○國務
大臣(栗栖赳夫君) 一番最後のお尋ねから申上げたいと思いますが、私は物價廰を主管いたしております一方、運輸材政、物價との両方の総合調整を相当いたしておる者であります。財政上の辻褄を合せるという点も勿論大事でありますが、先程申しましたように勤労者、
國民生活の安定という点に相当に重点を置いて考えたのであります。そこで物價と
運賃との
関係については前回申上げたのであります。併し皆さんの大方が今回はお揃いのようでございますから、もう
一つこれを讀まさして頂きたいと思います。今の
数字の割合でありますが、私はこれを二つの面から觀測いたしたいと思います。物價の中に織込まれるところの貨物
運賃についてどういうパーセンテージを占めておるかということを先ず申上げたいと思います。それから尚アメリカの例も
お話がありましたが、お説はその
通りであります。併しその他の今窮迫したる日本の経済、殊に
國民所得といたしましても、アメリカにおけるがごとき
國民所得の構造が恒久性、若しくは持続性、或いは強靱な性質というものがないので、一時的の
國民所得、永続性のない
國民所得、或いは脆弱性のある
國民所得の
関係においてこれが負担し切れるかどうかという点について両面から
一つお答えいたしたいと思います。
先ず物價と
運賃との計数上の
関係について申上げたいと思います。
國鉄貨物
運賃、汽船
運賃、機帆船
運賃、並びに小運送及び港湾荷役の料金等の輸送費が、價格の中に占める割合は極めて大きい。
只今物價廰が算定しております補正價格についてこの割合を檢討して見ますと次のようになります。この場合に
國鉄貨物
運賃は、今目途と
政府がいたしておりますのは三倍半、汽船
運賃は三倍、その他は二倍強の引上ということを想定して補正價格を算定した結果について申上げたいと思います。石炭について補正價格の二〇%が輸送費であります。コークスが一八%、石油が一五%、銑鉄鋼材は二四%、セメントは一四%、硫安が七%、過燐酸石灰は一二%、曹達灰は一四%、苛性曹達は一五%、それが輸送費であります。
この輸送費は一切の輸送費を含んでおりますから、その中で
國鉄、
運賃だけを抜いて見まして、價格の上に占める割合を申上げます。これは石炭については補正價格の五%、コークスは三%、石油は六%、銑鉄は六%、鋼材は一三%、セメントは五%、硫安は二%、過燐酸石灰は四%、曹達は八%にそれぞれな
つておるのであります。
こういうような基礎の品物についてかように上
つておりますので、これが総合され、これによ
つていろいろできました生活必需物資その他はそういうものが組合わされておりますから、尚相当に上
つて行くという
関係になるのであります。そこでこれが
只今石炭を使
つて肥料を作るということになれば、両方にそれが加わるわけであります。そうしてそれが米の價格のパリテイ計算のときにかか
つて來るということになりますので、相当大きな割合を占めるといことに相成ると思うのであります。
それからアメリカの例をお採りになりまして、運送費の占める割合を
お話になりましたが、これは私も同樣に考えております。併しアメリカは先ずノーマルな経済状態にあります。日本の経済状態は非常にアブノーマルで危ないのであります。これは
小野委員も申されたように、非常に事情が違うのであります。その上これの元になる
國民所得の点を考えますというと、一兆九千億というような
数字にな
つておりますけれども、これをアメリカの
國民所得などに比べますと、税の負担そのものについても大藏
大臣が種々申しておりますように、非常に脆弱性その他があるのであります。
こういうような
現状において、
小野委員も申されたように、直ちにこの貨物
運賃の相当の引上げを行い、そうしてそれ以上この生活必需物資等の價格を引上げるということが困難だ、こういうことに相成るわけであります。仮に尚上げ得るというようなことで、倍率を四倍にして置いて計算しておりますが、そうすると安定帶物資の指数は今は六十五の七割ということで、七割増ということで、百十にいたしております。それでも尚五百十五億の補給金を必要とするのであります。これを四倍にしますと、大体百三十から百三十五ぐらいの倍率に
なつたのであります。そうしますとそれは併し非常に高いものでありまして、
國民所得の現在としては尚負担ができないものでありますから、それを價格補給金というもので補いますと、五百十五億の上に相当大きな補給金を加算しなければならんことに相成るのであります。で安定帶物資はそれでよろしうございますけれども、消費財物資につきましては一・七倍、即ち七割増、或いは一・八倍、八割増だけでは到底吸收し得ざることになるのでありまして、そうしてそれは或いは二倍からちよつと超えるような
数字に相成
つておるのであります。
そういたしますと、
國民の生活というものが相当窮迫を告げますので、そこでそういうことになりますというと、更にこの物價に織込んむ賃金水準は三千七百円にいたしておりますが、これを相当な割合において引上げを行わなければならなくなるのであります。そうなるというと、予算の面におきましても人件費、物件費の面に非常な嵩みを生じますと同時に、特別会計の中においても人件費が更に食み出して來まして
赤字が殖える。これを
一般会計その他から補給しなければならないというような、いわゆる物價と賃金の悪循環を表すというようなことに相成るのであります。
それで実はあれを考え、これを考えて、いろいろいたしたのでありますが、貨物だけは現在の観点におきましては、三倍半という倍率以上にはどうにも財政上、或いは
國民の生活上負担がし切れなくなる、こういうような点に計数上は立ち至つたのであります。そこでかれこれを調整いたしまして、独立採算制を貫く面もありますが、別に
國民生活の安定とか、その他の物價政策のためにそれが十分に貫けない点があります、國家、
國民全体のために貫けないのでありますが、そこで百億余を
一般会計から特別会計に繰入れて、それのいわば補給をするという理論が、ここに出て來るわけに相成つたのであります。かようにして調整を取つた結果であると思うのであります。
で一番最初に
お話になりました、
運賃政策の今回の倍率の決め方によ
つて独立採算制が非常に歪められておるという
お話でありました。これは政策の軽量の順序、又現在窮迫しておる物からの
関係もありますけれども、決して歪められておるという
意味は我々はないと思うのであります。それは今のお示しのような減價償却費とか、或いは行政費を取除いて、
一般から補給した、編入して、これは小さなような問題でございますけれども、相当の議論を経て岡田
大臣の御盡力その他によ
つてできたのでありまして、そういう点も考えておりまするし、それから尚ヨーロツパの第一次大戰のあとのインフレーシヨンの進んだ國を見ましても、そこの
数字は、多くは貨物
運賃と旅客
運賃との割合その他につきましても、
國民生活に及ぼす影響が多い貨物
運賃については引上を低目にいたしておるのがあの当時の書類その他に見えておる
通りであります。
それから私は貨物、旅客の
運賃について、結局最後の負担者がどうか、貨物は一種の税と同じように
國民大衆の
一般にかかる、旅客はいろいろ
お話がありましたように、荷物を持込むという場合には必ずしもそうでないかも知れませんが、
原則としてはこれは利用者負担となると思うのであります。その点を区分して料金政策を考慮するということは、この時代におきましては止むを得ないのじやないか、こういうように考えておるのであります。併し
原則は
原則で、我々
政府といたしまして独立採算制その他は十分貫きたいと思
つておるのでありまして、先ず應急……こういう事情が切拔けられれば、長期の復興計画の線に副
つてこの独立採算制、企業の合理化、経営の是正等をもいたしたい、こう考えておる次第でございます。