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木下源吾君 それでは
北海道の
各地の班とし御
報告申上げたいと存じます。
只今必要あれ
ば別でありますが、極く簡単に申上げたいと思います。
北海道各地の班は、院議では
期間を切
つてありましたけれども、実際としては七月の十日に
東京を出発いたしまして、九月の十五日ですか、それまでやつたわけであります。そこで先ず七月の十一日に、私と川崎氏と
函館を振出しに各
市町村の観察をしたのであります。七月二十二日に
木内議員と落合いまして、これ又正式な
視察日程を終えて、その後又必要ありと考えまして、先程申上げた
期間まで
北海道各地を
視察いたしました。そこで
北海道の
市町村約七十四町村を
調査したわけであります。それは何故そういう必要を感じたかといえば、実は
北海道を
視察いたしましたところ、無
縁故住宅の
建設が非常に遅れておる。これは
國会の
予算の成立のためで、現実には五月から
引揚げを開始しているにも拘わらず、
予算が七月に
なつたという
関係と、もう
一つは
政府がこの
住宅建設の費用を当初
予算に予定してお
つた額面より半分以下に
減つた、こういう
実情のために
末端の
市町村においては非常に計画が狂
つておるようなわけで、
從つて住宅の
建設という面においては、これはどうしても
末端の
市町村の特別な協力なくしては実際の
住宅問題を解決することができない、こういう
実情を見たのであります。そこで各市村の
理事者並びに
関係の
人々に、この
予算の遅れた事情並びに
予算の減額せられた
実情をよく話して、
住宅の緩和のためにできるだけ努力して貰うことを懇請して歩いたようなわけであります。
そこで
調査の結果といたしましては、第一番に
北海道における
引揚者の
住宅の問題が一番の問題であります。二十三年度の無
縁故住宅の
建設の遅れたということは、
只今申上げましたが、更に無
縁故にあらざるいわゆる
有縁敢故と言いますか、これらの
引揚者の
住宅は殆んど大部分が、すでに
引揚げた人々の住居というものは、まあ一口にいえば、ひどいのは六疊間に十人もそれ以上もおるということやら、或いは馬小屋の一部を使用しておるというようなこと、そういうような
実情で、
住宅には非常に各
市町村とも困
つておる。このことが先ず第一番に取上げられなければならない、かように見て参
つたのであります。そこでこの点については
末端においてはいろいろ工夫をしておりますけれども、一番隘路にな
つているのが建築の制限、折角いろいいろ工夫しますけれども、資材等の割当を貰うということの困難、これが一番困難な事情にな
つていると思うのであります。先ず私の見た、又皆の要望では、
引揚者に対しては一般の
住宅の建築の枠ではなく、特別に
引揚者の
住宅建設ということを
法律の上においてこれを優先的に見て貰いたいということであります。無
縁故住宅は
只今申上げるように、
政府が建ててやるのでありますけれども、而もその
予算が非常に少くて、そうして実際においては無
縁故と言い、有
縁故と言いましても
北海道の場合は悉くが住居を持たないもの、たとえ
縁故があ
つても
住宅を、
帰つて來ものが入る余裕がないものが大部分を占めているということであります。無
縁故、有
縁故の區別が、殆んど私共には、
住宅に関す限りは、こういう區別があ
つても却て
引揚者が困るのではないか、そういうように考えられるのであります。実際の
実情を見ますというと、特に無
縁故というものが
予算の
関係で
住宅を制限せられているという今日の場合においては、殊更に
引揚者に対して別な、つまり建築の方法を
政府で講じてやらなければならん、かように考えております。この
住宅関係ですが、
引揚者の
住宅に対しては自力で建ち得るものは、今申上げたように、資材等の斡旋をすべし、又年賦償還ででき得るという見透しの付くまでは、これ又そういう方法を講ずる必要がある。どうしても
政府が建ててやらなければならんという面においては、
只今の無
縁故住宅のような方法で建ててやるというやうなことが取られなければならないと、かように考えております。そこでこれらの問題はやはり急速に解決しなければ、
北海道の場合
引揚者が非常に困るということであります。更に
住宅を
政府が
市町村に委託をして、そうして建築をしているのでありますが、この建築の場合において、敷地ということに対する考慮が
一つもなされておらないということであります。そのために
市町村においては、
市町村自身において、何とか賄い得る土地があれ
ば別といたしまして、そうでない限りにおいては
引揚者の生産点と、つまり今で言えば生活する場所と住居というものとの関連、そういう考慮が
一つも拂われない。近所には何も仕事がないのに一里も以上に離れたところに
引揚住宅を建てている。
引揚者が参りましても明日から仕事をしなければ生活をして行けないにも拘わらず、そういう仕事という面の考慮がないために非常に困難をしているような面もある。でこれは
政府が敷地ということに対しての考慮を怠
つているということだと考えられるのであります。この点などは至急に改善せられなければならない。かように考えている次第であります。尚この
住宅の
建設でありますが、この
建設に対しては、でき得るだけ
引揚者を利用するとか、そういう方法で
政府の支出する金を余すところなく
引揚者の
住宅に使われるように
一つ方法を講じて貰いたい。というのは
市町村にはいろいろの制度があります。請負に出した場合においては、やはり請負師はその仕事をするについての税金というものも考慮しなければなりません。又請負師それ自体の利益も見るということになるのであります。そうなりますというと、我々の計算では凡そ二割乃至三割というものが、この
予算の中から創られるということを我々は見て來ておるのであります。これらについては何とか
一つ工夫して、一定の規格を示して、例えば木工所なら一定の規格で木材を挽いて、それには何も専門の技術がなくても、
引揚者の手で建てられるように工夫せられるならば非常に結構だと思います。請負の場合でも流尻の溝
一つ掘るにも今日では何百円も掛かります。それを
引揚者に渡せば、それらは悉く皆自分でやり得ると我々は考えております。
政府は本当に窮屈な
予算を出すのであるから、これは本当に皆
引揚者の
住宅にそのまま用いられるような方法を
一つ考慮しなければいかん。こういうふうに見て参つのであります。
更にその次には、衣料その他の配給のことであります。これは
引揚者では到底買得ない程高値なものであります。曾ての商工省
関係の配給品というものは、具体的に言えば毛布一枚千何百円、蚊帳
一つが二千五百円、こういうことでは
引揚者は到底それを入手することができないのであ
つて、これらについては何とか
一つ、折角
引揚者にこれをやろうとするならば、價格を特別に安くするということが困難であるならば、別途の方法で
引揚者が受取れるような途を講じて貰わなければならん。
引揚者は欲しいのは欲しいのだけれども金がない。そのために金のあるものにこれを譲らなければならんということもある、又他面においては
引揚者がなかなかこれを引取ることができないため配給店も非常に困
つておる。一方では沢山の現金を寝かして品物を持
つておらなければならんということで非常に困
つておる。そのために
引揚者と既存の業者達の間に感情上の問題もあり、民生
委員諸君もこういうことでは困るという苦情もあります。さればと言
つて、そういう配給の面倒を見てやらなくてもいいかというと、それは違うのであります。特に
北海道は氣候の
関係等もありますから、そういうことに十分留意して、配給品は
一つ十分にや
つて頂きたい。こういうふうに見て参
つたのであります。
次は生業問題でありますが、この第一番に上陸地においてで、き得るならば、直ぐ
希望に應ずる生業に就かれるような行き方を何とか採らなければいかん。上陸地で割当てられて、お前はどこへ行け、その場合には大体海か山かぐらいの程度で區別して、
希望によ
つてやるようでありますが、上陸地の
援護局で、どこそこへ行げけもうお前の
希望は満たされるのだというように、こう話をされて、実際に行
つて見るというと、それは何らそういうことが何もできておらないというので、例えて言うならば、
函館から根室の果まで行
つて、又、引返して再び
函館に戻
つて来ておるというような実際を我々は実際に見て來ておるのであります。これらについてはもつと計画的に生業に就き得るようなことをや
つて貰はなければならない。殊に農業を
希望するものに対しては、これはもう折角日本の食糧事情等から、本人達の自発的な
希望で、どんなことがあ
つても、自分の食うだけのものは先ず作らなければならないというような
希望で、農業を
希望して参るけれどもが、いざ行
つて見るというと、土地はないし、土地が仮にあ
つても、殆んどバラス原、或いは酸性土壌とか、濕地だとかいうようなことで問題にならない。こういうことで非常に皆失望しております。
北海道の開拓のごときはこういう機会やこそ、現在残
つておるような土地が、
政府の考えておるような、つまり食糧増産その他の面に、この機会に利用されなければならないと考えておりますが、これは甚だ不十分であります。
政府の
予算において、入植しておる者もあります。これは私が申上げるまでもなく、前年度來の待機中の
人々であ
つて、樺太
引揚者に対しては、この恩典はもう殆んど皆無だと言
つても差支えありません。而も樺太から來ておる農業
希望者は、樺太における寒地農業の本当の經験者でありまして、これを早くこの人達の望みを達してやらんことには、折角こういう
希望を持
つて来ておるにも拘わらず、一時収容的な所にお
つて、そうしていわゆる日傭いとか、或いは闇屋とかいうような、そういろ方向に入
つてしまいますというと、再びこの農業等の困難な、ことに入ろうという眞面目な生業ができなくなるという傾向が非常に大きいのでありますから、こういう点は
一つ十分に
政府が考えて、できるならば計画的にそういうことが順調に進むように、
一つや
つて貰わなければならない、こういうように見て参
つておるのであります。