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1948-05-01 第2回国会 参議院 司法委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年五月一日(土曜日)   —————————————   本日の会議に付した事件行政代執行法案内閣提出衆議院  送付) ○行政事件訴訟特例法案内閣提出、  衆議院送付)   —————————————    午後一時三十二分開会
  2. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これより司法委員会を開会いたします。本日は行政代執行法案議題に供します。これが逐條について政府委員説明を先ずお伺いいたします。
  3. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 前回大体の提案理由要点につきまして御説明を申上げたのでありますが、それを受けまして、各條について一言づつ説明を申上げたいと思います。前回申述べました通り、この法案は現在の行政執行法を廃止いたしまして、それに規定されておりました行政執行に関する部分を若干調整を加えました上に、新法律案として提案いたしたものであります。即ち行政執行法の中には、御承知行政檢束規定でありますとか、或いは密賣淫者の健康診断であるとか、その他若干の規定を置いてありますが、これらの條項につきましては、この際一應廃止する結果になるわけであります。行政執行法の中で第五條、第六條、ここにありますが、法令に基いてなす処分によつて命じた行爲法令によつて命ぜられた行爲執行確保するための措置を新たなる法律の形にして立案したものであります。即ち言い換えますと、行政執行法の中の五條、六條関係を中心として採上げておることに相成るのであります。そこで本案の第一條におきましては、当然のことではありますが、行政上の義務履行確保のために関する法律がこの法律であるということを謳つたわけであります。ただ「別に法律で定めるものを除いては、」ということを謳いまして、特別に他の法律でこれに代るべき規定のあることを予想しております。現在におきましても、例えば國税滯納処分、これらは一種の行政上の義務履行に関する法律でありますけれども、これが他の法律規定のあるものについては、この案は触れておらんということに相成るわけであります。  それから第二條は、本案の骨子を畫しておるわけでありまして、法律により直接に命ぜられた行爲、或いは法律に基く諸規定によりまして、行政廳によつて命ぜられた行爲につきまして、義務者履行しないというような場合に、他の方法によつて履行確保が困難である。且つ又その不履行を抛擲して置きますことは、著しく公益に反するというような場合には、当該所管行政廳本人に代つて義務者のなすべき行爲をなし、或いは又他の第三者をしてこれをなさしめ、そうして費用義務者の方から徴收するという建前を第二條謳つておるわけであります。  第三條以下は大体手続規定いたしたものでありまして、先ずこの代執行をなします場合には、予め文書によつて戒告をしなければいけない、即ちその内容としては、いつまでに履行せよという期限を定める、そうしてその期限までに履行せられないときに代執行を行うということを謳つて文書戒告をしなければならんということであります。第二項におきましては、義務者がこの戒告を受けましたにも拘らず、指定された期日までに義務履行しないときには、次に代執行令書を発する。その代執行令書には代執行をなすべき時期、そのために派遣する執行責任者氏名、それからこれに要する費用の概算というようなものを義務者にこれを通達するわけであります。ただ非常の場合でありますとか、或いは危險の切迫いたしました緊急を要する場合におきましては、只今述べました戒告或いは代執行令書の通達という手続を執る遑もない場合もありますから、そういう場合にはその手続を執らないで代執行をすることができるということにいたしたのであります。  それから第四條は、代執行のために現場に派遣されます執行責任者は、必らず、その者が責任者たる本人であるという証票を持つて行かなければならん。要求があれば何時でもこれを示さなければならん。これはまあ普通の例であります。それから第五條は、代執行に要しました費用の取立ての問題を規定しておりますが、これについては実際に要した実費と、それからいつまでに納めようという納期日を定めまして、義務者に対してこれを文書納付命令を出さなければいかんということでございます。それから第六條は、この納付について國税徴收法の例により強制徴收ができるということであります。その他、先取特権等について、一般國税徴收法の場合とほぼ同樣の條文をおいたわけであります。  それから最後に第七條でありますが、不服申立の途を拓いたわけであります。この代執行が違法に行われました場合においては、当然裁判所に対して出訴ができるのでありますが、それと並行いたしましてこの訴願、それから異議申立という途をも許しまして、不服を訴うる途を廣く規定しておるわけであります。極めて簡單でございますが、要点を申上げればこの通りであります。
  4. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これより質疑に入ります。
  5. 小川友三

    小川友三君 本案の第三條の最後の項の「非常の場合又は危險切迫の場合において当該行爲」こういうのですが、この法律案を実施するに当りまして「非常の場合」という言葉がありますが、今まで非常な場合というと大体戰爭が始まるようなことを非常な場合と言いましたが、この法律をやるのにそうした非常な場合というのは想像できないのでありますが、想像でき得ない、現実に即しない言葉は削除するのが立法上非常によいのではないか、かように思います。そこで政府の言うところの「非常の場合」という例をお示しを願いたいのであります。又「危險切迫の場合」、危險切迫の場合というと、丁度強盗が入つてピストルを突きつけられたというような場合が危險切迫の例になりますが、本案のこの條項によりまして代執行するに当りまして、危險切迫というようなことは想像できるでありましようか。恐らくないと私は信じますので、政府危險切迫という最も明確なる顯著なる例をお示し願いまして、御答弁を願いたいのであります。そこで又末尾の方に、「その手続を経ないで代執行することができる。」規定手続を取る暇がないので、そうして咄嗟に危機迫つてピストルを突きつけられておるときに代執行をする、これは余りにも民主政治でない、暴政の限りを畫し、フアツシヨ政治の場合には或いはできるでしようけれども、こうして新憲法下におるときに、ピストルを突きつけられておるというような危險切迫の非常の場合、そうしたときに代執行をする手続を経ないで代執行をする、それではまあ神戸の事件のような、ああいうようなものを無理に巻き起すというようなことになるのでありまして、本案の実行に当りましては、さようなことは要らないと思いますので、削除した方がいいと思いますが、御答弁を願いたいと思うのであります。  それから第七條に、政府は、誠しやかにと申上げては、言葉が穩当ではないかも知れませんが、非常に訴願ということを用いられております。訴願をしつ放しで、訴願書は棚上げされてしまいまして、いつになつても、何ヶ月経つても、一年経つても、その訴願は一向に採択されない。まるで弓の矢を射たように出しつ放しというような状態で、現在税金につきましては、不服があれば訴願をせよと言つておるが、それに対して訴願をした、一年経つてもその訴願書に対して御答弁がない。それと同じように、これに対して不服かがあつて訴願を出したけれども、何ヶ月経つても、何年経つてもない。そうして弱い者は泣き寢入りするという、民主政治にふさわしくないところの訴願という言葉実施方法にありますが、訴願を提起すると、一ヶ月以内に明確なる処置を取るという工合に、日にち限つて訴願をすればよろしいのですが、日にちを限らない訴願なんというものは、非常に國民の苦しむ最大の原因でありますので、これに対して政府は、訴願に対して幾日以内に訴願を解決して呉れるかということの御答弁をお願いしたいと思うのであります。
  6. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 問題は二つあるように拜承いたしますが、さつきちよつと小川さんから、ピストルというような言葉がありましたので、前提問題を一口申上げさせて頂きますが、この第二條にありますように、代執行法の狙いは、一應國民に対して法律或いは命令、それから行政官廳というものから、こうせよという義務を一應課して、それからその義務履行されない、即ち法律に基いて命ぜられた義務履行されない場合に、なんとしても放つておけないから、行政廳本人のやるべきことを代つてやるということでありまして、義務そのもの法律に基いて課せられておる場合でございます。でありますからして、ピストルが飛び出す場合は余りないわけであります。  それからお尋ね要点でありますところの、非常の場合、危險切迫の場合、これは言葉が重なつておりますが、危險切迫の場合は非常の場合でありましようし、非常の場合は危險切迫の場合でありましよう。併しいずれにいたしましても、「この非常に場合」というのは、通常の状態でない、或いは御承知警察法などにも非常事態の宣告というような言葉もありまして、そう軍國主義的な言葉でもないと、かように考えております。要するに、さような場合には、止むを得ず代執行をするについて戒告令書等手続を経ないでやり得る。例えば災害救助法などに、災害の場合の処置がございます。そういう場合にこれが適用されるというふうに考えております。  それから訴願の問題でございますが、これは御承知のように、訴願法が現在ございまして、訴願についての手続その他裁決形式等は、訴願法で決められておりますから、その点によつて、おのずから適正なる結論が出るわけであります。只今示しのように、現在の訴願制度が面白くないじやないかというようなお言葉に対しては、これは、なるほど考えなければならん点があると思います。政府においても、訴願法をもう少し新らしく立て直すべきではないかということで、研究を続けておるわけであります。尚、出訴との関係において、先程触れましたように、裁判所に対する出訴の権を害しないわけであります。裁判所の方の救済もあるわけであります。
  7. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 他に御質疑はありませんか。……私に代つて專門調査員からちよつとお聞きします。
  8. 梶田年

    專門調査員梶田年君) 第二條に「法律により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政廳により命ぜられた行爲」とありますが、この「法律により直接に命ぜられ」というのは、どういう場合でございますか。具体的に一つ例をお示し願いたいと思います。
  9. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) この直接に命ぜられる場合は、殆んど実際においてはないと思います。恐らく大部分は、行政官廳が命ずることができる、処分をすることができるというようなことをその法律謳つておりまして、実際に下命行爲として行政廳がやるというのが普通の場合でありましよう。併し観念的に考えて見ますると、これこれの條件に該当した場合はこれこれのものは必ずこうしなければならんということを、法律で直接規定する場合もあり得るわけでありまして、適例をちよつと今思い出しませんけれども、この関係事柄は、現在の行政執行法においても、やはり一應予定した書き方になつておりますので、それを受けて書いたものであります。即ち行政執行法の第五條に「当該行政官廳ハ法令又ハ法令ニ基ヅキテ爲ス処分ニ依リ命シタル行爲」とありまして、即ち法令により直接命じた行爲というものを予定して書いておるわけであります。ただそれだけのものであります。
  10. 梶田年

    專門調査員梶田年君) その次に、「法律に基き行政廳により命ぜられた行爲」というのは、これはいろいろあるでしようが、極く普通にありふれた場合を一つ例示願いたいのと、その次に、他人が代つてなすことのできる行爲限つておりますが、他人が代つてできない行爲についての方法は、どういうことになるか。そのお考え一つ伺います。
  11. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 第一段のお尋ねについては、例えば市街地建築物法でありますとか、臨時建築物取締規則、これは建築関係法令にあるのでありますが、違法に建物が建てられた場合においては、その建築主に対して、行政官廳はそれの取り壊しを命ずるとか、或いは改築を命ずるという処置を執ることができると法律に書いてあるのであります。それによつて行政廳命令をする、取り壊し命令をする、改築命令をする。これは普通いろいろな法律に見られるところであります。  それから第二点のお尋ねは、実はなかなか適切なお尋ねでありまして、他人の代つてやれない義務履行方法については、現在の行政執行法に御承知のように過料規定があります。で、この案を立案するときに、代つてできない、今言いました現行法では過料を以て臨んでおるような履行強制方法といつたようなものは如何にすべきかということを、あらゆる角度から研究したのでありますけれども、御承知のように現在の法令には、およそ義務を課しておる場合にはそれに対する制裁として罰則規定しておるのが殆ど共通の例になつております。二、三それは罰則のないものもありますけれども、むしろそれは珍らしいくらいでありまして、殆んど罰則を以て強制しておる。そういうことになつておりますので、過料というものと罰則による威嚇というものとの間にどういう違いが一体あるのか、罰則威嚇で十分じやないかという考え方が成立つわけです。それからもう一つは、これは行政法学者のよく言うところでありますが、罰則を以て強制されておるような行爲については、過料は科し得ないのだという学説があります。それはなかなかむずかしい問題を含んでおりますが、問題がむずかしいだけであつて、一向実益がないことじやないかという見地から、今回の行政代執行法にはこれを削つてしまいました。その点は一つの大きな変つた点であります
  12. 梶田年

    専門調査員梶田年君) もう一つ続けて。そうすると実際においては、他人が代つてできないような行爲については、直接強制方法はないわけですね。
  13. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) それはありません。
  14. 梶田年

    専門調査員梶田年君) もう一つ序でに、第三條でありますが、代執行令書を以て、代執行をなすべき時期、代執行のために派遣する執行責任者氏名等義務者に通知することになつております。代執行令書内容として、この内容の中に本來代執行をなすべき目的たる行爲、それは書いて置かなくてもよろしゆうございますか。どういうふうなお考えで、立案、規定せられておりましようか。
  15. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これは先程小川委員にもちよつと申上げましたように、本來の義務をなすべき仕事の具体的の幅というものは、この初めの下命行爲によつて行政廳命令によつてつておるわけであります。それをいつまでにやれということを今お示しのもう一つ手前戒告でなされるわけであります。この戒告において念のために明らかにされる場合が多いだろうと思いますが、要するに最初の下命と、それから戒告等によつて、例えば建物のどの建物が違反の建築であつて、この建物を壞せということは特定しておるわけでありますから、この代執行令書に必ずしもそれを書かなくてもその点に間違いはないということを、まあ理屈としては申上げ得るのでありますけれども、恐らくこの代執行令書の方にも念のために明らかにするというのが普通にとらるべき処置であると思います。
  16. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 第七條でありますが、「代執行に関し不服のある者は、訴願を提起し、」とありますが、この「代執行に関し」というのは、読んで字の通り、代執行が済んでからという意味に取れるわけでありますが、若しそうであるということになると、訴願を提起して、それが訴願が成立つても結局目的は達せられないというような結果になる虞れがあるように考えるのであります。これはやはり文字通りに、代執行がすでに済んでからという意味になるのであるか、或いは第三條の第一項の代執行の通知を受けた者が訴願を提起するという意味であるのか、その点を一つ説明願いたい。
  17. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) この訴願異議申立と申しますのは、行政部内における一種の自粛作用ということになりますから、これをとやかく固苦しいものにすることは適当でないという頭におきまして、只今お尋ねのような場合を仮に例を以て申上げますと、代執行手続のいかなる段階についても、いかなる段階においても訴願或いは異議申立ができるというように考えております。即ち先ず第一に戒告が來た。俺の方は戒告を貰うような覚えはないというような場合について、直ちに戒告に対して訴願或いは異議申立をするということもできるというふうに、この辺は廣く考えておるわけであります。
  18. 大野幸一

    大野幸一君 そうすると異議申立執行力関係はどうなりますか、御説明を願いたい。
  19. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これは一般原則によりまして、執行力は停止しないということにいたしております。但し訴願を受けた方の役所或いは異議申立を受けた方の役所の見るところによつて、この執行を停止することは可能であります。
  20. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 他に御質疑ございませんか。……なければ、これを以て質疑を終局することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では質疑は終局いたしました。直ちに討論に入ります。
  22. 小川友三

    小川友三君 本案第三條末尾の項に「非常の場合又は危險切迫……」云々とありますが、この「非常の場合から最後までの文字を削除して頂きたい。
  23. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 他に御発言がなければ討論はこれを以て打ち切ることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは討論はこれを以て終局いたします。  次に採決に移ります。只今小川委員の御発言は別に修正の申出とも考えられません。たとえ修正の動議と考えられましても、御賛成がないようでありますから、これは問題にしないことにいたします。では本案について採決いたします。本案全部に対して御賛成の方は御起立を願います。    〔起立者多数〕
  25. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 過半数と認めます。原案通り可決すべきものと決定いたします。本案に対するところの委員長の本会議の報告につきましては、從來通り委員長においてこれを適当になすことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では本案の御賛成の方の御署名をお願いいたします。    〔多数意見者署名
  27. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 速記を止めて……。    午後一時五十九分速記中止    ——————————    午後二時三十一分速記開始
  28. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは休憩前に引続きまして、委員会を開きます。  行政事件訴訟特例法案議題に供します。前回に引続きまして本日は先ず政府委員本案に対する逐條簡單な御説明をお伺いいたします。
  29. 奧野健一

    政府委員奧野健一君) 提案理由の御説明をいたしました際に大体の御説明をいたしましたのでありますが、只今のお話によりまして簡單逐條について御説明をいたします。  新憲法によりまして行政裁判所というものがなくなりまして、行政事件のすべての訴訟司法裁判所に來ることに相成りましたのであります。そこで司法裁判所において行政事件を裁判する場合の手続につきましては、刑事手続ではありませんから、大体民事訴訟手続によつてよかろうということで、現在大体民事訴訟法によつてつておるのであります。併しながら行政事件は純粹の民事事件とはやや異りまして、その裁判の対象が公法関係でありますからして、まあ單純に私権の爭いより行非常に公益的な分野が相当あるのであります。そこで單純民事訴訟法のみでやつて行くことは適当でないと考えますので、行政事件について民事訴訟法特例を設けるというのが、大体この法律建前であります。そうしてこの特例規定していない点につきましては、民事訴訟法一般原則の適用があり、行政事件の特別のものについてのみこの法律規定をいたしたのであります。即ち大体に申上げますれば、二條訴願経由訴願の前置主義を取ること、三條で被告に関する事柄、四條で土地の管轄五條で訴の提起の期間、六條で訴の併合に関する事柄七條被告変更し得ること、それから尚十條で処分執行の停止でありますとか、或は十二條で判決の拘束力、或は八條で行政参加といつたようなことについて、民事訴訟とは特別な取扱いをいたしたのであります。第一條はそういう意味で「行政廳の違法な処分取消又は変更に係る訴訟。その他公正上の権利関係に関する訴訟については、」大体この特例によるという規定を設けたのであります。  即ち第一條の前段の方は、從來学問上いわゆる抗告訴訟と言われておる、違法な行政処分取消変更を求める抗告訴訟、その外にその他公法上の権利関係、いわゆる学問上当事者訴訟であるとか、或いは選挙訴訟であるとか、或いは補償金の問題といつたような公法上の権利関係についても、いわゆる抗告訴訟の外に、そういう公法上の権利関係についての訴訟についても、すべてこの特例法によるという趣旨を明かにいたしたのであります。  第二條はいわゆる抗告訴訟に当ります。行政処分の違法なものについての取消又は変更を求める訴、いわゆる抗告訴訟につきましては、訴願の途が開けてある場合には、一應訴願裁決を経たあとでなければ訴を提起することができないということにいたしたのであります。これはいろいろ議論のある点でありますが、やはり行政廳処分について一應訴願裁決の途を法令で認めておる場合、即ちこれは從來訴願法並びに各特別法訴願裁決の途を認めておる場合が沢山あります。そういうふうに訴願の途があれば、一應政行廳の反省の機会を與えて、然る後に出訴せしむるということが適当であろうということで、この原則として、訴願の途がある場合には、訴願裁決を経たあとでなければ出訴ができないということにいたしたのであります。併しながら但書を附けまして、これがために著しい損害を被むる虞れのあるときその他正当な事由、例えばなかなか訴願裁決してくれないといつたようなことで延び延びになるというような事情がありますれば、その訴願裁決を経ないでも訴を提起し得るという例外を設けておりますが、原則としては訴願裁決の途が法令で明かに規定されておる場合は、一應そういう手段を経た後に出訴ができるということにいたしたのであります。  第三條は被告を、相手方をどうするかという点についていろいろ議論がありますので、これによつて処分をした行政廳被告として訴えなければならないということを規定したのが第三條であります。勿論、法律規定で特別の規定のある場合は除きます。  それから管轄裁判所つては第四條で規定いたしました。即ち被告である行政廳所在所裁判所專属管轄といたしたのであります。  次の第五條出訴期間、これは「処分のあつたことを知つた日から六ヶ月以内」ということにいたしたのであります。尚処分のあつたことを知らなくても、処分の日から一年を経過した場合においては、最早出訴ができない。ただ正当に事由によつてこの期間内に訴を提起することができなかつたということを疏明したときに限つて、その後にいえども訴を提起することができるという例外を設けてあります。それから第五條の四項は、或る処分があり、それに対して訴願をして裁決のあつたという場合に、一番初めの原処分に対して訴えを提起しようとする場合に、訴願裁決の間で時間が経過いたしまして、この六ヶ月の期間原処分の時から起算いたしますと、もうすでに過ぎているような場合は、第一項によつて早出訴期間が切れてしまう虞れがありますので、そういう場合には裁決の時からその六ヶ月の期間を経過して、もうすでに一番初めの原処分の時から六ヶ月を経過しておつても、裁決の時から六ヶ月の間であれば原処分に対しても出訴ができるということにいたしたのであります。勿論これらの出訴期間については、他の法律規定があればそれによるというのが末項であります。  その次の第六條は、行政訴訟はもう一種特別なものでありますから、一般民事訴訟のように同じ手続として併合する、他の請求と併合するということが理論上或いはできないのではないかという議論があるわけでありますが、併しながら行政処分取消変更を求めると同時に、原状回復、或いは損害賠償、或いは不当利得の請求というふうなものも、併せて訴えを提起する必要のある場合が沢山あろうかと存じますので、そういう場合に限つてそういう関連性のある請求は、行政訴訟と併せて併合してこれを訴えることができるということにいたしたのが第六條でございます。  第六條第二項は、行政訴訟の中で第一審が高等裁判所である場合があります。特許に関する抗告審判に対する訴訟でありますとか、海難審判に対する訴訟というものは、第一審は高等裁判所、或いは独占禁止法の関する訴訟でありますとかといつたようなものは、第一審から高等裁判所でやります、そういう場合に他の牽連の損害賠償と一緒に請求するという場合には、損害賠償の方は、本來であれば地方裁判所、それに高等裁判所、それから最高裁判所というふうに訴えられるのを、初めから高等裁判所に訴えなければならないということに併合の結果なりますので、そうなると一審が省略されることになります。それで、そういう場合に相手方の同意を得なければならない。相手の方で一審省略になつてもよろしいという意味で同意するならば、第一審が高等裁判所に属する行政事件についても牽連の請求を併合することができるということにいたしたわけであります。それが第五條の二項であります。  第七條におきましては、行政訴訟におきましては処分をして行政廳被告とするのでありますが、実はこれは非常にむづかしいので、時々被告を間違えて訴えを起すことが、実例において沢山あるわけであります。そういう場合に被告が間違つておるということのために訴えが却下されると、そうなると今度は正当な被告に対して訴えを提起しようとする時には、もうすでに出訴期間を過ぎておつて、権利の保護を求めることができないというような場合も出て参りますので、普通の訴訟とも異なりまして、被告を間違えても、いつまでも被告を訂正することができることといたしまして、尤も原告の方で「故意又は重大な過失」で被告を間違えた場合は例外でありますが、そうでない限りは被告変更することができる。そういう場合は、変更した時には「期間の遵守については、あらたな被告に対する訴は、最初に訴を提起した時にこれを提起したものともなす。」六ヶ月の期間という出訴期間の下に徒過しないような保護を與えているのが第七條の第二項であります。  第三項は、その場合に初めの間違えた訴訟は当然「取下があつたものとみなす。」ということにいたしたのが第三項であります。  第八條は、行政訴訟におきましては、実は当事者の外に、当事者になつていない第三者を訴訟に参加しむる必要が相当多くあるのであります。そういう場合に、普通の民事訴訟だけでは申出によつて初めて参加ということが認められておりますが、職権で第三者を訴訟に参加せしむる必要がありますので、第八條におきましては、職権で第三者を参加せしめ得るいわゆる行政参加の途を開いたのであります。これは從來の行政裁判法におきましても同樣な規定があつたわけであります。  第九條は、元來民事訴訟は当事者処分主義の建前から、原則として裁判所がみずから職権で証拠調をするということはないので、殊にこの次に御審議を願いまする民事訴訟の改正法におきましては、絶対に裁判所がみずから職権で証拠調をするという主義を止めたのであります。併しながら行政訴訟は公共の福祉に関係するところが多い関係から、「職権で証拠調をすることができる。」途を開いたのであります。これは從來の行政裁判法にもあつた規定であります。  次の第十條は、これもやはり従來行政裁判法二十三條に同じような趣旨の規定がありましたが、これを多少変更いたしたのであります。即ち訴えが起きたからといつてこの行政廳処分は当然執行を停止はいたさないのであります。併しながら折角訴えを起してそれに勝つても、少しも執行が停止されないでどんどん進んで行きますと、取返しのつかない損害を受けることがありますので、そういう執行によつて償なうことのできない損害を防止するために、「緊急の必要」があつたという、そういう非常な制限的な條件の下に、裁判所は申出でにより又は職権で執行の停止を命ずることができることにいたしたのであります。而も執行の停止を命じますが、この場合でもこれが「公共の福祉に重大な影響を及ぼす虞のあるとき」と、或いは「内閣職理大臣が異議を述べたとき」も亦執行停止ができないというのであります。これは平野事件等でそういつたような事例が考えられたのでありますが、非常に「重大な影響を及ぼす」ような場合、或いは殊に「内閣総理大臣が異議を述べたときは」執行停止をやれないということにいたしたのであります。勿論それについては、その異議についても理由を示さなければならないということを第三項に規定しております。尚これらの執行の停止の処分はいつでも裁判所の方でこれを取消すことができるということにいたしたのが五項であります。  次の第十一條は、行政訴訟で、違法な行政処分の取り消し、変更を求めて訴訟が起きた場合に、成る程一應は例えば非常な細微な、細かい点で違法があつて、それがために法律的に言えばすべて違法であるかも知れませんが、そういう些細な違法があるからといつて全部の取り消しをするというふうなことは、却つて公共の福祉に適合しないというふうな場合もあろうかと思うのであります、例えば土地の收用等で土地の細目の公告を前提としてしなければならんというような場合に、そういう点で多少の不備、違法があつても、すでにどんどん收用が進んで工事が進んでいるというふうな場合に、全部引繰返すというようなことは公共の福祉に適合しない場合がありますので、そういう一切の事情を考慮して、処分を取り消してしまうことが公共の福祉に適合しないと認めるときは、原告の請求を棄却することができる、勿論こういう場合は、その訴訟費用等につきましては、むしろ被告が負担せしめられるのであります。勝訴になつ被告が負担せしめられる、このことは民事訴訟法原則から当然であります。尚その外に、損害賠償であるとかそういつたような請求は勿論妨げるものではないので、ただ行政処分の取り消し、変更は、その場合に請求を棄却されることがあり得るというのが第十一條であります。  第十二條は、これは從來の行政裁判法の十八條の同樣で、確定判決はその事件についての関係行政廳を拘束するということにいたして、例えば訴願裁決した行政廳被告として、まあ判決があつたような場合にも、その原処分をした行政廳は当事者になつていないけれども、関係行政廳としてその裁判の拘束を受けるというのであります。  附則は施行期日と、それから法律施行前に生じた事件についてもその法律の適用があるが、ただ從來民事訴訟法の應急措置法に行政事件に対する規定が一ヶ條あります。それによつてすでに生じた效力を妨げないということを経過的に規定いたしたのであります。それから出訴期間については六ヶ月ということになつております。併しながら他の法律で別に出訴期間を決められるということになつておりますが、これは昭和二十二年三月一日前に制定された法律出訴期間が短かくしておつても、これは認めない、これは民事訴訟法の應急措置法に同樣の規定がありますので、それをただ踏襲いたしたのであります。それから附則の末項は、應急措置法で期間が進行しておるものについては、尚應急措置法の期間の適用があるという経過規定をいたしたわけであります。甚だ簡單でありまするが一言御説明申上げます。
  30. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本法案について御質疑がおありであればお述べを願います。
  31. 小川友三

    小川友三君 第十條でございますが、内閣総理大臣が異議を述べたときはこの限りでない、こうございますが、内閣総理大臣がいなかつた場合は誰がやりますか。内閣総理大臣が辞職をして、或いは病氣で死んで、あと一月くらい経ちますとか、そうした場合が想像できますが、そうした場合は法務総裁又は最高裁判所長官が異議を申し出た場合はこの限りでないと加えたいと思いますが、政府委員からの御意見を承りたいと思つております。それからもう一つは、民事訴訟法の應急措置法では訴願訴訟が二つできる、二本建になつておりますが、本案によりますると、訴願をしなければ訴訟ができないことになつておりまして、その訴願が三月経つたならばという伏線もありますけれども、三月待てない場合のことも考えられるようになりまして、この点につきまして、二本建にした方がよいと思います。訴願訴訟を二本建にして置くという方がよいと思いますが、御意見を拜聽いたしたいと思います。それから民事訴訟のいわゆる應急措置法では、二本建になつておるという事実から比較下さいまして、これは改善ではないかと思いますが……。
  32. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今の小川さんの御質問の第一点は、そういう場合はないわけですから、総理大臣は必ず続いておるのですから、第一点はよろしいです。第二点のお答えを願いたいと思います。
  33. 奧野健一

    政府委員奧野健一君) 第二点の御趣旨は、非常に重大な点でありまして、お説のように、應急措置法では訴願訴訟と別個に別々に両建にいたして、訴願は必ずしも経なくても、直ちに訴訟を提起することができることになつておつたのを、今回改めまして、法令で苟くも訴願の途の拓けておる場合は、やはりこれはその行政廳において是正の途を講ずる、先ずこうせしめた上で訴を提起せしめるのが適当ではないかというふうに、從來の考えを改めまして、こういうふうに必ず訴願前置主義を執ることにいたしたのであります。これはやはり行政処分でありますから、監督官廳においてこれは間違つておるから取り消せというふうに、行政監督の途からして是正の機会を與えるということがむしろ適当ではないか、そういう訴願是正の途があるのに、直接訴に出るということは場合によつては無用な爭を起すことにもなり、又裁判所の方の事件の負担ということから考えて見ましても、やはり一應は訴願裁決によつて是正の機会を與えて置くということが適当であろうというので、実は両建を前置主義に改めたので、いろいろこの点は議論もあろうと思いますが、こういう建前を執つたわけであります。
  34. 大野幸一

    大野幸一君 第十條の第二項の但書の場合、公共福祉に重大な影響がある場合に、内閣総理大臣が異議を述べた時はこの限りでない。こういう意味は、その理由を附して、理由を明示してこれを述べるというのは、執行機関に対して述べるのか、それともやはり内閣総理大臣の名を以て裁判所執行の停止を申立て、その次の何項ですか、裁判所は、いつでも第二項の決定を取り消すことができる、ここえ持つてつて取り消しを求められるのか、その点をはつきりして頂きたいと思います。私の質問は分りましたか。
  35. 奧野健一

    政府委員奧野健一君) それは裁判所に対して、執行処分をやる前にやるわけなんでありまして、執行の停止処分をやる前に異議を述べるというのであります。從いまして、執行の停止処分があつてからは、異議を述べてもこの規定の適用がないわけで、その点も非常に考えたのでありますが、すでに執行処分があつてから異議を述べて、それで必らず裁判所が取り消さなければならんということになると、或いは行政権が司法権に対する重大な干渉ということにも考えられますので、この点は、内閣総理大臣の方で執行停止処分より前に異議を述べるということになるのであります。ただ若しその後の異議は、法律上はそういう效力がありませんが、いつでも職権で取り消し得るということになつておりますので、そういう場合は恐らく裁判所は、みずから執行停止処分を取り消すということになろうという考えを持つております。
  36. 大野幸一

    大野幸一君 只今の「裁判所は、何時でも、第二項の決定を取り消すことができる。」この点は理由もなんにも要らないというわけですか。理由は当然附さなければならないと思うのですが、どういう御見解でしようか。
  37. 奧野健一

    政府委員奧野健一君) それは一般の決定と同樣で、まあそれ程、十分な理由を付すことは望ましいと思いますが、必ずしも理由を克明に書く必要はないと思います。
  38. 大野幸一

    大野幸一君 第八條に「裁判所は、必要と認めるときは、職権で決定を以て、訴訟の結果について利害関係のある行政廳その他の第三者を訴訟に参加させることができる。」と、こうありますが、必要と認めるときは参加させなければならないという意味なんですか。例えばこの間の平野事件のごときは、当然裁判所としては事柄上内閣の意見も聞かなければならなかつたし、関係方面の意向も質さなければならなかつたにも拘わらず、裁判所が独自の見識を余り強く発揮し過ぎたという嫌いがある。ああいう場合には利害関係ある行政廳として参加させなければならないと思うのですが、どうですか。
  39. 奧野健一

    政府委員奧野健一君) 法文の建前としては職権で参加せしめることができるという権能だけを一應與えておるので、これは民事訴訟法では皆申立によらなければならないのを、職権で参加をさせることができるという一應権能を與えておるのでありますが、これは必要と認めればその権能に基いて当然参加させることになるであろうというふうに考えております。ただ規定の体裁といたしましては、そういう必要と認める場合に、職権でやれるという権能だけを與えておるわけでありますが、実際といたしましては、必要と認める以上は、第三者を参加せしめることになろうと思つております。
  40. 松井道夫

    ○松井道夫君 只今の第十條第五項の「裁判所は、何時でも、第二項の決定を取り消すことができる。」この取り消した処分については別に不服の訴はできないのでしようか。
  41. 奧野健一

    政府委員奧野健一君) これはでき
  42. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ちよつとお伺いしますが、第七條で第二條のみを救済するように見えますが、第六條の場合の原状回復、損害賠償その他の請求が併合された訴についても救済されるのかどうか。第七條で……。
  43. 奧野健一

    政府委員奧野健一君) 第七條は、いわゆる今までの抗告訴訟、いわゆる行政処分の取り消し、変更を求める行政事件だけについて規定しておるので、それら原状回復、損害賠償は大体民事訴訟だろうと思うのでありまして、行政訴訟民事訴訟とを一緒に併合ができるということにいたしたので、從いまして第七條はこの前の方の行政訴訟だけについて考えておりまして、併合された民事訴訟とかいうものについては、一般の民訴の規定による。それでありますから併合訴訟の場合でも、併合の中の行政訴訟だけについて、やはり被告変更することができるという趣旨であります。
  44. 大野幸一

    大野幸一君 第七條の第一項の但書に「原告に故意又は重大な過失があつたときは、この限りでない。」ということがあるが、この原告は代理人である場合に代理会を含むのか、代理人は除外するのか、どういう御見解でしようか。
  45. 奧野健一

    政府委員奧野健一君) それはやはり代理人の故意過失も含んで考えております。
  46. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 他に御質疑ありませんか。それではこれを以て質疑を打切ることに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼び者あり〕
  47. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは質疑はこれを以て終結いたします。直ちに討論に入ります。
  48. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 本案に対しては修正案を提出いたします。それはこの二條の中で「訴願のできる場合には、訴願裁決を経た後でなければ、」というのを改めまして、どういうふうに改めるかと申しますと、この印刷物を手許に配つて置きましたが、「訴願、審査の請求、異議申立その他行政廳に対する不服の申立(以下單に訴願という。)のできる場合には、これに対する裁決、決定その他の処分(以下單に裁決という。)を経た後でなければ、」に改めるわけであります。以上の文字を第二條の一行目のところから二行目に亘つておる「でなければ」という字をそういうふうに改めます。それからその少し下に「但し」という字があります。「但し」の下にこういう文字を加える。「訴願の提起があつたときから三ヶ月を経過したとき又は」を加えるという修正であります。もう一遍読みます。第二条の中の一番下の「訴願のできる場合には、訴願裁決を経た後でなければ、」その文字を詳しく書いたのであります。「訴願、審査の請求、異議申立その他行政廳に対する不服の申立(以下單に訴願という)のできる場合には、これに対する裁決、決定その他の処分(以下單に裁決という。)を経た後でなければ、」これに改める。「但し、」とい下に「訴願の提起があつたときから三ヶ月を経過したとき又は」という文字を加えるのであります。それが第二條修正点です。  次に第十一條に二つの修正を加えたいのです。それは十一條の中の本文の「第二條の訴の提起があつた場合において、」その次に、つまり文字で申しますと、「場合において、」の下に、「処分は違反ではあるが、」を加える。第二項及び第三項として次の二項を加える。これは印刷物にある通りであります。それらの文字は、次の二項を読みます。「前項の規定による裁判には、処分が違法であること及び請求を棄却する理由を明示しなければならない。」次の行で、「第一項の規定は、損害賠償の請求を妨げない。」以上の修正であります。第二條修正訴願という意味を明確にいたし、その範囲を説明いたしたのであります。次の裁決という字も尚これを明細に説明的にしたのであります。但書に「訴願の提起があつたときから三ヶ月を経過したとき」と申しますのは、訴願の提起があつてなかなかその裁決がないという場合がありました場合に、三ヶ月を経過すればもう直ぐに訴訟を起してもよい、こういうことにいたすのでありまして、行政廳の違法な処分に対する救済の実益のあるようにいたす趣旨であります。十一條行政処分そのものは違法ではあるが、違法であるけれども、これを棄却するという方がよい。なぜかと申しますと、違法であるからと言つてこれを取り消したり、又は変更するというようなことになると、却つて公共の福祉に適しないという場合に請求を棄却するということが十一條の本文にあるのでありますから、この点を更に明確にしたのであります。それは今申しましたように、第二項と第三項を書きまして、棄却する場合には、元來処分は違法であるということを先ず示すこと、そうしてなぜ違法であるに拘らず請求を棄却するのかということの理由を明示しなければならないというのが第二項の規であります。そういたしまして、棄却した場合には、損害賠償の請求をすることができるということを第二項で明らかにいたしたのであります。この二項、三項を加えます場合には、更に第一項の規定を読んで見ますと、この第一項の中には「処分が違法である」という文字がありません。それでありますから、この第一項の方の「第二條の訴の提起があつた場合において、」「処分が違法である」という文字を加えることが必要であろうと思います。それで第十一條の本文の文字を「処分は違法であるが」という字を加えて、その文字を受けまして、第二項で処分が違法であること及び請求を棄却するという理由を明示すると、こういうことであります。以上が修正の個所でありますが、その理由を申し上げます。  近來、國語の平易化の問題の一環として、法文の平明化が強く要望されておりますが、言うまでもなく法は國民一般に対する規範でありますから、國民一般に取り、分り難い法令の用語、疑義を生じ易い規定などは極力これを避くべきでありまして、このことは本法案のように訴訟手続という特殊の分野に関するものについても当嵌るものであります。かような観当から、本法案につき左のような修正を加えることせ適当と信ずるのであります。「左のような」というのは先程申しましたようなことでありますから更に繰返して申しません。その意味訴願という字をもう少し詳しく書く意味であります。訴願法その他にいう訴願の外、審査の請求、異議申立など行廳に対する総ての不服の申立意味するのであるとのことであり、かような用例は学術上の用語としては必ずしも不当ではないと思いますが、他の法令の用法との関係もあり、修正案のように法文上明瞭にし、疑義を生ずる余地を全くなくして置くに越したことはないのであります。裁決という用語につきましても同樣であります。  次に第十一條について、本條を一読して生ずる疑問は、この場合原告は損害損害の請求ができるのであろうかということであります。よく考えますと、本條によれば、処分は違法ではあるが、公共の福祉の見地から原告の請求を棄却するのであり、別に損害賠償の請求を禁じてはないから、他の要件が備わつている場合には損害の賠償を求め得るとの結論に達するのでありますが、この結論は裁判所その他法律知識の十分なものは格別、一般國民に取つては必ずしも明瞭ではなく、むしろ請求を棄却されたのであるから、もう何にも言えないということを思い込ませる危險があるのでありまして、若し正当な権利を持つ者がそのため泣き寝入りするようなことがあつては困りますので、はつきり損害賠償の請求を妨げないということを明言することが望ましいと思うのであります。又本條の場合には、処分は違法ではあるが、公共の福祉のため止むを得ず請求を棄却するのであるから判決ではつきりそのことを關明することが適当であり、ぼんやりした何故棄却されたか分からないようなことは、当事者である國民に取つては勿論、裁判所の平めにも好ましいことではないと思うのであります。以上申述べましたように、法の直接の関係者である國民のため少しでも分り易く、疑問の生ずる余地のないようにすることが深切な立法者の態度であると信じますので、右二ヶ條の修正案を提案する次第であります。    〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  49. 齋武雄

    ○齋武雄君 松村さんの動議に賛成いたします。
  50. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ちよつと速記を止めて。    〔速記中止
  51. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは速記を始めて。他に御意見のある方はありませんですか。    〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  52. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では討論はこれを以て終結して置きます。それで採決は追つていたすことにいたします。  次回は四日の午前十時、本会議ある場合は本会議終了後、当委員会を開くことにいたしたいと思います。本日はこれを以て散会いたします。    午後三時二十八分散会  出席者は左の通り。    委員長     伊藤  修君    理事      鈴木 安孝君    委員            大野 幸一君            齋  武雄君            中村 正雄君           大野木秀次郎君           前之園喜一郎君            松井 道夫君            松村眞一郎君            宮城タマヨ君            星野 芳樹君            小川 友三君   政府委員    法 制 長 官 佐藤 達夫君    総 務 長 官 奧野 健一君