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1948-09-13 第2回国会 参議院 司法委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年九月十三日(木曜日)    午後三時三十分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○裁判官の刑事事件不当処理等に関す  る調査の件(帝銀事件容疑者取調に  関する説明)   —————————————
  2. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これより司法案員会を開会いたします。先ず最初に去る十一日当委員会の打合会を開きまして、最近街の顔役の第四次檢挙が開始せられる。こういう政府の方針が発表されておりますが、それにつきまして第一次乃至第三次の摘発によつて檢挙せられましたところの各事件が、その後裁判所でどういうふうに審理判決されておるか、その進行状態について、不当裁判調査といたしまして、これらを調査いたしたい。御承知の通り民主主義の確立のために大きな阻害をなしておるところのこれらの極石團体若しくは極右團体に似かようところ右翼團体暴力行爲に対するところ処置について裁判所のその後の処置が明確でありませんから、これに対して調査をすることに一應打合会において決定いたしましたが、これを正式に取上げることに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それではこの問題につきまして正式に調査を開始することにいたします。勿論今の事案は不日当院に非日活動委員会ができました際においては、或いはその部門に入るかとも存じますが、それまではこの委員会においてこれを調査することにいたします。  尚本日お集まり願いましたのは、最近新聞紙上において非常に問題とされておるところ帝銀事件につきまして、新聞紙上に現われておるところによりますと、被疑者に対するところ人権擁護という問題が大きく巷間に唱えられておりますから、これらについて人権擁護立場から、本件につきまして当局からこの問題に対するところ事件経過を先ずお伺いいたしまして、それについて質疑をいたしたい、かように存じます。  先ず田中警視総監の御説明お願いいたします。
  4. 田中榮一

    警視總監田中榮一君) 御紹介に預りました警視総監田中であります。本日參議員の司法委員会におきまして帝銀毒殺事件経過並びに警視廳として取扱いました事柄について簡單にお話を申上げたいと思います。尚予め御了承を願つて置きたいと存じますが、実は帝銀毒殺事件只今事件搜査繼續中でございまするので、私から詳細具体的なことをここで申上げかねる点が多々ございますので、この点だけは一つ何とぞ搜査の必要上機密を要する必要がございますから、予め一つ了承を願いたいと思います。  一應この帝銀事件の今までの搜査概況を申上げて見たいと思います。  帝銀毒殺事件容疑者として目下取調中の平澤貞通画伯に対する搜査概況について申上げたいと存じます。帝銀犯人は本年の一月二十六日帝銀毒殺事件を起す前に二回に亘りまして同樣の手口の犯罪を企てて失敗をいたしております。その一つはすでに新聞紙で皆樣御承知のごとく、帝銀事件発生一週間前に犯人が新容區の下落合の三菱銀行中井支店に參りまして厚生省技官医學博士山口二郎名刺を利用いたしまして、帝銀同樣のことを申入れをしたのでありますが、支店長がこれを不審に認めまして、これを拒否いたしましたために、そのまま犯行を遂行することができず歸つておるのであります。次に昨年の十月の十四日に品川區の平塚の安田銀行荏原支店に參りまして、このときには厚生技官医學博士松井蔚氏名刺を出しまして同樣のことを申入れしたのでありますが、行員二十数名は變な臭い藥を呑みましたけれども、別に中毒も起さずそのままになつた事件であります。帝銀事件が発生すると間もなく右二つ未遂事件が発覺いたしました。調べて見ますと、犯人人相服裝犯罪手段方法等が全く帝銀事件と一致しておりまするので、正しく同一犯人のやつたことと推定をいたしまして、犯人現場に殘して行つた山口二郎松井蔚名刺を手掛かりに携査を進めておつたのであります。その結果山口二郎名刺犯人三菱中井支店で使用する直前、これは銀座の露店で作製した贋名刺であります。松井蔚氏名刺厚生省東北地區駐在防疫官医學博士松井蔚という活字でありまして、これは同博士が実際に使用せられました本物の名刺所持しておつたことで明白したのであります。松井博士はこの名刺を昨年の三月に百枚作りまして、本年の正月ごろまでに、即ち帝銀事件のあの犯行が行われるまでに主として東北北海道方面関係者にこれをばら撤いておるのであります。現在同博士手許に七枚殘つておることが判明いたしております。そこで行使せられた名刺の数は九十三枚でありまして、その九十三枚の一枚を犯人がいずれかで手に入れてこれを行使して荏原安田銀行で使つたものと推定されるのであります。從つてこの名刺の線から手操つて事件搜査するということは、結局九十三枚の中の一枚の名刺が使われておりますので、その的中率がいわゆる九十三分の一といふことになるのでありまして、この名刺の線を手操るということは搜査線上頗る重要な事項になつておるのであります。現在では九十三枚の中で六十八枚を関係筋から発見回收をいたしておりまして、殘りが結局二十五枚ということになるのでありまするが、その二十五枚の中で十七枚が受領者が分つたのであります。受領者が分つたのでありまするが、名刺はその後受領した者がなくしたり、或いは破つて捨てたり、いわゆる事故名刺となつておるのであります。他の八枚がいわゆる行先不明の名刺となつておるのであります。平澤画伯帝銀容疑者として搜査線上に上つて參りましたのも、この名刺搜査してからでございます。平澤画伯は昨年四月二十七日に皇太子殿下に献上の「春遠からず」という繪を持つて上京の途上青凾連絡船の船内で、たまたま松井博士と会われまして、名刺を交換した事実が、松井博士によつて考え出されたのでございます。そこで本年の二月の上旬に小樽警察署を通じまして、現に所持の有無を問い合せましたところ名刺は貰つたが、昨年の八月中日暮里三河島間の省線内で掏摸にすられてしまつて手許には今ないという返事があつたのであります。そこで一應この平澤画伯の持つておりました名刺の確認につきましては、一應事故名刺として疑問を殘したまま搜査が保留されておつたのであります。その後名刺搜査が進むに從いまして、事故名刺も当然問題となつて參つたのであります。この事故名刺の行先、その他につきましては特に周密なる搜査が行われました。その結果本年六月上旬この搜査に当つておりました主任居木井警部補その他係員が、小樽平澤画伯に会いましたところ、同画伯人相帝銀犯人そつくりなので、同主任以下も非常に驚いたのであります。本人名刺はすられたという事実を言つておるのでありますが、この点は頗る疑惑があるのでありますが、本人帝銀事件後間もなく東京を去りまして、小樽行つて歸つて來ないのであります。東京には妻子もありながら、何が故に小樽に行つておるのか、この点も非常に理解に苦しむのでありますが、それは別といたしまして、平澤画伯写眞主任としましては何とかして手に入れたいという氣持から、平澤画伯と或る所で記念撮影に事寄せまして、写眞撮影方お願いしたのでありますが、平澤画伯はその際にも殊更口と顎とを引き締めて、本人と全く違うような顏をしましたので、そうした態度が係官に対して非常に疑惑の念を持たしておるのであります。そこで更に平澤画伯の身辺を洗つて見ますると、本人帝銀事件後間もなく十万円程の現金を入手いたしまして、妻女に渡した形跡があるのでありますが、その出所が只今もまだ不明であります。又帝銀犯人として種々な適格條件を、この画伯一つ一つ嵌めて見ますると、これを否定することがどうも非常にむずかしいということになつて行くのであります。そこで何分にも小樽におつたのでは一應取調等ができませんので、これを容疑者として地方裁判所吉田判事逮捕状を正式に取りまして、正式なる手續によりまして本人警視廳に招致いたしたのであります。そこで本年の八月の二十一日小樽逮捕いたしまして、二十三日に身柄警視廳に送つて參つたのであります。平澤画伯警視廳に連行して參ります際にも、警視廳としましては相当細心の注意を拂いまして、実は居木井警部補が出張する際にも電報等も普通の電報では直ちに分りますので、特別な暗号電報を用意いたしまして相互の連絡を図ることに相成つたのであります。それから尚先方に參りましても十分に一つ覺られんようにということに、相当主任以下苦心苦心を重ねまして、漸く海を渡りまして船で青凾連絡船に乘りまして青森參つたのであります。この場合にも警視廳としましては、從來の例になく特に青函連絡船も他の者と一緒に混同するようなことがあつてはいけないので、特に船室一等船室を利用いたしまして、全然他と隔離するような方法參つたのでありますが、青森に入りましていよいよ汽車に乘るときから、遂に警視廳電報の何が外部に洩れまして、この点は誠に遺憾でございますが、そのために平澤画伯容疑者として護送されるということが世間に知られまして、そこで大變に問題になつて來たのであります。それで警視廳といたしましても、普通の容疑者と異りまして、極めて重大なる容疑者でありまするし、又本人精神状態等考えまして、又一自殺をする虞れがあつたり、又途中におきまして逃走するような虞れがあつてはと考えまして、実は手錠も嵌めて參つたのであります。手錠を嵌める際にも相当注意をいたしまして、直接喰い込まないように。布片を手に巻きまして、その上から手錠を嵌めて參りました。それから又列車中におきましても本人もそういう希望がございまして、服などを成るべく顏に掛けまして、他から見られんようにと相当注意をいたしたのであります。それから汽車も、とても三等では混雜をいたしますので、特に二等にいたしまして、二人の席を平澤画伯だけ一人乘せまして、そうして横に寝せて、その上に本人が非常に他から見られるのをいやがりますので、洋服を上から掛けて、そうして來たのであります。そこで、居木井警部補が途中におきましていろいろ言動が行過ぎたというようなことも報道されておるのでありますが、この点は、私共からいたしますと、非常に居木井警部補立場考えますと誠にどうも氣の毒な氣もするのであります。狹い車内におきまして数時間容疑者を側に置いてのいろいろの一問一答でございまするから、容疑者を前にしてこれは犯人でありませんということもこれはちよつと言えない立場もありましようし、そこで多少容疑者であるという程度の強いことを言つたことが眞犯人だというように言はれましたが、この点は我々といたしましても將來十分注意をせねばなるまいと考えておりますが、とにかく護送途上においての、犯人を前にしての一問一答というものは、余程今後注意をいたしませんと、いろいろ誤解を受ける虞れがあるのではないかということも考えております。さてそれから我々といたしましては、東北本線通つて來る予定であつたのでありますが、東北本線を若し來た場合におきましては、途中にこれを下しまして、直ぐに自動車で以て連行して來るという計画を立てておつたのでありますが、汽車の都合によりまして常磐線になつてしまいました。その後汽車が途中驛に寄らずに急行で參りましたものですから、そのまま上野に參りまして、上野に參りましても、相当混雜を予想いたしましたので、直ちに驛の方にお願いをいたしまして、エレベーターを利用させて貰いまして、エレベーターで下しまして、それからR・T・〇にお願いをいたしまして、R・T・〇の路を通りまして、他の者とは少し違つたような路を通つて漸く自動車に乘せまして、それで留置場として警視廳で一番設備のいいと思われる所を選びました結果、駒込割合留置場設備もいいようでありまするので、駒込留置場を選んだ次第であります。それから尚途中におきましても、いろいろ果物等を與えるとか、給與の点につきましても、大体において遺憾なくやつて來た筈であります。從いまして、從來容疑者とは多少扱い方につきましても警視廳といたしましては細心の注意拂つて実は參つて來たような次第であります。ただ帝銀容疑者という大きくクローズ・アップされております関係上、どうしてもその取扱い方というものがいろいろと大きく特筆大書されるようになりますので、多少そうした或いは人権蹂躙的な行動があつたのではないかというようにも誤解を受けるのでありますが、從來容疑者としての取扱いとは全然違つた取扱い警視廳としてはして參つたつもりであります。  それからその後、平澤画伯警視廳に參りまして直ぐ関係者のいわゆる面通しというものをいたしたのでありますが、十一名会わせたのでありまするが、大体大部分犯人相違ないと言い、又頗る似ているという証言をいたしたのであります。そこで先ずこの本人面通しを大体そういうように終りましたので、そこで容疑は一層濃くなつたわけであります。引續身柄を留置いたしまして、本格的捜査に入つたのでありますが、ところがたまたま本人所持品文書の中に、かねて捜査本部帝銀容疑事件として犯人捜査中の詐欺事件関係がありまする山口という印影に全く同一の印影画伯文書の中に発見いたしたのであります。その事件は、昨年の十一月二十五日の晝、丸ビルの三菱銀行支店で、預金者長谷川某という者の女事務員が、一万円の預金を下げようといたしまして、手續を濟ましまして窓口に待つておると、いつの間にか犯人が女事務員に代りまして金と銀行通帳受取つて、その後十二月末頃、犯人はその通帳に二十数万円の預金があるように記入いたしまして、山口その他の印を捺してこれを僞造いたしまして、これを高利貸の担保に提供いたしまして、二十万円の小切手を手に入れまして、銀座日本堂時計店に持つて參りまして、小切手と引換えに通計を詐取しようといたしたのでありますが、日本堂の店員に氣付かれまして、これは未遂終つたのであります。只今申しました銀行中心詐欺事件が、どうも帝銀事件と何らか一脈相通ずるものがありまするので、捜査本部はかねてから犯人捜査中であつたのであります。ところが全く偶然にも、平澤画伯の持つてつた書類詐欺犯人使つた通帳と寸分違わない印を発見いたしたのであります。そこで右の詐欺事件平澤画伯の所爲と考えるようになりまして、調べましたところ平澤は遂にこの詐欺事件を自白し、又当時の関係者平澤犯人相違なしと証言したので、九月三日に平澤を先ず詐欺被告人として地檢高木檢事が起訴いたしたのであります。  帝銀事件につきましては、引續取調中でございまして、冒頭に申上げましたごとくに、今ここで多くを語る自由を持つておりませんが、勿論容疑が薄いものを行き掛かり上止むなく調べておるわけではなく、捜査を進めるに從いまして、ますます容疑を深めるものがあるのであります。ただいろいろと傍証を固める上におきまして、相当苦心を重ねておるのであります。  現在平澤画伯に対する帝銀事件としての容疑の点を、どこが一体容疑であるかということを抽象的に申上げて見ますると、大体におきまして、今まで報道機関が非常な活躍によつてそれぞれの社におきましてお取りになつたと同樣なことでありまして、殊更新らしいものはなかろうと思つて、おりますが、先ず人相の似ておる点とか、それから筆跡が似ておる点とか、この点につきましては、只今專門の科学的の鑑定によりまして、平澤画伯の書いた筆跡と、又当時の銀行小切手板橋云々と書かれましたあの筆跡等鑑定につきまして、科学的な捜査を進めております。それから松井博士名刺入手の点であるとか、それから一番問題になつておりますのは、アリバイがさつぱり分らんのでありまして、本人の申立が常に變りまして、アリバイが少しも証明されんという点が一番困つたのであります。それから金の入手の径路が未だ不明でありまして、この点もまだ突き止め得ないのであります。それから先程申述べました帝銀事件発生後に、こちらに妻子があり家があるにも拘わらず北海道行つて東京歸つて來ないという点、それから帝銀で使用した赤革靴と同樣な赤革靴所持しておる点、それから洋服も大体似通つたものを所持しておる点、知人山口二郎でなくして山口三郎という者がおる点でありまして、これはよく僞名を用いる場合におきましても、大体自分の知つておる名前の一字を取るとか、そうしたことがよく行われるのでありますが、知人山口三郎という者がおる点、それから現場附近の地図に非常に精通しておるという点、それから特に疑惑を深めておりまするのは、平澤画伯の性格でありまして、この点は我々も非常にいろいろと專門的な研究をして貰わなくちやならんと思いますが、他面二重人格的の半面を持つておるという点、かような点がまだいろいろございまするが、先ず我々の方で抽象的に考えましてピック・アップした容疑である点が、大体以上によるところであります。  捜査本部といたしましては、目下地檢高木檢事の指揮の下に、これらの容疑の点に対してあらゆる積極的な捜査をやつておるのであります。この点につきまして、從來帝銀事件につきまして、國内の各方面から非常に御協力を頂きまして、事件後三、四月頃には、毎日何十通の投書なり、又いろいろな注意、警告、そういつたものが捜査の便宜のためにというので資料として送つて下すつた点が非常に多うございまして、今でもまだ各方面から、いろいろ捜査上参考になればというようなことで御協力を頂いております。いわゆる國民的捜査というようなことで、非常に我々としましては、士氣を鼓舞させて頂いておるのであります。又同時に各方面におきましても、相当これがために犠牲を拂い、多くの積極的な御協力も頂いておるのであります。又事件の点につきましては、只今鋭意傍証を漁りまして、いろいろと捜査を進めております。未だはつきりしたことは申上げかねるのでありますが、とにかく相当濃厚であるということは言えると思うのであります。  最後に、平澤画伯自身は、目下極めて平靜でありまして、精神的にも、肉体的にも、別段に異常はないのでありまして、尚我々といたしましても、こうした点を取扱う上におきまして、十分に家族の点、家族の方々には何も罪がないのでございまして、世間家族に対するいろいろな取扱い方につきましては、我々としまして、非常にお氣の毒に考えておるのでありますが、この点は、家族には何の罪もないのでありますから、社会が家族を冷く扱わんように、我々といたしましても、特にその点を考えたいと思つております。
  5. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは、次に人権擁護局長大室さんの御説明をお伺いいたします。人権擁護局として、本件に対してどういう御処置をおとりになつたか、又どういうお考えであるか、この点についてお伺いいたしたいと思います。
  6. 大室亮一

    人権擁護局長大室亮一君) 帝銀事件につきまして、捜査当局が非常な努力を拂つておいでになるということにつきましては、非常な敬意を拂うのでありますが、人権擁護の職にある者といたしまして、聊かこの人権についての考えを申述べて見たいと思うのであります。これは先ず第一にこの容疑者逮捕状についての問題、次に函館から連行したその途中における問題、それから容疑者自殺を企てた問題、それから帝銀事件容疑者として勾留して置いて詐欺罪で起訴したという問題、こういう点について私の意見を申上げて見たいと思うのであります。  第一の平澤逮捕容疑程度とそれから時期についてでありまするが、これは人権擁護局といたしましても、逮捕後数日の後に檢察当局から事情を聽取いたしましたが、その際手續上の違法はないものと思つております。ただその後の捜査の進展の跡を願みますれば、手續上違法でないといたしましても、まだ逮捕前に盡して置くことを相当とする捜査手段があつたのではないかというような感じを受けるのであります。この点は調査の上でなければ何とも申上げられませんが、更に事件が落着いたとしましたらこの点を調査して見たいと考えております。  次に、連行の警察官が、若し新聞に報道されておるように、被疑者眞犯人に間違いないということを斷言したものといたしますれば、現行刑事訴訟法の二百五十三條、新刑事訴訟法の百九十六條にある、捜査の秘密及び名譽に注意するという、その趣旨にもこれは反するのではないか、そうして少し行過ぎではないか、こういうふうに考えておるのであります。この点につきましては、そういうことを言つたと言われておる警察官が、事件捜査に重要なる役割をしておるのでありまして、事件重要性に鑑みまして、一先ず捜査を完了した後に、事実の眞相調査して見たいと、こういうふうに考えております。  次に平澤自殺を企図したことでありますが、そのことにつきましては、これは身柄保護上何か手拔りの点でもあつたのではないかというように思われましたので、当時檢察廳注意方を口頭で要望して置いたのであります。  次に、勾留した罪名と全く違つた罪捜査して起訴するというのは、原則的には妥当ではないかと思うのでありまして、併し容疑者詐欺罪で起訴したのは、檢事局においてもよくよくの理由があつたと思われるのであります。この点は後日調査したいと考えております。  この帝銀事件につきましては、人権擁護局といたしましても大きな関心を持つております。逮捕後数日の後に檢察当局に諸般の事情を聽取して、身柄保護取扱い本件容疑が薄らいだならば直ちに釈放すべきではないかというように傳えて置いたのであります。その後順次推移を聞いておるのであります。  次に一兩日前に或る新聞に、平澤の談話としてこういう記事があつたのでありますが、「交友、知人関係を調べる警察官の方までが、眞犯人と決まつたようなやり方で云々」と、そういうような記事があつたのでありますが、果してそういうことがあつたかどうかということは、これは調査して見なければ分りませんが、これはひとり帝銀事件ばかりでなしに、その容疑者眞犯人と決するまでは、眞犯人であるというような言動はしないように注意して貰いたいのであります。大体現在まではこんな程度であります。
  7. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 次に東京地檢の檢事正の代理馬場次席檢事から御説明を願います。主として本件につきまして詐欺罪で起訴して、そうして本件殺人罪の方の捜査にこれを利用したという点は事情上止むを得ませんかも知れませんが、新刑事訴訟法精神にも反すると考えますので、その点の御説明を願います。
  8. 馬場義績

    東京地方檢察廳次席檢事馬場義績君帝銀事件平澤容疑者に対して逮捕状を出して、それから捜査をした結果、その中途において詐欺事実が発覺したためにこれを起訴いたしました経過は、先程警視總監から説明された通りであります。只今委員長から詐欺罪で起訴して帝銀事件捜査を繼續することは、妥当ではないじやないかという御質問でありますが、これは考え方でありまして、私もただ帝銀事件捜査を繼續するために、何か他の小さな事件で起訴して捜査をするということは妥当でないと考えておるのであります。私共は逮捕状で連行して、勾留状を請求して捜査をいたしておりまする間におきましても、捜査をやつておる第一線の諸君に対しては、白紙の態度を以て臨むようにと、予斷を以て臨むということは非常に危險であるということは、主任檢事を通じてしばしば警告して置いたところであります。そして私共の考えといたしましては、とにかくあれだけの騒ぎを起した事件でありますから、うやむやでこの事件を嫌疑不十分ということで打切ることは、世間も非常に疑惑を持ちますから、飜つて平澤氏の立場に取つても非常に困つた問題であろうと思います。苟くも捜査を打切る以上ははつきりと発表せよとまでは言いませんが、要するに相当の嫌疑があつて起訴をするか、或いは捜査した結課、とにかく容疑事実はないというところまで捜査をして行かないと、これは平澤氏並びにその家族の方々に対しても、非常にお氣の毒な結課になるだろうと考えて、とにかく白か黒かということをはつきりさせるようにということを特に注意して捜査をさせておつたのであります。ところがその間におきまして、先程警視総監からお話がありましたように、詐欺の事実が分つて來た。而もそれは最初に帝銀事件が発覺当時から、どうも帝銀犯人が似た者が、やはり詐欺犯人として捜査線上に浮んで、何らかの関連があるのではないかということから、やはり手配中の者であつた。それが先程申上げましたような経過で、これは本人の自白を待たず、もう傍証だけではつきり認められる程の明白な犯行が分つて來た。而もその犯行は非常に巧妙な犯行なのです。最初は名前は忘れましたが、或る銀行でとにかく番号札を拾つて、それで人の預金帳と拂戻金を騙取して、そしてその預金帳を僞造して大森のさる金融業者へ持つてつて金借を申込んだ、ところがそれを斷られた。次に又持つてつてそこで二十万円の小切手を騙取することに成功して、それから翌日その小切手を持つて日本堂という貴金属商に行つて十数万円に上る貴金属を買おうとして、そこで又しくじつたという事件で、私は非常に巧妙な犯罪である。若したまたま帝銀事件容疑者であるために、そういう詐欺事実があつても起訴すべからず、或いは起訴したらもう帝銀事件の調べをしてはいかんということは、成る程法律的には簡單かも知れませんが、それじや帝銀事件捜査をどうするかというと、これは世間の人は單なる法律論では納得させられないのではないか。私共といたしましては、あれだけの騒ぎを起し、あれだけの事件容疑事実が出ておりまする以上は、何とかしてこれははつきりさせて、若し平澤に嫌疑がないということをはつきりさせることは、むしろ平澤立場を擁護する意味ではないかというふうに考えておる。だから或いは純法律論から申しますならば、そういう御批判も受けるかも知れませんが、私共といたしましては、成るべく早くいずれかに決したく鋭意捜査を進めておる。大体こういう氣持でやつておるのであります。
  9. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 大内檢務長官から法務廳における本件に対するお考えをお聞きしたいと思います。
  10. 木内曾益

    ○檢務長官(木内曾益君) 御質問の点につきまして私からお答えいたしたいと思います。  問題のいわゆる帝銀事件につきましては、この平澤問題が取上げられるようになつたことにつきまして、地方檢察廳からまだ正式に報告を受けておりませんし、事件捜査がどの段階になつておるか私はよくまだ了承しておらないので、ここで正確なことをお答えすることができないことは誠に申譯ないと思う次第であります。先程來馬場次席檢事或いは警視総監から、事件そのものについてはいろいろ御説明があつたことと思いますので、それを以て御了承を願いたいと思うのであります。法務廳といたしましては、問題の重点はいろいろこれが新聞に喧傳されますので、或いは一時は人権蹂躙問題というようなことまで取上げていろいろ論議されたのでありまするが、私といたしましては、さようなことはないと確信いたしておる次第であります。ただ問題は余りにも大きく新聞に書き立てられたため、これは私の想像でありますが、世間疑惑として或いは警視廳なり、成いは檢察当局なりが事件をいろいろ発表するのではないかというふうな疑いを以て見ておる向きもないではないと考えるのであります。併しながら警視廳なり或いは地方檢察廳において発表すべきことは正式にそれぞれの所管の係の名前において発表しておるのでありまして、あらゆる点について新聞記事にあることが全部これが当局の発表しておるというのではないのであります。ただ問題は、これは各新聞社も非常に注意されておる事件でありまして、いろいろの方面から材料を取つておるのでありまして、これは又新聞社の使命として当然のことと思うのであります。ただ問題は從來は御承知の通り犯罪捜査につきましては記事の差止めができることになつてつたのでありますが、新憲法の施行によりまして言論の自由を保障しておる点と衝突するという疑いがありやしないかというので、これは廃止になりまして、現在においては犯罪捜査中の事件について新聞記事等を差止めるという、何らの法的根拠がないのであります。私はこの事件を通しましてもやはり憲法の要請する言論の自由も公共の福祉という枠が掛かつておるのではないか、かように考えておりますので、この事件を通しまして、これは何とかさような点について一つの措置を講ずるのがいいのではないか、そのために非常に迷惑する人も起つて來ることでありますから、さような点について私共も何とか一つ憲法と衝突しない範囲内において何らかの方法があるのではないかということを考えております。これは私の一個人の希望でございますけれども、この点は是非國会においても取上げて頂いて、而もこれは憲法の最も重大なる問題として取上げておる言論の自由に関係する問題でありますから、一つ考え置きを下さいまして、これに対する措置を國会等においても一つ考え願いたい、かように考えおる次第でございます。先程も申しました通り事件の内容については、私はまだ十分報告を受けてないために承知しておりませんので、その点についてお答えできないのは申譯ないと思います。
  11. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 堀崎第一課長にお尋ねします。事件の詳細が刻々として新聞に報道されております。これは捜査陣から発表されるのか、若し発表されるとすると非常に基本人権に影響するところ大なるものがあると考えますので、その点の御釈明を願いたいと思います。
  12. 堀崎繁喜

    警視廳捜査第一課長(堀崎繁喜君) 私直接本件捜査の中心にありまして、又報道陣營の求めに應じて日頃接触しておる立場からその説明を申上げます。当初本件発生以來國民の関心又報道陣の活發なる行動は未だ曾つてない状態でありました。我々捜査に当る者としましては、捜査の秘密を保持するために、これは長年の我々の習癖ですが、あらゆる苦心拂つてつたのであります。併しながら当初は何としましても刑事は後を尾行され、或いは訪問先は張込まれて、刑事の手足は十分に行かなかつたのであります。又次々と刑事の活動によるいろいろな捜査の秘密が掲載されますので非常に捜査陣としては困つておりました。併しながらこれも憲法の言論の自由の尊重という意味から、これは我々みずからの苦心によつて必密を保持しなければなりませんので、係刑事に対しましては、その発表どころか、顔色や擧動に至るまで現わしてはならないという訓辞をしばしばいたしております。又本部の態度といたしまして、藤田刑事部長若しくは私の談以外は、責任は持たんということをしばしば言つておるのであります。併しながら何としましても余りに事件事件でありますために、これは我々の考えておる方向とは誠に違つた方向に參りまして、捜査事態から申しましても、又容疑者として擧げられた方々に対しましても非常なる御迷惑を掛けておるのでありますが、本部といたしましては、最初から一人も容疑者の名前を擧げたことはありません。むしろ新聞に名前の出たその者はこの事件関係ないというような聲明をしたことがありますが、一人も容疑者の名前を挙げたことはありません。その間或る種の手を打つたのでありますが、これも一時は守られましたが、最近又こういう状態になりまして、恰かも警察若しくは檢察廳から洩れる、或いは発表するというふうな感を抱かせるようなことになつておりますが、私なり刑事部長なりの談話は発表事項を文章にしましてそれを読み上げまして全文掲載されることを望んでおります。併しながら抹殺される方がむしろ多いのであります。又私の談として載る場合に私はそういう形式で言うのでありますが、いろいろ話しておることが言葉の表現として反対な表現の方法を以て載ることもなきにしもあらずであります。私ははつきりその実情を申上げます。これまではともかく大過なくやつて參つたのであります。我々としましては、その秘密保持に筆舌に盡せない苦労をしておる点だけを御了解願いたい。非常にその点は苦心して秘密の保持をしておる実態でありますから、その点御了承願いたいと思います。
  13. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これで一通り当局の御説明は終りました。これから御質問を願うことにいたします。
  14. 來馬琢道

    ○來馬琢道君 法律に関係のあります方から見ますと、この度の帝銀事件犯罪捜査ということは、人身保護法を成立させた國会議員といたしまして、いろいろ違法に近いことがあると言われるかも知れませんが、來馬琢道は一介の市民として考えますときに、犯罪捜査当局が全力を注いで呉れないということは我々の生命、財産を脅かされる所以である。その点については民主警察という聲に対しまして常に一種の不安を抱いていた者であります。過日司法委員として東海及び近畿方面の各裁判所関係ところを訪問したときに、勾留期間が短いので、余罪の捜査ができなくて困るということは、殆んど万口一齊に放たれた不平の聲と承知いたしております。平澤画伯の問題につきましては、相当自分も注意いたしまして、新聞紙の報道するところを見ておりますが、よくもこれ程までに、細かいところまで手を盡して捜査せられたものであると感心するところ相当あります。西洋の探偵小説を読んで西洋の事情を知り又自分もヨーロッパの方へ行きまして、その探偵小説によつて見たいろいろなところを見て來、ははあ、こういう所かなと感心したこともあるやうな自分の見聞から見まして、日本の警察もこれ程までに努力していられるかと、むしろ感心しているのであります。併しながら只今すでに発言があたりますように、同伴して來まする係員の言葉の中に行過ぎたことがあり、又秘密にして來る筈のところを、何か手落ちがあつて漏洩したために、あのような騒ぎになりました。只今ところ捜査が段々黒というような工合に進んで來るというような新聞の報道がありますが、若しこれがそうでない場合におきましては、いわゆる人権蹂躙ということに近くなると思うのであります。この点につきまして、幸いこのときに当局におかれましては、注意はするけれども、どうも新聞紙上の報道が早いので捜査に困るということが本当にあるのでありますか。若しそういうことが今回の事件によつて、むしろ日本の捜査陳に妨害になるというようなことがあるとするならば、今回の事件は、又事件といたしまして、國会議員の方から考えれば何かそこに新らしい立法の工夫をしなければならないかとも思う。幸いにして今日までの経過は甚だしき失態はないようであるけれども、只今主なる目的の犯罪は後廻しになつて詐欺の問題が先になつたというようなこと、それを利用して主なる問題を捜査しようというような手續が違法であるというのか、或いは不穏当なれども、これは致し方がないというのであるか、最高のその方面の地位の方からこの際御所信を披瀝して貰い、又國会に対する答弁として伺うことができれば、私共も又民間に向つてその方針を釈明することもできようと思う。この際その意味において説明をして貰いたい。
  15. 木内曾益

    ○檢務長官(木内曾益君) お答えいたします。御質問の御趣旨は、要するに平澤詐欺罪で起訴して置いて、そうして結局問題の帝銀事件捜査に利用、身柄の拘束を利用しているのではないか。さような点についての御質問であつたように私は了解いたしたのでありますが、先程も申しました通り、私はこの事件の内容について詳細を存じませんのでお答えに違う点がありましたら直接担当いたしておりまする馬場次席檢事から御説明を願いたいと思ふのであります。私がこの事件全体を見ておりまして、又私が多年第一線檢察官といたしまして扱つてつた経驗から見まして、私はこの事件平澤帝銀事件捜査の便宜のために詐欺罪で起訴しておいて、そうしてその身柄の拘束を利用して取調べをしようというような考え方は私はいたしておらんだろうと確信いたす次第であります。やはりそれは現われました詐欺罪でありましても、相当惡質であり、当然起訴さるべき犯罪でありますので、それが明瞭になつた分だけを起訴したまででありまして、例えて申しますならば、現われた派生的な事件が、いわゆる起訴猶予にすべき程度事件であるのを、わざわざ一方の事件捜査するがために、起訴をして置いたというならば、只今御質問のような誤解を受けましても檢察当局としてはなかなか申開きは困難であろうと思うのでありますが、本件のような場合におきましては、繰返して申上げますが、とにかく帝銀事件というものを離れましても、私の経驗から言いますならば、当然起訴、拘束すべき事案と考えますので、そのために起訴したものであつて帝銀事件捜査のために、その便宜上起訴したものとは考えられない次第であります。
  16. 馬場義績

    東京地方檢察廳次席檢事馬場義績君) 只今木内檢務長官から御説明になつたことで大体盡きていると思いますが、先程私が申上げたことで、多少足りない点があつたように思いますから、この機会に補足をいたして置きたいと思います。  先程も申しましたように、要するにこの事件は、若しこれが眞犯人であると申しますならば、天人倶に許さざる極惡なる犯人であります。又逆にこれが全然濡衣でそうでなかつたというならば、実にお氣の毒な結果になる、だからお氣の毒な結果になる場合には、そのことを捜査当局としてはつきりすることが、容疑を掛けた者の責任であろう、かように考えているのであります。ただ詐欺罪で起訴とたから、もうそれ以上は調べないで放つて置くということは、これは捜査官として決して職責を盡したものでないと思います。と言つてもこれを無期限に捜査するということは、到底許さるべきものではないのであります。先程憲法の解釈で公共の福祉という枠がかかつているという御説明がありましたが、やはりこういう問題でも結局最後は常職が解決するものである。こういうふうに私は考えます。起訴は決して先程も申しましたように、帝銀事件捜査するために、起訴すべからざる者を起訴したものでないことは、私も申上げますし、檢務長官からも今申上げた通りであります。これはあの詐欺事件の内容を御覧になりますれば大体御了解頂けるのではないか、かように考えている次第であります。
  17. 田中榮一

    警視總監田中榮一君) ちよつと私から弁明して置きたいと思います。居木井警部補言動でございますが、先程私の申上げましたように、居木井警部補北海道へ參りまして、連日不眠不休で、平澤画伯連行の責任者として活動いたしました。而も船の世話から、汽車の世話から、一切のことを居木井一人でやつているのであります。恐らく平澤画伯以上に居木井は疲労困憊その極に達しておつたろうと思います。そうして漸く列車の途中まで參りまして、多数の人々が列車に乘り込みまして、勢い一人に対して一年一答のいわゆる乱射乱撃がここに始まつたのであります。彼としましては殆んどそのときに精神的にも、肉体的にも相当疲労困憊いたしております。  而も彼は非常に熱心な男でありまして、名刺班の班長としまして家に歸りましても、殆んど書類を自分の寢床の上に持つて寢るというくらいに熱心な男であります。そうして明けても暮れても、名刺のこと以外には彼の頭にはないのであります。而もその本人が參りまして、その容疑者を前にして、これが犯人であるか、容疑者であるかと言われた場合における彼の苦衷たるや、我々は又察するに余りがあるのであります。歸りましてよく調べましたところが、斷言はしていないようであります。これは容疑者に対する一つのジェスチュアでありまして、私はこれはどうも止むを得ぬと思うのであります。容疑者のいる前で、これは容疑者で分らないのだ、白いのだということは、これは搜査主任として絶対に言い得ないと思うのであります。又同時に容疑者の前で、これが犯人だということは恐らく私はそういうことは言つてなかろうと思います。まあ併しそこは言葉のあやでありまして、彼も疲労困憊その極に達しておりますし、乱射乱撃の質問の中にありますので、或いは無意識の中にどういう言葉を発したか知れませんが、とにかくさような誠に毒の毒な状態に置かれてあつたことは、はつきりいたしておりまして、殆んどもう疲労困憊その極に達して上野に到着いたしまして、而も上野に到着いたしましてから後も、その責任上家へも歸らずに、その傍にあつて嚴重に監視しておつたような実情であります。この点だけはどうか一つ護送の係員の言語、態度等につきましては、かような点も一つ十分に御同情を願いたいと思いまして、ここに一言申上げて置く次第であります。
  18. 來馬琢道

    ○來馬琢道君 私の質疑いたしましたことに対して、大層行き屆いた答弁がありましたが、私は初めに申したように犯罪に対しましては、十分なる御盡力を願いたい、そのために盡される手段が一方人権蹂躙となるということになれば、その方を恐れて搜査の手が緩むということになつてはならんと思う。我々立法府におります者といたしましては、その辺の機微についてもよく考慮したいと思つたので、只今の質問となつたのであります。尚我々はこの点について考慮したいと思つております。只今の御答弁に対して私の態度を明らかにして置きます。
  19. 木内曾益

    ○檢務長官(木内曾益君) 先程來馬委員からの御質問の中で、私が最も大事な点を落しましたことは甚だ申訳がないのであります。先程の御質問の趣旨も、私共搜査陣にとりまして非常に御理解ある御質問を頂きましたが、それでこれは何を措いても御返事いたさなければならんのを、第二段の方だけになりまして前の方のお答えを落しましたことは申訳ない次第であります。私が最初申上げました通りに、この言論の自由ということと、そうして搜査の秘密の保持という問題が、これは非常に重大な問題であろうと思うのであります。で先程も申しました通り、私の考え方といたしましては、言論の自由にもいわゆる公共の福祉ということが公に掛かつておるという考え方をいたしておるわけであります。一方犯罪搜査についての記事の差止めということは、今日できないことになつておるのでありまして、又本件のような重大な問題で、國民的関心を持つておるものについて、各新聞社がやはり成るべくその眞相を、材料を集めて一日でも早く國民に知らしてやろうという、その新聞としての使命、職責上から一生懸命やつておいでになるのでありまして、この点については私共心から感謝いたしておるのであり、又その御労苦に対して御同情申上げておるわけであります。併し一方本件のように、或いは黒なら黒、白なら白と決まつたものならばよろしいのでありますが、まだいずれとも付かない状態にあるときに、本人の名譽の問題ばかりでなく、各関係者等もそのために非常な迷惑をする。それは一方名譽の問題ばかりでなく、又一面搜査の面から行きますと、次々と新聞に書かれると、搜査が非常にやりにくくなる。そこで第一線においては非常に困難しておるわけでありまして、この点について何らか憲法の趣旨と衝突しない限度において、その個人の人権保障ということと、言論の自由ということを、双方睨み合せまして、適当な法的措置を講ずるのがよいのではないか。私はこの帝銀事件を通じて見ました私の感想は、この措置が取られない以上は、常に同じような問題が起きるのではないか、かように考えておるのでありまして、先程もお願いいたしました通り、國会の方におきましてもこの問題をどういうふうな立法措置をするのがいいのかということも一つ考え置きを願いたいと、お願いいたす次第であります。
  20. 岡部常

    ○岡部常君 本事件は極めて重大なことでありまして、新らしい刑事訴訟法の趣旨から申しましても、本人の弁護権というものは十分に尊重せられておることを私は確信するのでありますが、実際今回警視廳に留置せられるようになつてから、弁護権はどういうふうに行使せられておるのでありますか。新聞で傳えるところによりますれば、すでに弁護人は選定されておるようでありますが、その弁護人と本人との関係はどういうふうになつておりますか。私実は惧れますのは、本人のための弁護ということも必要でありますが、新聞等に現われておりまするところから察しますると、或いはこれは弁護人と本人との間にそういうふうな材料がいろいろ話題に上つて搜査の妨げをするというようなことも想像せられるのでありますが、そういう点について警視廳当局ではどういうふうなお扱いをなさつておられるか、ちよつと承つて置きたいと思います。
  21. 馬場義績

    東京地方檢察廳次席檢事馬場義績君) 事件が起訴されておりますから、私から申上げる方がよろしいと思いますので申上げます。帝銀事件容疑者につきましては、すでに山田弁護人が弁護屆を出しておられまして、その必要に應じては面会もしておられると聞いております。山田弁護人の態度は非常に紳士的でありまして、先程御心配になりました搜査の妨害になるという点は全然見られません。山田弁護人も恐らく腹の中ではとにかく眞実を発見するということに御協力をして頂けると、こう思つております。高木檢事と山田弁護人と一度私の部屋にお見えになりましたが、非常に両方とも了解し合つて、フェアプレーでやるということを申しておられましたが、その点は私は遺憾のない点だろうと思います。ただ山田弁護人も言つておられるし、私もそう感じておるのでありますが、先程來問題になつております報道が非常に盛んに行われますことが、いいにつけ惡いにつけ証言に影響を及ぼすのではないかということを憂えておられる、私も憂えておるのであります。これは報道人には報道人の立場があるので、いずれがいい惡いということを申上げるわけではないのでありますが、事件の性質上、若しこれが起訴になつたと仮定をして、公判にでもなります場合に、証言をいうものの判斷をする上におきましても、私は相当影響力があるのじやないかということを惧れるのであります。でありますから、報道の使命と、それから犯罪記事の扱い方ということについて、立法的措置なり何かその他の措置が講ぜられることが今後においても非常に必要であるということを痛感して、本委員会等においてこの問題を取上げられた機会に、何らかのイニシアテイブを取つて頂くならば、私らは非常に有難たい、かように考えております。
  22. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 大体私がお尋ねいたそうと思つておりました事柄は、両委員においてお尋ねになつた点がありまするので、重復せんように、極めて簡單に二三点お尋ねいたしたいと思うのであります。この今日の新聞の論調でありますが、先程來搜埼課長さんの御説明で私は了解したのでありますが、依然として警視廳一方的の行動ばかりをやる、依然として昔ながらの犯人と覺しき者に対するひどいことをしておるのではないか、こういうふうな巷の風評があつたのでありますが、これは課長さんの御説明によつて新聞人の六感の働きによつてそれをお書きになることが多いので、自分として一々発表する場合は文書にしてやるのであるから、文書通り傳えられないから誤解を生じたということを聞きまして、この点は了解したのであります。又一方このときこの場合において、あらゆる難関を突破してどうしても眞犯人を糾明して貰いたいという声のあることは、これ亦爭いのない事実であります。こういうような巷間に二つの流れがありますので、この委員会がこれを促えて、事件の内容をでき得る限り明瞭にし、天下に公表できることであるならば、幸福これに過ぐるものはないと思いまして、一、二点お尋ねをする次第であります。  搜査手讀、いわゆる逮捕いたしますについてのこの問題については、恐らく如何なる機関も不都合なる所爲があつたということは耳にせんのでありますが、この犯行が行われた直前において、当時新聞に出ておりましたるところによりますと、まだ打つ手があつたのではないか、一万七千円の小切手が次の日に引抜かれておるではないか、これなどはいわゆる非常な大きな失敗ではないかというようなことを言い傳えられておつたようでありますが、この点に対する搜査ではどういうお考えであつたか、お尋ねをいたして置きたいと思うのであります。  第二点は、護送せられましたる居木井警部補さんが、心身頗る過労で、而も今日名刺々々と一点張りで殆んど夜もすがら寝られんというように心配せられておるということ、誠に敬服に堪えないのであります。このお方が、言葉のあやということを申されましたが、言葉のあやにいたしましても、これが眞犯人なりということを言われたといたしますと、いわゆる先入感によつて、どうしてもこやつこそは犯人なりという考えを持つて依然として第一線に大活躍を續けておられるということ、私は頗るこの点が一般國民として疑惑を持つのではないか。非常に働かれて苦労せられて、夜も寝んで今も総監のお話によりますると、犯人と言われる人以上に疲弊困憊をしておるというお方が、第一線で活動をすることによつて世間から疑われるということがありますということは、本人にとつても氣の毒でありますが、先程の総監のお話によると、非常に弱つておられるようでありますが、暫し休養をせられるよう御処置をとられるようなお考えがありや否や。  第三の問題は、自殺の問題で、先程ちよつと御説明がありましたが、自殺をし掛けたということが新聞に出ておりましたが、その後の模様はどうなつておるか、それから傷の程度はどういうものか、何がために自殺をしなければならんかということ、何がためにということは、新聞によつていろいろ書き方が違つておりますので、私共了解に苦しむのでありますが、差支えなければお聞かせを願いたいと考えておるのであります。  それから重復するようでありまするが、少し變つた面からお尋ねしたいと思いまするのは、本件詐欺罪関係問題でありまするが、これは非常にむずかしい問題で、搜査に從事しておられる人の苦心はよく分るのでありますが、平澤眞犯人であらうと見当を付けておられまする理由を先程御説明になつたようであります。彼の人相、彼の筆跡、それから松井氏の名刺の点、アリバイの頗る不明なる点、即ち彼の申立の不明瞭なる点、それから金の入手の径路の頗る明らかでない点、それから事件発生以來北海道へ行つておりまして、東京妻子があるのに歸つて來なかつたというような点、赤革靴とか洋服が大体似ておつたというようなこと、知人山口三郎というような者がおつたというような点、現場の地図に頗る精通しておつたというようなこと、最後に彼が四重二重人格者と思われるというようなことを擧げておられるのであります。そういたしますると、この度御起訴になりましたる詐欺事件というものと、それから外部から固めておいでになつたこういうようなる証拠のどの程度集まつておるか知りませんが、詐欺事件帝銀毒殺事件との関連性というものを、少しく納得行くように御説明を願いたいと思うのであります。  次にお尋ねいたして置きたいと思いまする点は、これ亦山田義夫弁護人の説であつたかと考えておりますが、相当彼の精神上怪しいところがある、精神鑑定といつたようなことを言つておるようでありますが、その点は、先程のお言葉の中では、頗るしつかりしておるということでありまするが、こういうようなる精神が果してどの程度のものであるかどうか。いわゆる精神が全く變になつておる、而も疲弊困憊の極に達しておつて、言いなり次第の答弁をするような状況に至つておるかどうかというようなことは、これは誠に重大なことでありまするので、これ亦お尋ねをいたして置きたいと思うのであります。  最後に、或る程度御進行になつておるのでありまするが、近い將來において保釈の申請があつた場合においては、お許しになるなつもりであるかどうか。  以上の点を、私箇條書に申上げましたが、ただ搜査段階中でありますので、お答えということが搜査の面に影響するというような点は、お伺いできんでもよろしいと思いまするが、できるだけ詳細に御答弁願いたいと思うのであります。
  23. 堀崎繁喜

    警視廳搜査第一課長(堀崎繁喜君) 只今の御質問に対しましてお答えいたします。  第一問の事件発生当時の措置についての御質問でございますが、殊に小切手の問題であります。あの事件は一月二十六日警視廳で承知しましたのは午後五時判頃でございます。現場は十数名の死体が散乱し、入院手續なりその処置、指紋その他現状の保護というようなことで一日忙殺されまして、何が取られておるかという被害調査は翌日になつたと思います。それで全部金を持つて行かれれば、金を取られたということが直ぐ分るのでありますが、現場に、後ろの箱には三十数万円の札束があり、机の上にはやはり十数万円の札束があり、僅か机の上にあつたもののみ取られたのでありまして、行員の殆んど全部が死亡若しくはああいう失神状態で、金の関係は少しも分らなかつた帝銀の本店から應援を頂きまして、早朝から帳尻を合せて、翌日二十七日の午後に至りまして、帳尻が合わんということになつたのであります。その中に小切手一万円があつたというのは、小切手を持つて來た人が届けて呉れて分つたのであります。それは百円の紙幣の中に挾んであつた。正規の手續をとり印鑑を捺して、受附から百円札入れた途中にありましたので、入金があつたことすら帳面ずらでは分らないのでありまして、持つて來た後藤豊治さんから、持つて來た話を聞くと、直ぐ手配したときにはすでに遅かつたという状態にありますので、誠に私達としては、一番よい直ぐとられる点を失したのでありまして、これは御批判を頂きましても止むを得ないのでありますが、実情がその通りであります。  それから次は、居木井警部補の疲労の問題につきまして、休ましたらどうかというお話でありますが、誠に当時參りましたときには、何と申しましても、事前の搜査、書類作製等に非常に連日の仕事で疲労しておりましたが、併し搜査というものは、途中でなかなか變え難い微妙なところがございますので、連行までは居木井主任とその部屋の刑事が当りました。參りまして翌日からは、そういつた御批判もあると思いまして、ああいう言動があるという報道を見ましたので、内容はともかくとしまして、檢事と相談しまして、主任以下平澤画伯をやつてつた刑事を全部退けまして、そうして三日間休養させまして、未だ居木井主任は、今までの書類作製をしておりまして、捜査の本筋には当つてまりません。全部白紙の者に取替えて繼積中でございます。この点はそういう注意をしておりますが、大分居木井主任の健康も回復しまして、今はすつかりよくなつております。  次は自殺を企てた問題でありますが、これは傷は殆んどかすり傷程度で、ガラスペンの先でちよつとこうした程度で、当時警視廳の医者並びに麹町の医者、警察病院と三者に診て頂きましたが、何ら異常がないということで、血止めの程度に繃帶をしただけで、当日から取調べに少しも支障はないと、又現在も非常に元氣で、食欲も進んでおりますから、この点は御了承願いたいと思います。  その次は、第四点のいわゆる日本堂詐欺事件帝銀との関連性でありますが、これは微妙な捜査途中でありますので、一、二申上げますが、人相が似ておる、服装、携帶品が、当時日本堂の被害者が届け出たもの徳帝銀の服装とよく似ておるという点が一つ。それから舞台が銀行である。それから犯人態度というか、手口というか、これが非常に似ておる。例えば帝國銀行大森支店、ここでつまり竹内から二十万円の小切手詐欺して、翌日三菱銀行の丸の内支店で、それに五万円を加えて、つまり五万円の謝礼を付けて返すとい約束の下に取つたのでありますから、そこで竹内氏の小切手を取つてしまつて、金を返す約束の日の朝帝銀の大森支店に現われておる。竹内さんは念のためにそこへ行つたときにぶつかつたところが、極めて自然にそこをごまかしまして、すつと拔けてしつぽを出さないで逃げた。それは一つの例を挙げますと、荏原の中井の支店で、交番の巡査が行つても、口の先でうまく巡査を追い返して、後で煙草を悠々と吹かしながら少しも動ずる氣配がない。この事件というものは、少しも怪しいと疑うような心身の動搖がないのでございます。こういつたような点まだ挙げればあるのでありますが、例えば、山口という名前が双方に出ておる。或いは筆跡が似ておる、これは可なり似ておるというような点が忽がせにできない、私共捜査に当る者のみならず、当時材料を提供した人達が犯人と似ておると言つて届け出ておるのであります。関係者が皆異句同音に言われております。その皆樣の御苦心に應えて眞疑を確かめておるわけであります。私達は皆さんのこの疑義を糺すべく、公の立場で何とか白黒を付けて、眞実を発見したいと努力しておる次第であります。関連性と申します点はこの程度でお許しを願いたいと思います。
  24. 馬場義績

    東京地方檢察廳次席検事(馬場義績君) 最近の機会に保釈の申請があつたならば釈放するかという御質問のようでありますが、その趣旨は保釈は裁判所がやることであるが、それに檢事が同意するかという御質問のうよに理解いたしましてお答え申上げます。  これは、若し帝銀事件の嫌疑が十分であるとして檢事が起訴いたしましたならば、犯罪の性質上証拠湮滅の虞れが十分にあるという点を考えると、到底檢事といたしましては、保釈に同意することができるないだろうと思うのであります。若し嫌疑が晴れて詐欺事件だけということになれば、これは一般の事件と同一でありますから、若し証拠湮滅の虞れなし、又は逃亡の虞れなして認めましたならば保釈に同意いたします。併しこれはただ私の判斷で、主任檢事の意見も聽かなければなりませんので、その点、そういうおつもりでお聽き取り願いたいと思います。
  25. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 それからちよつと今のお答えがないようでありますが、檢事さんがお調べになつておる模樣よりすると、彼の精神鑑定の問題が新聞に出ておりますが……
  26. 馬場義績

    東京地方檢察廳次席檢事馬場義績君) これは主任檢事にその点を聽きましたところ、今のところ檢事といたしましてはそういう心配はない、かように申しております。
  27. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 これはさつき木内長官と大室局長さんとえらい食い違いがあるようで、揚足を取るやうでありますが、ちよつとお尋ねして承つて置きたいと思います。  人権蹂躙の点については遺憾の点がなかつたやうに木内さんは仰せになつたようでありますが、正式の報告はないけれども、どうも取調中にはあるのではないか、大室局長さんのお話によると遺憾の点があつたので目下取調中であると言われておりますが一法務廳の中においてそういう違つた食い違いのような御答弁を承わることは何かそこに統一したる御答弁が願われないでしようか。
  28. 木内曾益

    ○檢務長官(木内曾益君) 人権擁護局長から先程どういうお話がありましたか、私は席におりませんのでしたので承知いたしませんが、私の申上げました趣旨は、この事件について詳しい報告は聽いてないから十分納得の行けるまでの御説明はできないのでありまするが、とにかく多少聽いておるところの範囲内におきましては、人権蹂躙ということはなかつたろうというふうに私は考えておるというお答えをしたわけであります。
  29. 岡部常

    ○岡部常君 私はちよつと新聞報道との関係でお尋ねいたしたいのであります。本件新聞を賑わしましてから、微に入り細を穿つていろいろな材料が新聞に取上げられておるのであります。実はこれがやはり警視廳方面、或いは檢察方面から出ておるのではないかという懸念を持つておりましたが、本日皆樣からの御説明によりまして必ずしも然らず、これは新聞の新道人の独特な取材によつていろいろな点が挙げられておるのだろうというお話であります。私も大体さように考え參つたのでありますが、とにかくあの、現在報道せられておる有樣を見ますると、先程もちよつと申上げましたように、捜査相当妨げを來するではないかということも考えられまするし、もつと大きく考えまはと、あれは、眞犯人が若しありといたしまするならば、勿論それに逃げ途を與えるということにもなりましようし、もつと突込んで考えますると、今後惡いことを企てる人間に犯罪の手口を教えるというところまで進んでおるように考えて非常に寒心に堪えないのであります。この点につきましては、木内長官からも何らか立法的措置が講ぜられなければならないのではないかという御意見もありました。私共國会議員といたしましてもさように考えておるのでありますが、これは法律を待たなければできない相談でございまするし、差当りこの問題につきましては、何らか新聞方面と御交渉できもおありであるかどうか、この点を私は承つて置きたいのであります。併し新聞社といたしましても、新聞本來の任務として報道に熱中するということは、これは無理からん点はございますが、併し新聞と雖もこの重大事件眞犯人を探し出す、或いは眞実を発見するということに関しては、檢察人、或いは世間一般と少くも變ることはないと私は考えるのでありまして、徒らに新聞の使命々々といつて外を顧みないという、そんな挾い考えはないと考えるのであります。ですから法的措置を講ずるということも結構でありますが、現在これでがきないといたしますれば、何らか新聞陣營と御交渉になつて、現在までのようなああいうことを差控えて貰うというような措置を私は講ぜられないことはないと考えるのでありますが、今までに何らか措置をお講じになりましたかどうか、その点を伺つて置きたいと思います。
  30. 田中榮一

    警視總監田中榮一君) 報道陳營との関係につきまして、ちよつとお答えを申します。実は大分前でございましたが、帝銀事件につきまして、非常に連合國方面の御協力を頂いております。特に新聞課長から非常に御後援を頂いておるのでありますが、帝銀事件取扱い方についてこれを差止めるということはちよつとできないのでありまして、GHQの御注意によりまして実は各社の社会部長さんに刑事部長さんのところに集まつて頂いて、GHQからもこういうことを希望しておるので、捜査上に支障を來す虞れがあるから一つ双方の紳士的協約によつて、できるだけ必要があれば捜査本部が発表する。それ以外においては成るべく書かぬことにしようじやないかというので、各社の社会部長さんに集まりを願つて懇談をいたしまして、その際には非常に氣持よく引受けて頂きまして、一時大分報道も下火となつてつたのでありますが、その際に尚後日のためと思いまして、刑事部長と各社の責任者との間において覚書の交換をいたしまして、発表するときは全部平等に発表しよう、それから捜査本部名を以て発表する、それ以外については一つできるだけ捜査の必要上のことについては、眞実については成るべく書かんようにして貰いたいという一應紳士協約をしておつたのであります。今回平澤画伯容疑問題が発生いたしまして、警視廳といたしましては、相当これが発表等につきましては最善の努力をいたしまして、発表するときには刑事部長なり、捜査一課長の方から同時に発表いたしておるのであります。併し発表以外にやはり各社としましては相当捜査網を持つておりますから、これの活躍も実はあるのでありまして、各社に対しまする一應打つべき手は打つておるのでありますが、これは一應の申合せでありまして、やはりこうした問題になりますと、天下の耳目を聳動する問題でありますから、こうした覚書をやりましても、やはりお互いに競爭というものがありますから、それを守るということは、実際問題としまして至難の事ではないか、從いまして捜査に携わる者としましては、詰らん事件につきましては、これは一々やる必要もなかろうと思いますが、帝銀のような極惡非道な犯人捜査するという場合におきましては、やはり何らか法的の措置を講ぜられて置くことが私は一番必要ではないかと考えております。又新聞社側から申しましても、一つの社が拔け駈けをしますと他の社が拔かれたというようなことになりますから、同時に全部いけないというふうにすると全部書かないことになりますから、何かこういつたことを新聞社の方にも法的の根拠を持つたものをしてやることが、やはり報道陣に対して親切な一つの施設ではないかと思います。
  31. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ちよつと伺いますが、面通しをされますときに容疑者の頭を坊主刈にしたそうですが、本人はこれをどう言つておりますか。
  32. 田中榮一

    警視總監田中榮一君) あれは余り髪が伸びておつたのを刈り髭を剃つただけに過ぎません。それをいろいろ書き立ててニユース張しておるのです。
  33. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今一つ伺いますが、本件に対する起訴、不起訴の関係はいつ頃しますか。
  34. 馬場義績

    東京地方檢察廳次席檢事馬場義績君) これは甚だむずかしい御質問でありまして、いつと申上げる自信はございません。とにかく事件の性質上そう長く放置することはできないと思います。極力証拠を集めまして、いずれかに決するようにいたしたいと考えております。
  35. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本月中とか來月中とか……
  36. 馬場義績

    東京地方檢察廳次席檢事馬場義績君) これは主任檢事と相談しませんと、私一人では決めかねます。長くはしません。
  37. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 成るべく早く決定せられんことを望みます。  では本日はこの程度にしまして、尚詳細お聞きしたいことがありますから懇談の形式でいたしたいと思います。一應これで散会します。    午後三時十五分散会  出席者は左の通り。    委員長     伊藤  修君    理事            岡部  常君    委員            大野 幸一君            中村 正雄君            遠山 丙市君            鬼丸 義齊君            來馬 琢道君            松村眞一郎君            宮城タマヨ君            星野 芳樹君   政府委員    檢 務 長 官 木内 曾益君    法務廳事務官    (人権擁護局    長)      大室 亮一君   説明員    警 視 総 監 田中 榮一君    警視廳捜査第一    課長      堀崎 繁喜君    東京地方檢察廳    檢事      馬場 義績君