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深川タマヱ君 この
法案を一讀いたしまして、私は大體これを通過さしても大した誤りではないであろうと
只今考えておりますが、この
機會に序でに
ちよつと内容につきまして
希望條件を申上げたいと存じます。
去る三月一日から
孚見聞に亙りまして、私
たち勞働委員が数名お隣りの
北海道出身の
自由黨の掘さんの御慫慂によりまして、厳寒の時期の
北海道の
勞働情勢を視察して呉れとおつしやいましたので参りまして、
炭鑛も見學いたしました結果、私が感じたことを丁度
大臣もおいでのときでございますので申上げたいと存じます。
水谷大臣は昨年
現地を御視察なさいましたのですでに蛇足かと存じますけれども、生々しいその後の報告でございまするから、お採りになるところがございましたら御採用願いたいと思いますが、先ず第一番に第
五條一號の
石炭の
生産に關する
事項でございますが、
經営者側の簡單な言葉を通して見ますと、
資金と酒とがあれば
石炭は幾らでも出るという
お話でございますが、
資金が非常に
石鑛に届くのに暇がかかる。どういう
機構にな
つておるのか存じませんけれども、それで非常に迷惑をしておるという
お話でございました。それから酒がそれ程
生産に有效なのであるならば爲政者としては固よりよく考えなければならん問題じやないかという氣持を持ちました。ところが
勞働組合側の
代表者の話によりますと、今日一人富りの
生産高は戰争中に勝るとも決して劣
つていない。ところが實際寮の
厚生施設が非常に悪いので、一日出て暗い坑道を
通つて眞黒い
石炭に向
つて一生懸命掘
つて寮に
歸つて來ても、寒い所で
暖房施設もないし、食物も悪いし、何の慰安もないので、どうしても長續きしないで引上げる人が多い。
礎つて人數が足らないので全體として
生産高が悪くな
つておるから、結局寮の
厚生施設とか
住宅問題をよくして呉れないと、完備しておる、完備しておるとい
つて誘われて來ても全然違うので、ということを
勞働組合の方がおつしや
つていたのは
眞髄に觸れていると考えましたので、私は
國管が通過いたしましたので寮の
施設は十分なさるとは存じますけれども、
十分親心を働かす必要があると思います。それから尚
住宅のことでありますけれども、豫想以上に
住宅難でございますので、單に
炭鑛のみではございません。
北海道の
失業救済の大きな癌にもな
つておるのでございますけれども、この
木材の
統制が行過ぎと申しますか、やはり
火災防止のために
セメントによる
永久住宅の計畫でありますけれども、
セメントの今日の
事情では
ちよつとなかなか期待持てませんので、もう少し
木材の
統制を緩和さすとここと、それと
炭鑛の
經営者の話によりますと、家を建てるために
資金の融通をして呉れないそうでありますが、
日本の
基礎産業であるところのものを奨勵するのに大きな癌にな
つておるのが
住宅難とするならば、こういう
方面にも
復金の金なんかもつと融通するように働かせなければいけないと、こういうことを感じました。それから第三者として横から考えますことは、やはりここに長く、
坑夫を長續きさすためには、近親も少い、ああいう
縁故者の
少い所におる人のために、
當局で婚姻の媒介など大いに積極的にして集れなければならんのじやないかということを感じて参
つたのでございます。
それからその次に第
五條の第二號、
石炭鑛業の
技術指導でございます。これはかねて想像してお
つたところでございますが、行
つて奇怪に感じましたことは、
ガスがあるところで
爆破機がない所であ
つたかも知れませんけれども、今日
石炭の
増産がこれ程やかましく云われておりますが、
第一線の切羽の道具は鶴嘴と
圧搾空氣による
採炭機というものであ
つたのでありまして、私は非常に失望いたしました。あれが世界の
炭鑛の最高峰を行く
技術かも知れませんが、非常に物足らないと存じました。今日
日本では戰争が終了して人を殺す武器の
研究はしなくてもよくな
つたのでありますから、もう少し
科學者を動員して、
炭鑛業に射してもつと優秀な
機械を展開して、もつと
機械化さすことが何よりも先んじて急ぐべきことだと感じましたので、この點
一つ十分御考慮を願いたいと存じます。
それから第四號の、
炭鑛業の
勞務に關する
事項でありますが、御
承知の
通り組夫が入替えにな
つております。これで非常に混亂を生じておる。
組夫自身も困
つており、山主としても困
つておるので、
指導する必要があると存じます。それから
選炭婦、女が
石炭を擇り分けておりますが、あれは
勞働基準法
施行以來働く時間が少くな
つて、
手取金が少くな
つたので、もう少し働く時間を延ばして呉れという陳情が來たので
現地を観察いたしましたけれども、これは
軍勞働だと感じました。大きい
石炭を選炭する、あれを八時間もやらせることは大變だと存じます。生活ができないならばもつと
給料を上げて貰うように、私は女の
立場からお願いしたいと思います。
それからその次に、第
八條の第一號の
石炭の
配給のことであります。これに関して感じましたことは、御
承知と存じますけれども、
北海道には
石灰が山ほど積んであります。もうすでに掘り出して貯炭ができております。ところが
輸送がきかないために、
自然發火をいたしておりますが、それが意外に
坑夫の
勞働意欲を減退さしておるのであります。今日
肥料も同じことであります。四月過ぎて、彼岸過ぎての麥の肥にな
つて、硫安が山ほど積んであ
つて溶けておる。
輸送がきかないのであります。今日
石炭や
肥料より先に
輸送しなければならんどんな物があるかといえば、
主食物とか
燃料とか、あることはありますが、
輸送の方の
監督を十分なさ
つて、
機關車も餘りないでしようけれども、もつと操作を上手にするように、
當局の方で考えて貰いたいと思います。
それから第三號の、
石炭及び
亞炭の有效利用に關する
事項、これは昨年關四の
勞働情勢を視察して、
火力發電所の
技術者から聞いたことでありますが、今日
日本の汽車では
石炭を焚いておる。ところがあれは女中が
家庭で風呂を焚くのと大して變らない
技術であので、非常に
石灰が不經濟に使われおる。あれを
火力發電にすると、五分の一の
石炭でよいそうであります。勿論
火力發電の補修の問題もあります
こういう
方面にもう少し著眼して頂きたいと思います。まだ他にあるのでありますが、他の方もありますのこれだけにして置きます。