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1948-06-26 第2回国会 参議院 財政及び金融委員会 第44号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月二十六日(土曜日)    午前十時五十二分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○所得税法の一部を改正する等法律案  (内閣送付)   —————————————
  2. 黒田英雄

    ○委員長(黒田英雄君) これより委員会を開会いたします。先ず所得税法の一部を改正する等の法律案を議題にいたしまして質疑の続行を願います。
  3. 栗山良夫

    栗山良夫君 過日大蔵省並び安定本部からそれぞれの立場で御説明を頂きました國民所得一兆九千億の内容について重ねて確認をいたしたいので御質問を続けて行きたいと思います。それは一兆九千億の中で問題になりまするのは闇所得、いわゆる表面に出ないところの闇所得が一体どれほど見込まれておるかということが問題になると思うのであります。今度の三千七百円ベース基準になつておるのを見ましても、マル公配給というのは僅かに二五・四%、七四・六%、が闇ということになつておりますので、國民の間における七四・六%、消費財だけを見ましても、相当に大きな部分が闇によつて運営されておるわけでありますから、この部分相当大幅に占めておると、こう思うのでありますが、それについて大藏省安本のこの前伺いました説明の間には、若干計算内容が違いますのか、比率において相違を認めるのでございますが、もう一度それぞれの立場で今質問を申上げましたような点からして御説明を頂きたいと、こう思うのであります。
  4. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) お答えいたします。一兆九千億の中でどれだけこの中に闇所得が入つておるかという御質問でございますが、実はこの問題は非常にむつかしい問題だと思います。御承知のように、現在におきましては勤労所得でありまする賃金については、別に統制も何もないわけですから、その面から行きますと、勿論闇というものが、これには分配所得的に考えて見ますと闇はない、結局個人業所得の中に入つておるものはどうだろうかというふうにまあ考えられる。そういう一つ考え方が一應考られるのですが、併しちよつと考えて参りますと、例えば現在の公定價格は千八百円べースで以て一應計算してある。ところが実際賃金はすでに例えばそれが二千五百円とか、三千円とか、或いはそれ以上に上つておる。そこで若し或る会社がそういう高い賃金を拂つておりますために原價が百五十円かかる。公定價格としては百円である。原價通りに例えば賣つたというふうにして見まして五十円、そごに一應闇の利得があると言えば言えると思いますが、と言つてそれが結局賃金全部に拂われてしもう。賃金の面ではそこでは何ら闇所得にはならん。会社としましては結局儲けはない、原價で賣つたんだ。だが公定價格にはそれだけオーバーしておるといつたような場合におきまして、こういつた金を一体闇所得考えるべきか、考えるべきにあらざるかといつたような点になりますと、私逹まだ結論的にどう考えてよいかよく分らないのであります。ただ御質問の点につきまして一應そういう前提を設けまして計算して見ますと、一應の数字が出ます。要するに現在は先ほど申しましたように、いろいろな闇が入つておる、それを若し公定價格で以て全部が動いていたと仮定したらば、一体現在の國民所得はどれほどのボリユームで以て收まり得るだろうか、この点につきましてはむしろ生産國民所得と申しますか、生産物の方から國民所得ボリユーム考えて、そうして五—九年ベースにおける國民所得の実質的な大きさと、現在における國民所得の実質的な大きさとを一應比較いたしまして、五—九年ベースと、現在における公定價格上り工合というものを、極く大胆にアバレツジ、平均を取りまして、公定價格でもつて、全部の生産物が動いていたとしたならば、一体どの位の大きさでもつて國民所得計算されるか、それと現在の我々の計算しておる國民所得が、全部実行價格といいますか、闇と公定價格が一應計数の中に、無差別に入り込んでおるその数字を、そのまま使つておるわけですから、その両者を一應比較して見れば、闇が入つておるのでありますから、國民所得は一兆九千億になつておる。公定價格だけで全部が動いていたとすれば、それはどのくらいか、そういうふうな計算をまあ一應しておりますが、そうしますと、一兆九千億の数学が、恐らく一兆二千億ぐらいの数字になつておるのではなかろうか、こういうふうに考えます。ただ併しごの場合においても、経済の実体は一應闇相当ある程度あるということを前提にして、例えば今度の三千七百円ベースというものも決つておるわけです。一兆九千億で動くという國民経済考えますれば、賃金そのものが三千七百円というものよりはもつと遙かに低い賃金でもつて動いて行くと考えざるを得ないわけです。闇所得がどのくらい含まれておるか、非常に簡單なようでございますが、併し分析して考えて参りますと、甚だむずかしい問題で、私共の方として現在として非常に御質問の点と喰い違つておるかも分りませんが、若し全部が公定價格的な動きでもつて國民経済が動いて行くとすれば、生産所得的に考えますれば、一兆九千億の数学が一兆二千億くらいになるのではないか、実効價格考えて行けば、それは一兆九千億になる。この程度数字しか今のところできておりません。
  5. 栗山良夫

    栗山良夫君 大藏省でこの前伺いましたのは一兆八百億ということでありましたが、そこの間の喰い違いの点、相違はどういうことになりますか。
  6. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) 大藏省の方で出しております一兆八百億という数字は、これは必ずしも公定價格によるとか、藺を見ておるとかいないとかといつたような数字とは違うと思います。現在の税法の建前から行きましても、闇取得におきましても、別にこれを課税しないということは何ら考えておりませんので、闇所得所得である限りは課税する。はつきり闇所得と分つて刑事問題となれば、それは別問題ですが、闇か闇でないか分らないが、一應所得があれば課税する。そこで一兆九千億と一兆八百億の問題ですが、その観点からすると、両者の間には別に今の立場として同じ立場に立つておると思います。ただ大藏省の方の計算課税所得としまして考えておるわけで、この場合におきましては、いろいろな点においてずれがあります。先ず第一に考えなければなりませんのは私の方といたしまして一兆九百億は、これは年度計算しております。それから大藏省の方の計算は、これは課税の対象になつておりますから、事業所得とかそういつたものにつきましては皆これは暦年計算されております。年度暦年の違いが先ず第一にあるということを御了承願いたいと思います。  それから第二の点におきましては、恩給年金といつものは、これは金額が僅かでありますが、理屈だけ、理論だけで申しますと、いわゆる振替所得と我々が呼んでおります種類のものでありますが、これは或る意味におきまして政府が取上げて渡すという意味で、片方ポケツトから片方ポケツトに渡すだけで、それ自体からは國民所得は生れないということにおきまして、我々の方の計算にはこれは入つておりません。ところが大藏省の方の計算には、一應恩給年金、つまり政府から貰いましても個人立場から見ますれば、これは所得であるという観点から、こういう数字も入つております。こういつた意味におきまして、國民所得課税所得における一應開きはあります。その代り從つて振替所得の方は私の方の國民所得には入つておりませんが、大藏省の方は入つておる。その代り逆に私の方には会社留保所得といつたような会社関係が入つておりますが、大藏省の方は個人所得という観点から行きますから、私の方に入つてつて大藏省の方に入つておりません。ただこの辺の数字相当整理いたして見ましても、尚その間に相当開きがあると思います。それがどういうところから来るかということが疑問の重点だと思いますが、我々の方は一應課税とか、そういうことを離れまして、現在利用し得ますあらゆる統計を使いまして、極く客観的に國民所得の大きさがどのくらいになろうかという、こういつた観点で以て計算しております。大藏省の方は課税所得は、大藏省の方で出しておる課税所得は、本年度所得税が果してどれだけの歳入を得られるだろうという、こういう非常に現実的な姿の上に立つておるわけであります。從いましてその場合におきましては、過去における課税実績というものをやはり一應大きな考え基礎の上に置きまして、現在の徴税能力とかそういうものも一應考え合せて、過去における課税実績というものの上にその後の情勢の変化を積み上げて行つて出しておる。その間に相当開きが出て來る。これはまあ非常に理屈から言いますと、その開きはあるべきではありませんけれども、現在の徴税の機構とか能力とかいうものから非常に遺憾でありますが、そこに喰違いがあらざるを得ない。ただその点につきましては大藏省としては理論上は出ましても、現実歳入になるということがはつきり掴めるものをやはり計数の基礎にして置きませんと、当然大きな歳入欠陥が起る心配があります。そういう立場からものを考え計算して行くというところに、或る程度開きが出て来るのじやないかと思います。
  7. 栗山良夫

    栗山良夫君 まあ大体一兆九千億で計算するものにも相当疑問があるのでありますが、まあこの辺で一應打切つて置きます。ただもう一つ重ねて伺いたいのは、過日の御説明の中で國民一人当り所得昭和二十三年度は一万七千五百四円七十銭とこういうふうにおつしやつたのであります。これをよく吟味いたしますと、丁度三千七百円ベースから逆算すると、七〇%増しぐついになつておるという説明はその通りに私共承わるわけであります。そうすると、國民所得一人当り平均から考えて見ますと、三千七百円ベースというものは実質的には五千二百円ベースぐらいのところまで行つておるように考えるのでありますが、問題はこの一万七千円の中に、マル公だけの平均になつておるか、闇はどれくらい入つておるかということが、判断の材料にならさるを得ないと思います。その辺の見解一つ伺います。このままで行きますならば、五千二百円は当然平均として認められてよいのじやないか、こういう工合に思います。
  8. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) 今申上げました数字は、所得と言いますよりはむしろ消費資金として申上げた数字じやないかと思います。現在三千七百円ベースと普通に言つておりまするのは、一應何と言いますか、全國の工業賃金平均水準ということを前提にしておるわけであります。その場合におきましては相当年少者も入つておりますし、家族関係におきましても、いろいろに構成が違つておるわけであります。どちらかと言いますと、我々は標準世帶として普通に取つておりますのは、むしろこの姿ではございませんで、標準世帶として考えておりますのは四・二人の家族を持つておる構成標準世帶考えております。それで二・五人の場合と四・二人の場合は、労賃の場合よく我々は一・七倍といたして、標準世帶にいたしております。從いましてこの数字が三千七百円べースと直ぐに矛盾するのでないだろうかという点につきましては、実は端的に言えば、この数字は三千七百ベース矛盾しないようにできております。というのは、大体過去の数字から一應全部計算していつておるんですが、この中には業主所得とか、それから農林業関係とか、そういうものが全部入つておるわけでございまして、そこを本にしまして、今度の三千円七百円ベースとかそういうものに、想定されております一想の物價値上り、それから公定價格値上り闇値格値上り、そういうものを掛けてやれば、大体この辺の数字になるのでないだろうか。三千七百円とその間が或る程度開きがありますのは、そこに入つておりますのが勤労者という姿のものだけでなしに、営業とか農林業とかいうような業主所得も入つておるとか、いろいろ他の職業の人がこれに入つておるということによりまして、そうしてそれには可なり大きな高額の所得者も予想されるわけで、そういうものを全部平均しましたところで、こういう数字が出ておるということで、これから直ぐに三千七百円との結びつきということには行かんのじやないだろうかというよに考えております。
  9. 栗山良夫

    栗山良夫君 まあ結局國民所得の不平均というものがこういうところに出ておるので、一本には考えられない、こういうお説だと思うのでありますか、ただ私共まだちよつと納得できないのは、この消費資金の面から考えても言えると思いますけれども、現在の國民生活が、國民全体の平均からいうと、大体五〇%くらいに切下げられておる。勤労階級だけを考えると、三分の一に切下げられておると言われております。そういう数字にこれが少し合わないような気がするので、どちらの統計が正しいか分らないので的確には分りませんけれども、そういう疑問を持つております。  それに引続いてもう一つお伺いいたしたいことは、三千七百円べース安本で極めて科学的に作られてある。自分はその科学的な基礎に立つて自信を持つておるということを、芦田首相は言われておるようでありますが、私はここで細かにいろいろ理由は持つておりますが、最も大きな点で二つだけ…この予算基準單價としてお使いになるのは一向差支ないかも知れませんが、実際の國民消費資金の面から考えると、非常に合理性を欠いておる点が考えられますので、その二点を質して置きたいと思います。  その一つマル公を大体七割上げる、こういう工合に言われておりますけれども、六月二十三日発表された燃料費はすでに二・五倍になつております。それから家計費の中で非常に大きな部分を占める飮食費、その他の家庭必需品というものも、恐らくどんどん七割を超えて上つて行くと思うのであります。特に石炭或いは通信、國鉄、電気そういつたものが七割とすれば、まるで桁違いに上つておる。こういうような実情から考えると、この三千七百円ベース基準に取られた七割というものは、非常に矛盾があるということが一つ。而もその七割という價格差補給金を出す基礎資料として十一品目の問題からのみ考えられているのでありまして、國民生活に必要なる百般の價格の中から掴み出されているものでない。こういうような点からも、先づ第一点で非常に大きな三千七百べース基礎矛盾を持つていることが一つ、それからもう一つは、これも非常に重要な問題でありますが、労働者家計費飮食費の中で大体三分の一を占めておると言われているこの米價改訂というものが、全然まだ未決定政府は未発表でありますが、そういうようなときに三千七百円ベースを決められて、そうして而もこれで行けるのだ、科学的基礎があるのだということを言われることについても、少し納得しかねるわけであります。その点について非常に科学的、合理的な基礎によつて作られた自信満々たる三千七百円ベースと、こうおつしやる安本見解を伺いたいのであります。
  10. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) 安本自信満々と言われますと、私共は多少どうかと思いますが、総理がそうおつしやつたのでありますから、その点は間違いないと思いますが、先ず最初の点からお答えいたしますと、おつしやいますように現在公定價格が発表せられております基礎的な物資につきましては、七割とか八割、その辺に止まつておりません。従来の物價の決め方について、これは一應逹観して言えることであろうと思いますが、大体今までから考えて見まして、極く大ざつぱに言いましても、基礎物資につきましては割合原價計算簡單に、簡單にと言いましては語弊がありますが、原價計算が何とかかんとかできますものですから、割合基礎物資の掴み方は、今まで辛目に公定價格が決められていたのではないか。とれに対して二次製品、三次製品というような品物につきましては、元々の基礎が余りはつきりいたしませんし、昨年の公定價格決定、その後の様子を見ましても、その單位の取り方等に割合にゆとりがあつたのではないか、而して今度の改訂におきましては、どちらかといいますと、基礎物資の方について余り大きな無理はしない。それで消費生活に直接連繋を持つような品物につきましては、これは從來のように分らないままに、割合甘味があつたような弊害を避けまして、相当嚴格なる査定をしたい。こういつたような一應基本的な考え方を持つております。從いまして基礎物資につきましては、御指摘のように相当大幅の値上げは止むを得ない分がありますが、第二次製品、第三次製品につきましては、七割・八割に是非止めたいというような考え方を持つております。この辺につきましては、いずれその数字が出ましたらば逐次公定價格改正の手続が採られて行くと思つております。從いまして現在発表せられております石炭とか、電力とか、そういうものが二倍、或いは三倍という数字が出たら、從つて第二次製品、第三次製品も同じような上り方をするのではないかという御疑問については、二次製品、三次製品については、そういうようなことには恐らくならないで済むだろう、ということを申上げ得ると思います。  それから三千七百円の問題でございますが、この点につきましては大体今度御審議願つております所得税法におきまして、相当所得税大幅引下げということも考えられますし、それでそういうものを考慮しまして、果してどうなるか、最近数ヶ月における実質賃金というものの傾向を考慮して檢討して見ますと、公定價格値上りが七割乃至八割程度に止まるならば、大体現在の実質賃金水準は、ほぼ維持されるのじやないかと考えまして、三千七百円というベースを一應出したのであります。尚米價の問題につきましては、御指摘のようにいろいろまだ問題が残つておりますが、主食消費者價格の点につきましてはプール計算とか、いろいろな措置を採りまして、大体これを八割値上げに止めるということに、内輪の話合としましては、考えられていることを、これは一應申上げて置きます。
  11. 栗山良夫

    栗山良夫君 そういたしますと、今三千七百円ベースの結論的なものとしては、二次製品、三次製品價格基礎物資を含めて総合的に大体七〇%乃至八〇%ぐらいのところで止まるならば、三千七百円べースは維持し得ると、こういう御見解と解釈していいわけでありますか。
  12. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) 公定價格値上りが、七割乃至八割程度に止ままば三千七百円の平均賃金水準で以て、現在の実質賃金程度のものが、ほぼ維持されると、かように考えております。
  13. 栗山良夫

    栗山良夫君 そうすると、今度は闇の方の問題でありますが、これはあなたがそういうことを御承知になつているかどうかということを伺ひいたいと思うのであります。と言うのは闇價格値上りが三・六%と、こういう工合に言われておりますが、現在最も都市消費者が困つておりますのは主食の米の闇だと思います。砂糖では幾ら配給されても到底命が継げませんから、止むを得ず米ということになるのですが、それが四月頃二百円か、二百十円くらいで東京では手に入つたものが、現在二百六十円から七十円くらいになつておる。三・六%には納まつていないことを、あなたはお認めになるかどうか、伺いたい。
  14. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) 米の闇値は、私の聞いておりますところでは二百五十円くらいで、相当上つておるということは聞いております。だだ私の方で闇價格三・六%を一應考えておりますのは、一應生計の方に影響します全部の平均を三・六%と、こういうふうに推定して見たわけでありまして、米たけを取つたという性格のものでない、ということだけを申上げて置きます。
  15. 栗山良夫

    栗山良夫君 大体それくらい伺つて置けば、お考えが明らかになつたと思いますから、この辺で打切つて置きます。
  16. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) それから先程ちよつとお答えが漏れたと思いますが、この三千七百円の想定の上に立つた一應物價なり闇というものが、先日もちよつと申上げましたが、我々の方では横這いで以て一應計算している。それが現実の姿につきまして、どうかという御批判があろうと思いますが、先程もあなた樣からのお話の中にもありましたように、一應予算基礎としては三千七百円として積算するのも、一つ方法だというお話もありましたように、私共の方としましては一應この予算の大きさが國民所得について、どのくらいの大きさになるだろうか、こういう点を一應檢討して見たいという意味におきまして、予算のべ一スに合わせるという意味におきまして、現在一兆九千億の國民所得の上におりて、予算が立つている前提を一應我々の方の前提といたしまして推算をしております。そういたしませんと、予算の姿というものは、前提が変れば予算の姿が変る。而も我々の方はその変ることを前提とした大きさになつておるということ、國民経済の上に占めるこれらの大きさが、果してこの程度でどうだろうという檢討が適当でないと考えられますので、その前提自身にはいろいろ御批判もあろうと思いますが、一應予算と合わせて、それを考えて行くという意味におきまして、そういう前提を取つたということを御了承願いたいと思います。
  17. 栗山良夫

    栗山良夫君 私わざわざ質問申上げましたのは、三千七百円の扱い方がどういう工合になるか、予算を出すためのエレメントとして使われたということだけ明らかになれば私は大体いいのでありまして、その場合の基礎矛盾しておると申しますか、非合理的の点が若干明らかにされればいいので、ただいわゆるインフレが少し横這いしかかつたという状態において、眠りかかつた子供を物價の値上で揺り起して、もう一遍インフレが盛んになる。こういう形についてはこれは別の問題でありまして、それによつて三千七百円が崩れるかどうか、これは別個の問題でありまして、政府と全官公労組の諸君との交渉の問題になるだろうと思います。その点については問題はないと思います。
  18. 天田勝正

    天田勝正君 政府補正予算を出す場合に、大抵その説明賃金上つたからだ、こういう説明を私共は聞いておるわけであります。賃金上つたから物が上つて、必然的に政府予算が余計になつている、こういうまあ理屈は分るのですが、現在のように殆んど賃金物價のシーソー・ゲームをやつておるようなことでは、これは到底果てしがないのでありまして、労働者賃金を上げるということは、物價がそのままで落着いておつて賃金上つたならば、それだけ生活内容が豊かになる、或いは逆に賃金を抑えておいて物價を抑える、この二通りしかどう考えてもないのであつて、一体今のような方法でやつて行くのにどちらを抑えてどちらを処置されようとしておるのか。これは根本的な問題でしよつちゆう議論に出ますが、今年の安本の計画として、そのどちらを抑えてどちらを上げるという形を取つて行かれるのか、これを先ず聞いて置きたいと思うのであります。  もう一つは、過日も伺いました米價の問題でありますが、今度の他の物價値上りは大抵生産費基準として決定する、こういうことで、米價の方はパリテイ計算だという、このパリテイ計算はすべてマル公値上りをウエイトによつて見ている、こういう方向で、私は決してこのパリテイ計算の方式に必ずしも反対する者ではないのでありますが、併し他の都市労働者賃金等は当然闇購入も勘案して決定されておるのに、農民の方の米だけは全然そうした闇は一切考えに入れない、こういうことは一体どういう基準でさようになつて來るのか。もう一つは、パリテイ計算によつて米の値段を算出いたしますが、農家の生活というのは、それによつて一年間農業必需物資を購入しなければならないのに、一向それがスライド制が採られておらない。例えばこれは私の計算でありますが、昨年十一月に米を賣りまして、いわゆる千七百五十円で賣つたといたしますと、その後他の物價値上りしておりますので、一石について二百二十円の損が出て來る、こういうことになつて参るわけなんであります。こうした一週間或いは一月くらいの賃金によつて賄い、その收入によつて他の企業を賄うような場合と違い、一年によつて計算しなければならない農業に、何故三月とか一月のスライド制を採らないのか、この点を伺いたいと思います。
  19. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) 私からお答えするのは聊かどうかと思います。安定本部総務長官でも出ましてお答えした方がいいような御質問かと思いますが、一應簡單にお答えだけ申上げますと、おつしやるように賃金物價のいわゆる惡循環と言われておるものをどこにおいて断ち切るかという点につきましては、これは現在政府或いは日本経済全体が一番悩んでいる問題ではないかと思います。安定本部としましては、基礎的な考えとしましては、何とかして実質賃金マル公物資によりまして充実することによりまして、名目賃金値上りをしなくても、実質賃金が結構なんとか、樹立できるような姿というものを、できるだけ早い機会に招來することによりまして名目賃金が上がる。而も生活としては何ら樂にならん。名目賃金が上がるために外の物の値段は上らざるを得ない。こういつた惡循環を絶ち切りたいとかように考えていろいろ目下策も練つておりますし、又関係方面ともいろいろな話合をしておるということを一應申上げて御了承を得たいと思います。  それから米價パリテイ計算の問題でございますが、パリテイ計算を、外の物は原價計算になつているのに、何故米價パリテイ計算を採つているかという点につきましては、私直接それの方の専門の者ではありませんので、正確なお答えはできませんが、恐らく今としましては、昔は御承知のように米價につきましても一應原價計算計算した時代がございました。ただ米價原價計算となりますと、御承知のように現在の日本の農業形態からいたしまして、農業労働の賃金計算というのが本当に一つの仮定的なものになりまして、やつておりますのは自家労働でやつている関係で、必らずしも雇傭労働ではない。そういう特殊事情から考えまして、なかなか私前に原價計算を見ておりまして、外の方で関係したことがございますが、原價計算的に見まして、なかなか農業生産の原價計算とは非常に違つた要素が入つて來る、それ自身として非常に問題があるというようなところから恐らく現在としましてはパリテイ計算が採られたのだろうと思います。パリティ計算につきましてはおつしやるように闇は見込んでおりません。ただこれは工業の方面におきましても、現在において公定價格を決めますときにおいて、闇を前提とした價格形成はしていない。そこにいろいろな問題があろうと思いますが、言うことが一つあることを考えて見なければならんと思います。それからもう一つパリテイ計算の中には生計費も入つておりまして、結局賃金というものが生計費で以て生活必需物資に置き換えられている。生活必需物資の上昇割合から賃金というものを見て行きますと、普通の勤労者賃金というものは戰前に比べまして非常に圧縮きれている姿にあるのではないか。生活必需物資の價絡をそのまま置き換えて賃金の姿を見て行くということから言いますと、むしろその辺の見方はパリテイ計算の場合の方が甘いのではないか、こういつたような批評をすることもありまして、又或る程度そういう計算考えられるわけで、パリテイ計算そのものにつきましても、いろいろ批判すべき余地はあろうと思いますが、現在としましては他に適当な方法が見当りませんので、一應パリテイ計算でやつていると、こういうことだと思います。それから現在の米價をどう考えるか、パリティ計算でやつてつてできた米價がその後他の物資がどんどん騰つているのに、これをどう考えるか、勿論今度の新麦、新じやがになりますと、おつしやる計算になりますので、問題のところは要するに昨年の供出された米の問題というところだと思いますが、これにつきましては、過般の議会の御決議もありますし、それからまあいろいろ関係方面の意見もありますし、ちよつと私ここで申上げるのは、大体若し必要なら総務長官からお返事した方がよいので、私はここでちよつと申しかねるので差控えたいと思います。惡しからず……ただ政府としてはいろいろ芦田総理がお話しましたような線でいろいろな努力はしている、いろいろな考慮はしているということは申されますが……
  20. 天田勝正

    天田勝正君 私政治的なことよりも、その計算の技術的なことをお廳きしたいと思つて実は昨日も質問したわけなんですが、パリテイ計算の場合にウエイトの取り方が問題なんでありまして、基準年次を百としての値上りを取つて、それにウエイトをかけて参りまして、それで出して来ると、一体六十七倍くらいになつて來る。そこで政府の出したのは六二・五五倍、これはその逆数を取つて幾何平均をしたところを取つて來たから、まあそういうことになつて來るのでありますが、このウエイトが現在を百とした場合と、基準年次を百とした場合と意外な違いになつて來るので、私から考えさせれば、どうしてその自由の時代に、農家が自由に必要なる物を買つた時の膨らまし状態に要するに計算されないのか、それが一体どう考えても分からないので、肥料等の例えば必要度、重要度というものが非常に下つております。この下つておる根拠が、賣つても農家で買わなくなつたというならば、そこでも分かるけれども、政府の方で配給しないから買えなくなつたというところに根拠があるのであつて、その買えなくなつたにも拘わらず戰前の八割の生産を維持しているということは、逆に闇の負担をしているということになるのであつて、それを要するに総計算をして、例えば六二・五五倍でもよろしいのですが、そこに闇というものを計算のウエイトに置いても闇をやつているということが出ておるのにも拘わらず、何故闇を計算の上に置いて考えられないのか、これが先ず一つ分からないわけなのです。
  21. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) お答えいたします。私この方の専門でございませんので、御質問に対しまして詳細なる御答弁をできかねるかも知れませんが、そこは惡しからず御了承願いたいと思いますが、只今御質問になりましたパリテイ計算計算におきまして、ウエイトを計算しますときには、これは農家生計費調査を基にしてウエイトを出しております。お話のように戰前のウエイトとそれから現在におけるウエイトとを二つとも使い合わしております。それで現在の状態を計算します場合におきましては、現在における農家生計費調査の姿を取りまして、そこでウエイトを盛つております。そこで戰前は勿論闇とか何とかいろ問題はありませんが、現在においては闇の数値が農家生計費調査の中に入つております。從いまして農家生計費調査における各費目を拾いまして、ウエイトを付けておりますから、ウエイトを付ける場合におきましては、まあ公定と闇とが一緒になつ実効價格的なものとしてウエイトが付いておる、かように私は存じております。從つてウエイトの場合におきましては、闇が入つているということが言い得るのじやないかと思います。ただそのウエイトを掛け合わす場合のものは、公定價格だけになつたということは御指摘の通りであります。
  22. 栗山良夫

    栗山良夫君 私所得税の問題についてちよつと伺いたいと思うのでありますが、その一つはこの間の説明で以てインフレと闇の利得の問題が出ましたときに、現在の税の徴收の問題は税制の問題でなくて、機構或いは税の取り立て手段の問題の方が政府の中心的な方向に向つておる、こういうことを言われましたが、その理由はインフレ闇利得を的確に捕捉する手段が現在ないので困つておる、こういうことになりますけれども、私はそういうことで毎年同じことを繰返しておれば、結局インフレ闇利得というものがその時々段々と資産化されて参りまして、そうして結局正直者が馬鹿を見る、こういうことになりますので、やはり資産的なものにも財産的なものにも税を課する、こういうことでなければ税の公平負担は結局あり得ない、こう考えるわけであります。こういうことから考えて行きまするならば、結局税制においても尚且つ考え直す余裕が出て來る、こういうことに結論としてなると思うのであります。この間私中央線の汽車に乗つておりましたときに、誠に愉快な朗かな闇屋さんと六時間ばかり一緒になつて、人生の裏街道を聞いたわけでありますが、その人の言うことには、いわゆる担ぎ屋でありますけれども、その担ぎ屋は決して罪惡だとは考えておりません。御本人は東京の人逹の生活を救つてやるのだという誇りさえ持つております。そうして自分逹が駅で捕まるのは非常に迷惑な話だ。どうか國会の先生方が骨折つてくれて担ぎ屋にバツジをくれ、そうして門鑑にしてくれれば一回に幾らという税金は自分逹もはつきり納める。東京の人逹を救うためにやつておるのに時々調べられて、而も取上げられた現品がどこへ行くのかさつぱり分らないというような状態では、そちらの方が却つて闇屋だ、こういうようなことを言つておりまして、自分逹は立派な現在の統制経済下における貿易商であると言つておりましたが、そういう点から考えても、こういう点をもう少し合理的にしなければならんと考えるのであります。先ずこの点について税の根本的な問題でありますが、お考えをお伺いしたいと思います。
  23. 脇阪實

    政府委員(脇阪實君) 今おつしやつたような担ぎ屋の意見というものは誠にそれは一つ理屈かも知れないと思います。が、併しいろいろな統制、或いは價格統制なり或いは物資の統制ということをいたしております際に、それにバツジを與えて税金を取るということは公認することになります。それは法治國として甚だ適当でないじやないか、單に税金取る立場から言いますならば、或いはそういうものもいいかも知れんと思うのでありますが、やはり國法の遵守という問題がありますので、そこで課税というものが実に困難なことになつて來るわけでございます。つまり闇の闇たるゆえんでありまして、公認してそれをやるということはできない。而も所得があるのですから、それを把握しなければならん、この点にこの間からしばしば申げておる困難性があるわけであります。併しそれをどうして捕捉するかということになりますと、やはりこの間からしばしばお答えをいたしましたような線で行くより外に方法はないのじやないか、又それで相当の効果も挙げられるのじやないか、かように考えております。それから今年特にこういつた面について努力をするということは、この間経済査察官の問題についてお話を申上げた通りでございます。尚財産課税の問題というものがございます。これはいろいろな方面からも例えば第二財産税であるとか、或いは國富調査税であるとかいうような御意見も伺つておるわけであります。それにつきましての根本的な問題を申上げますと、私は財産税というものが或る意味において必要であるということは、理論的には言えると思うのでありますが、果して現在のように経済が変動しておる際に直ちにこれを施行するということは、技術的に見ましても、又負担の公平が果してそれだけで行くかどうかということは疑問があります。尚結局封鎖とかいうような問題も考えなければならんというので、只今のところでは少くとも現在は、それを行う段階でないのじやないかというように考えておる次第でございます。
  24. 栗山良夫

    栗山良夫君 私が質問いたしましたことは、財産税的なものを取るのは理論的には頷けるということをおつしやつたのでありますが、結局今正直者がどんどん馬鹿を見て、不正直者が馬鹿を見ない状態にある。これをこのままに放つて置けば、経済が一應安定したときには、とんでもないことになるわけなんですが、その取立てをいつおやりになる考えかということなんです。これは大臣にでもお廳きしないと、そういう点は御言明は頂きにくい点があるかも知れませんけれども、そういうように、当局として理論的に正しいと、こうお考えになるならば、それを國民全体の経済から考えて、或いは國家財政の救済の立場から言つて、そういう人の税負担をいつ発動されるか、こういう点のお考えを伺いたいのであります。
  25. 脇阪實

    政府委員(脇阪實君) 只今理論的に正しいと申上げましたのは、今やることが理論的に正しいとは考えて実はいないのでありまして、財産税的な税金が必要ではないか、端的に一般的な理論としては、私はそうあるべきじやないかと思います。尚これを、それではいつやるかということについては、全く今仰せのごとく、私が今ここで別に考えてもおりませんし、私から申上げるということは不適当であると考えます。尚最近、この委員会にかかつておりませんが、地方税の方の問題におきましては、私はやはり相当資産重課をしなければいけないという考え方で、例えば取得税であるとか、或いは地租、家屋税であるとかいうものにつきましては、私は相当負担して頂いてもいいんじやないか、地方税の方面では可なり資産的な方面に今年は向つておると、かように考えております。
  26. 黒田英雄

    ○委員長(黒田英雄君) 速記を中止します。    〔速記中止〕
  27. 黒田英雄

    ○委員長(黒田英雄君) 速記を始めて下さい。本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十五分散会  出席者は左の通り。    委員長     黒田 英雄君    理事            伊藤 保平君            波多野 鼎君    委員            木村禧八郎君            天田 勝正君            玉屋 喜章君            西川甚五郎君            山田 佐一君            石川 準吉君            木内 四郎君            深川タマヱ君            星   一君            小林米三郎君            高橋龍太郎君            栗山 良夫君   政府委員    経済安定本部財    政金融局次長  渡邊喜久造君    大藏事務官    (主税局國税第    一課長)    脇阪  實君