○
江口政府委員 今
年度の
労働委員会
労働者側委員の改選に際しましては、若干の
地方において、
労働組合と
意見が合はないために、知事がその判断に基づいて適当と信ずる人を委員として委嘱いたしましたので、その結果問題を惹起したことは、周知のごとくであります。そもそも
労働委員会
労働者側委員の委嘱にあたりましては、
労働組合法第二十六條第二項によりまして、
労働組合の推薦に基くことが建前とな
つているのでありますが、同法
施行令第三十七條第五項によりまして、
労働組合の推薦を得ることができないときまたは推薦があ
つてもその推薦のあつた者が不適当であるときは、
労働大臣または知事が職権によ
つて委嘱することができるとされているのであります。
もとより
労働委員会の使命が
労働関係の公正な調整をはかり、
労働組合の健全な発展を助成するための民主的機関である以上その
労働者側委員が
労働組合の推薦に基いて、委嘱されることが望ましいのは言うまでもないことであります。
しかし、折角
労働組合に推薦方を請求しても、組合がこれに應ぜずまたたとい推薦があ
つても、その人がたとえば一党一派の部分的かつ偏頗な立場にのみとらわれて全体の福祉を忘れるというような、
労働委員会の使命を達成するのに不適当であるような場合には、最後的手段として行政
官廳が自らの判断をも
つて適当な人を委嘱することもやむを得ないところであると考えられるのでありまして、このことは
労働行政の最終的責任が行政
官廳に帰属するものであることに鑑みるときは明白であらうと考えます。ただいま申し上げましたように、職権委嘱は法律上認められまた事理上もやむを得ないと考えられるのでありますが、しかしながら、このことは
労働委員の委嘱が行政
官廳の恣意のみに基いてなされてよいことを意味するものではもちろんないのでありまして、行政
官廳は公共の信託にこたえてその本來の公正な立場に立つ客観的判断の下に適当な人を委嘱すべきものであ
つて、その点愼重な態度をも
つて臨むべきことは言うまでもないのであります。要するに職権委嘱は、最惡の事態において、いわゆるやむにやまれずして行われるところでありますから、これを回避するためには、
労働組合において
労働委員会の使命をよく認識され、それに適合するような
人材を推薦していただくことが喫緊のことであ
つて、そのためには行政
官廳としても平素よりよくこの点について組合に対する連絡を徹底する必要があることを認めるものであります。