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證人(
上條貢君) 十五日に出かけました、それはこういう実情で、私は本件については非常に
自分が自責の念に責められておるのであります。交通局長の方へ訪問することを喰い止めるのに約一時間かかりました。
尾津という
性格は、一度言い出したらとても聽き入れない
性格でありますので、漸くそのところで以て私が参りましたのが十時ぐらいで、十一時半過ぎまでお
つて、そうしてそれでは交通局へ行くことは止めようということになりました。十二時に近くなりましたので私は辞去するつもりでありましたが、先生待
つて下さい。是非先生に話さなければならんことがあるから待
つて呉れという話がありました。それで実はその日は何か午後会議があることでありますので。いや、今日は帰るからと言いましたところが、
ちよつと下でお茶をつき合
つて呉れ、私は考えるのに、下というのはあの廣い邸宅でありますので、そこの下の辺でお茶飲んで、何か私に特に話さなければならないことがあるというふうに考えた、そうして下へ参りましたらば、そこへ自動車が待
つている、そうして私は強引にとにかく
ちよつと乘
つて下さいということで乘せられました。そうしたらば、こういうことをなぜそういうふうに強引に行かしたかというのは、その自動車の中で話しましたが、実は
尾津氏に妾がある。小吉という妾で日本橋におる。これが刑事の
事件で連日参
つておりまして、そうして折角出て來たから
自分のところへ連れて行きたい。又
尾津本人もそこのところへ行きたい。実は先生を強引にこういうふうに行かせるようにやらざるを得なか
つたのは、まだ
帰つて來て家内に対しても実は
関係がないのだ。それを僕が出て來るのには、あなたを利用するより仕方がないので、実はあなたを利用して強引に‥‥その時は目の色を変えて話してお
つた。とにかく行くということにな
つた。そうして向うの所へ行きましたら、
親分が
帰つて來たというので、祝だというので酒が出た。そうして十二時過ぎておりましたので、私は早く帰らなければならんと言いましたら‥‥私も非常に嫌やな感じを持
つておりましたので、それで私は居ること十五分か二十分で
帰つて來たのであります。ところがこれは実はミイラ取りがミイラ取りに
行つてミイラにな
つたようなもので、私は出て行くことはいけないということで止めに行きまして、却
つて尾津がその妾に会いたいというので、止めさせに
行つて、情に負けたことであ
つて、私は
弁護士として非常な失敗であ
つたと今日でも考えております。
委員長(
伊藤修君) そうすると、お話の趣旨は、住居制限があるから注意に行
つた、注意に
行つて、たまたまあなたを利用して妾の家に行
つたということは、あなたに先棒を担がして行
つた、こういうわけですね。