○
説明員(
湊守篤君) 私は昨年の暮まで
融資部長をや
つておりました
關係で、現在の
融資部長は
密田君でございますが、
復金融資の今まで辿
つて参りました足取りについてごく簡単にお話し申上げます。
復金は御
承知のように昨年の一月に
設立されたものではございますが、一昨年の八月から
興業銀行が、
復金の前身であります
復興金融勘定という
勘定で
特別融資をいたして参りました。
從つて復金の實質的な誕生は一昨年の八月になるわけであります。しかし
興業銀行時代ではあまり大した活躍はいたしておりません。この
復金が
設立されました時に、
復金に
勘定を
引繼ぎましたのでありますが、その時四十一億
程度の
融資をや
つておりました。しかし
當時の
政府の
出資が四十億であ
つたためにその
全額を
復金勘定に
引繼ぐことができませんで、一部を
興業銀行勘定に残して参りましたために、このパンフレットにも書いておきましたが、數字的には二十八億の
融資をや
つておることにな
つております。ともかくも昨年の暮には四百四十億に達しておることでありますから、
興業銀行時代は大した
融資の
實績はなか
つたことになるわけでありまして、結局
復金の正式に
設立されました昨年一月以降の
復金の
融資が非常に大きな
金額にな
つて、これが皆さんの問題にな
つて來たわけであります。そこで一月の
設立以來の
融資の
經過を
只今その
パンフレツトをお手持の方は御覧頂きたいと思います。三十二頁に一月から十二月までの月末の残高をそこに書いてございます。月中の
増加を取
つて参りますと、二月が十四億、三月が十六億、四月が十七億、五月が二十四億、六月が三十三億、七月が四十四億、八月が六十一億、九月が四十六億、十月が四十八億、十一月が四十二億、十二月が六十三億というふうに
融資が實行されております。二月、三月、四月まで大
體十億臺であ
つたものが五月から殖え出し、六月、七月と急激に
増加しておりますのは、一航的に
産業の
資金の
需要が多くな
つて來たことにも
原因がありますが、特に多くな
つて参りました
原因としましては、六月から例の
公團が
設立されまして、
公團に對する
融資が六月から始ま
つたのです。これが七月八月へ参りまして非常に
厖大な
融資を止むなくされたために、八月ひと月の
融資額が六十億という額に達しておるのであります。特にこれは
公團の
設立による
復金融資の膨脹の
經過でございます。
併し今申上げましたように、
一般的に七月の新
物價の
改訂以來、
増加運轉資金その他の問題で、
産業は非常に
厖大な
資金需要を訴えておりましたので、それにも相當
復金としては引摺られたということがいえると存じます。
ところで、これだけの大きな
融資が
蓄積資金で賄われていれば、これは大した問題はないのであります。御
承知のように
復金の問題にな
つておりますことは、結局これだけの
資金の殆んど大
部分が、
日銀の通貨の
發行によ
つて賄われておるということになるわけであります。その驗につきまして
復金債の
消化状況を見て参りますと、
復金債は昨年の二月に十五億、三月十五億、四月十五億、五月二十五億、六月四十億、七月五十億、八月四十九億、九月五十億、十月四十五億、十一月四十五億、十二月六十億、大體
只今申上げました毎月の
融資の額と
復金債の
發行の額と見合
つておる、これは最近まで
政府の現實の
出資は四十億
最初に
出資されただけで、最近十五億
出資がありますまで全くなか
つたわけであります。
從つて復金としては
融資に要する
資金は全部
債券で賄わなければならない、この
債券の
消化の
状況が問題であるわけであります。昨年の十二月末までの
實數で申上げますというと、大體八十七%
程度が
日銀の背負い込みにな
つております。この點から
復金インフレということがいわれ、非常に惡くいわれる場合には、
日本の
インフレの元兇であるともいわれて來た程でございます。
只今申上げましたのが
債券の
發行及び消化の
状況でございます。ところでこれだけの
融資をいたしましたこの
融資の
内容がどうであるかということにつきましては、
當委員會におきましても、今までなんとか申上げておりますと存じます。又いろいろ
資料もお
手許に差上げてあると存じます。併しその
資料につきましてそう詳しく御
説明申上げたことは今までなか
つたと存じますので、極く掻い撮んで概略の御
説明を申上げたいと思います。その
パンフレツトの一番終りに十二月の數字を出してございます。これはい
ずれお
手許に
パンフレツトを差上げますが、前にこれと
ちよつと組立て方が違いますけれども、十二月末までの
業種別の殘高表を差上げてございます。それを御覧頂きますと大體分ると思います。
融資額の中で最も大きな
部分を占めておりますのは
鑛業、これが
一般融資の
總額に對する
割合は五十五%に達しております。この
一般融資と申しますのは、
公團を除くものでございます。この
鑛業の中で最も大きいのは
石炭でございます。
石炭が
一般融資總額に對しまして四九%という比率を占めております。
金額にいたしまして百四十七億、亞炭まで入れますと約百五十億という
石炭融資を昨年の暮までに
復金がしてきたわけであります。少しこの
石炭に對します
融資の中を分析して申上げますと、この百五十億に近い
融資をその
資金の
使途別に分析いたしますと、
設備資金が大體六〇%を占めております。殘りの四〇%が
運轉資金。この
設備資金は
一般的な
設備資金と
労務者住宅資金というふうに大掴みに分けられると思います。
一般的な
設備資金としまするのは、新
坑開發をいたします場合、或いは
切羽の
増強をするというような場合、それから
炭鑛の
出炭を
維持していくために必要な
補修費のようなものが、
一般的な
設備資金として
融資の形にな
つております。これは非常に変態的なものであると思います。平時でございますれば
炭鑛の
維持のために必要な
補修費のようなものは、當然に
炭代の中に織込まれて、
炭代として賣られて、利益とな
つて返
つて来る。これを
償却という形で落して、それで
炭鑛を
維持していくために必要な
補修費を賄
つてきたわけです。ところが御
承知のような物
價抑制政策からいたしまして、今の九百五十六圓という
炭鑛の中に占めている、認めている
償却費は僅かに三圓八十四錢、これでは現在の
炭鑛を
維持していくということの到底不可能なことは明らかなわけであります。
自然炭鑛はその
維持のために必要な
補修費を
設備資金という形で借りなければならない。こういう
状態にな
つております。これがあとでいろいろ申上げますが、
復金に對する
一般産業の
資金需要の非常に大きいという
一つの大きな
原因になるわけであります。こういう
設備資金というものも、この
一般的な
設備資金の中に入
つております。いま申上げましたのが、
一般設備資金でございます。
次が
労務者住宅資金であります。
労務者住宅資金については大
體御承知と思いますが、終戦まで
臺灣及び朝鮮の
勞働者によ
つて約三分の一が占められておりました
炭鑛の
勞務者連中の
住宅事情というのは、御
承知の通りのもので、これが
終戰によ
つて全然
日本人勞働に切替えなければならないという
事態に立至
つたわけであります。
日本人勞働者は彼等のように獨身ではありません。又こうい
つた情勢下においては、彼等に與えておりましたうな
住宅施設を以て
日本の
勞働者を滿足させることは到底できない。これは
GHQの方から特段の強い指示もございまして、現在も
引續りこの
炭鑛勞務者の
住宅の
擴充資金が即ちこれであります。現在までに、
新設新築で約一万八千戸
程度計算いたしております。なお改築、移築、
修繕とい
つたものまで加えますと約十万戸近いものに手をかけておりまして、最近では相
當勞務者の
住宅というものは改善されております。この
關係の
資金が全體の約三〇%を占めております。それから次に
運轉資金であります。
運轉資金の中の約半分、
從つて全體からすれば二〇%に當るものが
赤字融資であります。この
赤字融資につきましては、いろいろ問題にされているところがございますが、
石炭に關する
赤字融資は、これは
財政のつなぎ的な
性格を持
つておるものであります。全然ロスとな
つてしまう
融資ではないのであります。これは昨年の夏頃から
炭價と
原價との間に相當な開きが出ております。これを
政府としても認めざるを得なか
つたのでありますが、直ちに
價格を
改訂することができ難い
事情にあ
つたために、一時二重
價格制をと
つて、要するにその足りない
部分にいては
政府が補償するということを決めたわけでございます。ただこれの
予算的措置がどうしても相當長びくことになりまして、現實に
政府からその
補償金が支拂われるまでに時間的な
ずれが出てきます。その
ずれを埋めるために
復金が
赤字融資をしたわけです。
從つて現在殘
つております三十億餘りの
赤字融資は、この
年度末までに税金が豫定通りに取立てられれば、
政府から
補給金として
炭鑛業者の方に拂出される
復金の
融資は、それによ
つて返却を受けるということにな
つているわけであります。併し今の
政府の
金繰りからすれば、この
年度内にこの
全額が
回收されるということは非常にむずかしいと私共は考えております。併しながら今申上げたような
一つの引當てを持
つた融資でありまして、全然當てのない
融資のように
一般に言われておる點は間違いであります。それから殘りの半分、全體の二〇%に當るものが
一般的な
運轉資金、これのうち大
部分は
増産及び
價格の
上昇に伴うところのいわゆる
増加運轉資金になるわけであります。この中には若干
坑木關係の
増加運轉資金も入
つておりますが、大體において
増加運轉資金と考えて間違いないと存じます。今申上げたような
使途に百五十億の金が使われてきたわけでございまして、一番
最初に申上げた新坑の
開發であるとか、或いは
切羽の
増強であるとかい
つたような直接
増産に作用する
設備資金は、全體の
金額からの
割合からいたしますと、案外小さなもので、直接には
増産に作用しない。併し間接にむろん相當寄與しておる
資金が大
部分を占めておるということが言えるのだと考えられます。そういう點から、昨年の十一月頃まで
金庫が
石炭に對する
厖大な
融資をしておるに拘わらず、
石炭が一向に出ないではないかという非難が相當にあ
つたのでありますが、これはその點から見れば、我々としては、我々の
融資がむしろ直接に直ちに効果を現わすような
方向に向
つて出されていないで、いろいろな
條件が揃
つてきたときに相當目覺しい
増産をするための基盤を作るという
方向に
融資がなされてきたのであるということを
當時言つてお
つたのであります。果せる哉、十二月に
石炭二百九十六
萬トン出てきた。このことは新聞に出たように、それだけの基礎ができてきたということから、ああいう
GHQ調査団とい
つたようなものの關渉を
契機として、又
勞務者の
生産意欲というものが起
つてきたのを
契機として、ああいう
増産の
實績を示したのであるということに相成るのだと私共は考えております。
終戰直後にあれだけ荒廢してお
つた日本の
炭鑛がとにかく二百九十六
萬トン出せるまでに整備をしてきたということに
復金の百五十億
融資の意義があるのだというふうに考えております。やつとここで我々もいろいろ苦勞して
石炭に關する
融資をや
つてまいりましたのが報いられたような感じを實は持
つております。併しながら、だからと
言つて、この百五十億も
融資しなくても、もつと少ない
融資であれだけのものはできたかも知れない。又百五十億もの
融資をしたならもつとよい
状態ができておるべきであ
つたという一部の
批判に對しては、私共としてはそれを否定するだけの自信はございません。と申しますのは、
石炭に對する
融資は、
戰時中の
命令融資でさえも、こういう
事業への
貸出は、こんなルーズな
調査に基いて
貸出はなされなか
つた。この
復金のや
つておる
石炭の
融資は
戰時中の
命令融資以上にルーズな
金融であるということは、これはどうしても我々として否定できない事實でございます。と申しますのが、
今ちよつと申上げたように全
炭鑛に
融資をしなければならないという
事態でございます。併しこの
融資は曾てこうゆう目に會
つたことはない。
戰争中相當資金の
需要が大きか
つたときでさえも、大體
炭鑛を
維持していくための
資金はさつき申上げたような徑路で
炭代で賄われてお
つた。
從つて新しい坑道を起すとか、或いは自然的な災害のために水害があ
つたとか、それを
復舊するとかい
つたときに
限つて資金の
需要が出てきた。
當時においては
インフレーシヨンもまだそう
速度を早めておらなか
つたから、
價格の
上昇もそう見るべきものはなか
つた。
從つて全
炭鑛の恐らくは一〇%ぐらいの
金融というものが出てきたお
つたと思うのであります。それが現在の
状況ではこれは
石炭鑛業たけではありませんけれども、全部の
炭鑛が
金融を伴わなければ、
出炭を
維持して行くことができないという
實情にあります。そこへ持
つて來て
インフレの
速度がだんだん速まるに連れて、
價格と
原價との
矛盾が常に追つ掛けにな
つておるということであります。
從つて、
炭鑛は常に
赤字赤字で追い掛け廻される。これを埋めるための
資金を率直に
赤字というもので認めて、前にや
つたいたような
補給金で出すということになれば、まだすつきりした形がとれますが、いろいろ政治的な
事情から、なかなかそれを率直に認めて行くことができなくな
つて参りますと、これをいろいろな形式で
融資をして行かなければならない。要するに
石炭に對する
融資は、基本的な
政策の尻拭い見たような面も、實は持
つておるというような
關係からしましても、政治的な
金融にな
つて來ております。
これは、
金融をや
つております私共としては、非常に不滿であるわけでございますが、その點に、
復興金融金庫というものが作られた
一つの
役割もあるのじやないかと考えられます。又
復金が、この場合いわゆる
健全金融とい
つたような線に
沿つて、非常に
適確な審査をしてからでなければ、頑張
つて参
つたお
つたならば、昨年の暮、二百九十何
萬トンという
石炭は明かに出なか
つたということにもなることから考えて、
當然復金のそういう
役割は非常に不滿ながらやはり果して行かなければならんじやないかというふうに考えております。
ただ併し、今申上げましたように、全
炭鑛に對する
融資でありますから、
誤りなく、その
實體を掴んで行くだけの態勢は遺憾ながら
金融の側にはないわけであります。
これは
石炭だけでございますれば、何とかやらなければならないと思うのでありますが、先程申上げましたような、
價格政策は、全
産業に共通しておるものであります。今
復金は、恐らくあらゆる
産業に殆んど萬遍なく
融資をや
つております
實情からお考えを頂きましても、その點は明らかであると思うのであります。全
石炭鑛業の今五百幾つある山を常に間違いなくその
實體を把握して行くということはできないような
實情にありますために、
石炭金融は、とかくルーズに流れまして、
從つて一部の
石炭に
融資した金が思わぬ
方向へ流れておるというような御
批判を受けるのであります。その邊につきましても、我々としても、金の後を追つ掛けて、十分その
使途を
誤りなく、その當初期待せられた
使途に使われておるかどうかということを檢討するだけの力というか、餘裕がないということで、私共は誠に遺憾に思
つておるわけでございます。
石炭につきましては、少し長くなりましたが、要するに
石炭が、今のそうい
つたいろいろな
矛盾を端的に示しておるように考えられますので、特に長く申上げたわけでございます。
次に、この表の
順序で言いますと、
繊維工業でありますが、これは極めて僅かなパーセンテージしか持
つておりません。この
繊維工業は、本來
日本の
一般金融が最も
金融的な
關係を深く持
つてお
つた工業であります。
從つて、今までは
一般金融機關が相當、
繊維工業については
融資をして参
つたために、
復金が左程
融資をしなくても濟んだわけでありますが、これは、だんだん
復元資金その他について非常に大きな
需要が出て参りますと、これはなかなか
一般金融で賄い切れなくな
つて、逐次
復金の方へ
融資を要望する聲が昂ま
つて來ておるという
状態のように考えるのであります。
次に、
金属工業の中で最も大きいのは、
鐵鋼關係でございます。
鐵鋼關係が殆んど大
部分を占めておりまして、この
鐵鋼關係の大
部分が
運轉資金でございます。
設備資金はほんの僅かにあるだけであ
つて、大
部分は
運轉資金でございます。この
運轉資金の中で、
赤字融資が約七〇%
程度を占めております。これは、
石炭の場合と全く同じような
財政の
繋ぎ的性格を持
つておるのであります。これは
價格平衡資金というものがございますが、この
價格平衡資金によ
つて返却されるものであります。
從つて、これも
石炭の場合のように、今の國に
金繰りの面からいたしまして、この三月までに
回收になるということは非常に困難のように考えるのであります。
爾餘の
資金の大
部分は、
増加運轉資金でございます。
次に
機械器具工業というのがございます。この
機械器具工業はパーセンテイージで言いますと、
一般融資總額の七%を占めております。この
機械器具工業の中で最も大きいのは
自動車工業であります。
自動車工業が
機械器具工業の約三〇%を占めております。この
自動車工業は日産、トヨダ、デイーゼルというあの大
會社に對する
融資が大
部分でございます。この大
會社は
終戰後非常に
業務を縮小いたしまして、非常に大きなマス・プロの能力を持
つておるにも拘らず、資材の
關係が主たる
關係非常な低位の
生産を續けております。併しこの
價格につきましては、昨年の七月、現實には九月にな
つたのでありますが、その時にはG・H・Qも相
當自動車の
價格について理解して呉れるようにな
つたのであります。當初基礎的な物資ということでなかなか高い
價格を認められませんでした。
從つて終戰後ずつと
赤字經營を續家てお
つたのであります。一時は行き詰まるかと思われたのでありますが、
自動車工業というものが
日本に殘されました最後の總合
工業というふうに、殘された最大の總合
工業というふうに我々としては考えておりまして、この大きな總合
工業をなんとか
維持して行きたいという大方の希望がございまして、
政府の方針も大體そういうことであ
つたと思うのであります。そこでこの三社を一社に縮小してしまうとかいう荒いことを
當時としては考えませんので、又これについては
アメリカの有力な
自動車會社が
日本へ進出して來るとい
つたような形とか、或いは
東洋にあります
アメリカの
自動車の
修繕を一手にこの三社へ持
つて來るというような話とか
いろいろ當時あ
つたのであります。その邊を狙いまして、明瞭なる
赤字融資をや
つたんであります。これが
自動車工業の
融資に對する非常に多くの
部分を占めておるのでありますが、昨年の九月に、今の
生産基準に合せた
價格を決めて頂きましたために、一應理論的には昨年の九月以降
赤字の問題はなく
なつたことにな
つております。現實には必ずしもそうな
つておりませんが……。それまでの
赤字金融が大
部分でございます。尚この外に若干小さな
自動車工業に對しても
融資をしております。
次に
自動車工業に次いて大きいのは
電氣通信機關係、これは御
承知の
東芝、
日本電氣、
沖電氣という例の
電氣通信機に對する
融資でございます。この中にも若干の
赤字融資があ
つたのであります。例えば
東芝の如きは一昨年に爭議をやりまして、その爭議直後相當大きな
融資をしたのであります。これは極く一
部分赤字融資的な
性格を持
つてお
つた。ところがこの九月その
生産を見て見ますと、四月以降
電力事情その他の好轉によりまして、
當時赤字であ
つたものを四月以降取り返しております。
復金の
赤字融資ということが巷間問題になりますが、この
赤字融資はどれくらいの
部分を占めておるかということは、今の
東芝の例を取
つて見ても御
説明しにくい點があるのであります。
赤字融資だと思
つて融資したのが或る一定の期間經ちますと、これは
インフレによることもありますが、今の
東芝の場合の如きは
生産の
増強によ
つて恢復してしま
つた。
從つて當初赤字融資だ
つたものが途中で
赤字融資でなくな
つておるということが出て來るのであります。そういう
融資がこの
通信機關係では非常に多いのであります。ですから私共は今ここで過去を振返
つて見ますと、
電氣通信機工業關係に出した
運轉資金は、大
部分が
増産及び
價格改訂のための
増加運轉資金であ
つたというふうに申上げてよろしいんじやないかと考えております。それに續きまして鑛山用、或いは
肥料用、
紡績用等の
産業機械が多くございますし、尚
輸出關係として自
轉車工場、ミシンとか、
工学機械とかおうものにも相當の
融資をいたしております。
次は
窯業でございますが、
窯業は殆んど問題になりません。これは
セメント關係の若干の
赤字融資を含めて
運轉資金が出ておるだけであります。その次は
化学工業であります。
化学工業は全體の十三%を占めております。この
中大部分が
肥料でございます。
肥料は全體の九%でございます。この
肥料は
設備資金が相當出ております。これは
昭和電工、
東洋高壓、
電氣化学、
日新化学とい
つたものが主なところでありますが、
戰災及び老朽化からの
復舊工事、
復舊のための
設備資金がこれの大
部分でございます。これは御
承知のように、非常にG・H・Qの要請が強くて、
終戰直後から取りかかりました。その後
物價の
改訂に伴いまして、
豫算がどんどん膨脹して行く。
昭和電工がその的確なものでありますが、ああいうことでも、この前たしか御
説明があ
つたと思うのでありますが、
經過を經まして、
只今設備資金が相當
厖大化して参
つております。この邊で、併し大體最後の
豫算も決まりまして、もう今後この
關係の
設備資金がそう伸びないように、私どもとしては考えておりますが、まだ併し若干の貸増しは
引續き起るものと考えております。
運轉資金は、一部
赤字融資がございますが、これは二つの時期に分かれますが、昨年の
價格改訂前の
赤字融資がございます。これは
財政の
繋ぎ的性格を持
つておるもので、この點については、
石炭の場合と同じようなことが言えると思います。ところが、昨年の十一月から始めました
赤字融資、これは
金額にしては僅かなものでございますが、これは御
承知のように、電力制限によりますところの
赤字でございます。この
赤字は、
財政的な措置は全く取られませんで、四月以降において起るべき
價格改訂の際に、電力制限のために起
つた赤字は、その
價格の中に織込むということを、放府當局及びG・H・Qにおいても了解されて、そういう約束の下に、それをまあ引當てとしてといいますか、そういう
融資でございますから、これは
財政の繋ぎという形ではございません。それが極く僅かございます。殘餘は、大
部分が
増加運轉資金でございます。
その次は電氣業とな
つております。これは電力
關係で、日發の
設備資金が大
部分でございます。日發の
設備資金は、戰爭中からの繼續工事であります。發電所の建設
資金、それから火力發電所の
復舊資金とい
つたようなものが大
部分でございます。
運轉資金は、配電
會社及び日發のも若干あります。これは、昨年の三月までに、一部
赤字融資として出されてたもので、これは四月の料金の
改訂の時に織込んで貰
つて、四月以降の收益で返せたのでございます。返せるだけの收益はでてお
つたのでありますが、四月以降の
設備資金の中からこれを引いて、貸したものですから、未
回收の儘
赤字融資として殘
つております。この額は大したものではございません。
從つて運轉資金は大した問題になる程の
金額ではございません。
その次はガスでありますが、これは殆んど出ておりません。
次の水
産業、これが非常に多いのでございます。水産は、全體に對する
割合は、農林水産は約七%に當
つております。この中、この水産に對する
融資の中、九〇%以上が
設備資金でございますが、この中約三〇%が捕鯨船に對する
設備資金、捕鯨船の建造及び改造
資金でございます。この捕鯨船は、御
承知のように、ああいう
事情で、南氷洋に出漁することになりまして、
厖大な
設備資金を要したわけでございます。
一般金融で到底賄なえない性質のものでございますから、
復金から
貸出しております。
運轉資金として、これは出しております。殘餘の約六〇%は、
一般漁船の建造
資金、この漁船の建造につきましては、
政府において、
終戰直後に立てました三十三萬七千トン計畫がございます。この計畫に對應いたしまして、大體に戰爭中に滅失いたしました船の代船建造という線に
沿つて、
融資をして参りました。相當の船ができたわけでございますが、併し三十三萬七千トン計畫には、まだ恐らく五十%も進んでおりませんが、段々最近のように、材料も逼迫して、單價も非常に上
つて参りました
事情から、この新らしい船の建造ということは、一應この邊で反省期に入
つたのじやないかというふうに、私どもとしては考えております。最近は若干
融資の差控えをいたしております。
水産の次は交通業でございます。交通業は、全體の約四%に當
つております。交通業の中、海運
關係が約八〇%を占めております。この
中大部分設備資金でございますが、これは戰爭中からの、いわゆる續行船の續行工事、それから小型運搬船の新造、補修、それから
終戰後に、G・H・Qから特に許可が出た客貨船の新造竝びに港灣施設、倉庫等の
設備資金でありまして、交通
關係の
復舊ということに主眼を置いて
融資されたものでございます。
次はその他でございますが、その他はパーセンテージからすれば、大したものではありませんが、この内非常に大きなものは、まあ
住宅營團とい
つた閉鎖機關
關係のようなものであります。これは、閉鎖機關になるまでに
復金が
融資したものでありまして、現在整理中のものであります。
以上で、大體
公團を除く
一般融資について、極く概略を申上げました。
公團融資は、昨年末で約百三十五億
融資しておりますが、この内譯は、主なものは、配炭
公團が四十五億、
肥料公團が二十六億、
價格調整が三十億、これは、全體で、三
公團で約七〇%を占めております。この
公團の
性格なり、
事業の
内容なりについては、御
承知のことと思いますから、省略いたします。この
公團の
資金につきましては、大體これは、最近先ず
價格の
改訂が今後
引續き起らないということであれば、もう飽和點といいますか、ピークにそろそろ達して來て、ぼつぼつ開店
状態に入るというように考えておりましたのであります。又
價格の
改訂が起
つたり、新設
公團の問題が起
つたりすると、又
公團の
融資もや
つて行かなければならんというような情勢にあります。尚この點におきましては、最近
資金計畫の面からいたしまして、
公團融資を
復金から離すということが考えられており、いろいろこの
金融委員會でも御論議されたことと思いますので、その點は省略いたします。
最後に中小
工業金融について一言觸れますが、
復金は、
設立當切から、我が國の經濟再建に占める中小
工業の地位ということに鑑みまして、中小
工業金融は、相當大きな目標として考えられてお
つたわけであります。併し何分にも、非常に
復金の窓口は僅かでございますし、持
つております事務陣容も非常に少い
状態でありますので、十分奈ことはとてもできていないと思うのでありますが、併し
一般に言われておりますように、全然これは看板だけで、大したことはや
つていないということも亦少し誤ま
つているように考えられるのであります。これは
ちよつと數字が古いのでありますが、十月末の
融資殘高で、
ちよつと比率を取
つて見ますと、一取引先百萬圓未滿のものが……。失禮しました。五百萬圓以下を中小
工業ということがいえるかどうか。これは特に問題でありますが、
一つの参考として、五百萬圓未滿の
融資額は、
一般融資額の約九%に當
つている。それから件數で見ると、五百萬圓未滿は、八二%に當
つております。このことは、
復金が、中小
工業金融はさつぱりやらないということに對しては、確かに
一つのお答えになることと思うのでありまして、最近の
物價の情勢から見ますと、五百萬圓未滿の
融資をいたしております企業體を我々の目で見ておりますといわゆる中小
工業という
性格の中に入るものは非常に多いと思うのでありますが、五百萬で切ることがいろいろ問題がありますが、とにかく少し甘く言いますれば、
金額にして九%、件數にして八二%とい
つたものを出しているということであります。相當
金庫としては、中小企業分野について力をいたして來たということが言えるのではないかと考えております。
以上非常に駈足で申上げましたのでありますが、結論的に申上げますと、結局
石炭について申上げましたことが全體の
産業について當てはまるのでありますが、直接にこの
生産の
増加ということに作用する
設備資金というもの、及びこれに伴なう
運轉資金というものは、案外全體の
融資額の中に占める
割合は少いので、先程からいろいろ申上げておりますように、
産業を
維持して行くために必要な、補修
資金のようなもの、それから
財政の繋ぎとい
つた考えを持
つた、
赤字融資、
赤字資金とい
つたもの、又
價格改訂の整理により生ずる一時的な不足、これ又
赤字資金ということがいえると思いますがそれから一番多いのは
物價の
上昇に伴う
増加運轉資金、こういう方面に振向けられておる
部分が非常に多いということでございまして、
復金が相當大きな
融資をしておるのに案外
生産が殖えないという御
批判ならば、それはその邊で檢討されなければならないものがあるように考えるのであります。併し
復金としては先程
石炭について申上げましたように、いろいろ外の
事情が好轉して参りました時に相當顯著な
増産ができるように、又幸いにして外資が導入されまして
日本の
産業に非常な刺戟が與えられました時に、
日本の
産業がその最後の生命力さえも失
つておるような
状態に持
つて行かないために、或いはもつと積極的な
増産ができるための基盤を作るために
融資の
役割を果して來たというふうに、私共としては考えておるわけであります。
石炭について屡々申上げましたように、そういう
状態が出て來た時に初めて
復金の今までや
つて來た
融資が生きて來る、それまでは
割合に目立たない
金融にな
つておるかに考えられるわけであります。
以上今までや
つて参りました
融資の分析を極く概略試みたわけでありますが、尚これと
インフレーシヨンとの
關係、或は今後の
復金の果して行かなければならない
役割、又今後の
産業金融の見通しとかい
つたようなものにつきましては、私の
つたない小論で若干觸れております。まあ、今日はそれまで参らなくても良いと思いますが又い
ずれお讀み頂きまして御批制を頂ければ私としては非常に幸甚と存じます。