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證人(
吉村正君) 実はこの
法案についての
意見を求められまして出て参りましたのでありますが、この
法案についての
意見を
確信を持
つて申上げることは実に困難を今感じておるのであります。それは
一つは私の不勉強にもよりまするが、
一つは私の
考えによりまするというと、こういう
法案について
意見を申しまするのには、この背景をなすところの
材料を必要とするように思うのであります。と申しますのは今までの
政党において、
政党の
資金はどういうふうな
工合に大体出て集ま
つているか、又どういう
寄附から成立
つているか、又どういう
工合に
支出されているかという、正確でなくても、大体の
材料があ
つて、それに基きましてこの
法案というものの是非を
判断する必要があると思うのであります。実は我が國につきましては、そういう
材料を私は寡聞にして知らないのであります。又集める時間もありませんでして、そういう
材料を全くなしにこの
法案だけを見まして
判断を下すのはどうも甚だ下しにくいのであります。併しながらこの問題につきましては、諸
外國には例があることでありますので、止むなく
日本の実情とは多少違いますが、諸
外國の
実例等を多少見まして、
判断を下さざるを得ないとこう思うのであります。
政党の
資金につきまして
國家がこれに対する態度は三つあると思うのでありまして、
一つは第一次
世界大戦後に
ドイツ共和國において行われましたが、大体において全く自由放任する
方法だと思います。いま
一つは
イギリスの
やり方でありまして、
選挙費用についてだけ
法律を
以つて統制をする、取締りをするという
やり方でありまして、いま
一つは
アメリカに行われておりますところの
収入並びに
支出両面に亘
つて法律的な
統制を加える
方法であるとこのように思うのであります。その
目的は言うまでもなく第一條にありますように、
政治活動の
公明を図り、
選挙の公正を確保し、以て
民主政治の健全な
発達に寄與することにあるのでありますが、先程お二人の
証人の方の
お話がありましたように、いま
一つ是非
考えなく
ちやならんことは、こういうことをなすことによ
つて、
政党が
政党としての本來の
性質を失わんようにするということは非常に大切なことだと思うのであります。
アメリカあたりでもこの問題につきまして、実施した結果そういう点についての心配なり、
從つて警告なりが出ておるのであります。
政党は元來、いろいろな
政党については
定義もありますし、
政党の本質についていろいろ述べておりますが、私の
考えているところによりますと、大体五つばかり重要な
政党としての
特徴を持
つておると思うのであります。
第一は
政党というものは自発的な、
ヴオランタリイな
人々の
集まりだということであると思います。任意的な
一つの
集まりでありまして、
給料なしに働いておるところの
人々によ
つて、一定の
給料なしで働いておる
ヴオランタリイな
人々によ
つて作られているものである。これが第一の
特徴であると思うのであります。こういう
特徴がこういうことによ
つて損なわれるようなことになりましては、折角こういうものを
作つて健全なる
民主主義の発展を図られる、その
民主主義のうちにおきまして最も重要なる役割を演ずるところの
政党が萎沈滞するということを招いてはならないのでありまして、そういう点につきまして、
一つこの
法案を作るに当
つて一つの
角度を以て見ることが必要であると思うのであります。そういう
角度から見ることが必要でございます。
第二には
政党の
特徴は
会員組織であります。この
会員というものは
経済状況の変化と共に変
つて参るのでありまして一定不動ではありませんが、メンバー・システムにな
つておるということが
政党の
特徴であります。
政党の柵の中にどうしても任意的な、先程申しましたように
團体と申しますか、
会員組織と申しますか、
政党の
組織内に留まるということを
統制するようにはできないと思うのであります。それから
政党は
主義政策を綱領とするということは申上げるまでもありません。
第四に
政党というものはやはり
政治を支配しようという
希望を持
つておるものでありまして、全然政権を把握して
政治を支配する
希望なきものは
政党ということはできないと思うのであります。もう
一つ最後に
公職についてのいろいろな
選挙に携わり、推薦したり、指名したり、支持したりするようなことであります。大体そのことが
政党の
特徴と思うのでありまして、ここに掲げられております第三條に
定義が載
つておるのでありますが、これにつきまして、これでもよいようでありますが、何か少しこれでは物足らんじやないかというような氣がいたすのであります。そういう
工合に
政党が
特徴を持
つておりますので、その
政党が公正な
活動をすると同時に、
政党が
政党たるの
性質、意義を失わないようにして行かなく
ちやならんということが大切なことであると思います。
それで大体この
法案を拝見して見ますと、
アメリカが採用しております
やり方を大体採
つておるようでありまして、
アメリカではこういう
工合に、一本の
法律として
規定されないで、いろいろな
法律がでております。尤も州によ
つて違いますが、いろいろな
法律が出まして、そうして大体
日本の
法案に盛られておるように今日な
つておると思うのであります。それで
アメリカの
方法でございますと、
収入並びに
支出の
両面について
統制を加えておるのでありますが、尚
日本の
法律と違
つております点は、
支出の方から申しますと、
支出につきまして合理的なものと非合法的なものと、或る州に置きましては
列挙主義を採
つておるのであります。何が合法的であるか、何が非合法であるかということを列挙しておるのでありますが、この
法案で見ますとそういう点がありませんので、
支出する場合において
選挙の
管理者、或いは
政党の方で多少不便を生ずるのではないかと思うのであります。それからこの
期定はまだ私詳しく
法文は読んでいないのでありますが、これを檢閲いたします
方法でありますが、これはただ一般に任せておくのかどうか、公告されたものをどういう
工合に檢閲するのであるかという点についての
規定が何か
はつきりしていないように私は思うのであります。それから
アメリカの先程申述べました
合法的支出は三分の二の州がこれを列挙しております。大多数の州が列挙しておるというふうにな
つておるのであります。二十四條の
寄附のところでありますが、この
寄附の
條項に、
候補者自身の
支出も含まれておるのかどうかということが問題でありまして、この
規定だけでは、外に
規定があるのかも知れませんが、どうも
はつきりしないように思うのであります。それらの点につきまして、私はひつくるめて申しますと、この
期定だけではどうも如何なる
寄附について制限が加えられておるのか、又如何なる
支出がいけないのであるかという点が十分明らかにな
つていないように思うのであります。そういう点をもう少し、他の
法規で、
選挙法案等で
選挙に関することは決ま
つておると思いますが、併し
寄附なんかについて、もう少し
はつきりして置く必要があるのではないかと、こういう
工合に
考えでおるのでありまして、その三点につきましては、先程申しますように、私はこういう
法律をどうしてもやらなく
ちやならんという程強く熱望も感じませんが、又や
つていかんということも
考えないのでありまして、如何に
法律でやりましても、やはり逃げ道があると思うのであります。
アメリカあたりでもいろいろな
法律を
作つてや
つておりますが、結局その報告に漏れるところの
収入があ
つて、
政党の
収入がどのくらいあるか分らんということは、多くの学者がそれを言
つております。結局は
法律を作りましても漏れるのであります。
イギリスのごときは、
法規はありません。併しながら
イギリスにおきましては、
収入や
寄附については余り問題が起
つておらないのであります。これは
イギリス人の
政治的な意識が、水準が高ま
つておるからかも知れません。併しながら一般的にいいますと、こういう
法規を
作つておる國におきましては、
選挙費用が割合に少くて済みます。全然持
つておらないような、第一次
大戦後の
ドイツなどにおきましては、
選挙費用が非常に余計掛か
つておる、そういう点からいいますと、こういう
法規を持つことによりまして若干の利益はある。若干の
目的を達成することができる。こういうように
考えるのであります。併しこの
法規だけによりまして、
政党が必ず非常によくなると、そうして
民主主義が達成されるというわけには参らないのでありまして、一に
法規の
運用の仕方によるのでありまして、この
法規の
運用を過つならば、
却つて冒頭に申しましたように、ヴォランテイアな
團体たる
政党の
活動を阻害するというようなことになる虞れがあるのであります。そういう点につきましては、実は
材料を以ちまして
お話を申上げなければ
確信のあることを申上げることができないのでありますが、そういう
材料がないために、甚だ曖昧なことを申上げたようでありますが、私の
意見は以上のような次第でございます。