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政府委員(森下政一君) 前内閣以來、現内閣に至りますまでの間に國会において
只今栗山さんなり油井さんからお話がありましたように、いわゆる闇利得を
捕捉して最も担税力が今日豊富にあると思われるものに税の
負担をなさしめるということが妥当である。それに対しまして
政府が進まなければならんということを賎しく論議されたことは御
承知の
通りであります。かかる機会に私見を申上げることは如何かと思いまするが、この点につきましては私自身も同感でありまして、曾ては栗栖大藏大臣であつたと思いまするが、國会の
会議においてそのことを大臣に私は迫つたことがあるのであります。ところで端的に申しますると、これを迫りながら私個人顧みて見ましても、然らばこれを
捕捉するのにどういう新らしい秘を設けることによ
つて、完全に闇利得者を
捕捉することができるかということに
なつて参りますると、実は残念ながら今日まで私自身がこれに対して適切なりと
考えられる新税を考案し得るに至
つておりません。又これに回答を與えるだけの名案を得ていないのであります。前内閣におきましても、或いは現内閣におきましても同様であろうと私は思うのでありまするが、若し適切なるこの階層を
捕捉することのできる新税を創設し得るならば、何も苦しんで他のものによる必要はないので、当然これに走ると思うのでありまするが、結局適切なる新税というものが思い付かんということに悩みがあるので、結局闇利得者を
捕捉する唯一の道は、税の種類の問題でなくして税務機構の問題である。ここに解答を求めて來ているというのが前内閣以來の一貫しておる大当局の
考え方と思うのであります。そこにおいて税務機構を拡充強化する、拡充強化することによ
つて、今日まで
捕捉されていない闇利得者を
捕捉しよう、こういう努力を傾倒しよう、これによ
つて経済力に恵まれていると思われるところの、而も今日租税の
負担を逃れているところの階層を捉えよう、こういう
考えに走
つていると思うのであります。この
考え方が妥当であるか否かということにつきましては、これは随分議論の余地がある問題でありまして、私自身又個人的に
考えて見ましても、これが必ずしもこの闇利得者を
捕捉するというのに極めて適切なる最高の手段、
方法なりとは
考えないのでありまするが、よんどころなくかような方向に走
つておるのが実体である、こう私は
考えるのであります。若し端的に申しますならば、國会においてこの闇利得を
捕捉するために、かくのごとき新税を創設することがいいというふうな名案があ
つて、國会においてこれを示されるならば、大藏省は進んでさような新税を採用すべきじやないかとさえ私は思うのであります。御説のように
取引高秘というものは、大藏大臣も何かの機会に言つたと思うのでありまするが、良税なりや悪税なりやの租税理論に照らしまして、その判断を求めるということになれば、決してこれは私は良税なりと言うことはできんと思うのであります。むしろそのいずれのカテゴリーに入るかといわれるならば、これも端的に言えばむしろ悪税に入るということの方が適切じやないかとさえ私は思うのであります。併しながら一方において
租税負担に限度が來ておると思われますところの
國民の
負担を、殊に大衆勤労階層の
負担を
軽減するということが不可欠な今日の要請であみとするならば、
所得税の
軽減ということはどうしても断行しなければならない、これによ
つて生じますところの國家
財政上の
税收の減少というものを何かによ
つて補填するにあらざれば、今日の國家
財政を切り盛りすることができないと同時に、殊に赤字のない收支のバランスの取れた
財政というものを具現して行くためには、何らかの
方法によ
つて收入の途を講じなければならんというので思い付かれたのがこの
取引高税であります。而もこの
取引高税の及ぼす影響を成るべく少くすることのためには、
税率を極度に低いものにしなければならん、極度に低くすると同時に、成るべく廣い
範囲に亘
つて各
取引に
課税をするということによ
つて國民がこれを平等に甘受することができる。又
負担を廣い
範囲に行き渡らせることができるというふうな
考え方から、
只今提案しておりますようなことに相成りましたので、従いまして油井さんの
只今のお説のように、四十項目に亘るところの
課税対象である
営業の種類を更に少くしたらどうかというふうなお話が出したが、一面からの観測としては妥当なお
考えと思いますけれども、
只今申しますような趣旨から申しますと、これをこのままに置いておく方がいいじやないかと
考えられるわけであります。誠に力説の
通りで、今日の
國民的な要請としては行政整理を断行して、不必要な官吏の多くあらざらんことを希う、むしろ現任のものを更に減らすというのが
國民的な要請である際に、國税査察官のごときものを創設することは、その点から申しますと甚だしく逆行する誇りを免れないと思うのでありますが、何分にも先刻申しますように、今日の大藏当局としての闇利得者追及というのが、現の種類の問題に解決を求めずして、税務機構の拡充強化によ
つてこれを
捕捉しようというところに解決を見出そうとしておるということが今日提案しておるような、又今日構想を持
つておるような結論になりておる次第であります。さようにどうぞ御了承をお願いしたいと思います。