないです。
  174. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 上條さんにはそれから何回あなたはお会いになつたですか。
  175. 尾津久子

    證人尾津久子君) さあ。
  176. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 毎日ですか。
  177. 尾津久子

    證人尾津久子君) いいえ、毎日とはお会いしませんでした。
  178. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 大抵どこでお会いになつたですか。
  179. 尾津久子

    證人尾津久子君) はあ。
  180. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お会いになる時にはどこでお会いになりましたですか。
  181. 尾津久子

    證人尾津久子君) うちにお呼びしました。
  182. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お宅ですか。いつでも……。
  183. 尾津久子

    證人尾津久子君) いつでもではないですけど。……先生がお忙しい時には、うちにお訪ねしました。
  184. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 上條さんは何回くらいおいでになりましたですか。大体のお記憶は。
  185. 尾津久子

    證人尾津久子君) 引つ張つていかれた当時でございますか。
  186. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうです。
  187. 尾津久子

    證人尾津久子君) 今日まででございますか。
  188. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや、一遍お出になりましたですね。釈放されて一遍出られましたですね。
  189. 尾津久子

    證人尾津久子君) 執行停止ですか。
  190. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ええ。執行停止、それまでの間……。
  191. 尾津久子

    證人尾津久子君) そうですね。私はそう行かなかつたですけで、先生がお見えになつたのは、何回ぐらい見えたかしら。五六回から十回ぐらいじやないでしようか。
  192. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたがですね。
  193. 尾津久子

    證人尾津久子君) ……。
  194. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 十回くらいおいでになつたですね。
  195. 尾津久子

    證人尾津久子君) ぢやないかと思うのですけど……。
  196. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お宅でお会いになつたのはどのくらいですか。
  197. 尾津久子

    證人尾津久子君) あの当時のことでございますから、ちよつと忘れてしまいました。
  198. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 大体でよろしいですがね。
  199. 尾津久子

    證人尾津久子君) 五六回じやないでしようか。
  200. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 五六回。
  201. 尾津久子

    證人尾津久子君) じやないかと思うのですけど、ちよつと記憶がないですけど。
  202. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 上條さんをお訪ねしたのは十回ぐらい、うちへ來て頂いたのが五六回でしよう。
  203. 尾津久子

    證人尾津久子君) ええ。
  204. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その間にどういうお話をしましたですか。
  205. 尾津久子

    證人尾津久子君) 主人が引つ張つていかれたのは自分にはよく分らなかつたのですから、一日も早く出るようにとお願いしましただけです。
  206. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 法律でいうと保釈、保釈して呉れということを頼まれたのですね。
  207. 尾津久子

    證人尾津久子君) はあ。
  208. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの方で十五六回お会いしました主たる要件は保釈のことだけですか。
  209. 尾津久子

    證人尾津久子君) そうです。私はその外にお願いすることはないですから。私にお産の肥立ちが悪かつたので寢ていたものですから。
  210. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなた以外には、上條さんに会つて保釈のことでお話になつた人があるのですか。
  211. 尾津久子

    證人尾津久子君) 上條さんの外にですか。
  212. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが直接上條さんにそうやつて十五六回会つて頼みになつた。それ以外にあなたの支配人ですか、そういう人が上條さんのところに行つて、保釈の件についてお頼みになつたか、お話になつたことがあるのですか。
  213. 尾津久子

    證人尾津久子君) その事務員の者に私がお頼みしたかと仰しやるのですか。
  214. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの代理で……。
  215. 尾津久子

    證人尾津久子君) そんなことはないです。
  216. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 或いは支配人に……。
  217. 尾津久子

    證人尾津久子君) それは自分の亭主ですから、外の人には頼めませんことですから、自分自身でやりました。
  218. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの使用人ですね、例えば岡戸さんとか、そういうような人が、自分の考えでこの問題をお頼みに行つたことがありますか。
  219. 尾津久子

    證人尾津久子君) それはないでしようと思いますけれども……。私お願いしませんから。
  220. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうことは聞いておりませんですか。
  221. 尾津久子

    證人尾津久子君) はあ。
  222. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたのおつしやるいわゆる店員にですね。
  223. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私が岡戸とか松井に頼んだかとおつしやるのでしよう。
  224. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 頼んだことがあるかどうかということです。
  225. 尾津久子

    證人尾津久子君) そういう話はありません。
  226. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 頼んだことがないとすれば……。
  227. 尾津久子

    證人尾津久子君) だから、その人達は主人がいないものですから頼んだかも知れませんが、私は頼みません。
  228. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、勝手に勝かれたことがあるかも分らないのですね。
  229. 尾津久子

    證人尾津久子君) そうですね。勝手に行かれたことはあるかも知れないですね。
  230. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは聞いていないのですか。
  231. 尾津久子

    證人尾津久子君) 行つたかも分らないし、行かないかも分らない。それははつきり分りません。
  232. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 行つたということは想像されるのですね。
  233. 尾津久子

    證人尾津久子君) まあ主人ですから、きつと行つたのじやないかと思いますけれども、私がそういう心配をしておるのですから、やはり心配して行つてたのじやないかと思いますけれども。
  234. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 店員の人なり支配人の人が、今日行つて來たけれども、上條さんとこういう話をしたとか、こういう結果になつたとかいう報告を聞いたことはないですか。
  235. 尾津久子

    證人尾津久子君) そういう報告は余り聞いたことはないです。
  236. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、あなたはあなた、店員の人は店員の人と別個に上條弁護士に頼んだわけですね。
  237. 尾津久子

    證人尾津久子君) そうです。上條さんは古くから顧問弁護士になつておりましたから……。
  238. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 上條さんは、お聞きすると顧問弁護士ですが、何時頃から顧問弁護士ですか。
  239. 尾津久子

    證人尾津久子君) あの方は終戰後になつたのです。その前もしておりましたが。それは上條先生の義理のお兄さんを私が、……。主人がよく知つておりまして、お医者樣で、それのあれで知つているのでございます。
  240. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 終戰前から顧問弁護士ですか。
  241. 尾津久子

    證人尾津久子君) いえ、終戰後だと思います。
  242. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 終戰顧問弁護士になられたのですね。
  243. 尾津久子

    證人尾津久子君) たしかそうだと思います。
  244. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは顧問料を月々拂つたのですか。
  245. 尾津久子

    證人尾津久子君) 会計の方は私分らないのですけれども……。どういうようにお拂いしたものか、拂つてないのか、それは分らないのです。事務所の方でやつておりましたものですから。
  246. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、この事件が起つたとき、あなたが十五、六回お頼みにおいでになつたのですが、それに対しては何かその報酬とか謝礼とか、或いは実費とか、そういうものは……。
  247. 尾津久子

    證人尾津久子君) 報酬というものは……あの先生は本当に只で使つていたようなものです。幾らか車代としてしか差上げてないわけです。
  248. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういう名目か存じませんが、とにかく、この事件が始まつてから上條弁護士にどのくらいお渡しになつたのですか。
  249. 尾津久子

    證人尾津久子君) そうですね。二万円から一万円だろうと思います。私の知つているのは……。
  250. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは一回ですか。
  251. 尾津久子

    證人尾津久子君) 一回か……二回に拂つたと思います。
  252. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはどういう名目からですか。
  253. 尾津久子

    證人尾津久子君) ただ先生が骨を折つて頂くようにお願いしたために、私が拂つたのです。弁護料というのですか……。
  254. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 実費ではないのですね。
  255. 尾津久子

    證人尾津久子君) 実費というのですか、そういうことは分らないのです。
  256. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どつちのお氣持でしたか。
  257. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私の氣持では、主人がいないから一日も早く出して貰うようにというわけで出したわけです。
  258. 伊藤修

    ○委員(伊藤修君) そうすると、あなたは保釈のために頼んだと仰しやつた、そうすると保釈して頂く手数料というか、お礼というか、そういう意味のものですか。
  259. 尾津久子

    證人尾津久子君) その後、出てからというものはお礼を上げなかつたのです。
  260. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 出てからじやない、頼んだときです。只頼むわけには行かないから……。
  261. 尾津久子

    證人尾津久子君) 結局足を運んで警視廳行つて頂くし、又裁判所にも行つて頂くから、私としてはまあ車代とも付かず、弁護料とも付かずに上げたわけです。
  262. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 結局保釈の盡力をして頂くために、まあ車代とも付かず謝礼とも付かずに二万円差上げたのですね。
  263. 尾津久子

    證人尾津久子君) そうです。
  264. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは受取を貰つておられるのですか。ただお渡ししただけですか。
  265. 尾津久子

    證人尾津久子君) ただお渡ししただけです。
  266. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御主人の釈放について誰か外の人にお頼みになつたことがあるのですか。
  267. 尾津久子

    證人尾津久子君) 上條さんの外にですか。森山先生にもお頼みしました。
  268. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その方にはどういう手当をしましたか。お金を上げたのですか。
  269. 尾津久子

    證人尾津久子君) お金は、やはりそのくらいしか上げていないのです。弁護料として方げたわけです。
  270. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これは弁護料としてですか。
  271. 尾津久子

    證人尾津久子君) これは最初、初めの方として、弁護士さんには誰でも最初上げるものだということを聞いておりましたものですから、それで私のうちにはお金もないものですから、そこを詰めて先生に上げたわけです。
  272. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると森山弁護士に対しては、はつきり弁護料として差上げたわけですね。
  273. 尾津久子

    證人尾津久子君) そうです。
  274. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その以外に……
  275. 尾津久子

    證人尾津久子君) 一銭も上げたことはありません。第一お金うちで自由にならないのです。ないんですから上げる余地はないわけなんです。
  276. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、それ以外にはお頼みになつた人はないのですか。
  277. 尾津久子

    證人尾津久子君) ないです。
  278. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いわゆる弁護士でない人ですね。
  279. 尾津久子

    證人尾津久子君) ないです。
  280. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か有力者の人とかお知り合いの人とか、そういう人にお頼みになつたことはないですか。
  281. 尾津久子

    證人尾津久子君) ないです。私はそとへも出ないし、そういうそとの人ということはあまり知らないものですから。私はうちにばかりいて。ですから、ほんとの知つてる方にしかお願いしないのです。
  282. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 岡戸という人がそういう方面を頼んだということは聞いていせんか。
  283. 尾津久子

    證人尾津久子君) 聞いたようなこともあるのですけれども、よく分りません。
  284. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、岡戸さんがそういうことを奔走しておるようなことは聞いたことがありますか。
  285. 尾津久子

    證人尾津久子君) 大して奔走はしないでしよう。
  286. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今そんなことを聞いたことがあるとおつしやつたじやないですか。
  287. 尾津久子

    證人尾津久子君) 聞いたことはあるのですけれども、奔走するような人じやないと思うのです。
  288. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは何かそういうことを小耳に挾んだのじやないですか。
  289. 尾津久子

    證人尾津久子君) 保釈についてですか。
  290. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうです。岡戸さんがよその人、誰かを頼んで出すようにお願いしたということ、そういうことを、あなたがちらつと聞いたことがあるかどうか。報告を受けたことはないとおつしやつたけれども……
  291. 尾津久子

    證人尾津久子君) 元林さんという弁護士さんじやないでしようか。
  292. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 誰でもいいですが。
  293. 尾津久子

    證人尾津久子君) その弁護士さんのことで一遍私お会いしたことがあるのですけれども。岡戸さんの紹介で。弁護士さんですけれども、私お金のことが大きいことを言われても私にはできませんからお断りしたわけなんです。とても私にはできないからと言つて
  294. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは、まあ岡戸さんも多少動いておつたようなことは想像されますね。
  295. 尾津久子

    證人尾津久子君) 他に動いたということは私聞きません。ただ元林さんという方だけにはそのとき紹介にあずかりましたが。
  296. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ元林さんを紹介するくらいですから、岡戸さんも御心配になつていろいろ奔走していたことは想像されますね。
  297. 尾津久子

    證人尾津久子君) そうですね。
  298. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたや岡戸さんでなく、尾津組事務所としてどこか奔走しているようなことは聞かなかつたですか。
  299. 尾津久子

    證人尾津久子君) 聞かないです。
  300. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうことは全然ないですか。聞かないですか。
  301. 尾津久子

    證人尾津久子君) 分らないです。第一聞かないです。
  302. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは頼んだかも分らぬということは想像されますか。
  303. 尾津久子

    證人尾津久子君) 恐らく頼まないのじやないかと思います。
  304. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは、まあ上條さんか、森山さんかそういうお二人に……。
  305. 尾津久子

    證人尾津久子君) 偉い方ですから何とかして頂けると思つてお願いしたわけです。
  306. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お二人に頼まれたわけですか。
  307. 尾津久子

    證人尾津久子君) お願いしたわけです。
  308. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 頼まれたわけですけれども、その人に、お金はいくら掛つてもいいから、一日も早く出して貰うように奔走して貰いたいということを言わけたのじやないですか。
  309. 尾津久子

    證人尾津久子君) いいえ。私は私の主人がいなければ金を借りることも知らないし、主人がいれば金を借りることは分つていますでしようから、帰つて來ればお礼はしますから、とにかく一日も早く帰つて來るようにお願いしますと頼んだだけです。
  310. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの、さつきからお訊ねすところによりますと、非常に御主人の釈放について御心配になつたことについては……。
  311. 尾津久子

    證人尾津久子君) 先生達も金のことについては一切言わないのです。御主人さえ出て來ればあれするのだから、心配しないで、そういう心配は要らない。一日も早くあなたの御主人が出て來ればいいというので、実は甘えてお願いしたわけなのです。
  312. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが、金は幾ら掛つてもいいから、一日も早く出して呉れということをお願いしたのではないのでしようか。
  313. 尾津久子

    證人尾津久子君) 言わないです。
  314. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御主人帰つて來れば、何百万円でも借金ができるから、どういう方法でも付くでしようから、それは出て來てからでもいいでしようから、その位の言葉弁護士を督促する意味においても、お使いになるように考えられますが、どうでしようか。
  315. 尾津久子

    證人尾津久子君) ですから、主人帰つて來れば、お礼はできると思いますから、とにかく甘えて一つお願いしますと言つたのです。
  316. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 幾らか外の関係で、そういうようなことを言つている人があるのですがね。
  317. 尾津久子

    證人尾津久子君) 誰がですか。
  318. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 外の関係で、そういうようなことがちらほら見えるのですが、幾ら掛つてもいいから、盡力して貰いたいということを言つている人がある。
  319. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私が言つたというのですか。そんなことはないですよ。それは自分主人ですから、あれですけれども、金がなくて若し主人が出て來ればいいが、出て來なければどうにもなりません。
  320. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 出て來なければ拂わんでもいいでしよう。
  321. 尾津久子

    證人尾津久子君) 弁護士は金の方ではしつかつりしておりますからね。金の方には……(笑声)やつぱり商賣ですから、お金は取りたいのですから。
  322. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは商賣でも成功しないのに、金を出せということは言わないでしようね。
  323. 尾津久子

    證人尾津久子君) それでもやはり催促なさいます。現在ありますから。
  324. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは、そういうお言葉があれば、尚更お訊ねしなければなりませんが、外に十何人弁護士の人が掛つていますが、それは誰が頼んだのですか。
  325. 尾津久子

    證人尾津久子君) それは別にお見舞弁護士言つております。
  326. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お見舞というと、向う樣から進んで弁護に來て呉れる……。
  327. 尾津久子

    證人尾津久子君) そうらしいですね。ですから私、弁護士さんのお名前も知らないのです。
  328. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その家へ挨拶に行つたことはないですね。
  329. 尾津久子

    證人尾津久子君) 行つたことはありません。
  330. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 森山上條以外の数名の弁護士が、あなたに面会に來たことがありますか。あなたの家へ……。
  331. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私の家へですか、來ないです。
  332. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは会つたことがないのですか。
  333. 尾津久子

    證人尾津久子君) 法廷ではお会いしました。
  334. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 誰と誰に会つたのですか。
  335. 尾津久子

    證人尾津久子君) 名前を訊かれても、ちよつち分らないですね。知つているのは二人か三人しかないです。
  336. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの知つているのは誰ですか。
  337. 尾津久子

    證人尾津久子君) 弁護士さんの米村さんという方と、中田さんとか言つていました。それから森山さん、それからあと分らないです。
  338. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたのお会いになつた弁護士の中で、それだけは、三人の人は覚えているわけですね。
  339. 尾津久子

    證人尾津久子君) 覚えていました。覚えいい名前ですから。
  340. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その外の弁護士にも会つたわけですね。
  341. 尾津久子

    證人尾津久子君) 法廷で皆お会いしました。
  342. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お宅で会つた人は……。
  343. 尾津久子

    證人尾津久子君) 家で会つたのは米村先生位ではないでしようか。
  344. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その後の人は法廷で顔知りになつた、その程度ですか。
  345. 尾津久子

    證人尾津久子君) そうです。
  346. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これらの人の弁護料は事務所の会計で賄つているのではないですか。直接頼んだ森山さん、上條さん以外はお見舞弁護士とおつしやいますけれども、あなたのお言葉の通り、弁護士はただやるわけではないのでしようから、何がしかお礼とか、実費の支出は、事務所の会計の方で拂つたのではないのでしようか。
  347. 尾津久子

    證人尾津久子君) それは私は、お金はきちんきちんと賄いの金しか貰つておりません。全然ありませんから、弁護士へ拂うのだからと言つて、傳票を持つて行つてつたわけです。事務所へ行つて……。
  348. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは誰に拂う金ですか。
  349. 尾津久子

    證人尾津久子君) 上條さん、森山さんに拂う……。
  350. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それ以外の弁護士に対する金の支拂は、事務所の方で拂つておるのではないでしようか。
  351. 尾津久子

    證人尾津久子君) 拂わないのです、お見舞弁護士ですから。
  352. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ちよつとも拂つてないのですか。
  353. 尾津久子

    證人尾津久子君) ええ、ちよつとも拂つてないのです。ですから氣まりが悪いくらいです。
  354. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたも、事務所も拂つてない……。
  355. 尾津久子

    證人尾津久子君) ないでしよう。
  356. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 誰にも拂つてないのですか。
  357. 尾津久子

    證人尾津久子君) 一度上條先生から言われて、余り何で済まないから車賃を上げてはどうかと言つて、千円ずつ上げたと思います。車賃として。
  358. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 全部に……。
  359. 尾津久子

    證人尾津久子君) ええ。
  360. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはあなたが上げたのですか。
  361. 尾津久子

    證人尾津久子君) ええ、そうです。それも事務所から金を貰つて……。
  362. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたはそうだけれども、事務所の方から拂つておるのじやないですか。
  363. 尾津久子

    證人尾津久子君) 事務所から金を貰つて拂いました。
  364. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それ以外にはないのですか。
  365. 尾津久子

    證人尾津久子君) ないのです。
  366. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 弁護料以外の名前で保釈して貰う金を拂つたことは聞いていないのですか。
  367. 尾津久子

    證人尾津久子君) 知らないのです、全然。
  368. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 弁護士との間の金銭関係は、それ以外にはないのですか。
  369. 尾津久子

    證人尾津久子君) ないのです。ですから上條先生に私氣まりが悪いのです。
  370. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうやつて、あなたは弁護士を主として上條さんと森山さんにお頼みになつたのですが、その人達からその結果どういう報告を受けたのですか。
  371. 尾津久子

    證人尾津久子君) ただ出られそうだということだけしか聞きません。奥さん心配しないで、何とか出られるようにするから、最近に出られそうだから心配しない方がいいですよと言われました。
  372. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何時出られるとか、今度はこういう話をして來たから大丈夫という御報告はなかつたのですか。
  373. 尾津久子

    證人尾津久子君) そういうことはありません。聞きませんでした。
  374. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 最近に出られるというのですか。
  375. 尾津久子

    證人尾津久子君) 最近出られるかも知れませんよ……。
  376. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何時頃出られるということはなかつたのですか。
  377. 尾津久子

    證人尾津久子君) それは先生からはつきり聞いておりません。
  378. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 非常に心配しておるのに、頼りがないですね。
  379. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私駄目なんです。
  380. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 折角の弁護士が頼りがない。
  381. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私は先生を信用して、先生に頼んであれば安心、先生たちにお願いすれば確実に出られると確信しておりました。
  382. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そう考えておつたのですね。
  383. 尾津久子

    證人尾津久子君) ええ。
  384. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの出られるという確信は、あなたの氣持だけですか。
  385. 尾津久子

    證人尾津久子君) 理由はないですけれども、主人は悪いことをしていないから、直ぐ出られると、思つておりました。
  386. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 他に理由があつて確信を持つておるわけではないのですね。
  387. 尾津久子

    證人尾津久子君) ええ、そうではありません。
  388. 伊藤修

    委員長伊藤修君) さつきあなたのお言葉の中に現われましたが、元林弁護士、あの人があなたの所へ見えて、或る方面の誤解を受けておるが、或る方面に対しては金以外に助ける手段がない。百五十万円程入用だと言つて、話をしたことはないのですか。
  389. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私にはお金のことは大して言いませんでしたのですけれども。
  390. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう話を元林さんから聞いたことはあるのですか、ないのですか。
  391. 尾津久子

    證人尾津久子君) 元林さんから、そういう言葉をはつきり聞いたことはありませんが、そういうお話はありました。
  392. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 誰から聞きましたか。
  393. 尾津久子

    證人尾津久子君) 元林さんより聞きました。
  394. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが直接聞いたのですね。
  395. 尾津久子

    證人尾津久子君) 元林さんを岡戸さんから紹介して貰つたときに聞きました。
  396. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはいつ頃のことですか。
  397. 尾津久子

    證人尾津久子君) さあ、いつ頃ですかね。
  398. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 八月ですか、七月ですか。
  399. 尾津久子

    證人尾津久子君) 夏時分です。
  400. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは夏ですが、七月ですか、八月ですか。
  401. 尾津久子

    證人尾津久子君) 七月でしたかね。
  402. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御主人が仮釈放になる前ですから余程前でしよう。
  403. 尾津久子

    證人尾津久子君) そんなに余程前ではないのです。七月でしたかしら……。
  404. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御主人が釈放になつたのはずつと後です。
  405. 尾津久子

    證人尾津久子君) 七月頃でしたかしら……。
  406. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御主人が一旦釈放になつたのは九月の十二日ではないのですか、それから勘定してあなたの記憶はいつ頃のことですか。
  407. 尾津久子

    證人尾津久子君) でも大変暑いときですから八月頃でしたかしらね。
  408. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 六月の二十七、八日に拘引された……。
  409. 尾津久子

    證人尾津久子君) そうです。
  410. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 両方から押してこれを考えれば、いつ頃だということが分るでしよう。
  411. 尾津久子

    證人尾津久子君) 八月頃でしたかしら……。
  412. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 八月の始めですか。
  413. 尾津久子

    證人尾津久子君) 八月の始めでしたかしら……。
  414. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたのお宅ですか。
  415. 尾津久子

    證人尾津久子君) いいえ、陶々亭というところです。
  416. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どこの……。
  417. 尾津久子

    證人尾津久子君) 日比谷公園のです。委員長伊藤修君) 午前ですか、午後ですか。
  418. 尾津久子

    證人尾津久子君) 午後でしたかしら……。午後ですね。
  419. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その席にはあなたと、元林さんと、岡戸さんと三人でしたか。
  420. 尾津久子

    證人尾津久子君) ええ。
  421. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 食事しましたか。
  422. 尾津久子

    證人尾津久子君) 食事はしません。そこで何でも冷たいものを御馳走になつただけです。
  423. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そこでどんな話がありましたか。
  424. 尾津久子

    證人尾津久子君) とに角、あなたも大変ですから……。或る方面、これは、はつきり言いませんでした。はつきり言いませんけれども、とに角お金が要るのでけれども、あれだつた知つておる人がいるから弁護士に頼んで釈放して貰おうと言われました、けれども薄氣味が悪いし、会つたこともない人なので氣持悪く思つてそのままにして、私もよく考えておきますからといつて別れたのです。
  425. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 元林さんは前から御主人とお知り合いのようですが、あなたはそのとき初めてですか。
  426. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私は初めてです。
  427. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 聞いたこともないのですね。
  428. 尾津久子

    證人尾津久子君) 知らなかつたです。
  429. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのとき一面識なんですね。
  430. 尾津久子

    證人尾津久子君) そうです。
  431. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで、あなたはどう御返事をなさつたのですか。
  432. 尾津久子

    證人尾津久子君) とにかく私もそんな金なんかあるのでないのですから、もう少し考えさして貰おうということを言つたのです。それで別れました。
  433. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 考えさして貰おうということは、何とか作ろうという考えですか。
  434. 尾津久子

    證人尾津久子君) 併しその口振りが、自分がお願いしてやるわけでなし、他の人をまたにして頼むのは不安です。大金ですから、仮にやるにしても、どういうようにされるか分りませんから……。ある金ならいいのですが、ない金から作るのですから、ちよつと不安に思いました。
  435. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 元林さんは、さつき私からあなたにお話したようなお話の以外にどんなことを言われましたか。
  436. 尾津久子

    證人尾津久子君) 誰がですか。
  437. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 元林さんがです。
  438. 尾津久子

    證人尾津久子君) その後ですか。
  439. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その時にです。
  440. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私の知つている人で偉い人がいるから、その人を頼めば、御主人の恩返しにお礼として出すように奔走しますというわけです。とにかく私もどの位の金ですかと言いますと、大したことはないけれども、ちよつと要ると言われました。大したことでない、ちよつとと言つたつて、五円だつて、十円だつてちよつとです。百万円だつてちよつとですから、こつちもいろいろ考えるから、とにかく、ちよまと考えさして呉れと言つてそれきりになつておるのです。
  441. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで、その人に、今お話にあつた或る方面に知つた人があるというのですか。
  442. 尾津久子

    證人尾津久子君) それは、はつきり言いませんでした。
  443. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今お話にあつた御恩返しというものはどういう御恩があるのですか。
  444. 尾津久子

    證人尾津久子君) それは私が後で主人に面会して聞いて見たのですが、選挙のときに、奈良でなんだかあの方が縣知事に立つので、親父さんに應援して呉れと言つたらしいのです。主人相当知つている人を向うへやつて應援してやつたのです。ところが落選したらしいのです。落選したところが、今度は衆議院かなんかに立つので、又お願いするというので、うち主人相当人をやつて奔走したのです。又そのとき落選したので、その恩返しがあると言つたのだろうと思うのですよ。主人のところにも元林さんが行つて話したらしいですね。
  445. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは又後で……。それで、その金はどういう方面に使うと言つたのですか。
  446. 尾津久子

    證人尾津久子君) さあ、どういう方面と別に私は聞かなかつたですね。
  447. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが想像して、どんな方面に使うと思いましたか。
  448. 尾津久子

    證人尾津久子君) やつぱり、その有力な出して呉れる人に奔走して呉れるのだと思いました。
  449. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの感じではどうです。裁判所に使うというのか、或る方面の方に使うというのですか。
  450. 尾津久子

    證人尾津久子君) それは私の考えでは或る方面だと思つたのです。はつきり言いませんから……。
  451. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その時か、その後で……。
  452. 尾津久子

    證人尾津久子君) 言わない前にそういうお話があるから……。
  453. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 或る方面の方に歎願書を書いて出してやるということを元林さんから言われたことがありますか。
  454. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私は聞きません。その後お目に掛らないのですから……。
  455. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 歎願書を出してやるというようなことは聞かなかつたのですか。
  456. 尾津久子

    證人尾津久子君) 聞かなかつたと思います。
  457. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そんなようなことはちよつて話があつたように、こちらでは承知しておりますがね。
  458. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私それは聞かなかつたです。
  459. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 覚えないですか。
  460. 尾津久子

    證人尾津久子君) 覚えないです。
  461. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 歎願書というようなものでなくても、或る方面に書面を出して頼んでやるというようなことは言わなかつたですか。
  462. 尾津久子

    證人尾津久子君) そういう書類の話は私は聞かなかつたです。そのとき金のことだけ聞いたと思いました。
  463. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ、その時か、その後でか存じませんが、檢事總長に頼んでやつたというようなことは言わなかつたですか。
  464. 尾津久子

    證人尾津久子君) 元林さんが私にですか。
  465. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうです。
  466. 尾津久子

    證人尾津久子君) さあ、私、元林にはそれきり会わなかつたものですから……。
  467. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 会わなければその時ですね、その時にそういう話がなかつたかということを聞くのです。
  468. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私は金ということを聞いたので、それきり……。
  469. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 百五十万円の金を要求しておるからには、何かその理由、或いはその根拠を、自分の勢力、自分の力というものを何かあなたに言つて信ぜさせなければならん。そういう大きなことを言わなければならんですがね。話の経緯から考えても。
  470. 尾津久子

    證人尾津久子君) そんな話はちよつと聞かなかつた。聞いたのですけれども私が忘れたのですが……。
  471. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 檢事總長というのは特殊な名前で、檢事の一番偉い人ですからね。記憶に残るべき名前じやないですか。
  472. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私は元林さんと会つた時に変な人だなと思つたのですよ。
  473. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが多少もじもじしていたから輪をかけて話をされて話ですね。
  474. 尾津久子

    證人尾津久子君) 忘れてしまつたのですけれども……。
  475. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そんなような記憶はないですか。
  476. 尾津久子

    證人尾津久子君) 忘れちやつたんですけれども……。
  477. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 聞いたことがあるけれども忘れたというのですか。聞かないと断言できるのですか。
  478. 尾津久子

    證人尾津久子君) 余の氣にしないものですから。
  479. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは百五十万円のことで、一番肝腎の保釈して貰うという有力な人が出て來た訳ですね。余り氣にしないわけじやないでしよう。
  480. 尾津久子

    證人尾津久子君) それは確か岡戸さんから聞いたか、本人から聞いたかです。ちよつと分らないわけですね。今ちよつと……。
  481. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 聞いたような覚えはあるようなんですね。
  482. 尾津久子

    證人尾津久子君) あるような、ないような、ちよつと分らないです。
  483. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなた自身が直接聞いたのでかす、岡戸さんを通して聞いたのですか。
  484. 尾津久子

    證人尾津久子君) とにかく、そんなような氣が……。書類というようなのを出すからというようなことを話しも聞いたのですが、岡田さんから聞いたような氣がするのですけれどもね。
  485. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 結局そういう歎願書を出してやるとか、檢事総長に頼んでやるとかいうようなことはですね、直接聞いたか、或いは岡戸さんを通して聞いたような覚えもあるというのですね。
  486. 尾津久子

    證人尾津久子君) あるような氣もするのですがね。
  487. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 氣もするか……こういうことは言わなかつたのですかね。元林さんがね。自分は松本裁判長を以前部下としていた関係知つているから盡力しようと。
  488. 尾津久子

    證人尾津久子君) え。
  489. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 元林さんが言うのですよ。あなたにね。自分は松本裁判長を以前自分の部下としておつた関係知つておるから、盡力してやると、こういう趣旨のことを言わなかつたのですかね。
  490. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私にですか。そういう話は聞きません。岡戸さんの話ではですね。何とかの判事をしておつたとか、控訴院判事をしておりましたとか言いましたよ。とにかく偉い人だということを聞ききました。
  491. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だから、松本裁判長は、御主人を調べておる裁判長ですね。その裁判長が元林さんの部下であつたという関係知つているから、俺が盡力してやると、こういうことは言いませんか。
  492. 尾津久子

    證人尾津久子君) ちよつと聞いたか、聞かなかつたか。
  493. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これも一つの有力な力ですね。
  494. 尾津久子

    證人尾津久子君) そうですね。
  495. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうでしよう。あなたの御主人を調べている一番偉い人が部下なんだから、それより偉い人はないんですね。
  496. 尾津久子

    證人尾津久子君) 知りませんね。聞いたかしら。ちよつと覚えはないけれども。
  497. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それを聞いたような覚えはありませんか。
  498. 尾津久子

    證人尾津久子君) あるような氣もするし、ないような氣もするし、どちらか分らないのです。
  499. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 聞いたような覚えはありますか。
  500. 尾津久子

    證人尾津久子君) ええ。
  501. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは直接岡戸さんからですか。
  502. 尾津久子

    證人尾津久子君) 岡戸さんではありません。自分うちの裁判のときに、廊下で会つた時にですね。何とかよく頼んでありますから、こういう時にいつたのかも知れませんね。
  503. 伊藤修

    委員長伊藤修君) さつき、あなたは元林さんに一回しか会わなかつたと言いましたね。
  504. 尾津久子

    證人尾津久子君) 裁判所では又会いましたけれども。
  505. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一回ですね、そのときに、前後では二回ですね、元林さんに会つたのは。
  506. 尾津久子

    證人尾津久子君) 自分の紹介して貰つたときは堂々とやつて裁判所で会つたのは一回です。
  507. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 裁判所で今のそういう話があつたというのですか。
  508. 尾津久子

    證人尾津久子君) 今の話に、それを元林さんというのは私知らなかつたのですよ。向うから私に声をかけられたのです。
  509. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そう覚えていると、そう聞いていいのですね。
  510. 尾津久子

    證人尾津久子君) ええ。
  511. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは御主人が釈放して出られるまでに御主人に面会に行かれましたね。
  512. 尾津久子

    證人尾津久子君) ええ。
  513. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御主人が釈放して出られるまで執行停止で出て帰られたでしよう。それまでに御主人に面会に行かれたことがあるでしよう。小菅の刑務所に御主人に面会に行つたことがあるでしよう。
  514. 尾津久子

    證人尾津久子君) あります。そのときは……。
  515. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや、何回位面会に行かれましたか。何回位ですか。その小菅の刑務所に何回位面会に行かれましたか。
  516. 尾津久子

    證人尾津久子君) 執行停止になる前ですか。
  517. 伊藤修

    委員長伊藤修君) までに。
  518. 尾津久子

    證人尾津久子君) までに私は三日に一回ですかね。四日に一回しか行かないのです。
  519. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういうようなお話をなさいましたか。
  520. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私は、家庭のことしか言いませんでした。
  521. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのとき今の家庭のことだけだけれども、元林さんの話はしたのですか。
  522. 尾津久子

    證人尾津久子君) したときに、元林さんに会つたときに、明くる日心配になりましたから行きました。金のことだから相談に行きましたよ。ところがそんなことは駄目だ、断れと私は主人に言われました。金もないのに、そういうことをやつて、変に見られてはいけないから、そういうものは絶対に断れと、金があればいいが、ないから駄目だ。一般に收賄とか、何とか言われるといけないと、主人に固く断られました。
  523. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで、やめる氣になりましたか。
  524. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私は始めからやめる氣でありましたから、どうも氣に喰わないと思つて断わろうと思いましたのですが、初めから、初めて会つた方に、このようにいきなり蹴飛ばすわけにもいきませんから、よく考えて置きますと答えただけなんですから……。
  525. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では面会されたときに御主人の体の状態はどんなふうでしたか。
  526. 尾津久子

    證人尾津久子君) とにかく、言うことがちよつと変でしてね。工合でも悪いじやないかと聞いたが、何でもない、工合は悪くないと言つておりましたがね。氣の強い人ですから、別に取上げて悪いようには感じないのですね。
  527. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 別に取上げて感じませんでしたか。
  528. 尾津久子

    證人尾津久子君) ふだんよりか、このところが痩せておりまして、眼の置き方が少し変でしたね。
  529. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 大体ああいう所に收容されますれば多少苦痛がありますからね。とりわけ体にどういう病氣があるとか、どういう苦痛があるということは訴えはありませんでしたね。
  530. 尾津久子

    證人尾津久子君) 丁度そのときに医者にかかつておりまして、本人言つていました。どうも胃潰瘍のような氣があると自分でも言つておりました。大事にしなければならんと先生が言つた自分でも言つていました。
  531. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 保釈のことについて、あなたに本人が直接そのときに何か話ししませんか。
  532. 尾津久子

    證人尾津久子君) 本人がですか。
  533. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御主人が。
  534. 尾津久子

    證人尾津久子君) 主人がとにかく俺の体が悪い、こういうところに長く入れられると死にそうだ。先生に会つて出られるように頼んで呉れと私に言うておりました。
  535. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは拘置所の、いわゆる刑務所の野崎という医者を知つておりますね。
  536. 尾津久子

    證人尾津久子君) 野崎さん。刑務所のお医者さんですか。
  537. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お医者さん。
  538. 尾津久子

    證人尾津久子君) 名前は知らないのです。
  539. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 刑務所のお医者さんに会つたことがありますか。
  540. 尾津久子

    證人尾津久子君) あります。
  541. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは元林さんの家で会つたのですか。
  542. 尾津久子

    證人尾津久子君) 刑務所で会いました。
  543. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 刑務所のお医者さんの部屋で会つたのですか。
  544. 尾津久子

    證人尾津久子君) そうです。療治して頂きまして、診察して頂きましたのです。それで先生に聞きました。そうすると先生の言うには、少し精神にあれして、頭が変だと言うておりました。それに胃潰瘍の氣がちよつとあるからと、先生が言つて呉れました。
  545. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 病氣の模樣を聞いたのですか。
  546. 尾津久子

    證人尾津久子君) 聞きました。
  547. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 病氣の模樣を聞いただけですか。
  548. 尾津久子

    證人尾津久子君) そうです。
  549. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その時にあなた何か頼みませんか。お医者さんに何か保釈になるようにお願いしますというようなことを。
  550. 尾津久子

    證人尾津久子君) いいえ、知らないのです。それは。
  551. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから、あなたがさつき面会されたという時に、特段に大病人のようには考えなかつたのですね。
  552. 尾津久子

    證人尾津久子君) それでも自分主人ですから、ああいう所に入つておれば心配ですから、よく聞きました。
  553. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御主人の病氣を心配したのですか。さつき、あなたが行つた時に、たしか大して氣にも掛けないと……。
  554. 尾津久子

    證人尾津久子君) 氣にも掛けないことはありません。ああいう所に行けば、やはり病氣になり易いですから。私は入つたことはありませんけれども。
  555. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 医者に面会するということは誰に教えられたのですか。
  556. 尾津久子

    證人尾津久子君) 教えられません。
  557. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの自分の考えで……。
  558. 尾津久子

    證人尾津久子君) そうです。親切に教えて呉れました。こういうわけで体の工合が悪いのだから、注射を打つたり何かしますから、だんだん落着くでしよう。心配しない方がよいということを言われて、それで実は安心して帰りました。
  559. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あそこのお医者さんの診断書の書き方によつて、保釈になるということは御存じですね。
  560. 尾津久子

    證人尾津久子君) それは私知りません。分らないです。それまで、ああいうところのことは、私知らないですから。
  561. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ああいうところのお医者さんに面会を求められるということは、なかなかちよつと普通の素人としては知らないですね。
  562. 尾津久子

    證人尾津久子君) それは主人が、一應どんな……、先生が言わないから聞いてごらんと、工合が悪いとき主人が、とにかくどこが悪いのですか聞いてごらんと……、先生に面会できるかしらと言つたら、できるから面会してごらんと言われたのです。
  563. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 野崎さんに会つたのはそれ一回きりですか。
  564. 尾津久子

    證人尾津久子君) そうです。
  565. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お宅へ訪問したことはないですか。
  566. 尾津久子

    證人尾津久子君) ないです。
  567. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 宜しくお願いしますということは言つたのですね。
  568. 尾津久子

    證人尾津久子君) はい。
  569. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 宜しくお願いしますというのは、病氣のことですか。
  570. 尾津久子

    證人尾津久子君) そうです。別にまだその方のあれまで行けなかつたですからね。
  571. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 特にそのお医者さんにあなたが会われたということは、何かそのお医者さんに、本人の体が悪いというふうに診断して貰うように、あなたが頼んだというふうにも考えられますが。
  572. 尾津久子

    證人尾津久子君) それは実はその前に、暮に倒れたのです。軽い脳溢血で……。拘置所に入る前に、その前の年の暮に倒れたのです。それですから私がひどく心配しまして……。血管がいくらか切れたのです。それですから工合が悪いということを自分で言つたものですから、若し又脳溢血にでもなると危いと思いましたので、実は私がお伺いしたのです。
  573. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二十一年十二月のことですね。
  574. 尾津久子

    證人尾津久子君) 暮です。暮に血管が幾らか切れたのですよ。それで一時駄目だつたのです。それで私が心配しまして、それがあるものですから、工合が悪いですから、主人が若し脳溢血ででも死なれては困ると思いましたので、お伺いしたのです。
  575. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときお医者さんは誰にかかつたのです。
  576. 尾津久子

    證人尾津久子君) 永田さんという博士です。
  577. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どこですか。
  578. 尾津久子

    證人尾津久子君) その方は、家は杉並だと伺いました、賀陽宮樣のお附添のお医者樣だつたという話です。
  579. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは脳溢血ということは分つておりますか。
  580. 尾津久子

    證人尾津久子君) 分りました。軽い脳溢血というのですが、ちよつと血管が切れたのです。約一月以上も寢て、注射を打つておりました。
  581. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御主人はそういう傾向があるのですか。
  582. 尾津久子

    證人尾津久子君) あるのです。
  583. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや、あるのですというけれども、一回だけでしよう。
  584. 尾津久子

    證人尾津久子君) 一回だけじやありません。その前に三度も四度も倒れたのです。
  585. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その度にお医者さんにかかつておりましたか。
  586. 尾津久子

    證人尾津久子君) そうです。
  587. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは、どこでかかつたのですか。
  588. 尾津久子

    證人尾津久子君) それは近所の篠田病院というのがあります。
  589. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは貧血じやないですか。
  590. 尾津久子

    證人尾津久子君) いいえ、貧血じやないです。
  591. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 血圧は御主人は馬鹿に低いのですが……。
  592. 尾津久子

    證人尾津久子君) 低すぎるので又いけないと先生も言つておりました。
  593. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 血圧の低い場合に脳溢血が起るのはおかしいと思うのですがね。
  594. 尾津久子

    證人尾津久子君) ところが本当に倒れたのです。御飯を頂いていても、すうつと倒れちやうのです。
  595. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは貧血じやないですか。
  596. 尾津久子

    證人尾津久子君) 先生のいうのには、貧血じやない。十二月に倒れたのは……。
  597. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 十二月のことは別として、その他に二回も三回も倒れたというのは……、そう脳溢血を何回もやつたら体は持たないように思いますが。
  598. 尾津久子

    證人尾津久子君) それはそうですね。それは考えようですけれども……。とにかく二度も三度も倒れたのです。
  599. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 普通の人より非常に血圧が低いのですから、貧血のように思えます。私は專門家じやありませんからわかりませんが……。
  600. 尾津久子

    證人尾津久子君) 先生が大袈裟に言つているのですか何ですか知らないけれども、私たちにはそういうふうに報告して呉れたのです。それがあるのが一番怖かつたのです。
  601. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 話は前に戻りますけれども、野崎さんに会つたときに、野崎さんが、保釈になるように診断書を一つ書いて上げますとか、そういう意味のことをおつしやつたのじやないですか。
  602. 尾津久子

    證人尾津久子君) 聞きません。
  603. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうことをあなたはおつしやいませんでしたか。
  604. 尾津久子

    證人尾津久子君) ええ。
  605. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 少くともあなたに好意を持つているということは考えられますね。
  606. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私は親切にして呉れたと思つています。
  607. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたのさつきのお話から言つたらそうですね。
  608. 尾津久子

    證人尾津久子君) 親切な良い先生だと思いました。あああいうところの人は、ちよつと怖いと思つていたのですけれども、とても良い人だと思いました。
  609. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その前に面識がないのですか。
  610. 尾津久子

    證人尾津久子君) 全然ないです。
  611. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 初めて会つたときに。……
  612. 尾津久子

    證人尾津久子君) ああいうところの人は、なかなかあれですが、実に親切にして呉れたので、有難いと思いました。
  613. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どのくらいの時間話しておりましたか。
  614. 尾津久子

    證人尾津久子君) 立話ですよ。
  615. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どのくらい話して來ましたか。
  616. 尾津久子

    證人尾津久子君) それですから二分か三分じやないでしようか。
  617. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二分や三分で、それだけの話はできないでしよう。
  618. 尾津久子

    證人尾津久子君) それは挨拶を入れたら五分や十分はかかつたでしよう。
  619. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの御主人のことを心配して、仮りにもお医者さんに聞きに行つたのですから、病状を聞くだけにしても、診断書の内容を聞くだけにしても、相当時間がかかると思いますね。
  620. 尾津久子

    證人尾津久子君) 話はそうだけれども、全部入れれば五分や十分はかかつたと思います。
  621. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 相当時間を費さなければ、病状の内容は聞けないでしよう。又あなたも奥さんとしてお聞きになる以上は、御心配の余り聞きに行つたのですから、よろしく一つ頼むと言うことなら簡單でしようけれども、あなたのさつきからのお話を聞いていると、御主人の身を案じて、若しか死んだら大変だと思うから頼みに行つたというのだから、そうすれば尚更根堀り葉堀り聞くまでもなく、向うからも話があるでしようし、あなたも相当の程度までお尋ねになると思いますが、そうすれば二分や三分でできないと思います。そのときの経過を書面に現わしても相当長いものですが、相当長くあなたがおいてになつたように思われるのですが、まあ二分や三分とは考えられないですね。野崎さんのところへ、何か手土産でも持つて行かれたことはありませんか。
  622. 尾津久子

    證人尾津久子君) 行きません。
  623. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは、御主人のこのことに関して、判事さんや檢事さんにお会いになつたことはありませんか。
  624. 尾津久子

    證人尾津久子君) 松本判事さんですか。
  625. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 松本判事さんでも誰でもよろしいが、あなたの御主人の係りの判事さんは三人ありますが、檢事さんにお会いになつたことはありますか。
  626. 尾津久子

    證人尾津久子君) 檢事さんにお願いには参りました。
  627. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは何回ですか。
  628. 尾津久子

    證人尾津久子君) 二回でしたかしら……。
  629. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは何処で。
  630. 尾津久子

    證人尾津久子君) 裁判所で会いました。
  631. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 裁判所の檢事の部室で……。
  632. 尾津久子

    證人尾津久子君) 檢事部室で。
  633. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その時は、誰か立会われましたか。
  634. 尾津久子

    證人尾津久子君) 立会いません。私一人で。
  635. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは釈放のことを頼んだのですか。
  636. 尾津久子

    證人尾津久子君) 一日も早く、何とか御助力を願つて出して頂きたいということです。
  637. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ただそれだけですか。家の事情とか病氣のこととか……。
  638. 尾津久子

    證人尾津久子君) 家庭のことも言いました。
  639. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 病氣や家庭の事情をおつしやつて、一日も早く出して呉れと、こういうふうにおつしやつたわけですね。
  640. 尾津久子

    證人尾津久子君) は。
  641. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 檢事さんは何とおつしやいましたか。
  642. 尾津久子

    證人尾津久子君) とにかく待つて呉れ。とにかく私たちにはできないから待つて呉れということで、あと何もおつしやらないです。
  643. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 釈放はできるともでないともおつしやらないのですね。
  644. 尾津久子

    證人尾津久子君) 言わないです。
  645. 伊藤修

    委員長伊藤修君) とにかく待つて呉れと……。判事さんはどうでした。
  646. 尾津久子

    證人尾津久子君) 判事さんは、私たちは、会うのはちよつと恐ろしかつたですね。ああいう人は偉いから……。とにかく一つ助けて、家の事情も参酌しまして……。そうすると、私の方ではちよつとむずかしいというだけで、あと何もおつしやらなかつたです。
  647. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは誰に会つたのですか。
  648. 尾津久子

    證人尾津久子君) 松本判事さんに。
  649. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何処で。
  650. 尾津久子

    證人尾津久子君) やつぱり裁判所で会いました。
  651. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときも、やはり檢事さんにお願いしたような、同じような意味でお願いしたのですか。
  652. 尾津久子

    證人尾津久子君) は。
  653. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで裁判長は、待つて呉れと言いましたか、何と言いましたか。
  654. 尾津久子

    證人尾津久子君) 待つて呉れとは言わない。ただ、まあ、ちよつとむずかしいからねと、こう言つたきりで、何ともおつしやらなかつた
  655. 伊藤修

    委員長伊藤修君) むずかしいからと……。そのときの感じはどうでした。いけないと思いましたか。
  656. 尾津久子

    證人尾津久子君) いけないと私は思いました。
  657. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 許して貰えそうもないと思つたのですか。
  658. 尾津久子

    證人尾津久子君) え。
  659. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは保釈を申請して何回目くらいですか。
  660. 尾津久子

    證人尾津久子君) 一回しか松本判事さんのところへは行かないです。
  661. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 保釈申請が何回か出しておりますね。それは御存じてしよう。
  662. 尾津久子

    證人尾津久子君) そうですか。
  663. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 七回くらい保釈申請で出ておりますね。
  664. 尾津久子

    證人尾津久子君) そうですか。それは弁護士さんがやつて呉れておりますから……。
  665. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは御存じない。
  666. 尾津久子

    證人尾津久子君) ええ、わからないです。
  667. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 判事さんにお会いになつたのは、保釈になる、執行停止になる……。
  668. 尾津久子

    證人尾津久子君) あれは裁判の半ば頃だと思いました。
  669. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 審理になつて証人になつて後ですね。  あなたは檢事さんにも会い、裁判長にも会い、野崎さんにも会つた。その他に警察なその他の拘置所の関係の人に会いませんでしたか。
  670. 尾津久子

    證人尾津久子君) 会いません。
  671. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 刑務所の人に会つたことはありませんか。
  672. 尾津久子

    證人尾津久子君) ないです。
  673. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 拘置所の人はあなたのところに行つたことはありませんか。
  674. 尾津久子

    證人尾津久子君) ありません。
  675. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 刑務所の人はあなたのところに來たことはありますか。
  676. 尾津久子

    證人尾津久子君) 來ません。
  677. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから警察の人は。
  678. 尾津久子

    證人尾津久子君) 來たことありません。
  679. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの今外のお身内の人でそういう運動をして頼みに行つたような人はないですか。
  680. 尾津久子

    證人尾津久子君) 聞いたことはありません。どういうところでですか。
  681. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 裁判所とか檢事局とか警察とか拘置所とか。
  682. 尾津久子

    證人尾津久子君) ないでしよう。家じやそんな人は。
  683. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 聞いてないですか。
  684. 尾津久子

    證人尾津久子君) ええ。
  685. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御手人が執行停止になることはいつ知つたのですか。
  686. 尾津久子

    證人尾津久子君) そのときに知りました。休憩のときに。
  687. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その日にというと十二日の……。
  688. 尾津久子

    證人尾津久子君) 十二日の休憩だつたのです。
  689. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 十二日の何時頃知つたのですか。
  690. 尾津久子

    證人尾津久子君) そうですね、三時半頃、四時近かつたですね。
  691. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときに執行停止になりましたですね。
  692. 尾津久子

    證人尾津久子君) ええ。
  693. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その執行停止の理由は、ただ單純に簡單に執行停止するのでなくて、條件がこれには付いておるでしよう。
  694. 尾津久子

    證人尾津久子君) それは全然森山先生にお願いしてあるものですから、私は執行停止は先生だけの御努力でやつて頂けたと思つておりました。
  695. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは御助力だが、その執行停止するのに一つの條件が付してあるのだがね。御主人の住居について帝大の病院で住えという條件が付しておるのですが。
  696. 尾津久子

    證人尾津久子君) ええ、付いていました。
  697. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは御存じですね。
  698. 尾津久子

    證人尾津久子君) ええ、それは先生からお伺いました。
  699. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはいつ。
  700. 尾津久子

    證人尾津久子君) その出るときに聞きました。
  701. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 出るときに聞いたんですね。
  702. 尾津久子

    證人尾津久子君) ええ。
  703. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで、なぜ、そのときにあなたのところに泊つたのですか。お宅にお帰りになつたのですか。
  704. 尾津久子

    證人尾津久子君) そのときに、私はよく知りませんが、六時過ぎになると、判事さんが指定した病院らしいですが、それで判事さんのお話では、六時過ぎになると入院できないというんです。私はそれは弁護士さんから聞いたのですが、書類を貰つたりなんかして一應六時過ぎになると……。
  705. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 予め裁判所で何時頃行くということが指定してあるんですから行けそうものですがね。
  706. 尾津久子

    證人尾津久子君) ところが私は六時過ぎになつてはいけないということを聞いたんです。
  707. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どこに住えという條件が付しておるのだから。お宅に帰つてお宅に住うというのは、弁護士さんは何にもおつしやらなかつたですが、病院に泊れという條件が付いていたんでしよう。
  708. 尾津久子

    證人尾津久子君) 六時過ぎになれば病院の方は駄目だから遅くなつたら、家の方へ泊めろということを聞きました。
  709. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは誰が言いました。
  710. 尾津久子

    證人尾津久子君) 確か森山さんに伺つたと思います。
  711. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは裁判所に伺いを立てたんじやないか。
  712. 尾津久子

    證人尾津久子君) 伺つたのではないでしよう。
  713. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 森山さんがそうおつしやつたのですか。
  714. 尾津久子

    證人尾津久子君) ええ。
  715. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 帝大の病院に住えという條件が付いうおるにも拘わらず、夜だから家に帰つて寝てもよいということを裁判所がおつしやつたというのですが、今夜は夜だから帝大の方に入れないから家に寝てもよいと聞いたんですか。
  716. 尾津久子

    證人尾津久子君) そういうふうに聞きました。
  717. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 森山さんからですか。されて上條さんは何といいましたか。上條さんも一諸だつたんでしよう。
  718. 尾津久子

    證人尾津久子君) 上條先生も一諸だつたと思います。先生も一諸だつたと思います。とにかく一諸にみんないるところでそう言つて呉れたのですから……。
  719. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 上條さんもそういうことを聞いておつてつてつたのですか。
  720. 尾津久子

    證人尾津久子君) ええ。
  721. 伊藤修

    委員長伊藤修君) すると何にもおつしやらない。裁判所はそういうことを許したわけですね。裁判所の決定に帝大の病院で住えとなつておりますが、その晩は勝手に家に帰つてもよいということを、こういうことを許したんですか。
  722. 尾津久子

    證人尾津久子君) そうですつて、別に私がぢかに聞いたのではないのですがね。
  723. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはどこで聞きました。
  724. 尾津久子

    證人尾津久子君) 裁判所で聞きました。待つてる間に。
  725. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 裁判所のどこで。
  726. 尾津久子

    證人尾津久子君) 弁護士控室で。
  727. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときに誰と誰に会つたんですか。
  728. 尾津久子

    證人尾津久子君) 上條さんと、森山先生と、書記さんですか、学生さんがいらつしやいました。
  729. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それからうちでは誰がいたかね。
  730. 尾津久子

    證人尾津久子君) 何でも二三いましたよ、うちでは。
  731. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 拘置所に迎えに行つたのは誰と誰ですか。小菅の刑務所に今夜出るというので迎えに行くでしよう。そのときに誰と誰が迎えに行きましたか。
  732. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私が行きました。
  733. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お一人だけ……。
  734. 尾津久子

    證人尾津久子君) うちでは私が一人で、あとは事務所の者、岡戸と松井だとか……それからあとは店員が行きました。
  735. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それだけですか。弁護士さんは行かれなかつたですか。上條さん、森山さんは行かれなかつたですか。
  736. 尾津久子

    證人尾津久子君) 行かなかつたと思います。
  737. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから翌日病院の方へ行かれましたね。
  738. 尾津久子

    證人尾津久子君) 朝早く……。
  739. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 病院へ行かれてから、何で二回も三回も外へ出掛けたんですか。
  740. 尾津久子

    證人尾津久子君) それは私が落度があつたのです。佐々内科の先生があなたは精神病者だから家で寝てばかりいてもよくないから、ああいう所に長くいたのだから、少しく散歩しなければいけないということを本人が言われたので、そこで、ちよつと散歩に行くというので、私もそれは落度があつたのですが、散歩に行くというので、まさか外に行くとは思わなかつたのですが。
  741. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 散歩だけでなく子分衆を集めて宴会をやられたというではないですか。
  742. 尾津久子

    證人尾津久子君) いいえ、そんなことはありません。
  743. 尾津久子

    證人尾津久子君) 何のために出られたか、御存じでしよう。
  744. 尾津久子

    證人尾津久子君) いいえ、散歩に出て、ものの一時間やそこらで帰つて來ました。どこへ行つたと聞いても、ちよつと出て來たといつて何とも言わないのです。
  745. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや、そんなことはないでしよう。三時間ぐらいずつ費しておりますよ。自動車で三時間歩いていますよ。あなたは一時間というけれども、自動車で三時間というと可なりの距離を歩けるわけです。
  746. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私には分りません。
  747. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは今一時間ぐらいと言われたが、尤も待つ身は長いものだからね。
  748. 尾津久子

    證人尾津久子君) まさか外へ行くとは思いませんでした。
  749. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは今散歩に出て行つたというじやありませんか。
  750. 尾津久子

    證人尾津久子君) 自動車で行つたということは知りません。
  751. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 自動車で三時間ぐらい行つたということになつておりますね。
  752. 尾津久子

    證人尾津久子君) だから私の落度だと思います。
  753. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは、あなたも大切な御主人ですから裁判所が堅く禁止しておるのに、相当無理して、相当難儀してその結果出た。それを何故出歩いたか氣が付かなかつたですか。
  754. 尾津久子

    證人尾津久子君) あの主人としてなかなか言うことを聽く人ではないのですから、やはり男のすることをあれするということは、昔から言われておるので注意しませんでした。
  755. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたも注意しなければ、弁護士も注意しなかつた
  756. 尾津久子

    證人尾津久子君) 注意しなかつたのではないのでしようか。
  757. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 注意しても、きかなかつたのですか。
  758. 尾津久子

    證人尾津久子君) その点は私には分らないのですが。
  759. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その日に、出て行つた行き先は分りませんか。
  760. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私は全然知りませんでした。
  761. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 相当出歩いて、酒を飲んで歩いておるように聞いておりますが……。
  762. 尾津久子

    證人尾津久子君) それも分らないのです。
  763. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 病院へ帰つて來たとき酒で醉つぱらつていたという、御主人は大分酒を飲むようですね。
  764. 尾津久子

    證人尾津久子君) 昔は飲みましたが……。帰つて來ると診察をやるのですから、酒を飲んだということをはつきり私に言いませんから、酒を飲んだとは思いません。
  765. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 病院に沢山訪問客があつたそうですね。
  766. 尾津久子

    證人尾津久子君) そうありません。
  767. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 病院の方に沢山あつたということですね。
  768. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私の知つて範囲ではそう沢山ありません。
  769. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一日附き添つているのですね。
  770. 尾津久子

    證人尾津久子君) うち事務の者だけは來ておりました。段々事業が駄目になつて來ました、差押や何かで、それですから事務の者が一人二人來ました。
  771. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一日どれくらい來ましたか、事務のそういう者を混ぜて……。
  772. 尾津久子

    證人尾津久子君) 事務の者が毎日三人ずつ來ておりました。お見舞に來て呉れた人もありますが、來客は精々三人か四人で、十人と來たことはありません。
  773. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一日五、六人ですね。沢山どしどし押し掛けておるように聞いておりますが……。
  774. 尾津久子

    證人尾津久子君) そう來ません。長く喋つておりますから……。
  775. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは数に入りませんね。そう沢山訪問客はなかつたのですか。
  776. 尾津久子

    證人尾津久子君) はあ。
  777. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは一々接待しておつたのですね。そこでお酒など出すのではないのですか。
  778. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私、酒など出しません。病院ですから、出す所でないのですから……。
  779. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 飲めんという規則はないでしよう。
  780. 尾津久子

    證人尾津久子君) いえ、そういうことはありません。
  781. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御主人がお帰りになつてから訪問された弁護士は、どなたとどなたですか。
  782. 尾津久子

    證人尾津久子君) 執行停止で帰つて來たときですか。
  783. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 帰つて來てから九月十八日までに会われた弁護士の方は……。
  784. 尾津久子

    證人尾津久子君) 弁護士さんは上條先生一人でした。
  785. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 元林さん、森山さんは見えない……。
  786. 尾津久子

    證人尾津久子君) 誰も來ません。
  787. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 上條さんが見えまして、今度の執行停止については隨分骨を折つたということをおつしやいませんでしたか。そういう話はなかつたのですか。
  788. 尾津久子

    證人尾津久子君) そんな話はなかつたような氣がします。
  789. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 執行停止について、いろいろこういう努力をしたというお話はなかつたのですか。
  790. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私そのとき聞いておりませんでした。私も実は工合が悪くて、安心したのでしようか、実は病氣しておりまして、病院でずつと治療しておりました、一緒に……。
  791. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 普通出て見れば、執行停止についていろいろ努力したことをお話がある筈ですね。それはお聞きにならなかつたのですか。
  792. 尾津久子

    證人尾津久子君) それは私ちよつとも聞いておりませんでした。
  793. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か特別の方法を取つたという話を聞いておりませんですか。
  794. 尾津久子

    證人尾津久子君) 別に聞いておりません。
  795. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 上條さんは何回ぐらい見えたのですか。
  796. 尾津久子

    證人尾津久子君) 一回です。五日しか入つていないのですから、幾日もおいでになる筈がない……。
  797. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一回見えたときに、そういう話もなかつたのですか。
  798. 尾津久子

    證人尾津久子君) 聞いておりません。
  799. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 土條さんが見えたときの話は……。
  800. 尾津久子

    證人尾津久子君) お礼は申しました。いろいろ有難うございましたと。
  801. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それ以外に見えたのではないですか。
  802. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私は炊事も一切やつておりましたし、自分も治療に参つたりしておつたので、失礼して、ちよつといなかつたのです。
  803. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 上條さんがお帰りになる頃、あなたは挨拶されたのですか。
  804. 尾津久子

    證人尾津久子君) 確か挨拶しました。
  805. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その間どれくらいですか……。どれくらい見えたのですか。
  806. 尾津久子

    證人尾津久子君) どのくらいでしようかね――。一時間か一時間半くらいか、もつといたかしら、よく分らないのですが。
  807. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ一時間半くらいいた……。
  808. 尾津久子

    證人尾津久子君) いたような氣がしますけれど……。
  809. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 病院ですから勿論藥や何か飲んでいますね。
  810. 尾津久子

    證人尾津久子君) 変な液を取つております、胃潰瘍で……、いろいろな藥を頂いて、私レントゲンも撮りました。
  811. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときの模樣は、相当体がいいような調子でしたか。
  812. 尾津久子

    證人尾津久子君) 先生のおつしやるには、相当体が衰弱していますと言つていましたが、液を一回取つた明くる日、又持つて行かれたのです。檢査をしない中に持つて行かれたのです。氣があるとか確かに言つていました。はつきりしたことはまず見えないが、ただ外の診断だけではちよつと分らないと言うんです。でも精神の方では確かに精神病者だと言つていました。
  813. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 精神病者ということは、誰も言つていませんね。
  814. 尾津久子

    證人尾津久子君) 佐々内科の人は言つておりました。
  815. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 脳溢血か脳貧血で大分体が狂つて……。
  816. 尾津久子

    證人尾津久子君) 頭が少し狂つて來たと言つていました。長くああいうところへ入つていると、そういうことになるらしいですね。
  817. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 話は変りますが、あなたの御主人は政治に関係してますか。
  818. 尾津久子

    證人尾津久子君) 政治というと何ですか。
  819. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 俗に政治といつておりますが、代議士にお立ちになりましたか。
  820. 尾津久子

    證人尾津久子君) 立ちました。
  821. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 自由党か何かで、代議士にお立ちになつたのですね。そういう政治のことに御関係になつたことがないのですか。
  822. 尾津久子

    證人尾津久子君) ないのです。ただ自分はどうして選挙に立つたかということが分らずに、尾津さんが出れば投票が取れるだろうということで、やつたのではないのですか。私もちよつと、そういうことは分らないのです。
  823. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 政治をやる偉い人にお附合いがあつて、そういう関係から代議士にお立ちになつたのではないのですか。
  824. 尾津久子

    證人尾津久子君) さあ、それは分らないのです。
  825. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの新聞をお読みになるでしよう。日本の政治家で相当名前の知れた人がありますね。そういう人とお附合いはあるのですか。
  826. 尾津久子

    證人尾津久子君) 家へ見えたこともないし主人はそういう話もしないので知らないのです。
  827. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 併し、夜でもお宅へお帰りになつたときに、今日は誰それに会つたことか……。
  828. 尾津久子

    證人尾津久子君) 家の主人は、遊びに行つても絶対に言わないのです。風変りですから。
  829. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 隱れて遊ぶときは別人として、表向きのときは……。
  830. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私にそういう男のすることは、絶対に話をしなしので、私も聽きませんし、本人も何も言いません。
  831. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういう政治家とお附合いがあるということは、御存じないわけですね。
  832. 尾津久子

    證人尾津久子君) 知らないです。
  833. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この保釈の関係で、先にもお訊ねしましたが、政治家の偉い人にいろいろお頼みになつたようなことはないのですか。
  834. 尾津久子

    證人尾津久子君) 何をですか。
  835. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 執行停止、保釈の問題で、政治家の人にお頼みになつたことはないですか。
  836. 尾津久子

    證人尾津久子君) 知らないです。そういうわけを私が知らないから。
  837. 伊藤修

    委員長伊藤修君) さつき何も頼んでいないとおつしやつたが、念のためにここでもう一偏きいておきますが。
  838. 尾津久子

    證人尾津久子君) 知らないです。
  839. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御主人の裁判の時に、身内の人か、子分の人か、或いは店員か知りませんが、御主人関係のある人が傍聽に沢山來ますか。
  840. 尾津久子

    證人尾津久子君) 來ません。
  841. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いつもどれくらい。
  842. 尾津久子

    證人尾津久子君) 家の連中としては今まで岡戸さん達が入つている。自分は別として……。その前には岡戸さんだとか事務の者しか來ないです。店員とか、そういう者は全然來ないです。ただ名前が知れているから、知らない人がどんどんと入つて來ますが。
  843. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは裁判に始終傍聽に行かれますね。そのときに庄司という証人を調べましたね。そのとき御主人が椅子を振り上げて毆ろうとしたことがありますね。
  844. 尾津久子

    證人尾津久子君) 椅子は振り上げません。
  845. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 相当毆り掛けそうな氣勢を示したことはありませんですか。
  846. 尾津久子

    證人尾津久子君) ただ昂奮をしたといだけで、どういうふうにしたか、かつとしてひよつと立つたのです。こう持つてすつと立つたのが、主人が振り上げたように……。
  847. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 振上げようと意氣込んでいたのですか。
  848. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私共は性質をよく知つておりますが、かつとしてひよつと取つてこう立つたのですから、それを知らない人は持つて振り上げると思つたのではないかと思います。
  849. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうことで非常に証人の人や裁判所を怖がらしたような氣持はありませんか。
  850. 尾津久子

    證人尾津久子君) まあ知らない人はびつくりしたでしようね。
  851. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 裁判所が怖がるようなことはないですか。
  852. 尾津久子

    證人尾津久子君) 誰がですか。
  853. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうような乱暴をするものだから、音に聞く乱暴な人じやないかと思うのではないでしようか。法廷で……。
  854. 尾津久子

    證人尾津久子君) 知つている人はそう恐ろしがらないでしようけれども。知らない人は尾津さんという人は怖い人だと思うでしよう。
  855. 伊藤修

    委員長伊藤修君) つまり身内の人も立上つたのですか。
  856. 尾津久子

    證人尾津久子君) 身内の人は立上りません。
  857. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二、三人の人が立上つたのでしよう。
  858. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私が止めたのです。まあ靜かにして呉れと……眞後におりましたから……。
  859. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの御主人はこの事件が起つてから、身内の人に、まあ指令というか、諭したしいうか、どういう言葉言つてよいか分らんが、身内の人に、兎に角たださえ恐れられておるから、事件関係者に暴力を加えてはいけないということを言うたことがないですか。
  860. 尾津久子

    證人尾津久子君) あの中に入つていてですか。
  861. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ええ。
  862. 尾津久子

    證人尾津久子君) そんなことは言いません。
  863. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうことをあなたに注意するように言い付けたことがありませんか。
  864. 尾津久子

    證人尾津久子君) そういうふうなことはないです。
  865. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたはそういうことを身内の人に言つたことはないですか。
  866. 尾津久子

    證人尾津久子君) ないです。
  867. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 岡戸さんは言うたことはないですか。
  868. 尾津久子

    證人尾津久子君) さあ、それは私分らないです。家の主人は暴力を振うというような人じやありませんけれども……。
  869. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは一番初めにおつしやつたのですけれども、そういうようなことを、いわゆる暴力を以て訴訟の関係者を怖がらせるというようなことをするのじやないということを言うたことはありませんか。
  870. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私が一番信じているわけですから……よく性格は分つているのです。長年、五年でも六年でも一緒になつているのですから……。
  871. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 証人にお尋ねになる方は……。
  872. 小川友三

    ○小川友三君 委員ちよつと……。
  873. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういう点ですか。
  874. 小川友三

    ○小川友三君 申告いたしました。
  875. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 申告はしてありますけれども、どういう点ですか。
  876. 小川友三

    ○小川友三君 非常に氣が短かい、かつとするというような行動を取られるということを承つておりますし、又法廷でも一回そういうことがあつた。それは今奥さんも言われた通り精神に云々ということがありましたが、昔、性病を患つたことがあるかどうか、性病のワツセルマン氏反應をやつたかどうかということをお伺いしたいと思います。それから胃潰瘍であるか。それから血圧が低いという原因が、軽症の初期の瘤がどこかにできているのじやないかということを伺いたいのです。それで瘤に対する心配から、レントゲンで調査したことがあるかどうかということをお伺いしたい。
  877. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは記録にありますから、明日の証人でその点は明かになりますから、奥さんにお訊きすることはちよつとよくないでしよう。
  878. 小川友三

    ○小川友三君 それでは脳溢血をやつたというが、耳は遠いか、いくらか視力が衰えているか、或いは震えが來る程度か、半身不随の症状であるか…。
  879. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうことは医学の專門ですから、医者が五、六人來ますから、あなたの蘊畜を傾れて医者に聞いて頂きたいと思いますが、それでいいでしよう。
  880. 星野芳樹

    ○星野芳樹君 ちよつと一言伺いますが、尾津さんは家に毎日お帰りになりましたか、お帰りにならないことが多いですか。
  881. 尾津久子

    證人尾津久子君) 家にいない方が多いです。
  882. 星野芳樹

    ○星野芳樹君 夜お帰りにならいな方が多いですか。
  883. 尾津久子

    證人尾津久子君) 夜も盡間もいない方が多いです。忙しい体ですから……。
  884. 星野芳樹

    ○星野芳樹君 よそへお泊りになることが多いわけですね。
  885. 尾津久子

    證人尾津久子君) そこにはいろいろありますから……。
  886. 星野芳樹

    ○星野芳樹君 一月の中、幾日くらい外に泊ることがありますか。
  887. 尾津久子

    證人尾津久子君) 半々としたら間違いないです。
  888. 星野芳樹

    ○星野芳樹君 帰らないときどこへお泊りかあなた分つておりますか。
  889. 尾津久子

    證人尾津久子君) 分つております。
  890. 星野芳樹

    ○星野芳樹君 そうすると、朝用事があるとか、晩用事があるとかいえば、すぐ連絡が取れるようになつておりますか。
  891. 尾津久子

    證人尾津久子君) はあ、連絡が取れるようになつております。
  892. 中村正雄

    ○中村正雄君 ちよつとお伺いしますが、日比谷の陶々亭で元林さんと会つておられますね。
  893. 尾津久子

    證人尾津久子君) はあ。
  894. 中村正雄

    ○中村正雄君 その翌日御主人に面会に行かれましたか。
  895. 尾津久子

    證人尾津久子君) たしか翌日だと思います。
  896. 中村正雄

    ○中村正雄君 そのときに御主人に対して、元林さんから大体百万円くらいの金が要るだろうというようなことを言われなかつたですか。
  897. 尾津久子

    證人尾津久子君) 金のことは聞いておりません。莫大な金が要るらしいということは話しましたが‥‥。
  898. 中村正雄

    ○中村正雄君 もう一つは、執行停止になりまして、病院に入つておられましたね。そのときあなたは一緒つたでしよう。
  899. 尾津久子

    證人尾津久子君) はあ。
  900. 中村正雄

    ○中村正雄君 そのときの御主人とのお話の中に、執行停止になつて出て來たが、こういう人が非常に盡力して呉れたから出られたというようなことを話したことはないですか。
  901. 尾津久子

    證人尾津久子君) 私にですか。
  902. 中村正雄

    ○中村正雄君 あなたに御主人が話をしなかつたですか。こういう人の盡力によつて出られたのだということをあなたに言わなかつたですか。
  903. 尾津久子

    證人尾津久子君) 別に言いません。
  904. 中村正雄

    ○中村正雄君 病院におるときに、あなたとの関係なんですが、自分は今執行停止で出て來ておるが、大体このくらいの刑になるだろうという見込を御主人は言わなかつたですか。
  905. 尾津久子

    證人尾津久子君) 丁度執行停止の日に三年の求刑が出ました。ですから自分はもう諦めていました。
  906. 中村正雄

    ○中村正雄君 刑についての見込は何も奥さんに話をしなかつたですか。
  907. 尾津久子

    證人尾津久子君) 何もしないです。
  908. 中村正雄

    ○中村正雄君 それから元林さんのことについて、病院におるときにあなたに何も話さなかつたですか。
  909. 尾津久子

    證人尾津久子君) しないです。
  910. 中村正雄

    ○中村正雄君 それから、もう一つ、松本裁判長のことについて何も話さなかつたですか。
  911. 尾津久子

    證人尾津久子君) 主人がですか。
  912. 中村正雄

    ○中村正雄君 ええ。
  913. 尾津久子

    證人尾津久子君) 別に聞きません。
  914. 中村正雄

    ○中村正雄君 それから上條さんが一回病院においでになつておりますね。そのときに御主人上條さんとの間で謝礼金その他の金銭の授受はなかつたですか。
  915. 尾津久子

    證人尾津久子君) さあ、そのとき私丁度治療に行つていて、ちよつと分らなかつたです。
  916. 中村正雄

    ○中村正雄君 どういう話をなさつた御存じないですか。
  917. 尾津久子

    證人尾津久子君) お礼は私申上げましたけれども、主人と話していたことは、どういう話だかはつきりしないです。
  918. 中村正雄

    ○中村正雄君 結構です。
  919. 伊藤修

    委員長伊藤修君) もう一つお尋ねしますが、事務所の会計をやつておる人のお名前は何と仰しやるのですか。
  920. 尾津久子

    證人尾津久子君) 眞対民治。
  921. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その人が会計の主任ですね。
  922. 尾津久子

    證人尾津久子君) していたのです。今度はやはり拘置所に入りまして、保釈で出ておりますけれども、今は全然関係していないです。
  923. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その当時は会計をやつておられたのですね。
  924. 尾津久子

    證人尾津久子君) そうです。
  925. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今どこにおいでになりますか。
  926. 尾津久子

    證人尾津久子君) 新町にいると言いましたけれども………。
  927. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どこの新町ですか。
  928. 尾津久子

    證人尾津久子君) 角筈……よく新町新町というのですけれども、私行つたことないです。
  929. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 淀橋の角筈の新町という所に……。
  930. 尾津久子

    證人尾津久子君) 京王電車に新町という停留所が昔ありました。その近所です。
  931. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 自分で一家を持つているのですか。それともどこかよそへ同居しているのですか。
  932. 尾津久子

    證人尾津久子君) 同居していません。
  933. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 自分の家ですか。
  934. 尾津久子

    證人尾津久子君) ええ。今度保釈になつてつて、どうしているか私知りませんけれども……。
  935. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 保釈中の人ですね。
  936. 尾津久子

    證人尾津久子君) はあ。
  937. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どうも御苦労樣でございました。  お疲れさまでした。それでは引続いて、御承知の通り僞証の点がありますから。
  938. 上條貢

    證人上條貢君) 承知いたしました。
  939. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お年はいくつですか。
  940. 上條貢

    證人上條貢君) 五十五歳であります。
  941. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 学校はどこをお出ですか。
  942. 上條貢

    證人上條貢君) 最後には日本大学法文学部法律科を卒業いたしました。
  943. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 弁護士はいつから。
  944. 上條貢

    證人上條貢君) 弁護士は、昭和三年から引続き今日までいたしております。
  945. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君とお知合いになつたことを簡單にお述べ願います。
  946. 上條貢

    證人上條貢君) 五、六年前だと思いますが、まだ尾津君が十年の刑を終えて出て來て間もないことだと承知いたしております。丁度そのころ民政党の院外団で、私共が面倒を見ておつた塩野英五郎というのがありまして、実は尾津氏が中野へ恐喝の嫌疑で入つておるが、一度警察行つて、一つ実情はこういうわけだから、話して貰いたいということで参りまして、その内容がはつきりいたしておりましたので、それで尾津氏が出されたのを非常に徳として、その後何かの事件等については私の所に依頼するようになつたのが一番最初のことであります。
  947. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう事件以外の御交際関係はおありになるのですか。
  948. 上條貢

    證人上條貢君) 事件以外は別に深くございません。
  949. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 顧問弁護士をおやりになつたことはありませんか、
  950. 上條貢

    證人上條貢君) 私のはただ用事がある時に相談を受けるというので、更めて顧問弁護士というような恰好にはなつておりません。從つて顧問料などを曾て受けたこともございません。
  951. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 俗に言ううち顧問弁護士だと、こういう程度ですか。
  952. 上條貢

    證人上條貢君) 若しそういうふうに言えば或いはそういうふうに、何かあれば私の所へ、事件とかその外あれば言つて來ましたから、或いは本人はそんなふうに考えておつたかも知れませんが、そう深い、毎月行つてどうこうということでなしに、何か話のあるとき……場合によれば一年も行かないこともありました。そんな程度でありました。
  953. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 終戰以後は、特に今の程度の顧問弁護士として御関係であつたように聞いておりますが。
  954. 上條貢

    證人上條貢君) はあ、その通りであります。
  955. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたのお知りになる程度において尾津君の経歴はどんな点が御存じですか、それをお述べ願いたいのです。
  956. 上條貢

    證人上條貢君) 簡單に申しますと、前科が三犯か四犯あつたと思います。そうして最後が確か十三年の刑期のところを、十年で仮出嶽をして参りました。そうして新宿に居を定めてああいうふうな仕事に入つたと承知いたしております。
  957. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 香具師仲間におけるところの尾津君の地位というか、勢力といいますか、それはどういうものでしようか。
  958. 上條貢

    證人上條貢君) 終戰後でありましたが、東京露商組合というのができまして、その時にいろいろの経緯はあつたようでありますが、結局尾津氏が東京露商組合の理事長になつたと記憶いたしております。
  959. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、それが俗に言う尾津組というのですか。それは尾津組とは違う関係ですか。
  960. 上條貢

    證人上條貢君) 尾津組はその中の一分子で、沢山何々組何々組というのがあつて、その東京中のいわゆる露商の集りの中の理事長になつたと承知いたしております。
  961. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津氏は終戰後相当財産を作つたと聞いておりますが、どのくらいですか。
  962. 上條貢

    證人上條貢君) 尾津氏はなかなか宣傳が上手でありまして、世の中には何十億持つておるというようなことを言われましたが、私が事件を通じて見たところでは、現金なんかはそうなかつたように見ております。世の中に言う程金を持つておりませんでした。
  963. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 事業関係とか、動産、不動産とか、そういうような、いわゆる商品ですかね、そういうのを持つておるのではないのですか。
  964. 上條貢

    證人上條貢君) それもやはり手形などで買いましたり、いろいろいたしておつたのでありますから、まあ主なのは新宿マーケツトでありますが、その他には大したものを持つておらなかつたというふうに、私は財政的に内面には立ち入つておりませんから分りませんが、いろいろの実情から想像して見て、大したことはなかつたというふうに考えております。
  965. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、あなたのお知りになる範囲におきましては、どのくらい持つておると御推定ですか。
  966. 上條貢

    證人上條貢君) どうも財産のことでちよつとどのくらいということは申上げかねます。
  967. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何百万円とか何千万円とか、何億というような程度でもよろしいのですがね。
  968. 上條貢

    證人上條貢君) 曾て民事事件の代理人をいたしました時に、尾津氏の持つておるのは誰か新宿マーケツトが一番中心のものであつたと思います。相手方の弁護士から、あれについて二千五百万円のいわゆる損害を出せと言われてびつくりしたことがありました。私の知つておる範囲では、新宿マーケツトのあの建物と、あの当時の價格にして先ずそころが対價ではなかつたかというふうに考えております。
  969. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 民事事件の方では、そのマーケツトの建物を無償で讓渡してしまうというようなことも出ておりますね。
  970. 上條貢

    證人上條貢君) さようでございます。
  971. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その示談方式として。
  972. 上條貢

    證人上條貢君) はあ。
  973. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 無償で讓渡しても、尚且つ自分より以上の財産があるというふうに考えられますね。仮にそれだけといたしますれば、全財産を只やつてしまうということは考えられませんですね。
  974. 上條貢

    證人上條貢君) ただ何といいますか、非常に宣傳を上手にやるので、方々に金を作ることが上手であつたと思います。それでお話の通り、あの財産だけとは私も考えておりませんが、本人があちらの方に入つてつて、今なんかやはり生活に困り、外のに拂うのに窮しておるようでありますので、その外にどういう財産を持つておりましたか、私は詳しいことは存じません。
  975. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ要するに尾津君のいわゆる持つておる香具師仲間の勢力と、尾津君の持つておる厖大な財産とか、その組合せによつて相当なることがなし得るというふうに考えられるのですか。
  976. 上條貢

    證人上條貢君) どうも私は最初からずつとこう見て來ておりますが、みんな世の中の人が……非常にあの人が座談がうまくて、それから非常に大きな仕事を、こういう計画だ、ああいう計画だというふうにやりまして、そうして金を脇から作つて來ることは非常に上手だつたと思いますが、先程申し上げましたように、財産の全体というものは、実は私にもはつきり分りません。
  977. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 例えば尾津君が、仮に新宿なら新宿一円を自分の勢力範囲に置く。そこにあるところのものは、自分のものにしてしまうとかというような、暴力と金銭の力、財力と二つで尾津君の意のままになるというようなことは考えられませんか、そこまではないのですか。
  978. 上條貢

    證人上條貢君) そこまではなかつたと思いますが……。
  979. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 或る程度までは尾津君の財力というものと、尾津君の勢力というものが、そういう面で相当な力を持つのではないでしようか。
  980. 上條貢

    證人上條貢君) お説のように、確かにそういう面もあつたと思います。
  981. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのことは、尾津君の……警察とか、或いは各官廳とか、或いは有力者に対して、やはり同様な方向に近付けるものじやないですか。
  982. 上條貢

    證人上條貢君) 別の方からお答えいたしますと、誰に会つても非常な押しの強い行き方をしております。それでいろいろの問題が起つても、自分が押しを強くして解決して來るというふうにやつておりましたから、勢力が強いようなふうに見られておつたというように見られておつたものと思います。
  983. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君の個人の力でなくして、個人の後ろにあるところの香具師仲間の偉大な勢力、これを背景となし、且し尾津君の財力というものに物を言わせて、この両面から何事尾津君の意のままになるというような傾向にあるのではないですか。
  984. 上條貢

    證人上條貢君) そこまでは來ておらなかつたと思います。
  985. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君はどうして財産を作つたかということは御承知ありませんか。
  986. 上條貢

    證人上條貢君) 私の知つておる範囲では、新宿マーケツト相当品物が賣れたのと、地方から品物を持つて來貰つたのが、あの終戰直後で品物のない時期でありましたから、相当儲かつたのでと考えております。
  987. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると地道の手段で金を作つたと、こういうわけですか。
  988. 上條貢

    證人上條貢君) 地道とは言えないと思います。民事事件にも関係しましたが、いろいろあの土地等にも問題がございましたし、やはりああいう時期に、皆が世の中の行く末がどういうふうになるか分らないような時に、思い切つたことをやつたというようなことが、今と時期が違つて儲かつたことだと考えております。
  989. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 終戰のどさくさに乘じて、大胆に事業を遂行して儲けたという意味と、そうでなくして、相当組織の側に物を言わせて、そうして作つたのと、二通りありますがね。
  990. 上條貢

    證人上條貢君) はあ、そう考えます。
  991. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 両方でできたわけですか。
  992. 上條貢

    證人上條貢君) はあ。
  993. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君はいわゆる街の顔役として非常に知られておるということは御承知ですな。
  994. 上條貢

    證人上條貢君) 承知いたしております。
  995. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いわゆる街の顔役、あの方面で街の顔役というのは、どういう方面から言うのですか。
  996. 上條貢

    證人上條貢君) 結局やはり露店子分があつて、その方で手廣くやつておりましたために、顔役に皆から見られて來ておつたと思います。
  997. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ子分が多い、そうしてそれらの子分が腕力だとか、そういうものに物を言わして、相当な圧力を加えるという、それを自分の意のままに使用できる、而して自分の欲することを必ず実現せしめると、そういうような意味を持ちのじやないでしようか。
  998. 上條貢

    證人上條貢君) 御承知のようになかなか親分子分関係は非常に強いものでありますが、やはり親分になつて、その子分の者が親分のためにやるというのは、確かに一つの力だつたと思います。
  999. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君はどのくらい子分を持つていますか。
  1000. 上條貢

    證人上條貢君) 正確にその点分りません。
  1001. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 相当沢山持つているのですか。
  1002. 上條貢

    證人上條貢君) ただああいう社会には兄弟分というのがあります。伯父分だとか甥分だとかいうものがあるようでありまして、從つて尾津氏自身が直接に率いている者は、私共その内容はよく分りませんが、そう大したものでないと思います。やはりその兄弟分だとかなんとかいうような、古くから盃合いをしたというような者が、やはり新宿から杉並、中野というような方面にかけて相当つたから、それが尾津氏の勢力になつてつたのじやないかと考えております。
  1003. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いわゆる尾津君の兄弟分なり伯父分なりという者の中で、あなたが御存じのがありますですか。
  1004. 上條貢

    證人上條貢君) 承知している者ですか……例えばあすこにおります和田組というのがある。それから野原組という中野におる人があります。それから浅草の方で甲州家などもやはり親しくしていた仲間だと思つております。その他小さなのはありましようが、一々私承知しておりません。
  1005. 伊藤修

    委員長伊藤修君) なにか関東に大きな親分がありましたですね。尾津君の出ている親分はなんというのですか。
  1006. 上條貢

    證人上條貢君) もう一度おつしやつて頂きたいと思います。
  1007. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君の親分ですね。何々一家とこう申しますね。尾津君がどこから出たということをよく言いますですね。それはどういう家から出たのですか。
  1008. 上條貢

    證人上條貢君) 裁判の法廷で聞いたのですが、飯島一家というものから分れたということを聞いております。
  1009. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 飯島一家では相当よいところなんですね。
  1010. 上條貢

    證人上條貢君) よいところだと思います。
  1011. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると飯島一家というものは相当の勢力を持つているわけですね。
  1012. 上條貢

    證人上條貢君) あれはやはりその時の流れで浮沈がありまして、確か飯島一家の本家は上野にあると思います。けれども尾津氏がああいうふうに世の中へこう出て参りまして、それと比べて見ると、そのずつと正流を受けておる者も大したところには今おらないようなふうに聞いております。
  1013. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると飯島一家のいわゆる親分子分の盃は皆しておるわけですね。
  1014. 上條貢

    證人上條貢君) そうでございます。
  1015. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 現在の尾津君の直接の子分というものは少いけれども、それらの盃兄弟ですね。その勢力というものが尾津君の背景をなすわけですね。
  1016. 上條貢

    證人上條貢君) そう考えております。
  1017. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうような背景を持つて、いわゆる警察とか官廳とかに相当威力が行使できるのじやないですかね。いわゆる顏に物を言わせることができるのじやないでしようかね。
  1018. 上條貢

    證人上條貢君) どうも今の時勢にはそれはまあ全然顏がきかないというふうにも考えませんが、やはり警察なり警視廳なんというものは、やはりその顏だけではなかなか通らないというふうに私は見ております。
  1019. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本件、尾津君の摘発は、所轄の警察ではできなかつたのじやないのでしようか。
  1020. 上條貢

    證人上條貢君) そんなことはないと思います。
  1021. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 警視廳が直接やつたのではないのですか。
  1022. 上條貢

    證人上條貢君) あの尾津氏の……。
  1023. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今度の事件ですね。
  1024. 上條貢

    證人上條貢君) 拘引でございますか。
  1025. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 拘引、捜査、摘発ですね。あれは所轄警察ではようなし得なかつたのではないのですか。
  1026. 上條貢

    證人上條貢君) 本廳の方でなして所轄署が應援いたしております。
  1027. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 指導力は警視廳本廳にあつたわけですね。
  1028. 上條貢

    證人上條貢君) 当時の処置はそうでありました。
  1029. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあそういうところから見て、尾津君の勢力というものが土地で相当のものであつたということは窺えるように思うのですが、どうでしようかね。
  1030. 上條貢

    證人上條貢君) それはそうばかりでもないと思いますが。やはり都内の相当多人数の者を率いるような点、或いは相当反抗するというようなのは、多くはやはり本廳の方から行くことが多いようなふうに私共承知しております。
  1031. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今度の尾津君の事件を最初にお聽きになつたの事件直後ですか、事件前からうすうす御存知だつたのですか。
  1032. 上條貢

    證人上條貢君) 事件は、私は両方ありまして混乱しております。お尋ねの点は刑事事件でしようか。
  1033. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 刑事事件……。
  1034. 上條貢

    證人上條貢君) 刑事事件後であります。前には全然承知いたしておりません。
  1035. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 俗に檢挙される以前に、そういうような氣ぶりがあつたのじやないですか。
  1036. 上條貢

    證人上條貢君) ちよつと誤解いたしましたが、あれは拘引される前に警視廳に何回も、任意出頭で何回も取調べがありました。從つてその取調べのことは私は聽いて承知しております。
  1037. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その取調べの模樣から言つて、檢挙せられるのだというようなことは予期し得る程度であつたのじやないでしようか。
  1038. 上條貢

    證人上條貢君) それは本人は非常にそこのところ軽く見ておりまして、私共に会つて事件は大部分明確になつて來たというので、本人も本廳の方から参りましたのは突然でびつくりしたように私共見ております。
  1039. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この刑事事件の本件を現わす民事事件をあなたはおやりですね。
  1040. 上條貢

    證人上條貢君) 私いたしております。
  1041. 伊藤修

    委員長伊藤修君) であるから事件に対する概括はよく掴みになつたと思います。そういう点に相当危險性を持つてつたのじやないでしようか。
  1042. 上條貢

    證人上條貢君) 実は当初起訴されましたのは私共は無罪を確信いたして、弁護士団は無罪の弁論をいたしたわけであります。民事の事件の方も非常に爭いの多いところでありまして、相手方は不法行爲で、建物と土地の明渡しを求めて参りました。私共は善意の事務管理であるということで法律上闘つて参りましたので、何れが勝つか何れが負けるかということについて、私はそう簡單に負けるものでないというふうに、私ほか数名の弁護士は携わつておりました。
  1043. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 檢挙せられるまでは法律家の立場として、そう本人が檢挙せられるものであるという危惧は抱いていなかつたのでありますね。
  1044. 上條貢

    證人上條貢君) さようでございます。
  1045. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 檢挙されたのは意外であつたという感じでありますか。
  1046. 上條貢

    證人上條貢君) さようでございます。
  1047. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 檢挙されまして、この事件についていつ依頼がありましたか。
  1048. 上條貢

    證人上條貢君) 檢挙されましたのは私の記憶では昭和二十二年の六月の下旬だと思つております。
  1049. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二十六、七日頃ですね。
  1050. 上條貢

    證人上條貢君) はい。それでその直後に弁護の委任を受けたように記憶いたしております。
  1051. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは誰から依頼を受けましたか。
  1052. 上條貢

    證人上條貢君) それは本人からだつたと記憶いたしております。
  1053. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 奥さんがお頼みになつたのじやないですか。
  1054. 上條貢

    證人上條貢君) その点はつきりいたしません。
  1055. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本人とすると本人は拘引されておりますね。拘引前に檢挙されたら弁護を頼むという、こういう依頼でありますか。
  1056. 上條貢

    證人上條貢君) いいえ、そうでありません。御承知のように弁護士は被告人に接見に參りますから、御承知でもございましようが、その時に弁護人届をとつて、それが正確に受任を受けたということになるのでありまして、確かに尾津氏に会つて、そうしてやつたと思いますが、その点はつきりいたしません。
  1057. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 弁護届けだけは警察でお取りになつたのですか。
  1058. 上條貢

    證人上條貢君) 確かそうだつたと思います。
  1059. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 奥さんからお取りになつたのじやありますせんか。
  1060. 上條貢

    證人上條貢君) 全然未知の人から依頼を受けるような場合は、その点ははつきりしておりますせんが、民事の方の関係もありますので、その点明確にお答えができないのであります。
  1061. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 奥さんの御言葉つたのですね。
  1062. 上條貢

    證人上條貢君) はあ。
  1063. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 奧さんがあなたにお願いしたのは一日も早く帰して貰いたい。保釈して貰いたい。事件そのものよりも保釈の方を主点に置いて貴方にお願いしたのじやないでしようか。
  1064. 上條貢

    證人上條貢君) そういうこともあつたと思いますが、刑事をやつておりますと、何ぴとも、五十人頼めば四十何人までは早く出して貰いたいと言うのが皆の希望でありますので、やはりその時も早く出して貰はなければ困るというようなお話が確かにあつたと思つております。
  1065. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 奧さんから保釈について事件よりも先ず身柄を先に出して貰いたいという特段の依頼があつたのじやありませんか。
  1066. 上條貢

    證人上條貢君) はつきりその点は記憶いたしません。
  1067. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 失礼ですが、受任なさつた報酬関係はどうですか。
  1068. 上條貢

    證人上條貢君) 実は私は外の事件については、最初に契約書を頂載いたしまして、民事で言えば著手金、刑事で言えば弁護料実費等正当報酬として、明確に最初書いて頂いて、受任を受けるのであります。これは民事関係もありいたしまして、著手金がいくらとか、報酬がいくらかということは明確に決めずにいたしたと記憶いたしております。
  1069. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 民事事件以來、金銭の授受は約どのくらいあつたのですか。
  1070. 上條貢

    證人上條貢君) 正確な記憶はございませんが、凡その点で、いくらか喰違いがあるかも知れませんが、民事の方では、私の外の方の弁護士にも依頼して頂きたいということで吉田久博士、佐久間さん、それから鈴木さん、團野弁護士、私のところにおる高木弁護士と私で、最初明確でありませんが、確か三万円だか持つてお出でになつた。そうして外の方に確か五千円ぐらいずつ差上げたというふうに記憶いたしております。それからお盆の時に各弁護士に五千円程度お出しになつたと思います。そうして最後の時にああいう大きな事件でありましたので、他の弁護士の方は相当の報酬を御希望になつてつたような向きでありますが、結局一万円ずつしか出さないということであり、而もそれが民事の方の解決がついたのは九月の終り頃でありまして、何回催促しても持つて参りませんし、私は先輩に依頼をして、催促を受けますので、私の金を実は三万円立て替えてそちらの方にお支拂をして、そうして自分がお願いをした人に義理を欠かずにやつたというふうなことで、確か私の報酬や私の家に居る高木弁護士の報酬はまだ貰つて居らんのじやないかと思つております。
  1071. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 民事の方は……
  1072. 上條貢

    證人上條貢君) 或いは私のところにいくらかはその外に入つたかも知れません。刑事の方では最初に一万円私受取つたのは事実であります。それで弁論まで済んでから、実は休審になりまして、そうして追起訴になるために私の弁論も済み、全部の外の方の弁論も済んでから、あの事件は休審になりました。私共としては責任を果しておりますし、尾津氏に会つた時に、私に二万円、高木弁護士に一万円程度は出すというようなお話があつたように思つておりますが、それで実は二、三回参りましたけれども、私も考えると、本人が中に入つてつて、そうして金の工面も困難だろうというので、最初私の記憶によりますと受取るべき金は四、五万……五、六万円あつたけれども、実は私もよう催促できず、たまに寄つた時に話して、向うでも細君も、先生に申訳ないなどと言つておりました。私も他人が困つておるのを剥ぎ取るようなこともできませんので、そんなふうに思つておりますが、多少の違いはあるかも知れませんが、私の受けたのはそんな程度だと思つております。
  1073. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 刑事事件として二万円あなたにお渡ししておるのじやないですか。奧さんから……。
  1074. 上條貢

    證人上條貢君) 最初一万円を受けたことを、若し奥さんがそういうふうならば、中間で或いは高木弁護士と私の分として受けたかも知れません。その点ははつきりいたしません。
  1075. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その他には刑事事件の保釈に関するいろいろな費用としてお受取りになつたことはありませんか。
  1076. 上條貢

    證人上條貢君) 保釈についてこの費用は受取つておりません。
  1077. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 車馬賃とか、いろいろな名目で……どういう名目に拘わらず……。
  1078. 上條貢

    證人上條貢君) ただ小さく……弁護士の刑事の打合せの時でありましたか、その時の僅かな車馬賃として千円か二千円、集まつた者は皆受けたことはあつたと思います。特に保釈のことについてということで受けた記憶はございませんし、多分その点についてはないというように考えております。
  1079. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 大体尾津君若しくは尾津君の細君、或いは尾津君の事務所の人又は尾津君の関係者等、これらの人々から民事事件及び刑事事件を通じて金銭の授受のあつたのはその程度ですか。
  1080. 上條貢

    證人上條貢君) その程度だと記憶いたしております。  ただ尾津氏から直接受けたか或いは岡戸という副組長がおりましたが、その岡戸氏が持つて來たが、その点ははつきりいたしませんが、大体において以上申上げた程度のお金を頂載しただけだと記憶しております。
  1081. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 岡戸は尾津組のどういう役をしておりますか。
  1082. 上條貢

    證人上條貢君) あすこでは組長が尾津喜之助で、岡戸竹治は名義だけは副組長となつておりますが、実権はありません。
  1083. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 指揮はしておりませんか。
  1084. 上條貢

    證人上條貢君) 本人がおらない時の指揮者と言いますか、これは素人から入つて、そうして商賣の方の高とをいたしておりますので、純然たる露商ではありませんから、勢力は余りなかつたと思つております。
  1085. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 事務家ですね。
  1086. 上條貢

    證人上條貢君) さようでございます。
  1087. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが刑事事件を受任なさつてから執行停止まで、尾津君と何回ぐらいお会いになりましたか。
  1088. 上條貢

    證人上條貢君) 四、五回ぐらいだと思つております。
  1089. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは大体どういうようなお話の内容ですか、大掴みにして……。
  1090. 上條貢

    證人上條貢君) 実は一、二回は、法廷で以て少し言論が法廷の神聖を害するように近い程度まであつたりいたしましたので、そういうような態度は氣を附けなければならんというような点で、外の者も參りましたが、私もそんな点を言つたように記憶しております。
  1091. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それだけですか。
  1092. 上條貢

    證人上條貢君) まだやはり事件の内容の打合せ等にも確かに話があつた
  1093. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 保釈のことについてはどうですか。
  1094. 上條貢

    證人上條貢君) 保釈のことについては、時々僕に会いたいからと使いがありまして、まだ保釈ができないかというような話があつて、いやそんなに簡單に行かないというふうな話をしたこともあります。
  1095. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その面会された際に、尾津君がどんな方法でもいいから、ともかく早く身柄を出して呉れという、こういう切なるお頼みがあつたのではないのですか。
  1096. 上條貢

    證人上條貢君) 私にはそういうはつきりしたことはなかつた
  1097. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう趣旨の話もないですか。
  1098. 上條貢

    證人上條貢君) 早く出たいということは言つていましたが。
  1099. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どんな方法でもいいということは別に言いませんでしたか。
  1100. 上條貢

    證人上條貢君) それは記憶にございません。
  1101. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そんなふうな趣旨に受け取れるような言葉もありませんでしたか。
  1102. 上條貢

    證人上條貢君) 今思い出せません。
  1103. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君の親族や関係者から、そういうような話はございませんでしたか。
  1104. 上條貢

    證人上條貢君) 私にはなかつたと記憶いたします。それはこういう点を申上げれば御了解を得ると思いますが、私は底通にいわゆる法廷でもつていたす弁護士として考えられた。そうして私が実は不愉快になつて本人にも言つたことがありますが、家庭の方では非常にそういう点を焦つて、前に局長をしていた森山武一郎氏や清原邦一氏を頼みまして、そうして一例を申しますと、私のところは事務所が浅草にありますし、森山氏のは澁谷にあつて新宿に近いという点もあります。非常にそちらを尊重して、そちらへは毎日自動車で迎えに行き、又自動車で送つて行くというようなふうになりまして、だから非常にこの保釈というようなことについて、在野法曹より却つて在朝であつた者の方が、やはり受けがいいようなふうでありました。私は当時憤慨して尾津氏にも弁護士を区別してやるならば、私も馳け出しの者でないから考えなければいかんというような苦情を言つたことがあります。從つて保釈のことは私よりは他の弁護士に主力を注いでやつてつたのじやないかと実は考えております。
  1105. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうこともあり得るかも知れませんが、けれども一面あなたは正式な顧問弁護士でなくても、少くとも顧問弁護士といい得る間柄ですから、そういうような関係で、特にあなたに親しく立ち入つてお願いしているのではないのでしようか。
  1106. 上條貢

    證人上條貢君) 尾津氏は私を信じて、やつぱり先生が中心になつてつて貰わなければ困るということを言つておりましたが、私が憤慨したのも一つはそこにありますが、私は俗な言葉で言いますと、家庭の方の女の人達が新し好みをやつているから、どうも僕は不愉快でいけないということを言つたことがあります。從つて保釈等については、私よりは外の者に対して主力を注いでいたしたように考えております。
  1107. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これは森山君がおればお訊ねし得るのでありますが、森山君が今不幸にして亡くなられたので、如何ともしがたいが、先ず尾津さんの奥さんの言うところによりますと、むしろあなたが一番心易くて、あなたに主力をおいてお願いして、その他の人は未知の人であるから、問題にしていなかつたように聽き取れるのであります。
  1108. 上條貢

    證人上條貢君) それは私の個人の感じですから、或いは違つていたかも知れませんが、やはりお二人をお頼みになつてから、非常にそちらの方へ接近して参りまして、私は非常に不愉快な念を持つておりました。
  1109. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津の身内の者が、あなたに対して、金は幾ら掛つてもいいから、何とか早く身柄を出して呉れるようにと、特にお頼みされたことはございませんか。
  1110. 上條貢

    證人上條貢君) そういう記憶はございません。
  1111. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 岡戸に限りません。その他身内の人とか盃をしている人とか、少くとも尾津の身柄について何人かが、そういう話をしたことはありませんか。
  1112. 上條貢

    證人上條貢君) 記憶にございません。
  1113. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勿論保釈について金銭的な話をして來たこともございませんね。
  1114. 上條貢

    證人上條貢君) さようでございます。
  1115. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 昨年七月七日付で、あなたが保釈申請をなさいましたが、その添附書類の中に、今津茂という人の作成の診断書がありますが、どこの医者ですか。
  1116. 上條貢

    證人上條貢君) それは確か家族が持つて來た診断書を添附したと思いますが、私はどこのお医者さんであるか承知いたしません。
  1117. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御存じないのですか。
  1118. 上條貢

    證人上條貢君) 承知いたしません。
  1119. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尚その次の保釈申請ですが、お出しになつて呉れという中に、都電の新宿車庫敷地の拂下げにつきましても、都廳関係局課の承認を受けたと記載しておりますが、これは事実受けているのですか、承認を。
  1120. 上條貢

    證人上條貢君) それはちよつと聽き取れませんが。
  1121. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 都電新宿車庫敷地の拂下げにつき、都廳関係局課から、その拂下げの承認を受けているということが記載してあるのですが、それは記載した通りですか。
  1122. 上條貢

    證人上條貢君) 正式な許可は受けておりません。話は交通局長及び建設局長の方から大体はそのいう線に沿うて、一つ話を進めて行くような話にはなつておりましたが。
  1123. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 書面自体から拜見いたしますと、承諾を受けているから、いわゆる身柄を出して呉れなければ、それが無駄になつてしまう。從つて民事事件の方の示談の進行にも差支える。何となれば民事事件の方は明け渡す代りに、建物も無償提供してしまう。その代りの関係マーケツトを作るために、そういう敷地をお考えになつたらしい。
  1124. 上條貢

    證人上條貢君) その内諾と申しますか、そういうことで一つ進めて行こう。その新宿の車庫の跡といいますのは、尾津個人でいたすのでなしに、私と同僚の都会議員野村專太郎という、あの土地の人でありまして、土地の繁栄のために、ああいう繁華なところへ、車庫を置くのはいかんから、新宿地区の繁栄のために、拂下げて、そうして商店街にして貰いたいという陳情書がありました。私と野村君とが交通局長に会い、建設局長にも会つて、そうして大体は纒めて行き得るようなところまで行つて、確か私の記憶では、それで行こうということの内諾はあつたように考えます。今御指摘のすでに承認があつたというふうに書いてありますのは、それは内諾のあつたという意味で、或いは文字を表面から見ると、ちよつと行き過ぎのことだというふうに考えられます。
  1125. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 私の方のお訊ねする趣旨は、結局承諾のあつたことに装うて、裁判所がそれを基本にして、保釈決定の裁判の基礎にしたという点をお訊きしたいわけですが。
  1126. 上條貢

    證人上條貢君) それは裁判所の方でも、実は局に行つてお調べになりましたが、そうしてそれがやはり保釈をするのに調べて見たらば、まだ全部決定しているわけではないからということで、その保釈の方は、それではいかかということになつてつたと記憶いたしております。
  1127. 伊藤修

    委員長伊藤修君) さような裁判所の行動に出るということは、結局あなたの申請書が恰も承諾を得ているもののように御記載になつたので、それではというので、裁判所が自主的にその保釈申請の理由を調査するに至つたのではないのですか。
  1128. 上條貢

    證人上條貢君) そういう点もありますと思いますが、事実は、その当時は、実際話は内部的にも纒つておりました。ただ都長官の許可ということはありませんでしたが、野村氏と私と参りまして、それではどういうふうにして行くかというようなことまで話がありまして、それで本人が出て來て交渉すればそれで本極りになる程度にまで行つてつたと記憶いたしております。
  1129. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうなれば内諾なら内諾の趣旨で、進行中ということで御指摘になつて、若しくはそう御記載になつて申請すべきでないでしようか、恰も承諾を得て本人が出て來れば敷地の拂下ができ、本事件の解決の一つの重要な役割を果すというふうに裁判所にお出しになるということは、ちよつと行き過ぎじやないかと思いますが……。
  1130. 上條貢

    證人上條貢君) 私の本当の心持でありますが、私自身はあの時に尾津氏が出て來ておつたならば、すつかり局長とも話して、それですつかり纒つてしまうということを、本当にこちらは信じておりましたから、文は或いは強くなつたかも知れません。私は纒るか纒らぬか分らないのに過大にやつたという氣持は当時なかつたのであります。
  1131. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたのお氣持は実際は承諾になつていないけれども、事実的には内諾で殆んど取極める程度になつてつたから、承諾という文字が表明したというのですか。
  1132. 上條貢

    證人上條貢君) さようでございます。
  1133. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの申請書の中に脳溢血、或いは胃潰瘍の兆候というような記載がありますが、どこから資料を得られましたか。
  1134. 上條貢

    證人上條貢君) それし確しかお手許に参つておりますかどうか、拘置所の医者の診断書に基いたことと記憶いたしております。
  1135. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 拘置所の医者の診断には胃潰瘍というのは見受けないように思いますが、
  1136. 上條貢

    證人上條貢君) そうでございますか、私の記憶では確しかあつたと思いますが、今それの現場もありませんから明言はできませんが、胃潰瘍と脳溢血の兆候、精神病というのはあつたように記憶いたしております。
  1137. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 脳溢血というのはもう別に拘置所ではないんですね。
  1138. 上條貢

    證人上條貢君) そのお尋の意味はどういう意味ですか。
  1139. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 要するにあなたがそういう御記載になつたその資料、根拠はどこから出ておるかということです。
  1140. 上條貢

    證人上條貢君) 私は確か拘置所から何回も裁判所に当てて診断書を出していたように記憶しております。
  1141. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 診断書は四通程出ておりますが、四通の中にはそういう文字は見当りませんが、
  1142. 上條貢

    證人上條貢君) それから勿論私の名前が出ておるから責任を回避するわけではありませんが、その当時家におります高木弁護士もその都度保釈申請の文面は書いたと記憶いたしております。併し私の名前を連らね、署名捺印してありますのは、私も勿論責任を負うべきでありますが、その時の文書にはその都度高木弁護士が書いて出すようにいたしましたので、今の文言についての御指摘、責任はあるわけでありますが、どういうふうに書いて、どうだということについては、はつきりお答えできないのは遺憾に思います。
  1143. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうような申請書にそういう言葉を言うてようかどうか分りませんが、誇大に重症のような表現がなされておる。裁判所はそれに基いて裁判の資料にしなければならんということになつて参ります。
  1144. 上條貢

    證人上條貢君) 私の記憶を以ていたしましても、やはり本人は胃潰瘍のようで、始終げツ、げツと吐いておりまして、家の者はあれは胃潰瘍だというふうに言つておりました。それから私が本人に会つた時、或いは家族の者の話でありましたが、ずつとぐらぐらとして倒れそうになるというような話も始終聞いておりました。
  1145. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 結局あなたはその根拠をあなた自身ではお分りにならないのですね。
  1146. 上條貢

    證人上條貢君) 私の記憶では確か拘置所の医者の診断書、それから家族が取つて参りました診断書等に基いて、高木弁護士がそれを作りました。
  1147. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 拘置所の診断書には胃潰瘍というものはありませんから、あなたの御記憶違いですか。
  1148. 上條貢

    證人上條貢君) なければ私の記憶違いです。
  1149. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 高木弁護士は何らかの方法でそれを聞き知つたというわけでありますか。
  1150. 上條貢

    證人上條貢君) そういうわけであります。
  1151. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 執行停止になるまで係の檢事、判事は何回ぐらいお会いになりましたか。
  1152. 上條貢

    證人上條貢君) 確しか保釈申請をいたしまして却下されること、正確な記憶はありませんが数回あつたと記憶しております。
  1153. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 七、八回と出ております。
  1154. 上條貢

    證人上條貢君) それじやもつと多かつたと思います。これは家族が裁判のある度に子分を引連れて、そして弁護士の控室に参りまして、そして早く早くということを言いますので、それをいたしたのであります。それを出した際にはやはり判事に会いまして、そして保釈の申請についての理由は説明いたしました。それから尚卸下になりました場合には、判事が弁護士に集つて貰いたいというので参りますと、遺憾ながらまその必要を認められないだから、却下するというようなお話があつて、そういう際にも何回も会つたのであります。
  1155. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう際には細君はいつも子分を連れて來ますか。
  1156. 上條貢

    證人上條貢君) ああいう仲間というものは、なんと言いますか、仁義というか、義理と言いますか、法廷なども他の法廷は空になつてつても、尾津氏の裁判になると、いつも一ぱいになります。
  1157. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 子分はどのくらい來ますか。
  1158. 上條貢

    證人上條貢君) 多い時は百人も二百人も子分や知人が参ります。大きな法廷は要らぬと言いましても、入れ切れないことが、何回もありました。
  1159. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはいずれも尾津君の分子ですか。
  1160. 上條貢

    證人上條貢君) 子分関係者です。
  1161. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは保釈申請をなされるに、尾津君の病症状態は非常に憂慮すべきだというふうにお考えになつたのですか。
  1162. 上條貢

    證人上條貢君) 一時考えました。
  1163. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはどういう根拠ですか。
  1164. 上條貢

    證人上條貢君) それは本人に会いまして、そしてあの元氣のいい男がすつかりしよげてしまつております。それは例の胃潰瘍の兆候だと思つておりますが、げツ、げツと言つて非常に悪いふうになりました。それに精神が非常に亢進しておるような状態になりましたから、あのままで置いては非常に危いというふうに考えました。
  1165. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの時はどうか存じませんが、他の弁護士が会いました時には、親分はこの頃非常の元氣になつた。むしろ元の時より元氣を殊更に標榜しておつたか存じませんが、主張しておるようですね。
  1166. 上條貢

    證人上條貢君) さようでございますか……。
  1167. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの面会された時とは正反対ですね。
  1168. 上條貢

    證人上條貢君) 私はとにかくやはり早く出さなければいかんというふうに考えました。
  1169. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いかぬということはどういう意味です。
  1170. 上條貢

    證人上條貢君) やはり体が參つてしまいはしないかというふうに考えました。
  1171. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 参つてしまうということは、どういう意味ですか。
  1172. 上條貢

    證人上條貢君) 病氣で倒れはしないかというふうに考えました。
  1173. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 病氣というのはどういう病理ですか。
  1174. 上條貢

    證人上條貢君) 胃潰瘍とか脳がふらふらするということです。
  1175. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 脳のことは別問題として、胃潰瘍で倒れてしまうていう判断は、先程の話の樣子では根拠がないようですが。
  1176. 上條貢

    證人上條貢君) 非常に衰弱して参りますれば、やはりそういう状態も起り得ると考えたのであります。
  1177. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では医者にそういうことをお確めになつたのですか、あなたの認識ですか、主観……。
  1178. 上條貢

    證人上條貢君) 私の主観であります。
  1179. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたがそう主観的に考えただけ……。
  1180. 上條貢

    證人上條貢君) はあ、それから一言申し上げることをお許し頂きたいと思いますが、弁護士として事件を引受けて、そうして家族本人等からも依頼がありますれば、やはり全然もう病氣のない者は格別でありますが、病氣の事実ある者は、早く出してやりたいということが弁護岸の熱心さでもありますし、被告人を愛する意味でもございます。私共ばかりでなしに、弁護士として保釈をいたすときに、全部が全部もう明日死ぬという者にのみ限つて保釈を申請するわけではございません。病氣のあるような場合には、弁護を引受けて、それに熱心に当つて行く者は、全然病氣のない者は別でありますが、病氣の場合には、やはり早く出してやろうとして盡力することが、私は弁護士道の常だと思つております。
  1181. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 序でにお尋して置きますが、ではこの事件に対してどういう認識をお持ちになつてつたのですか、普通の刑事事件と同樣にお考えになつてつたのですか、それともこの事件に特殊な事情というものの存すことをお考えになつてつたのですか。
  1182. 上條貢

    證人上條貢君) 私共は正直に申しますと、時局の見通しが付かないと申しますか、やはり外の刑事事件と同じようなふうに、依頼を受けた以上はたとえ本人が殺人であろうと何であろうと、それはもう社会全般から見るならば憎けべき者でも、やはりそこに温情を以て人を助けてやりたいという心持し同じようなふうに、実は私はこの事件の全貌というものが不幸にして分りませんから、やはり他の事件と同じように、被告人のために有利になれかしといたしたものであります。
  1183. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、本件は普通の刑事事件として考えられたわけですね。
  1184. 上條貢

    證人上條貢君) さようでございます。
  1185. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では普通の刑事事件の場合におきましてもですね、その犯罪事実の重大性に対しまして、例えば保釈の住居の制限、証拠湮滅、逃走の虞れがない、かような法的條件を具備しないに到つても、事件そのものの重大性によつて、保釈をしない場合があり得ることは御承知ですね。
  1186. 上條貢

    證人上條貢君) その点よく分つております。
  1187. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では、本件の場合におきまして現われた犯罪事実としては小さいが、前のお尋いたしましたように、いわゆる尾津君を背景にする大きな勢力、尾津君が持つところの財力、これらによつて、街の顔役として相当社会に流すところの影響というものは、普通のいわゆる殺人犯とか強盗犯よりは重く考えられるという今日の社会情勢であるということはお考えにならなかつたのですか。
  1188. 上條貢

    證人上條貢君) 実はこの点が私共不明でありましたが、私共はやはり事件を引受けたら、一生懸命でその被告人のために、社会全体の大所高所から見れば、時に憎み、時に隔離しなければいけないようなふうに見られます者も、事件を受任して一生懸命になつておりますと、やはり被告人が可愛くなるので、從つて大所高所から見れば、力を入れて弁護してはいけないというような御見解をお持ちになるような事件でありましても、引受けた弁護士としては、眞劍にその受任の意思に副うようなふうにいたしたいというふうに私は考えておりました。
  1189. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勿論弁護士としては当然受任事件に対しまして、いかなる兇悪犯罪でもよかれと取計らうことは当然のことですが、ただその事件そのものにお盡しになること以外に、保釈について、それが保釈せられることによつて社会的に大きな影響を齎らすということに対しましては、保釈を申請する場合において、よかれというふうな考えだけ、安易な考えだけではいけないのじやないのでしようか。
  1190. 上條貢

    證人上條貢君) 今お教えを受ければ、そういうふうにも考えられますが。
  1191. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 例えは兇悪な小平のごとき者を保釈を仮に申請するということが、すでにいかに弁護士と雖も、私は誤りじやないかと思うのですが、そういう場合にはやはり保釈申請は、弁護士としても多少考慮さるべきものではないでしようか。
  1192. 上條貢

    證人上條貢君) 誠にその点御尤もだと存じますが、ただ私共理屈でなしにお聽き頂きたいと思いますが、或る大きな、社会全般から憎まれるようなそういう事件が起るといたしまして、すべての社会人が皆それを憎んでおるときに、せめて自分事件を引受けてくれておる弁護士だけは、親身になつてつて貰いたいと、被告人は考えはしないかと思います。そういう意味でどんなに社会全般から憎まれる問題でも、お引受けした以上は、被告人のために一生懸命にやつてやるときに、被告人が改悛して行く。人情に感激すると言いますか、愛情に感激するか、そういう点で被告人が目醒めて來たり、改悛できはしないか、或る事件を引受けても、社会から憎まれておるからと言つて手を緩めるようになりましたら、被告人はもうとても助からないのじやないかというふうに私共考えております。
  1193. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや、あなたのお氣持はよく分ります。併しそれを釈放することによつて本人以上に、社会全般が迷惑を被り、社会全般が危險を感ずるという場合には、公共の福祉というものも相当考慮しなくちやならんのじやないかと、こうお尋ねするのです。
  1194. 上條貢

    證人上條貢君) 全般論としては誠に御尤もでありますが‥‥。
  1195. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その人一人を助けるため、多くの人の憲悪も願みないということは、弁護士として避くべき行爲ではないでしようか。
  1196. 上條貢

    證人上條貢君) 繰返して申し上げますが、弁護士がそういうふうになつて、委任を受けたけれども、社会から憎まれておるから手を控えようというようなことになつたら、やはり弁護士の責任は果せないのじやないかと思つております。
  1197. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや、弁護をおやりになることを控えよというような意味でなく、それを釈放することによつて社会の人が不安を來たすような場合に、兇悪犯罪の釈放に対して再三再四おやりになるというあなたのお心持を聽いてあるのです。七回も八回も却下になるものを、殊更それを繰返し繰返し論爭なさつたあなた方、今度の弁護士の方のお氣持を聽いておるわけですね。
  1198. 上條貢

    證人上條貢君) どうもこれ以上申上げられませんので、私としては、やはり引受けた以上は被告人のために一つ考えてやるという氣持で、私が言い出して参りましたことだけを御了承頂きたいと思います。
  1199. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ではまあその程度にしまして、この保釈申請につきましてですね、拘置所の医者にお会いになつたことありますか。
  1200. 上條貢

    證人上條貢君) 私はございません。
  1201. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ありませんですか。勿論その他の関係係員にお会いになつて、饗應とか、そういつたことはありませんですね。
  1202. 上條貢

    證人上條貢君) ございません。
  1203. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か政治的の御関係はありませんですか。
  1204. 上條貢

    證人上條貢君) 尾津と私でございますか。
  1205. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いいえ、この保釈に対して政治的にこれを運動したというようなことは御存じありませんか。
  1206. 上條貢

    證人上條貢君) ございません。
  1207. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなた御自身がおやりになつたことございませんか。
  1208. 上條貢

    證人上條貢君) ございません。
  1209. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの知る範囲においてもないですか。
  1210. 上條貢

    證人上條貢君) 私はそういうことは承知いたしておりません。
  1211. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると本件の保釈に対しまして、政治性が加味しておるということはお考えになりませんですか。
  1212. 上條貢

    證人上條貢君) 私共一生懸命になつて、被告人のために保釈を何回も、却下いたされましたが、いたしましたが、政治的のことはいたしておりません。
  1213. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 執行停止の正本をお取りになつたのは、あなたがお取りになつたのですか。
  1214. 上條貢

    證人上條貢君) 確か森山君でなかつたかと思います。
  1215. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勿論正本に書かれておるところの條件は御承知のことですね。
  1216. 上條貢

    證人上條貢君) これは常識として承知しております。
  1217. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その場合に、この申請が、特段なお骨折りがあつたわけですから、それでやつて執行停止になつたのですから、而もそれは條件附きだという場合に、その條件の履行については、堅く本人並びに家族に御注意になつたことでしようね。
  1218. 上條貢

    證人上條貢君) さようでございます。
  1219. 伊藤修

    委員長伊藤修君) にも拘わらず、その夜自宅に帰えられて、泊られたということはどういうことですか。
  1220. 上條貢

    證人上條貢君) 私は実は当日森山君の家の弁護士の人と私とで以て拘置所の方へ参りましたが、用事がありまして家へ途中から帰つてしまいましたので、家へ戻つた等のことについては承知いたしておりませんでした。
  1221. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうするとその夜病院に行かずして、拘置所からいきなり自宅へ帰つて寢てしまつたということは御存じないのですか。
  1222. 上條貢

    證人上條貢君) 後でそういうことを聞いたと思います。
  1223. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 後でお聞きになつたということは、病院へ行つた時お聞きになつたのですか。
  1224. 上條貢

    證人上條貢君) その後ではなかつたかと思いますが、そのいつ、どこで聞いたということは記憶が明確‥‥。
  1225. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 病院へおいでになりましたね。
  1226. 上條貢

    證人上條貢君) 参りました。
  1227. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 病院でそのことをお聞きになつたのですか。
  1228. 上條貢

    證人上條貢君) 病院ではなかつたと思いますが。
  1229. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 病院へあなたは御訪問になつたのですね。
  1230. 上條貢

    證人上條貢君) 一度参りました。
  1231. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その時はどういうお話のためにおいでになつたのですか。
  1232. 上條貢

    證人上條貢君) これはこういうことでありました。確か九月の十六日だと思いますが、十五日の日に副組長の岡戸竹治という者が私の所へ参りまして、そうして明日尾津が交通局長に会いに行くから、先生に一緒行つて貰いたいということを言つておるということを言いました。それは今執行停止で以ておるわけだから、そういうことはいけないということで話しましたところが、十六日朝になりまして交通局長の大須賀君から私の所へ電話が來て、それで今日尾津氏が交通局へ來るということがあるが、どうも僕も会うことはなんだし、それから出て來た人がそう歩くということはなんだから、あなた一つ行つて、來ないようにして呉れないかということの御依頼があつたのであります。実はその前、出て來たのは確か十二日だと思いますが、私も先程申上げましたようなふうに、区別して弁護士を取扱うようなことをしましたから、だから病院へは四日ばかり私は行かずに実は向うには行つたけれども、途中で帰つてしまつたという点も非常に不愉快な感じを持つておりましたので、行かずにおりましたところが、交通局長の大塚君から來ないようにして貰いたいということの切なる電話がございましたので、それで私は執行停止中のことでもあるからして、行くのはお止めなさい、あなたが行かんでもいいだろうということで、そのことで私は病院へ行つたのであります。
  1233. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは十六日にあなたの家へ自動車が來たのじやないですか。
  1234. 上條貢

    證人上條貢君) 私は会いませんでした。
  1235. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 十五日にあなたが訪問なさつて‥‥。
  1236. 上條貢

    證人上條貢君) それじや一日違うかも知れません。期日の点は一日ぐらい違つておるかも知れません。
  1237. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで一緒に自動車で以てあなたおでかけになつたのじやないですか。
  1238. 上條貢

    證人上條貢君) 十五日に出かけました、それはこういう実情で、私は本件については非常に自分が自責の念に責められておるのであります。交通局長の方へ訪問することを喰い止めるのに約一時間かかりました。尾津という性格は、一度言い出したらとても聽き入れない性格でありますので、漸くそのところで以て私が参りましたのが十時ぐらいで、十一時半過ぎまでおつて、そうしてそれでは交通局へ行くことは止めようということになりました。十二時に近くなりましたので私は辞去するつもりでありましたが、先生待つて下さい。是非先生に話さなければならんことがあるから待つて呉れという話がありました。それで実はその日は何か午後会議があることでありますので。いや、今日は帰るからと言いましたところが、ちよつと下でお茶をつき合つて呉れ、私は考えるのに、下というのはあの廣い邸宅でありますので、そこの下の辺でお茶飲んで、何か私に特に話さなければならないことがあるというふうに考えた、そうして下へ参りましたらば、そこへ自動車が待つている、そうして私は強引にとにかくちよつと乘つて下さいということで乘せられました。そうしたらば、こういうことをなぜそういうふうに強引に行かしたかというのは、その自動車の中で話しましたが、実は尾津氏に妾がある。小吉という妾で日本橋におる。これが刑事の事件で連日参つておりまして、そうして折角出て來たから自分のところへ連れて行きたい。又尾津本人もそこのところへ行きたい。実は先生を強引にこういうふうに行かせるようにやらざるを得なかつたのは、まだ帰つて來て家内に対しても実は関係がないのだ。それを僕が出て來るのには、あなたを利用するより仕方がないので、実はあなたを利用して強引に‥‥その時は目の色を変えて話しておつた。とにかく行くということになつた。そうして向うの所へ行きましたら、親分帰つて來たというので、祝だというので酒が出た。そうして十二時過ぎておりましたので、私は早く帰らなければならんと言いましたら‥‥私も非常に嫌やな感じを持つておりましたので、それで私は居ること十五分か二十分で帰つて來たのであります。ところがこれは実はミイラ取りがミイラ取りに行つてミイラになつたようなもので、私は出て行くことはいけないということで止めに行きまして、却つて尾津がその妾に会いたいというので、止めさせに行つて、情に負けたことであつて、私は弁護士として非常な失敗であつたと今日でも考えております。委員長伊藤修君) そうすると、お話の趣旨は、住居制限があるから注意に行つた、注意に行つて、たまたまあなたを利用して妾の家に行つたということは、あなたに先棒を担がして行つた、こういうわけですね。
  1239. 上條貢

    證人上條貢君) さようでございます。その点は非常に‥‥。
  1240. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その時になぜ注意に行かれて‥‥わざわざ注意に行かれたのに、殊に都廳に行くことすらお止めになつたのですから、況んや酒を飲んだりすることは、その事件の心証にもよくないと思うのですが‥‥。
  1241. 上條貢

    證人上條貢君) 私は酒飲みに当初から‥‥これは弁解のようにお聽き取り頂いては恐縮でありますが、そういう意味じやありません。
  1242. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたはそれをなぜお止めにならなかつたのですか。
  1243. 上條貢

    證人上條貢君) それはこういうことで、出てはいけないと止めたのでありますが、それがちよつと下までお茶飲みにつき合つて貰いたいということで行つたのでありますが、下に自動車がいて、とにかく行けということで参つたのでありますが、とにかく行つて呉れというので、自分が意志が弱くて、弁護士として一番の失敗であつたように思つております。
  1244. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 向うの家には、あなたと尾津と岡戸とそれから外に誰がおつたのですか。
  1245. 上條貢

    證人上條貢君) 私と尾津と二人だけであります。
  1246. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二人だけ。岡戸は行かなかつたのですか。
  1247. 上條貢

    證人上條貢君) 岡戸は行きません。
  1248. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 岡戸も行つたように思われるのですが‥‥。
  1249. 上條貢

    證人上條貢君) これは私は記憶がはつきりいたしておりませんが、岡戸は参りません。
  1250. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると小吉と三人ですか。相当尾津君は酒がいけるそうですね。
  1251. 上條貢

    證人上條貢君) その時分は病氣で身体が弱つておりましたが、不断でしたら相当飲めると思います。
  1252. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勿論酒を飲まれたでしようね。
  1253. 上條貢

    證人上條貢君) そのときは余り飲まなかつたと思います。
  1254. 伊藤修

    委員長伊藤修君) けれども、先程の御証言と今の行動から考えますと、尾津君は執行停止しなくちやならん程の病氣でないということが、それでも明らかなんですね。
  1255. 上條貢

    證人上條貢君) 結果から見れば全然その通りであります。
  1256. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうするとあなたの認識が全然間違つてつたということになるのですか、多少病氣でありましようけれども、執行停止をしなくちやならんという程病氣でなかつたということは、今の行動から推しても考えられますね。
  1257. 上條貢

    證人上條貢君) 確かに外に出歩いたのでありますから、お尋ねのようだと思います。
  1258. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勿論本人に対して執行停止中に、その條件を附けて、その條件に違反すれば取消になるということは、あなたが注意したでしようね。
  1259. 上條貢

    證人上條貢君) 態度だけは氣をつけて貰わなければいけないということだけは話しました。
  1260. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その條件を守らせるということは、あなたの力ではできなかつたでしようか。又他の弁護士の方で‥‥。それ程いわゆる親分風を吹かすのですかね。
  1261. 上條貢

    證人上條貢君) 何といいますか、本人性格ちよつと申上げることをお許し頂きたいと思いますが、言い出したらむちやです。それは私の行つたのも、後で考えて見て、私の大きな失敗であつたように考えますが、とにかく法廷においても、証人の言い方がいけないというので、後ろにある椅子で以て、子分が止めなかつたら、とにかく法廷で証人の頭へ飛ばすようなことをやらんとする人であります。とても普通の人で以て止まるものじやない。
  1262. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 弁護士の方に対しても威圧的に出ているわけですね。
  1263. 上條貢

    證人上條貢君) 出ております。曾てこういう例がありましたからお聽き願いたいと思います。吉田久氏と佐久間氏と鈴木氏等が尾津氏の家へ事件の打合せに参りました。そうしたら氣のおりどころが或いは悪かつたのでありましようか、お前達一体自分じや大家と思つているかも知れないが、お前達などはものの数じやないぞというので、実はその全部を面罵されまして、私は紹介した関係上、後で先輩に非常に嫌がらせを言われて閉口したことがありますが、虫の居どころが悪かつたら誰に対してだつて毒舌を吐いて、自分の意思を押し通すというところがございます。普通であつた弁護士は立てて考えるのでありますが、弁護士は物の数ではないという考えで、そういう態度に出る性格を持つた人であります。
  1264. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 自分で信頼する、又自分を助けて呉れる唯一の味方たる弁護士にさえ、そういうふうでありますから、況んや尾津君の氣に入らん事業の相手というものは、相当の威圧を受けるのじやないですか。それは意識的でなくても、自然にそういう威圧的に態度に出るのじやないでしようか。
  1265. 上條貢

    證人上條貢君) とにかく自分の意思は、一度言い出したら、誰であろうと強引に自分の意思の通りに引張る。
  1266. 伊藤修

    委員長伊藤修君) やはり飽くまで貫徹せずにおかないのだというわけですね。
  1267. 上條貢

    證人上條貢君) 私なども後から考えれば、もう一歩反省すればよかつたのですが、それに威圧を受けて到頭一緒に行くようなことになつて、あとで後悔いたしております。
  1268. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 都廳に面会に來るのを止めて呉れということも、やはりそういうような意味の関係も含まれるのですか。
  1269. 上條貢

    證人上條貢君) それはそういう意味ではございません。その意味はこういうふうな意味であつたと思います。とにかく今拘置されておる。新聞等にも始終出ておりますもので‥‥。
  1270. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは先程おつしやつたですね。その趣旨だけですか。
  1271. 上條貢

    證人上條貢君) いわゆるその保釈だか執行停止だか、それは分りませんが、その人と会つて天下に話題を投げるというようなことは困る。だから儂としても迷惑だから‥‥。
  1272. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 恐れて会うことを拒否したのではないのですか。
  1273. 上條貢

    證人上條貢君) それはないと思います。
  1274. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一体さような意味のお言葉の言々をずつと拾つて参りましても、相当な威圧を加えるような態度に出る人だから、裁判所に対してもそうじやないのですか。少なくとも裁判所はそう感ずるのじやないでしようか。
  1275. 上條貢

    證人上條貢君) まあ普通の人よりは裁判所もやりにくかつたのじやないかと思います。
  1276. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうような多少裁判所も畏怖しておるというようなふうにお考えにならなかつたのですか。
  1277. 上條貢

    證人上條貢君) 裁判所の松本氏などはやはり毅然としてやつたと思いますが、そんな乱暴に入ろうといたしました時など、暫くずつと審理を止めておりました。「尾津、お前が若しそういうようなことの態度に再び出るようなことがあれば、証人をお前のおらないところで尋ねることにいたさなければならない。再びそういうようなことをすれば裁判長として考えなければいけないから、將來氣をつけるかどうか」というようなことを、毅然として述べられました。私共は畫休みにお詫びに参りまして、申訳ない‥‥。
  1278. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあそのことは分つておりますが、大体において裁判所は多少恐れをなしたというふうな傾きはないのですか。
  1279. 上條貢

    證人上條貢君) 裁判長の態度などから見たら恐れたというのはちよつと大きいような氣がいたしますが、とにかく扱いにくいなという感じは持つたと思います。
  1280. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ただもう不思議に見られるのは、保釈申請が、かくも丁寧に、何回か出るその保釈申請毎に、裁判所が自主的にみずから行動を開始して、その申請理由を一々調査しておるということが、何とか理由を発見して――裁判所は保釈する理由を何とか掴まえたいというふうにあせつておるというふうにも見られるんですね。普通事件としまして、保釈申請があつたつて、さように能動的に裁判所が自主的に動いて行くということは、先ず見受けられないですね。この事件に限つて、この保釈申請に対して、みずから動いて、事件毎の保釈申請に、裁判所がこういうふうに親切丁寧にやつて呉れるということは、私はちよつと考えられないですな、それとも裁判所はどの保釈申請に対しても、一々みずから調べて歩くということがあれば別ですがね、それじや裁判が進行しないと思いますが‥‥。
  1281. 上條貢

    證人上條貢君) それはお説のようにその事件だけは特別に見たという意味があると思います。
  1282. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 特別に見たということは、裁判所が多少恐れをなしたというか、出せるものなら早く出してやろうよいうか、いわゆる間違いの起らん中に‥‥間違いの起らん中にというのは、問題の起つて來ない中という考えがあるんじやないですか。
  1283. 上條貢

    證人上條貢君) 私はそういうような考も多少含まつておると思いますが、次に申し上げるような意味があるんじやないかと思います。それは社会的に有名になつておる事件を引受ける裁判長は、非常に心痛だと聞いております。而も小さな事件であつて弁護士一人或いは二人程度のものならよろしうございますが、相当の人が大勢ついておるということになりますと、裁判長としては、いろいろの点で違法のことがないようにということを考えますので、やはり帝銀事件とか、何々事件とか、そういう事件になりますと、やはり今お話しなすつたようなふうに普通の事件よりはやはり鄭重にやつて裁判所としての失敗がないようなふうに努力されるというようなことが主なんじやないかと思うのであります。
  1284. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お尋ねしたいと思いますが、尾津君は政治に関係しておることを御存じですか。
  1285. 上條貢

    證人上條貢君) ええ、この前自由党でありましたか、自由党から立つたのであります。
  1286. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それ以外に政治に関係したことは御存じありませんか。
  1287. 上條貢

    證人上條貢君) それ以外に承知いたしません。
  1288. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 政治家と交際あることは御存じないですか。
  1289. 上條貢

    證人上條貢君) あの人は大きなことを言う人でして‥‥。
  1290. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういうことを言つておりますか。
  1291. 上條貢

    證人上條貢君) 今日何々大臣に会つた、今日は誰に会つたというようなことを直ぐに話す人であります。
  1292. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういう大臣にあつたというんですか。
  1293. 上條貢

    證人上條貢君) 今一々どうも‥‥。私共又かと考えて聞いておりましたので、今一々を記憶いたしませんが、よくそういうようなことを言つて‥‥
  1294. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 政界の大人物には親しく会つておるというようなことは、始終言うておるわけですね。
  1295. 上條貢

    證人上條貢君) そんなことはちよちよい‥‥大臣に会つてどうしたとか、俺が吹いてこう言つたら、向うですつかり僕の説に共鳴したというようなことは、会うというと、いつもそういう話を聞かされております。
  1296. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう中で、名前の記憶のあるお方はありませんですか。
  1297. 上條貢

    證人上條貢君) どうも私共又かと、こう考えておりましたため、別に記憶に残つておる人もありません。
  1298. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御存じないですか。尾津君がやつておられる常盤会というようなのを、あなては御存じですか。
  1299. 上條貢

    證人上條貢君) そういうものは全然存じません。
  1300. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう政界、財界の社交団体に何係したのを御存じですか。
  1301. 上條貢

    證人上條貢君) 聞いておりません。
  1302. 伊藤修

    委員長伊藤修君) さつきの点で、一應補充してお尋ねしますが、執行停止の通報をあなたにお渡しする時、弁護士の人を皆集めて、その停止の理由の條件をおつけになつたんですか判事は。
  1303. 上條貢

    證人上條貢君) 私その時のことは今頭に残つておりません。
  1304. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから執行停止が出た、いわゆる今日執行停止が出て保釈になつたというて、家族にまあ勿論あなたがお告げになるでしようが、その時に、入院すべきものということは、家族に告げたんですか。
  1305. 上條貢

    證人上條貢君) ええ、それは執行停止の時、帝大佐々内科へということで以て、佐々内科へ入るということは、確にさの中にあつたんじやないかと思います。
  1306. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ところが当時出所する時に、すでに六時頃になつたというので、今日は遅いから帝大の方へ行くのはあれだから、今日は自宅へ帰るということを告げて、判事の許可を取つたんですか。
  1307. 上條貢

    證人上條貢君) さあ、それは取つてなかつたと思います。
  1308. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 判事に話してないんですか。
  1309. 上條貢

    證人上條貢君) なかつたと思います。私は家へ泊つたということを、ずつと後になつて聞いたわけでして……。
  1310. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尾津君の細君は、それは弁護士さんに來て貰つて裁判所の許可を取つてつたというようなことを言うておりましたが、あなたがそういつたということは……。
  1311. 上條貢

    證人上條貢君) その点は、若しやつたとすれば他の弁護士がやりましたか、私はそれには関係しておりません。
  1312. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 判事は、それは指定した病院は勿論判事の方で向うで交渉して指定したらしいのですが、六時には病院は入院できないということは判事は言つておりますですか。
  1313. 上條貢

    證人上條貢君) そんなことは聞きませんでした。
  1314. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 桂会というのは御存じですか。
  1315. 上條貢

    證人上條貢君) 知りません。
  1316. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それも御存じありませんか。何か証人にお尋ねになることはございませんか。
  1317. 小川友三

    ○小川友三君 証人のお説の中で、ちよつと食違いがございますのでちよつとお伺い申し上げます。仁義に堅いてき屋一家と申しますか、そういう連中でありまして、親分子分の流れ、或いは本家分家の流れというものがありまして、傍聽に來た人はいつも二百人前後あつて、入り切れなかつたということを言われておりますが、これは一つの裁判に関する威圧になりはしないかということを感じたかどうかということをお伺いするのと、それから百人、二百人入り切れない程の、そうした仁義に堅いそういう連中の傍聽でありますが、どういう一家の連中がどのくらい來ておつたか、本家流が幾ら、分家流がどのくらい來ておつたかということを、大体御想像で結構でございますから、証人にお伺いしたいと思います。  もう一つ、自動車で病院に行きまする時に、証人の方は、尾津君の、前に四人の弁護士を物の数ではないと言つて威圧した、それから関連して、今自分がここで自動車に乘らなかつたならば、尾津君に、或いは身命に及ぶような、突差に誰かやられやしないかということの恐怖感をお持ちに、大なり小なり、なつたかどうかということをお伺いいたします。
  1318. 上條貢

    證人上條貢君) お答えいたします。多数が入つて參りましたのは裁判所に威圧を加えたかどうか、どういうふうに見るかという第一のお尋ねであります。最初の中には、裁判所でも、とにかく大勢の者が入つて來ておるからということで、そういうふうな氣分はあつたかも知れませんが、毎回のことでありますから、しまいにはそういう感じが余り問題ではなかつたじやないかと私は想像いたしております。  それから第二の集まつて來た者の種別を明らかにせよというお尋ねでありますが、これは実は私も女の人も參りますし、男の人も參りますし、又ああいうふうになつて大勢が入つておれば、いわゆる群衆心理で、他の者も入つて參りますので、余り中に直接関係を持ちません私としては、その種別を申上げることはできないのであります。  それから第三の問題でありますが、その点は若しやらなかつたならば、とにかく自分の生命に危險を感ずるという程度ではございませんでしたが、とにかく相当自分がそういう野心があつてやるものでありますから、どうもこれでいかなかつたら、何と申しましようか、あの人は人前でも、何でも、時によるというと、君などが、というようなことで以てやられる。だからまああとで以ていやな思いをしても何するというような、多少そういうような氣持がありましたが、精神とか何とかというようなことについては畏怖は感じませんでした。
  1319. 小川友三

    ○小川友三君 ちよつと関連して‥‥
  1320. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういう点ですか。
  1321. 小川友三

    ○小川友三君 松本裁判長が少し扱いにくい事件だというように感じられたということを証人が言われましたが、裁判長の部屋でそれについて証人はお話をしたことがあるかないかということをお伺いいたします。
  1322. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どうですか。
  1323. 上條貢

    證人上條貢君) ちよつとお尋ねの御趣意を私聽取れませんでしたから、恐縮ですが、もう一回……。
  1324. 小川友三

    ○小川友三君 先程委員長の質問に対しまして、証人はこの尾津事件は扱いにくい事件だという感じは、裁判長は持たれておつたように自分は感じておるという意味のお説が先程ございましたが、それにつきまして、弁護人の代表として、どなたか法廷へ出る前に、そのあとにその氣持を聽いたことがございますか。
  1325. 上條貢

    證人上條貢君) お答いたします。それは別にございません。
  1326. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 他に御質問ありますか‥‥大変御苦労様でございました。それでは本日はこの程度にいたしまして、明日午前十時、これは簡單な事項で、病氣の関係について六人の証人がありますから‥‥本日はこれで散会いたします。    午後四時五十六分散会  出席者は左の通り    委員長     伊藤  修君    理事      鈴木 安孝君    委員            齋  武雄君            中村 正雄君           大野木秀次郎君            水久保甚作君            鬼丸 義齊君           前之園喜一郎君            宇都宮 登君            來馬 琢道君            宮城タマヨ君            星野 芳樹君            小川 友三君            西田 天香君   證人            尾津 久子君    弁護士     上條  貢君