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1948-06-17 第2回国会 参議院 財政及び金融委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    公聽会 ―――――――――――――――― 昭和二十三年六月十七日(木曜日)   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○製造たばこの定價の決定又は改定に  関する法律案内閣送付)   ―――――――――――――    午前十一時二分開会
  2. 黒田英雄

    委員長黒田英雄君) これより公聽会を開会いたします。一言簡単に公述人各位に対しまして御挨拶を申しておきます。  本日は製造たばこの定價の決定又は改定に関する法律案につきまして、公聽会を開くことにいたしたのであります。御承知通り國会法におきましては、第五十一條におきまして、主なる歳入につきましては公聽会を開かなければならないということに相成つておるのであります。「たばこ」につきましては、御承知通り一般会計の本年度の本予算におきまする歳入は、三千九百九十四億円という四千億に近い数字になつておるのでありまするが、「たばこ」の專賣によります歳入は九百四十三億円ということになつておるのでありまして、約四分の一を占めるというような状況であるのであります。非常な大きな歳入になつておるのであります。この法案は目下衆議院に提出されまして、参議院におきましては予備審査のために財政及び金融委員会に付託されております。目下委員会におきまして審議をいたしておるのであります。申すまでもなく國会議員といたしまして、又財政及び金融委員会委員方々におきましても、愼重に審議を盡すことは勿論でありまするが、かかる歳入相当額に上り、又國民生活に非常な密接の関係を持つておりますることでありまするから、廣く学識経験のおありの方々、又はいろいろ利害の直接関係を持たれる方、又御希望の方をお申出願つて決定いたしたのであります。これらの方々の御経驗なり或いは御知識なり又一般國民の輿論というようなところを十分に御開陳を願いまして、そうして我々審議を過ちなからしめたいと存じて公聽会を開いたわけであります。どうぞ皆樣も十分に御意見の御開陳願つて委員会審議資料をお與え下さいますことをお願いをしたいのであります。内容につきましては既に御承知のことであると存じますが、簡單に念のために申上げますれば、從來たばこ」の定價につきましては政府が独自にこれを定めておつたのであります。然るに財政法の第三條が施行されました結果といたしまて「たばこ」の定價につきましては國会の承認を経なければならないということに相成つたので、ここに提案されたわけであるのであります。今回新らしい煙草としては「いこい」「ハッピー」「ききよう」というものを製造して発賣をする。又自由販賣たばこでありまする「ピース」「朝日」或いは配給たばこでありますところの「きんし」「みのり」「のぞみ」等につきましても相当の値上をして行こうというのであります。それらの價格につきましては十本当り「ピース」は五十円を六十円にする。「ひかり」を五十円、「いこい」を四十円、「ハッピー」三十円、「朝日」「ききよう」及び「新生」は二十円の價格というようなことになつているのであります。そうしてその賣上額自由販賣品としては八百五十七億円、配給品については二百七十一億円、合計千百二十八億円となつているのであります。その比率は自由販賣品は七六%で、配給品が二四%となつているのでありまするが、併し数量では自由販賣品が四〇%で、配給品が六〇%ということになつているのであります。そうして今回の賣上は千百二十八億円でありまして、その益金は先程申上げました九百四十三億円でありまするが、今回増税等の形になつておりまするのは、新製品が新たに増加するわけでありまして、これが二百十六億五千万円でありまして、それから値上げ自由販賣並びに家庭配給の分の値上げに上りまする増收額な二百六億七百万円でありまして、増收の額の合計は四百二十二億五千七百万円ということに相成つておるのであります。そうして二十三年度益金が、先程申上げました九百四十三億一千七百万円ということに相成つておるのであります。さような次第でありまするから、増收額相当の額に上つておるのであります。何とぞ先程申上げましたように、十分皆樣の御意見を御開陳下さいまして、我々の審議に資し得まするようにお願いを申上げる次第であります。誠にお忙しいところをお繰合せ下さいまして、おいで下さいましたことを感謝すると同時に、お願い申す次第であります。尚、時間の関係上、御開陳の時間は大体二十分以内ということにお願いを申上げたいと思います。それでは先ず最初淺川國吉君にお願いをいたします。
  3. 淺川國吉

    公述人淺川國吉君) 自分は全國專賣局労働組合品川支部の副支部長をしております浅川でございます。  煙草値上げに関しましては、私達全國專賣局労働組合といたしましては、これに全面的に反対しております。煙草從來贅沢品であるというような時代もあつたのでございまするが、現在におきましては、これは贅沢品非ずして、絶対必需品であるという段階に來ております。この煙草が明日の生産増強慰安品であるどいうことを、自分達は信じておるのであります。又今日政府財政の面におきまして、非常に苦しいということは自分達も認めます。併しながら政府財政の面から、國家が要求することがありますと、必ず鉄道とか或いは通信とか、或いは煙草値上げとか、こういうようなことをするのは私達といたしまして、誠に不満でございます。又既に各種の徴税が政府においても相当困難をしておるようでございまするが、その煙草値上げもおのずからそこに限度かあるのではなかろうか、かように考えるものでございます。尤も政府にいにしますれば、煙草値上げすることが非常にやさしいというように考えておりまするが、自分達般國民といたしましては、非常に日常の生活に大きな影響があるのでございます。大体具体的にその反対理由を申しますならば、第一に大衆課税であることでございます。自分達は、現在でもこのインフレの中に相当苦しい生活を続けております。然るにこの必需品である煙草値上げすることによつて、益々自分達生活が困難になる、かように考えておるものでございます。政府では一般配給品をも更に大幅に値上げをすることによつて、我々はその日々の生活が苦しい、この財政の中から必需品煙草をどうしても買わなくちやならないということになりますと、勢い家計の方に大きな影響があるのでございます。これは大衆課税の面から見ても絶対に反対するものでございます。  第二に、闇煙草助長になると私は信ずるものでございます。「ピース」「コロナ」又は「いこい」とか、「ハッピー」とか、こういう高級煙草自由販賣することによりまして、一般國民購買力が非常に減少する、そういうことになりますと、勢い私製手巻煙草といいましようか、これが巷に氾濫する、こういうことになりますと、政府みずからが闇煙草の防止をしなくちやならん立場にありながら、かようなる値上げによりまして、巷に益々闇煙草助長をするのではなかろうか、かように考えておるのでございます。  第三に、この煙草値上げすることによりまして、政府みずからが一般農民或いは勤労階級の絶対支持を失うということでございます。農民が毎日の労働をしながら働いて穫つた主食でございますが、その主食相当例えば米一升で「ピース」一個買えないとか、米二升なければ「ピース」一個が買えないという、こういう状態でありますると、勢い現在農民人達政府が今要請しております主食の供出その方にも大きな影響があるのではなかろうか、こういう面から言いますと、この際絶対農民協力を得なくしては、この食糧不足の我が國といたしましては、國家台所もやつて行けないではなかろうか、これは絶対に農民或いは勤労者階級支持が必要である、かように考えておるものでございます。又自分達直接生産を担当する労働組合といたしましても、自分達が去る二月の四日に、御承知のようにゼネストを四日間いたしましたが、そのときに私達街頭に進出しまして一般市民方々の御協力を得ようとしたのでありますが、專売局に対する世間の眼は非常な疑惑の眼を以て自分達を迎えておるのでございます。例えば最近新聞紙上等でも公けに書かれております闇煙草は、專賣局工員の持ち出しであると、世間は非常にこの問題に対して関心を持つておるために、專売局工員或いは從業員を見た場合は、直ぐ自分達煙草に見えるような感を持つておるのであります。そのために、私共も街頭で皆さんの支持を得なかつたのでございますが、こういうような点から、一般大衆一般勤労者階級人達労組自体支持を失うということは、今後の自分達労働組合といたして、運営して行く上に非常に大きな支障を來すのでございます。  今一つは、この厖大な煙草値上げによりまして益金があるのでございますが、一般大衆或いはその他の勤労者階級におきましては、煙草値上げをすることによつて專売局從業員相当待遇がいいのではなかろうか、かように考えられることが一番辛いのでございます。実は今度の二千九百二十円ベースにおきましても、現在官廳としての專売局従業員が二千九百二十円のベースより更に下つて二千数百円くらいのベースしか貰えないという実情であります。かような薄給である自分達が、この値上げによつて相当好い待遇を受けておるのではないかという印象を持たれることが自分たちには不満なのでございます。かかる見地から、この「たばこ値上げに関しましては、絶対反対を表明する者でございます。大体対策といたしましては、先ずこの「たばこ」を絶対値上げして頂きたくない。それでは差額はどうするかというような御質問があるかと思いますが、これは現在巷に相当闇利得者がございます。この闇利得者から如何なる方法で徴税するかという具体的な問題は、專門家の方にお委せしまして、とにかくこういうような闇利得者より徴税する方法を考えたならば、この絶対必需品である「たばこ」を値上げしなくても、何とか國家のお台所が賄えるのではなかろうか、かように考えておる者でございます。若しそれもならんとしたならば、これは絶対反対を表明する建前から、かような抽象的なことを言つてはどうかと思いますが、どうしても、それは値上げしなくては國家がやつて行けないというならば、先ず一般大衆の「たばこ」の配給品に対しましては、現在通り据置き、そうして新興階級闇利得者から購買力を吸収するため「ピース」、「コロナ」、こういつた高級品値上げすることは止むを得んではなかろうかということも考えておりますが、とにもかくにも、自分たちは「たばこ値上げに関しましては、絶対反対を表明する者でございます。以上であります。
  4. 黒田英雄

    委員長黒田英雄君) 只今のことについて何か御質問ございますか……ございませんければ次に移ります。  それでは岩野晃次郎君。
  5. 岩野晃次郎

    公述人岩野晃次郎君) 私は「たばこ」が今度の改正案値上げされた場合に、どういうふうな影響があるかということを考えて見たいのであります。生計費の中で占める「たばこ」の支出割合を見て見ますると、戰前におきまして、昭和八年の家計調査におきましては、総支出の一・四%、これは最低所得の場合でございます。一・四%の支出があるようであります。それから昭和二十二年の安本の千八百円基準基準家計費ですが、これを見ますると、やはり丁度同じ「たばこ」の支出一が一・四%とされております。但しこの安本家計費でありますると、一ケ月に百二本でありますから、百本配給貰つて、二本だけ自由價格で買うというような計算になつておると思います。これに対しまして、その頃の外國の例を取りまして、ちよつと何ですが、イギリスのやはり家計費の統計を見ますと、一九二五年に、これは最低所得者でございますけれども、「たばこ支出が二・七%になつておるようであります。これが大体戰前平和時代において「たばこ」が非常に沢山あつた時の支出割合かと思います。今日は申すまでもなく事情が違つておりますからして、こういう標準で考えることはできないでございましよう。戰後の我が國におきましては、「たばこ」を含めた副食費とか飲食物家計上の重要性というものは四割から六割に増加しておるわけであります。そういう割合を考慮しまして、「たばこ」の家計における重要性も亦増大したと考えまするならば、先程の一・四%をもつと標準を上げまして二%ぐらいにしないと妥当でないと思います。  ところで現在仮り改正前、現在の價格におきまして配給を百本貰い、自由販賣の「たばこ」を五十本買うといたしますと、「たばこ支出が三百円となりまして、現在のベースによりますところの四・二人家族で大体五・七%ぐらい「たばこ」に出しておるように思われます。こういう数字についてはいろいろ御議論があると思うのでありますけれども、要するに現在の家計において「たばこ支出の圧力というものは相当程度高い、家計費の五・七%を占めておるという状況でありますというと、これを更に引上げることは相当困難があるのではないか。今度の改正案によりまして、仮り配給を七割上げ、自由價格を二割上げるといたしますと、この三百円の支出が三百八十五円になりまして、家計費におきます割合が七・四%になるように思われます。それでこのパーセンテージにつきましてて、國民は或いは文句を言わずに默つておるかも知れませんが、家計費に対する圧迫の程度というものは相当強い。従いまして少くとも家計費の中五%以上を占めるような値上げをすることは割合困難ではないかというふうに考えられるのであります。それで先頃交通通信費のことでいろいろ新聞紙上に書かれましたけれど、交通通信費は二十二年の家計費におきまして〇・六乃至〇・八%を占めておるに過ぎないのであります。これが三倍になつたといたしましても一・八%乃至二・四%となりまして「たばこ」の負担よりも値上げしても尚低いような状況であろうかと思われます。こういうわけで、私は家計費において占める割合を五%以上に上げることは相当困難ではないか、こういうふうに考えます。  次にこれは只今公述者がおつしやいましたように、「たばこ價格動きを見て見ますると、昭和二十一年頃は「ピース」二十円乃至三十円の販賣價格に対しまして、闇價格は五十円乃至六十円と、二倍以上の開きがあつたのでございますけれども、昨今では、数字は分りませんが、このような大きな開きは殆んどなくなつておるということでございます。  それから物價指数との関係を見まするに、最近穀物は遂に戰前の一千倍に闇價格は達しておるようであります。然るに嗜好品、その中に煙草も入つておると思いますが、嗜好品平均水準戰前の三百六十七倍に上つておるに過ぎないようであります。更に專賣局自由販賣價格を比較しまするに、戰前と比較しまして「ピース」……その時分は「ホープ」でありますが、これが十八銭、これは現在の五十円に上りましたので、二百七十倍になつておるわけであります。この動きを見てみまするというと、嗜好品指数が三百六十七倍、煙草指数が二百七十倍というので、そう大して開きがない。即ち煙草に関しまして、マル公闇價格との開きはそう多くはないのではないかと思われる根拠はございます。  で、以上家計費並びに物價動きから考えまして、煙草の値上につきましては、私は相当難色があると考えるのであります。私は勿論如何なる場合においても、絶対に煙草の値上をすることはいかんというのではございません。その第一の條件は、これは実現不可能と思いますが、闇の米が二百円から三百円になろうとしておりますときに、煙草の値上と比較しまして、勿論米の方が重大な要素でございましよう。併しながら若しも政府がこれ以上のインフレーションをやらない、即ち年末までに通貨が殖えないし、物價も大して上らないという見透しがあるならば、そのための均衡予算を組むために煙草の値上をするというならば、私は外のいろいろな間接税が沢山上げられますが、それと並んで煙草を或る程度上げることはよろしいと思いますが、この財政インフレーションを行わないという條件は到底満されないと思います。それで闇の米が二百円から三百円になるということが、見透しとして不可避であるならば、その代償として煙草だけでも現准のままに据え置いて、値上をしないことが要求されるのではないかと思います。政府は、新聞の傳えるところによりますと、國民所得計算において、又國民貯蓄の計画におきまして、物價の七割、通貨の一千億というものが、年末までに殖えるだろうというふうな見透しを持つておるようでありまして、この点から見ましても、政府インフレーションを絶対に行わないということは、むずかしいのではないかと考えます。  然らば代り財源の問題に関しまして、私は外の税に関して如何なる数量財源が得られるか、詳細な資料を持つておりませんけれども、先ず理論的に申しますならば、こういうふうに考えます。いろいろ惡税と称せられるものが沢山並べられておるわけでありますが、私は如何なる惡税よりも悪いのはインフレーション自体だと思います。即ち政府通貨を一千億出しますとすると、その中の八百億円が財政上の直接間接收入だと、今まで言われておつたのであります。この八百億円の收入を得るためにインフレーションを起しますならば、米の價格が二百円から三百円になるという犠牲において、その收入を得るので、これ以上の惡税はないと思います。  その次に惡いのは、煙草値上げと思います。煙草の税は、これは一つの直接消費税でございまして、取引高税のようにその中間に何等生産者商人等が介在しない、煙草消費者に直接かかつて、いわゆる轉嫁の余地のない税と考えます。從つて先程の公述人が申されましたように、一つの文化的な生活必需品であるということ、並びに直接消費税であるということからして、煙草値上げは、その次に惡税と言われるならばそうなる。  その次に取引高税酒税、直接税、まず行うべきものが、最後経費節減という順序になるのではないかと思います。即ち逆に申しまして代り財源の問題としては経費節減をやり、その次に直接税、殊に所得税増徴を行い、次に酒税取引高税煙草値上げ最後に來るのではないかと、かように考えております。このように経費節減所得税酒税取引高税、共に煙草値上げをしないことによるところの約五百億円の財源を分け合うということが妥当ではないかと、かように考えております。それで他の財源と見合いまして、仮にこれは非常に架室計算で恐縮でありますが、仮に煙草配給價格を二倍に上げまして、自由價格を現在の通り据置く、この考え方はこういうような根拠を持つておるように思います。一つは現在はすでに公價経済と、闇経済との統合を図るべき時期に達しておると思われます。それで、いわゆる私製煙草との競爭において、これを駆逐するという意味におきましても、煙草における配給價格自由價格の距離を縮めるということが必要かと思われます。これをやりまするというと、ラフな計算でありますが、配給の分量三百七億円の收入があるといたします。それから自由價格を据置くとしますと、三百五十八億、合計六百六十五億円の收入が上がるといたします。二十三年度予定の九百四十三億円に対しまして、二百七十八億円不足することになるのであります。この不足分から本年度煙草相当増産されるということでありまして、それは私存じませんが、アルフアを引きまして何がしが残る、この二百七十八億マイナス、アルフアを先程申上げました経費節減所得税酒税、この三つで分け合うようにしたならば、バランスがとれるのではないかとかように考えております。所得税につきましても、すでにこれは軽減ということで所得税値上げについて逆のコースをとるのではないかということが言われるかも知れませんが、間接税の今度の値上げにおきまして、煙草の値上と交通費の三倍、取引高税、これらの増徴によりまして、これも非常に粗雑な計算でございますけれども、家計に引直して考えますというと、約四百円支出が増大するのではないかと考えられるところがございます。それで、この間接税の四百円毎月殖えるというのは、非常に理窟を申すようで恐縮でございますけれども、いわゆる非常な逆進的な作用を持つておりますので、今度の所得税の減税によりまして、月収五千円ある者は所得税が約九百円負担を免ぜられることになるのであります。ところが今申しました間接税引上げによりまして、四百円という支出が殖えまするならば、これは約半分が所得税引下を帳消しにしてしまう恰好になります。これが一万円の所得になりますというと、改正による減額が二千五百円ぐらいになりまして、これに対しまして間接税引上に上る相殺分は僅かに十五%にしかならない。かように間接税増徴ということは、とても所得税のような所得に應じた計算をすることが不可能でありまして、低所得になればなる程非常に大きい負担をかけることになるわけであります。從いまして私は所得税免税点引上、これはインフレーションの過程におきまして当然のことと思います。そして外の税が負担を増加しておりますのに、所得税だけが負担を減少される理由がないと考えまするので、正攻法によりまして、この所得税というものを、免税点改正案通りにし、税率を上げることによりまして、間接税煙草値上げをしないことによる欠陷の一部を所得税負担せしめることが妥当ではないかと、かように考えております。先程経費節減所得税増徴等々と相並んで、煙草を或る程度まで上げるという案を申上げましたが、その場合の家計費負担は、配給價格を二倍にいたしまして、自由價格を据え置くといたしますと、一ケ月の支出が三百五十円となりまして、收入五千円に対しまして七%の負担になるわけで、更にその收入が賃金値上等によつて七千円に殖えたといたしますと、家計費負担は五%程度になります。一番最初に申上げました通り家計費の五%以上の煙草負担ということは不可能ではないかと存じますので、このような考えの下に、先ずインフレーションをやらないという條件でなく、インフレーシヨンは相当程度來るものとすれば、右のような方法財源の補充をせられるのがいいのではないか、かように考えております。以上簡単でありますが、これで終ります。
  6. 黒田英雄

    委員長黒田英雄君) 何か御質問ございませんか。なければ後にいたしまして、次に磯部文藏君。
  7. 磯部文藏

    公述人磯部文藏君) 私は芝煙草販賣組合組合長磯部文藏であります。今日まで煙草の値上は何回かございましたが、その際によく需要家各位が御共鳴下さいましたことは各位の御存じの通りであります。今日健全財政を確立するために、煙草値上げが発表されましたが、私共小賣業者といたしましては、今日この健全財政を保持する上から、この煙草の値上は大して需要家各位負担能力に変化のないように思われます。ただ、ここで「新生」という煙草が作られましたときに、余りにも懸け離れた品質で、又懸け離れた値段としたというようなことがございました。さようなことのない範囲におきまして、今回の値上には共鳴する次第でございます。以上でございます。
  8. 黒田英雄

  9. 岡本正平

    公述人岡本正平君) 私は社会教育連合会におります岡本正平であります。  先程委員の方から御説明がありましたように、本年度予算の中、煙草の賣上の益金が九百四十三億一千七百万円を見込んでおるのでありまして、これは全歳入の二五%になつており、非常に大きな立場を持つておるのであります。從來煙草益金歳入に対して占むる地位は約二一・三%であつたのに比較いたしますると、今回のその見込は約二倍近くになつておるのでありまして、今年度予算編成に当りまして、財政の穴の大部分を煙草の値上によつて埋めようとするということが、はつきり現われておりまして、政府に取つては誠に都合のいい代物でありましようが、我々煙草消費者に取つては甚だ迷惑な措置と言わざるを得ないのであります。收入がないから煙草を値上しようということであるならば、これは誰にもできることなんでありまして、敢えて政治の專門家にお願いする必要はないのであります。殊に一般國民大衆に取りまして、煙草は不可欠のものであることは、すでに御承知通りでありまして、幾ら政府が値を上げようと、この煙草の需要というものはそう多く減ることはないのでありまして、從いまして煙草は賣れるのでありまして、又國民大衆は無理をしてもそれを買うのであります。いわば病気と言つてもいいこの煙草を一方的に而も大巾に値上をするということは、人間の弱点を狙う誠に詐欺的な行爲であり、極めて卑劣なやり方と私は断ぜざるを得ないのであります。煙草必需品であるか、贅沢品であるかということは、すでに先程の公述人の方からも申述べられたのでありますが、これは現実に明らかなところでありまして、敗戰下惨めな國民生活に取りまして、安くてうまい煙草を喫いたいということは決して無理な註文でもないのであります。極めてつつましい欲求でもあろうと思うのであります。然るに今回の値上は物價改訂後の生計費の中において占める地位は非常に大きいのでありまして、私自身一日に約十本を喫つておるのでありますが、これに配給煙草を含めましても、今安い煙草はないのでありまして、結局「ピース」を買うのでありまするが、そういたしますれば、月に約手二、三百円かかるのでありまして、これを我々の平均賃金、今度新たに定められるであろう三千七百円というぺースから見ますれば、その割合は非常に大きいのでありまして、かようにいたしまして、我々國民大衆のこのささやかな欲求さえも無残に断ち切ろうとする今回のやり方は、誠に現実を無視した極めて政治の貧困を思わせるのであります。政治は現実の追求でなくてはならないことは申すまでもないのでありまして、僅かな國民大衆の感情を捉え、それを日本再建の方向に指向せしめることこそ、今日政治家に取つて最も必要なことであろうと思うのであります。かかる政治的なセンスの欠除は、遂に國民をして政府不信頼の本となるのでありまして、決して賢明の策ではないと思うのであります。併しながら私はこの國家財政の中で非常に大きな立場を占るところのこの煙草の値上案を、ただ感情的に反対しようというのではないのであります。それでは余りにも無責任であり、結局今年度予算案との関連において、この煙草の問題を考慮しなければならないことは申すまでもないのであります。新聞の報道によりますれば、專賣局の当局の方ですから、今回の煙草の値上には反対であつたということなんでありまするが、而もこれらの反対を押切つて、尚値上を決定しなければならないこの國家財政の困難なことも、私は十分承知しておるのであります。即ち煙草益金に代る財源が他に求め得るか、或いは値上せずにこの予定の益金を上げ得る方策がありやということが問題であろうと思うのであります。私はこれについて十分ありと断言したいのであります。  先程岩野教授からも代り財源について詳細な御説明がありましたが、私は先ず第一に、政府は何を措いてもインフレーションを急速に終熄せしめねばならないということを申上げたいと思うのであります。今日の國家財政の驚くべき膨脹は、急激なインフレーションの進行によることは勿論でありますが、これを敗戦後の惡條件に更に敗戰後の政府の無責任と貧困なる政治力とによつて、更にそれが絡み合つてこのインフレーションに拍車をかけたということは疑いないところでありまして、現政府は何を措いてもインフレーーションの終熄に全的の努力をしなければならないと思うのであります。然るに現政府は組閣以來しばしばインフレーションの終熄は放送しておるのであります。或いは言うところは、外資導入の可能性の展望がその主なる論拠であるように思うのであります。先日の大藏大臣の議会における演説の中にも、中間安定策とか申しまして、大体その意図を仰しやられたようでありますが、これは多分にひとりよがり的であることは、少くとも現実の経済のあり方を見る者に取つては、直ぐ了解できるのであります。いずれにしても外資導入の実現を見なければ望み得ないものでありまして、仮に外資の導入を得たといたしましても、果してこちらの希望するだけの額があるとは、私には思われないのであります。結局インフレーションの終熄の主体は、どこまでも國民の努力と政府の政策以外にはあり得ないのであります。我々はかかる他力本願的なことでなしに、政府は眞劍になつてインフレの安定を企図すべきであると思うのであります。然るにも拘わらず、今年の政策に向つて徹底的な措置が取られておるかどうか、例えば運賃値上といい、郵便料金値上といい、煙草値上といい、いずれも政府みずからがインフレーション助長することばかりしておるのであります。若し政府に眞にその決意があるならば、今年度予算にそれが指向されなければならない筈であります。國民所得に見合うような支出の圧縮がなされていなければならない筈であります。然るに今年の予算案を見ますれば、インフレを促進して名目的な収入を図るか、或いは歳入欠陷か、或いは國民生活欠陷か、いずれにしても極めて困難な見透ししか持ち得ないものになつておるのであります。このことは今回の物價改訂にも言えることであろうと思うのであります。このようなことで果してインフレが昂進しないと、政府が自信と責任を以て言えるかどうか、私はこの点が問題であろうと思うのであります。  第二には、各方面にもしばしば指摘されておりまする行政整理についても同様であるのであります。今年度予算編成に関連いたしまして、政府はしばしば行政整理を断行すると言明しておるのでありまするが、その要点は、人員において約六万二千名を整理し、これによつて十数億円の人件費を節約せんとしておるのでありますが、現在官吏の定員は四十二万名でありまして、而も一方には警察官、税務官、刑務官、教員等の不足を訴えておるのでありまするから、これを補充するならば、果して実質的にはどれだけの整理ができるかどうか、甚だ疑いなきを得ないのであります。官吏が不当に多いということは、すでに周知の事実でありまして、官廳事務の能率化、合理化は、すでに輿論の一致しておるところであります。官吏の新給與は、政府は三千七百円と言い、官公廳側は五千二百円と言つております。いずれにしても今日の物價から見れば、甚だ低きに失するのでありまして、このためにいつもストライキがあり、サボが行われるのであります。而もこの額さえも賄つて行けないで、その代り財源大衆課税に求めようとするならば、これは誠に本末顛倒も甚だしいと言わなければならんのでありまして、私自身中央官廳、又地方官廳に奉職いたしました経験から見ましても、今日の官吏が十分働いているかどうかということは甚だ疑問なのでありまして、國民のすべてが從前よりも、もつと多く働かなければならない時に、官吏が今まで通りであつていい筈はないのでありまして、官吏の数が不当に多いことは、單に國民負担を重からしめるばかりでなく、官吏自身の待遇を惡くし、更にインフレさえも助長するのでありまして、むしろ合理的な人員整理は、官吏自身によつて希望されるべきであると思うのであります。そうしてその人件費は更に又厖大な物件費を伴うのでありまして、我々は速やかに行政整理に徹底的な手段を講じ、少くともこれによつて数百億程度節減は決して困難ではないと確信する一のであります。  次に一方に歳出を極度に切詰めると共に、收入を増すことに努力すべきことは申すまでもないのでありまして、採算の確実なものについては特別の公債を発行するというようなことをするとか、先程申されたような闇利得者の徹底的な捕捉によつて、これ又相当額増收が見込み得ると思うのであります。我々はなすべきことをなさずして、大衆的な負担になるもののみに目を着ける政府のこの不見識、不手際を衝きたいと思うのであります。煙草一般物價に比して安過ぎるから上げるということなら話は分るのでありますが、財源がないからして、煙草ならよかろうという安易な考え方は、物價体系も、経済の一般的な原則も無視した、誠に許すべからざる暴挙と言わざるを得ないのであります。煙草價格が原料の買上價格に比して、実に百倍以上であろうということは、これ又周知の事実でありまして、煙草耕作者に対といろいろな干渉と圧迫とを以て強制的に買上げて、而もそれを百倍以上の値段を以て大衆に押し付けるということは、如何に專賣局であつても、これは公盗的と言わざるを得ないのであります。私はこの安い原料に加工といろいろな費用を見積つても、「ピース」のごときは大体二円見当でできるのではなかろうかと思うのであります。若しそうとすれば、これは正に暴利でありまして、敢て政府がこれを強引に押し切ろうとするならば、これは政治の濫用であり、暴圧政治と言わざるを得ないのであります。私は煙草が專賣であるということ自体にも反対なのでありまするが、少くとも現在の配給組織につきましては、非常に疑問を持つておるのであります。一日に高々二本程度のものを以て足れりとするこのやり方、而もその反対自由販賣には非常に高級煙草を沢山造るということ、このことが今日の我々の生活を一層苦しくする大きな理由になつておるのであります。又煙草の種類のごときも、先程來いろいろな種類の実物を見せて頂いたのでありまするが、精々これも三種類程度に止めるべきではなかろうかと思うのであります。これによつて、つまり配給組織を廃める、或いは煙草の種類を減らすことによつても、相当経費節減ができるのではなかろうかと思うのであります。  更に又專賣局自身の合理的な経営も考慮せられなければならんと思うのであります。その点において十分当局が  檢討されたかどうかその点疑いたいのであります。少くとも專賣局員であるが故に只で持ち出されるような煙草、或いは官廳や議会方面に出る、いわゆる特配と称する煙草も、この際全廃すべきではなかろうかと思うのであります。この経費も決して少くない筈であります。百倍で街あきたらず、これを更に百二十倍にしようとする惡代官的なやり方は、必ず大衆の反撥を買うことは必要でありまして、國民大衆の懷にも限度があるのであります。このことは先般の「新生」を四十円にしたときにどういう現象が起つたか、これが何よりもいい教訓なのであります。まずい、そうして量の少い「新生」に國民は見向きもしなかつたのであります。そうしてもつと安くで美深い、量のある闇煙草に走つたのであります。政府がいかに鐘太鼓で宣傳しようと、「新生」は埃にまみれて店頭に堆く積まれておつたのであります。そうして遂に政府は臆面もなく四十円を一躍二十円に値下をしたのであります。二十円で賣れる物を四十円に賣るということは、いかに國民感情に與えたろ影響が大きかつたか、而も今回は更に大きな値上であるのであります。一体六十円の「ピース」を誰が喫えると思うか。恐らく政府の見込んだ額は、到底得られないであろうことは明かであるのであります。そればかりでなく、闇煙草の氾濫を政府は一体どうするつもりなのであるか、闇煙草は嚴に取締られねばならないのであります。違法行爲は断乎排撃されなければならないのであります。我々は仕事の性質上遵法運動を從來からやつておるのでありまするが、現実に政府みすからが闇行爲を煽るような施策をしたのでは、その実効が挙らんのみか、遂に國を挙げて闇横行の暗黒時代を招來するのであります。煙草は安いから値上をするというような安易な考え方は、この際禁物であります。國民の納得しない政策を強行する時、政府の威信は地に堕ち、世道人心は乱れるのであります。独占事業たる官業の底止するところを知らないこの値上は、日本経済の破局を招く以外、何ものでもないのでおります。政府は闇退治に強権まで振り廻し、これに多額の経費を注ぎ込むより、経済の原則に合致した政策を採ることが、何よりの闇退治であることをこの際知るべきであると思うのであります。  更に委員方々におかれましても、單にこの案を呑むということなく、愼重審議せられまして、この惡法に対しまして、徹底的に追究して頂きたいことを、この際お願いしたいと思うのであります。國民は議会を監視しておるのであります。
  10. 黒田英雄

    委員長黒田英雄君) それではこれにて休憩いたしまして、午後一時より再開いたすことにいたします。    午後零時九分休憩    午後一時五十三分開会
  11. 黒田英雄

    委員長黒田英雄君) これより休憩前に引続きまして公聽会開きます。先ず小泉光三君にお願いいたします。
  12. 小泉光三

    公述人(小泉光三君) 私は神奈川縣煙草耕作組合連合会副会長をしております小泉と申します。年齢五十四才であります。  與えられましたる時間におきまして、自分の思つておりますことを申上げるわけでありますが、時間に制限がありますので、最初に私の述べんとするところのことを逐條的に申上げます。  第一に「のぞみ」を廃すること。第二に「きんし」を十円にすること。第三に低額煙草即ち「新生」、「きんし」、「ききよう」「みのり」の類を増産し、一般に沢山販賣すること。第四に煙草の製造方法を特に吟味すること。その一、巻煙草の巻紙に糊を十分付けること。その二、煙草の巻き方をもう少し量を増加して固く巻くこと。その三、「みのり」の包み紙を一定色とすること。赤と青とあります。その四、すべての煙草に対し品質を向上せしめ、でき得る限り香料を加味すること。五、煙草小賣人又は販賣所の店頭に不良煙草を交換する旨を掲示すること。例えば黴の煙草なんかあります。数量の足りない煙草なんかあります。巻き方の惡いものなんかあります。そういうものは專賣局で責任を以て取換えるということを店頭に掲示して貰いたい。六、小賣人が闇賣行爲をなし、或いは販賣規則に違背したるときは即時常業停止をなし、嚴罰に処して貰いたい。七、耕作者に対し煙草の特配を廃止し、実際の喫煙者にのみ必要の希望を登録せしめ、低額煙草のみを配給して貰いたい。但し必要量とは、甲、乙、丙という三段階くらいに分けまして、どなたが見てもこのくらいが必要量だということを定めて、やつて頂きたいと思うのであります。八、耕作者の闇栽培、闇賣、違反行爲、又は葉煙草盗難等は、現在の國情において根絶することはできないと私は思います。殊に本年は煙草の盗難件数は相当昨年よりも殖えるのじやないか、こういうように私は思います。その対策としまして、煙草の收納時期を早めて頂きたい。九、政府煙草耕作者に対して十分なる理解をして頂きたい。即ち現在の四囲の状況より申しますれば、煙草耕作者は山間僻地の比較的無農者の百姓が作る作物であるから、特に東京近縣の煙草耕作者に対しては政府は左記のことを即時決行して頂きたい。その一、煙草作の所得税額高率なるが故に、二十三年度より算定基礎方針を確立し、軽減して頂きたい。その二、賠償金は昨年度の倍額以上に引上げること。百姓の申しているのは三倍ぐらいにして買いたいという希望を持つております。その三、葉数収納に対しては別途に相当数の手間賃と申しますか、報奬と申しますか、十分なる支給をして貰いたい。いわゆる賠償金の中に入れずに別途に葉数収納というものに対しては、非常に手間が掛りますから、特別な手当金を頂きたい。以上が私が御説明したい題目でございます。時間が多分にありますれば、この撃にいろいろとお願い、或いは意見を申したいと思うのでありますが、時間がありませんので、簡單にこれを御説明申上げたいと思います。  今逐條的に申しましたことは、本席の議案に対する答申としましては、少し的が外れているものもあるかも知れませんが、私、耕作者の代表といたしましては、密接不可分にあります関係で、ここにお聞取りを願いたいと存ずる次第であります。私は政治家でございませんから、政治の運営につきましては、政治家の諸公に大体お願いいたしたいと思うのであります。余計な言葉でありますが、我々國民としまして政治のなんぼかぐらいのことは研究せんければならんというような事態にありますが、末席におきましてはただ單に耕作者としまして、百姓としまして、逐條的に御説明して、それを適当な運営をして頂きたいと思うのでございます。「のぞみ」を廃しないということは、これは闇を助長する原因の一つでございます。專賣局も長くはおやりにならないようなお考えも聞いておりますが、これは即刻に廃することが必要だと思います。つまり紙を販賣するから農家がつい切りたくなります。喫つてもわからんというようなことで、ああいうややこしいものは止した方が闇防止にはよろしい、こういう意味でございます。「きんし」を十円とすること、何かの計算から十一円ということになつたのでございましようが、これは「きんし」に限つて一円半端を付けずに、十円になすつて下さつたらどうか、簡單な意味であります。煙草の製造方法につきまして、今逐條的に書きましたわけなんで、別段御説明せんでもおわかりになると思います。煙草小賣人のこともおわかりと思います。六の闇賣違反のこともおわかりと思います。今委員長から煙草の値の問題について成るべく話せということでございますから、以上書きましたことは省きまして値の問題を申上げます。  煙草の値上につきましては、一應先刻各委員の御意見にありました通り、私もそのように考えております。併し政府健全財政は官営のものから收得を上げるということを國民一般に声明されておられる以上、それが現政府の方針であるという以上、私は政治家でない限りにおいて、適当になさるがよかろうと思うのであります。ただここに煙草の値上とは違いますが、農家の特配を中止して呉れということがあります。これは誤解なさらないように、農家は二十二年度の末におきまして、報奬物資と称されまして多分の煙草を頂きました。別段先程どなたからお尋ねがありましたが、世間のことよりも安く頂いたわけでも、ただで頂いたわけでもございません。規定の價格で頂いてあるわけであります。その煙草を折角報奬物資で頂きぎしても、農家は甚だ迷惑千万の方が相当ございます。いわゆる煙草が高いために、そういうものを農家が三百円も四百円も金を出して喫つていられないということなんであります。そこで特配も結構でございましようが、余りに多量に出しますと却つて親切が仇になつて、それを闇で賣るというような結果になると私は思う。私の申すのは皆煙草の値上問題に内容は関連しております。そんなことは止しまして、農家としましては自分煙草を作つて承知通り「みのり」がああやつて製作されて販賣されておつて、その結果、予定の六割賣れたという話で、それが成功であるか、不成功であるか、私存じませんが、六割賣れたということであります。前委員が残りを二十円で賣つたということを言われたが、そんなことは私共一應政治家にお委せします。とにかく百姓が作つた葉煙草を闇で賣りますと、二千五百円から、三千円で賣れます。それで葉を刻んで喫つて見ますと、どのくらいに付くか、官製のものとどういうことになるかというような精密な計算は私できませんが、闇煙草の方が安いという結果が招來するのではないかと思います。私思いますのに、最近專賣局では各府縣に亘つて煙草の植付の檢査をされておりますが、私の見るところでは、全國そうだとは思いませんが、すでに百姓は植付のときに闇をしようと思つております。私の村などは檢査が済みまして非常なお賞めを頂きまして、一人もそんなものはおりません。昨年は相当ございました。こういうことは長くなりますから止めますが、專賣局のお方ならば分ると思います。これはどなたが財政をおやりなつても苦痛のあることは百姓ながら承知しております。私は政治家でないから、それなら、どうやつたらいいかと尋ねられても分らない、煙草は成るべく安くして貰いたい。而して先程申した通り健全財政として出発した以上、是が非でも通そう。とにかくいいことを考えて國民の声を聞いて通そうというお考えであるならば、安い煙草を沢山作つて貰いたい。農家はそんなに沢山要らない。必要なだけでいい、我々百姓は一生懸命増産して煙草を出します。さもないと今年も煙草の泥棒が増します。現在農村はあつち、こつちとも看視のお巡りさんで動きが取れません。政府は百姓を騙しますが、そんなことには我々は騙されません。そういうと政府はお前のところで作らんでも山形で三十町歩、山梨でいくら作るということを言われましようが、そんなお考えで國家を料理されては私は農村経営というものの將来は危ぶまれると思います。要するに昔から神奈川縣の秦野の煙草と言われております。私は政府のお先棒になつて日夜農村督励をしておるものでございます。どなたも煙草の値上には不賛成と思います。併し國家がどうしても上げなければならんというならば、我々階級がこの今の煙草を沢山作つて、沢山出して製造して貰う、そうして親切に煙草を作つて貰う、そうして國の財政を睨み合せてやつて貰いたい、こう思うのであります。一口にいえばそれだけでございます。よちしくどうぞ……。
  13. 黒田英雄

    委員長黒田英雄君) 次に北川義行君。
  14. 北川義行

    公述人(北川義行君) 私は総同盟の北川です。煙草値上の問題につきましては結論から簡単に申上げます。煙草の値上には労働者の立場から反対を申上げたい、かように考えます。反対理由につきましては、先程來反対論者からいろいろ詳細に説明んされておりますし、委員の皆様も大変御多忙のようでございますので、極く簡單に申上げたい、こういうように思います。煙草の値上につきましては、鉄道運賃の値上、郵便料金の値上等と関連しまして、政府が計画をしておりまする新物價改訂の問題と関連して私どもは考えるわけでございます。昨年の七月に曲政府物價の改訂をいたしまして以來、本年初頭から三、四月頃までは、いわゆる食糧事情の好轉、徴税の強行というようなことや政府の資金撒布の抑制というような政策が可なり功を奏しまして、闇物價の昂騰というものが足踏み状態を続けて、可なり昂進の度合がにぶくなつて來た、こういうように私どもは考えております。併しながら政府が新物價体系の改訂をすると同時に、その裏付としてはそうといたしました流通秩序の確立に対する諸政策というものは何らの成果を挙げていない実情である、こういうような中にありまして、最近の情勢は、いわゆる物價の昂騰の度合が非常に激しくなつて來ておる、このことは食糧事情が端境期に参りまして、配給による食生活が確保されていないという一つの事情、或いは政府の資金の撒布が可なり本年度に入つて緩慢に行われつつある、こういうような事情で、闇の物價の昂騰が非常な急速な態勢で上昇しつとある、こういうような中にあつて煙草の値上、或いは鉄道運賃の値上、それから郵便料金の値上というようなことになりますると、いわゆる國民生活の安定という立場から私どもは考えまして、今までより一層インフレを激化せしめまして、國民生活の窮乏がますますひどくなつて参る、こういうことでは折角産業の再建に努力しております私共労働者の生活は、不安な状態におかれまして、國民生活の安定というものが期し得られないのではないか、飽くまで政府は低物價政策の上に立つて、インフレを抑止するように、いわゆる流通秩序の確立のための諾方策を果敢に実践して頂きたい、こういうように私共は冀うわけでございます。先程頂きました提案理由の説明の中に、浮動購買力を吸收するというようなことか書いてございましたが、こういうことに関しましては私共も賛成をいたしまするが、煙草の五十円のやつを六十円に値上というようなことが果して浮動購買力の吸收に役立つかどうか、皆さんが御承知のように私共は一日一本半、一・六というような配給を頂いておる。この配給量ではどうしてもやつていけんので、苦しい家計の中で無理をしながら五十円もする、或いは二十円もする煙草を買わなければならんという実情にあるわけでありますので、單に浮動購買力の吸收というように簡單には考えられないのではないか。煙草は今日の國民生活の上において、いわゆる主食と同じような生活必需品である、こういうように私共は考えております。政府が言いますように浮動購買力の吸收ということでございますならば、やはり家庭配給が今の三倍乃至四倍の量に増大されなければ、浮動購買力の吸收のための値上として我々は理解するわけには参らんのでございます。そういうような立場から、私共は煙草の値上には反対する。併しながら反対をする以上、いわゆる代り財源については何かあるかと言われますと、率直に申しまして代り財源の捻出については具体的な研究をいたしておりませんが、私共が考えまするところでは、やはり生産設備の増強並びに生産総量の増大、こういところに代り財源根拠を置くべきではないか、更に財政方針といたしましては困難ではございましようが、やはり戰時利得、闇利得の捕捉のために政府は努力をして、この困難なる事業を敢て行なう、こういう決意がなかつたならば、赤字の後を追つ駈けている單なる大衆課税によるところの國家予算の編成というようなことに終つてしまうのではないか、こういうように考えます。今朝の新聞紙上にもちよつと書いてありましたが、昨年二月に解散いたしました兵器処理委員会が産業復興公團に引継ぎました鉄鋼乃至非鉄金属の総量が書かれてありましたが、こういうような産業復興公團等が持つておりまする鉄鋼或いは非鉄金属等の完全なる生産部面への活用というようなことが急速に行われますならば、百億や二百億の財源をこういう分野から生み出すことは簡單だと考えております。産業復興公團はこの兵器処理委員会から引継いだ物資の外に、繊維或いは皮革その他の製品を可なり厖大に抱えておりますが、こういうように摘発をされた物資が何ら民間の重要産業の生産部面には廻つて來ない。廻つて來るにいたしましても、一年の後とか二年の後とか長い年月を要さなければ生産の部面へ廻つてこない。こういうような機構に商工業者の團体でありますとか、或いは労働組合の代表者を加える、こういう民主的な機関を持つことによつて、こういう退藏された物資を急速に必要なる生産部面へ廻して行く、こういうことで私は三百億や四百億の財源は急速に生み出すことができて、重要産業の再建に大きく役立つことができるのではないか、こういうように考えておるわけでございます。非常に簡單でございましたが、財源の問題についてはまだ具体的な研究をいたしておりませんので大変申訳なく存じますが、労働者の生活を安定せしめるためにも、インフレを抑止するためにも、こういうような物價の改訂並びにその一環としての煙草値上げ反対である、こういうように考えております。
  15. 黒田英雄

    委員長黒田英雄君) それでは次に堀添浩二君。
  16. 堀添浩二

    公述人(堀添浩二君) 私は全官公労の堀添でございます。年齢は二十六才でございます。ただ簡単に全官公労としての態度を申上けますが、結論的に言いまして今般政府の予定いたしておりまする諸物價値上げに関しましては全面的に絶対反対であります。その理由としましては、先程來、各反対論者殊に淺川、磯部、北川、諸公述人の言われました通りで、敢て私から申上げるまでもありませんが、ただ蛇足といたしまして我々はこれ以上大衆を苦しめるところの諸政策の全面的の撤回を要望して止まないものであります。簡潔ながらこれで終ります。
  17. 黒田英雄

    委員長黒田英雄君) 櫻井治夫君。
  18. 櫻井治夫

    公述人(櫻井治夫君) 專賣局職員組合の櫻井であります。只今までいろいろ御説明がございましたが、私といたしましては具体的な数字を掲げまして、更に議員の方には先程お渡ししてある資料を出して頂きたいのであります。「製造煙草の定價の決定又は改定に関する法律案についての提案理由説明」と、これを両方を照合いたしましてここで煙草値上げ絶対に反対理由を申上げます。何故現在の煙草値上げが不合理であるかということを御説明いたしたいと思うのであります。一番最初に、今まで度々言われましたように、大衆課税である或いは闇煙草生活者を苦しめるものであるということは、大体のところだけを申上げますと、何故大衆課税か、即ち煙草嗜好品であると言われます。又政府のよくおつしやることは、煙草は、高級煙草は買いたい者が買つたらいいじやないか、買える者が買えばいいじやないかというような意味のことをよく言われるのでありますが、事実先程の岩野教授もお話がございましたように、煙草の緊要度は、エンゲルス系数に修正した食費の中の緊要度系数はどのくらいになつておるかということをお話申上げますと、米の緊要度は大体四から六乃至七のところに行つております。煙草は二・三乃至二・五六という割合に行つておるのであります。これには緊要度数と係数の高いものは嗜好品という名目でありますが、事案土では嗜好品ではなくて必需品の域に入つておると、そういうことも念のために申し添えて置くのであります。次に品質が劣惡であるということについて提案理由によりますと、この値段を決めるについて國民負担能力と品質に應じているか、どうかということを、闇煙草の防止に当つて考えられておつたそうでありますが、私は全然納得できないものであります。それを申上げますと、大体煙草の中に含まれておる黄色種というこの種類が非常に分りにくいかも知れませんが、黄色種の%を以て大体判定いたしますれば、過去における……この前の方が御説明いたしましたこの「ハッピー」と「ピース」の比較でありますが、現在この「ハッピー」に……「ピース」と比べて二七〇倍になつておる。併しながら比率は「ピース」の黄色種が六〇%しか入つておりません。黄色種は六〇%、あとは米葉を使つております。こういうものの比率を見ても、こんなふうになつておる。併しながら終戰直後と現在とを比べますと「きんし」は終戰直後にあつては大体四〇%程度の黄色種が入つておりました。  現在ではどうかというと二五%の黄色種、更にその他の「いたどり」というものが六%入つております。これを含めまして大体当時の物價を一といたしますれば、現在は五倍乃至六倍、消費財の指数というものは五、六倍に上つております。然るに煙草においてはどうか、終戰後三十五銭のものが現在十一円になろうとしておる。実に三十四倍の増を示そうとしておるのであります。而も「ピース」などは先程六五%の黄色種しか含まれていないと申しましたが、終戰直後の「光」はそれは黄色種百%の黄色種で作つてあります。こういうようなところから品質が非常に悪いということ、更に香料が入つておるものは「ピース」と「コロナ」、砂糖の入つておるのは「ピース」と「いこい」でございます。  それから次に闇煙草の原價というものは、先程もちよつとお話されたようでありますが、大体あのような調子で地方においては八円乃至十円、東京の附近では十五円ぐらいが妥当じやないかと思います。これを十円の利益を見積つております。二十五円では少くとも三十円であるというのが大体の闇煙草の販賣されておる値格でありましよう。そういうようなものは、結局「ピース」「コロナ」を上げることによつて、その中間を狙つて來る闇煙草が余計氾濫するということは、こういうことは政府言つておられる闇煙草のあれに役立つのであります。こういうことは私は絶対納得できません。  先程委員長のお話でも自由煙草配給煙草の全額の六割、大体八対二というお話でありましたが、実際においては、数量から言うと配給煙草の方が六で自由煙草が四であるというお話であつた。成る程昭和二十二年の計画はそういうふうになつております。  併しながら私はもう一つ考えなければならんのは、去年と今年はどうなつておるか、昨年度自由煙草配給品の比率は、自由煙草二三%、配給品大体七五%という製造率を示しております。これに比べて今年はどうかというと、配給煙草五九%、自由煙草四二・三%前後であります。こういうことは何のために配給品の二〇%というものを自由煙草に廻したか。明らかに金を取るための策であるということを断定する者であります。  更に最後に大体家計費の五%以上を煙草に繰入れて來るということを先程誰方か申述べておりましたが、私はこの家計費といろのから離れまして、二年間の專賣益金と、一年の総消費資金の振合はどうかということを一應考えて見たいと思います。そうしますと、昭和二十二年度においては「新生」を四十円で賣ろうとしたときは五%だつたのです。專賣益金國民の総消費資金との比率が五%なのです。專賣に比べて五%だつたのに比べて「新生」四十円を作つたのですが、その結果あのような失敗になつでしまつた。につちもさつちも行かないので二十円になつた。二十円に値を下げたところの成績はどうかというと、三・五%今三・五%というものを最大の購買力、これ以上は買えないという限度を見ましたときは、今度の九百四十億という厖大な予算というものは明らかに不合理であるという一言に盡きるのであります。而も今度の九百四十三億というのが現在の今年度國民の総消費資金の比率を見まするに、五%はおろか五・六九%という殆ど六%に近いような厖大な率を示しております。こういうような時期に当りまして、更に財源々々ということをよく言われるのでありますが、今年度になつてから販賣されておる「新生」、これはすべて昨年拵えられたものであります。更に「きぎよう」は昨年度は一應拵えておりますが、まだ販賣はしておりません。今年度に持越しております。更には細かいことになりますが、鳴物入りで騒いだ煙草の籤というものは百万円が一体何人当つているかということを当局は考えて頂きたい。全部が政府の懷にあるのじやないか、こういうような事実もある。然らば現状維持に止めるということになりますと、現在の予算の中から二百七十億程削らなければならん、そうすると、その財源は何処から出るかということが問題になると思うのであります。その財源としてこういうことを考えております。非常に僭越かも知れませんが、一應お話申上げます。貿易資金特別会計というものが、得体の知れない物があるということだ。これが四百億計上されております。これでは納得できません。これをどうにかすれば、百億、二百億の金というものは明らかに出て來るものであります。それをやらない政府健全財政というものは私は全然納得できないのであります。  更に終戦処理費というものが如何に不都合なものかということは、現在土建業者の方に関してだけ調べて見ましても、すでに金を前拂いしておるものがあります。これに対して檢査しなはればならないものは、昨年の四、五月頃現在で大体一万六千三百五十件前後、要檢査の件数があるわけであります。この中、一体どのくらい調べられたか、今年五月で四百一件しか調べられておりません。而も精算されたものは三百五十件にしか担ぎない。三百五十件精算された結果、どういうふうになつたかというと、四〇%は要らなかつた。予算の四〇%は余つたという事実が現われておるのであります。これを考えてもつと眞劍にやつて頂けば、この終戰処理費という厖大な得体の知れないものはどうにか始末ができるのである。それから價格調整補給金という都合のいいものがあるのです。これも調査して頂きたい。或いは利拂停止或は復金の問題、税金の問題と、順々に疊みかけて行けば、二百や三百のものは出ると信じております。このやり方ではできないと言われるのなら、それは別問題になりますが、現状維持以外に絶対に上げてはならない、この一語に盡きるのであります。煙草の値上というものは、現状維持に止めろということであります。大変長くなりましたが、この辺で止めさして頂きたいと思います。
  19. 黒田英雄

    委員長黒田英雄君) 何か公述人方々に対しての御質問があればお願いいたしたい思います。
  20. 櫻井治夫

    公述人(櫻井治夫君) こちらの方から公述人に対する質問を出してよろしいでしようか。
  21. 黒田英雄

    委員長黒田英雄君) 公述人から公述人質問するんですか。
  22. 櫻井治夫

    公述人(櫻井治夫君) はあ。
  23. 黒田英雄

    委員長黒田英雄君) それはここでなく、お話し願いたいです。  それではこれで公述人方々の御陳述は全部済みました。本日は公述人方々皆様お忙しいところをお繰合せ下さいまして、いろいろ御意見を御発表下さいまして、誠に有難うございました。厚く御礼を申上げます。  それでは本日はこれにて散会いたします。    午後二時三十二分散会  出席者は左の通り。    委員長     黒田 英雄君    理事            伊藤 保平君    委員            玉屋 喜章君            西川甚五郎君            松嶋 喜作君            石川 準吉君            田口政五郎君            深川タマヱ君            星   一君            小林米三郎君            小宮山常吉君            高橋龍太郎君            中西  功君            天田 勝正君            栗山 良夫君   公述人    專賣局労働組合    品川支部長   淺川 國吉君    中央大学教授  岩野晃次郎君    小賣人組合芝組    合組合長    磯部 文藏君    社会教育連合会    事務局長    岡本 正平君    神奈川縣耕作組   合連合会副会長  小泉 光三君    日本労働組合総    同盟中央委員  北川 義行君            堀添 浩二君