○專門
調査委員(泉芳政君) それでは私からお手許に差上げました修正案について御
説明申上げます。
法案第四條は、元來請求書の記載要件が書いてあるのでありますが、請求書には請求の
趣旨、
理由、それから拘束者竝びに拘束の場所などを開示し、必要な疏明資料を提供するということが書いてあるのでありますが、大體當事者と申しますか、拘束者、被拘束者というものを先ず表わして、それから請求の
趣旨、
理由というふうな記載をするのが今までの訴訟關係の書類の記載方式のようにな
つておりますので、四條もさように改めまして、「請求書には、拘束者及び被拘束者を表示し、請求の
趣旨及びその
理由殊に知れている拘束の場所を開示し、且つ必要な疏明資料を提供することを要する。」というふうに直したわけであります。
それから第七條の第一項、
裁判所は、「審問期日における取調の準備のために、直すに拘束者、請求代理人竝びに關係者の陳述を聽して、」「必要な
調査をする」というふうに書いてあるのでありますが、この「拘束者、請求代理人竝びに關係者」というような書き方は、今までの
法文では餘り見掛けませんので、拘束者、請求代理人等を例示的なものといたしまして、この記載を「拘束者、請求代理人その他
事件關係者」というふうに改めたのであります。それから同條の第二項の、「前項の準備
調査は、部員をしてこれをさせることができる。」ということが書いてあるのでありますが、
裁判所法以前には、会議
裁判所の部長とか部員とかいう言葉が使われたのでありますが、地方
裁判所では今度單獨制と会議制とありまして、必ずしも部員というものはいつでも存在するというわけではありませんので、「会議體の構成員」というふうな言葉使いに改めたのであります。
それから第八條は、いわゆる一時釋放する場合の方式、手續を書いてあります。「假りに、被拘束者を拘束から免れしめるために、何時でも呼出しに應じて出頭することを條件として、
辯護士の
保證の下に、又は
保證金を立てさせ若しくは立てさせないで、一時釋放その他
適當な處分をすることができる。」というふうに書いてありますのを、「何時でも呼出しに應じて出頭することを條件として、」というのを取止めまして、「何時でも呼出しに應じて出頭することを誓約させ、その他
適當と認める條件を附して被拘束者を釋放し、その他
適當な處分をすることができる。」というふうに改めました。つまりその釋放のときに條件を、
辯護士の
保證とか、或いは
保證金を立てさせるとか、立てさせないとかいうふうに限定しないで、これを廣く、
裁判所が
適當と認める
方法によ
つてやることにしようというふうに改めたわけであります。
それからその第八條の第二項として、假りに
裁判所が釋放した場合、
裁判所がその被拘束者を呼出して、その呼出しに應じなかつた場合には、
裁判所が被拘束者を勾引することができる、ということは今までと變りはないのでありますが、この
規定がありませんと、先程も
委員長が申しました通り、人權に非常に影響のある強權力を行使する事柄でありますので、
最高裁判所の規則を以てしては、果してよくこれを決めることができるかどうかという點について、相當な疑念も
考えられますので、むしろ本法でこれを
規定した方がなかろうという
趣旨のようであります。第二項として、「前項の被拘束者が、呼出しに應じて出頭しないときは、勾引することができる。」ということを
はつきり表わしたわけであります。
從つて第九條の第二項中にもこの請求が、
理由がないということで、決定を以てこれを棄却する場合に、
裁判所が被拘束者を拘束者に引渡す處分をするのでありますが、その際にもやはり被拘束者を一應
裁判所に出頭せしめ、これを拘束者に引渡すのでありまして、任意に出てくればよろしいのでありますが、呼出しに應じて出てこない場合には、この八條の二項によ
つて勾引して、それからこれを拘束者に引渡すという手續になりますので、九條の二項中に、「前條の處分をしたときは、
裁判所は前項の場合に、被拘束者を出前せしめて拘束者に引渡す。」というところのこの「前條」というところに、「前條第一項」というのを入れ、新らしく第二項を附加えたことを區別したわけであります。
次に第十條の第一項中、「前條の場合を除く外、」というこの「前條の」とありますのを、「第五條又は前條第一項の」というふうに改めたのであります。これは御案内のように、第五條の場合には、直ちに決定を以て却下するという場合が書いてあり、それから第九條には準備
調査の結果決定を以てこれを棄却するという場合が書いてありますので、これらの棄却しない場合にはということになりますと、前條、つまり第九條の、準備
調査の結果棄却するという場合だれでは少し言葉を盡さないのじやないかということから、第五條の疏明を缺いているということで決定で却下するという場合も、第十條の除外例の場合として掲げる必要があるということから、「第五條又は前條第一項の」と改正したわけであります。
それから第十條の第四項でありますが、この人身保護命令といいますか、被拘束者を連れて出頭せよ又は
答辯書を出せという、その命令書の送達と審問期日との間には、三日の期間を置かなければならんという
規定がありますが、一體その審問期間を、いつまでに開かなければならないかという旨の
規定がありませんので、この點は專ら
裁判所に期待いたしまして、事柄の
性質上、できるだけ迅速にやるようにという
裁判所の内部的に命令で賄えるように
考えてお
つたのでありますが、これもだんだん審理の經過に鑑みまして、本法の中へ、義務的の短期間にやらなければならんということを表わす方がいいのではないかという見地から、「審問期日は、第一條の請求のあつた日から一週間以内にこれを開かなければならない。」という制限を設けて、迅速に審理されることを期したのであります。ただ命令書の送達と審問期日の間に置く三日の期間、それから又審理を開かなければならないとする一週間の期間も、特殊な
事情、例えば非常に遠隔の地から出頭せねばならんというような場合などにおきまして、
事實上これでは短か過ぎるというようなこと、或いは又逆のもつと早くやれるというような
事情の場合なども
考えられますので、その末項に、この期間の短縮又は伸張のできるという
規定が設けられておるのであります。この末項の
規定を、今申しました兩方の期間について、それぞれ短縮又は伸張することができるようにする必要がありすので、「但し、特別の
事情があるときは、これを」とありますのを、「期間は江々これを短縮又は伸張することができる。」というふうに書き改めたわけであります。
次に第十一條の第二項、これは審問期日に、この
事件に關係のある「
裁判所の代表者」及び
檢事に出頭の機會を與えるという
意味で、豫めこれを通告するということにな
つておるのでありますが、この「
裁判所の代表者」という言葉が、今までに餘り用例のない言葉で、熟しない嫌いがありまするから、これを「
裁判所の
裁判官」というふうに改めたわけであります。
次に第十二條は、辯護人のないときには
裁判所が
辯護士の中からこれを選任せければならないということにな
つておるのでありますが、さようにして
裁判所が選任しました辯護人に對しては、旅費、日當、宿泊料、
報酬などを
支給することが
適當であり、又
實際に行われるのでありますが、これも
法文の中に現わした方がよかろうという
趣旨から、十二條の第三項といたしまして、「前項の辯護人は、旅費、日當、宿泊料及び
報酬を請求することができる。」ということを書き加えたわけであります。
それから第十四條の次に、つまり十四條と十五條の間に一條挿入することにいたしました。それは「第五條、第九條第一項及び前條の
裁判において、拘束者又は請求者に對して、手續に要した費用の全部又は一部を負擔させることができる。」という費用負擔の
規定でありますが、これもやはり
法文に
規定した方がよかろうというので、丁度場所を十四條の次に第十五條として入れることにいたしまして、十五條以下は一條ずつ繰下げるということにいたしたわけであります。
それから二十條の、「
最高裁判所は、請求、審問、
裁判その他の手續について、必要な規則を定めることができる。」、この
最高裁判所の規則制定權の
規定を、又本法でここに特に
規定したわけでありますが、先般來いろいろ審議いたしておりますると、「その他の手續」ということが書いてありまするために、單に
裁判上の手續だけについて、
最高裁判所は規則を定めることができる、というふうに
解釋せられる虞れがある。ところが、たびたび御
説明申上げております通り、本法は人身保護法の極めて重要な根幹となる部分を
規定いたしておりますので、いろいろ手續その他瑣末な問題については、相當
程度この附屬の法令に委ねたものがあるのであります。それらの中で、表現として「手續」と書いたために、それに含まれない虞れがありはしないかということが、相當懸念されましたので、この機會に、
最高裁判所の
規定制定は、單に手續のみならず、請求、審問、
裁判その他の事項にも及ぶのだということを明確にするために、この「手續」という文字を「事項」と改めたのであります。尚先程一條入れましたので、これも一條ずつ條文の順序が繰下がることになります。大體修正の
理由は、以上の通りであります。
尚
ちよつと附加えて申上げますが、この修正は、
最高裁判所などからも本法についていろいろな
意見が寄せられまして、それらの
意見を参考といたしまして、
最高裁判所とも十分事務的に打合せまして、かような修正を見ることにな
つたのであります。御覧のように主なる事項としては、出頭しない被拘束者を勾引するという一項、それかに審問期日は一週間以内に開かなければならんという點、それから
裁判所が選んだ辯護人には旅費、日當、宿泊料等の請求権を
はつきり認める、それから
裁判の費用負擔の問題、この四點が目新らしく附加えられたわけであります。字句の修正としては、最後に申上げましたルール制定權に關する「手續」という文字を「事項」に改めたということは、相當重大な
意味を持
つておるのじやないかと思います。以上附加えて置きます。