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1948-03-29 第2回国会 参議院 決算・商業・鉱工業連合委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年三月二十九日(月曜日)    午前十一時八分開会   —————————————  委員氏名   決算委員    委員長     下條 康麿君    理事      太田 敏兄君    理事      西山 龜七君    理事      山下 義信君            岩崎正三郎君            田中 利勝君            吉川末次郎君            今泉 政喜君            北村 一男君            中川 幸平君            田方  進君            竹中 七郎君            谷口弥三郎君            平野善治郎君            深川タマヱ君            小野  哲君            駒井 藤平君            鈴木 憲一君            伊達源一郎君            帆足  計君            山崎  恒君            兼岩 傳一君            千田  正君            小川 友三君            西田 天香君   —————————————   商業委員    委員長     一松 政二君    理事      林屋亀次郎君    理事      鎌田 逸郎君            齋  武雄君            椎井 康雄君            中平常太郎君            松下松治郎君           大野木秀次郎君            黒川 武雄君            中川 幸平君           深川榮左エ門君            油井賢太郎君            九鬼紋十郎君            小林米三郎君            佐伯卯四郎君            島津 忠彦君            高瀬荘太郎君            波田野林一君            結城 安次君            廣瀬與兵衞君   —————————————   鉱工業委員    委員長     稻垣平太郎君    理事      下條 恭兵君    理事      小林 英三君    理事      川上 嘉市君    理事      中川 以良君            大畠農夫雄君            原  虎一君            村尾 重雄君            荒井 八郎君            大屋 晋三君            寺尾  豊君            平岡 市三君            堀  末治君           池田七郎兵衞君            入交 太藏君            岩木 哲夫君            林屋亀次郎君           深川榮左エ門君            鎌田 逸郎君            楠見 義男君            小宮山常吉君            佐伯卯四郎君            宿谷 榮一君            玉置吉之丞君            田村 文吉君            藤井 丙午君            帆足  計君            細川 嘉六君            佐々木良作君            濱田 寅藏君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○中小企業廳設置法案内閣送付)   —————————————
  2. 下條康麿

    委員長下條康麿君) 只今から決算商業鉱工業連合委員会を開きます。予備審査のため付託されました中小企業廳設置法案を議題といたします。商工大臣から提案理由説明があります。
  3. 水谷長三郎

    ○国務大臣水谷長三郎君) 中小企業廳設置法案提案理由を御説明申上げます。  中小企業問題は現下の最も深刻且つ重大な問題の一つでありまして、この中小企業の健全な育成を図りますことは、焦眉の急を要することと信ずる者であります。今これを次の三つの角度から考えて見たいと思います。  第一に、中小企業問題は單なる経済問題に止まらず、実に深刻な社会問題であります。元來百人未満の工場が、数において全体の九九%、労働者数において五四%を占めておるのが、我が國の工業実態であります。この事実は、我が國の産業構成上、中小企業存立如何が、如何に重大な意味を持つかということを明らかに示しているのであります。その中小企業が、現在大多数非常に苦しい状態に追い込まれておることは、單に経済政策の上からだけでなく、社会の治安にも係わる由々しい問題であると考えるのであります。第二に、今後我が國の経済のあるべき姿を考えますならば、これが自由公正な競争原則とするものでなければなりませんことは、経済民主化の上から必然の結論であると思います。これは独占禁止法が明確に示しておるところでありますが、國際的に考えましても將來自由公正な國際交流経済以つてその理想的原則といたすであろうということは、國際貿易憲章考え方等から推して考えましても、概ね予測することができるのであります。従いまして、このような公正自由競争という立場に立つて見ます場合に、社会的競争單位にも達し得ない中小企業育成して、独立して公正競争場裡に立ち得るだけの実力を持たせることが絶対的に必要なことでございます。  第三に、將來の我が國経済の構造を考慮いたします場合、更に問題は重大となつて参るのであります。御承知通り、我が國は戰争によりまして、多くの生産設備や資産を失つたのでありますが、このことは、今後におきまして中小企業問題の性格を更に一層深刻なものといたすであろうと思われるのであります。即ち、我が國はもともと資源に乏しい國情にありますため、原料國外に仰いで、これに加工して輸出を行い、これを以つて國民生存経済的基礎とせざるを得ないのでありますが、只今申上げました我が國の國際的地位及び経済條件根本的変化に伴いまして、この加工貿易の極めて大きな部分は、中小企業の手によつてつて行かざるを得ないであろうということは明らかであります。然るに現在の中小企業が、果して國際的水準に達しているかどうか、頗る寒心に堪えないのでありまして、この点に鑑みますると、中小企業水準向上は、我が國経済存立上緊急不可欠の問題であります。以上申述べましたように、國内における社会情勢から見ましても、自国公正競争の確保による経済民主化の観点から申しましても、將又我が國の置かれるべき國際経済上の自立ということから考えましても、中小企業の健全なる発達を図ることは、この際何としても行わねばならんところであると思うのであります。  中小企業は、現在非常に苦しい立場にあります。而して今中小企業の苦境は、一体何に起因しておるかを考えますれば、大体三つの大きな原因があると思われるのであります。  即ち第一には、何ということなく、一般的に潜在しておる大企業偏重傾向であります。優秀な中小企業でも、單に規模が小さいために無視されるような傾きはないか。我々はこのような傾向は誠に好ましくないものとして、その是正を図らねばならんのであります。  第二には、中小企業が数多く、規模小さいため、発言の中心を持たないことであります。このことが中小企業を常に不利な立場に追い込む一因をなしておるのであります。  第三には、中小企業の中には、事実弱体且つ低水準のものもあるということであります。  中小企業資財難資金難経営難も、いずれも煎じ詰めればこの三つに起因しておるのでありまして、この三点を打開いたしますことは、中小企業の健全な発達を期する上に最も重要なことであります。  併しこれだけのことを確実に行いますためには、具体的にこれらの諸問題の解決に当るべき專任機関を必要といたすのであります。即ち廣汎中小企業問題を打開いたしますためには、大企業中小企業を同時に取扱う機関のみではどうしても不十分でありまして、中小企業の公正なる利益代表者として中小企業を護り、且つ一面においては中小企業自体体質向上について、專心その指導に当る機関が必要と相成るのであります。これが即ち今回この中小企業廳設置法案國会に提出いたしまして、中小企業專門機関として新たに中小企業廳を作ろうとするゆえんであります。  本法案の詳細につきましては、いずれ御審議に際しまして、個々具体的に申述べたいと考えるのでありますが、以上申述べましたような理由から、中小企業廳は二つの重要な機能中心といたしておるのであります。即ち中小企業者全体の公正な利益代弁者として、政府内外に対してその擁護に当る機能がその第一であります。次は具体的に、中小企業の技術、経営その他の指導行い相談相手となりまして、中小企業水準を向上させる機能、これがその第二であります。このような機能を有しますため、一面中小企業の大部分を構成する商工業実態と密接な関連を保ちつつ、他面においては独立地位を必要といたす次第でありまして、これが中小企業廳商工省の外局といたす理由でございます。  又その権限といたしましては、これらの目的を達成するに必要な事項を掲げておるのでありまして、中小企業廳長官には特に強い独立的地位を與えておるのであります。又中小企業振興の上に特に重要な点は、施策具体的運営如何にあるのでありますが、この点に関しましては、特に中小企業特殊性に鑑み、各地方公共團体その他地方商工局等廣範囲機関機能を十分活用すると共に、中小企業連絡調整委員会の活用によりまして、各政府機関全体の綜合的連繋をも図ることによりまして、強力且つ着実な施策を推進いたすつもりであるのであります。同時に右のような特殊の任務に鑑みまして、その実質的効果を挙げるため、画一的形式主義の排除に努めると共に、特に各方面の專門家を多数包容し、運営の完全を期する所存であります。  中小企業問題は、我が國の当面する重要問題の一つであります。而して中小企業廳の設置こそ、本問題解決のための施策の第一歩をなすものでありまして、この重大性に鑑みまして、何卒本法案に対し、愼重御審議の上、御贊同あらんことを切に希望いたす次第でございます。
  4. 下條康麿

    委員長下條康麿君) この際商工大臣に対する御質問を願います。
  5. 山下義信

    山下義信君 総理の御出席があるように聞いておりましたが、総理に対する質疑は保留して置きまして、商工大臣に伺いたいと思います。この法案の持つておりまする意味は非常に重大でありまして、いろいろ質疑いたしたいことは多々あるのでございまするが、他の同僚議員諸君の御質疑もあろうと思いますので、私は極めて簡單に大体のことを伺つて置きたいと思います。  中小企業に対しまする、この場合では中小企業振興対策ということになつておりますが、振興という意味でもよろしうございますし、その他の意味を持つておりましてもよろしうございますが、中小企業に対しまする現内閣方針はどこにお置きになりますか。具体的に申しますと、総理大臣民主党の総裁の総理大臣民主党は言うまでもなく修正資本主義を持つておられます。あなたは社会党商工大臣、即ち言うまでもなく社会正義拠つておいでになる社会党の閣僚でおいでになります。この中小企業に対しまする政策主義はどこにお置きになりますかということを伺いたい。修正資本主義によりまする中小企業対策をお採りになるか、社会主義によるところの中小企業対策をお採りになりまするか、どちらかをお採りになるのでありまするか、その点を伺いたいと思います。  それから第二点といたしましては、私は大体のことを伺いますが、元來中小企業というものは、今日の経済情勢の上から参りましても、大体の國策の上から参りましても、相当これは整備して行かなければならん、相当淘汰をして行かなければならん。整備ということには、それは育成もありましよう。又反対には淘汰もある筈なのでございます。でありまするから、整備をして行くという大きな必須の任務がありまするので、その間においてどういうふうに育成して行く、振興して行こうとされるか、その整備振興とのマッチしまする点の御方針を伺いたいと思うのであります。  第三点としましては、これは又別に同僚議員から詳細に質疑があると思いますが、行政整理との関係、即ち言うまでもなく、行政面相当整理をして行こうという過程において、可なり厖大な新らしい官廳を設けて行こうという、その矛盾性に対するお考えはどういうふうに持つておいでになりますか。  いま一つ、この御説明を聞きますというと、相当重大なる任務を持つておる官廳でありまするが、然るにその中小企業廳というものの中を見ますというと、これは單なる調査とか、いろいろそういつたような情報を集めるとか、机の上の仕事をやる官廳のように見受けますが、果してこういう程度仕事をする官廳で、只今大臣の御説明になりましたような中小企業の重大なる育成といいますか、助長といいますか、発達といいますか、そういう仕事がこの官廳ででき得るというお見込みがありますかどうか、以上伺いたいと存じます。
  6. 水谷長三郎

    國務大臣水谷長三郎君) 御質問にお答えいたします。修正資本主義中小企業対策と、社会主義中小企業対策というものとはどうかということでありまするが、御質問者は、修正資本主義中小企業対策はどういうようなものであるか、社会主義中小企業対策はどういうものであるかという御説明がございませんので、どういうふうなお考えの下にそういう御質問をされておるかどうか知りませんが、我々は民主党といい、社会党といい、或いは國民協同党といい、連立内閣を作りまするに当りまして、三党政策協定をやりまして、ひとり中小企業の問題でなく、あらゆる政策に対して、それぞれ調整をして政策協定をやつたのでありまして、從つてその線に沿つてつて行くものでありますから、民主党中小企業対策と、又社会党中小企業対策と、更に又國民協同党中小企業対策とは、この現内閣においては何らの矛盾摩擦はないものと御承知を願いたいと思います。  それから第二には、この中小企業振興と申しましても、現在の日本経済力におきましては、中小企業なるが故に、あらゆる中小企業を無差別に保護育成というようなことはできないのでございまして、或る程度重点主義を行わなくてはなりません。例えば輸出産業に関するもの、或いは重要基礎産業関連産業、或いは生活必需物資に関するものという工合に、重点的にこれを振興して行くより外に仕方がございません。從つて中小企業振興というものと、中小企業整備というものとは、並行して行われるものであるという工合に御了承を願いたいと思います。  更に又第三の行政整理との関係行政整理が叫ばれておる今日において、こういうような厖大機関を作ることは、これは相矛盾することではないかということでございまするが、言うまでもなく、私の理解するところによれば、行政整理というものは、味噌も糞も天引きに整理をするのではなしに、いわゆる不必要なものは廃めるが、必要なものはこれを殖やして行く。いわゆる能率的にやることが私は行政整理の眼目であろうと思います。從つて今度の行政整理におきまして、不必要なる官廳機構というものは廃止されまするが、又これに反して必要なる官廳機構というものが設置されるということは何ら矛盾ではないのでございまして、それは能率的な、民主的な行政整理はかくあらねばならないものであると、このように私は信じておる次第でございます。  更に又第四の点は、中小企業振興育成ということは非常に大きな問題であつて、これしきの官廳においてはなかなかむずかしいのではないかというような御質問、不十分でないかというような御質問でございますが、これは或る程度その通りでございますが、併し我々は、現在必要なる官廳と雖も、できるだけそれを國民に迷惑の掛からないように節約した形でやつて行かなくてはならんので、必要であればどんな厖大機関作つてもよいというわけには參りませんので、必要であつてもそれをできるだけ國民諸君の負担にならないように、是非これだけは必要だという機構に止むべきが正しいのではないかと、このように考えておる次第であります。
  7. 山下義信

    山下義信君 只今大臣の御答弁では、私は承服いたしかねるのであります。民主党の持つておる主義政策社会党主義政策、これは十分に存じません。分りません。了承いたしかねております。更にこれは小委員会ができましたときに伺いますが、要するところ、民主党主義から申しますれば、中小企業労資一体で以て育成して行こう、社会党の持つておる政策からいえば、こういう利潤追求企業形態は成るべく排除して、そうして公共的経営形態のものに移行して行こうという政策を持つておることは常識的に誰も考えておるところなのであります。これをもつと詳細に大臣から又伺わなければならんと思いますが、大体において中小企業育成は、これは政府の力で進めておいでになる考えですか。業者自体相当利益を挙げることによつて中小企業が鞏固になるという方針でこれを育成なさる方針ですか。その点をいま一つつて置きます。
  8. 水谷長三郎

    國務大臣水谷長三郎君) 社会党政策は、如何なる企業も全部國有とか、或いは公共形態に持つて行くというようなことは、立党以來未曾つて言つたことはありません。いわゆる社会党一般政策には、基本産業重要産業というものの社会化ということは謳つてあります。これに反して、中小企業は、これを協同組合化して育成して行くという方針を立てておるのでありまして、今あなたの言われましたのは、社会党政策に対する誤解ではなかろうかと思つておる次第であります。その点は十分刷り物もありますから、御研究を願いたいと思うのであります。更に又現在の資本主義経済機構の下において、企業に適正なる利潤というものを認めなくてはならんことは、これはいうまでもないことでありまして、社会党はそういうような中小企業の適正な利潤を否認するというようなことは、立党以來言つたことはございません。
  9. 田村文吉

    田村文吉君 今程大臣から縷々御説明を頂きましたので、如何に中小企業というものが、今日の日本の現状において、この振興が必要であるかということは十分に納得もいたしましたし、又私共は常にそういうことは考えておるのでありまして、これはどなたも恐らくは異議のない点だろうと思うのでありまするが、ただ大臣の御説明の中で私共の十分に知り得なかつたのは、振興は必要であるが、何が故に企業廳というものを別に作らなければならないようなことであるか、これが十分御説明が頂けなかつたのでありまするが、專任にするということになればいいのだろうという大体の御説明でありまするが、大体この商工省というものは、昔から中小工業專門役所みたいなものであつたのであります。殆んど大工業というものは商工省には余りお世話にならない。商工省というものは、そういう中小工業振興のために在來はやつて來て頂いた役所であつたと私は存じておりますのであります。でありますから、そういう役所であつたのに、今度切離して中小企業廳というものをお引離しなさるのは、丁度庇を貸して母屋を取られたような商工省の感じがちよつといたすのでありますが、なぜ、どうしてもそういう新たな廳を作らなければならないとお考えになるのでありますか。その点の御説明を頂きたいのでありまするが、それは或いは先行き細かい御説明を頂くことになるかも存じませんが、大体中小企業廳は、どういうふうにして在來の商工省行政事務をお分けになつてお持ちになる御方針であるか。細かい点は後で伺うといたしましても、大体の御構想を一應御説明頂きたいのであります。それは例えば規模の大小によつて陶器業なら陶器業であつても、大工業でやつておるものは構わないし、中小企業のものをやるのだ、例えば電球の大きな企業でやつておるものは構わないが、小さな規模でやつておるものをやるのだというようなふうに、規模によつて大体お分けになつて行く方針なのか。そうでなくて、業種によりまして、大体これは中小工業業種であるからということであれば、その業種自体を全然分けておしまいになる。こういう御方針おいでになるのでありますか。この点を第一にお伺いいたしますれば、今度の中小企業廳というものが、どういう必要で、どういうことによつて振興ができるということの御見当がつくのじやないかと考えるのであります。それでただ私共考えますのは、規模によつて分けるということになりまするというと、非常に混乱をいたして参りまして、或る同じ原料、資材を配るにいたしましても、小さな企業のものは別にして、大工業はそれぞれ大工業によつて一々分けて行くというような混乱が出て参りますように考えますので、專任にならんということは、確かに一種の特徴は持つわけでありますが、從つてそこに非常な混乱が起つて参りますように考えますので、果してどういう点でこれが企業廳というものを別にする必要が出て來たのか、これを一つお伺いいたしたいのであります。  それから今程山下議員からも質問のありました行政整理の叫ばれておりまする時代でありまするから、努めて簡素に、実際に有効に官廳事務をやつて頂くという大臣の御答弁は至極御尤もであるのでありまするが、今度中小企業廳というものをお分けになりまして、今日の二千九百二十円べースでよろしうございますが、大体の予算はどのくらいをお見込になつておるのでありましようか。これも一つ伺いたいと存じます。
  10. 水谷長三郎

    國務大臣水谷長三郎君) 詳細な点は政府委員から御説明申上げまするが、第一の点でありますが、成る程商工省というものの本來やつてつた仕事を、沿革的に遡つて見ますというと、今田村さんがおつしやつたような御議論は肯けるのでありますが、それは日本経済の進展につれまして、商工省というものが廣く生産省或いは軍需省というような色彩を帶びまして、戰爭中は商工省という名前も消えてなくなつたような状態であります。更に戰後におきましても、我が國の日本経済の再建並びに再編成のために、商工省というものが廣く一般生産省という立場に立たねばならんことも、これは御了解願えると思うのであります。併しながらそうかと申しまして、今後日本経済の在り方におきまして、大きな比重を占めるところの中小企業というものを、單にこれまで中小企業振興をやるのだというようなことを申しまして、それに対して何らの機構的裹付けもない状態に放つて置くということは、これ以上どうするわけにも参りませんので、中小企業廳というものを設けるに至つたような次第であります。この中小企業廳が収めますところの、いわゆる範囲というものは、どういう工合になるか。或いは業種別か、規模別かということになりますが、これは中小企業とは何ぞや、その線をどこに引くかということによりまして、人いろいろ意見があろう思います。業種によつて、これではどうしても中小企業でやらなくてはならないという、誰の眠から見てもはつきりしておるところの業種は、はつきりしておりますが、そういうはつきりしない分もありますので、私は業種規模、両方から考えて行かなければ、業種だけで区別するのだ、或いは規模だけで区別するのだというわけには参りかねるのではないかと思います。その他詳細の点は政府委員から御説明申上げます。
  11. 田村文吉

    田村文吉君 予算はどのくらいですか。
  12. 細井富太郎

    政府委員細井富太郎君) 只今大臣から御答弁がございました点を補足いたしまして申上げたいと思います。中小企業廳構想は、企業なり物資を直接所管担当いたさないことになつております。物資の担当はそれぞれ各原局がございますし、他省関係した物資もございますが、中小企業廳におきましては、物資なり企業を直接担当しないで、主として中小企業面の各業種別に見ましても、各中小企業部面指導なり、その他一般的な指導仕事をやつて行く、こういうふうなことになつております。それで大体申上げますと、現在の案によりましては、中小企業廳におきましては、長官の下に振興局と指導局と二局設置いたしまして、振興局におきましては、主として協同組合の問題とか、或いは金融の問題とか、その他中小企業対策一般問題を取扱うことに考えております。指導局におきましては、それぞれ業種別に担当の課を幾つか作りまして、これによりまして各所管の原局と連絡を取りながら、業種別指導なり、振興の具体案を立てて行く。そうしてこれを実行に移しますのは、更に地方的には地方の商工局が中心となりまして、関係府縣廳の連絡調整をいたして参りまして、第一線の実務は地方長官を中心として府縣廳において実施して頂く、これに必要なる経費は本省において持つて行く、こういうような構想であります。  そこで予算の問題でございますが、二十三年度、取敢えず只今大藏省と打合しておりまする程度で、二十三年度におきまして、中央の経費といたしまして千五百二十三万円ばかり、地方経費といたしまして千二百七十万円ばかり、合計いたしまして約二千八百万円ばかりの経費を計上いたしております。但しこの経費の中には、事業費としての中小企業企業者の協同組合の共同施設の指導助成に要する経費は、二十二年度におきまして、二千二百五十万円ばかり計上いたしまして、只今実行いたしておりますが、二十三年度におきましてもこれを更に継続いたしたいというつもりでおりますけれども、一應只今申上げました二千八百万円ばかりの中には、共同施設の助成に関する経費は見送りになつておりまして、將來更に必要があれば追加予算その他で御審議をお願いしたい、こういうように考えております。
  13. 田村文吉

    田村文吉君 大体お考えは分つたのでありますが、そういたしますと、在來の振興課でおやりになつたようなことを大きくして廳でおやりになる、こういうようなことに考えたらよろしいのでありますか。それとも安本の計画をなさるような仕事を、今度ここでなさろうというようなことになるのでございますか、その点をもう一つ
  14. 細井富太郎

    政府委員細井富太郎君) 大体の筋は、現在振興課のやつておりましたことを更に拡充いたしまして、徹底的にやるということになりますが、それ以外の面におきまして、特に重要な点は、中小企業廳の長官が、非常に力の弱い中小企業面のあらゆる場合における強力なる代弁者になるということでありまして、尚商工省の外局として置かれまして、商工大臣の管理には属しますけれども、他の農林省とか、厚生省とか、そのような他の省の所管に属する部面におきましても、直接企業は、先程申上げましたように、中小企業振興に関する代弁者としての仕事は長官がこれをやつて行く、こういうようなことになつております。更に具体的な仕事といたしましては、現在各業種別に強い指導をいたしまする力が欠けておりますので、中小企業廳の陣容を拡充することによりまして、業種別指導を徹底的にやりたい、こういうような構想でございます。  尚人員は大体中央、地方合せまして、予算の上では二百七十人ばかりになつておりまして、こればかりの数では十分な指導が到底行なえないようなことでございますが、現下の財政状況では、この程度で止むを得ないと考えておりますが、同時にこの不足の分につきましては、各方面の官民の試験、研究機関の十分な御協力を願うと同時に、府縣廳に全面的に一つ第一線の仕事として活動して頂く、こういうようなことで補つて行きたい、かように考えております。
  15. 田村文吉

    田村文吉君 もう一つお尋ねしたいのですが、地方に商工局がありますが、その商工局の中に、何ですか、この企業廳の出店ができるわけですか。そうでなくて商工局の人が商工省の指図を受け、或いは地方企業廳の指図も受けて仕事をやつて行く、こういう御趣旨ですか。
  16. 細井富太郎

    政府委員細井富太郎君) お答え申上げます。地方商工局は現在の機構におきましても、商工省地方機関といたしまして、中小企業指導面でも相当仕事をやつて頂いておりますが、今度中小企業廳ができました曉におきましても、特に中小企業廳地方的な機構として、大きな地方的な機構を作る、こういうつもりはございません。全面的に現在の地方商工局にお手傳いを願いましてやつて頂く、ただ必要があれば、或いは担当の一課ぐらいはできるかも知れませんが、それも必要に應じてやるということでございまして、從つて余り人の数もそのために商工局に殖やすということは考えておりません。
  17. 中川幸平

    中川幸平君 只今商工大臣から提案理由説明を承つたのでありますが、本案は行政機構の改革問題でありまして、本案の審議に当りましては、先ず総理大臣か行政機構審議会担任の大臣質疑をいたしまして、その上で商工当局と質疑をいたしたいと存じます。何卒総理大臣或いは行政機構担任の大臣の出席をお願いしたいと思います。
  18. 下條康麿

    委員長下條康麿君) 中川君にお尋ねいたしますが、その総理大臣の出席を要求しておりますけれども、まだお見えになりません。次会に多分お見えになると思います。
  19. 千田正

    ○千田正君 先程田村委員の御質問に対して、大臣並びに政府委員からの御答弁がありましたが、この中小企業廳設置法案中小企業対策の最も重要なるところの一面が、この設置法案の中に抜けておると私は考えております。これは中小企業の対象となるべきものの限界がちつともはつきりしていない。先程は具体的な問題でなく抽象的なお話だけでありまして、大体先程の大臣の御説明の中には、從業者百五十名以内のものが日本においては非常に多い、その辺を対象にすべきじやないかというお話と、政府当局の立場からいえば、從來の商工省における仕事からいえば、中小企業対策の金融関係の問題を大体拡充して行く、大体という概要だけのことであつて、この中小企業対策として必要のあるところの対象物に何ら規定がないということに対して、この点において不備な点が多々あると私は思います。どういうふうに限界を引いて、或いは彈力性を持たせるならば、どの辺に彈力を持たせてやつて行くのか。例えば農村工業の貿易生産物を作るというような問題に対して、中小企業廳の方において面倒を見るのか、いろいろな問題が起つて來ると思いますが、限界がはつきりしていないところの法律だけを置いても何ら價値はないと思う。どの辺に対象とすべきものの限界があるか、その問題をはつきりして置かなければ、中小企業廳ができたとしても、單なる官廳を置いただけという問題にしかならない。この点についてはつきりした限界があるならば、むしろこの際はつきりして頂きたい。こう思うのであります。
  20. 水谷長三郎

    國務大臣水谷長三郎君) 只今の御質問中小企業とは如何なる範囲のものであるか、それが決まらないことは、この法案の非常に大きな欠点ではないかというような御質問でございました。これは中小企業の定義というものは、私は正確に定めることはなかなか困難ではないかと思います。或いは質問者に、それでは中小企業の定義とは如何なるものであるかということを私が逆に質問いたしましても、なかなかむずかしいのではないかと思います。ただ根本的な観念といたしましては、企業者がみずから所有し、且つ少数の從業員を以てみずからその経営に当る独立企業でございまして、当該業種といたしましては、投資額、生産高、販賣高、取扱量等が比較的少く、その活動が少数の事業分野に止まつて、他の企業との間に相互に投資関係のないもの、その他これに準ずるものというようなものが、大体中小企業の根本的観念として考えられるのではないかと思うのであります。要は自由競争場裡におきまして、公正な競争ができるようにするために、政府におきまして特別の指導援助を必要とするものが、中小企業行政の対象となるのでございまして、必ずしも資本の金額、從業員の数、生産額等によつて、機械的、形式的に限界を設ける考えは持つておりません。むしろ常識的に中小企業と言われるものにつき、政府の援助指導の必要という実質的観点から、彈力性ある運用を考えて行くのが正しいのではないかと考えております。
  21. 千田正

    ○千田正君 誠に結構な案であつて、そういう行き方で行けば結構ですが、現実の上で金融という問題が起きた場合には、そういう彈力性も、いわゆる含みを持つて呑んで頂けますかという点も、將來商工金融の問題に対して大きな問題でありますので、実際においては何百何千という数が、こういう金融の斡旋の必要が起つて來ると思いますが、只今大臣の御説明從つて、彈力性あるものとして呑んで頂けるかどうか。この点予め伺つて置きたいと思います。
  22. 水谷長三郎

    國務大臣水谷長三郎君) これはかねがね商工当局といたしましても、國会本会議或いは委員会で言明いたしましたように、この度こういうような機構が発足すると共に我々といたしましては、できるならば中小企業專門の金融機関を設けてやつて行きたいというので、今いろいろ準備し、又折衝を重ねておるのであります。只今の御質問者のお話は、恐らくああいう復金の中小企業ということになると、その範囲が非常に曖昧であると迷惑を被むるというようなことが、私は大体含みにあろうかと思いますが、そういうような点がありますので、この際はつきりと中小企業專門の金融機関というものを決めるのが私は正しいのではないか、その方法に努力して行きたい、このように考えておる次第でございます。
  23. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 商工大臣にちよつとお伺いいたしたいのですが、この中小企業廳設置法案なる内容を見ますと、大体が工業に重点を置いて、商業ということに殆んど関連を持たない法案ではないかと思うのです。この点について見解を伺いたい。  第二番には、現在の統制経済下にあつて中小企業が発展する余地があるかどうかということを考えて見ますと、一面においては、いろいろ指導或いは奬励によつてこのような法案を出すと言いますが、又他面におきましては、統制経済においては價格の統制ということが先ず第一番に取上げられるのであります。その際にその発展であるとか、経営振興させるというようなことについて、價格の統制が嚴重に行われておる今日、果して將來発展性があるかどうかという矛盾を來すと思うのです。こういう点について商工大臣は果してどういうふうにお考えになつておるか。又中小商工業中小企業の発展というものは限度があ、或る程度の限界があるかどうかというる点についても所信を伺いたいと思います。  第三番目には、今まで各官廳におきましていろいろの官廳があるために、いろいろ事業をする場合において、各官廳の連絡を取らなくてはならない。その点について又こういう新しい企業廳ができたために、又新らしく関門が一つ殖えて、企業の発展どころじやない、阻害を來すというようなことが一般國民考えられやしないか、こういう点についての商工大臣の御所信を伺いたいと思います。
  24. 水谷長三郎

    國務大臣水谷長三郎君) 御質問の第一点は、この法案によると、それは主として工業に関する対策であつて、中小商業に対しては何らの対策もないではないか、それはどうかという御質問でございますが、この度政府の発表いたしました中小企業対策は、中小商工業全般に関する対策でございまして、必ずしも工業のみを対象としたものではなく、商業も含めた対策でございます。即ち技術の向上の問題も、経営の能率化の問題も、いずれも工業商業共通の問題でございます。ただ商業につきましては、この対策に含まれていない特有の問題があるのでございまして、それについて更に別にその対策考える必要があろうと思つております。それで今回は特に中小企業廳の中に商業專門に担当する課を設けまして、綜合的な商業対策を立て、それを実施したい意向でございます。指定配給物資の配給機構の問題、或いは問屋制の問題、或いは闇市場の問題等、各種の困難なる問題が多い状態でありまして、これにつきましては、飽くまでも配給機構の一〇〇%発揮、健全なる配給機構の確立、延いては生産能率の向上等、國民生活の確保というものに主眼を置きまして、十分対策を立てて行きたいと思います。形の上から見ますと、非常に工業に偏重のように取られますが、静かに内容を御檢討願いますならば、この度の法案というものは、そういう両方に行き亘つておるものであるという工合に御了承を願いたいと思います。  更に又こういう官廳ができますことによつて、非常に逆に國民に迷惑を掛けるのじやないかというような御議論もありまして、私らもそれを経驗しないわけではないのでございまして、それらの点は十分に氣を付けまして、今後これができました曉におきましては、この法案に盛られた中小企業に関する問題は、全部中小企業廳にして頂けば解決ができて、その他細かい連絡はこちらの方で責任を持ちまして、そういうような点は万遺憾なきように期したいと、このように考えておる次第でございます。  その次は将來中小企業の発展性の問題についていろいろ御質問がございましたが、それは過度の集中排除の法律といい、或いは又独占禁止法の法律が制定されました趣旨に鑑みまして、今後中小企業というものが我が國産業の將來の中心課題になることは、これは言うまでもないのでございまして、私はそういう意味におきまして、今後中小企業というものは十分発展性のあるものであり、又経済民主化立場の上から申しましても、発展させねばならない問題だという工合考えて、このような官廳的な措置を講じたような次第でございます。
  25. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 今第二番目の質問は、統制経済下にあつて中小企業の発展性というものについての御質問でして、いわゆる統制経済によつて價格の統制というものが厳守されておる今日、然らばその中小企業というものの発展ということは、どこに主眼を置くか、現在具体的に申しますと、價格が決まつてつて、而もそれが物價廳において殆んど利潤も認められておらないような價格になつておるのでございます。そういう場合において中小企業の発展というものは、インフレ下におきましては如何なるものを意味するかということについて大臣の御所見を伺いたい。
  26. 水谷長三郎

    國務大臣水谷長三郎君) 先程の御答弁、勘違いしておりまして失礼いたしましたが、今度の三党政策協定におきましても、統制は必要止むを得ざるものに止めようということになつておりますので、今度の芦田総理の施政方針におきましても、できるだけ統制を不必要なものから省いて行くというようなことを述べられておりまして、今後日本経済が、今のような程度の嚴格なる統制が將來ずつと続くということは我々も予想しておらないのであります。それならば、差し詰め当面の問題としてはどうかというのでありますが、中小企業振興というものは大体輸出産業、更に又基本産業の牽連産業、或いは生活必需物資という点に限られておるのでありまして、それらは現在の経済上の下においても、政府といたしまして当然育成して行かなければならないものばかりでございますので、單に統制ということだけの面だけではなしに、外に積極的な主な面が十分あるのでありまして、それに若し最近予想される物價改訂と睨み合せて行きますならば、御心配のようなことはできるだけ排除できるのではないかと、このように考えております。
  27. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 どうも大臣は私の質問について少しピントが外れているようですが、現在の状況では、價格の公定が設定されておりまして、縮小再生産の方向に向うような状況になつております。これが縮小再生産でなく、拡大再生産に向うような対策を講じられるかという、こういう点に帰著するわけです。
  28. 水谷長三郎

    國務大臣水谷長三郎君) 私はこの中小企業が不振の原因は、主として資金と資材の面が一番大きなのでありまして、價格の面は資金、資材の面に比ぶれば私は軽いのではないかと思う。と申しますのは、資金と資材は、外の大企業と同じ程度中小企業を潤しておるならば、それは中小企業なんかにコスト高というものは招來しないものであると、こういうふうに考えております。從つて私は統制経済の下におきましても、若し中小企業に対する資金、資材の面が解決できるならば、私は現在必要止むを得ない形で行われておる價格統制の下におきましても、中小企業は成立つて行くのではないか、このように考えておるのであります。
  29. 中川以良

    中川以良君 私共が長い間念願をしておりました中小企業に対します今回のかような特別の配慮が、政府において考えられましたことは、誠に欣快に堪えないことでございまするが、只今説明の中で承つておりますと、中小企業廳ができて、これは大体の計画並びに指導を総括的にやる廳である。而して別に各物資については原局がそれぞれあつて原局が取扱うという、こういうお話であつたのでありますが、そういたしますると、その他に安本がございまして、これは企画立案の省として、只今物資について関係をしております。殊に最近の実情を見ますと、ややともいたしますと、経済安定本部が余りにも第一線に出過ぎまして、折角の商工省原局というものがその影に隠れて引込んでしまう、非常に地位が弱いということを私共は常々痛感されているのでありまして、今度はここに中小企業廳ができました際におきましては、原局と安本と中小企業廳と、この三者の間に入りまして業者は非常に困難をするのじやないか。窓口が多過ぎるのじやないかということを懸念いたします。先ず中小企業廳関係がどういうふうになるか、あらゆる物資について中小企業廳で扱うものは別に原局があるかどうかということを承わりたいと思います。  それから中小企業廳ができました上は、経済安定本部の仕事は是非ともできるだけ縮小いたしまして、でき得べくんば、企画立案のことに関しましては、中小企業廳に移して頂きたいと私共は念願いたします。この点について如何にお考えになるかということを承わりたいと思います。  只今油井委員から極めて適切なる御質問があつたのでありますが、從來中小企業というものが誠に継子扱いをされておりまして、只今物價の例がございましたが、現実に大企業におきまする重要物資につきましては、物價問題等も物價廳において比較的迅速に又合理的に決定をされているのでありますが、中小企業の生産をしておりまするところの多くの品種、殊に生活必需物資等に対しましての物價の決定というものは、常に重要物資より数ケ月遅れて発表されております。かかるが故に例えて申しますると、昨年の七月に新物價体系ができまして、あの際に直ちに新らしい物價が発表される段取になつたのでありますが、先ず石炭、鉄、その他重要物資の順序で價格が発表されましたが、多くの生活必需物資のごときはずつと遅れてこれが発表されまして、甚だしき例によりますと、私が知つております範囲内におきましては、本年の一月において初めて七月に改訂さるべき物價のマル公が決定した。半年以上もマル公が遅れたという例があるのであります。さようにいたしますると、中小企業は、中小企業に用いまするところの基礎資材につきましては、新らしい價格を以ちましてクーポンが発行されておりますので、新らしい高い價格で入手しなければならない。これで生産しまして中小企業が懸命な努力をいたしましてできます製品は、依然としてこれをマル公で賣らなければならない。この場合中小企業は常に赤字を出しているのであります。これを決して政府は補償しておりません。大企業に対しては赤字融資或いは補償等をいたしておりますが、この中小企業の惨めな実態に対しましては商工当局は十分な御理解がないのじやないかと思います。常に苦しい仕事をしております。そのために止むを得ず中小企業が闇をする。ここに中小企業が闇の温床になるという一つの原因がある。政府自体の政策において御熱意を欠いた点があるがために、かような状態を今日作つたのじやないかと私は存じます。この点につきましても中小企業の價格対策というものは、中小企業振興いたします上に極めて重大でありますので、物價廳におきますあの仕事は、これ亦中小企業廳において、本当に工場の実態中小企業の業態の実情を知つておりまするところにおいて御決定を願うようにさしたらどうかと思います。私共はさように熱望しておりますが、從來のように物債廳と中小企業廳関係が、商工省と物價廳との関係にあります限りは、中小企業は救われないと思うのであります。  もう一つは、從来は各企業につきましては、一々企業の許可制度を採つておりましたが、今日は企業の自由を許しております。然るが故に、中小企業のごときは到るところで自由に企業を開設できるのであります。ところが中小企業に対しまして、一方において企業の自由は認めながら、あらゆる物資に対します統制を強化している。こうなりますと、ややともいたしますと、中小企業はやたらに雨後の筍のごとくできまして、少い物資を奪い合う。そのために折角中小企業が発展しようとしても、お互いが共倒れになる虞れがあるのであります。かような問題に対しまして、中小企業を健全に振興育成させます点におきまして、企業の自由という点につきまして、何かのそこに一應の御制限をお加えになるというお考えがあるかどうか。それとも一應統制を或る程度大幅に改訂をされて、そういう矛盾をお取除きになるお考えがあるかどうか。その点を伺いたいと思います。今日の統制経済企業の自由におきまするところの両者の矛盾はあらゆる生産に大きなる悪影響を及ぼし、これがために正直な者はいつも馬鹿を見、不正な不徳漢のみ太るという今日の中小企業の現状でありまするこの点に対する御所見も併せて承わりたいと思います。
  30. 水谷長三郎

    國務大臣水谷長三郎君) 四つの御質問のうち二、三を私がお答えしまして、一と四は局長から御答弁申上げます。  中小企業廳と安本との関係でありますが、これは私の考えから申しますれば、中小企業プロパーの企画は、できるだけこれは中小企業廳でやらねばならんと思つております。ただこの中小企業と他の産業との関連における企画というようなものは、これはやはり官廳の性格上、安本が商工省と緊密なる連絡の下にやるべきではないか、このように考えております。その間の調整をできるだけとつて來たのでありますが、幸い安本に対しましては、多くの優秀なる事務官僚を商工省から送つております関係上、他の省に比べて安本、商工省関係に私は非常にうまく行つておる。今後もそれ以上、十分な連絡、調整をとつて行きたい、このように考えております。  それから物價の問題でございますが、これは誠にお説御尤もでございまして、現にあの東芝のような、ああいう大工場におきましても、その完成品の價格の設定というものが非常に遅れまして、その間企業に大きな迷惑を掛けている。ああいうような大工業においてもそうでありますが、定めし中小企業の場合におきましては、その與えた打撃はより甚大であるということは、私は十分に認めておるのでありまして、この度の物價改訂に対しましては、そういうようなことはできるだけ少くいたしまして、苟くも眞面目な企業が成立つたための適正なる價格というものは、タイムリーに一つつて行かなければならんし、又生産担当省の商工省といたしましても、この点物價廳と緊密なる連絡をとりまして、できるだけこれまでのような弊害を除きたいという工合考えておりまして、御趣旨には誠に同感でありまして、私もいろいろ各種の工場を視察に行きましたときに、始終聞かされた問題でありまして、全力を注いで是正したい。このように考えております。
  31. 細井富太郎

    政府委員細井富太郎君) 中小企業廳ができました曉におきまして、中小企業廳原局との企業なり、物資の扱いについての関係を御説明申上げます。先程申上げました通り中小企業廳は直接企業なり、割当の物資を所管いたさないのでございますが、原局との関係を緊密にいたしますことは勿論必要でございまして、そのために中小企業廳には、各原局からそれぞれの所管の担当官を、中小企業廳の特に指導局の業種別分けた各課に兼務といたしまして、そうしてやつて行く。從つて業者から見ますと、物資の配給を受ける窓口は、各原局なり或いはその系統の商工局関係でありまして、そのために、中小企業廳ができたために、窓口が二本になつて困るということはないうようになつております。  それから企業整備の問題でありますが先程中川委員からお話のあつた通り、終戦後企業許可令、企業整備令、その他の企業に関する統制法規は撤廃いたされましたので、今日何人が如何なる企業を始めるのも自由だ。併しながら必要な資材は、特に重要資材については強力な統制が布かれておるというために共倒れになる虞れがあるということでありますが、この点については、これからは戰争中のような強権を以て企業の廃止なり、合併なり、その他企業整備の命令をすることができない。又企業許可令のように、新らしく開始するのを抑えるということは、自由なる競争をさせようという世の中においては、そういう点はよくないことであることは勿論でありますが、併し今日のように非常に重要な物資が不足しておるときには、その資材を有効に使つて、良いものを作るというためには、素質の悪い所には行渡らないということは当然でございまして、このためには、場合によつては一定の能力に関する制限を附けまして、その制限に達しないものには資材は附けないということも行われるかと思いますが、又物によつては統制下において自由公正な競争を行わせまして、要するに自分たちの製品が悪いためにお客が取れないというような所には、次の機会において割当を調整して行くということで、統制の下においても自由なる力の競争をして貰うということも必要かと思います。法制的な強権を以てやることはいたしませんけれども、成るべく自由な、公正な競争の下に、或る程度の制約をして行くということは止むを得ないことと、こう考えております。
  32. 下條康麿

    委員長下條康麿君) 本日はこの程度で止めて置きまして、尚商工大臣に対する御質問もありますし、総理大臣の御出席を願つておりますから、この連合委員会を続けたいと思います。それで次会は大体総理の御都合を伺いまして、明後日の水曜日の午前十時から開きたいと思つております。決まりましたら改めて公報を以て御通知いたします。散会いたします。    午後零時十六分散会  出席者は左の通り。   決算委員    委員長     下條 康麿君    理事            西山 龜七君            山下 義信君    委員            吉川末次郎君            今泉 政喜君            中川 幸平君            田方  進君            谷口弥三郎君            平野善治郎君            小野  哲君            駒井 藤平君            伊達源一郎君            山崎  恒君            千田  正君   商業委員    委員長     一松 政二君    委員            中平常太郎君            松下松治郎君            黒川 武雄君           深川榮左エ門君            油井賢太郎君            小林米三郎君            佐伯卯四郎君            高瀬荘太郎君            波田野林一君            廣瀬與兵衞君   鉱工業委員    委員長     稻垣平太郎君    理事            下條 恭兵君            中川 以良君    委員            大屋 晋三君            平岡 市三君            堀  末治君            楠見 義男君            小宮山常吉君            玉置吉之丞君            田村 文吉君            佐々木良作君   国務大臣    商 工 大 臣 水谷長三郎君   政府委員    商工事務官    (生活物資局    長)      細井富太郎