運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1948-05-07 第2回国会 参議院 司法委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年五月七日(金曜日)   —————————————   本日の会議に付した事件裁判官報酬等に関する法律案(内  閣送付) ○檢察官俸給等に関する法律案(内  閣送付) ○裁判官刑事事件不当処理等に関す  る調査の件   —————————————    午前十一時十九分開会
  2. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それではこれより司法委員会を開きます。「裁判官報酬等に関する法律案並びに「檢察官俸給等に関する法律案」両案を一括して議題といたします。前会に引続きまして質疑を継続いたします。
  3. 小川友三

    小川友三君 私は「裁判官報酬等に関する法律案」につきまして質疑をいたしたいと思います。報酬とありますが、裁判官報酬は、憲法の第七十九條並びに第八十條によつて在任中は減額することができないことになつておりますが、御承知通り、外貨の輸入見通しがいよいよ始まるということと、生産が増加しておるという現実と、平常事態に復しつつあるという経済状態から見まして、デフレに入る面が非常に多いのでありますが、政府はこの原案の通り報酬を上げてしまつて在任デフレに入りましても、これが憲法によつて守られておる関係上、下げることが非常に困難になると思いますが、この点に対しましてお伺い申上げます。昨日衆議院司法常任委員会の樣子を、総理大臣答弁を聞いておりますと、インフレは昂進をする一方であるというような解釈総理大臣はしておりますが、それは非常に解釈が私は誤まつておると思うのでありまして、こうして決めたからには、何年かはこのまま行くのであると思いますのでデフレ時代に入つた場合にはこれをどうする考えであるかという政府側の御意見を承わりたいと思います。    〔委員長退席理事岡部常委員長席に著く〕
  4. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) 只今お尋ねになりました案件は非常に重大な問題でございまして、むしろ財務当局から御答弁するのが至当かと考えておりますが、私は法務廳関係政府委員といたしまして一應お答え申上げます。お説のように、憲法によりまして、裁判官報酬は、一旦決定いたしますと、これを減額いたすことはできませんので、一應この法律案によりまして、別表によつて金額が決まりますというとこの金額は貨幣に対する特別の措置をいたさない限り、この金額を減額いさすことはできないものと考えております。
  5. 小川友三

    小川友三君 減額できないと思つておるというだけでは困ります。現在ある面においては新生が二十円に下りつつあるというようなわけで、デフレに入つておる面があるのは事実であります。このデフレに入りつつあるときに当りまして、こうしたことに対して、特に法務関係で知らないというならば大藏大臣又はこれに代るべき財務関係政府委員の御答弁を要求いたします。
  6. 岡部常

    理事岡部常君) 速記を止めて。    〔速記中止
  7. 岡部常

    理事岡部常君) 速記を始めて。懇談を止めまして、再開いたします。それでは、実はこちらの委員会の要求で法務廳から岡原人事課長最高裁判所から石田人事課長の両氏がお見えになつておられますので、給與関係について御質問がありましたら、この機会を御利用願いたいと思います。
  8. 小川友三

    小川友三君 裁判官檢察官報酬並び俸給に関する本案に対しまして政府は、檢察官には低い手当をするのが、これが建前であるということを言われておりまするが、この法律案から見ますると、上の方は大体同じでありますが、下の方において、相当同じような点があるのでありますが、これは現在までの採用した通念から推してこうしたことになつたのでありましようか。どういう観点から、こうした金額になつたのでしようか、御説明願います。
  9. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) お尋ね判檢事給與差異の点でございますが私、昨年の九月から人事課長をやつておりまして、一月程前に会計課長に変りましたので、その間ずつとこの給與の問題を取扱つておりました。從つてこの法案成立の当初にも関與いたしております関係上、知つておる限り御説明申上げたいと存じます。判檢事給與水準を如何にするかにつきましては、実は昨年の九月私が任命されました直後からこれを取上げまして、当時いわゆる凸凹調整というものが一般官吏について考えられました際でありましたので、取敢えず当時の司法省といたしましては、檢察官並びにその他の司法省所属職員に対する凸凹調整の形で優遇をしたいという方針の下に最高裁判所事務当局とも御連絡申上げまして、判檢事待遇を、私たち希望といたしましては大体同等ということで、その水準でやつて行きたい。さような観点から順次連絡をとりつつ立案した次第であります。然るに当時最高裁判所におかれましては、御承知裁判官の任命替の事務が非常に山積いたしまして、給與の改善に関する事務が聊か私たちの方よりは捗りませんので、案といたしましては、私の方が大藏省との連絡が先に付きました関係上、十月初旬においてすでに一案を得たのであります。その後、これを大藏省給與局連絡を重ねつつ、最高裁判所連絡をいたしまして、同時頃に発表しようということで進んで参りましたところが、十一月の初旬に至りまして、最高裁判所の方が所長の任命も全部済むというふうな見通しがありましたのと、それから私の方としては檢察官側からも優遇を早く実施して呉れという希望がありましたために、この凸凹調整の形の優遇と、それから裁判所の方のいわゆる裁判所法に基く例の報酬應急措置法、それに基く裁判所規則、その規則によつて俸給格付けをするというその規則の実際の運用と、この二つの並行した措置を同時にしたいということで、丁度十一月の五日と私は記憶しておりますが、裁判所の方は所長を全部任命するという段取りになつたと聞きましたので、その前日大藏省との最後的な打合せを済ましたあとに、最高裁判所人事課長に御連絡しまして、大体明日実施したいというので、それをやつて行きました次第であります。それが、大体若干の是正はありますけれども、現在の檢察官俸給の基礎になつておるのでございます。裁判官の方もその後若干遅れましたのでございますが、私たちの案とほぼ同樣、やや上の方で、最後的な御決定をされまして、殊に最高裁判所規則の第四号の一部改正をなさいまして一号の二千円の上に特号二千二百円という金額を一つ設け、その関係で私たちの方と水準が違つて参りましたけれども、大体においては並行したような案で、実際の給與をなさつたのでございます。そういうふうにして進行しておりました。ところが御承知俸給並び報酬應急措置法は十二月末を以て失効することに相成りました関係上十一月の下旬には恒久的な法律の形にこれを移し替える必要を認めましたので、その当時も裁判所と御連絡いたしまして、これを何とか恒久的に持つて行く立案を共同でしようじやないかということでやつておりました。ところが一般官吏に対する例の千八百円ベースからどこまで引上げるかという水準の問題が確定的な段階に至りませんので、この話も大藏省との連絡が付き兼ねて、御承知通り延期をされたのでございます。当時大藏省におきましては、給與局の一課、今は四課になつておりますが、坂田第一課長及び現在の慶徳第四課長手許におきまして、一般國家公務員給與等臨時措置法という法律法案準備されておつたのでございます。そこで、この一般國家公務員給與等臨時措置法水準檢察官並び裁判官水準は、どの点においてこれを合致せしめ、どの点においてこれに差を付けるべきかという具体的な檢討に入つたのでございます。然るに御承知通り、当時の情勢といたしましては、労働攻勢その他の事情がありました関係上、二千四百円にするか、五百名にするか、八百円にするか、乃至三千円にするかというふうな諸案がございまして、千八百円からの飛上りました限界が分りませんでした関係上、一般官吏給與体系が不確定のままであつて裁判官並び檢察官俸給体系確定することができんということで、そのままになつた次第でございます。その間私の方といたしましては、檢察官関係法案準備をいてしまして、一案を作り、これを法制局並び大藏省給與局の審査に託した事実がございます。その後明けまして本年の一、二月に入りまして、臨時給與委員会決定により二千九百二十円というベース確定いたしましたのでございますが、その直前のことでございます。日はちよつと忘れましたが、檢事総長から御下命がございまして……檢事総長GHQに参りましたところが、裁判所の方から判事俸給に関する法律案要綱が出ておる。檢察官の方はどうしたのか。檢察官の方も併せて私の方で、つまりGHQの方で審議したい。從つて早急に立案して持つて來いということを言われて來たが、君、どうなんだと、こういうふうな話がございまして、実は私の方といたしましては、若干の準備はしてございましたけれども、ちよつとした経緯がございました関係上、まあ事態を見送るということで、実は靜観をしておつたのでございますというふうに総長に申上げたのでございます。その結果、GHQのマコーミツク氏に呼ばれまして早く案を持つて來いということを下命されました。で、檢察官給與に関する法案要綱なるものを作成いたしまして、これを提出いたしましたところが、これは金額が書いてないじやないかというので、えらく、まあ不満を言われたのでございます。私の方としては格付けの問題だけを法案要綱に書いておつたので、金額は漠然としておつたのでございますが、さような話がございましたので、何とか金額確定する必要があるということを考えまして、どれくらいにいたしましようかというふうな話をいたしました結果、大体裁判所からの案も出ておるが、これを見て立案したらよかろうというような、筋はそんなようなお話員ありまして、それに実は倣つて一案を作つてつて行つたのでございます。然るに私の方といたしましては、当時まだ水準がはつきり決まつておりませんでした関係上、檢事総長俸給を三万円とする案と二万円とする案と二案準備いたしまして、A案B案と名付けましてまあいずれでも結構でございますと言つて提出して置いたのでございます。その後そのままにいたして置いたのでございますが、今申しました通り二千九百二十円のベース確定いたし、そうして同時に大藏省当局といたしましては、この二千九百二十円ベースによる内閣総通大臣俸給を二万五千円と一應の案を立てたということを聽きまして、二万五千円に相当する最高裁判所長官俸給を二万五千円というふうな案も考えて見たのでございますが当時の情勢といたしまして、或いは裁判官檢事官につきまして特殊な俸給を認めて呉れるんじやないか、大藏省も納得して呉れるんじやないかというふうなことも考えまして、まあ多少駈引きといつては大変失礼でございますが、三万五千円、三万円という案を一應出したのでございます。そういうふうにして進行いたし、両案を向うに預けつ放しにいたしまして、一般給與水準確定……給與水準と申しますと二千九百二十円による内閣総理大臣並びに各國務大臣の具体的な俸給金額確定を待つておりましたところが、突然まあ前の案でよろしいというふうな関係方面からの話もございまして、それで実は私の方としても一般水準との関係であわてたような次第でございました。その後、紆余曲折を経、或いはお聞き及びのことかとも思いますが、閣議におきましてもこれが相当問題にされたそうでございますが、結局のところ只今手許で御審議願うことになりましたこの両案のような形で確定することになつた次第でございます。一應の筋道はそういうふうなことでございます。
  10. 小川友三

    小川友三君 関連して……これは閣議決定事項でありまして、これに対して総理大臣はこういうことを二枚舌を使つているように思いますが、二枚舌であるかどうか、一つ責任ある御答弁を願います。総理大臣はこの判檢事差別を付けなくてはならないと初めに言われておりまして、それから終いになると、又同じ日に、今のところは暫定的に大差を付つけるべきではないということを言われております。それで昨日の衆議院速記録を見てもお分りの通り、これは差別じやない、総理大臣はこういう言葉を使いました。大きな人に大きな洋服を着せて、小さい人に小さい洋服を着せるんだから、これは何ら差別でないということを言われておりましたが、これにつきまして政府委員の御答弁を願います。これは速記録に載つておりますから……。
  11. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) 総理大臣が申しました趣旨は、裁判官憲法上における高い地位に鑑みまして、裁判官檢察官よりも高い報酬を支拂われるのが理想である。ところが現実はその理想の前にはいろいろな関係がありますので、直ちにその理想通りに参るわけに行かない。併し原則としては大体その理想の線に沿うようにして、檢察官裁判官よりはやや低目の給與本案では考えておるのである。ただ東京高等檢察廳檢事長、その他の檢事長それから最高檢察廳次長檢事、この檢察官につきましては大体東京高等裁判所長官、その外の方、裁判所長官と同額の給與を認めておるのである。これは檢察官裁判官に比較して、やや低い給與を與えられておるということに対する僅かな例外である、こういう趣旨の御答弁をいたしたと考えております。
  12. 小川友三

    小川友三君 関連して……総理大臣がかりそめにも裁判官を大きな人に見て、檢事を小さな人に見て、そうして大きな者には大きな洋服を着せるんだから差別じやない。小さい人には小さい洋服を着せるんだということですが裁判官を大きな人と解釈し、檢事を小さな人と解釈してよろしいのでしようか。これに対して責任ある御答弁を願います。
  13. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) 只今お話は、私総理大臣の発言として聽きませんので、どういう趣旨で申したのか、一應裁判官檢察官との待遇の在り方に関する譬として申上げたんだろうと想像いたすだけでございます。
  14. 大野幸一

    大野幸一君 この際一つ政府委員の人に申上げて置きたいと思います。本委員会し少人数と雖も全國民を代表しておるのであります。ここに速記を命ぜられて、あなたの今おつしやることは官報を以て全國民に知られるのであります。そこで今この法案の経過を説明せられました政府委員のお言葉の中に、A案を三万円とし、B案を二万円としてというような、こういうような節があります、これを國民が聞きますれば、一体向うが許して呉れれば三万円でも二万円でもよい、そういうような考えでこの法案を提出せられては、それは全國民承知いたしません。下級官吏給與を決める場合には、その家の家計簿を以て、その家計簿から計算したところの詳細なる説明を以て初めて二千九百二十円ベースがどうであるかということを眞に考え給與しておるのである。最高のいわゆる官職にある檢事総長ですか、それを二万円でも三万円でもよろしいと、こういうようなことを公々然としてここで言われては、我々國民の代表としては甚だ面白くない。そこで先程も、まあ掛値もあつた、こういうようなお話である。こういうような心掛けはよくない。今、國民は重税の負担に堪え兼ねて、そうしてそれでも尚日本再建のために、全く税金を納めるのに苦しんでおる。その税金から公務員が、國家役人俸給を貰つておるのである。こういう点をどう考えるのであるか、私は実にこのことはお考えを願いたい。そういうことをざつくばらんにおつしやることは歓迎いたします。そういうときには速記を止めてそうしてやつて頂かなければいけない、こういうことを今考えましたから、一言意見を申上げます。
  15. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 御指摘の通り、お言葉通りでございまして、大変失礼申上げました。ただ経緯はちよつと私の言葉が足りませんので、補足してちよつと申上げますんですが、その当時、先程もちよつと申上げました通り、二千九百二十円のベースが決まる直前でございまして、仮に二千四百円ペースになつた場合と、三千円のベースなつた場合の二案を考えたわけでございます。その根拠といたしますと当時大藏省給與委員会は私は随時出席いたしまして、給與成り行き承知いたしておりましたのでございますが、その成り行きによりますと、大体職階制を採用するということと、それから職階制なつた場合は大体現在の最高給の三十四号、総理大臣俸給でございます。その三十四号がどれだけに行くか、その何倍という倍率が出ておつたのであります。そこでその関係から二千五百円のベースによけ計算とそれから三千円のベースによる計算と二案を立てました次第でございましてその後二千九百二十円のベース確定いたしましたので、ほぼ私共の方で見通しました三万円の案に近いものと考えまして、三万円の、つまりA案確定的なものとして取上げたのでございます。ちよつと私の言葉が足りませんので大変申訳ないのでありますが、そういうような次第でございます。
  16. 大野幸一

    大野幸一君 よく了解いたしました。
  17. 岡部常

    理事岡部常君) 皆さんに申上げますが、最高裁判所から來ておられますが、御質問がありましたらこの際……。
  18. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 この両法案に直接の関係はないのでありますが、この二つの案が通過いたしますると、まあ十分ではありますまいが、裁判官並び檢察官の問題は、一應けりが付くのではないかと考えるわけであります。この前小川さんであつたと思いますが、御質問なつたようでありますが、私共九州班の視察に参りまして、各裁判所に参りました際にも、裁判所長その他の関係の方からも特にお話があつたのでありますが、それは裁判所書記これは無論憲法上何も保障されておるわけではありませんが、仕事の上におきまして殆んど判事と不可分の関係にあります。実に多忙な仕事をしておられる。公判の書記のごときは、清書されるのは殆んど自分の家で日曜も潰してやられるという実情であります。平素の勤務振りを見ましても、他の官廳等におきましてはいろいろなことをやつております。定時退廳をやるとか、或いはいろいろな爭議をやつておるのでありますが、私共の知る範囲においては、裁判所だけは実に眞面目にやつておる、殆んど心魂を傾けてやつておると言つても過言ではないくらいに私共考えて非常に感謝しておるのでありますが、これも御承知のように他の官廳方々に比べて非常に窮屈な生活をしておられるという実情にあるようであります。いろいろとお考えもあることと思いますが、これらの方々に対して具体的なことをお考えになつておりまするならばこの際承つて置きたい。若し現在そういうような案が具体的に進められておらんならば、何とかしてこの裁判所職員に対する特別な措置をお考えを願いたい、こういうふうに考えておるわけであります。一つ忌憚なき御意見を承わりたいと思います。
  19. 石田和外

    説明員石田和外君) 只今どうも大変御理解のある、裁判所といたしましては全く有難い御質問でございまして感謝いたします。実は新憲法の実施によりまして新らしい裁判制度として裁判所は出発することになりまして、判事待遇問題ということが審議されておるわけでございますが、裁判所をよくいたしますには、実は裁判官だけがよくなりましても、決して満足な結果は得られませんので、これと相呼應して裁判所事務官乃至書記地位が、裁判官地位に比例して、これに準じて向上しなければ到底司法制度の満足なる運用は得て望み得ないところでございます。これを質をよくいたしますには、どういたしましても、然るべき優遇をして頂きませんというと、優秀な人材を吸收することができないわけでございます。ところが給與の問題に関連いたしましては、結局裁判所書記に対する世間の御認識が非常に低いせいがあると思いますが、單なる書き役というふうに考えられておりますので、非常に低く待遇され、又志氣も大いに上らないという状態なのでございます。ところが給與の問題といたしましては一般公務員給與の問題から切り離して、これを見て頂きたいというのが裁判所側希望でございますが、一般の御認識が低いためになかなかそこまでやつて頂く情勢にならんのだと思います。その点、今後裁判所に課せられた大きな問題として、私共も世間の御認識を得べく最大の努力をいたすつもりでおります。それから給與面のみならずいろいろ内容を充実するという必要もございまして、そのためには可なり大掛りな裁判内書記研修制度と申しますか、特別な教養の設備をこれも考えて、結局物質的な給與が向上すると同時に、質的にも向上を図つて事務局乃至書記の充実を図りたいというふうに考えておりますが、今のところ具体案は遺憾ながら得てございません。
  20. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 先程裁判官の方も檢察官の方も同じ水準によつて計算をするという考えで進んだというお話でございましたが、その意味は何か法律根拠に基いて、そういうことをおつしやられるのか。それと判事檢事裁判官檢察官との平等ということと、檢察官から眺めて、一般官吏とこ水準ということについてはどういう考えを持つておられるか。つまり法律上の何か根拠によつて水準を同じくするということを言つておられるのかどうか。そうしたならばその法律上の根拠を示して頂きたい。
  21. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 只今お話の点につきましては、私の考えるところでは別に法律上の根拠という程のことはないと存じております。ただ從來いわゆる判檢事と言われ、或いは司法官と言われておつた、その取扱いの実績と言いますか、それから現在の裁判所並び檢察廳を構成しております裁判官檢察官実質と言いますか、それらの関係からして今直ちにこれに著しい差等を付けるということは、事実上妥当ではないというふうに考えましてこの程度の差で一應妥協と言いますか具体案としたいという考えなんでございます。それから一般官吏との水準の問題でございますが、これは超過勤務手当裁判官檢察官は認められない関係上、実際の運用の面におきましては、必ずしも飛躍的な、或いは顯著は差異は出て來ないだろうと実は考えているのでございます。勿論何割かの違いは出て來るかと思いますが、そう目を瞠るような、國民が納得しないような差別は出て來ないと私は考えております。この問たは、実は現在の裁判官檢察官を新らしい俸給のどの号俸に載せるかという問題で決して参りますので、今直ちに数字的には御説明申上げることができないのを遺憾とするのでございますが、平均といたしまして必ずしもそう違いは出て來ない、こういうふうに考えているのでございます。
  22. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 そういたしますというと、一般官吏実質においては大体同じように考えている、こういうふうに了解してよろしいのでございますか。
  23. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) その点は今もちよつと申上げました通り、具体的にこの人がどの号俸に行く、そうすると新らしい俸給幾らになる、そうすると総計幾らになるという計算をして見ませんと、具体的なことを申上げ兼ねるので、非常に遺憾でございますけれども、大体ちよつと目の子算と言いますか、見通しでは三割ぐらいの差はできても、それ以上大した差はできないと私は睨んでおります。これは実際の睨みでございまして、これからこの法案が若し通るようなことになりましたら、その上で具体的に当嵌めをして、この人は何号俸、この人は何号俸で、それから超過勤務手当実績考えまして総計幾らというふうに計算しなければなりませんので、相当計算は面倒なんで、事前に資料を作ることができませんのは非常に遺憾でございます。
  24. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 大体において同じようにするという考えなんですか。普通の役人よりも三割多くしようという考えですか。
  25. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) いいえ、その点は一般行政官と違いまして、司法権の行使に参画する裁判官並びに準司法官的な仕事をする檢察官につきまして、それぞれ安んじてその職務を遂行し、その威嚴を保ち得る程度金額ということで立案したのでございまして、実は二千九百二十円ベースによる一般官吏俸給の具体的な金額は、私たちの案ができました後に、第二囘の臨時給與委員会立案に基いて作製したものでございます。從つて案成立が前後いたしますので、特に三割の差を付けたいと思つて……そういう経過ではございませんので、結果的に見ますと、大体そんなことになるのじやないかというような感じがするというわけでございます。
  26. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 それでありますと、こういうふうに解釈していいですか。司法官とか、準司法官の地位を保つ上において、私は準司法官ということは絶対に承認しませんが……安んじて職を奉ずるに必要な金額を算出したのであるというならば一般官吏と比較する必要はない、絶対論なんですから……從つて一般官吏がどうなつても司法官及び準司法官はこれだけの金が要るという絶対論をするのであるかどうか、若し超過勤務手当制度を認めた場合はどうしますか。一般官吏と同じように、超過勤務手当を認めた場合でも一般官吏より必ず重くなければならないという議論が必要であろうか、一般官吏の問題に関係なく、自己の地位のために必要な金額を要求されるかどうか伺いたい。
  27. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 立案の経過から申上げますと、判檢事がその職務を安んじて執り得る報酬並び俸給を與えないということが、計算の基準になつたのでございまして、勿論そこには一般官吏給與水準というものが大きな枠として嵌つておることはこれは当然でございますので、それとの睨み合いを考慮しつつこの案が出た次第であります。
  28. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 枠が参考になつておるということであれば、枠を尊重するのか、それよりも高くするのかということを伺つておるのであります。
  29. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 御指摘の御質問にお答えします。その点は一般官吏の枠内において処理しておるつもりでございます。
  30. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 枠内ですか。それであれば、原則として、一般官吏も亦自己の職責を盡すに必要な俸給を貰わなければならんのは当然で、これは國家公務員全般の問題でひとり檢察官だけの問題でないと思います。その意味においては一般官吏の枠内で進むというお考えであろうと私は思います。檢察官だけが別の行政官だから重いということはなく、これはそれぞれの見方によつて檢察官が重いとか、税務の官吏が重いということが議論されるので、從つて公務員としては一般官吏の枠内において進むべきであるかどうかということを私は伺つておるのであります。
  31. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 御指摘の通りでございまして、一般給與水準の枠内においてこれを進めて行くべきであつて、特にこの枠を外して特殊の待遇をしようということではないのでございます。そしてこれは國家公務員法の精神によりましてそれぞれの官吏の持つ責任と地位と職務に應じましてそれぞれ違つた給與の体系が作られるのでございます。從つて一般給與につきましても現在進められた案によりますと、一應共通の何級ということが、一級から十四級までございますが、その級の枠に嵌らないところの学校職員刑務官といつたような方々につきましては別な職階を作る。併しそれはいずれにせよ二千九百二十円ベースに載せるという案で進んでおるようでございます。從つて判檢事につきましてもその枠内で処理しておるということでございます。
  32. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 結局するところよく了解しました。最後に判檢事についてもとおつしやつておりますが、判檢事もやはり國家公務員と平等の眺め方をしなければいけないということについては、私は了解します。そこで私は法律上の根拠があると思う。上の方には……。それは現に裁判官報酬の應急措置に関する法律というものがある。それから檢察官俸給の應急措置に関する法律というものがあつて、上の方の裁判官なり檢察官なりは、ちやんと準拠法ができているのでありますから、この法律が嚴として存在している間は、それがたとえ應急的な法律であろうと、改正されるまではそれに準拠して支給さるべきであると思いますが、如何でありましようか。
  33. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) その点につきましては、その應急尊置法ができ上りました当初の経偉を簡單に申上げなければいけませんのですが、その当時判檢事については、差を認めるべきか認めてはいかんかという問題が、やはり今囘同樣問題になつたのでございます。併しこの点につきましては、いろいろな情勢がございまして、應急措置法の線まで動きまして、從來の、終戰と言いますか、新憲法施行直前までは全然対等という地位が変つてつた俸給については変つてつたのでございます。然るにその後いろいろ又情勢が最近変つたように私は思いますが、やはり旧來通りの余り差異を付けないほぼ同等のあれで行くべきだという考えが支配的に、支配的と言つてはなんでございますが、非常に持上つて参りましたので、結局今度の案を作つた次第でございます。尚ちよつと現在の根拠法のお話がございましたのですが、実は應急措置法関係は五月二日で失効いたしました関係上、実は是非この法律を早く、五月三日以前に出そうかと思つてつたのでございますけれども、どうしても間に合いませんので、つい失効したというふうな形でございます。根本方針は從つて動きつつあるというふうに御了承願えればよいと思います。
  34. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 この五月二日で失効しておりますけれども、あの案を作るときは前ですから、そのことについてはそれは細かい議論として必要はないと思いますが、若し必要があれば、それを延ばして置けばよい。審議する間……。今、無法律状態にありますけれども、まあこれは無法律状態はおかしいのですが、常識的にこの法律でやつてつて差支えない。こういうことは今度新らしい法律が出れば、前に遡つてやればいいのだから一向心配ありません。大体私了解しました。そういう趣旨法務廳として考えておられるということは私よく了解しました。そこで法務廳裁判官の方の俸給について予算を提案するという法律上の根拠をどこに置いておられるか。つまり裁判所の予算を法務廳で取扱うということは、現行法上ちつとも根拠がないと私は思うのです。元はよいのです。司法省というものは漠然としておりましたから……。今度はそれがないのだから、裁判所のことの説明をあなたの方でされるということが、裁判所の方としては或いは迷惑かも知れないと私は思うのです。その点どうですか。法律上の根拠は……。
  35. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 御指摘の通りでございまして、法務廳としては裁判所の予算に干與する権能は持つておりませんのでございます。併し本件の取扱いといたしましては、裁判所の方で法案の提出権がございません関係法務廳の方に御依頼になりましたのでございます。それでこちらで御審議願いまして、法律ができますれば、いわゆる法律費と申しますか、規定費と申しますか、法律で認められた経費として裁判所の方で予算にお組みになつて國会の御審議を願うという、こういう順序になるだろうと思います。
  36. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 法務廳の中にはいろいろ調査局というものもあり、法制局というものもできて、從來の法制局のような仕事をしておるのだから、裁判所系統の予算をどうするかという法律上の権限はないと思います。現行法はそうであるが、將來どうするつもりか、若し法務廳の方が頼まれたからやるということは、そういうことは私的の行爲であつて、合法であるかということは、これは問題だと思います。それは内閣としてどう考えておるかということは、これは法務廳に聽くより内閣に聽いた方がよいかも知れませんが、どういう協定をされたのでありますか。それを何か内閣において審議の結果こういうことにするというふうに決めたのか、將來はどういうようにするつもりであるか、何か調査中であるかどうか、その点を承わりたいと思います。
  37. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) 裁判所関係法律、殊に本件のような裁判官報酬等に関する法律案を、政府の如何なる機関において準備いたすかという問題でございますが、從來これは司法省でいたしておりまして、新たに裁判所司法省の管轄から離れまして独立いたしますと同時に、それから更に司法省が新らしい法務廳として姿を変えて參りました現在におきましては、政府部内におきまして裁判所関係法案の取扱部局といたしましては、やはり法務廳が一番適当であろうというふうに從前の取扱上の経緯もございますし、適当と考えまして、法務廳でこれを研給準備するということになつた次第でございますが、法務廳の部内におきましての関係では、総裁以下幹部の者が集りまして、一應裁判所関係法律案は調査意見第一局が主管責任者として準備をいたすということに取り決められまして、その通り決めに從いまして、主として調査意見第一局においてその法律案準備いたしたのでございます。その準備につきましては、先程会計課長から御説明いたしましたように專ら裁判所の意向を曽重いたしまして成るべく裁判所の方の御希望を達成いたしますように、又これは政府の責任において提案いたす次第でございますから、政府の立場を勿論考慮いたしつつ成るべく裁判所の御希望に副うようにいたしまして、本案準備いたしたわけでございます。予算の関係につきましては、これは相当むつかしい問題だと考えておりますが、本法律案は一應只今申しましたように法務廳準備いたして、法務廳が主管省といたしまして閣議に提案いたしたわけでございますが、あの案の実態は主として給與にかかつております関係上、給與局が或いは提案者になるということも全然考えられないわけではなかつた次第でございます。で、殊に予算という関係になりますと、むしろ法務廳は余り関係いたさない方がよろしいのではないか。裁判所と大蔵省との間で御研究願いまして、むしろ政府といたしましては大藏省におきまして予算関係準備いたはのが妥当ではないか。こういうように考えております。
  38. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 予算の関係は元は行政裁判所の方は内閣でやつてつたのです。私はその方の考えがむしろ正しいと思います。御考究中のようでありますから、十分御檢討願いたいと思います。そうしませんと、準司法官の待遇をやらる場合に、いわゆる大体の司法官の方で、それは純予算でそこまで盛つてつたら又それを動かさなければならんという議論も生ずると思います。法務廳としてよく御考究願いたいと思います。
  39. 小川友三

    小川友三君 今法務廳会計課長さんがおつしやられましたが、これは総理大臣意見と見て間違いないですか。裁判官一般官吏の枠内でやはり待遇すると申されましたが、昨日総理大臣は、速記録を見るとよく分りますが、著しく高くこれを待遇し、特に品位を高めるために厚遇をするということを総理大臣は言われておりますが、あなたのおつしやるのでは、総理大臣じやないけれども、政府委員に代行する方ですか、寺府委員ですか、とにかくこれは総理大臣の昨日の意見と違う。これは非常に大きな問題でありまして、まあ御答弁は後日で結構ですが……。
  40. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) お話の点は御尤もな御疑問と存じます。要するに二千九百二十円ペースの枠内において最高級の報酬を拂いたい、こういうことなんでございます。
  41. 岡部常

    理事岡部常君) それではこの程度で休憩いたします。午後再開いたします。    午後零時二十二分休憩    —————・—————    午後二時三十二分開会
  42. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 午前に引続きまして質疑を継続いたします。この間から質疑の論点になつておる二点を、私から代表的に聞いて置きます。先ず今質疑者の松村さんがおいでになりませんから私から申上げますが、最高裁判所長官に対する報酬総理大臣に準じてあるのであるから、先ず総理大臣及び國務大臣俸給に関する法律案を提出してからこれを出すべきではないか、この点に対する政府委員の御意見を伺つて置きます。
  43. 今井一男

    政府委員(今井一男君) 確かに從來の慣例から申しますとお説の通りでございますが、実は政府部内におきましては、認証官に関する案そのものも具体的には閣議決定をいたしまして、司令部の目下了解を得つつあるのでありますが、恐らくこれも極く近い機会に御審議願えると考えております。大体関係方面の意向も固まりましたので、一方、裁判官の方は特殊の関係からしまして、成るべく早く御審議を願う必要もございましたので、一應総理大臣及び國務大臣俸給見通し確定いたしました機会にこちらの法案を提出いたすような運びにしておるのであります。從いまして総理大臣及び國務大臣は二萬五千円並びに二萬円、こういう案で目下進行いたしておりますのみならず、すでに関係方面実質上の了解も得ております。ただ形式上の手続がまだ完了いたしておりません。恐らく來週中には認証官の給與に関する法律という形で國会の御審議を願うことになつております。
  44. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それからいま一つは、裁判官及び檢察官に対するところの労働基準法に基くところの時間外手当超過勤務手当これを與えないということにいたしたということに至つた理由を一つ伺いたいと思います。
  45. 今井一男

    政府委員(今井一男君) この点は裁判所及び檢察廳方面とも御相談をいたしました結果、纒まりましたものでございまして、本來労働基準法をそのまま解釈いたしますれば、時間外勤務はすべて時間毎に正確な計算をいたしまして、それ相当の時間外手当を給するのが法の命ずるところであります。併しながら労働基準法は、本來労働者を建前にいたしまして規定されております関係上、機械というものにぶら下つておる、機械を離れれば、それで仕事から離れる、こういつた立場の者には極めてぴつたり適用されるのでありますが、特殊の職務に從事しておる者、特に裁判官でありますとか、檢察官でありますとかいう者には、單に官廳の門をくぐつて官廳の門を出るまでが勤務時間である。それを一歩出たら勤務でなくなると認定することも不都合の場合も少くございませんので、仕事の性質上、官廳内におる時間は短かいかも知れんが、自宅においても或いは官廳外においても相当に仕事のために力を盡さなければらならん場合が多い。これのいい例といたしまして私共研究いたしておりますものは教員でございますが、教員は勿論本職は教壇に立つて講義をすることでございますけれどもその外に教案を作り、教材を整理をする。或いは採点をするといつた意味においきまして、学校の門を出ましても外に仕事、職務と考えなければならん勤務がある。こういつたものを又個別的に時的で各人別に計るということもその身分の関係から適当とも考えられませんので、大体これを達観いたしまして、一般行政官吏の平均二割乃至三割の超過勤務をしたもの、こういう前提の下にそれだけの手当を本俸の中に織込みまして、更にその外に、二割強程度一般官吏よりも優遇するという立場で檢事給與の案ができ上つております。判事はそれよりも若干色を付けるという立場で今囘の裁判官報酬ができ上つておるのでありまして、從いまして精神におきましては、超過勤務手当並みのものが、即ち時間外に働くということがすでに本俸の計算の中に含まれておる。從つてそれより少くても別に差引の問題も生じないし、多くても追給という問題は生じない。そういう特殊の職務である。即ち基準法における例外をなすという考え方で法律案はでき上つております。
  46. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 今囘政府から提出されました裁判官並び檢察官俸給並び報酬に関しまする両法案が出ておりますが、この法案によりますると、それぞれ月額について定めがございまするが、誠にこれは分り切つたような問題だと思いまするけれども、私は寡聞にしてその間の事情が分りませんためにお伺いいたすのでありまするが、檢事総長或いは次長檢事、その他高等檢察廳檢事長とか、或いは又最高裁判所側におきまするそれぞれ最高長官の方の分につきましては人数も決まつておりまするが、判事及び檢事の場合にはそれぞれ号数によりまして俸給の額は違つて参りまするが、こうしたような場合にも、例えば一号が一万三千円、七号が七千円というふうな異同がありまするが、この場合に一方の方に偏して例えば一号檢事を大部分にするとか、或いは二号の檢事を少くするとかいうふうな取捨はそれぞれ予算の中において予め決めておるのでありましようか。殊に最高裁判所の場合におきましては、普通の行政官の場合とは違つておると覚えておりまするが、そうした場合における予算の面におきましては、何らかの号数によつて判事の一号が何名、二号が何名とかいうふうに人数がそれぞれ決まつておるのでありますか。それとも或いはこの点については号数のいずれを任用しようともそれは差支えなきものであるのであるか。若しそうした場合における予算に及ぼします影響もございまするので、その点はどういうふうになつておるか。檢察官の場合と最高裁判所の場合とはおのずから違つて來ようと思いますので、その点を一つこの際御説明を承わりたいと思います。
  47. 今井一男

    政府委員(今井一男君) 申上げます。檢事の場合には、申上げるまでもなく法律観念の上から申上げますれば行政官でございますので、内閣総理大臣の指揮監督の下にあるというような建前から行政官吏に対する俸給の振り割りは只今大藏大臣が綜合的にこれを定めることに相成つております。從いまして一般行政官吏が大体全体の予算が幾らであるとか、全体の單價が幾ら、こういつたことが決まりますというと、それから何割優遇しておるのであるから、從つて檢事の平均單價は幾らになると、こういつたような算盤が自然と出て参ります。尚昇給等につきましても、一般の文官が大体何年どこに勤務するというとどの程度まで昇給して行く、それよりも一定の割合だけ高く、一定の幅を保持しながら檢事の方は進んで行く、こういつた式にお打合せ願う予定でおります。從いましておのずからそこに権衡がとれますと同時に、檢事の極く当初任官をされた方から檢事正のクラスまで、ずつと各号俸に人が配分されることに相成るのであります。併しながらこれは定員的に何号俸は何人と決めてあるわけではありませんので、事情によりましては非常に上の人が多くなつたり、或いは下の方が多くなつたりすることはこれはあり得ると思います。尚判事につきましては、実は全面的に行政府から独立しております最高裁判所長官がおやり下さることでありますからして、行政府としては、こうやれ、ああやれと干渉ができる建前のものではございません。併しながら從來の例その他がございますので、こちらの檢事等に関する準則を最高裁判所の方にお目に掛けまして、そうしてできるだけ歩調を揃えて行くというようなお取計らいにお願いしようとかように存じております。
  48. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そういたしますると、檢事の方にはすでに準則があつて、その準則によつて在來お取扱いになつておるわけですね。ところがこの最高裁判所の場合にはそれがない。そういうふうになりまするならば、今囘こうした両法案が提出されて、両院をこれが通過するとして場合におきましては、予算の組み方はどういうふうな基準を置いて組まれるのであるか。やはり檢事の準則によつて予算を組まれるのであるか。それとも、その予算の組み方については予め最高裁判所の方で以てそれをかれこれ自由になし得るとするならば、それを了解済みの上でなければ予算が組まれないのか。それとも最高裁判所の場合においても、やはり予算を組みまする以前に準則を決めて貰つてから後に予算を組む、不確定なる予算を組むわけには参らないのであります。その点についての重ねて御説明を承わりたい。
  49. 今井一男

    政府委員(今井一男君) 大体こういうことに相成るのではないかと考えます。一般行政官吏は今まで貰つておりました給與が御承知の千八百円ベースでございます。これが今囘二千九百二十円ベースに相成つたわけでありまして、この点から参りますと、大体六割ちよつと殖えるわけだと思います。それだけ一般行政官吏廳の各人の予算單價は殖えるわけです。それと見合いまして判事檢事の現在貰つておる俸給がこれが千八百円ベースであります。普通に若し優遇しませんでしたら現在に六割二分という数字を掛ければよいのでありますが、今囘は約四割程度一般行政官吏より……これは超過勤務も入つての話でありますが……加えますと、四割程度差が付いておりますのでその数字をそれに重ねまして、一般行政官吏の上ります割合以上に、四割の数字を加えまして、そうして現在貰つておられる予算総額を基礎にして彈き出せば大過のない数字が出て参りまして、実際の運用にも、それで裁判所におかれましても、そう支障は生じない。かように見通しております。
  50. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 この檢察官俸給等に関はまする法律案の第三條によりますると、只今政府委員の御説明のごとくに準則が定められまして、その準則は大藏大臣と法務総裁が協議の上において定めることになつております。ところが、この裁判官報酬等に関する法律案の十條及び十一條のこれに対峙いたしまする趣旨の規定があるのでありまするが、これによりますると、第十一條の「裁判官報酬その他の給與に関する細則は、最高裁判所が、これを定める。」ことになつております。して見ますると、この法案が両院を通過して効力を発生することになりました後に、最高裁判所において細則を自由に定めることになるのであります。そういうことになりますと、只今説明のごとくに了解されて、そうして最高裁判所の方がその基準によつて定められるならば別としまして、規定の上からいたしますると、さような根拠がないのであります。そういたしますると、予算を私共が考えまする場合に、標準の実は取り方がないと思います。更に又十條の規定によりますると、「生計費及び一般賃金事情の著して変動により一般官吏について、政府がその俸給その他の給與の額を増加し、又は特別の給與を支給するときは、最高裁判所は、裁判所について、一般官吏の例に準じて、報酬その他の額を増加し、又は特別の給與を支給することができる。」こうなつております。この十條十一條によりますると、行政官の場合はおのずから只今政府委員説明によつて從來の例に從つて、準則によつてやりまするが、最高裁判所の場合においては、予算が独立しておりますような関係からして、この間に法的に何らかのやはり基準がなければ、甚だ私共は危ぶまざるを得ないと思います。その点はどういうふうにお考えになつているのであるか。只今の御説明のごとくに、恐らくは最高裁判所においても、この一般官吏給與の準則に大体準じてやられるつもりだというふうな、極めて理解ある解釈の下におられるのであるか、それともこの規定で以て足れりとお考えなのであるか、その点を一つ再度伺いたいと思います。
  51. 今井一男

    政府委員(今井一男君) 誠に御尤もな仰せでございますが、從來の裁判所と我々行政部との交渉の経驗から申上げますれば、只今御指摘のような事態は恐らく起らないではなかろうかと、かように実は想像いたしておりますが併し建前から申せば、三権分立でもございますし。最高裁判所がそういつたものに対する権限をお持ちなんでありますからして、極端な例を申せば全部判事が一号俸でやつてしまうというようなことをおつしやる場合も、仮定的には想像できないことではありませんが、実際そんなことはあるまいと思いますが、萬一そういうふうな場合がありました際には、結局予算の問題で、大藏省の予算当局と意見が食い違う予算につきましては、御案内の通り最高裁判所から提出することの権限はございませんで、政府最高裁判所の予算を提出いたすのであります。その際には結局両方の委員が國会へ出まして國会の方で適当なお裁きを受ける。こういつたことに仮定いたしますとなるのではなかろうかと想像いたしますが実際問題といたしましては、從來の例から申しまして、御心配のような事態は万が一にも起るまいと実は樂観いたしております。ただ法律の権限といたしましては、やはりどうしても裁判所にお委せせざるを得ない。建前といたしましてこういつたことまで檢察官と同じようにするということは、司法行政の関係からいつて適当でない。かように存じておる次第でございます。
  52. 小川友三

    小川友三君 裁判官報酬は「在任中、これを減額することができない。」という憲法八十條、及び七十九條につきましてお伺い申上げます。  昨日総理大臣が、速記録を御覽になればお分りになります通り、そういう心配はないという意味の御答弁がございました。そうしますとインフレは当分の間昂進をして行くとかような解釈をしてよろしうございましようか、そうしてインフレの後にはデフレ時代が來るという解釈を本員はいたしております。その原因は現内閣の政策が産業振興、あらゆる方面において相当に効果が挙つておりまして、物資の増加によりまして当然デフレ時代に入るものと私は解釈をいたしております。それからもう一つの原因は外資が相当に入る見込があるし、昨年五億ドルのクレジツトが成立しまして、それによつて物資が相当入つておりまして、日本のインフレもデフレに向いつつあるのではないかということが想像できるのであります。第三の原因は、現内閣の課税方法が非常に成績がよくて、税金によつて通貨が囘收を相当せられておりますので、私は近い中に、或いは一年か二年の中に相当デフレ時代に入ると思いますので、それにつきまして政府委員さんの御答弁をお願い申上げます。
  53. 今井一男

    政府委員(今井一男君) 御指摘の現在の憲法七十九條ですが、こちらの解釈からいたしますれば御指摘の通り如何なる事情が起りましても、仮に本人の同意があつても減額することができない、かような精神だと私共はそういう解釈をとつております。從いましてインフレ、デフレという問題はこの憲法の規定とは直接の関係は持つておらない。とにかく憲法の存しまする限り減額はどういう事情がありましてもできないものと、さような解釈をいたしております。
  54. 小川友三

    小川友三君 できないことは分つております。そこで政府デフレに入る見通しが付きつつある時に当りましてデフレに入らないような御答弁総理大臣は言うておりますが、デフレにここ当分何年かの間入らないでしようか。何年ぐらい入らないかという見通しが付きましたらばお話が願いたいのであります。
  55. 今井一男

    政府委員(今井一男君) 私共風情でお答えするのは少し問題が大き過ぎるようでありますが、我々大藏省事務当局としましても、インフレが非常に工合よく止りましても、要するに止るのであつて、物價はそこに落着く。從いまして又それから急激に米なら米が五十銭まで下つて行くというような時代は想像いたしておりませんし、又理論的にも想像できまいと考えます。ただそこで物價が安定する、いわゆるデフレとは申しますが、デフレは丁度インフレの只今までの進行を逆に持つて行くというような例は、各國の例、その他日本の例からいたしましても、到底想像いたし兼ねるのじやないか。そこでストツプして、多少の下げ戻しはございましようが、それは殆んど問題になるような幅には達しないのじやないか。かような見通しを持つております。
  56. 小川友三

    小川友三君 そういう見通しの場合それを誤まりましてデフレに入つた場合、現在公定價格のある品物で、公定價格以下で取引されておる品物が非常に多うございます。公定價格の半分ぐらい、つまり工作機械のごときは公定價格の半分又は三分の一という程度でございます。それはデフレに入つた一つの現象であると申上げてよろしいのですが、デフレに入つた場合に、本法案が議会を通過した場合に、改正案を政府がその場合出す意思があるかどうかということを拜聽しまして質問を打切りますが、御答弁を願います。
  57. 今井一男

    政府委員(今井一男君) 万一仮にお示しのように、例えば米一升五十銭になつた、從つて一般の賃金は昔のように百円とか八十円とかいう金額なつた場合においても、憲法に規定がある以上、判事なら判事というものが只今の万を以て数える金で置いて置かなければならんかどうか、そういつた質問のようにお伺いしたのでありますが、そういつた場合が起りました際には、やはり憲法に手をつけるという問題になつて來るんじやないか、かように私共といたしましては了解いたしております。
  58. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 私は只今質問及び答弁に対しまして、政府委員に私の意見を申します。政府委員お聽き願いたいんです。それは今の質問に対しまして、政府の態度としては大体において動かないだろうということを言うべき筈だと思います。インフレが起つたデフレが起つたりするということは、まだ凡そ安定していない場合であるならば、その部分は私は臨時手当でやるべきだと思います。政府は必ずそういう御用意があると思います。ですから小川委員の質問のごときことは、あるべからざることであつて、大体においてこれで安定しておるという考えで行くんであつて、インフレであればインフレの勢いはこれは止むを得ないからというので、それは容易には引かないというところで考究すべきであると私は思います。裁判官が減額してはいけないというから、一般官吏に対しては減額していいかというような、そんなことは軽々しくいえない、從來一般官吏と雖もなかなか容易に減額などやつておりません。そんなことはできるものでない。ですから憲法の明文は、一般官吏と違つて司法官であるが故に減俸ができないのであつて行政官幾らでも減らせるということは間違つておると思う。軽卒に俸給などは決めるべきでなくして、そういう御心配があるようなことを政府はやらないと考えておりますが、先の見通しデフレになつて動くような部分があるならば、それは臨時手当の方で考えるべきであつて、二千九百二十円ベースというものは大体において動かないだろうという考えでやつておるのだと思いますがどうですか。
  59. 今井一男

    政府委員(今井一男君) 全くお説の通りだと考えます。決して一般官吏であるからと申しまして減額をそう容易にできないことは從來我が國におきましても体驗済みの問題でございます。ただ憲法におきまして特に司法権の独立を尊重いたしまして、一應國会と雖もそう軽々しく手が付けられない、一般行政官のように建前といたしましては行政権を以てやれるということを縛つただけの意味に過ぎない、こういつたお示しのことは私共全然御同感でございます。ただ若し殖えた場合に、万一予定が狂いましてインフレが進みまして、更に給與を増さなければならん場合に、それをいろいろの臨時手当等の形でやつたらどうか、こういつた意見は、これは普通民間には常にそういつた形で行われておるのでございますが、政府も從來そういつた形をとつたこともございますが、やはり給與簡素化の面と、及び結局本俸にでき得る限り多くのウエートを持たせますことが、体系の上からのみならずいろいろ計算の場合の基礎にいたします関係からも便宜じやなかろうかといつたような考え方から、今囘の案も從來いろいろの名前でやつておりましたものを一本に纏めました次第でございます。
  60. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 私は根本において共鳴しておられるのじやないかと思います。いろいろ細かいことを言われますが、細かいことを言われるがために本体を潰してはいかん、動くべきものは臨時のものであつて、動かざるべきものは俸給であるということの原則はもうお認めになつておると思いますからそれだけの御答弁で私は結構です。  それからどうも司法権が独立しておるから裁判所の予算も手が着けられないような、裁判所俸給までが独立しておるようなお考えのようですが、それは私は間違つておると思う。司法権の独立というのは裁判所の予算までも独立するという性質じやありません。憲法はそんなことは書いておりません。司法権ということは司法裁判所の予算までもすつかり独立して財政の関係から脱却するというようなことは全然書いてない。それはもうそういうことを考えておられれば間違いであると私は申上げておきます。それから裁判所の予算の立て方を從來どうしておられますか。私は法務廳を経てやるというやり方はいかんと思います。これは財政法を御覽になりましても、財政法の十七條とか十八條、十九條というものを御覽になれば、大体会計檢査院と同じ取扱をしておるのですが、そういう取扱をしておられますかどうですか。そういうふうにすべきものだと思う。独立して、法務廳は経ないでじかにやるという会計檢査院と同じようにすればいいので、法律がそういうことを要望しておる、そういうふうにしておられるかどうですか。又そういうふうにすべきものだと思いますが、この形は裁判所と会計檢査院と大体同じように見ておる。会計檢査院は從來の憲法では独立しておつたが、今囘の憲法では独立の性質は余り持つておりません。併し財政の方では政府を監督する形になつております。決算の関係においても独立しておる。よく財政法の規定を御覽になつて、そういう趣旨で実行して頂きたい。法務廳から私は離さなければいかんと思いますが、その点どういうお考えを持つておられますか。
  61. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) 松村委員のお尋ねに対しまして、今朝も同樣なお尋ねがございましたですが、私からお答え申上げましたように、裁判所の予算につきましては、法務廳を経由いたしておりません。これは最高裁判所が大藏当局と御協議になりまして、そうして内閣から予算案を國会に提出いたしております。
  62. 今井一男

    政府委員(今井一男君) 只今答弁の補足といたしまして、私は先程確か非常にとり方によつては、最高裁判所が一切予算の査定権を持つておるというように響くかのごときことを或いは申上げたかも分りませんが、その点はそういう意味で申上げたのではございませんで、要するに意見が食い違つて大藏省の方として査定を加えなければならんような場合、査定に同意されない場合には、財政法の規定に從いまして、その査定の原案と、大藏省の査定案というものを結局國会の方にかけるといつた意味合におきまして申上げたに過ぎませんので、一つ御了承願いたといと思います。
  63. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 それでありますから財政法の上からバランスのとれた裁判官報酬というものをお定めになるということは当然であると思います。その点はどうでありますか。それであるが故に、私の考えでは政府がこういう案を出されるならば、総理大臣俸給は二万五千円であつて國務大臣は二万円であるということを閣議決定して、下の方はまだこれから計算をしなければならんでしよう。それで進んでおると思いますが、大藏省の方でもそういうふうに閣議説明があつたのでありますか。
  64. 今井一男

    政府委員(今井一男君) 誠に一々御尤もな御注意でありますが、実は建前といたしますと、総理大臣から以下認証官に関する法律案を先にお目にかけるのが順序でもございましたのでありますが、いろいろの関係から、この方の関係方面の手続が遅れております。併しながらすでに総理大臣が二万五千円、國務大臣が二万円、即ち最高裁判所長官及び判事も同額であるという建前につきましては、閣議決定のみならず、関係方面におきましても事実上の同意を得まして、目下形式的な手続だけに止める段階になりましたので、そこでこの裁判官及び檢事法律は急ぎます関係から一足先にお目にかけた。これだけに過ぎないのであります。御了承願います。
  65. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 先程もどなたかから疑義を質されましたが、行政官の場合、明文がないということにしましても、一旦定めましたる俸給を減額するということは容易ならざることと思いまするが、なかんずくこの裁判官の場合には、憲法の七十九條の第六項において減額を憲法みずからの明文を以て許されないことに定められておるのですがして見ますると、今日の物價高の場合のみならず、非常に變動を我々は予想することができるのでありまするが、若しも先程から疑問になつておりましたごとくに、物價が今日より著しく低下いたしまして、生活も樂な生活になつて一般給與等についても需給の調節がとれるようなことがありました場合に、憲法の制限を受けて減額することができない結果になりますると、ひとり裁判官だけは憲法保障によつて格段なる報酬を受けることになるのであります。その点について本法提出に当りまして、定めて大藏省とも十分に御檢討になられたことと思います。これはひとり裁判官の場合ばかりでなく、行政官の場合でも、やはり併せて御研究になつたことと思いまするが、先程來皆さんの御質問に現われましたるごとくに、報酬とせずして、何かやはり彼此融通の利くような方法によつて今日の急場を切拔けるというふうな手段に何故出でなかつたかということについて、もう少し詳細なる御説明を承わりたいと思います。
  66. 今井一男

    政府委員(今井一男君) 昨年の三月でございましたか、丁度國会の御審議を願いました裁判官に関する給與法律は、御案内の通り最高裁判所長官総理大臣と同格といたし、同判事國務大臣と同格とするといつたような建前で参つたのであります。この法律は当時申上げました通り極めて暫定的なつもりで拵えました法律でありまして成るべく近い機会に本格的な裁判官給與に関する法律を定める必要があるかようなことは政府の方におきましても十分認めておつたのでありますが、生憎いろいろな関係からその時期に惠まれませんでしたので、そのうちにいよいよ暫定法の期限も切れるといつたような事態になりまして、一方認証官に関する政府の方針が、昨年の三月以來据置きになつておりました認証官の給與の根本方針が漸く決まりましたので、この際又繋ぎのような形で行くことは適当でないだろう。折角新らしい制度の下に氣分を一新して仕事をしてやろうという判事方の、月並の言葉で申せば、勤労意欲のためにも適当でなかろうといつたような意味合から、これを本法として全面的に採入れる、こういつた形を採つたわけであります。併しながら御指摘の通り、万一望ましくはありませんが、將來インフレ昂進の事態が起りまして、そうして、そのためにこの額では一般行政官吏との権衡上適当でないといつたような事態が起りましたときには、今囘の裁判官法律に関する第十條によりまして、そうして、まあこれをそのときの事情にもよりますが、本法をふくらまして行くという形で参りますか、或いは臨時手当という方法、そのいずれの方法で行くかということはそのときに考慮されると思いますが、要するにその上に乘つかる臨時的の部分には相当特別の形でやるという行き方も、途が明けてある次第でありまして、御趣旨の点はその意味から、その際には一つの考え方としまして檢討されることに相成ろうかと思います。今囘は從來の暫定法規を一應本格的なものに改めたいという趣旨から、一應本法に直した、かように御了承願いたいと思います。
  67. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 只今の御説明であると尚インフレが昂進いたしました場合の御説明であつたのでありますが、昂進の場合につきましての措置といたしましては、両法案共にすでに定めておりまするから、この点は私は心配するのではないのであります。ところが裁判官の場合には、憲法の明文を以て減額を許さんことを明白に規定されておるのであります。憲法の恒久法によつて定められておりまするならば、他の法律とは異なりまして、これを変更することは容易ならざることであります。ところが我々は今より考えますれば、今日のごときインフレの状態は永久にこれがあつたならば大変であります。必ずや私は又物價の下りまする時期は近き將來にあるとすら私共想像しております。そうした場合に物價は非常に下つた、今日の昂勝時代を標準にして俸給を上げてしまつて憲法の保障によつて下げることができないようになつたならば、他の行政官の方は法律によつて変更されることができましようが、併しながら裁判官だけは依然としてその状態が残る、そういうような不自然な結果になりますると、大変なことになるのではなかろうかと思いますので、上る点においては立派に規定がありますが、上ること以外に眼中何ものもなく、下ることを聊かも考えずに作つたような法案のように考えますので、若し下つた場合には憲法を改正するにあらざれば減額することができないのであります。そういうことについては政府の方ではどういうふうなお考えの下に、ここに報酬とかいうようなことによつて決められたのであるか。先程來から他の方からも質問がございましたが、報酬即ち憲法に示される報酬というものでなくして、こうした異常の場合には、やはり異常の手段によつて臨時的の方法によつて支給して、動きの取れない状態にしてしまつておりますことは、どうであるかということを氣遣うのであります。その点を重ねて一つ伺いたい。
  68. 今井一男

    政府委員(今井一男君) お示しのような物價が逆に非常に下るといつたようなことは、まあ例えば日本におきましても昭和六、七年のあの不況時代におきましても、実は指数的に見ますと大したことはございませんし、又各國のいろいろの例から見ましても、そういつたことは余り例がないように聞いておるのでありまして、結局インフレの止まりは安定という形で、それが僅かしか下らないというようなところで止まるのではないかと考えるのでありますが、万一それが非常に下るといつたような事態が起りました場合、一般行政官は月給が十分の一にも、百分の一にも減る。併しながら判事だけはその十倍も百倍も取つておる。こういつた事態が万が一起りました際には、又憲法自体も、経済がそんなふうに変動をするということを全然予想してできたものでもございませんし、又國民何人の眼から見ましても、そういつた不合理な事態が許されるものでもございませんので、憲法と雖も全く万に一つの場合として予想しなかつた事態が起つた際には、又決して改正して悪いということもないのじやなかろうか。憲法として考えておらなかつた、頭の中になかつた万に一つの場合が起れば十分そのときの國会におきまして御檢討願えればよろしいじやないか、かように考えております。
  69. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 只今政府答弁には大変無理があるのじやないかと思います。現在の物價というものが將來に向つて仮に下るとしても僅かの下りである、著しいということは想像できないというようなことは、私共の常識からいたしましても理解ができない。それ程までに一体無理をして、今よりして憲法を改正するにあらざれば減額できないような制度を、なぜ布かなければならないかという理由を、もう少し明白に説明して頂きたい。私はそうした無理な御説明を承わろうとは存じません。もう少し本当に打ちくだいた、眞に私共の常識からいたしまして理解のできまするような答弁を一つ願いたいと思います。殊更原案を維持せんがために……誰が考えましても只今答弁で以て一体満足することができるだろうか。今日の物價高は有史以來の物價高にぶつかつておるのでありまして、こんな状態が日本に続いたならば國家は滅亡の外ないのであります。誰が考えましても、そういうことは私共の常識では理解ができないと思います。もう少し私は深切なる理解のできまする政府の打ちくだいた御答弁を願いたい。そこでもう一つ、それ程無理をしてまでも一体この原案を維持せねばならないかというところも、重ねて私は御説明を願いたいと思います。
  70. 今井一男

    政府委員(今井一男君) 或いは非常に説明が不十分のために、お叱りを招いたような氣もするんでありますが、ここで我々の下手な経済論を申上げるのも如何かと思いますが、結局日本の経済が復興して生産が増加いたしませんときには、インフレは止まらない。それは無論外資その他の関係もございましようが、とにかく物が多くなつて而も物の値段が上らないと、結局相対的に、物の値段は現在のままで、月給だけが、そういつた勤労收入、國民所得の方が殖えて行くと、こういつた形に相成ることが、経済の推移といたしまして普通に考えられるところではなかろうか。明治以來の我が國の足取りを考えて見ましても、多少の一起一伏はございましても、長い眼で見ますと結局明治の初めに米の値段が一升幾らであつたというような推移を見るのが建前でございまして、勿論いろいろな関係から例外が起るかも知れませんがその例外は今のところさように予想いたしかねる。又憲法をお作りになりましたときの國会の皆樣のお考え方も、そうであつたのではなかろうか。そういつた建前でこの憲法の七十九條もできたのではなかろうかと、私共は解釈いたしておる次第でございます。日本のインフレが、これが又若干ずつ進行いたしますことは、勿論事実でございますけれども、先程の小川委員のお言葉通り、最近の足取りから見ますというと、諸外國に例のありましたようなテンポとも違つておりますので、只今のところ私共の想像では、どうしても止まるという形で安定するという予想に相成るわけでございますが、件しそれが外れる場合がないとは限りませんが、外める場合はやはり憲法でも予想しておらなかつたのであろうと、かように申上げたいのであります。
  71. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この問題はこの程度にして、尚國務大臣答弁をお求めになるならば、そうして扱つたら如何でしよう。これ以上御議論になつても、同じところを堂々廻りしておるように考えます。(「賛成」と呼ぶ者あり)それでは本案に対しましては、尚質疑は継続いたしまして、後日に讓ることにいたします。  それでは次に裁判官刑事事件不当処理等に関する調査について、これより審議をいたします。
  72. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 私はこの調査会の制度は、特殊な事情のため止むを得ないこととは思いまするが、日本の司法権独立の建前からいたしまして、裁判に対しまする、その裁判の是非を、私共の立場において、内容に立ち入つて再檢討いたしますることが、若しも司法権独立に大きな影響を與えるようなことになりますならば、根本の大きな問題ではないかと実は心配いたします。故に、運用におきまして余程細心の注意を拂つて司法権の独立たる性質を傷付けないことに深く注意を拂つて扱わなければならないのではないかということを氣遣います。  委員長におかれましては、この運用に付き定めて不安もあられましようと思いますが、確定裁判を受けておりまするものの再調に掛かるのであるか、或いは起訴後において裁判の係属中に係りまする事件にも手を染めていいのであろうか。公正なる裁判の行われますることを目標としてこの調査会を進めて行く、そうしてこれを効果あらしめようといたしまするならば、ややもすると司法権憲法問題にまでも触れるような虞れもあるようにも感じまするので、大体調査の範囲を、從來判決の確定いたしておりまする事件の範囲に限るべきか、或いは事件の進行中のものまでも及ばなければならないかという点を、この際取決めをいたす必要があろうと思います。それから若しこれが調査の結果、不当なる裁判というようなことはあり得ないことと思いまするが、ありといたしましたならば、その及ぼす影響も考えなければならん。若しも私共が非常に國家のため必要なることだと考えましてこの調査会を進めて参りました結果が、却つて飛んでもない負債を起すようなことになりましたならば、私共の責任も亦軽からんものだと思います。スタートに当りまして、この点に対しまする氣付きました点を申述べて、皆樣の御参考に供したいと思います。
  73. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お答えいたしますが、先ず第一点の司法権の独立を尊重するという点に対しましては、非常にデリケートな問題でありますから、勿論これに対しましては、我々として十分注意して、その独立性を犯さない範囲内においてこの委員会の活動を継続して行きたいと存じます。  それから第二の点は、必ずしも本件の目的は、確定判決のみとは限らないで、目下進行中のものに対してもこれが調査を行う、勿論その調査は、判決の当否に対しまして、確定判決ならばこれを批判するということは勿論できることと存じますが、進行状態が果して正しい進行状態をしておるかどうかということを側面から國民の批判的な考えを以て見ると、こういう行き方にして行つたならばどうかと存ずるのであります。勿論裁判官の独自の行動を制約するとか、そういう意味合ではないのです。
  74. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 私はその点について我々は司法権の我立ということについての考え方を余程はつきり自分たちが掴まなければいけないと思う。元來司法権の独立というものは、裁判所裁判官に裁判をせしめる場合、裁判官が外部から何らの圧迫なり命令なりを受けないで、自己の良心に從つて判決するということが司法権の独立なんであります。それに対して批判を許さないという意味では決してないと思います。従來裁判所の判例批判というものはある。これは皆法律的の批判をしているので、いわゆる法律家が批判している。それでなくて裁判に対する社会批判というものは、日本の國に非常に欠乏しているということを私は痛感する。道徳家はこの判例を眺めて、この判例は日本の今日の道徳に照して適当なものなりや否やということを批判することが進んで來ないと、裁判官の独立というものの本質がはつきりして來ないと思います。裁判官世間の批判から独立することなく、むしろ批判して貰うことを非常に望んでいるのじやないかと思う。自分たちの狭い視野から、若し誤まつて國民全体が考えて、如何にもこれは感服しないという裁判をしいてるのじやないかということを裁判官自身が反省をもし、勉強するために批判するということは必要だと思う。その意味においてこの委員会か從來世間に行われていないことの私はスタートを切るものだと思いますから、その意味で余程愼重に考えなければならん。それと同時に我々の責任は非常に重い。單なる法律の控例批判というようなことは沢山印刷物になつておりますが、併しながら裁判が刑法の範囲内において、如何にも常識から考えておかしいというような場合は、その批判を裁判官に聽きたいと思う。昔から鶏一羽盜んで十年の懲役になつたらこれはおかしいじやないか。これは極く素人の批判ですが、なぜ鶏一羽で以て十年の懲役にしたかというところにいろいろ理由があるのでありますから、素人が無理解に批判するのを裁判官はこれに対して説明をする必要がある。批判の外に自分が超越して、世間にどんなことがあつても自分は説明をしないということでは、裁判官の独立でなくて、裁判官の孤立だと思います。又裁判官としてもこれは戒めなければならないと同時に、民衆の声を聽くような機会を作らなければいかんということは、事実認定においてすでに陪審員というものがありますから、今度の檢察官を批判するということになつておる以上は、裁判官についても何らかの考慮を負わするのがいいのじやないかと思います。今度の案件についてかれこれ言うのではない。そういう方向について進んで行くということは結構なことであるが、それと同時に我々は非常な責任を負うのじやないかということの意味において、我々は慎重にしなければならんということを痛感するということを一言いたします。
  75. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 私といたしましても司法権の独立に対する見解は松村委員のおつしやつたような考えを持つております。國会は最高機関といたしまして裁判官に対して批判を與えるということは正に國民のなすべきものでなさなくてはならないと思うのであります。さような意味合において本委員会をスタートしたいと思います。  それで先ず本委員会に取上げる事案を一つ御提案いたしまして皆さんの御意見を伺いたいと思います。第一に松島丸事件、第二に尾津事件、第三に眞木事件、第四に青木周一事件、第五に蜂須賀事件、第六に資格審査表虚僞記載事件、第七に全國の町の顏役の事件の概略及び審査進行状態、これだけを本委員会に第一段階としてこれを審査の目標にいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では只今申上げました事案につきまして本委員会は先ずスタートすることにいたします。  次に具体的に調査するに当りましては、先ず基本的に事案に対するところの概念を得る必要上、只今読上げました事案に関係する一切の書類を関係官廳から取寄せることに決定いたしたいと思いますが、如何ですか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  77. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では、それはそれで決定いたします。  次にこれらの事案を審査する上において先ず当面必要な証人を喚問いたしたいと思います。その必要な証人の指名及び数は委員長に御一任願うことに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは委員長において大体必要な者を呼びまして、それ以上必要な場合におきましては各委員からお申出を願いまして、順次進行して行きたいと思います。先ず最初の組立といたしましては、記録を見た上におきまして関係者を直接喚問することにいたしたいと思います。尚、勿論出張して調べることもあり得ると存じます。  次にこの問題は非常に繁雜であり且つ重大でありますから、本委員会にこの調査に関する事務局を設置し、適当な主任を設けまして專門的に担任いたさせたいと思います。この点お諮りいたします。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  79. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では、これもさよう決定いたしまして、その構成は委員長に御一任を願います。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ではさよう決定させて戴きます。大体只今申上げました組立が全部整いましたならば、改めて委員会を開催いたしまして、十分御審査を願うことにいたします。本日はこれを以て散会はいたします。    午後三時三十七分散会  出席者は左の通り。    委員長     伊藤  修君    理事      岡部  常君    委員            大野 幸一君            齋  武雄君           大野木秀次郎君            奧 主一郎君            水久保甚作君           池田七郎兵衞君            鬼丸 義齊君           前之園喜一郎君            宇都宮 登君            松井 道夫君            小川 友三君   政府委員    法務廳事務官    (法務廳調査意    見第一局長)  岡咲 恕一君    大藏事務官    (給與局長)  今井 一男君    法務廳事務官    (法務総裁官房    会計課長)   岡原 昌男君   説明員    最高裁判所    (人事課長)  石田 和外君