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政府委員(
林敬三君)
只今曾祢次長から申上げましたことで概ね盡きておると存じますが、尚命令によりまして少し附け加えまして、この経過及びその
人選いたしましたところの人となりということについて、少し附加して申上げさせて頂きたいと思います。
これは御
承知のように、いわゆる
國家公安委員は
政府で案を作りまして、そうして、どうしてもこれは
國會の
同意を得なければならんということに相成
つております。そうして
同意を得て
國家公安委員が
任命になる。
國家公安委員が
任命になると、
國家公安委員が
國家地方警察本部長官を
任命する。
國家地方警察本部の
長官が三
萬人の
警察官を上の方から
任命をして行く、その
任命が全部終
つたところで
國家警察法が
施行される。その
施行される時期は三月七日より遅くな
つてはならない。こういうことに
法律の
建前がな
つておりまして、去る二十六日に
お願いをいたしましたわけでございます。
初めにこの案を作りますとき、これはそういう
性格でございますので、即ち
政府で作り上げると言いますか、
閣議で作り上げると言いますか、
閣議がその
人選をなさるというくらいの大切な気持を以て取扱うべきものだと思いまして、極力
閣議中心主義と申しますか、
閣議で、上の
方々に御
人選を
お願いするような形を取
つておりました。固より私共下僚の方では、その下調査はいろいろ命を受けていたしましたし、又お
考えになるについてのいろいろの資料というものはお
出しを願いまして、
閣議の批判を仰いだ次第であります。
それで申上げるのも恐縮でありますが、この
國家公安委員を置きます
根本の
性格、
必要性というものが、極く大きく分けますと二つあるわけでありまして、
一つは
警察官というものはますます今後專門化して參るわけで、又これからは犯罪も功妙にな
つて參りまして、專門化した
警察というものが必要にな
つて參ります。併しそれだけに、專門家と申しますか、
警察だけに片寄るというような思想になる
恐れがあるのでありまして、これからは
警察の
民主化を圖らなければならないという時において、ややもすれば專門家化し、化石化する
恐れがあり、又極端に言えば獨善化する
恐れがあります。そういうことを避けます
意味において、官吏の
經驗なく、又
公吏の
經驗なく、又
警察官の経験もないという純粋の
民間人を以て
最高の
責任者にして置く。こういう組織をとることが一番好ましいことであろうということが、これを置きます
所以の
一つ。又他の理由としましては、先程も
ちよつと
お話がありましたように、從來ややもすれば
警察というものが、
政治に悪用されたというような聲もございます。又その虞れもあり、又若干その
事實も認めざるを得ないようなことがあ
つたと存じます。今後の
警察というものは、極力そういう
政爭の具といいますか、
政治の渦中に入るということを避けて、正しい道を歩むものでなければならないという點から行きまして、又
政府の
大臣の直屬とせずに、
大臣の下ではありますが、殆んど獨立の權権限を有するところの
國家公安委員というものを作りまして、その
委員が
警察のことをやる。こういう形にいたしまして、
政治上の或る
程度の、良い
意味における連繋を取りつつも、悪い
意味の掣肘を受けることのないようにする。そういう
意味がもう
一つあ
つたと思います。それでこの
選考に當りましても、この二つの
條件を頭に入れて
考えて行くということを
根本の理念といたしまして、現
内閣の
閣議においてはお諮りがあ
つたように私共見るのであります。それで從いまして
先方のやり方としては、何黨から推薦なさる方を選び、何黨から推薦なさる方は選ばないという何黨という形ではなくて、むしろ、例えば
學界とか、
實業界、
宗教界、
勞働界、文藝、
報道界、
地方自治、或いは
農村關係、そういうようないろいろの分け方を
考えてみまして、その中で、今の前提に即應した優れた方という者を、極力閣僚の方が率先して、その他の
方々によ
つて考えて頂いたわけでございます。そうして三十数名
候補者の
リストができ上りまして、それから後もいろいろの新しい方、思いついた方も入れて頂く、又それらの
方々を
暗黙裡には實は
資格を調べていたわけでありますその
資格としましては、いろいろの
條件がついて、なかなかむずかしいのでありますが、勿論
公職追放の
關係のある方はいけません。それから一番困るのがなんといいますか、
警察職員又は
官公廳におけるところの公務員の前歴のない者ということでありまして、一切の
官公吏、これは
政務官をも含みます。こういう
經歴を、現在は勿論過去においても持
つていた者は
法律上いけないわけでありまして、例えば村役場において書記をしてお
つたような方であ
つても、或いは役所で
屬託をしておられた方であ
つても、その
屬託がいわゆる本式の
屬託であ
つて生活給を
貰つて公務に專ら從事していたという方は、これはいけない。それから又教職員であるとか、
判檢事、それから神官、神職、特定郵便局長なり、そういう方もいけない。こういう
條件でありますので、
暗黙裡にそういういろいろな
諾條件を調べて見まして、そうして又その中で、
從つてそれ故に不適格になる方が出て來たあけでありまして、それからいろいろのことを
考えまして、そうして
曾祢さんから
お話がありましたように、十五六名の
リストを作りまして、そうして
關係方面と折衝をいたしましたわけでございます。その方の
關係の
意見も一致をみまして、又
政府としましても、それらの中から見て、最も
適當と
考えられます方をここに五人決定して御
提案をいたしたわけであります。もつと廣くと申しますか、實は
衆議院の方で、この二十六日に
出しました時に
衆議院で
お話のありました
所以のものは、何故事前に、
同意を得る
機關であれば、
人選を固める前に話をしなか
つたか。こういう點が一番強い
お話でありました。それで、できれば勿論この
法律上から申しますれば、
政府が
原案を
作つて、その
政府の
原案を
國會の
同意を仰ぐ、どうしても
同意の得られないときは、又他の
候補者を
政府から
出して又
同意を得る。
法律上
眞正面から讀めばそういうものであります。それでいかにも杓子定規にそれをや
つた形もあるわけでありますが、併し先程も
お話のありましたようにもう少し
日にちがございますれば、
日にちのあるというのは、實は一番あれしましたのが
政變でございまして、これが固りかかる頃に
政變にな
つて參りまして、
政府の方としての決定も十分に進捗ができないいろいろの
事情もございますが、それから又
片方議會の方も外の
法案が
止つて參りましたので、更に二十四日も私ここに
伺つていろいろお話合を申上げたようなわけでございまして、
議會の方も、
衆議院も参議院も
自然休會になるというような形勢にございました。そこでゆつくり
國會側ともそこのところを
政治的にもつと
圓滑に
お話をして案をお
出しするというような裕りもなく、もう二十七日には
休會にな
つてしまう。こういうことを豫想して
先方の應諾と言いますか、了承というものも非常に急ぎまして、二十五日に返事をして貰う。そうして二十六日にとにかくこれをお
出しするというようなことにいたしたわけでありまして、その點いろいろ
日にちのない點については誠に恐縮に存ずるわけでございますが、實は何とも他意のない、
自然現象及びいろいろな引つかかりでこういうことに相成
つてしま
つたことを深くお詫びを申上げる次第でございます。
それから
候補者が五人ここにお
出しいたしてございます。これは概ね御
承知の方もおありでございます。極く簡單に申上げますと、
金正という方は、職歴はここにお
出ししてある方でございまして、元の職業は汽罐工をや
つておられました。それで
國際勞働會議の
確か代表でございましたか、隨員でございましたかで、向うへ行かれたこともある方であるそうであります。それから
清瀬さんでありますが、これは
辯護士をずつとや
つておられまして、それからラクビーの選手、
法學士、
文學士でありますが、この
辯護士の方も、本職で
辯護士をやるということになりますと、この
公安委員の
仕事と兩立いたしませんわけでございまして、その點で法曹界には或いは
辯護士としてならば、
清瀬さんよりも
聲望、
識見のある方は多いとも存じますが、併しその他の點で體育會の
理事長であり、非常なスポーツ・マンでもある。それに
辯護士を有名な方で
廢めて頂くというわけには行かない。或は
廢めなくても、殆んど名目だけにして頂くというわけには行かない方が多いわけでありまして、又そういうことをや
つて頂く方には非常に年を召した方が多くて、又そういうのはいろいろな
條件として當らないような状態でございますから、やはり
清瀬さんを
お願いしたらいいと思います。それから辻さんはこういうような
經歴を持
つた方でございますが、非常に
獨創的意見の強い、そうしてなかなかの
意見のある方のように承
つております。それで殊に
警察装備の
科學化というものが大變問題になり、今後の
一つの大きなトピックは、要するに
警察装備の
充實、
科學化ということであると思います。そこへやはりこういう
方面のエキスパートの人にお入り頂くことは、誠に意義のあることと思考するわけであります。植村さんについては御
承知の方が多いと存じます。
婦人の方としてはやはり第一人者であり、又
宗教家としても秀れた方と存じます。御本人は、これは
國會にお諮りをいたしますからお名前を頂きたいということを
言つても、非常にこれは辭退をしておられたのでありますが、まあ
一つ挫げて御
承諾を頂いたようなわけでございます。それから生方という方は、これは
町村長會からの御推薦がありまして、又
群馬縣における
聲望は誠に秀れた方のように承
つております。それでいろいろ群馬懸ではやられておりますが、それは皆辭められまして、現在のような肩書を持
つておる方でございます。そのような
事情で以てこの五人の方に
お願いをいたしたいと思うわけであります。よろしく
お願いいたしたいと思います。