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1948-05-25 第2回国会 衆議院 労働委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年五月二十五日(火曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 安平 鹿一君    理事 倉石 忠雄君 理事 山下 榮二君    理事 川崎 秀二君 理事 山下 春江君       伊藤 郷一君    尾崎 末吉君       綱島 正興君    荒畑 勝三君       菊川 忠雄君    島上善五郎君       館  俊三君    前田 種男君       山崎 道子君    山花 秀雄君       小林 運美君    大島 多藏君       木村  榮君  出席國務大臣         勞 働 大 臣 加藤 勘十君         國 務 大 臣 栗栖 赳夫君  出席政府委員         勞働政務次官  大矢 省三君  委員外出席者         勞働事務官   齋藤 邦吉君         專門調査員   大宮 靜市君         專門調査員   濱口金一郎君 五月六日委員吉川久衛君及び河野金昇君辭任につ き、その補闕として平川篤雄君及び大島多藏君が 議長指名委員に選任された。 同月同日天野久君及び小川半次君が委員を辭任し た。 同月同日委員長加藤勘十君の補闕として安平鹿一 君が議長指名委員長に選任された。 五月二十五日理事小川半次君の補闕として山下春 江君が理事豆に當選した。     ――――――――――――― 五月十一日  職業安定法第十二條第十一項の規定に基き、職  業安定委員會委員旅費支給額に關し議決を求め  るの件(内閣提出) 同月十日  岐阜縣飛騨地區の教職員に寒冷地手當支給の請  願(岡村利右衞門紹介)(第五八二號)  三島豐能兩郡における勤務地手當地域給を  乙地域引上請願原田憲君外一名紹介)(  第五九四號) 同月十一日  三島豐能兩市における勤務地手當地域給を  乙地域引上請願井上良次紹介)(第六  二六號) 同月十四日  三田、三輪兩町勤務地手当地域給甲地域  に引上請願中村俊夫紹介)(第九一二號  )  勞働基準法を家庭工業にも適用請願大野伴  睦君紹介)(第九三〇號) の審査を本委員会に付託された。 五月十日  最低賃金制の確立に關する陳情書  (第二一六號)  國家公務員給與等臨時措置法案反對に關する陳  情書外二百五十七件  (第二二四號)  地方勞政關係豫算増額陳情書  (第二三一號) 同月十九日  寒冷地における官公職員に對し特別給與制度確  立の陳情書  (第三三三號)  勞働法規改惡反對に關する陳情書  (第三四五號)  結婚資金支給陳情書(  第三七三號)  勞働法規改惡反對陳情書外四十二件  (第三七  六號)  連合國軍關係技能工系統使用人給與規定施行反  對の陳情書  (第三九八號)  女子年少者基準規則適用緩和に關する陳情書  外一件  (第四〇一号) を本委員會に送付された。     ――――――――――――― 本日の會議に付した事件  合同審査會開会に關する件  理事補闕選任に關する件  職業安定法第十二條第十一項の規定に基き、職  業安定委員會委員旅費支給額に關し議決が求め  るの件(内閣提出)  勞働條件その他勞働問題に關する件     ―――――――――――――
  2. 安平鹿一

    安平委員長 ただいまより會議を開きます。  會議に入る前に、ちよつと委員長の就任の御挨拶を申し上げます。加藤勘十氏が勞働大臣に就任されまして、その後任といたしまして、不肖私が當委員會委員長推薦されましたのであります。私が今さら申し上げるまでもなく、今日の日本状態は非常に重大な危機に當面しておるのであります。この危機を乘り越え、日本の再建を全うするためには、勞働政策の成否のいかんがかかつて重大な岐點になるわけでま有ます。特に今日のようなはげしい物價高によりまして、勞働者生活は極度に窮乏に陷つておるのでございまして、こうして點から次々に勞働爭議が頻發されておるのであります。むろんこの多くの勞働爭議の中には、あるいは何でも反對だというようないき過ぎた面もあるのでございます。しかしながらこうした問題は本委員會のとる勞働政策のよしあしが重大な影響を與えることは言をまたないのでございます。また一面におきましては、資本家の有力な代表者考え方が、今日問題になつておりまする外資導入前提條件をつくるために、勞働組合法適用除外例を言うがごとく、戰前における資本家獨占的專制、こういうものを夢見ておるか、または反動的な考え方をしておるような状態であるのであります。こうしたいき過ぎ、または反動化というような考え方は、今日の新日本憲法民主憲法のもとにおいては許さるべきことではないのであります。かつてアメリカ視察團のドレーパー氏の報告の中にありまするように、勞資双方とも耐乏、勞資双方とも私慾の統制ということが報告されておるのでありまするが、まつたく同感であるのであります。また國民も今日の日本經濟を建て直すためには、乏しきを嘆くのではなくて、ひとしからざるを嘆くのでございます。こうした點に鑑みまして、本委員會はあくまでも正義に立脚し、法の運營、また立法にあたりましても、公正年私でなければならないと考えるのであります。私はこういた觀點に立ちまして、皆さんの御支持によりまして、微力ではございまするが、當勞働委員會圓滑運營し、所期の目的を達したいと考えております。どうかよろしく御支援をお願いする次第であります。以上をもちまして御挨拶にかえる次第であります。(拍手)  それどは職業安定法第十二條第十一項の基定に基き、職業安定委員會委員旅費支給額に關し議決を求めるの件を議題といたします。まず政府より提案理由説明を求めます。大矢政府委員。     —————————————
  3. 大矢省三

    大矢政府委員 職業安定委員會委員旅費支給額案審議せられるにあたりまして、本案提案理由簡單に御説明申し上げます。第一囘國會提案いたしました職業安定法案は、昨年の十一月の二十日成立を見たのでありまするが、本案の第十二條規定による職業安定委員會委員に對する旅費額につきましては、これを兩議院勞働委員會合同審査の議を經て、國會議決を經なければならないことになつておるので、ここに提案をする次第であります。本案目的とするところは、職業安定委員會委員委員會に出席する場合に、または實情調査視察等公務のために本邦内を旅行する場合において、それに要する鐵道賃、船賃、車馬賃日當宿泊料等旅費を支給することといたしたのでありまするが、その支給額は一應官吏旅費額基準として定めることにしたのであります。すなわち官吏定額に對して中央職業安定會長は八割増し、同委員及び地方委員會會長は六割増し、同地方委員及び地區委員會會長、四割増し、同地方委員及び地區委員會會長は四割増し同地區委員は二割増し旅費額といたした次第であります。この旅費額實費を十分割い得るものであると存ずるのであります。以上本案の趣旨及びその内容の大綱につきまして御説明を申し上げたのでありまするが、何とぞ御審議の上速やかに議決あらんことをお願いしたいのであります。
  4. 安平鹿一

    安平委員長 これより本件の審査に入ります。質疑はありませんか。
  5. 前田種男

    前田(種)委員 今政務次官からの説明にありましたが、官吏規定本案規定内容について、安定局長から、もう少し要点だけでもよろしいですから内容を御説明していただきたいと思います。
  6. 齋藤邦吉

    齋藤説明員 ただいまの御質問に對しお答え申し上げます。お手もとにお配りいたしてありまする資料簡單に御説明申し上げます。後ろから四枚目の裏ページでございます。別表というのがございまして、官廳職員旅費定額がそこに示されているのでございます。すなわち別表として官廳職員としまして、車馬賃一粁に付一圓、日當一日に付四十圓、宿泊料一夜に付甲、乙にわけまして記載されております。これが官吏の一般の定額でございます。これに對しまして、官吏の方で申し上げますと、大臣あるいは政務次官、各局長本省課長掛長といつたような方々について、この定額を一定の増額をいたしているのでございます。その増額規定を申し上げますと、この資料の裏から二枚目でございます。すなわち「勞働省旅費増額合表」というのがございまして、これによりますと大臣が十割、役人の方で申しますと政務次官事務次官勞働省の顧問、これが八割増しになります。それから次が本省局長勞働省參與地方基準局長等が六割増し、それから本省課長が大體四割増し本省掛長が二割増し、こういうことになつているわけでございます。よその委員會の例を見ますと、中央勞働委員會でございますが、これは御承知のように法律によりまして勞働關係調整の非常に大きな權限をもつております特殊の行政機關でありますので、中央勞働委員会會長大臣同額の十割増し中央勞働委員會で申しますと、中央勞働委員會委員と、中央勞働委員會事務局長が八割増し、それから中央勞働委員會事務局の部長が六割増し、こういうふうになつているわけでございます。そこでただいま御審議いただいておりまする職業安定委員會の事柄でありますが、この安定委員會は御承知のように諮問機關委員會でございますので、中央職業安定委員會長は、この欄の二段目の八割増し、すなわち中央勞働委員會會長よりは一段と下にいたしまして、八割増しすなわち官吏の方で申しますと、政務次官事務次官同額の八割増し中央職業安定委員會の各委員及び地方職業安定委員會會長は六割増し地方委員會委員竝びに地區委員會長というものは四割増しというふうに大體いたしておる次第でございます。大體現在あります官吏旅費額竝びにその他委員會旅費額等とにらみ合わせまして、この程度で職業安定委員會方々會議に招集された場合、あるいは事情を視察される場合の經費といたしまして、大體實費を賄うに十分だ、こういう見當で御審議願つたような次第であります。
  7. 前田種男

    前田(種)委員 職業安定委員會中央地方にこしよえることになつておりますが、現在中央地方にそれぞれの委員會はもう構成されてその活動を開始しておられるかどうか、その點を重ねて御質問申し上げます。
  8. 齋藤邦吉

    齋藤説明員 ただいまの御質問にお答え申上げます。目下のところ中央職業安定委員會委員の人選を進めておりまして、大體のところ二週間以内にはこれが完了するのじやないかと考えております。その進行状況を申し上げますと、御承知のように中央委員會は、勞働者事業主公益代表の三者になつておりますので、ただいまのところ勞働者側の方面に對しまして、委員候補者の御推薦をお願いいたしてあります。なお事業主代表の方の委員に對しましては、それぞれ推薦をお願いいたしましたところ、その方から推薦をいただいておりまして、目下推薦されました方々につきまして今愼重に研究を加えておるような次第でございます。なお地方職業安定委員會、すなわち府縣廳におきます職業安定委員會につきましては、目下これが整備を進めておりまして、大體のところ六月中ごろまでに全部完了するのではないかというふうに相なこておることをお答え申し上げます。
  9. 安平鹿一

    安平委員長 ほかにありませんか——御質疑がなければお諮りいたしますが、職業安定法に、職業安定委員の「旅費日當及び宿泊料金額は、兩議院勞働委員會合同審査會の議を經て、國会議決を得なければならない。」云々と規定されております。この際合同審査會を開くのが緊急の要務であると存じますので、さよう取計らうことに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 安平鹿一

    安平委員長 御異議なしと認めて、さよう決定いたします。  次に質疑に入ります。前田種男君。
  11. 前田種男

    前田(種)委員 私は安本長官勞働大臣給與局長出聴を求めておりますので、出席していただけるかどうか、委員長の方でお答え願つた上で質問を進めたいと思います。
  12. 安平鹿一

    安平委員長 前田君にお答えしますが、安本長官勞働大臣閣議中で、今の出席不可能であります。給與局長は今財政委員會の方に出席しているので、今呼びに行つております。
  13. 前田種男

    前田(種)委員 兩大臣にぜひ出席してもらつて、重要な質問ですから、この際政府としての所信を確明にしてもらいたい希望します。閣議も重要であろうと思いますが、この問題は私ばかりでなく、各黨それぞれ質問があるらしいですから、時間の關係上、十二時半からでも一時からでも續開されて、できれば總理大臣も出席してもらつて、この問題を勞働委員會としてはつきりしておいた方がようのではないかと思いますので、委員長の方で適當にお取計らいを願います。
  14. 安平鹿一

    安平委員長 今聽きにやつておりますから、それがきまりましたら御相談します。
  15. 前田種男

    前田(種)委員 この機會勞働省に要望しておきます。昨年來勞働省關係法規で、失業保險法失業手當法勞働基準法の實施職業安定法施行等がありましたが、今日までの実施状況内容をとりまとめて、できるだけ早い機會に本委員會中間報告と現状の報告をしていただきたい。それはできれば文書で大要を報告願うとともに、それぞれ説明して。本委員會を通じて重要な三つの法規實際運用状況國民の前に明確にすることがよいのではないかと思いますので、ぜひ要望いたします。
  16. 安平鹿一

    安平委員長 出席している政府委員で答辯できる範圍内質疑がありましたら、御質疑願いたいと思います。
  17. 川崎秀二

    川崎委員 ただいま世上の話題をにぎわし、また企業整備というものがどういうふうに進行していくかということについて、關心を拂つておるところの省東費爭議のことについて、勞働ではどういうふうに解釋しておられるか。
  18. 大矢省三

    大矢政府委員 實は東費爭議は今當事者においていろいろ折衝中であります。さらに勞働省といたしましては。組合關係のそれぞれの係りの者によつて實情を調査しておりますが、ただいまのところこの爭議をどうするかということについて、省の議というものはまだまとまつていないのであります。私は爭議はつとめて當事者の間で圓滿に解決するような習慣なり、あるいはまたそれに導くことが大切ではないかと思いますので、その實情を十分調査した上で、さらに問題の解決が困難な場合には、勞調委なり、あるいは勞働省としての態度を決定したいと思いますが、今日のところまだそこまで立ち至つておらないので、さように御了承願いたいと思います。
  19. 川崎秀二

    川崎委員 別に勞働省に、東費爭議に介入しろというような、ばかげた質問を私はいたしておるのではないのでありまして、今度の東賓爭議に對するあなたの考え方だけを質しておきたい。それは今度の事賓爭議は、第一に二百何十人の出血をし、續いてまた共産黨フラクシヨシ、あるいは非協力者整理するということで、次ぎ次ぎに強力なる企業整備の手を打つておるわけであります。この問題については當然勞働委員會あたりで取上げて、世上の批判にも應えなければならぬ問題であつたのでありますけれども勞働委員長大臣になられた關係で、勞働委員會が開かれなかつた。そこで福化面からも重要な問題であるというので、文化委員會あたりで、いろいろと女優が陳情をしたり、あるいは委員から文化政策の面よりする質問もあつたようでありますけれども速記録を熱讀いたしますと、企業整備の本質的な問題に觸れていないと私は思います。そこで一體この企業整備ということは、日本國際經濟參加ということを目標に、日本産業構成を適正にきめていくというところに、目標がおかれなければならない、私はかように考えておる。そこを企業整備行政整理というものは、本年から來年にかけての日本經濟の重大問題であり、また勞働問題にも關連しての大きな問題になつてきておると思うのですが、私の信ずるところによるならば、企業整備行政整理はいかなることがあつても斷行しなければならぬ。ただそのやつていくやり方、あるいはテンポというものについては、緩急よろしきを得なければならない。今日のようなインフレのなお終熄しない段階において、大規模の企業整備がなやられるということは避けなければならないのではないか。會社がいかに赤字を出して、經營が苦しいとしても、ただ勞働者にのみ責任を轉嫁するのはどうか、會社が眞に經營合理化をはかつた後において、どうしてもやつていけないということから出發いたしましたならば、私は今度の東賓爭議に對する會社側方針も納得ができるのでありますが、企業合理化が十分できていなかつたのではないか。もちろん渡邊社長が言つているように、欽産フラクシヨン活動を封ずるという面については、確かにわれわれは映畫の製作本數という會社經理の面から見た點等を合わせての會社經理方針に對して、常に反抗的な方針をとつてきた者は排除しなければならぬという點は、納得できますけれども、しかしながら今日の段階で、あれほどの大きな出血しなければならぬということは、これは相当會社側も反省しなければならぬと思う。この東賓爭議は、今後の企業整備のあり方に對して一つの指針を與えることになるので、一體企業整備はどうあるべきかというあなたの基本的なお考えを伺つておきたい。私は突然この問題を持出して、大矢政務次官を困らそうというのでは決してないので、加藤勞働大臣を助けて今後の企業整備行政整理に當られる補佐官の第一任者としての立場から、どういうお考えをもつておるか、この際あらためてお聽きをしたいのです。
  20. 大矢省三

    大矢政府委員 お説のように企業整備當然必要でありましようけれども日本實情というものは、私が申すまでもなく、未だ完全な失業對策の方策ができておりませんし、さらにまた日本は、敗戰後引揚者その他によつて非常に人員が過剩しているのであつて、この整備いかんが非常な社會問題にもなり、あるいは今後の生産復興の上にも重要な影響があることは、申すまでもないことでありますが、最近の勞働の間の紛爭の中には、いわゆる事業整備に藉口して、いろいろいき過ぎた行動に出て、解雇者を多く出しているようなことが往々にして見られるのであります。これは今御意見の通り十分警戒しなければ、失業者の問題、あるいは思想の上、また今後の組合運動順調發達の上に、大きな影響があることと思いますので、勞働者としてはその爭議經過原因等も十分調査して、近く最近起りつつある爭議内容經過について、あるいは資本家の言うように會社經營状態がはたしてそうなのか、あるいは今おつしやるように、經營合理化が完全に行われていないためにそういう結果になつて、その犠牲勞働者のみに強いているのかどうかということは、その實態を十分調査してみなければならぬと思います。もちろん會社のみが、責任を負うことのできないいろいろな原因があろうと思います。たとえば金融、資材その他いろいろの理由もあると思いますから、これは相互いににらみ合わせて、十分その實情を調査し最近の整理統合ということが、經營合理化に藉口して、そういうむりな解雇者を出し、勞働者のみの犠牲によつて會社建直そうとするこの傾向に對しては、私は十分警戒する必要があるのではないかと考えますので、近い機會に、最近の勞働情勢爭議經過について、調査したありのままを報告したい、かく考えております。
  21. 川崎秀二

    川崎委員 企業整備の問題に關連してちよつとお聽きしたいのですが、本年は公共事業費は四百十億で、その中に災害復舊費が相當盛られているわけでありますけれども、しかしながら十分な失業對策は、積極部面では、道路の開發であるとか、あるいは海灣整理とかいうようなもので、各政黨政調會でも立案して政府を鞭撻しているわけですが、しかし十分な失業對策ができないということになると、過渡的にも今日の失業保險法を擴充しなければならぬのではないかと思います。そういうような關係から、失業保險法實施状況、昨年十一月一日から實施されて以來、豫算は十億でしたが、それをどういうふうに使つたか、一つ報告いただきたい。
  22. 齋藤邦吉

    齋藤説明員 失業保險法は御承知のように昨年の十一月から施行なつておるのでありますが、それが實施になりましてから、去る三月末までの實施の概況につきまして御説明申し上げたいと思います。御承知のようにまず第一に適用事業場をどのくらいつかまえたかという問題でありますが、失業保險適用事業場健康保險と同じように商工、運輸、金融等で五人以上の勞働者を使つておるもの、大體その數は十一萬三千六百三十五という事業場をつかまえております。なおその事業場におきまして被保險者としてつかまえました勞働者の數が四百七十九萬、約四百八十萬人という數字に相なつておるのであります。なおこの被保險者が約四百八十萬でありまして、これの保險料收納状況を申しますと、三月末までに保險料徴收決定をいたしました額が、九億二千八百九十一萬、約九億三千萬圓でありますが、これに對しまして三月末までの保險料收納濟額は五億六千六百萬圓ということに相なつておりまして、いわゆる滯納は三億六千萬圓ほどあるような次第でございます。すなわち保險料收納額は、率から申しますと七〇%ということに相なつております。そこであまり芳しいいい成績ではございませんので、六月一ぱいを期しましてこれまでの滯納を一掃したい。滯納一掃運動というようなものを六月一ぱいかかつてつてみたい。こういうふうに考えておる次第でございます。なおこれによりまして保險金を受けました、いわゆる失業手當金を受けました數の問題でございますが、これは御承知のように企業整備がずれておつたというようなこともあり、いろいろな點もありまして、昨年の十一月から本年の三月までに安定署窓口にまいりまして失業手當金を受けました數は非常に少うございます。わずかに七千八百四十二人というふうな非常に少い數になつておる次第でございます。こうしたいわゆる非常にありがたい失業手當失業保險制度というものがあつても、安定署窓口に來るものが非常に少かつた一つ理由といたしましては、ざつくばらんに申しまして私ども努力が足りないので、勞働者方々にこういうありがたい制度のあることを御承知ないということもあろうかと思いますけれども、現在の社會情勢下におきまして、失業保險をもらうよりも、一種の中間的な仕事によつて生活の維持ができるという部面も相當ありますので、そういつたことからこの失業手當金を利用しないということもあるのではないか。それから昨年失業保險法を御審議いただきましたころに叫ばれておりました企業整備というものが、時期的に多少後れておるのではないかということも原因でありましよう。いろいろな理由はあるかと思いますが、いずれにせよ昨年十一月から三月までの間に七千八百四十二人、それに交付をいたしました失業手當金總額が約百二十萬圓という非常にわずかな金額なつております。なおこういう點は、やはり私どもといたしまして勞働者の諸君に失業保險制度失業手當制度のありがたいことを十分周知徹底させて、十分この制度が效率をあげますように努力をしていきたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  23. 川崎秀二

    川崎委員 その期間中に失業したと見られる概數は、勞働省では統計はわかりませんか。
  24. 齋藤邦吉

    齋藤説明員 その點の數字は、私どもの方といたしましてははつきりわかりません。
  25. 川崎秀二

    川崎委員 そこでこの積極的な失業對策というものが考えられない今日では、まあ失業保險というものを擴充しようという考え方も各所にぽつぽつ出ておるのに反しまして、現在のように百二十萬圓しか使わなかつた。十億の豫算でこれだけしか給付する者がなかつたということは、今局長が言われたような實情だとすると、まことに失業保險法適用が悲觀視されるわけでありますが、勞働省當局ではそれにもかかわらず何かこの失業保險法を擴充するという考え方をもつておられましようか。
  26. 齋藤邦吉

    齋藤説明員 ただいまの御質問にお答え申し上げますが、ただいまのところこうした施行状況でありますので、失業保險法につきまして何らか改正をいたしまして、勞働者にも喜ばれるようなよい制度にしたいと思つて、實は研究をいたしております。そこで未だ成案を得ておりませんけれども、問題として考えておりますのは、御承知ののように徴收保險料でございますが、これは千分の十一になつております。これは勞働委員會方々の十分御意見を教えていただかなければならぬことでありますが、ある程度この保險料率を下げてみたらどうかということも一つ考えております。すなわち現在の情勢においては、保險料はたくさんはいるけれども失業保險金を受取りにくる人間が少いということでありますので、保險經濟部面から申しますれば、ある程度保險料率を下げても、保險經濟としてはやつていけるのではないだろうかという感じもいたしております。そうした面から保險料率を下げるということも一つの研究材料にしております。なおさらに適用事業場の範圍を擴充する。たとえば先ほどお話の東實、この映畫の問題でございますが、映畫の製作の關係、料金飲食店の從業員、あるいは日傭勞務者といつたようなものは、御承知のように失業保險の對象外になつておる。そこで映畫あるいは料理飲食店の從業員、あるいは日傭勞働者といつたようなものも、失業保險の被保險者の中に入れる。すなわち適用事業の範圍擴張も必要になるのではないか、そうした點につきまして目下研究を進めておりまして、できますればできるだけ早く御審議を願うようにいたしたいと思います。目下のところでは十分成案を得ておりませんが、愼重に今研究をしておるような次第であります。
  27. 川崎秀二

    川崎委員 もう一つお伺いしたいのは、職業安定法施行によつて勞働者供給事業勞働組合以外は禁止されたわけでありますが、例の派出婦の團體なんかに對しての適用状況はどういう状態なつておりますか。
  28. 齋藤邦吉

    齋藤説明員 御承知のように安定法によりまして勞務供給事業は禁止されておりまして、この勞務供給事業の禁止は本年の三月一日からその效力を發生いたして、私どもといたしましては全國の工場事業場等よりいわゆるレーバ・おボスといわれておるものの一掃に努めておるような次第であります。なおそれと關連いたしまして、これらのレーガー・ボスに使われております勞働者が、失業をして職を失うことがないように、すなわち從來働いております工場の直傭の工場勞働者として、そこで安心して働けますように、安定署を通じまして指導を加えておるような次第であります。なおそれに關連いたしまして、今お尋ねの派出婦會の問題でございますが、それも從來の觀念で申しますと、勞務供給業ということでありますので、禁止されております。そこで派出婦會の問題はどういうふうにしていくべきかという問題になると、この派出婦の諸君が、いわゆる勞働組合をつくりまして、派出婦の勞働供給事業をやるか、あるいはまたもう一つは派出婦の職業紹介、派出婦としての一つの財團なり、社團なり、あるいはそういつた公共的の組合で派出婦の職業紹介事業を營む、こういうふうにやり方が二つあるわけでございます。そこで目下のところといたしましては、地方から派出婦の勞働組合をつくりまして、供給事業をやりたいという申請書も出ております。それから派出婦の職業紹介事業をやりたいという申請書も出ておる次第でございます。ところで職業紹介事業の認可ということになりますと、御承知中央職業安定委員會の意見を徴して許可するということになつておりますので、目下のところといたしましては、私ども中央職業安定委員會の成立を急ぎまして、それができましたら至急にこの安定委員會にかけまして、安定委員會の意見を徴しまして、派出婦會の職業紹介事業を認めるかどうかということをきめたいと考えております。  それからなお派出婦會が勞働組合を結成いたしまして、供給事業をやるということにつきまして、相當申請が出ておりますが、これにつきましては關係都道府縣の勞働委員會の意見を聽いてきめるということになりまして、目下のところ必要な手續を進めておりまして、今のところ安定法施行後許可になりましたものは一件もございませんが、目下そういう申請を受理しておりまして、愼重に研究をしておる次第でございます。
  29. 安平鹿一

    安平委員長 この際お諮りいたしますが、安本長官勞働大臣給與局長、これらの人に連絡いたしましたが、安本長官は時間は未定であるが、午後になれば明くのではないかという返事がございました。それから勞働大臣は午後ならいつでもよろしい、こういう返事があつたのですが、暫時休憩いたしまして、午後に再開いたすことにいたしますか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 安平鹿一

    安平委員長 御異議なければさよう決定いたします。  暫時休憩いたします。     午前十一時三十二分休憩      ————◇—————     午後一時四十八分開議
  31. 安平鹿一

    安平委員長 休憩前に引續いて會議を開きます。  質疑の通告がきております。倉石忠雄君。
  32. 倉石忠雄

    ○倉石委員 安本の長官がお見えになつておられますから、長官にお尋ねいたしたいと思います。申すまでもなく、御承知のように、統制經濟は、今おやりになつておいでになるような價格統制だけでは、そこにいろいろな缺陷を生じてくることは當然でありますので、賃金統制というようなことが今問題になつておるのでありますが、安本の長官としてはこういうことに對してどういうお考えをもつておいでになりますか、その點をまず承りたいと思います。
  33. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 倉石委員からお尋ねがありましたが、はなはだ言葉の末にとらわれるようでありますが、賃金統制、ウエイジ・コントロールというようなことを今考えるよりも、ウエイジ・スタビリゼーシヨン、賃金安定ということが實は問題になつておるのでございまして、その範圍でお答えいたしたいと思うのであります。倉石委員の御質問も御同樣であると思つております。これは實は、このインフレーシヨンを抑制し、この經濟危機を切り拔け、さらにこの經濟を再建して、國民生活水準を安定ならしめる。こういうような一連の政策としては考えられる問題であります。これをいかに取上げるか、あるいは取上げないか、あるいはこれを取上げた場合においても、どういうような方法で推進したらいいか、あるいはどういう範圍に行つたがいいかというような、いろいろ大きな問題をあらかじめ研究しなければならぬような關係になりますので、實はその筋からも話がありましたけれども、當時勞働大臣も留守でございましたが、主管の關係もあると思いまして勞働大臣その他ともゆつくり話して、今申しましたようなこの問題について腹をきめる、やるかやらぬか、その他をきめる前提などについて十分話合いをして、諸般の事情ともにらみ合わせて、このどちらかに考えていこうというような氣持でおるのでございます。閣議でもそれ以上の話になつておらぬのでありまして、勞働大臣も先週の土曜日あたりから出てまいりましたので、豫算問題の目鼻がつくと同時に、ひとつこの問題についても、とくと閣僚とも相談をして態度をきめようと思つておる次第でございます。今までのところとしてはそういうような状態までしか進んでおらぬのでございます。
  34. 倉石忠雄

    ○倉石委員 それではさらにお尋ねいたしたいのでありますが、ただいまの長官のお考えのように、賃金安定の政策を考えておられるとすれば、千八百圓ベースでも、二千九百二十圓ベースでも、要するに名目賃金がどのように左右されても、結局政府がしばしば言われているように、そこに物の裏づけがありませんでしたならば、非常に生活は困窮することは當然なのでありますが、そういう給與の安定政策をお考えになるときに、現在の日本段階において物の裏づけ、あるいはまた極端に申せばそういうことを現在の段階考え得る状態にわが國の經濟があるかどうかということについて、私は政府の根本的なお考えを承りたいと思うのであります。
  35. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 今のお尋ねは、現在のようなこの生活必需物資の供給その他に不足がちを告げているときに、賃金安定の問題が考えられるか、こういうようなお尋ねであつたと思うのでありますが、これは問題として取上げることはその筋からも話があつて出ておるのでありますが、實際その點がやれるかどうか、また效果があるかどうか、その方がかえつていいのか、もしくは惡いのかというような、いろいろな問題があるのでありまして、そういう問題は各方面の角度から檢討した上でなければ、まだはつきりと意見を固めていくわけにいかぬと考えておるのであります。きわめて愼重にこれを考える必要があると思いますので、實はその程度の域をまだ出ておらぬような次第でございます。しかしこういう際に、先ほどもお話になりましたが、一連の政策として考えるということはもちろん必要であります。これをどういうようにやるか、またこれはどういうような利害得失があるかというようなことをとくと考えませんと、かえつてこの結果が望ましくないようなこともあると思いますので、愼重な態度をとつておる次第でございます。
  36. 倉石忠雄

    ○倉石委員 もう一點お尋ねいたしたいと思いますが、御承知のように日本の産業状態は、いろいろな障害にぷつつかつておりますので、口には復興を稱えられておりますけれども、まだその緒についておりません。昨年本委員會失業保險法審議をされましたときに、當時の安定本部長官の和田さんに、私から具體的な例をあげてお尋ねをいたしたことがあります。つまり私どものように事業をもつております者から考えますと、第一は、賠償の方針が當時きまらなかつた、第二は、産業水準に對するその筋の日本に對する考え方がおきまりにならないということが復興を遲られている一番の癌であるということを申したのであります。ところが當時の長官は、その産業水準についても賠償に對するその筋の御方針もほぼきまつておるのだというふうなことを繰返してお答えになつた。私はそれ以上つつこんで申さなかつたのでありますけれども、最近になつてようやく、御承知のようにあらかたの指示が參つたのであります。それに基いて長官の手もとではいろいろ五箇年計畫というようなものをお立てになつております。そこでこれを大觀してみますと、政府がしばしば口にされます外資を導入して、それを原料としてわれわれの産業を復興する、これはどうしてもそうやらなければならないと思うのでありますが、さてそれを取入れる受入れ態勢といたしまして、一番緊急な問題は企業合理化だろうと思います。これがありませんでしたならば、いかに外資がかりに導入せられましても日本の復興ということは不可能である。そこでこの企業合理化ということが必然的に行われるのでありますけれども勞働問題と申しましても、勞働問題はすなわち重要なる經濟問題でありまして、政府がいろいろ最近發表せられた白書などによりましても、日本經濟の實體を御説明なつておりますが、現在の段階において、政府日本經濟を復興する立場から、一體勞働問題をどういうふうに考えておいでになるのであるかということの、根本的なお考えがどうもはつきりしないのであります。先ほど大矢政務次官川崎委員に對するお答えの中にも、企業家が企業整備に籍口していき過ぎた馘首などをやるようなことは、嚴に戒めなければならないというふうなことをおつしやつておられました。これはどうも私どもに非常にいろいろな意味にとれるのでありますけれども企業日本だけで鎖國しておつて、そうして外國を相手にしないで、日本の化學品なり、化學藥品がこれだけで生産されるのだ、それだから國民はそれだけを買えというようなことは、鎖國經濟なら許されるけれども、これからわれわれが貿易においても、對外的の經濟生活を營まなければならないというようなときに、日本が引合わない企業經營しておつて、そこから生産されたるもので、對外的に外國と經濟的な競爭をするということは不可能なのであります。そこでわれわれは企業が外國に對抗し得るだけの健全性をもつために、やむを得ず企業合理化をやらなくてはならない。そこに必然的にあらゆる餘剩のものを切捨てるという段階が生じてくるのだと思うのでありますが、政府のその面の勞働問題に對する根本的なお考えをひとつ承りたいと思うのであります。
  37. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 あるいはお尋ねは勞働大臣の所管かとも思いますけれども、私に關係する限りにおいて率直にお答えしたいと思います。企業の再建整備ということが必要なことは、國民だけも痛感しておるところでありまして、われわれもまつたくこれをしないではほんとうの日本の國の經濟の立直りはできぬと考えておるのであります。この再建整備は大體二つの方面から考えなければならぬのであります。戰時中のふくれた企業を、今度は戰後の新しい經濟機構の中に植えこんで、それに適應する機構として、この再建整備をしなければならぬ點が一つあると思うのであります、それから今倉石委員のお尋ねの通りでありますが、日本は鎖國經濟をもつて終始するというようなことでは、とうてい自立ができないのでありまして、やはり國際經濟場裡へ進出して、參加することによつてのみ日本の再建、繁榮も期せられるのであります。そういうような場合におきましては、經營合理化する、合理化ということの必要なことも申すまでもないことと思うのであります。今企業の再建整備とか言われる中においては、大體この二種類のものが整理と言い、あるいは再建整備というような言葉で現われておると思つておるのであります。政府といたしましては、前内閣及び前々内閣以來、戰時中の水ぶくれその他を整理する意味においては、相當進んでおるのでありますけれども、なおいろいろ四圍の情勢につれて、殊に國際、國内の情勢の變化によつてもいろいろ變つておりますけれども、おそらくストライク・ミツシヨンの報告その他と照らしてごらんを願いましても、相當の目鼻がつき得るように進んでおるということは確かと思うのであります。それからさらにこれだけでは私は滿足いたしません。日本の將來の産業が貿易にあるというような點を見ますときには、つとめて經營合理化いたしまして、そうして安くていい品物を出すということが日本の繁榮のもとでありますので、そういう點をも政府は十分考えてやりたい。こう思いまして、實は長期計畫でも、そういうようなところにも力を入れて檢討をし、策を立てたいと思つておる次第であります。當面の問題としては、いろいろそういう點をも考えておる次第でございます。それからそういう際にあたりましては、どうしても失業問題というものを考えなければならぬのであります。失業問題につきましても、これは十分考えたいと思つております。世間ではただ机の上の議論で人を切つている、事業を二つにわけているというようなつもりで考える人もあるいはあるかもしれませんが、それはほんとうの再建整備でもなければ整理でもないのであります。また企業を生かしていくためには、やはりそういう點を十分考えて、そうしてやはり受入れ制態勢とかその他の點をも考えまして、この策を立てていかなければいかぬと思うのであります。今囘はその受入れ態勢としましても、企業事業費等をも今度の本豫算等には能う限り大きく見込みまして、そうして災害對策その他の公共事業にも人員の吸收ということも考えている次第であります。大體豫算を立てますときに、公共事業としてああいう意味の項目のもとに豫算を盛るようになりましたのも、失業對策の性質が現われているのでありまして、そういう點からも力點をそこにおいていきたいと思つております。なお企業再建整備の進捗、貿易産業の振興、中小企業の振興等で、相當企業體制の受入れの陣容をつくる必要がありますので、それらの點もにらみ合わせて實行しなければならぬと思います。中小企業についても、ただいま事業廳の問題も出ておりますが、これは本來スモール・ビジネス・エイド・ビユーローというような形が出てきたのでありまして、ほんとうの中小企業を指導し、援助し、發展させていくということが趣旨でありますので、失業者をその方に送つて、ただ失業手當失業保險というようなもので始末をつけるというのでなく、それを生産的な方面にもつてつて日本經濟界復興をさらに效果的ならしめるというようなことについてもぜひ必要でありますので、政府はそういう點についても考えているような次第でございます。
  38. 倉石忠雄

    ○倉石委員 ただいまのお話の中に出ておりました外資導入の問題でありますが、昨日豫算委員會總理大臣は概略の額についてお話がありましたようですが、これはどういう形でこちらにはいつてくる見込でありましようか。また大體政府のお見込みとしては、いつごろからはいつてくるお見込みでありましようか。
  39. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 これは速記をやめていただきたいと思います。
  40. 安平鹿一

    安平委員長 速記をやめて……。     〔速記中止〕
  41. 安平鹿一

    安平委員長 速記を始めて……。
  42. 倉石忠雄

    ○倉石委員 今のことに關連してお尋ねいたしたいのでありますが、ただいまのお話で、外資導入の中には、インヴエストメントの性質をもつておるものと、クレジツトによるローンの性質をもつておるものとあるようでありますが、こちらで借り越しになる分に對しては、適當なる擔保というものを要求されるものでありましようか。
  43. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 まだ具體化しない點も多數あるのでありますが、やはりそれが長期になりますならば擔保というようなものも必要になつてくると思いますし、最も大事なものはフアーミング・パウアーでありまして、これが缺けるようになつてはだめでございます。その邊が一番問題になると思います。
  44. 倉石忠雄

    ○倉石委員 最後に長官にお尋ねいたしたいのでありますが、われわれ敗戰國が連合國からクレジツトの形で復興を援助してもらうのでありますからして、これを受入れるためにされるところの企業整備ということは、これは國をあげて誠心誠意やらなければならぬ問題だと思います。ただいまの政府の計画で企業整備が行われるということになり、またその整備された企業に向つて、ただいまの長官のお話のようなクレジツトによる物資が供給されることになるのでありますが、そういうことになりました指定されたる企業經營面に對して、私企業でありますけれども、公共的性質を帶びて、たとえばその經營者は公務員に準ずるような立場をとらせるとか、またそこに働いておる勤勞者は端的に言えばストライキを禁止するとか、そういうふうな特別な企業及び勤勞者に對するお考えをおもちになつておらないでありましようか。われわれはこういう點は非常に必要なことだと思うのでありますが、政府の御見解を承りたいと思います。
  45. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 どうも安本長官として抽象的なことを申しますが、具體的には各省から申されると思いますが、私は企業の形態と企業主體の形式ということにつきましては、いろいろ考えなければいかぬと思うのであります。畫一的にものを考えることは妥當でないと思うのであります。殊に公共性、あるいは公衆の利益を増進するとか、その他必要なものがありますならば、あるいは公的性質を相當に發揮した機構のものとの企業主體にしても結構であります。またそうしなければならぬ場合もあろうと思うのであります。しかしそういうものでない、私益と言つたならば語弊があるかもしれませんが、公共的性質度の薄いものなどにつきましは、これは廣く私企業として進めさせていくということも、企業形態としては必要であると思うのであります。私企業として進めるにつきましても、從來のような古い資本主義的な形でいくかどうかという問題があるのでありますが、これは私は企業經營の衝に當るマネージメント側と、働く方のユニオン側との間には相當の均整をとり、調和をとつた新しい資本主義というものも成立つと思うのであります。私は民主黨でございますので、修正資本主義とは明らかには申しませんけれども、その點でもうそういう概念よりも、商法の規定その他についてずつと深く進む意味において、實際的施策をし、今度の企業再建整備も、それに資するというところまでいかなければいかぬというふうに思つておる次第であります。
  46. 前田種男

    前田(種)委員 安本長官がお急ぎのようでありますから、まとめて質問いたしまして、御答辯を願いたいと思います。速記が困るようであれば速記を停止して答辯してもらつて結構であります。  第一番は賃金と物價の問題でございますが、近く提出されますところの本豫算案にその内容が盛られることになつているのでございますが、本日ここで御説明できる範圍内説明願いたいと思います。賃金と物價の問題が、昨年は千八百圓ベースと現在のマル公で一年間もんでもんでもみ拔いてきましたが、傳えられるように、賃金ベース三千七百圓、あるいはそれに基くところの物價體系、運賃、料金その他の値上り、あるいは米價の引上げというものが、今日どの程度でまとまるかわかりませんが、このバランスは、千八百圓のときのマル公と、三千六百圓ないしは三千七百圓と言われておりますところの賃金ベースがどう結末がつくかは別といたしまして、それと、今日言われておりますところの運賃三・五倍引上げ、米價の大幅引上げ等との關係から見た賃金と物價のバランスを、もし説明ができますれば、どの程度のバランスで政府は立案しているかということを説明願いたいと思います。  もう一つは、特に私は昨年來安本に強く要望しておりました問題は、全體の日本經濟對策、物動計畫、あるいはその他の對策等に、物と金の面では相當眞劍な案も立てつつございますが、一番重要な人的配置、あるいは人をどういうように、有效に使うかという問題については、どうも安本の立案が貧弱である。内容なつていない。缺けるものが多々ある。今日企業整備が十分やれない一つの重要な繁因は、勞働對策の根本が確立されていないというところからきておると思います。そうした觀點から見て、一つには今日五箇年計畫の上に立つたところの勞働能率の水準をどの程度に安本は立案しておるか。さらに今後の外國貿易、産業の振興その他の點から日本の工業技術をどの程度に指導せなくてはならないかというような點について、眞劍な檢討が安本にされなくてはならぬと私は考えます。この日本の工業の技術の進歩なくして、日本の貿易の再建というものは絶對にないと私は考えます。それとともにもう一つは、全體から申しますならばどうしても國土が半減された半面に、人口が非常に過剩であるということが、要するに官公廳の行政整理あるいは一般企業整備ができないという重要な原因であろうと思います。私はこの際敗戰後三年を經過いたしましたわが國といたしましては、講和會議がいつ開かれるかわからないので、講和會議を待つておるわけにまいりませんので、どうしても日本民族の勞働者を一千萬ぐらいは外地に移民する。移民して出稼ぎをするということを強く司令部に要望いたしまして、この際日本のほんとうに働く勞働力を世界平和の確立のために寄與するという觀點に立つて、この際移民を懇請するという根本的な對策を安本において立てて、強く司令部に要請する必要があろうと思います。私の申し上げますところの、一千萬という多數の人が實現されなくとも、相當實現の可能性が向いてきますならば、一方には國土産業の再建に對して重大な寄與をすることができます。また一面にはわが國民がほんとうに平和國家を建設して、世界平和のためにほんとうにわれわれは働きたいという氣持の上に立つて、外地に出稼ぎに行こうとする人が相當多數あると思いますので、この點は實現の可能性いかんは別といたしまして、もう時期としては日本政府として司令部なりあるいは連合各國に對して、要請することを今日強く推し進めていく時期ではないかと見ておりますが、政府の見解はどうであるかということをお尋ね申し上げたいと思います。
  47. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 これは私はまつたく趣旨を同樣に考えておるのであります。今囘政府としては新しい豫算を編成し、この豫算の編成については賃金水準あるいは官公吏の給與、それから物價、こういう點、物價も補正をいたしますけれども、幅は相當大きな面にわたると思うのであります。改訂はいたしません。補正になりますが、相當大幅の補正になると思うのであります。そういうことでありまして、これがバランスを失して、惡循環を來すということになりますれば、いろいろ苦い經驗もございますので、十分考えたいと思うのであります。それにつきましては單に名目賃金の引上げだけではただいまお話のように賃金の安定は期待し得られないのであります。實質賃金の充實、こういうような點を十分考えたいと思うのでありますが、これについてはマル公による生活必需物資の配給を増加するということが非常に必要になつてまいるのでありまして、これはあらゆる面、纖維製品、食糧その他についても能う限りの努力をいたしたいと思つて、ただいま豫算及び物價の編成補正をいたしますと同時に、あるいは輸入の懇請もしくはそれに伴う一連の政策、税の上においては勤勞所得税の引下げ等をも考えておるのであります。案といたしましても政府はいろいろ立つておるのでありますが、實はただいまからも豫算その他の關係でその筋へ行くのでありまして、最後のところまでどうしてもまだ固まつておりません。いずれ二、三日のうちにはきまつてしまうことでございますから、その際きまりましたところにつきまして、あらためにまた詳しく申し上げ、いろいろな御指示をも得たいと思う次第でございます。  それから第二の點でありますが、物資及び資金とともに人的配置その他についての總合的な施策をとれというお話であります。これもごもつともだと思います。これはあるいは勞働大臣の方が御專門かとも思いますが、長期計畫にあたりましては、そういう點をも十分に考え、あるいは立地條件その他をも併せ考えまして、新しい産業が立地條件の適したところに發生し、そこに發達し、そこに人的の配置をも完了するというように、三百名ぐらいにもなると思いますが、各方面の專門家を集めた專門部會をつくりまして、一連の政策を立てたい。これは必ず實效の伴う政策を立てたいと考えまして、實は去る十七日に第一囘の會合を開いたような次第でございます。これはできれば三月なり四月なりの短い期間において、相當の實績をあげる計畫の完成ということに努めたいと思つておる次第でございます。その上でさらに閣議にもかけ、國會にもいろいろお諮りしたいと思いますので、國會方面からも委員その他に出ておいでを願つておりますけれども、またこういう委員會その他についても、そういう際にはあらかじめ御指示その他をもいただきたいと思う次第でございます。  第三の移民の問題でありますが、實は日本の人口もあの五箇年計畫をかりに遂行するといたしますと、どうしても八千三百萬人ぐらいになりますが、それでも見込みがまだ少からうと言われるくらいでございますので、將來海外に出て産業を起すことが必要であり、そのために海外に出てもらうについては、十分援助し、その他の點をも考えるということも必要でございます。しかしただいまのところでは、なお終戰後の平和條約もまだ成立せず、占領下にあるのでありまして、未だ大口の移民を懇請するまでの域に達しておらぬのであります。しかし先ほども申しました長期計畫その他につきましては、この點は十分檢討をし、專門家によつて案も立てていただきたいと思います。將來としてはぜひ努めたいと思う次第でございます。
  48. 前田種男

    前田(種)委員 再度簡單にお伺いしますが、最後の移民の問題はいろいろめんどうな面があろうと思いますが、この問題については國會關係においても、たれ一人反對する者はないと思います。國民すべてが要望しておることでありますから、この要望に對して政府は相當強く司令部に懇請することに當つていただきたいということを特に政府にお願いしておきます。  それから今当辯の中に、結局物資の配給がマル公で配給されるかどうかによつて生活安定の問題がきまると思います。今までの計畫ではマル公で生活できないために、うなぎ上りに物價が引上げられ、そのために賃金が引上げられる結果になつておりますので、どうしても最小限度の配給物資に確保するという點について、さらに安本として最善の對策を立ててもらいたいと思います。  もう一つは今日問題になつておりますところの、物價と賃金の比率が、海外の物價と賃金とのバランスに對してどういう關係なつておるかという點が、われわれ國民にはわからぬわけです。これがもしこの席上で安本長官から何かの發表が得られますならば、海外の物價と賃金、國内の物價と賃金の關係等を御發表願いたいと考えます。
  49. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 將來平和條約ができた後の海外移民について、大いに策を立て、そうして努力せよということについては、私どもも十分拜承いたしまして、ぜひこれに努めたい、こう思つている次第でございます。それから實質賃金の裏づけには、結局マル公による生活必需物資の配給ということを高度にしなければならぬという點も、まつたくお説の通りであります。これにつきましては、物價の補正等については、常にその裏づけとして考えなければならなぬ點でありまして、實は今囘もそのためには各種の物資につきまして輸入の懇請、あるいは増産等も努めておる次第であります。この點は政府としても、やはり當面の問題として十分實效のあがるようにいたしたい、こう考えておる次第であります。いま少しいたしますれば、詳しく申し上げ得るかと思いますが、今日はこのくらいで御了承願いたいと思います。  いま一つは物價の點でありますが、これは日本の國内が鎖國的な状態から國際經済への參加ということになりましたけれども、その度はなお非常に微弱であります。貿易などもわずかしか動いておらないのであります。そこで國内物價と國際物價との間には、なお相當の懸隔があるのでありまして、その高低を調べるということも相當骨の折れる仕事でございます。しかしある種の物資その他については、それが考えられるのでありますから、適當機會にその調べておるところをまとめさして、あらためて發表もいたしたい、こう考えておる次第であります。
  50. 安平鹿一

    安平委員長 この機會ちよつとお諮りしますが、栗栖長官は、今司令部から重大用件で呼ばれておるそうでありますから、殘りの質問者山花君、島上君の長官に對する質問は、この次に讓つていただきたいと思います。
  51. 川崎秀二

    川崎委員 私のは簡單に済みますから……。初めから聽かずにおつたのですが、結局賃金安定はやる方がいいか、またそれを阻害する要素が大きいかよくわからぬので、しばらく研究してみてからやる、こういう御答辯でございましたか。
  52. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 しばらく研究するというのは、やるとかやらぬとかという意味でなく、速やかに勞働大臣、各省大臣とも十分檢討して、そうして愼重に態度を決定したい、こう思つておる次第であります。
  53. 川崎秀二

    川崎委員 そうすると賃金安定策はやると了承してよろしゆうございますか。
  54. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 今申し上げたように、やるかやらぬかきまつておりませんが、やるにしても、どういう方法か、どういう範圍になるかということを檢討しなければならぬのであります。これは日本の經済再建の上に、實際問題としてよほど愼重に考えなければならぬと思いますが、ようやく今勞働大臣とも顔が合つたような次第でございますので、いろいろ檢討した上で至急態態をきめたい、こう思つております。
  55. 安平鹿一

    安平委員長 速記を止めてください。     〔速記中止〕
  56. 安平鹿一

    安平委員長 速記を始めてください。
  57. 川崎秀二

    川崎委員 そこでちよつとお伺いしておきたいのは、賃金安定策について、勞働省方面では、今日の段階では関接統制でいいというようなことを、新聞紙上に散見いたしているのですが、栗栖安本長官としては、賃金安定策をとる場合に、それだけで十分であるか、どういうふうにお考えでありますか。
  58. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 今も申し上げましたように、勞働大臣とも今顔を合わせたようなわけでありまして、實は間接なんかというようなことは、だれから出たのか知らないが、まつたく新聞の推測であろうと思います。もしそれをやるとかかりにきまりますならば、間接たると直接たるとを問わず、有数適切なものをはなければだめなのでございますから、そういう意味においても十分議を——また一度も閣議をそういう點については開いておらぬような次第で、研究して早急に態度をきめたい、こう思う次第であります。
  59. 川崎秀二

    川崎委員 結構です。
  60. 安平鹿一

    安平委員長 加藤勞働大臣もお見えになつておりますので、加藤勞働大臣に對する質問を願います。倉石忠雄君。
  61. 倉石忠雄

    ○倉石委員 勞働大臣にお尋ねいたしたいのでありますが、最も各地に行われております爭議の中で、生産管理が行われた爭議が非常に問題になつております。生産管理と申しましても、その名のもとに行われております状態はまちまちでありますけれども、要するに勤勞者がその設備、資金、資材をその手に占擔しているというふうな生産管理に對しては、一定の方針を示すべきではないかと思うのであります。いつごろでございましたか、大阪の裁判所においては、そういつた生産管理は合法的なものであるという判決をされた例もありますし、また法務廳あたりでは、同じような事案に對して違法であるというようなことを申しておるのでありますが、この生産管理の合法性、違法性ということについての、勞働大臣の根本的な御意見を承りたいと思います。
  62. 加藤勘十

    加藤國務大臣 生産管理の問題につきましては、國會におきましても、委員會、本會議等でしばしば問題になつております。これが違法的なものであるか、合法的なものであるかということについては、法務廳方面においても、まだ最終決定に到達していないのであります。私個人の見解としましては、私は爭議行為としての生産管理必ずしも違法ではない。こういう見解をとつております。しかしながら生産管理には多くの場合、他の刑罰法規の對象となる事柄が附隨しがちであるから、できればそういう手段によらないで爭議が進行していくことは望ましいことだと思いますが、しかしながらこれが爭議手段の一つとしてとられます場合、これを畫一的に、どの場合においてもこれが違法であるとか適法であるとかの判定は下し得ないと思います。當然その個々の事態について、他の刑罰法規に觸れる事柄が發生した場合において、そのことが違法的なものとして處置されるわけでありまして、だからというて生産管理そのものがただちに違法であるという結論には達し得ないと思います。現に最近いくつかの問題が生産管理を中心として惹起しておりますが、いずれも生産管理が始まつて、ただちに生産管理そのものが違法として處斷されておるのは一つもないのであります。いずれも生産管理が相當期間繼續された後に、何かしら他の刑罰法規の對象となるような事態が起つた場合に、その法律によつて處斷されておりまして、今日生産管理を違法として處斷すべき法律的根據は何もないわけであります。そういう點からおそらく今倉石さんのお尋ねのように、これに一定の限界を附し、解釋を明確にしたならばよいではないかという御意見が出たのではないかと存じますが、實際問題としまして、生産管理を違法とする法的根據にないとすれば、これは法律的に獨立の何か條項を設けて、違法なら違法としなければならぬということになるわけでありますが、私はそういう必要を認めない。こういう解釋をとつておりますから、現在のところやはり個々の事態を見て、その事態が終始適法に行われておるか、ある段階において他の刑罰法規の對象となるような事柄が起るかどうかということによつて決定されるべきだと思います。現に昨年でありますが、正田製作所のごときは、半年以上にわたつて生産管理を續けておりますが、結局何らの事態も起らず、きわめて平靜に生産管理が繼續されて爭議の解決を見た實例もあります。また今お示しのように、大阪における大和製鋼の場合のごとく、民事裁判所においてはこれは適法であるという判決をした事態もありますし、そうかと思いますれば最近の日本無線、あるいは日本タイプ、もしくは愛光堂というような生産管理が、生産管理そのものの違法性というのではなくして、それに隨伴する、やれ保管物を持ち出したとか、建造物を占據したとか、あるいは不法に侵入したとか、そういう事態によつて處斷されておる實例もあるわけであります。生産管理そのものは職場の占據なくしてはこれは行い得ないわけであります。しかしながら全然その工場に縁もゆかりもない他人がはいつてくれば、不法侵入ということも成り立つ、從つて占據ということも成り立ちますけれども、毎日そこの職場の從業員として、その工場に働いておる人が來て、私はその職場に就くということは少しもこれは不法占據であるとか、不法侵入であるとかいうことは言われないと思う。そういう意味において數箇月間繼續されてきておるわけでありまして、ただいろいろな事件が起つて、初めてそれが問題とされるようなわけでありますから、そういう他の刑罰法規によつて問題とされる危險はありますけれども、そのことのためにただちに生産管理そのものが違法であるという見解はとれない。こういうふうに私どもい解釋をしております。
  63. 倉石忠雄

    ○倉石委員 これは今の勞働大臣のお話のようでありますと、私どもは生産管理というのは、爭議權が財産權よりも優位に取扱われるという解釋をしなかつたならば、生産管理の合法性という主張は通り得ないことだろうと思います。そういうことはあるいは水掛論になるかもしれませんガ、お互い勞資双方が兩方の義務を遂行し合う。爭議行為の發生したときに、その義務を拒絶するということが爭議になるのでありますから、他人のもつておる財産權を侵害したり、また勞働大臣の御説明なつたような、いろいろな爭議行為が行われ、その行われたものの行為が違法性をもつてきたときに、生産管理は違法ということになるのであつて、單なる生産管理の違法性とは言えないというお話でありますけれども、今日のような時代に、少くとも生産管理が行われておる間、その企業の成績がうんとよくなつたという實列は御承知の通りないのでありまして、今日のような日本状態においては、こういう生産管理というようなことは、やはり禁止する方がよいのではないかと私は思うのであります。かような爭議手段をとらないで、もつとほかの手段をとられるように指導されることを私は希望いたしたいのでありますが、さようなお考え政府にはございませんか。
  64. 加藤勘十

    加藤國務大臣 これは政府と申すより、私個人の見解として申し上げたのでありますが、その他の方法がとられることが好ましいということは、今申し上げた通りであります。できればそういう解釋に疑義を生ずるような行為をとられないことが、一番はつきりしておつてよいと思いますけれども、解釋が明確にできないからといつて、ただちにそれを違法として禁止するということにはならないと思います。もちろん財産權重しか、爭議權重しかといえば、私はどちらも國の法律によつて規定されたものでありますから、いずれを重し、いずれを輕しと見るわけにはいかないと思います。當然これは法律の規定するところによつてひとしく權利であるに違いありありませんが、しかしながら爭議權というものは、多くの場合今日の社會機構の上において、弱者と見られておる勞働者側の權利を擁護する一つの現れとして規定されたものでありますし、所有權の方は、公共の福祉に反しないということが、常にいかなる場合においても前提にならなければならぬわけであります。これは憲法にもその通り明白に規定をしておる點であります。從つて私は所有權が絶對であるというような明治憲法の解釋と、今日の新憲法の所有權に對する見解は若干違つてこなければならない。こういうように理解しております。從つて所有權を重しとする觀點から、所有權を侵害するおそれのある生産管理行為は、やはり違法行為として禁止したならばという御質問のようでありますが、私どもとしてはそういふ意思は現在もつておりません。
  65. 倉石忠雄

    ○倉石委員 まだ質問をなさる方がたくさんおられるので、一項目ずつお尋ねしますから、御答辯も簡單にお願いいたします。  まず第一の中勞委の性格及び權限について、私どもは非常な疑問をもつておるのでありますが、單なる仲裁機關であるとするならば、現在のような機構、組織でいいと思いますけれども、この裁定の法的拘束力もほとんどないような状態でありまして、この中勞委の運營については、非常にこれは大きな影響をもつてくるのでありまして、これを法制化して、もう少し強力な拘束力をもたせる御意思はありませんか。
  66. 加藤勘十

    加藤國務大臣 御承知の通り中央勞働委員會は、勞働組合法の調停事項の規定に基いて設置された——關係勞働省關係でありまするけれども、ほとんど獨立の機能をもつた組織であります。しかしながらその權限及び性格は、勞働組合に規定された範圍に從うものでありまして、この調停の決定が、最終決定として拘束力をもつという性質をもつておらないことは御承知の通りであります。私の考えとしましては、現在の勞働委員會は、その運營よろしきを得れば、必ずしも獨立法案によつてこれに法的最終決定權をもたせるというような必要はないと思うのであります。殊にこれは勞働法規の改訂の問題に關連することでありまして、現在いろいろな點において、いわゆる勞働者に對する資本攻勢の聲がやかましくあがつておる。ところが日本におきまして、御承知の通り何としても日本經濟の復興をはからなければならぬ。これが何としても最大の命題であります。この日本經濟復興をはかるについて、その主要なる要素は、言うまでもなく勞働力であります。勞働力のないところに經濟復興は考え得られないのであります。もちろん他の要素もそれと同等に必要でありますけれども、そういう意味において、日本經濟復興の最大の要素の一つである勞働力に不安を感ぜしめるような事柄は、つとめて避けめべきである。こういう點から、私は勞働委員會運營は何と申しましてもまだ一年有餘、二年足らずのことでありまして、その經驗から言つても、きわめて淺いのであります。このわずから期間における淺い經驗をもつて、ただちにこれがいいとか惡いとか斷定を下すことは、まだ尚早だと思います。いましばらく實際に、順次時間の經過によつて運營にも慣れてき、そうして勞働委員會の權威が、勞資雙方によつて承認せられますれば、これに法的權限を與えなくとも、現在の調停機能をもつて十分その權威を發揮することができる、このように私は解釋しておりますから、ただいまお尋ねになりましたように、獨立の法律をもつて、これに強い法律的權限を與えるというようなことについては、考えておりません。
  67. 倉石忠雄

    ○倉石委員 ただいま勞働大臣のおつしやいましたように、今日の經濟復興には勞働、勞務の問題が最も重要な役割を占めておるのでありまするが、そこでこの勤勞階級の利益を伸張するために行われるストライキを見ておりますというと、紛爭が起き始まつて、間もなく、ストライキになるというようなことになるのでありまして、こういうことの弊害を若干除去する意味において、冷却期間と申しますか、一定の冷却する間、時間を稼ぐ意味においても、紛爭處理機關というようなものを定めさせることが、非常にいいことじやないかと思いますが、勞働大臣のお考えを承りたいと思います。
  68. 加藤勘十

    加藤國務大臣 紛爭處理の問題につきましては、ただいま御意見の通りでありまして、これは私は勞資兩方によつて締結せられる團體協約の一條項として、紛爭もしくは苦情處理の機能を含めておくということは、とられることがよろしいと思います。そういう意味においては紛爭處理に關する一條項を團體協約の中に含める。ここにおいて勞資當事者の話合いで話がつかないときには、勞働委員會に持ち出す前に、もう一つ段階として設停委員會を設けて、その調停委員會でやるなり、あるいはただちに勞働委員會に提訴するなり、それは勞資兩方の自發的意思によつてそういうことが行える方向にもつていくことは好ましいことである、このように考えております。
  69. 倉石忠雄

    ○倉石委員 私はこのごろ各地で行われておりまする紛爭の状況を拜見しておりますというと、團體交渉なぞの場合に、非常に組合の方々のうちに遺憾な點を發見するのでありまして、ああいうところを見ておりますと、やはりまだ組織されたる日本勞働組合が經驗が浅いので、何と申しますか、うまい方法をとることができないということは、まことに遺憾に考えるのであります。そこでどうぞひとつ、これは政府も、皆で援助して、この勞働組合の自主性、勞働組合をもう少し力を強くさせるということを、そうして民主的に運營していかれるように、ぜひこれは助けてあげなければいけないと思うのでありますが、そこでその組合の自主性を發揮する意味において、もう少し勞働規律と申しますか、職場規律の確保というようなことを、ぜひこれは勞働省當局の指導方針として、そういうふうな方向に組合をもつてつてもらいたいと思うのでありまして、たとえば執務時間中の組合の協議なぞというものは、これはやはり自主的な組合としてはすべきことじやない。また組合役員の選出方法なぞでも、御承知のように今日ではあまりデモクラチツクに行われておらないのが實情であります。そういうところも是正するようにしなければならぬ。また專從職員の給與は組合で負擔をするとか、爭議中の賃金は支拂を受けないとか、あるいは堂々と組合費の公開をするというようなことは、非常に勞働組合を權威づけるためによいことだと思うのであります。殊に日本勞働組合に關する原則として、一九四六年十二月六日に、極東委員會で示されたる最後のところに、各勞働組合の大口寄附を含む貸借對照表及び收支決算表は公の檢査に供さるべきである、記載の正確を期するため、組合員によつて任命された、專門的に權限ある會計檢査員による、年次檢査の措置が講ぜらるべきであるというようなことを申しておりますけれども、私どもやはり日本勞働組合もそういうふうな堂々たるりつぱな組合に早くしたいと思うのでありますが、そういうふうなことについて、もしその點について法を改正する必要があるならば、法を改正して組合の自主性を強化するという點について、政府はどういうようなお考えをおもちでありましようか、承りたいと思います。
  70. 加藤勘十

    加藤國務大臣 ただいまのいろいろな點についての御質問でありましたが、勞働組合が自主的に健全なる發展をとげるということについては、私ども滿腔の熱意をもつて、そういうことを希望しておる一人であります。勞働省としましても、直接これに交渉して、そうしたがよいとか、ああしたがよいとか言うことはできぬことでありまするけれども、例面から勞働者の教育を促進し、その教育を通して、勞働者が十分に自由意識をもつて勞働者みずからの自由なる意思によつて、組合運營が民主的に、自主的に運營されていくように成長せしめていかなければならぬ、このように考えておるものであります。そういう觀點から見まして、最近の爭議の場合等におけるもろもろの事柄についての事實をお示しになりましたようなことがありといたしますならば、これは勞働者の教育によつて十分改善されていかけなければならぬことであるし、また私どもも、そういう方向に勞働者諸君が向つていくように側面から教育の力をもつて促進していきたい、このように考えております。もちろん職場規律として、原則としては今お示しの通り、勤務時間中に自分の勤務を離れた他の仕事をするということは、これは許されないことでありますけれども、そういう場合にはそれぞれその職場における長、係り責任者の承諾を得て行う場合でありまして、承諾を得ない場合に行わけることはよろしいないということはおつしやる通りであります。  それから組合の經理の點、その他法律によつて定められた事柄をそのままそのように實現せしめていくということは、もとより望ましいことでありまして、最近においては國鐵なんかにおきましても、役員の構成、幹部の構成については十分に民主的な方法が選ばれておる。順次そういうようになつておる傾向が起つておるわけであります。國鐵のような代表的組合がそういう方向をとられるということは、やがて他の組合にもそれが範となつて、組合幹部の選出も民主的に選擧されていくようになると思います。從つて幹部の獨裁的な指導というものは順次行われていけなくなる、このように考えております。從つてそういうことは組合の經理なり、その他組合の事務なりについても、順次一般組合員が當然組合員の權利として、そういうものをいつでも把握することができるように、明確に示されておると同時に、第三者もまたそれについてはいつでも事情を明らかに知ることができるように、明確に表示されることが望ましい。殊に日本におきましても、法人として登録した以上は、法人として課せられておる義務は、そのままやはり勞務組合にも適用されるわけであります。ただ日本勞働組合はまだ法人として登記をした組合は比較的少いのであります。登記した組合は當然今おつしやるようなことはそれぞれの成規の手續がとられております。登記していない組合はそういうことについての義務を課せられておりませんからやつておりませんが、かりに登記しなくても、組合員がほんとうに教育の滲透によつて意識してまいりますれば、おのずからその點は改善されていく、このように思つております。  それから専從職員の問題でありますが、これもまたしばしば問題になつておる事柄であります。お言葉の通り、日本勞働組合がほんとうに自主的に力強きものとして發展してまいりますれば、これらのことは期せずして組合の費用がすべて組合の負擔において行われるということはもう言うまでもないわけでありまして、あくまでも原則として組合の費用が全部組合によつて負擔されるということは當然のことであります。これも原則論としては議論の餘地はないのであります。ただしかしながら、日本の今日の勞働組合の發達の段階から現實を眺めてみますると、必ずしも理論通りにはいかない點がありまして、もしこれが、そういうようにどこまでもその組合の仕事をやる者の給與その他が全部組合によつて負擔されなければならぬというのならば、おそらく私はせつかく今日發達の途上にあり、しかも正しい方向に發展していこうとする勞働組合の發達を挫折せしめる危險性が相當あると思います。かえつて逆に好ましからざる事實をさえ現わしてくるのではないか、こういう危險をも感ずるのでありますから、私は原則論としてはもとより異議はありませんけれども、現實の過程におきましては、日本勞働組合のいま少しく自主的に完璧に發展する時間の間、そうした專從職員という特殊な例を設け——これはほとんど外國には例を見ないことでありまして、またある方面からもその點については力強い反駁がありますが、私は日本勞働組合を健全に發達せしめる上からいつて、ある時期的に暫定的にはやむを得ざる特殊な例として存置することの方が——もちろん人員の點において、また活動の範圍において、勞働組合員の教育を主眼とすることが主要なる任務でありまして、教育のためにそういう若干の特殊の施設を必要とする。こういう點で私はいましばらく段階的に是認する方が——順次その數を減らし、その活動の範圍を限定していくという方向はとらるべきであると思いますが、過程的には存置することの方が、勞働組合の運動を正しく發達せしむるゆえんであり、かつ今日の勞働組合の經濟實情においては、結局結論においては日本の當面する經濟復興への大きな寄與を與えざせることになる。そうでなく、もし專從職員が一擧に打切られるということになりますれば、組合自身の活動が非常に萎靡沈滯してしまうばかりでなく、そういう點からくる日本生産復への熱意を冷却し、また組合の常任有給指導者というものが、ある限られた範圍に限定されてしまうおそれもあるわけでありまして、そういう點から私はこれを殘すべきである。もちろん申し上げておきますが、これをあたかも日本勞働組合における既得權利であるとして、勞働者の既得權利であるとして、これが繼續を主張するという考え方には、私は反對であります。ただそういうまつた勞働組合の發達の一段階として、かつ當面の經濟復興への勞働組合の熱意を湧き上らしめるために、こうした過渡的な措置が必要である。このように考えております。
  71. 倉石忠雄

    ○倉石委員 まだたくさんお尋ねしたいことがありますが、いずれ他の機會に讓るといたしまして、最後に一つお尋ねいたしたいのは、六月十八日でありますか、サンフランシスコに開かれます國際勞働會議に、日本が招聘されるというふうなことを承つたのでありますが、その點についてただいままでの經過を御説明願います。
  72. 加藤勘十

    加藤國務大臣 實はこの問題につきましては、今さら繰返して申し上げるまでもなく、十分御承知の點でありますが、日本が國際連盟を脱退して、續いて國際勞働總會からも脱退してしまつた。そうして現在まだ講和會議も結ばれない。平生の國際關係を囘復していない段階におきまして、ひとり國際勞働機關にだけ復歸するということは、相當困難な點もありますが、しかし今まで今度の戰爭後、イタリア竝びにオーストリアにおきましては、講和會議締結前に國際勞働機關に復歸しておる前例があるわけであります。日本の現在の勞働法規の大部分は、殊に勞働基準法のごときは、まつたく國際勞働會議において締結された、あるいは勸告された條約もしくは勸告案が、土臺になつておるというような情勢と、かつ日本勞働者生活水準が、順次國際生活にはいり得る準備段階としましても、まず國際的機關に參畫し得る機會があるならば、參畫することによつて、來るべき講和會議がむしろそれによつて日本の信用を國際的に高めることができるのではないか、こういうような觀點から、復歸できるものならば、復歸したい。しかしながらこれは御承知の通り國際勞働機關というものは、政府と勞資それぞれが一團となつて參加しておつたものでありまして、政府だけがいかに復歸の意思をもつておりましても、勞資双方のこれに參加する熱意がなければ、政府だけではどうにもならぬことであります。そこで政府といたしましては、そういう意味において參加することの方が、國際信用を高め、講和会議における立場を有利、と言う語弊がありますが、ともかくよく正しく理解してもらう上に必要であるという點から參加を決意いたしましたが、同時に勞資双方の代表的勞働組合、あるいは經濟團體等に諮問をいたしまして、勞働組合としては全國的組織をもつた萬人以上の組合に向つて、贊成か反對から意思を問うたわけであります。今日まで囘答に接しました中ではつきり反對の意思表示をされましたのは、産別傘下の全日本機器と全國金屬鑛山勞働組合のこの二つだけでありまして、産別の他の單位組合はまだ態度未決定であります。しかし今のところあるいは産別系統の組合は、參加に反對されるのではないかという見透しもあります。総同盟の傘下組合としては、日本繊維勞働組合同盟が贊成の意思を囘答してこられましたが、他の總同盟傘下の單位組合としてはまだ態度は決定しておりません。しかしながらこれは大體參加に贊成されるのではないかという見透しをもつております。その他前後を通じまして組織勞働者數の六五%ばかりが贊成の囘答をされてまいりました。そこで經濟團體としては、日本商工會議所、それから日本經濟團體連合會、この二つが贊成の意思を囘答してこられましたので、政府としてはきよう閣議で正式に連合軍司令部に國際勞働機關に參加できるように好意ある斡旋を求めるような手續をとつてもらうことを決定しまして、その準備を進めているわけであります。それが今日までの經過であります。
  73. 倉石忠雄

    ○倉石委員 委員長にお願いしたいのでありますが、私ども今のような時局に、勞働委員會をもう少し頻繁に開いていただいて、當局にいろいろ伺つたり、希望を述べたりいたしたいと思います。そのことを委員長にお願いいたします。
  74. 安平鹿一

    安平委員長 御趣意に副うようにいたします。山花秀雄君。
  75. 山花秀雄

    ○山花委員 實は私の質問安本長官を中心に質問をすることになつておりますから、きわめて早く開いていただいて、そこで質問をいたしたいと思います。
  76. 安平鹿一

    安平委員長 菊川忠雄君。
  77. 菊川忠雄

    ○菊川委員 私は主として職業安定局長に伺いたいのですが、勞働大臣も一緒に聽いたいただきたいと思います。私の問題は一見非常に部分的な問題なんですけれども、實は今日の政府失業救濟事業の全般について、ある考えをもつておるとともに、公共事業をめぐる知識階級の失業者救濟の現在の状態、それについて、昨年の八月からお始めになつたのでありますが、その後の状況の概略をまずお尋ねしたいと思います。それもくわしいことは要りませんが、豫算がどれだけで、延人員として豫算どれくらいお話いになつているか、それからその一人の單價がとういう状態なつているか、それから配置先はどういう配置先で、どういうような仕事を實際にやらされておるか。こういうことについて、まず要點だけお尋ねしたいと思ひます。
  78. 齋藤邦吉

    齋藤説明員 ただいまの御質問にお答え申し上げます。昨年の勞働省所管といたしまして、知識階級の失業救濟應急事業をやつておりました。それの大體の内容を御説明申し上げたいと存じます。昨年の豫算單價を申しますと、豫算單價は昨年におきまして、年度當初勞力費として一日の手當三十圓でございました。それではその後不足でありますことは明らかでありますので、第二四半期より一日六十圓の手當に高めてあるわけでございます。昨年度におきましてその經費が約八千五百五十萬ということとにいたしておるのでありますが、これらの知識階級の失業救清應急事業において就職いたしておりますのは、大體において官公署その他公共團體の事務補助的な仕事でございます。たとうば御承知の各地方にありますヘルス・センターであります保健所におきまする飲食物の衞生監視、あるいは傳染病豫防等の防疫事務、それから各府縣等における統計調査の事務、そういつた官公署その他公共團體における事務補助の事業に從業せしめておるわけでございます。なお本年度におきましては勞力費の四、五、六月の暫定豫算におきましては、昨年の第二四半期からは六十圓でありましたが、それを勞力費一日七十圓ということにいたしておりまして、將來この七十圓のわくが本豫算の編成と同時に、一割五分開度増額になる豫定に考えております。すなわち一割五分程授増額になりますと、大體百十圓程度になることになつております。本年度の年間の大體の大わくは二億八千萬圓程度、こういうような實情に相なつておる次第であります。以上お答え申し上げます。
  79. 菊川忠雄

    ○菊川委員 最初三十圓で、その後六十圓、それから現在七十圓、將來一割五分ぐらい増すというお話ですが東京都の知識階級失業救濟應芳事業についてみますと、これは東京だけで一千名ぐらいあるわけですが、當初は一人あたり最初二十圓、最低は十八圓五十錢、その後これが増額いたしまして、最高が一人あてたり四十五圓、最低が四十三圓、その間に今の單價とはちよつと開きがあるわけですが、それはどういうふうな事情からきておるか、この點をひとつお伺いいたします。
  80. 齋藤邦吉

    齋藤説明員 ただいまの東京の例でございますが、今日まで、すなわち昨年の第二四半期になりまして單價六十圓になりました後の、東京都において行つておりました知識階級失業救濟應急事業の給與の大體の様子を申し上げますと、これは學歴別、年齡別になつておりまして、大學卒業者につきまして、年齡で多少の刻みをしております。それから專門學校等につきましても年齡別に段階を設けております。そこで例を申し上げますと大學出の一番若し、最少のものが三十三圓、最高が四十歳以上のものについて四十五圓、專門學校卒業程度のもの、最低が三十二圓で、最高四十四圓、中等學校卒業程度のものが最低三十一圓、最高四十三圓、すなわち年齡によりまして學歴別によつて段階を設けております。なおこのほかに家族一人につきまして、今までのとまろ三圓を加算して計算をしておるような次第であります。ところで本年度暫定豫算で單價が七十圓に上りましたので、これを目下改訂いたしまして、最低五十五圓から最高七十七圓の段階に高めまして、家族の關係においても一人につき從來三圓でありましたものを、五圓に上げるというようにいたしまして、本年の四月から實施してまいりたいと考えております。なおこれは本豫算の方におきまして、豫算單價が増額いたしますれば、當然これも増額していけると考えておる次第でございます。
  81. 菊川忠雄

    ○菊川委員 今のお話を伺いましたが、やはり現實に東京都では最高がたとえば最近の改訂前におきまして四十五圓、最低四十三圓、どちらにしても單價を下まわつております。最高の場合も同じであります。この點はもう一度お調べ願いたいと思います。  次にお伺いしたいのは、この間上りました前の状態を見ますと、一人あたり最高四十五圓、最低四十三圓、それに對して家族手當一人につき一日三圓、これは言うまでもなく知識階級——知識階級というものはこれにもあるように專門學校卒業程度以上ということであります。従つてその中には大學を卒業しておる者もある。そういう相當の教育もある人であります。その場合に、かりに四十三圓という最低をとつたといたしましても、現在臨時事務員の場合には一箇月の收入が一千六百五十円であります。これは日額四十三圓の場合です。これは五人家族で計算をしてみたのであります。ところが一方生活保護法によりますと、五人家族の要保護者に對しては一千五百圓になるわけであります。しかもこの一千六百五十圓は、勤勞所得税が源泉課税として一割三分ほど引かれます。生活保護法の場合になりますと、このほかに多少の物的な給與があるわけでありますが、一方はこれがないのであります。それから臨時事務員となれば、やはり電車賃も使いますし辨當も持つて行きます。さらに事業實施要領にある執務規律などを見ると、一般の吏員に準ずると書いてありまして、同じ仕事をするわけであります。先ほどのお話のように、やつておる仕事はどれを見ても、吏員としてもきわめて高度の熱練を要する仕事をやつておる。たとえば窓口における納税の問題とか、あるいは戸籍謄本とかいうふうな仕事をやつておる。近い話が日比谷の圖書館におきましては、ああいう相當の知識階級の人でなければできないような書類のよりわけから、またその書類を、ほこりをかぶつて倉庫から運び出す。知識勞働者としては相當重い程度の勞働もやつておる囲こういうことをやりながら、しかも要保護者よりは實際において收入が低いのであります。これではたして知識階級に對する失業グ濟という内容を備えておるか。この點について今まで實情について政府は現場を御視察になり、あるいはそういう生活についてお考えなつたことがあるかどうか、この點についてお伺いしたいのであります。
  82. 齋藤邦吉

    齋藤説明員 ただいまの御質問にお答え申し上げます。今日までの實情につきましては、御指摘になりました通りの部分が相当あるわけであります。すなわち御指摘になりましたように、現在東京でやつておりますものにつきまして、本年三月までの状況でありますが、五人家族のものにつきましてはお話の通り最高が千八百円になりますが、最低は千三百八十圓になります。それから生活補給金の五人家族のものは東京におきましては千六百圓になります。すなわちこの點におきまして何ら職業と申しますか、現實に仕事につかないで政府から金をもらつておるものの方が、現實に働いておるものよりも多いという實情なつておりますことは、御指摘の通りでありまして、私どもはなはだ申譯ない次第だと考えておつたのであります。すなわちいやしくも知識徹級の臨時應急事業でありましても、現實に仕事をやつておるものより、仕事をやらぬで生活補給金をもらすものの方が高いというのでは、健全な勤勞意欲の向上という面から考えましてもいかがかと考えられておつたのでありますが、さいわいにいたしまして、今年度の暫定豫算におきまして七十圓の單價になりましたので、すなわち今年度四月以降におきましては、東京においては五人家族のものの知識階級應急事業におきましては、最高が三千六十圓になります。家族一人につきまして先ほど申しました五圓ということで計算してみますと、東京におきましては五人家族をもつておるものの最高が三千六十圓、最低におきまして二千四百圓と相なりまして、初めて生活保護法によります生活補給金よりも多くなる、こういう大體結論に相なつておる次第でございます。これが私どもも實に申譯ない話でありましたが、昨年の三月までには御指順の通り生活保護法よりも低いものがあつたのでありますが、これにつきましては東京における知識階級應急事業職員の勞働組合からのお話もあり、それからまた私ともの方で現地にあたつて調べてみましても、はなはだおもしろくないという面がありましたので、本年度四月以降におきまして、今申しましたように五人家族最高三千六十圓、最低二千四百圓というように相なりまして、今のところでは生活保護法よりも上まわつてくるということに相なつてまいりました、これは東京だけの例でありますが、おそらく地方においてもまだまだ御指摘のように生活保護法の方が高いという縣がままあるじやないだろうかというふうに考えられておりますので、東京都と相談いたしまして研究いたしました基準地方廳の方にも流しまして、各地方經濟事情等もありますが、各地方において生活保護法よりは少くとも上になるという基準で、この知識階級應急事業の手當の問題を解決してまいりたいと考えておる次第でございます。
  83. 菊川忠雄

    ○菊川委員 そうなると私は簡單に濟まなくなる點があるのですが、今のお話だと新しいベースに直して三千六十圓ないし二千四百圓となる。從つてそれは生活保護法の要保護者よりは上まわつてくるという御計算であります。ところが現に今まで五人家族で千五百圓であつた生活保語法による給與は、今度また同じベースによつて上るわけであります。大體聽いてみますと、厚生委員會などにおいてこの率が問題になつておりますので、大體において三千圓程度に上るのであります。そうしますればやはりこの關係はいわゆる賃金ベースが上つての改正でありますから、多少時間的に前後がありましても同じ關係になるのであります。今の御説のように新しく上つたから生活保護法の要保護者よりは優遇されているという結果に決してならない。私の計算によりますと、今日東京都におきましては、大學出で四十一歳以上の人で單價七十七圓であります。でありますからこの人々は一箇月働いて二千三百十圓、それに六百圓家族手當がはいりまして二千九百十圓であります。でありますからもし今度生活保護法の單價が改訂になりますれば、これは三千圓程度になることは必然であります。當然また生活保護法の方が上まわる、こういう關係にある。この點局長は何か考え違いをしていらつしやるのではないですか。
  84. 齋藤邦吉

    齋藤説明員 今御説明申し上げました四月以降三千六十圓、それから最低二千四百圓になります。そこでさらにこれは本豫算になりますと、現在のものが七十圓單價になつておりまして、それが今度は大體一・五倍程度の百十圓の單價になります。そうなりましたときに、その本豫算によつて四月まで遡及いたしまして手當を支給する、こういうふうにいたしたいと考えている次第でございます。なお私どもの根本的な考えを申しますと、生活保護法が上るとそれに追かけていくということももとより考えなければならぬことでありますが、根本的な考え方といたしまして、いかなる場合におきましても、生活保護法よりは必ず上にする、こういうことをしなければならぬじやないか、こういうふうに考えている次第でございます。
  85. 菊川忠雄

    ○菊川委員 そこで私がいつまんで項目的にまずあげてお尋ねしますが、第一は臨時事務員という名前でありますけれども、しかしそのやつておりますところの仕事は、東京の例を見ましても、私ずつとまわつてみましたが、都においてもあるいは職業安定所におきましても、あるいは區役所においてもその他のところにおいても、すべてどれ一つとしてここ一、二箇月でなくなるとか、あるいは一年、二年後にはなくなるという臨時的の仕事をしているところは一つもないのであります。たとえば圖書館のごときも、あの圖館を整理するのには八年もかかる。そういう仕事を臨時事務員がやつている。また區にまいりましても、全部やつておりますことは、窓口の謄本の仕事といい、あるいは人口の動態調査といい、あるいは防疫衞生、すべてこの吏員が足りないために、それをやつているのであります。でありますから臨時事務員の名前にわれわをがごまかされてはいけないので、仕事の實際は當然あるべきところの恆常的な仕事をやつているわけです。そこでこういうふうな場合において、これを臨時事務員というふうな知識階級失業救濟の公共事業として、こういう仕事をやらせるのが妥當であるかどうか。私は今後知識階級失業のために、公共事業というものをあてごう場合に、きわめて重要な問題であると思うのであります。極端なことを申しますれば、地方自治體なり國というものが、當然必要なるところの人件費を節約すめために、知識階級失業者を臨時事務員という名前で使つて、そうして劣惡な條件で搾取している、こういうふうになると思います。こういうことで今後政府がおやりになるところの知識階級失業救濟事業の本旨であるか、この點であります。これはきわめて重要な問題でありますから、明瞭に所信を伺いたい。  いま一つは、それに關連して、從つて當然臨時的な仕事をしていないのでありまして、しかもこういう臨時事務員という人々で十分にやり得る仕事でありますから、そういう場合において、これをあくまで失業者として、臨時事務員として置くべき性質のものなのか、それともこれを本雇としての臨時職員、臨時事務員として置くべき性質のものであるか、この點についてお考えを伺いたい、これが第二であります。  それからいま一つは、現在臨時事務員という建前でやつてつて、それはやむを得ませんが、しかしその仕事は全部吏員に準ずることであります。しかも若い諸君よりは慣れた仕事をやつており、そうしてほとんど八時間そのポストを離れ得ないようなところに配置されて受持つておるのでありまして、最も忠實にして便利な事務員であります。でありますから、その内容勞働者においては一般の吏員と同じであります。そこでわれわれは、憲法その他のことを言うまでもなく、同一勞働に對しては同一賃金でなければならない。これはおそらく政府でもそういう御方針のもとにおやりになると思います。その方針に則つて、今後知識階級失業救濟あるいはその他の失業救濟事業の際においては、同一勞働に對しては同一賃金を拂つて惡いところの理由がどこにあるか、この點を伺いたい。失業者なるがゆえに普通の人以上の仕事をしながら、しかも賃金は半分以下であるというこの點についての見解を伺いたい。これは私は、今後ますます日本經濟界が困難になる際において、勞働問題としてもきわめて重要な問題で、政府みずからが失業者をつくつて、同一の仕事をやらせながら、勞働者の賃金をその部面から引下げていく、こういうことになると思うので、この點を伺いたい。  それからこの臨時事務員という建前は、知識階級失業救濟事業の建前として結構でありまするが、しかしながらそこで働いておる人を、そこに置いておくだけでいいのか、どうか。さらにこれと相竝んで職業安定所の仕事としては、その人々をなるべく早く本來のもつと適正な仕事に振り向けるという就職の機會を斡旋するという積極的な部面がなければならぬと思います。そういう點についてどういうふうな施設をおもちになつておるか、それについての豫算がどうなつておるかということであります。  いま一つは、先ほど來云われましてもまだ十分に了解できない点があります。その給與の面においては、生活保護法との關係において上まわるようにするということなのでありますが、一體この知識階級失業救濟の豫算をお組みになる場合に、何をベースにしておきめになるのか。たとえば賃金ベースというものを基準になさるのであれば、その標準を何十パーセントにおいておるか、これをひとつお答え願いたい。從つて今後豫算編成の場合において、知識階級失業救濟豫算というものは、年延べ何人の人數、そして單價を何ぼというふうにおきめになる方針か。今囘七月以降の本豫算においては、それがどういうふうに現われておるかということをお尋ねしたいのであります。それから話はそれに關連いたしまして、本年の七月以降における日本の知識階級失業者の増加の見透し、竝びにそれに對するところの救濟の豫算、こういうものを七月以降の豫算の中にどういうふうにお組みになつておるか。こういう点は勞働者責任においてひとつお答え願いたい。以上であります。
  86. 齋藤邦吉

    齋藤説明員 ただいまの御質問にお答え申し上げます。非常に各御質問ともみす關連いたしておりますので、私の方もいろいろ關連いたしましてお答え申し上げたいと思います。  そもそも知識階級の失業救濟の問題でありますが、これは各國とも非常にむづかしい問題にされておりまして、大體一般の失業者の數を計算してみるときに、知識階級はそのうちのどのくらいだろうとかということになりますと、大體一般失業者の二〇%が普通の知識階級だと稱されておるわけでございます。そこで現在の失業者が——先般の昨年十月の國勢調査ではつきり統計に出ました失業者の數が、これははつきり失業者として出た數でありますが、六十七萬と言われております。そうすると結局六十七萬人の二〇%、すなわち十四、五萬という數が、普通の知識階級の失業者だということを言われておるわけでございます。そこでその數字は別といたしまして、知識階級の失業救濟というものを考えますときに、ただいまお話のように知識階級には知識階級らしい適職を探してやるということが、私どもとして一番努力をしなければならぬことだと考えている次第でございます。從つて安定本部において計畫されております公共事業において、各省のいろいろな仕事をさせるにあたつては、技能者あるいは一般勞働者というふうにわけて、いわゆる技能者は何人この公共事業には使えるか、この公共事業にはどの程度のなまの勞働者を使えるかという勞務者の區分を今日までいたしている次第でございます。從つて知識階級には知識階級らしい適職を發見する、かりにそれが公共事業として行われる場合でも、そうした方面に就職を斡旋しなければならぬと思いまして、私どもの方としては公共事業全般について安定本部がその計畫をつくりますと、たとえば農業省關係の土木事業をやる場合に、それに相應した技能者は何人かという數字を私どもと連絡をとつていただき、それによつて技能者の失業救濟、職業紹介というものに努力をしている次第でございます。ところでそうした方面にどうしても就職さすことのできない者、竝びにそのほかの民間關係の知識階級に相應して適職に斡旋することのできない方々には、たなはだ恐縮であるが、ただ遊ぶことなしに、しばらくでも普通の知識經驗をもつておられる方であつたら、この程度の仕事はいつでもやれるといつた官廳の仕事にしばらくの間つかせて、何と申しますか、そこに一種のプールにしておいて、適當機會があつたらその本來の適職の方に斡旋してやりたい。そこでしばらくプールという意味で考えられているのが、先ほど來お話の知識階級應急事業の問題であります。從つてお話の通り私どもとしては、知識階級の失業者に對していきなり知識階級應急事業で救濟しようという考えはさらにもつていないわけでございます。すなわち安定所の方面においては、知識階級にふさわしい本來の適職を、あるいは民間の産業に、あるいはそのほかの恆常的な職業の公共事業の方面に就職を斡旋してやる、これを第一義として、それでどうにもならぬ方々にしばらくプールとしてそうした仕事をやつていただきたいという氣持をもつて、この知識階級の應急事業というものを開始いたしているわけでございます。從つてお話の通りこれらの方々にはこうした知識階級應急事業にいつまでもそのまま働いていただくという考えは私どもつておりません。私どもとしては一應プールに入れてそのプールで働いておいてもらいながら、安定所においてはこうした方々適當な本來の適職をできるだけ深してやるということに努力している次第でございますが、あるいは御指摘のように安定所においてこの知識階級應急事業の趣旨を十分理解しないで、そうした本來の適職の發見ということに努力をしていない安定所も相當たくさんあるのじやないかと思いまして、この點は私ども遺憾でありまして、將來大いに努力をしてまいりたいと思います。要するにこの仕事はあくまで普通の知識經驗のある方であればすぐ飛び込んでもやれる仕事、それはしがらくの間御辛抱願うという意味の職業だと考えております。從つてこれらの方々に對しましては、一年も二年もいわゆるこげつかすといつた考えは毫ももつておりません。もちろんその職場におきまして、あるいは官公廳あるいは市町村等において、適當な定員増加といつたことがありますれば、そちらの方に振り替えていただく、これは一番望ましいことでありますが、それができないならば、安定所におきましては、民間事業その他におきましてあくまでも適職を發見してやる、そういうようにいくべきだと考えておる次第でございます。  なお將來の知識階級失業者の増加の見透しはどうかというお尋ねでございますが、この點につきましては、私ここではつきり自信をもつて數字を申し上げるまで勉強をいたしておりませんことをお詑び申し上げますが、おそらく相當増加するのでないかと考えられております。すなわち企業整備の進展がどの程度になりますか、それは別問題といたしましても、今年度ソ連邦地區から引揚げてまいりまする方々が六、七十萬人おりまするが、この方々の中には相當の知識階級人がはいつておるのでないか、こういう數字考えてみましても、相當の増加の傾向にあるのでないかというように考えられる次第でございます。なお企業整備につきましては、今申し上げましたように、どういう形でいつ行われてまいりまするか、國の方針もまだきまつておりませんために、今にわかに私ここで申し上げるわけにまいらぬと考える次第でございます。それから豫算の單價でございますが、これにつきましてははつきり今私率を覺えておりませんが、一般の企共事業におきまして、農林省その他各省で行われておりまする普通の公共事業におきまして、技能者の賃金はいくら、一般勞働者についての給與はいくらということになつておりますので、それと大體歩調を合わせまして、こういう方々が勤勞意欲を失うことのない程度にいける給與というものを、安定本部と打合わせてきめておる次第でございます。しかしこの點につきましては私ただいま資料を持ち合わせておりませんので安本と打合わせて、はつきりした資料をつくりましてこの次の委員會のときにお話申し上げるようにいたしたいと考えております。  要するに今申しましたように、こういう方々にあくまでそこに落ちついてもらいたいという氣持じやなしに、あくまで安定所といたしましては、適職の發見に努力して、そちらの方に就職を斡旋申し上げ、そうして健全な職に落ちついていけるように努力をしていくまでの繋ぎに、しばらく御辛抱を願う、こういうように考えておる次第でございます。
  87. 菊川忠雄

    ○菊川委員 最後に私意見を加えてお願いを申し上げて終りたいと思います。今のお話を伺いましても、まだ了解しない點が二つあります。一つはこの臨時事務員の給與の豫算を組むにあたつて、人員と單價の關係で、この點が今後一般失業救濟の公共事業としてお組みになるのでなくて、この知識階級失業者の應急事業としてつくりまして、款項目の中にも現わすことにされるかどうかということ、この點が明瞭でないのであります。しかもそういたしますれば、一體そういう場合の知識階級に對するところの失業救濟臨時事務員の給與は、何を基礎として計算されておるか、今安本と打合わせをされておるということでありますが、これについて合理的の基礎がなければならぬはずであります。それがどうも今の御説明にはないような氣がするのであります。生活保護法の場合でありますれば、これはあります。あるいはまた失業保險法の場合、失業手當法の場合においてもあります。ただこの知識階級失業救濟の單價を出す場合において、合理的な基礎がないということは、はなはだ不合理だと思います。これはおそらくあるでありましようが、それを豫算の編成の際に明瞭にいたしまして、これは同僚の者によつて豫算委員會に持込みたいと思いますから、あらかじめこの點は勞働省といたしましても、明瞭にしてもらいたいということをお願いしておきます。  それから依然としてわからないのは、同じプールにあつて、同じ仕事をやりながら、どうして一體同じ給料を拂つていけないのか、これが私にはわからない。現場ど働いておる人のところに行つてお調べになればわかるが、これはとうてい見るにたえない氣の毒な、不合理な状態であります。どこの區役所に行きましても、二、三十人おられるが、たいてい色が青くて、はなはだ失禮だが榮養失調です。しかも八時間離れ得ない仕事をしておる人があります。あるいはまた足を棒にして外に調査を參られ、しかも出張手當も、交通費もほとんど出ない。こういうことをしながら、二千九百圓の給與にぶらさがつてつておる。一體同じ仕事をしながら、なぜ同じ給料を拂つていけないのか、理由がわからない。これは國家が失業者を救濟する制度をどうしてもかえなければならぬ。私はこの點がどうしてもわからない。だから豫算をおきめになるなら、はつきりそういう例を示していただきたい。同一勞働、同一賃金のもとに働くなら結構でありますが、若い連中と同じ仕事をしながら安い給料で働いておる。これをどうしてもかえなければならない。勤勞意欲ということを申しますけれども、その點では勤勞意欲は起らない。失業しては困るからいやいやながら働いておる。まことに氣の毒な立場にある。そこで私はこの點についても十分御檢討を願いたいと思う。  それからいま一つこの機會にお願いしたいのは、なるほどその實施要領の中には、仕事を普通にやると同時に、併せて配給その他の面においては、なるべく一般人並みに準じてやるようにということを御指示なさつておるようであります。はたしてこういうことが行われておるかどうかを、今後安定局長竝びに安定所長が實際にお調べになるのは大きな仕事であります。私が聞きました場合においてはやり放して、そういう實情についてだれも調べに行つてないようであります。その結果は事實がわかつておりません。ところがここに不合理なことは、たとえば一つの區役所において窓口で戸籍謄本の仕事をやつておる。當然五圓の手數料をとつておるのであります。紙代は一圓五十錢くらいのものであります。ところがこの豫算においてはそれは筆墨費として支出は切つておりますから、五圓は區においてまるまる雜收入になる。しかもそこで使つておる臨時事務員に對しては、都の三分の一と區の三分の二、それだけの給與であります。區はそれだけの利益を受けながら何らの反對給付をしていない。これこそ最も惡質なる搾取ではないかと私は思う。それらについて一體どういうふうな考えをもつておられるか、この分からも厖大なる區の雜收入はあるわけでありますから、當然そこから補給する途はあるのであります。現にそういう補給をしておるところが、たとえば八王子市のごときは、一應都竝びに國庫から出るところの金を八王子市の中に入れて、さらにそれに加えて一般の吏員と同じような給與を拂つております。そういうこともやり得るのです。ところが一方東京都内あるいは本廳、都廳などにおいてそういうことをやつていない。そういうことについてなぜ事實を調べに行つてないのか。收入をあげておる點をひとつ一遍お調べ願いたいと思います。殊にひどいのは、私はその區の名前をここである意味で申し上げてもいいのでありますが、たとえば杉並區におきましては、先般そこの臨時事務員諸君から、よその區においては年末に多少の手當を出しておりますから、自分の方でも多少殖やしてもらいたいという陳情があつた。そしてわれわれ臨時事務員に對しては前借も許されない。一般の吏員に對しては月の初めに拂うのに、後拂い、翌月の十日拂いである。そういうことでは困るから、どうかひとつ便宜を拂つてもらいたい。こういうことであります。というのは、都の關係であります。勞働局長からは各配置先において、臨時事務員に對しては豫算の範圍において手當給與措置については考慮願いたい。こういうことが出ておるのであります。これに準じてやつたわけでありますが、この嘆願に對しては、きわめて冷淡な返事であります。區役所は主務局の委嘱により君らに職場を貸しただけのことにて、區役所には君らに給與する豫算もなく、給料も手當もすべて勞働局の方に請求すべきだ。これであります。君らに職場を貸しておるだけである、だから君らの一切のことについては、給料の立替えも前貸しもできない、こういうことが現に東京においてもある。こういうことをなさる際において、相當大きな雜收入を得、區はそのことのために便宜を得ておる。それでありながらそれほどの温情をもつてない。これは一方の八王子市においては現にやつておる。こういうことについて十分なる御調査と、併せて今後の監督を願いたい。全國を通じて約一萬の臨時事務員がおるわけでありますが、全國主要都市竝びに官廳についてみますれば、おのおの官廳の中にこういうことをなさつておる人が一萬人あるわけであります。どうか知識階級失業救濟というものは、政府の意圖するところと反對に、その知識階級失業救濟を、國家や團體が逆に搾取して苦しめる、こういうような弊害に陷らしめないように、この點は十分にひとつ御調査の上にお考え願いたい、これを希望する次第であります。
  88. 齋藤邦吉

    齋藤説明員 ただいま御質問に相なりました點につきまして、まことに同感であります。なおこの知識階級應急事業につきましては、本年度におきましても延人員ということでなしに、實人員ということで豫算を計上したいと思つております。なお給與のベースでありますが、これは各種の公共事業における勞力費というものは、種々雜多に金額が違つております。農林省關係の公共事業その他の各方面の公共事業につきまして、給與の勞力費のベースが違つておりまして、それとほぼ調整をとつておるのでありますが、お話のような點につきましては十分愼重に努力をしてまいりたいと思つております。それからなお現在東京都につきまして種々ありがたい御注意をいただいたのであります。私どもといたしましてもできるだけ知識階級應急事業に從事されております方々の作業場、あるいはその實情等を十分調査監督いたしまして、御趣旨に副うように、將來大いに努力をしていきたい、こういうように考えておる次第でございます。
  89. 安平鹿一

    安平委員長 この際お諮りしますが、まだ質問者は山花秀雄君、島上善五郎君、木村榮君の質問が殘つておるのでありますが、次會を二十八日金曜日一時から再開することにしておきたいと思いますが、この三人の質問者の方はさよう御承知おき願いたいと思います。
  90. 山花秀雄

    ○山花委員 今のことに關して、勞働委員會は最近委員長に交代などがございまして、非常にこの會議は、少しはつきり申し上げますと、不活溌になつております。この際いろいろ重要な問題がございますので、會議は頻繁に、また定期的にひとつ開いていただきたいということ、一時からということになりますと、審議の時間が非常に少くなりますので、できればみんなが馬力をかけて十時から開くというふうにして質問の時間を少しでも效果的、能率的にやつていただくように、ひとつお諮りを願いたい。こういう希望を申し上げておきます。
  91. 安平鹿一

    安平委員長 御趣旨に副うように努力します。  この際お諮りいたしますが、米窪滿亮君より國際勞働會議加入に關する懇談會が提唱されまておるのでありますが、もう一件理事の補缺選擧をしていただきまして、そのあとで懇談に移りたいと思いますが、さよう御承知おきを願たいと思います。お諮りいたしますが、小川半次君が委員を辭任いたしておりますので、理事が一名缺員になつております。この際理事の補缺選擧を行わなければなりませんが、委員長において補缺理事指名をいたすことに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  92. 安平鹿一

    安平委員長 御異議なければ山下春江君を理事指名いたします。それでは懇談に移りたいと思います。  本日はこれにて散會いたします。    午後四時二分散會