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1948-06-15 第2回国会 衆議院 労働委員会 第9号
公式Web版
会議録情報
0
昭和二十三年六月十五日(火曜日) 午前十一時三十分
開議
出席委員
委員長
安平
鹿一君
理事
倉石 忠雄君
理事
三浦寅之助
君
理事
辻井民
之助君
理事
山下
榮二君
理事
川崎 秀二君
理事
山下
春江君 大野
伴睦
君 尾崎 末吉君 菊池 義郎君
栗山長次郎
君
島上善五郎
君 山崎 道子君 佐伯
宗義
君 高橋 禎一君 寺本 齋君 西田 隆男君 河野
金昇
君 早川 崇君
木村
榮君
出席國務大臣
労 働 大 臣
加藤
勘十君
出席政府委員
労働基準監督官
江口見
登留
君
委員外
の
出席者
專門調査員
大橋 靜市君
專門調査員
濱口金一郎
君
—————————————
本日の会議に付した事件
労働者災害補償保險法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
)(第一三〇号)
労働関係
の調整その他労働問題に関する件
—————————————
〔筆 記〕
安平鹿一
1
○
安平委員長
開会する。
労働者災害補償保險法
の一部を
改正
する
法律案
を議題とし、
政府側
より
提案理由
の説明を求める。
—————————————
加藤勘十
2
○
加藤國務大臣
労働者災害補償保險法
は、
労働基準法
の裏づけとして、
業務災害
を蒙
つた労働者
に、迅速公正な
災害補償
と
福祉施設
を行い、
羅災労働者
の
基本的人権
を擁護し、他面
事業主
の
経済的負担
の
分散軽減
を図り、
産業
を安定せしめる
目的
で、制定公布され、昨年九月一日より実施され、今日まで九ケ月、所期の成績を
收め
つつあるが、
労働者
の
災害補償
を迅速公正に、積極的に行い、しかも、
労資双方
の利益を図るため、次の諸点につき、
法律
の一部を
改正
する必要があると考へる。 第一点
字句
についての
改正
「
使用者
」という語の語義が各
條文
によ
つて
異り、
疑義
を釀し、
本保險事務処理
に支障を來して居るので、「
事業主
」と
字句
を改める。また
適用除外
の一つとして
官公署
をあげているが、
公署
の行う
現業的事業
は
適用
があるが、
疑義
が生じ易かつたのでこれを明確にする。 第二点
保險給付
について
休業
七日を超へる
長期休業
に対して、七日分を差引くことなく、初日から全部
休業
に対して
休業補償費
を給付することは、
労資双方
に便利を與へ、また
本保險
の
目的
にもかなう、他面
労働者
は
保險給付
をされない七日分の
基準法
上の
補償請求
七日を超
へた部分
の
本保險
の
請求
と、二重の煩瑣から救われる。 第三点 本法第十八條の
制限規定
において「
滯納
」という語が、
納入告知書
の
発付
があ
つて
、その
指定期日
までに納めない場合に初めて言われる言葉のように解され易いので、「
滯納
」の語を改め、
適用
を受ける日から、
有期事業
では十四日、
一般事業
では三十日を過ぎて
保險料
を納付しない時は、この
法律
でゆう「
滯納
」と明確にした。さらに、
第三者
の行為による
災害
に対する
政府
の
保險給付
の場合における
第三者
と
政府
間の
法律関係
について、明確を欠く点があり、紛議釀さぬよう整備した。 その他
受給権者
の
範囲
、
受給権
の本質について規定した
関係條文
を、
労働基準法
との整備を図るため改めた。 第四点
審査機関関係
について
審査機関
の
証拠調
は、
民事訴訟法
を準用して行うことは、簡易迅速と実態即應を尊ぶ
本保險
の趣旨に反し、またその
費用
も
民事訴訟費用法
を準用することは、本制度の円滑な運営に副わない点があり、遂には
労働者
の公正な
基本的人権
の擁護が期せられない虞れがあり、これらの不合理を改めた。
辻井民之助
3
○
辻井委員
第三十六條第一項、第三九十條第二項を次の
理由
により削除したい。
保險審査官
に
職権審査
を認めるときは、その
権限発動
によ
つて一般関係者
の自由を拘束する結果ともなり、
官廳行政
の
民主化
を逆行するおそれがあり、また後者については、簡易迅速を期することができない点、実情に即さない点より、これを削除し、これらに関して
関係政令
を補足すべきであると云うのである。
—————————————
安平鹿一
4
○
安平委員長
本
改正法律案
の採決については次回に譲ることとし、前会に引続いて
一般
労働問題の
質疑
に入りたい。
島上善五郎
5
○
島上委員
紛爭処理機関
について、
労資間紛爭
の諸要件は山積しているが、これが
処理
を
早期
に、かつ、平和的になされていないため、ストライキが増大している。この
根本原因
は、
政府
、
使用者側
が、
労働條件
に対する積極的な改善を行わないためで、
從つて組合側
はより高度の
要求
を出すのである。また
労働協約改訂
の時、
法規
、
協約
の
改惡
を用意している。
組合專從員
の問題もしかりである。最近の
資本攻勢
の態度を改めざる限り、
紛爭処理機関
は何らかの効果もない。
紛爭
の
早期解決
は、
紛爭
の種をまかぬことである。
加藤勘十
6
○
加藤國務大臣
紛爭処理機関
に対する誤解が多い。
紛爭処理機関
は、
團体協約
を締結する時
労資
の
理解
と納得によ
つて
定めらるべきで、
協約
に入
つて
おれば常時設置されず、
紛爭
の発生時にできるだけ小さい
紛爭
から
機関
を設置して
解決
していくのであ
つて
、
最終決定
を押しつけるものでなく、
協約
によ
つて
、
第三者
を含む
調停委員会
にかけるなり、
労働委員会
に
調停
を申請することができる。当事者の
服從
の問題は、お互いの選んだ
機関ゆえ
、納得づくで行くべきで、多数決による一方
的決定
を行うべきではなく、
労働者
を拘束するものではない。
労働條件
の低劣を
資本家
や
政府
が行
つて
いると云う点については、
國際的水準
にある
労働基準法
により、低劣なる
労働條件
は改善されている。
組合
の
要求
は
労働條件
の低劣よりも
インフレ
の問題で、
インフレ克服策
は
政府
として別に考慮している。 專從者の問題は、
組合
の健全なる発達のためである。しかし、一度にこれを行うことは、角をたて、牛を殺すことになる。またこれは
労働者
の
既得権
と云うより、
封建性
の
随性
である。
島上善五郎
7
○
島上委員
労働基準法
の
條文
は、確かに
國際的水準
であろうが、
実施状況
は不十分である。
労働協約
の
改訂
時に
会社側
は
改惡
を策している。一例として、
会社
の許可を得なければ、
組合大会
も開けないという事実が某
会社
にある。
專從問題
をただちに行へば、
組合
は経済的にまい
つて
くる。これらは
資本攻勢
と言はざるを得ない。
加藤勘十
8
○
加藤國務大臣
島上委員
のあげられた例は、
法律
と
法律
の精神を蹂躙するものと言わねばならない。労働省は
法規
に関する
教育普及徹底
に努力する。またその引用の実例については、調査したい。專從員問題については、小さな五十名位の
組合組織論
からも反対である。小さな
從業員組合的性格
は順次清算されるべきで、当然
産業別
に整理されねばならない。
島上善五郎
9
○
島上委員
最後に左の二点について質問する。 一、
労働協約
の
改訂
に際して、
紛爭処理機関
は
労資双方
の
理解
によ
つて
設置さるべきで、一方的強要によ
つて
設置さるべきでないと思うがいかん。 二、この
機関
は、
組合法
、
基準法等
にある
基本的権利
、
組合活動
の自由に抵触するものではない。この点を明確にされたい。
加藤勘十
10
○
加藤國務大臣
この
機関
は
双方
の合意によ
つて
成立するものであ
つて
、
基本的権利
は守られる。 石炭の場合は、六ケ月間の
賃金協定
において
行つた
もので、
一般
の
團体協約
ではない。この六ケ月
間賃金
も固定化されるのではなく、起り得る
紛爭
に対しても、この
機関
の
解決
はなほさら必要である。
木村榮
11
○
木村委員
國家行政組織法
によれば、
委員会
は外局としての
権限
を附與される。この場合
労働委員会
が官僚的なものに
性格
が轉化する危險性があると思うがいかん。
加藤勘十
12
○
加藤國務大臣
そのようなことにはならない、
労働委員会
の所管は
労働者
であるが、半独立である。
木村委員
の指摘された点については、十分檢討し、法文中「その他」によ
つて性格
は変らない。
木村榮
13
○
木村委員
労働委員会
の
委員
が知事によ
つて
任命されることによ
つて
、
労働者
との紛事がしばしば傳へられる。これに対する
労働大臣
の
所見
を問う。
加藤勘十
14
○
加藤國務大臣
職権委員
が越権がちであるということはよく聞いている。
現行法規
の
範囲
内で円滑を期したい。
木村榮
15
○
木村委員
労務加配米配給事務
を
労政事務所
で行うとのことであるが、これを全部一任することは昔の
産報
におけるように、政治的なものに利用されると思う。これに対して
労働大臣
の
所見
を正した。
加藤勘十
16
○
加藤國務大臣
労政事務所
ではなく、
基準局
で行うのであ
つて
、
基準局
は独断で行うのではなく、これらの
協議会
の議を経て行うことにな
つて
いる。
安平鹿一
17
○
安平委員長
本日の
質疑
はこれで終了し、散会する。 午後零時四十分散会