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1948-06-07 第2回国会 参議院 鉱工業委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月七日(月曜日)   —————————————   本日の会議に付した事件特許法の一部を改正する法律案(内  閣提出)   —————————————    午後一時三十三分開会
  2. 稻垣平太郎

    委員長稻垣平太郎君) それではこれより委員会を開会いたします。前回委員会において、特許法改正法案要網の御説明特許局長からされておつたのでありますが、途中までの御説明であつたようでありますから、その続きの御説明を先ず御願いいたしたいと存じます。
  3. 久保敬二郎

    政府委員久保敬二郎君) お手許ガリ版刷りの一枚の紙がございますが、前回これで御説明申上げましたが、今度の特許法改正要網を大体整理いたしますと、この五つになるわけでございます。  第一が軍事上の秘密特許とか、そういうような制度を廃しましたこと。第二が大審院がなくなりまして、その代りに東京高等裁判所へ訴が出せるということでございます。  本日は第三の点から御説明を申上げる次第でございます。第三の要旨は、特許法の中に、いろいろ「判決」「確定」というような文字があるのでございますが、それを削ろうというものでございます。特許法におきまするところの、抗告審判審決行政処分としてそれ自体確定するのがそれの理由でございます。從來抗告審判審決行政処分と考えられておつたのでございますが、大審院に対しまする関係は、特許法審判下級審という立場にありまして、大審院は自判できる建前であつたのでございまして、判決によりまして実体的の内容が決められる場合がしばしばあつたのでございます。今回の改正におきましては、前回説明申上げましたように、新憲法の精神に基きまして、特許法抗告審判東京高等裁判所との間に上不審の関係をなくしましたことと、特許事件特殊性に基きまして、東京高等裁判所では抗告審判審決をそのまま是認するか、或いはこれを取消すか、そのいずれかを出でないことになりまして、裁判所判決審決内容と実体的に異なる内容を新たに加えることができなくなつたのでございます。結局特許局審決が当然だと考えられます場合は、そのまま是認されますし、特許局審決が誤つておると判断されましたときは取消されてしまいまして、裁判所みずからがどういう工合にしたらよいという判決を下さないわけでございます。従いまして、実体的なことは常に審決確定によりまして確定するものとなりますので、特許局といたしましては、判決内容を問題にする必要がなく、常に審決確定のみを押えておればよろしいということになる次第でございます。そういうわけで「判決」という文字を削つた次第でございます。その削りました條文は、第三のところに掲げてございますが、印刷物でお配りしました法律案参照條文というのがございますが、この條文で御覧頂きますと大体お分り願えるものと思います。この参照條文の第一ページの一番最初でございますが、「第十一條特許カ特許受クルノ権利承継人ニサル者ハ特許受クルノ権利冒認シタル者受ケタルモノナルニ因リ其特許無効トスル審決確定シハ判決アルタル場合ニ於テ」とございますが、これを「審決確定シタル場合」として、右側に傍線が引張つてありますところだけ今度の法律案で削除しておるのでございますが、「審決確定シタル場合に於テ」と言いまして、特に判決確定する必要がないという意味で、それを削除したものでございます。第六十二條は、第六ページにございますが、第六十二條も全く同趣旨のものでございます。以下第七十八條、第百十七條、第百十八條の第二項、第百十九條の第二項、すべてその趣旨でございます。  次に、第四に移りたいと存じますが、最近の経済事情に対應するために、特許料並び登録料を五倍に引上げまして、又民事訴訟法改正に傚いまして、過料を二倍に引上げる点でございます。この規定は第一回國会で、現行のようにすでに改正せられたものでありまするが、その後経済事勢を考慮いたしまして、或る程度の増額を行なつて財政收入増加を図る必要が生じましたので計画いたしましたものでございます。料金に引下げに際しましては、他の制度との均衡を考慮しましたことは勿論でありますが、一方発明奨励という大切な見地から見まして、特許権者の保護を考え合せました結果、現在の五倍に一律に引上げることといたしたのでございます。特許料及び登録料引上げによりまする増收は毎年大体二千万円程度と見込んでおる次第でございます。これにつきましてはこの條文は六十五條全部含まれておるものでございます。  次に第四の中に掲げてございます百三十三條の二、百三十四條の二でございますが、これはすべて罰則でございます。この中で改正は科料の最高限度を他の罰則法規との均衡を保つために千円に引上げたものでございます。すべて五百円になつておりましたものを千円に引上げたのでございます。  第五は、その後の外の法律等の編成に伴いまして條文等又は字句の軽微な整理をいたしたことでございます。この点は極く軽微なものでございまして、一貫した思想を持つておるわけじやございませんので、各條文について御説明申上げたいと存じます。  この第六條の第一項の点でございますが、これは今まで「道府縣」とありましたものを「都道府縣」に改めましたようなもので極めて当然のものと存じます。それから次の第三十條でございますが、これは「特許ニ関シ證明特許證ノ複本、書類ノ謄本賢ハ圖面ノ調整ヲ求メ」とございますが、これは從來謄本だけに限られておつたものでございますけれども、抄本もあつた方が便利であろうということで新たに抄本を入れたものでございます。それから次が新らしく入りました三十一條でございます。古い三十一條は「軍事秘密ヲ要スル発明」に関するものでございまして、これは全文削除いたした次第でございます。新らしく設けました三十一條は、出願請求その他の手続手数料に関する規定であります。特許法又は特許法に基いて発しまする政令省令等によりまして出願請求その他の手続に関する手数料につきましては、從來特許法中に何らの規定もございませんで、ただそれぞれ「特許意匠商標及利用新案ニ関スル手数料の件」という勅令と、それから「特許法施行規則」、「実用新案法施行規則」、「意匠法施行規則及商標法施行規則による請求申請及届出に関する手数料の件」という、これは大正十年の農商務省令の第三十七号で出ておるのでございますが、そういう勅令省令規定しておつたものでございますが、これは法律規定すべき事項でありまするので、今回新たにここに規定いたしたものでございます。尚個々の手数料の問題は額も大したものでございませんし、而も相当多岐に亘りまして精細な規定を必要といたしますので、これを政令に委任することにした次第でございます。  次は八十九條、これは八十九條と九十條を一括して御説明申上げますが、この二つの規定從來の第八十九條と第九十條の規定を整理いたしまして審判等決定方法を改めたものであります。從來は第八十九條の第一項で審判の構成と審判等決定方法規定いたし、第二項、第三項でその職務規定いたしております。又第九十條において、審判官指定規定をしまして、ちよつと規定の仕方が前後いたしまして且つ混乱しておる嫌いがありますので、今回審判官審判長指定規定を一括いたしまして、先ず第八十九條に纒めまして、その後に第九十條として審判会議制の設定並びに審判長職務規定纒めたものでございます。從來審判長審判官中の上席者がなるものと規定しておつたのでありますが、これを改正いたしますのは、一昨年四月に官吏の官等の制度が廃止されましたので、誰が上席者であるか明確でない場合がしばしば起りますので、審判長特許局長官がこれを指定するという工合に改めたものであります。次の第九十一條の第六号は、これは「判事」という言葉一般に「裁判官」という工合になつておりますので、それに従つたものでございます。次の第百條の第二項でありまするが、「證據調ハ所要事務取扱フベキ地區裁判所其ノ他區裁判所事務行フ官廳」というのがこのたび区裁判所というものがなくなりまして地方裁判所又は簡易裁判所になりました関係上、こういう言葉を使いますし、又「其ノ他區裁判所事務行フ官廳」というものは、簡易裁判所が非常に何多くできましたので、特にそういうことを規定する必要がなくなりましたので、これを省いていまつた次第でございます。次は第百十九條でございます。第百十九條ではこの出訴という問題を全部省きましたのと、それから勅令というものを政令に直しました單なる字句の問題でございます。次が第百二十條でございますが、これも「出訴」という文字がなくなりまして、この出訴に関するものはすべて裁判所の方で決定せられればよいことでありまして、特許法で特に規定する必要がなくなりましたので省いたものでございます。第百二十一條の第一項の第三号の「前號ノ抗告審判審決對スル出訴」というものでございますが、これも参審のことは特に特許法規定する必要がないので省いた次第でございます。第百二十二條の第三項も全く同一趣旨でございます。第百二十三條も「三訴」を省いただけのものであります。第百二十四條も全くそれと同趣旨のものであります。  大体解許法内容は実体に当りまするところは第一から第五で盡きるわけでありますが、次に実用新案法意匠法並びに商標法についてもこの特許趣旨と全く同一趣旨改正を加えましたもので、大部分特許法を引用しております部分特許法が変りましたために自然に変つて來るというものでございます。  最後に、この法律経過規定附則といたしまして設けたのでございますが、附則の第一項は、公布の日からこの法律施行する。それから出願公告というものが今後全部されることになりますが、今まで出願公告をしないで特許になつておるものもございますので、そのものの存続期間計算方法を第二項に規定いたしたのであります。又第三項におきましては、特許料を納める期限を、特許権者の特に不利にならないように規定したものでございます。第四項も過料に対する処分で、この法律施行前にした行爲に対しては、特に新らしい過料を科さないというものでございます。第五項は「裁判所法施行法規定に基く特許法変更適用に関する政令」でございますが、これは甫許法の中で訴訟関係をはつきり規定いたしましたので、これは今後必要がなくなりますので、廃止するというものでございます。尚この法律施行前に「裁判所法施行法規定に基く特許法変更適用に関する政令」というものに基きまして訴を出しておりますものについては、そのまま効力があるということを第六項に規定したものでございます。  以上を以ちまして特許法等の一部を改正する法律案の逐條につきまして御説明を申上げた次第であります。
  4. 稻垣平太郎

    委員長稻垣平太郎君) 只今久保長官から今回の特許法等の一部を改正する法律案につきまして御説明に頂いたのでありますが、これより質疑に移りたいと存じます。
  5. 小林英三

    小林英三君 特許法の細かい質問をいたしたいと思うのでありますが、その前に大体現在の特許情勢出願件数は一ケ年どの位あるか。それから審査官及び審判官の総数はどの位、それから審査官は大体一ケ年間にどの位の審査をされるか。それから審査官というものの採用の方法、どういうことによつと採用するか。簡單でよろしうございますから……。今の出願件数とかそういうものはこの次でも結構でございます。
  6. 久保敬二郎

    政府委員久保敬二郎君) これは今表ができておりますので、こういうものは一應表にいたしましてお手許に差上げたいと思います。
  7. 小林英三

    小林英三君 そういうものは後でも結構です。
  8. 久保敬二郎

    政府委員久保敬二郎君) それでは審査官の数とか、そういうようなものも大体表ができておりますから、今のお答え申上げますことは全部表にいたしまして、お届けいたすことにいたします。
  9. 小林英三

    小林英三君 尚事件処理の促進に対しまする問題につきまして、お伺いいたしたいと思います。現在の出願や或いは審判処理状況を聞いておりまするというと、非常に日数を要しておるということが民間で言われておるのであります。少くとも出願公告決定というものは大体半年、甚だしいものになりますと三年も四年も掛かつておる。こんな状態では、実際におきまして現在のように非常に変化の甚だしい社会情勢の下におきましては、折角の特許制度というものがありましても、余りに審判が遅れたり、或いは審査が遅れたりいたしまして、とんでもないときにこれが許可になつて來るということでありますと、発明の意欲というものを減殺するのではないかというように考えるのでありますが、これをできるだけ早く、こういう問題を、殊に文化國家といたしまして、それぞれの発明が沢山出て來ることが望ましいのでありますが、審査とか審判というものが手つ取り早く片付くようにという問題について、御意見を伺いたいと思います。
  10. 久保敬二郎

    政府委員久保敬二郎君) 特許局に対しまする出願審査が非常に遅延いたしておりますことは認に申訳ない次第でございます。これにつきましては発明奨励というようないろいろな手段を講じまするよりも、この審査審判を迅速に処理するということが、発明を奨励いたしまする眼目であると考えておりまするので、特許局といたしましてはその全力を審査審判処理に注がなければならんと常々考えておるのでございますが、大体審査官の現在におきまする数というものが非常に少くございまして、この点はいろいろの原因もあることと存じまするが、戰争中相当特許権が軽視せられたというような関係で、エキスパートの方が非常になくなつてしまいまして、新らしい方が非常に多いというようなことも一つ原因から思つております。全体といたしましては、堪能なる審査官の割合が非常に少くなりましたことと、それから審査官の全体の数が、当方の希望いたします程度に認められませんので、非常に少い人数でやつておるという点にあるのでございます。外國の各特許局審査状況なども調べて見ましたのでございますが、大体日本特許局審査官は、特許出願等につきまして一年に約二百件を処理するような工合にやつておるのでございますが、これは米、英、独等審査官に比較いたしまして、彼の国では大体一人が一年に百件を審査しておる状況でございまして、日本審査官はその二倍の能率を挙げることをされておるようなわけでございます。この点は審査官としても非常に過重な労力を強いられておりまるすと同所に、出願人の方にも勢い不備な点が及ぶというようなことになりまして、或い程度御迷惑をお掛けしておるような次第であるのでございますが、何分日本財政上これは止むを得ないかと考えておる次第でございます。尚政府の方針といたしまして、職員新規増加というものが殆んど認められません関係上、特許局といたしましても審査官審判官の増員を極力主張いたしておりまするのでございますが、遺憾ながら主張の何分の一を通して貰つておるような次第でございますので、今暫く審査審判につきましては一般方々に御迷惑を掛けざるを得ないかと、甚だ遺憾に存じておる次第でございます。一應本年におきましては、大体出願の停滯しておりまするものは、三年間を以て片付けるという計画を立てまして、それで次第に順序を追つて審査官を殖やして行きたいという計画をいたしております。何分にも審査と申しますものは、普通の人ではなかなかやれませんので、ちよつと一人前らしくなりますまでに少くとも五年を要しますので、現在仮にそういう人が得られるといたしましても、新らしく特許局職員を採用することができるといたしましても、これを養成する職員が又非常に少うございまして、直ちに養成ができないというような情勢でございますので、順序逐つて相当の時間を掛けて、特許局内容を充実として行くということはこれは止むを得ないものと考えておるような次第でございます。
  11. 小林英三

    小林英三君 その次にお伺いいたしたいと思います。審判以外の処分に対する訴訟の問題であります。例えば特許権が十五年ある。これが期間が切れた。こういう場合に非常に有名な而も有力な特許でありまして、これを期間延長を願いたい。こういうような期間延長の願いに対しまする、つまり拒否決定を受けた特許局に対する、或いは出願登録手続上の違法は処分に対しまして、裁判所に対して訴ができるというような問題についてお伺いしたいと思うのですが、憲法施行に伴いまして、民事訴訟法應急的措置に関しまする法律に対しまして、つまり民事訴訟法應急措置法規定によりまして、特許標準局、つまり特許局長官の誤まつた違法な行政処分はすべて裁判所に訴えることができるというように考えられますが、先程私が申上げましたような特許権存続期間延長願ということに対して、拒否決定に不服があつたというような場合におきましては、そういうことによつてやられるのだというような解釈してよいのですか。
  12. 久保敬二郎

    政府委員久保敬二郎君) 全くお話の通り御解釈頂きましてよいと思います。特許権存続期間延長特許法規定に基きます特許法施行令規定しておるのでございますが、これは商工大臣が單に職権を以て決定するようなものでございまして、一般のその外の出願とか審判というものは権利として國民がそういうものを請求できるものに対しまして、特許権存続期間延長だけは恩惠主義になつておりまして、政府からそれを延長してやるというような建前になつておりまして、そのための特許法の中にその詳細な規定が制定されない次第であります。こういうものも今般施行されるだろうと考えております。行政事件訴訟特例法によりまして、違法であるというときは全部裁判所の方へ出すことができるものと解釈いたしております。現に二件ばかり出ておると存じております。
  13. 小林英三

    小林英三君 次にお伺いいたしたいと思いますことは、この前の昨年の委員会におきましても一つ質問したと思うのですが、発明奬励に関する問題であります。この戰後の産業復興には勿論この発明奬励が絶対的に必要でありますが、この際に積極的に発明奬励するというような方策を打立てなければならんと思うのです。只今政府から補助金を受けて、そうして発明奬励をやつております発明奬励機関といたしましては、例の日本発明協会があるのではないか。私共聞くところによりますと、これは積極的活動をしておらないというように聞いておりますが、こういうような問題につきまして、政府はいま一歩積極的に進んで、これらの機関、或いは民間発明奬励機関を設けられまして、今後尚進んでこの発明奬励の協力を得られるような計画がおありになるかどうか。その点につきましてお伺いいたします。
  14. 久保敬二郎

    政府委員久保敬二郎君) 発明家に対する國家補助は、現下の國家財政と睨み合せまして、後程申上げたいと存じますが、少しばかり計画しておるだけでございますが、発明重要性に鑑みまして、今後財政の許す限り発明奬励試作を充実いたしまして、発明家援助を図りたいと考えております。現在発明奬励措置を講じておりまするものは大体三つに分けられるのでございますが、第一が優秀な発明、考案をしながらも、経済上の支障のために、その試作とか或いは中間工業化試驗の実施困難な者に対しましては補助金を交付いたしまして、その実施化援助いたしましたり、又研究資材等につきましても極力斡旋いたしまして、発明研究の完遂に遺憾なきように努力いたしております。昭和二十二年度におきましては、実施化試驗補助金といたしまして七十万円の予算が組まれまして、これによりまして約十件の優秀な発明に対して交付をいたしたのでございますが、二十三年度におきましては、補助金といたしまして百五十万円を予定いたしております。この補助金を交付いたしますのは、商工大臣諮問機関としてでございます発明奬励委員会に掛けまして、そこの委員方々が極めて熱心なる御檢討によりまして、大体申請して來るものの中から最も実現の可能性の多い、最も優秀なものを選択いたして頂きまして、それによりまして予算のある範囲内において支給しておるような現状でございます。この補助金の本年の百五十万円というものも、特許局の希望といたしましては極めて少額で到底満足し得ないのでございますが、これも政府財政上今年は止むを得ないかと存じております。  第二は優秀な技能を有する発明家試作研究施設を持たない者のために試驗研究施設を開放いたしまして、発明研究の便宜を図つておるのでございます。昭和二十二年度におきましては開放研究施設補助金といたしまして四十万円を四ケ所の研究機関に交付いたしました。京都と大阪と名古屋と新潟にありまする開放研究所でございますが、そこに四十万円を補助した次第でございます。二十三年度におきましては六十万円を予定いたしております。  第三は社團法人発明協会の問題でございますが、発明協会は御承知のように我が國におきまする唯一の発明奬励團体でありまして、発明家表彰或いは発明実施援助等発明奬励に関する一切の事業を行なつておるのでございまして、從つて特許局といたしましては発明協会援助して発明の振興に努力せしめておる次第でございます。昨年度におきましては百九十九万円の補助金を交付いたしましたが、本年度においては二百万円を予定しております。発明協会活動につきましては現在十分に働いていないというような非難をしばしば承るのでございますが、現在の経済情勢にいたしますと、收入もなかなか得られないで、表彰とか、実施援助とかいうような費用の掛かりますものばかりをいたしますことは、協会自体といたしましても非常に困難な事情が伴いますので、その辺の事情を勘案しながら、いま少しく活溌に働いて貰いたいと思いまして、十分密接な連絡をいたしておる次第でございます。以上申上げました外に特許局審査審判をできるだけ早くするということが一番の発明の捷径であるとも考えますので、この点に対しまして先程申上げました趣旨に副いまして、できるだけ努力いたしたいと思つております。
  15. 小林英三

    小林英三君 今のお話の百五十万円の補助金でありますとか、或いは百九十万円の補助金でありますとかいう問題は、これはもう本当の雀の涙くらいのもので、昭和九年、十年頃の國家財政の総予算というものは特別会計を入れまして二十五億円かそこらである。今日は一般会計だけでも本年度は四千億円になんなんとするような……政府は考えでおるような有様であります。まあ二百分の一にしましても、昔の金の何千円くらいの程度じやないかと思います。こんなことで私は文化國家建設のために大きな発明ができるとは決して考えておりません。一つの良い蓄電池を発明しただけでも、恐らくこれは日本経済を動かすような大きなものじやないか。電球の良いのを一つ発明しただけでも、これは世界の経済を動かすような大きな問題が起つて來ると思います。殊に日本文化國家建設の途上にあるのでありますから、今後政府の認識を十分に一新されて、そうして十分なる予算を計上されて、將來の問題のために一つ長官にも御健鬪願いたいと思います。  尚この案につきまして私が一番重要な問題と思いますのは、百二十八條ノ二につきましてちよつとお尋ねしたいと思います。この百二十八條ノ二は抗告審判審決、つまり出願人でありますとか権利者が、或いは確認審判をするとか、或いは無効審判をするとか、或いはこの出願に対しまして査定に異議があつてやるとかいうような場合に、いよいよ初審で負けて抗告審判をして、抗告審判で負けた、こういうような場合に初めて東京高等裁判所專属管轄としてそこへ出訴するわけであります。最後の「審判ハ抗告審判請求スルコトヲ得キ事項ニ関スル訴ハ抗告審判審決ニ対スルモノニ非ザレバ之ヲ提起スルコトヲ得ズ」、こういうのでありまして、私は百二十八條ノ二の項目というものは、この特許法改正の上におきましては非常に重要な項目として考えなくちやならん問題と考えておるのであります。それはつまり出願者が、特許出願につきましては出願或いは査定、こういう問題につきまして先程申上げましたように不服のありました場合に、その抗告審判をする。それから又権利者自身といたしましては初めの初審判及び抗告審判が負けまして、不服のありましたときにこれを東京の高等裁判所に訴を提起するのでありますが、この場合の出訴事件というものは、私はどうしてもこれはすべて技術を主な内容としておることは明らかだと思う。普通の裁判じやないのでありますから、すべて技術に対しての裁判でありますから、東京高等裁判所において行われまするところの裁判というものは、殆んど技術を内容とする裁判であることは明らかなことだろうと思います。そこで一つお伺いいたしたいことは、東京高等裁判所の中にはこれらの技術につきましてこれを裁き得る能力のある裁判官というものが別に要るということが一つと、それからそれが若しないということになりますと、ただ本人が提訴いたしました場合におきまして、そういうことについての判断、良いか悪いか、黒白を決めて、そうしてやり直しをするとか、よろしいとか、そういうことの判決ができまいと思うのであります。  それからもう一つお伺いいたしたいと思いますことは、東京高等裁判所におきましては、先程私が申上げましたような工合に、これらの提訴がありました場合には、勿論この事実の審理をやると思うのですが、本人の権利を擁護いたしますためには、その代理人というものは、どこまでも技術的にも又その事件そのものの内容につきましても十分に理解がある者が代理人をして、そうして迅速にして妥当なる採決をなさしめるということが、これは勿論必要であろうと思うのであります。そこで私が第二番目にお尋ねいたしたいと思いますことは、こういうような場合におきましては、前の審判、前審即ち抗告審判までの代理人といたしましては、法律及び技術に精通しておりますところの、それぞれの弁理士というものに依頼いたしまして、そうしてやつて頂きたいのであります。一度今度は抗告審判が負けまして、そうして不服があつて、今度は東京高等裁判所に提訴をすると、こういうような段取になりました場合に初審判及び抗告審判を代理いたしております、いわゆる事件内容に最も精通しておるところの、技術的にも明るいところの、前審の、今までやつて來た前審の代理人であるところの弁理士を代理人にするということが最も私は妥当であると思うのであります。この今回の特許法改正に際しまして、抗告審判に対する東京高等裁判所への出訴につきまして、弁理士も代理なすことができるか否かということが明らかになつておりませんが、この問題に対しまして、この二つの問題に対しまして簡單で結構でありますから御答弁を願いたいと思います。
  16. 久保敬二郎

    政府委員久保敬二郎君) 第一の東京高等裁判所が事実審をやるかどうかという問題と、その裁判官に技術の分る人がいるかどうかという問題でございますが、東京高等裁判所では事実審をやる得ることになつておるわけでございます。從つて当然技術上の判断をしなければなりませんので、裁判官には技術のよく分る人がおられなければならないのでございますが、現在では從來の判事と全く同じお方がなつておられます関係上、技術の方の判断につきましては非常に困難が伴うのではないかと考えております。特許事件の一番特色といたしまするところは、單に法律だけで事が解決できるものでもございませんで、非常に技術的の知識を必要とするということと、それから発明というものが一般の技術の先端を行つております関係上、普通の技術知識では不十分でありまして、極めて高度の技術を理解し得る技術的の知識がなければならないという、こういう問題が含まれておるのでございます。從いまして、單に法律上の知識を持ちましたのみでは不十分でございますし、又それでは技術的の知識だけあればいいかといいましても、それだけでも又不十分でございます。技術と法律とがいわゆる有機的に一体になつておる特殊の知識を必要とするというところに、特許事件の極めて困難なるところがあるのであると考えております。これにつきましては、特許権の保護とか、発明奬励とかいろいろの問題が、すべて最後裁判所のところに引つ掛かつて参りますので、是非とも特許事件に関する裁判というものを、現状以上にレベルを上げて頂きたいというのが、特許局の希望でございますが、この点につきましては、法務廳並びに最高裁判所等に対しましても、特許局としてはかねがね意見を申述べておりまして、成るべく早くこちらの希望するようなものが実現されたいと多分に運動をいたしておる次第でございます。私共の方の考えでは、特許局審判官というものを、或る程度、或る年数やりました者が、裁判所の裁判官というものになり得るというようなことを過渡的にでもいたしまして、それから徐々に裁判官にも技術的の知識を持つて頂くというような工合に導いて來てはどうかというような一つの案も持つておりますし、又一般に裁判事件というものに特許局職員が入りまして、会議のようなものをいたしまして、但し判決の、決を採るときには加わらんというような、ドイツでやつておりまするような制度を採つたならば工合がいいのではないかということも考えておるのでございますが、この点は裁判所側との折衝を要しまするので、只今の御趣旨をも体しまして、尚一層努力いたして見たいと存じております。  次に代理人の問題でございますが、只今申上げましたように、特許事件が技術と法律との有機的一体になつておりまする特殊の知識を要しまするために、一般の弁護士の法律的知識を以ていたしましては不十分であるということは極めて明瞭でございますので、特許局といたしましては、この百二十八條の二の事件に対する訴におきましては、弁理士が裁判所においても代理人になる得るということを衷心希望しておる次第でございます。現在弁理士法の第九條、これを読んで見ますと、「辯理士ハ特許、實用新案、意匠又ハ商標ニ關スル事項ニ付裁判所ニ於テ當事者又ハ訴訟代理人ト共ニ出頭シ陳述ヲ爲スコトヲ得其ノ陳述ハ當事者又ハ訴訟代理人カ直ニ之ヲ取消シ又ハ更正セサルトキハ自ラ之ヲ爲シタルモノト看做ス」、「前項ノ規定ニ依リ帝國臣民ニ非サル辨理士出頭シテ陳述ヲ爲サントスルトキハ裁判所ノ許可ヲ受クヘシ」、こういう規定がございまして、民訴法の八十八條のいわゆる輔佐人という精神をここに表しておるのでございます。從いまして、この場合には弁理士は裁判所へ出頭いたしまして、この弁理士法第九條によつて陳述をなす資格はあるのでございますけれども、いわゆる完全なる代理人ではございませんので、法律上の取扱といたしましては極めて不十分なものと考えられまするので、是非とも先程お話のように、正式の代理人というようなことが実現せられましたならば、非常によろしいと希望いたしておる次第でございます。これは特許局の單なる意見でございまして、実際の問題は、裁判所における代理の問題でございますので、裁判所の方の意向によつて左右されることも非常に多いと存ずる次第でございまするが、目下特許局といたしましては、法務廳その他と、從來この趣旨を述べまして交渉をいたしておるのでございますが、未だ殆んど前途を目し得る程の結論に達していないのは非常に残念に存じます。
  17. 小林英三

    小林英三君 只今の第百二十八條の二に対しまする政府委員といたしましての御答弁は、私は全國における発明者の立場から考えまして、その御意見に対しましては非常に敬意を拂います。私共が考えておりますと同じようなことを特許局の長官がお考えになつており、法務廳その他の意見もありましようが、私共は國会の常任委員会の各位の御意向によりまして、若しこの特委法の改正に対しましてどうしてもこう直さなくちやならんというところがありますならば、私は國会の常任委員会の権限において対処いたしたいと考えておりますが、只今の御答弁に対しましては非常な満足をいたします。
  18. 久保敬二郎

    政府委員久保敬二郎君) ちよつと今のお話について附加えて置きとうございますが、今の代理人の権限の問題につきましては、同じ精神、趣旨を盛るのではございますが、こういう代理の問題は、弁理士法の方に規定いたしておりまするので、この第九條というものが、今まだの補佐人というものでなしに、完全なる代理をなし得るというような意味になりましたならば、大体御趣旨を達成し得るものかと存じます。
  19. 小林英三

    小林英三君 私はこの問題につきましては、弁理士法の條項と睨み合せまして、いずれにいたしましても、只今私が第三番目に質問いたしました目的が達成できるというような工合になれば私共は結構だというように考えたところであります。  更にこの條項につきまして、ちよつと御質問いたしたいと存じますが、この百三十三條の、特許局職員又はその職に在りたる者が故なくその職務上知つておるところの特許出願中の発明又は特許出願者の事業上の祕密を漏洩した者に対する罰則でありますが、これはたしか昨年の八月の末でありましたか、特許法の一部改正を本委員会におきまして採択いたしたものでありますが、そのときは、たしか前に一年以下の懲役又は一千円の罰金というのを、一年以下の懲役又は五千円ということに改められたと思います。併し今日のような金の値打でありますとか、今日の情勢から判断いたしまして、私はこれはなかなか発明家といたしましては重大な問題でありますので、これは特許法のみならず、実用新案法にも、意匠法にも、商標法にも、皆同じように、この問題に対しまする漏洩の問題が出ておるのでありますが、一年以下の懲役ということに対しましても、今日改正されました五千円では足らない、何らの痛痒を感じないというような問題でありますから、私はこれはもう少し上げた方がいいじやないか、こういうように考えておるわけでありますが、御意見を伺います。
  20. 久保敬二郎

    政府委員久保敬二郎君) 第一回國会におきまして、御意見がありましたので、その後只今裁判所の方とも折衝いたしまして、これが少し安きに失するのではないかという意見も申述べたのでございますが、裁判所側といたしましては、單に特許法ばかりでなしに、外の方の法律とも関係があるので、こればかりを特に格段に強くするということはどうも工合が悪いというような御意見でありまして、今回実はまだ前法のままで手を加えなかつたのでございまするが、大体官吏によりましてこういうような特別の罰則が附けられておりまするのは、特許法とあとにもう一つ何かあつたと思いますが、それだけでございまして、特に特許局職員に対しまして、こういうような罰則を設けたということだけにおいても、すでに職員の綱紀を粛正する点において十分効力があると思うのであります。罰金の額は五七円でございまするけれども、一年の体刑を処せられておりまするような関係上、大体におきまして、又從來の実績にも徴しましても、この百三十三條が適用されるような事件が起つたということもございませんので、大体これで以て効果を奏しておるのではないかと考えておる次第でございます。尚医師法とか産婆法とか、ああいう法にいろいろ責任上の規定がしてございますが、いずれもこれに比べましては非常に少し程度罰則でございまして、それなどと比べましても相当この程度ならば取締つてつて行けるのではないかと考えておる次第でございます。
  21. 小林英三

    小林英三君 今の御答弁は多少私達の意見と異にしておりますが、その次にお尋ねいたしたいと思いますが、百三十三條の二であります。それから百三十四條、百三十四條の二、これは特許法ばかりでなしに、実用新案法にも商標法にも同じようなことがあるのでありますが、私はこの百三十三條の二というものは特許の問題に対して証人として呼ばれた者は、いわゆる嘘を言わないという宣誓をしました者が、特許局に対して虚僞の兼述をしたというときの場合、八三十四條の二は証拠物を出すとか、証拠書類を出すとかいう場合に、出さない場合の科料になつておるのであります。で、今度の場合は、この特許法におきましても或いは実用新案、商標、意匠、いずれの場合におきましても、三つの條項が同じように取扱われまして、五百円を千円に上げる、こういうことに同じように一律に取扱われております。併しこれはもつと考えますと、私は前の百三十三條の二の方の宣誓をなしたる者が特許局に対して虚僞の陳述をしたということは、これは事件そのものに対して重大な影響を及ぼしておる。從いまして百三十四條或いは百三十四條の二と同じように機械的に扱うということはちよつとまずいのじやないか、今後改正するならば理窟の合つたようにしなければならん。そこで私は百三十三條の二の宣誓をした者が虚僞の陳述をするという場合に対しましては、後の二つの場合よりも、少し改正なさるならば額を変えて、例えば五百円を五千円くらいにする。後の場合はそれが五百円が千円、これは実用新案の場合も特許法の場合も同じでありますが、この場合ははつきりと区別して置いた方がいい。今までずつと同じように考えて、一律に五百円を千円にするというのでなしに、区別する方がいいのではないかと思います。これの御意見を一つ……。
  22. 久保敬二郎

    政府委員久保敬二郎君) 宣誓に対する罪をこの特許とか実用新案というようなものと区別をする必要がある。更に外のものよりも重くしなくちやならないのではないかという御意見と存じますが、大体こういう罰則につきましては、特許局といたしましては、実は特別に、特は堪能なる者もありませんので、常に疑問の点は持出しまして、司法省の意見を求めておるのでありますが、今のような点につきましても一應考慮をいたしたのではございますが、この宣誓というものは、その内容の如何に拘わらず、その宣誓を神聖視するというところによつて罰が決まるという思想から、大体この宣誓に対しまする罪は、これで統一されておりまするので、特にこのものだけ、從來から宣誓というものに対して取扱われておる精神を、そのまま踏襲いたしましたのがこの千円という額になりますので、特別にこれを逸脱させて考えるという点につきましては、やはり更に研究を要する問題でもございますし、一應外の方との睨み合わせの関係上、これをこのままにして置いた方が妥当ではないかというような強い意見がありましたので、そのまま実は採用いたしたような次第でございます。
  23. 小林英三

    小林英三君 今の御意見はどういうところから……。そういう意見があつたというのは、外でそういう意見があつたのですか。
  24. 久保敬二郎

    政府委員久保敬二郎君) この罰則につきまして、大体前議会におきまする御意向が特にはつきり分つておりますものでございますから、その趣旨を体しまして、司法省の方へ十分密接な連絡をとりまして、御趣旨は十分了解して貰つたのでございますが、やはりこのままの方が妥当であるように考えるという司法省の御意見でございまして、こういたした次第でございます。
  25. 小林英三

    小林英三君 それからこれはこの特許法改正に落ちたところがあるのではないかと存じますのですが、この特許法の第二十六條です。二十六條に百二十八條という沢山條々が並べてありますが、その百二十八條というのがあります。この百二十八條をやはりこの百二十八條乃至六というように改められるのが本当ではないかと思います……間違いました。実用新案の方です。実用新案法特許法に準ずると書いてありますね。これからこの條までは特許法に準ずると書いてありますね。その準ずる項目の中に百二十八條というのがあるが、この百二十八條はこの改正案によつて……。
  26. 久保敬二郎

    政府委員久保敬二郎君) これは実は法制局の方とも話しておりますのですが、まだ正誤表が……この点だけ落ちておりまして申訳ありません。
  27. 小林英三

    小林英三君 そうすると、先程の虚僞の陳述でありますとか、或いは漏洩の罪でありますとかいう問題につきましては、大体特許法から商模法に至るまでの間に同じというような考え方で以てこれを見られるということでありますね。
  28. 久保敬二郎

    政府委員久保敬二郎君) お話の通りであります。
  29. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 第十一條その他関係條文にあります「判決」というのを取つたという、この前そういう御説明があつたかどうか知りませんが、どうしてこの「判決」というのを取つたのですか。
  30. 久保敬二郎

    政府委員久保敬二郎君) これはこの百二十八條関係する問題でございますが、百二十八條の二はこの審決に対する訴は東京高等裁判所へ出し得るというものでございまして、この点には特にそれを取消すということは明記してないのでございますが、これは百二十八條の五のところに「裁判所請求ガ理由アリト認メタルトキハ審決又ハ決定ヲ取消スベシ」ということになつておりまして、裁判所判決は取消をするか認めるかどちらかということだけに限られてしまうのであります。行政事件訴訟特例法によりますると、外の事件に対しましては裁判所はその取消をするか或いは変更することができることになつております。この特許事件に限りましては変更することができませんで、ただ取消すことだけになります。そういたしますと、審決というものは裁判所で認められればそのまま行きますし、認められない場合には取消されてしまいまして、審決そのものが変ることはないのであります。今までの大審院等でやつておりましたのは、審決を被棄しまして、大審院みずから内容的の判決をすることがあつたのでありまするが、今度は裁判所はそういうことをしなくなりましたので、特許局審決をただそれが是であるか否であるかということを申しましただけで、その審決をこういう工合にせよということは裁判所で言わないわけであります。そういうようなわけで、特許局審決というものは結局裁判所に行つて変ることがないものでありまして、結局審決というものが確定するという考え方になるわけであります。それでその審決確定するという実際問題は、特許局審決に対して不服があつた場合には三十日以内に東京高等裁判所に訴を出しますものですから、その三十日を待ちまして、三十日経過しても訴が出ないときに初めてその審決が三十日の昔に遡つて確定するということになるわけでございまして、実際問題といたしましては判決確定を持つ必要はございませんで、すべて審決そのものが確定してしまうという考え方になりまするので、それで「判決」というものを省いた次第でございます。
  31. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 そうしますとですね、仮にその審決が有効だという判決をした場合に、高等裁判所で無効だという判決をしたときに、その無効だという判決に拘束されないのですか。
  32. 久保敬二郎

    政府委員久保敬二郎君) その点につきましてはこの参考條文の終いの方に、行政事件訴訟特例法というのが印刷で載せてございますが、その第十二條でございますが、「確定判決は、その事件について関係の行政廳を拘束する。」という條文がございますので、特許局はこれによつて東京高等裁判所判決に拘束されるわけでございます。
  33. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 それでも「判決」という文字は要らないという、こういうわけでございますか。
  34. 久保敬二郎

    政府委員久保敬二郎君) 「判決」という文字は要らないのでございますが、それはその特許局でいたしました審決が、後において変更される、「内容が変更されるということになりますと、その判決確定するということが必要になるわけでございますが、特許局における審決というものは、どこまで行きましても取消されるか或いはそのまま残るかというだけで、内容に手が加えられないものでございますから、東京高等裁判所で仮に判決がありまして、それから最高裁判所出訴しない、上告しないという場合には、その判決確定するわけでございますが、その際には、その判決確定することによつて審決がやはり確定することになるものでございますから、それで審決確定するという文字で差支が起らないわけでございます。
  35. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 審決は有効だという判決をした場合に、高等裁判所が無効だという判決をした場合には、それに拘束されるということになれば、その審決が有効だというその審決は、恐らく審決としての價値がないものなんですから、確定するということはないと思うのです。確定するのは判決確定するので、審決確定しない。
  36. 久保敬二郎

    政府委員久保敬二郎君) その場合には、その東京高等裁判所が無効だという判決を下し得ないのでございます。それは特許法の百二十八條の五によりまして取消しだけしか判決ができないわけであります。それでありますから、特許局審決が有効という審決を下しまして、裁判所の判断ではこれは有効ではいけないのだという場合には、東京高等裁判所はその有効であるという審決を取消してしもう。無効だという判決東京高等裁判所は下し得ないのでありまして、特許局審決で有効だとした判決東京高等裁判所が取消さなければいけないのであります。從つてその審決は取消されてしまいましたことになりまして、なくなつてしもうわけでございますから、又その審決をなさない前の状態に戻るわけでありまして、特許局としてはもう一遍審決のし直しをしなければならんという状態になるわけでございます。
  37. 小林英三

    小林英三君 今の大畠君の御質問に関連いたしましてお尋ねをいたしたいのですが、東京高等裁判所で以て、いわゆる前審の後期審判をやり直せ、こういうような場合がありました場合に、いわゆる特許局長官の御任命になりました前審の審判官というものは、その事件に関しましては、やはり同じ人がやる場合もありますか、或いは当然全部審判官は任命し直すということになりますか、どうですか。
  38. 久保敬二郎

    政府委員久保敬二郎君) その点につきましては、前審千與の問題がございまして、こういうような裁判所から戻されら來たものは、同じ審判官がやるということは前審千與の規定に反するという解釈と、或いは反しないのだという解釈と、反した解釈が二つあるわけでございます。その結果、特許局でとつております解釈は、審判官は前審に千與することができないという方の建取をとりまして、裁判所から被棄されて來たものに対しては、全然別の審判官を任命するという方針をとつております。
  39. 稻垣平太郎

    委員長稻垣平太郎君) 外に御質問はございませんか。
  40. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 これはこの解釈に関係がないかも知れませんが、四十一條でございますが、特許局長官は、三年以内にその発明が國内に実施されない場合には、実施権について許與することができると、こういう規定がある。この場合これはただ單に局長官の権限でやるという規定でありまして、そのために外の発明者がより以上の発明をしようと思いましても、それに牴触するために駄目だ、局長官が実施権を拒否したから駄目だということになりまして、外の発明者が発明することができないということが沢山起つて來ると思う。そういう場合は局長一人で以て職権を以てこの実施権を拒否するというようなことは、何か外の便法、いわゆる委員会とか何とかを設けてやるという御意思はありませんでしようか。
  41. 久保敬二郎

    政府委員久保敬二郎君) ちよつと今の御趣旨が私には分りかねるのですが。
  42. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 つまり発明者が三年以内に発明を実施しなければ、局長は勝手に実施権を拒否することができるのでございますね。
  43. 久保敬二郎

    政府委員久保敬二郎君) はい。
  44. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 そうすると、発明権は持つておる、実施権はない、併し局長権限においてこれをもう少し延ばそう、実施権を延ばそうとすればできる。ところが、実際発明権は持つておるが実施権はない。外の発明者はより以上よい発明をしようと思いましても、実施権を許與されていないために発明ができないということが沢山ある。それについて局長独断の権限でなくして、委員会か何か設けて、廣い意味において許與する場合を考えて頂きたいと、こういうふうに思うのですが、それについて何か御意向ございませんですか。
  45. 久保敬二郎

    政府委員久保敬二郎君) この点は、お話のような点でちよつと違う趣旨にこれは規定いたされておるのでございます。特許権延長というような場合は、この中に含まれませんで、この大体特許というものは、これは特許制度がございませんと、発明した人が、例えば正宗の名刀の鍛冶のような話がございますように、特許制度がないと、隠しておりますためにそれが一般に使われんということになります。それで特許権という独占権を與える代りに、その発明を皆國民に知らせまして、その期限が切れたら皆に実施させるというような趣旨のために特別制度ができたものでございまして、この特許制度というものは要するところ、発明者が発明を隠しておらないで、発明を皆に知らせて、そうして又外の者も必要があればそれを使いたいという趣旨にできておるので、その意味におきまして、特許権者というものは、一方において特許権という強力な独占権を持ちまする代りに、一方において実施しなければならない義務を負わされるわけでありまして、その場合に、特許があつた後、引続き三年以上正当な理由がなしにその発明を実施しなかつた場合におきまして、國家が公益上どうしても必要であるというようなことを認めました場合には、利害関係人から請求があつた場合に、その人に実施権を與えることを命ずるという問題でございます。
  46. 小林英三

    小林英三君 そうすると、発明者が結局もう少し待つて呉れといつた場合には、この実施権は発明者には與えないのですか。やはり利害関係人として……。
  47. 久保敬二郎

    政府委員久保敬二郎君) これは発明者に與えるという……、その発明者というのは特許権者と別の方を指しておいでになると思いますが、この場合は第三者が実施したいというような、第三者が他人の発明を実施したいというような場合に、その特許権者権利だけを擁しておりまして、その実施したいと言つて來ておつても、その人に実施させないというような場合に、特許局長官が実施をさせるということを規定しておるわけでございます。それでございますから、特許権者発明者というものは同一人を指すべきものと思うのでございますが、一人の人が一つ発明をしまして特許を取つておる、特許を取つておるけれども、その人はその特許を実施しない。ところが、國家としてはそういうよい発明はどんどん実施して貰わなければならんという場合に、特許権者がそれは自分の自由だからといつて実施しない場合には、國家として利益を得ることがないようですから、そういう場合は第三者が実施権を與えて呉れということを申請して來れば、特許局長官は実施権を與えることができるという規定であります。
  48. 小林英三

    小林英三君 この場合にそうすると、利害関係人の中には発明者は入らないのですか。
  49. 久保敬二郎

    政府委員久保敬二郎君) 入りません。利害関係人というのはその特許権者と別の人でございます。
  50. 小林英三

    小林英三君 第三者というのですね。
  51. 久保敬二郎

    政府委員久保敬二郎君) 第三者という意味でございます。
  52. 稻垣平太郎

    委員長稻垣平太郎君) 他に御質問はございませんか。他に御質問が若しございませんければ、今日はこの程度にいたして置きまして、次回は若し皆さんお差支なければ、明日の二時から本法案に対して討論、採決に入りたいと思うのでありますが、如何でございましようか。小林さん、それでよろしうございますか。小林さん、あなたが質問をしたのですから……。若しそれだつたら、明後日は、水曜日は午後はやらんということになつておりますから、午後の方が落着きますから木曜日にいたしましようか。……それでは木曜日にすることにいたします。尚小林委員にお尋ねするのですが、先程の弁理士をして代理せしめるというような問題があつて、あなたから御意見が出ました。そういう点について法制局長官なり或いは法務廰の方の御意見を聽くというお話合いがありましたが、若しそうなれば法務総裁の御出席を願つて置きますか、如何でございましようえ。
  53. 小林英三

    小林英三君 そうですね。
  54. 稻垣平太郎

    委員長稻垣平太郎君) そうでしたら、木曜日に法務総裁の御出席を得て、その問題に御質問なさつたらよいかと思います。そういたしますか。そのことは後で……。これで終りますが、尚序でに附加して御報告申上げますが、先般池田七郎兵衞君が本委員会の常任委員を御辞任に相成りましたので、奧主一郎君が鉱工業委員に御選任に相成りましたことを御報告申上げます。と同時に、池田七郎兵衞君は化学工業小委員でありましたので、奧主一郎君も同じく化学工業小委員にお願い申上げるということについて御同意を得たいと思います。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  55. 稻垣平太郎

    委員長稻垣平太郎君) それではさよう取計ろうことにいたします。それでは本日はこれで散会いたします。    午後二時五十九分散会  出席者は左の通り。    委員長     稻垣平太郎君    理事            小林 英三君    委員            大畠農夫雄君            原  虎一君            村尾 重雄君            荒井 八郎君            大屋 晋三君            寺尾  豊君            堀  末治君            入交 太藏君            林屋亀次郎君            鎌田 逸郎君            小宮山常吉君            宿谷 榮一君            濱田 寅藏君   政府委員    特許標準局長官 久保敬二郎