○矢野酉雄君
厚生大臣は第一囘の
國會から非常にこの問題について苦心をして御盡力願
つておりますが、私はこの第三囘の
國會に當
つて我が
特別委員會がまだこれは
委員會の
決議を得ておりませんので、矢野
委員が全力を傾倒したいと思
つておることを申添えて
大臣の溢れるような友情を以てこれに善處して頂きたい。それは今までは私
たちは
特別委員會においてもそうでしたが、
引揚者なるが故にという、その名を出すことを、いろいろな
關係當局、
關係當局というような差障りのあるかのごときいろいろな條件に置かれたために、實はそれを差控えるような態度で、
政府に對しても或いはGHQの當局に對しても接して參
つたのであります。併し私は眞に民主日本を建設するためには、國内に
引揚者、復員者と、殘留者との間に絶對に相剋があ
つてはならない、又戰爭犠牲の負擔が餘りにも大きい
現状の差のままであ
つてはならないという立場から、私は是非
引揚者なるが故に、
政府も
國民も亦冀くば
關係當局も、十分にこれを救濟し、
更生せしめるような施策を採
つて行くということを、根本的態度にして私は進んで行きたいと思うのであります。この點は
政府も是非ここで……長たらしい言葉は全部割愛いたしますので、何故矢野
委員がこれを主張するかということを御賢察下さいまして、この根本的態度によ
つて是非好意ある
一つ態度を取
つて頂きたい。
第二には、この第二囘
國會において是非解決すべき問題は、これは、
大臣その他關係各位の御盡力によりまして段々いわゆる軍人軍屬についてもそれ相當の國家としての處置は拂われつつありまするけれども、軍人軍屬にあらざる普通の一般庶民が強制勞働に今尚黙々として服しておる。而もその大部分というものは恐らく實情を調べたならば、終戰直前私滿洲にいて知
つておりますが、あの終戰の御詔勅を戴いた十五日の午後、十六日、十七日、十八日まで召集令状を受けて滿洲においては應召した。この嚴然たる事實を私は知
つておるのであります。それからそういうようにして、事實應召されておる者が相當あると思う。でなくても技術その他經驗等を買われてそれぞれの處に強制徴用を今されておるのでありますから、實質的には私はこれは軍人軍屬と同じような内容の下に、今何十萬の諸君が殘されておると思いますから、軍人軍屬にあらざるところの、この我らの兄弟について
政府は強力なる、その遺族に對しての擁護の施策を拂
つて頂きたい。
それから一月、二月、三月のブランクについてのことはすでに全
委員から御
質問を申上げたと思いますので、これは取上げませんが、ただ冀わくば僅少なるいわゆる
生業資金を以て救濟するというような消極的な今までの態度でなく、昨日、今日と讀賣新聞に發表せられてありますところの、あの復金融資の嚴然たるこの事實を見ました時、六百萬、その家族、関係者五人といたしましても三千萬の、この引揚、復員の關係者の救済、或いは自立援助のために
政府はただ一月に五千萬圓、二月に五千萬圓、三月に五千萬というような、そんな僅少なる金額を以てこれを救濟、援助するというような、その態度を根本的に一擲せられまして、もつともつと積極的にこれを大いに救濟するというような、構想を私は
厚生大臣持
つて頂きたい。(「そうそう」と呼ぶ者あり)殊に昭和二十三年度におけるところの庶民金庫に對する金融と、更には事業資金として大いに復金の活用をして少くとも二十億、二十五億ぐらいのこの事業資金を以て、この
引揚者諸君が堂々と
一つの事業として民主建設のために奮鬪する。そうして、いわゆる殘留者と共に何らそこに溝を持たずして一體とな
つて活動するというような、
國民的一大雰圍氣を
厚生大臣が中心とな
つて作
つて頂きたいということを
要望して止みません。(拍手)
それから第三には、
厚生大臣は御存じないかも知れませんが、農林
大臣と、いずれ農林
大臣の出席を私は求めますが、昨年の八月六日佐世保に上陸いたしました
引揚者約一千五百人の諸君、その中に石井寛一君、これは大使館の一等書記官であり、齊藤征雄君は瀋陽における日僑俘連絡所の副主任をしてお
つた人でありますが、この二人の者が責任を以て努力して、いわゆる強制勞働に服している。徴用を受けている日本人の遺族が一錢も日本
政府からは何らの補助援護を受けていない。だから中國
政府と十二分の連絡を取
つて現金の送金ができないために大豆を六十トンだけ、その
引揚者の諸君の食糧と並びにその徴用を受けている遺族の見舞のために、これを六十トン正規の手續を以て佐世保港に荷揚をしておるのであります。そうして、それは十月の中旬に農林省の倉庫に入
つておる。その中、多分五トンぐらいは佐世保において消費したかも知れないが、まだ五十五トンというものが現在農林省の倉庫に入
つておる筈であります。この国家の意思によ
つて決定しました休戰のために俄然動亂の中に捲き込まれて、而も三年に垂んとするこの際、今尚懐しい祖國に歸ることができない、その骨肉の兄弟、妻子とも會えないところの、この諸君が營々孜々として働いておる、それに國家はその遺族にはびた一錢でも、米
一つでも積極的にそういう軍人軍屬にあらざる者に對しては何らの施策をや
つていない。而も却
つてそれらの人に對して中國の諸君が友情を以て大豆を輸送することを許可されておる。その大豆さえもこれを尚農林省の倉庫に入れておるというがごときことをや
つておる。この
更生の大事な事業を所管していらつしやる
厚生大臣としても、又この問題について農林當局においても私は何か手を打
つて頂く必要があろうと思うのであります。私はこの問題については、過般の緊急
質問の時、
岡元義人議員に是非
質問をして頂く豫定でございましたけれども、いろいろな國際情勢というような立場も考慮いたしまして、その本
會議における緊急
質問の内容としては差控えて貰うことにした次第であります。この點は農林當局に私は確實なる
質問をしますけれども、
厚生大臣としてもそういうような事實があることを御賢察頂いて、そうしてやはり
大臣から善處方を
一つ御援助願うならばいい結果が生じるだろうと思うのであります。以上私の所見と
質問を終る次第であります。