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1948-04-06 第2回国会 衆議院 労働委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年四月六日(火曜日)     午後四時四分開議  出席委員    委員長代理 理事 山下 榮二君    理事 川崎 秀二君 理事 小川 半次君    理事 相馬 助治君       荒畑 勝三君    菊川 忠雄君       島上善五郎君    前田 種男君       山崎 道子君    山花 秀雄君       天野  久君    小林 運美君       寺本  齋君    山下 春江君       菊池 義郎君    古島 義英君       吉川 久衛君    河野 金昇君  出席國務大臣         内閣総理大臣  芦田  均君         労 働 大 臣 加藤 勘十君  出席政府委員         労働基準監督官 江口見登留君  委員外出席者         專門調査員   大橋 靜市君         專門調査員   濱口金一郎君 四月二日委員田中稔男君辞任につき、その補欠と として安平鹿一君が議長の指名で委員に選任され た。 三月三十日加藤勘十君が委員長を辞任した。     ――――――――――――― 二月二十三日  京都府下御牧、佐山両村における全官公労に勤  務地手当支給請願大石ヨシエ紹介)(第  一六号)  槙島村における全官公労勤務地方支給の請  願(大石ヨシエ紹介)(第三五号)  新湊町に公共職業安定所及び労政事務所設置の  請願内藤友明紹介)(第四〇号) 三月十六日  下松市に労働基準監督署設置請願今澄勇君  紹介)(第一一四号)  北海道、東北、北信地方における全官労に寒冷  地手当増額支給請願岡田春夫君外二名紹介  )(第一一九号)  河内村を龍野公共職業安定所管轄区域に変更の  請願山名義芳紹介)(第一六七号) 三月二十五日  國家公務員給與法案に関する請願外一件(平工  喜市君紹介)(第一九七号)  國家公務員給與法案に関する請願(大島多藏君  紹介)(第二〇五号) の審査を本委員会に付託された。 三月十三日  越冬資金に関する陳情書  (第二四号)  財務官吏待遇改善に関する陳情書  (第三二号)  同外四百九件  (第四六  号)  國家公務員給與等臨時措置法案に関する陳情書  外九件  (第八三号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  労働組合法改正に関する件     ―――――――――――――
  2. 山下榮二

    山下(榮)委員長代理 ただいまから労働委員会を開会いたします。  後ほど総理見えるそうでありますけれども、まだほかの委員会で手をとられておりますから、それまで、労働大臣あるいは基準局長がお見えになつておりますから、川崎秀二君の質問を許します。
  3. 川崎秀二

    川崎委員 今回の全官公労働組合爭議は、わが國が生産復興に邁進をしなければならない最も重要な時期に際会しておつたときにおきまする爭議だけに、その影響するところはきわめて甚大なものがあると私は考えるのであります。この問題につきましては、すでに本会議場でも加藤労相にその政治的信念または解決の方途についてお伺いをいたしたことがありまするが、その後事態は進展をいたしまして、政府組合側との間に政治的妥結を見るに至るのではないかという瞬間もあつた考えております。しかるところ、ここ両三日來、最後の妥結の瞬間に至つて、なお組合側と折合いがつかず、爭議が長引いておるということは、はなはだ遺憾に思うのでありまして、両、三日來の経過につきまして労働大臣の御報告を伺い、かつは組合側から提示をしておりまするところの三條件に対して、労相はどういうお考えをもつておられるか。一應お伺いをいたしたいと思います。
  4. 加藤勘十

    加藤國務大臣 ただいまの川崎委員お尋ねに対しまして、お答えを申し上げます。大体の経過新聞等を通じて、すでに御承知のことと存じますが、お尋ねでありますから順序として一應申し上げますれば、金曜日の二日の日に、いろいろな行きがかりがありましたが、そういうすべてのことを一点に集中しまして、某方面から組合側政府側と両方に対して、一つ意思表示がなされたのであります。それはもちろん命令とか、その他それに近いものではありません。あくまでもサゼツシヨン程度のものでありましたが、その要点は二千九百二十円ベースに関する爭議はこれをもつて打切るということ、中央、地方を通じて現に爭議中にもの、もしくは計画中のものは爭議行為を打切るということ、こういう二つの前提の上に立つて、もし組合側承諾をするならば、千八百円と二千五百円との差額を、一月から三月分までを即時に支拂うということ、それから四月分は二千五百円のベースで、四月二十日支拂のものを四月十日に繰上げて支給するということ、それから組合側受諾と同時に委員会が設けられまして、これには組合代表者が参加して、そこで四百二十円の配分の問題につきまして、法律に示されているような職階制の問題であるとか、地域の問題であるとかいうものの一切を含めて、いかに配分するかということを決定する。その決定は五月一日を目標として、それまでの間に委員会決定を経て國会に提出して、國会の承認を得て法律を作成する。そうして五月一日までに四百二十円の支拂方法がきまつたものについては、一月から四月分までを一括して支拂う。それから五月分は正規の五月二十一日給與支拂日支拂うようにする。すなわち言葉をかえて申しますれば、今まで繰上げ繰上げ支給されておつたものが、五月分から正規支拂日支拂えるように、順序立ててそこへもつていく。こういう意味で今申しますようなことがサゼツシヨンされたわけであります。これに対しまして政府側としましては、このままサゼツシヨン承諾することにして、その意思を表示したのであります。しかし組合側におきましては、このサゼツシヨンに対して、まだ正式には回答がなされておりません。從つてこの両者に対する指示は、政府側だけが受諾したという形になつておるわけであります。その後組合側からは政府に対しまして、今申し上げました問題についての受諾と否との意思表示をする前に、すなわちその決定をする前に、政府に向つて今度の爭議に関連して組合の彈圧等、犠牲者などを一切出さないこと、爭議中給與支拂うこと、組合関係法規改廃をしないこと、この三つ條項につきまして申入れがあつたわけであります。そしてこの三つの問題に対する政府の意向が明確に示されなければ、組合としても片一方の問題に対しての諾否の意見決定することができぬという話でありました。從つて政府としましては、いろいろの事情考慮いたしまして、結局今度の問題は、純経済的な要求から生れた経済的な爭議であるから、一應そういう政治的な要求を含んだ事柄とは切り離して、経済的の問題は経済的の問題として、一應組合側承諾を得て妥結したい。その後において、これらの問題について話合うことができるから、そうしてもらう方が妥当ではないか。こういうように答えたわけでありまするが、これに対して組合側としては満足されないで、そのままわかれてしまつたようなわけであります。その後組合側の提示されました三箇條の問題につきましてのいろいろな折衝——組合側との関係は、一應そこで政府側と直接の話合い糸口は、切れた形になつておりますが、もちろん政府といたしましては、いつでも話に應ずるし、機会があれば話をしたいという希望は、依然として変らないものがありまするけれども、一應形の上においては、両者話合い糸口が切れた形になつておるわけであります。しかしそのままでいつまでも放任さるべき性質のものでありませんので、さらにこの点につきましては、関係方面におきまして、いろいろな話合いがなされた結果、ともかく今度の問題は経済的問題であるから、経済的要項だけを先に決定する。これについてはどうしてもそういうぐあいにしてもらわなければならぬ。その代りもし組合側に、殊に爭議権をもたない非現業官廳職員諸君が、組合として公式に罷業権をもたないものとして、將來爭議行為に訴えるようなことなく、団体交渉の方法によつて平和的に話を進めていく。もしどうしても話が調わない時分には、調停機関にかけて話をまとめるという意思と、今後爭議中給與支拂われないということについて、組合側としてはそれを承知するという意味のことが明確に示され得るならば、今度の問題について組合を彈圧するとか、あるいは犠牲者を出すとかいうことについては十分考慮し得られる。こういう余地があるということが明らかにされたのであります。從つて爭議中給與支拂の問題につきましては、原則的には世界どの國でも働かない者には支拂われないという建前から、爭議中の費用が支拂われるはずはないわけでありますが、しかしまたいろいろな事情から、そういうようなことは爭議が済んでから、もう話があればあらためて何とか話をすることができるということでありまして、爭議が済んだらばすぐに支拂うことができるとか、あるいはどうするとかいう確定的な意見ではもとよりありません。きわめて抽象的な言葉ではありますが、ともかく話をする途はあるということであります。同時に全財の現に懲罰が発令されておる人に対して、いろいろ考え方がありましようけれども、ともかくこういう事態をひき起したことは非常に遺憾なことでありますが、一應そういう事実にぶつかつておりますから、これもまた爭議が済んだ後にもし話をする余地があれば、それぞれ関係方面に話をすることができる。こういうような状態で二日晩から今日に推移しておるわけであります。今日の事態において、どこまでどうという明確なことを申し上げることは、まだできない状態であることをはなはだ遺憾に存じますが、組合方面においてもそれぞれ組合組合としての立場があり、組合としての事情もありますから、一概に政府の希望するような事態に進むものとは思われませんが、しかし何とかして誠心誠意を披瀝して話し合えば、あるいは組合則においても政府立場を了承されるのではないか。こういうふうに考えられる状態にあるということをお答え申し上げたいと存じます。
  5. 川崎秀二

    川崎委員 私の質問労働大臣に対する質問でありますので、総理が來られましたので、他の方にこの際代つていただきます。
  6. 山下榮二

    山下(榮)委員長代理 総理大臣見えましたから、島上君に質問を許します。
  7. 島上善五郎

    島上委員 私は去る四月一日の外務委員会における総理大臣答弁に関連して、二、三質問いたしたいと存じます。最初に伺いたいのは、労働法規改廃もしくは改惡の問題であります。総理外務委員会においてこのように答弁いたしております。タフト・ハートレー法のごときものを急拠制定する必要があるかどうかということは、目下政府においても考慮しておると考えております。都下のある大新聞のごときは、爭議調停法を檢討中と大きな四段見出しのトツプ記事で扱つておる。さらにまたその後土曜日の晩から日曜日にかけまして、ラジオ放送において安本と石炭廳事務当局において研究中であるといつて、かなり詳細にわたつて労働法規改正、われわれの考えをもつてすれば改惡であるが、労働組合の自由な活動を拘束するがごとき改正意図しておることを傳えております。これは各方面に多大のセンセーシヨンを起し、特に労働階級には深刻なる不安と動搖を與えておるのであります。わが國の労働組合は、御承知のように戰後二年余り短期間のうちに、六百万以上という組合員を擁する急速な発達を遂げましたので、この短期間のうちに急速に発達をしたということや、あるいはこの間インフレーシヨンの急速なる高進、労働者生活不安の極度の深刻化に伴う爭議頻発等という、いわば敗戰後の特殊な客観的情勢事情のもとにおける若い労働組合として、そこには冷靜に判断すれば、多少の遺憾の点があつたということは、私もこれを認めるにやぶさかなものではございませんが、しかしこのようなことにつきましては、最近労働組合がみずから反省し、健全な建設的な方向に進みつつあるのであります。おそらくは首相もこのような事実をお認めになるであろうと思います。かりにいまだなお一部にわが國の現状を弁えることなく、いたずらに破壞と混乱をこととし、政治的意図をもつて行動するものがあるとしましても、それはほんの一部にすぎず、私は今後労働組合が成長する過程において、組合員の自覚と反省、組合民主的運営によつて、急速に自主的に清算、解決さるべきものと信じておりますし、その可能性も十分に期待できると思つておるのであります。從つてこのようなときに、労働運動全体が健全な方向をめざして進みつつあるときに、労働関係法規改惡したり、組合活動の自由を不当に拘束する法律を制定するようなことがありましては、かえつて無用の刺激と対立を呼び起し、労働運動健全化を妨害する以外の何ものでもないと考えるのであります。先般來労働組合の中には、政府労働関係法規改惡を企てているのではないかとの宣傳が行われまして、不安と動搖が起りました際、加藤労働大臣は、政府においてはそのようなことを断じて考えていない。かりに將來そのようなことが起りましても、自分は職を賭しても反対すると声明されまして、労働者の不安が一應解消された形となつたのでございますが、この矢先に総理大臣外務委員会において、今申しましたような答弁をされ、さらにラジオ放送するというようなことがありましたために、政府に対する疑惑と不信が俄然高くなつてきたのであります。政府において考慮ということでありますが、政府において考慮ということになりますれば、当然閣議にもち出されるか、あるいはその他正式の機会にそういう話が出まして、考慮しようとか、あるいは檢討しようとか、研究しようというふうになつたものと解釈されるのでありますが、これはきわめて重大なことを考えるのであります。政府においてはたしてそのような事実があるかどうか。また今後急速にそういうような労働組合活動を拘束するような法律を制定する御意思があるかどうかを、この際率直に答えていただきたいと存じます。  なおこの問題に関しましては、主管労働大臣が今申しましたように、そのようなことがないとしばしば言明しており、それとラジオ放送総理大臣答弁とは、はなはだ食い違いがあると一般に感ぜられますので、そういう問題に対して政府の間において、意見の不統一があるように思われるのでありますが、そのようなことがあるかどうかもお伺いいたしたいと存じます。
  8. 芦田均

    芦田國務大臣 お答えいたします。去る四月一日に外務委員会において、本問題について私が答弁をいたしましたのは、もつぱら三党政策協定の線に沿うて答弁をいたしたのであります。言葉をかえて言うと、労働法制改惡は断じて行わないという線に沿うて答弁をしたのでありまして、ただいまお読み上げになつ速記録はきわめて一部分でありまして、私が写してきた速記録には、もう少し長く答えておるのであります「アメリカにおいて最近立法せられたるタフト・ハートレー法のごときものを、日本にはたして急遽制定する必要があるかどうかということは、目下政府においても考慮しております。現在のところすぐにこれを立法化するかどうかということを決定いたしておりません。後日政府決定をみた場合には、それぞれ國会において審議を願う必要が起るかと思います。」すべてこれは未定であるということもはつきりしておるのでありまして、政府においては労働法制改惡をしないという、三党政策協定の線は堅持いたしますけれども、現在のところではまだ政府において具体的の施策は何ももつておりません。それが偽わらざる実情でありまして、私の答弁加藤労働大臣答弁との間には矛盾はない。かように今日まで考えておる次第であります。
  9. 島上善五郎

    島上委員 その政府において考慮しているという点をもう少し伺いたいのですが、政府においても考慮しているということは、そういう問題が正式に閣議その他の会議の際に問題となつて、それではみんなで考慮をしようとか、研究しようとかいうことになつて、そういう形で考慮をしておるという意味ですか、どうですか、それをお伺いいたします。
  10. 芦田均

    芦田國務大臣 私の答弁の用語が、あるいはそういう誤解を招きやすい言葉であつたかと思いますが、世界的に罷業が行われておる今日、殊にわが國のごとく最近の官公労組合罷業に、國民が関心を集めておるときでありますから、およそ政治に頭を使つておる者の大多数は、罷業に対するいろいろな立法の問題タフト・ハートレー法のごときものの業容を研究し、これをはたして実行すべきかどうかということを念慮においておるということは、これはだれしもあることであつて、そのときに政府においてもという言葉が、あるいは少し断定的であつたかもしれませんが、政府の閣僚いずれもこの罷業に対する対策の際に、タフト・ハートレー法のごときものを思い起しておる程度のことは間違いない。私も実はこの問題については相当古くから頭にあつて、こういうものをはたして制定することがいいか惡いかといつたようなことを、多少とも研究いたしておつたのであります。そこでお尋ねによつて何らの準備なく答えた答弁でありますから、かような法制日本にはたして急遽制定する必要があるかどうかということは、目下政府において考慮しておりますということを言つたにすぎないのでありまして、これを採用することを考慮しておるとか何とかいう意味でないはことは、速記録によつて承知の通りであります。
  11. 島上善五郎

    島上委員 それから四月三日土曜日、日曜日にかけてのラジオ放送でありますが、経済安定本部石炭廳事務当局ではということで放送し、その内容につきましてはかなり詳細にわたつて、たとえば企画、人事に関する職員組合加入を禁止する。クローズド・シヨツプ制を禁止する、爭議行為、役員選任等は無記名投票によつて決定する、団体協約中に平和條項を必ず入れることを義務づける、あるいは生産管理爭議手段として認めないというような内容放送したのでございますが、これははたして経済安定本部石炭廳において、そのようなことを準備されておるかどうか。きようその方の関係の方がお見えになつておりませんが、そういう点をもし御存じでしたらば伺いたいのと、それからそういうような労働関係法規が、主管大臣である労働大臣とは別個に、他の方面において勝手に研究を進められたり、もしくはこれを発表したりするということは、はなはだよろしくないと私は考えるのですが、そういう点につきましても、これは総理大臣でも労働大臣でも結構ですが、御答弁願いたいと思います。
  12. 加藤勘十

    加藤國務大臣 ただいまの島上君の御質問にお答えいたしますが、なるほどそういうラジオ放送が、三回繰返して同じことが放送されたことを私自身も聽きました。はなはだ腑に落ちないことであると思いまして、いろいろ尋ねてみましたが、この点については後に労働省の方から、そういう事実はないということを正式に放送局に申しこみまして、後の放送においては、そのことをはつきり放送しております。また内閣における労働関係法規が、主管大臣意思を無視したり、あるいは主管大臣の議にかけることなく行われたとするならば、それは私は著しき官紀弛廃の現われであると言わざるを得ないのであります。しかし今度の問題は、聞くところによれば、個人的に一、二の人が関係方面の人と話合いをされたことが、あのようになつて現われたものと聞いております。從つてこれは事務当局政府意図を無視して、勝手に協議を進めてやつたという性質のものではなくして、むしろその点はそうでないように、逆に事実は進んでおるわけでありまして、從つて個人的なものが放送局の記者によつて何かからつかまえられて、それがニユース放送となつて現われたものである、このように私としては考えられるのであります。
  13. 島上善五郎

    島上委員 総理大臣にもう一点お伺いいたします。これも同じく去る四月一日の外務委員会における答弁に関連するのでございますが、「最近に現われた罷業は、政治的な意図をもつて行われておる部分相当に濃厚であると認められますが、政治的意図をもつて行われる罷業は、労働組合法に認められておる正当な罷業ではないのであります。」ということであります。この点も非常に誤解が生じやすいので、念を押してお伺いする次第でございますが、最近の罷業とはどの罷業と、はつきりここでは現われておりませんが、前後の言葉から推察いたしまするに、全逓を中心とする全官公爭議を指しておると思われるのであります。私は全官公労働組合諸君が、濃厚な政治的意図をもつて今回の爭議を起しているとは考えられないのであります。かの千八百円ベース以來、否、むしろそれ以前から、官公吏諸君がいかに苦しい生活をしているか、その賃金水準が民間に比べていかに劣つており、かつ遅れているかということは、否定することのできない明白な事実であります。いわゆるたけのこ生活も、たまねぎ生活もまつたく底をついてしまい、そうかといつて仕事の性質上、これを放棄してやみかせぎをするというわけにもいかない。まつたくせつぱ詰まつて起ち上つたのが今回の全官公爭議だと私は考える。全官公組合員諸君が、どんな状態で何を求めているかということについては、私ここでただ一つの事実だけを申し上げたいと思う。まだ御承知地域ストにはいる前のことですが、全逓のある支部長ほか数名が私の家を訪れて、職場ではもう二、三日前からぽつぽつ朝飯を食わずに出勤しておる者が出てきておる、このままでいけばわれわれがどんなに食い止めようと思つても自然にストライキにならざるを得ない情勢である、自分たちは何とかしてストライキを回避したい、どつかで金策してでも、せめて世帶持一人に千円なり五百円なりを貸してやりたい、とこう御相談に來られた。そうしてその日の夕刻にはどつかで金策をして、急場をしのいでおる事実がある。その後私は、全逓ではなく、他の方面にも同じような苦労をしておる事実があることを聞いております。朝から飯も食わずに、あの激しい郵便配達労働をする。私はこれほど眞劍な、深刻な事実はまたとあろうかと思うのであります。職場の大衆は決してストライキを好んでおるのではない。ましてや濃厚な政治的意図をもつて動いておるものではないのです。一日も早く爭議解決して、早く金をもらいたいということで一ぱいだ。今回の爭議解決が延び延びになつたことや、全部の官公廳で規模が大きいということ、交渉相手政府であるというようなことからしまして、爭議が次第に政治的色彩帶びてきましたことは事実であります。また爭議中に見られたある種々の傾向や、さかのぼつていえば、なぜ給與審確会へはいつて堂々と自分たち意見を主張しなかつたかというような点についての批判すべきものもあると思いますが、しかし爭議を早期に平和的に解決できなかつたことについては、政府みずからも大いに責任を感ずべきものであつて、よしんばこの間に一部の政党の手が動いていたとしても、それだからといつて、全官公百数十万の労働者が濃厚な政治的意図をもつてこの爭議を起したものだと断するならば、それは総理大臣がおひざもと官公吏諸君生活の実態と、それに原因する爭議の真相を正しく見ないものと言わなければならぬと思うのであります。そしてまた政治的意図が濃厚だと言うことは、そういうことによつて労働者爭議解決責任轉嫁をして、政府責任を回避しようとする考えではないか、または法律で正当に保障された労働者爭議権までも、そういう言葉によつて抹殺、否定しようとする意図ではないかということが疑われるのであります。総理大臣においてはもちろんそのようなことは考えていらつしやらないと思いますけれども、この短い言葉にはこのような誤解を多分に生んでおりますので、この点に関して明確率直な御意見を承りたいと存ずるのであります。
  14. 芦田均

    芦田國務大臣 お答えいたします。ただいま御指摘のごとく、官公労組合の人々が今日のインフレーシヨンのあおりを受けて、生活相当苦しい立場におるということは、私もよく了解のできることであります。從つて組合員の多数がストライキを起したときに、これが政治ストライキであるとは私は思いません。ただその指導者の中に、一部政治的意図をもつてこの罷業を煽動しておるがごとき形のものが見えるということを私は感じておつたのであります。その私の考えを表現することにおいて拙劣であつたために、あるいは今御指摘のごとき誤解を與えたかもわかりません。それは私の言葉が足りなかつた結果でありまして、ただいまのお話の点と私は全然見解を同じゆうしておるのでありまして、あなたの御意見には全面的に私は同意を表はすものであります。むろんかような政治的意図をもつておるストライキであるという口実のもとに、労働組合活動を不当に拘束したり、断圧をしたりするごとき考えの毛頭ないことは、この内閣成立当時からの政策協定、並びにこの内閣が立つておる三派連立の基盤からお考えになつても、おそろく御了解くださると存じます。
  15. 前田種男

    ○前田(種)委員 島上君の質問に関連して、この機会総理大臣に重ねて私からお尋ねしておきたい点があるわけです。それは今問題になつておりますところの労働立法改惡反対というスローガンのもとに、全國的に相当宣傳されておるわけでございます。私は長い間の労働運動の経驗から推しまして、しかも敗戰後の今日の日本の実情下において、今施行されておりますところの労働組合法、労調法、基準法、このいわゆる三立法は、日本の現状におきましては、よすぎるくらい理想的な立法だと私は見ておるわけです。この立法が労働組合運動の経驗——実際敗戰後組合運動がまだ若いために、理想的なこの三立法を運用することに、十分の素質ができていないという憾みは労働組合自身にもあるわけです。そういう観点から考えまして、また部分的には事務当局、資本家、労働組合、中労委、各方面からこの立法に対していろいろな意見があるわけです。これは事務当局立場からいけば、いろいろこうもしてもらいたい、ああもしてもらいたいという点の、相関連をもちますそれぞれの立場から、意見が出ることも当然だと思いますが、私は今この立法をいらうことによつて日本労働組合運動が健全に指導されるとは考えていないわけでございます。私はもう二、三年、あるいは数年このままでおくことにおいて、むしろ日本労働組合運動は敗戰後経驗を積むに從いまして、健全な歩みをするものであるという確信をもつております。今日の現状に副わないからといつて、法規を改惡することによつて健全化されることは断じて考えていないわけでございます。それでありますがゆえに、あくまで理想的なこの立法には手を染めずして、むしろこの立法の内容を、労働組合なり労働大衆に徹底的によく教育し、指導し、この内容を知らしめることによつて、この法規の運用が円滑にいくと私は考えます。その意味において、政府は卒先してこの内容をもつと徹底的に労働組合関係、あるいは労働大衆全般に知らしめる方途をこの際相当積極的にやるべきだと考えるものでございます。いろいろな事情から推しまして、改惡したらどうかというような、事務当局の中に一、二の意見があるようでありますが、そうしたことはむしろ姑息な手段であつて、そうしたことは政府としては政治的に断じてとらないということを、さらにはつきりと総理は言明して、しかもこの内容を徹底的に労働組合に浸透せしめて、そうしてこのりつぱな法規を完全に運用するように指導、育成するという方面政府も全力を注ぐ、そうすることによつて初めて日本労働組合運動は健全になる、あるいは一部の意図をもつて運動するものの誘惑、勧誘等を完全に拂いのけて、自主的な組合運動の発達が望まれると私は考えますので、そういう意味に対するところの積極的な総理意思があるかないかということを、この機会に明確にしてもらいたいと考えます。
  16. 芦田均

    芦田國務大臣 ただいま前田君より労働組合の健全なる発育に関しての御意見伺いまして、私も至極同感でありますが、現行の労働組合法は、御承知のごとく私が当時厚生大臣として、主管事務の一として労働法制委員会なるものを省内に設けて、そうしてこれを議会に提案して終始この法案の通過に努力した関係から見ましても、現行労働組合法なるものに一種の愛着をもつておることは御了解くださることと思うのです。何といつても日数の経たない今日の日本労働組合でありますから、これを正規のレールに乘せて健全な発育を遂げさせるには、國をあげてこの方向に努力しなければならないことは申すまでもないのであります。すでに三党政策協定においても、労働法制改惡は断じてこれを行わぬということを定めており、また私の施政演説においても、わが國の労働運動の健全なる発育は政府の念願するところであるという意味をはつきり議会を通じて國民に示しておるのであります。ただいまのお話の次第は、われわれが満幅の賛成を表するところであります。
  17. 島上善五郎

    島上委員 総理大臣に対する質問は終りました。労働基準局長伺いたいと思います。労働基準法が制定されまして、労働者の待遇は、一應法律の上では世界的な水準といつてよろしいほど改善されたのであります。私たちはこの法律労働者階級が歓迎しておるという事実を知つておるのでございますが、いかにりつぱな法律といえども、それが十分に普及され、実施されなければ、画に描いたもちと同樣でありまして、私は労働基準法が今日いかに普及され実施されておるかということについては、多大なる疑いをもつておるのであります。以下二、三の点をあげまして、これに対して基準局長の御答弁伺いたいと存じます。  第一に、労働基準法の普及が今日はなはだしく不徹底であるということであります。これにつきましては、たとえばこういう事実がございます。東京の基準局の中だけの調べでございますが、ここでは適用事業場が、予測によりますと約九万とされております。この九万も決して架空の数字ではなくて、相当的な科学的な予想であります。しかるに今日まで、三月末までに届け出でられた数はわずかに二万四千、二四・五%という状況であります。いかに普及が不徹底であるかということは、これでもつて想像できると思います。さらに労働基準法の実施を監督する立場にありますところの監督署の人員が、定員において非常に不足であるということ、今日の定員数は東京では百五十九名となつております。この百五十九名の定員数からいえば、そうたくさん不足であるということには当らぬかもしれませんが、私はこの百五十九名の定員自体が非常に少いと考えるのであります。何となればこの百五十九名のうちで——これは局長、課長、書記、あるいは給與、安全、衞生等にわかれておりますが、実際に工場の臨檢、指導等に活動できる数は、概算しまして、おそらくその半分くらいではないかと思われる。この半分の八十名くらいの人によつて予定される九万の工場をかりに、まわるといたしますれば、これは実際にその衝に当つておる人に聽いた話でございますが、一日一人平均して二軒か三軒しかまわれない。午前中の大半は書類の整理や報告の打合せ等のために費すので、午後にしか出張できない、そうすると一日平均二軒か三軒しかまわれない。こういうふうにして考えますと、一まわり工場の臨檢、指導をするためには、約二年を要するのであります。事業場を一巡するためには二年を要するのであります。二年間に一遍しか行けないということになるのであります。ですから私は少くとも定員は今の倍にする必要がある、最小限度としても倍にする必要があると考えるのであります。さらに労働基準監督署の設備が今日非常に不十分であるということ、廳舎がなかつたり、電話がなかつたり、自轉車もほとんどないというような状況で、この設備の不十分のために活動がはなはだしく拘束されているという事実があるのであります。さらにまたこの監督署に働く監督官の人々の待遇が非常に惡いということであります。御承知のように職員は事実上非常に大きな権限を與えられております。ところが大きな権限を與えておりながら、その待遇は官公吏のうちの最下位といつてよろしい状況、これは公正な労働行政を掌る上に非常に危險なことだと思う。私は將來そういう人々は誘惑の手が伸びて、不祥事が発生することがないようにということを、今から心配しておるものであります。こういうような点につきましてももつと改善して、たとえば今日物資の配給等にしましても、他の官廳よりも非常に惡いという状況でありますが、そういうことを改善し、可能な限りにおいて労働條件を改善するということが必要である。今日特に非現業の取扱いを受けておりますが、深夜でも休憩中でも、お客が來ればほとんど休むことなしに仕事をしなければならぬという仕事の性質上からいたしまして、これは現業と改むべきものではないかと考える。こういうような普及の不徹底、設備の不十分、定員が少い給料が安いというようなこと、これは一つの事例ですが、たとえば交通費のごときは、交通費と日当を含めて一人一箇月八十円、地方はその半分の四十円、問題にならぬと思うのです。今日の金でもつて一箇月八十円という交通費と日当のごときは、これは仕事をするなということにひとしいと思う。こういうような良を徹底的に改善することなしには、労働基準法の普及と実施を十分に徹底することは不可能であろうと考えるのでありますが、これらの点に対しまして、基準局長の御答弁伺いたいと思います。
  18. 江口見登留

    ○江口政府委員 島上さんのお尋ねにお答えいたします。基準法の普及徹底ということがまだ十分でないようである、非常に多くの適用事業場があるのに、その届出を出したもののパーセンテージが低いということであります。確かにそういう点はあろうかと存じます。適用事業場の数字というのが、だんだん調査を始め、普及するにつれまして、実は殖えてきておるような関係にあります。東京の事例を引かれましたが、基準法施行当時においては、東京における適用事業場の数は四、五万くらいだろうと言われておりました。ただいまの調査では九万ぐらいに上るであろうと言われております。全國的に普及宣傳すればするほど、事業場の数が殖えてきておるというような関係になつております。もちろんまだ、あるいは一人、二人の労働者を使用しておるような時には不徹底なところが多いのではないかと考えておりますが、これらの宣傳普及の経費につきましては、数次財政当局とも折衝いたしまして、逐次その実をあげるように努力をいたしております。まだ不十分な点はあろうかと思いますが、その他の定員の増加とか、旅費の増加とかいうような方法と相まつて、十分に徹底するように今後も努力いたしたいと考えております。  それから監督署の定員が非常に少いというお話でありますが、その通りでございます。われわれもできるだけ監督官の人数を増加して、各事業場にくまなく臨檢ができるように努力いたしてはおるのでありますが、いろいろとたとえば行政整理とか、あるいはそういうような問題がありまして、なかなか官吏の増員ということがむずかしゆうございまして、われわれもほとほとまいつておるような次第であります。しかしさいわいにいたしまして、この二十三年度には労働災害補償保險関係におきまして、相当多数の監督官を増員することができました。これは関係方面の御意見もありまして、各都道府縣の労働基準局に労災保險課を増設し、それに必要な定員を配置するほか、今まで基準局でやつておりました労災保險の仕事を監督署の一部分にこれをわけて、つまり労働者が一々基準局に行かなくても済むように監督署でも扱うようにするという理由で、相当監督官ないし事務官を増員することにいたしたわけであります。なおそのほかにまだ基準局あるいは監督署は設置早々でありまして、いろいろな方面に手をとられている、その方面の人員も増加いたしまして、監督官の監督の手をふさぐようなことのないようにいたいと、かように考えております。  設備の点におきましても、役所が新しいだけになかなかそういう方面の予算もとれませんので、われわれ事務当局は十分努力しておりまするが、これはやはり相当年数経たなければすべての備品、調度品は完備しないわけであります。これも努力いたしたいと考えております。  監督官の待遇の問題であります。非常に御理解をいただきましてありがたいのでございますが、これは一般官吏との均衡がありまして、監督官だけを特別に單價を上げろというようなことはできません。それ以外の方法でたとえば旅費を相当たくさんとつてあげるとか、そういうような方法で待遇改善をやつていきたいと思います。二十三年度には相当たくさんな旅費を計上いたしたような次第であります。なお御趣旨に副いまして十分内容を充実したいと考えております。
  19. 島上善五郎

    島上委員 もう一点お伺いいたしたいと存じます。労働基準法の違反行為に対する罰則の適用でございますが、私の聞き調べた範囲では、罰則の適用をしていないという現状であります。特に労働省からは、今は普及の時代だから当分罰則を適用しないようにという指令か、通牒かを発したということを聞いておりますが、それが事実であるかどうか。そういうことは私をして言わしむるならば、平氣でもつて違反をやるというようなことに対しては相当嚴重に——といいましても法律の範囲でございますが、法律の範囲で嚴重に罰則を実行すべきである。こう考えますので、その点をお伺いしたい。  それからこれは労働大臣から伺つた方が適当だと思いますが、この労働基準法の監督の仕事を、地方に移管しようとする動きといいますか、そういう考えをもつている人が労働省内の有力な方面にあるということを聞いている。もしこの行政を地方へ移管いたしますならば、私は今なお非常に不十分、不徹底である労働基準法の実施が、地方によつてはいろいろと区々になりまして、非常に遺憾な状態になるのではないかと心配されますので、地方へ移讓することは賛成できないのでありますが、そういう点に関して労働大臣はいかように考えているか、伺いたいと思います。
  20. 江口見登留

    ○江口政府委員 罰則の適用の問題でございますが、基準法を昨日の九月と十一月の二回にわけて施行いたしまして、去年の十二月ないしことしの一、二月ぐらいまでは、まだ普及宣傳の時代であるとかように考えまして、まず違反を檢挙するよりは、法の普及徹底をはかつてくれということを通牒いたしましたことは事実であります。しかし一月の終りでございましたか、特に惡質な、たとえば強制労働とか、あるいは中間搾取とか、そういうようなものが行われそうな事業場については、特に注意して監督の眼を光らせろということを同時に通牒いたしております。その結果全國で違反件数がどのくらいに上つたかと申しますると、違反がありまして、それを檢挙するという場合には、本省へは相談してもらいたいということになつておりますが、相談に來たものはまだ一件もございません。法律の解釈自身もまだなかなか決定版が実はできていないような次第でありまして、監督官自身が違反であるかどうかを踏み切るのにも、物さしができ上つていないような点もあります。それから司法警察官の職務を行うにあたつては、司法省等とこまかい打合せが必要でありまして、そういう点については司法省と相談の上つくつております。がこれができまして、調書の作成とか聽取書のとり方、そういうものを覚えて初めて完全にできるのではなかろうかと考えております。それも遠い將來ではなかろうと思います。もうしばらくお待ちを願います。
  21. 加藤勘十

    加藤國務大臣 ただいま島上君の御質問になりました労働基準局を地方に移讓するという有力な意見が一部にあり、自分たちとしては反対であるが、どう思うか、こういう御質問でありましたが、現在、前内閣以來、行政機構の改革、行政整理の問題等と関連して、地方出先機関の整理統合ということが問題にされておるのでありまして、その整理統合をされるという中に、労働基準局なり、あるいは職業安定所なりを地方に移讓してはという意見もあることは事実であります。しかしながら、この労働基準法は先ほど來御意見の中にもありましたように、労働者の基本的権利を護る有数な法律一つでありまして、その法律の実際運営に当る基準局が地方に移讓されて、地方個々にこれが運営に当られるということでは、この法律の將來が非常に危ぶまれますので、労働省としてはこの地方移讓には絶対反対であります。どうかこの点について、もし皆さん方の中において反対であるという趣旨に御賛成でありますれば、そのようなことを強く世論に反映していただければ非常に結構だと存じます。
  22. 島上善五郎

    島上委員 私は最後に、この労働基準法が書に画いたもちになるぬように十分に普及し、徹底的に実施されるように、今後労働省において、あるいは政府において積極的に努力されんことを希望いたしまして、私の質問を終ります。
  23. 川崎秀二

    川崎委員 先ほど総理大臣見えられたので、私の質問は腰折れの形になつておるのでありますが、この機会にいろいろと労働大臣にお伺いをいたしてみたいと思う点があります。先ほど総理も明快に言われたように、三党の政策協定というものは、労働組合運動の健全化を阻害するがごとき労働基準法、労働組合法労働関係調整法の改惡は、これを行わないということを明確に規定しておるのであります。私は三党政策協定の立案にあたつて、経済部門ないしは生産部門という問題につきまして、いささかこれら参画をしておつたような関係もありますので、この際健全化を阻害するがごとき労働法規改惡は行わないということは、われわれとしてはどういう考え方で織りこんだかということを、卒直に民主党の考え方を述べ、またそれに対しての労働大臣の將來への御見解を伺つてみたいと思うのであります。  労働運動健全化を阻害するがごとき改惡は行わないといいますのは、今日わが國が当面をしておりまする最大の問題は、いかにして生産を復興するかの問題であり、その際におけるところの労働者の役割というものは、言うまでもなくその支柱にならなければならない。その関係下において、生産の復興と労働者の任務ということに対する調整を最もうまくやつていき、一方において労働組合運動を民主化していく。その過程において健全化を阻害するような改惡、あるいは全國的な労働爭議を法的に禁止するとか、あるいはタフト・ハートレー法の中にあるところの、組合幹部が共産党員でないということを宣暫をさせるというようなことは、今日の日本労働組合運動の段階から見て、またその本質から見て、われわれはこれを改惡であるというように解釈をいたしておるのでありますが、また一面傳えられたところによるところのいわゆる組合專從者の問題、あるいは労調法第四十條に絡んだ種々の改正問題は、われわれは決して全面的にこれを改惡だというふうに考えておらない。労働組合法第二條に絡んで、組合專從者の給料を会社側が拂つておるということを、われわれがあくまでも是正しようとすることは、組合がまつたく使用者側から自由な立場に立つて、使用者と常に対等の資格で交渉し得る権利をもつためにも、必要ではないかということを考えておるのでありますが、これらに対して労働大臣はどういう取釈をこの組合法第二條に関連してもつておられるか。この際その点をぜひお伺いしたいことが第一の点であります。  また先ほど前田君からもいろいろ意見が出て、私もまことに今日の労働運動の段階としては前田君の言説に全面的に賛成する。しかしながら今度の労働法規に対する改惡反対ということの運動の本質を見るときに、われわれは決して國内の世論ないしは國際情勢がこの改正に反対しておるとは思わない。むしろこれは労働情勢がこういうふうになつた。すなわち労働法規改正ということが傳えられるや、常にこの労働運動を現在の段階においてリードしているところの一群の勢力が、労働法規改正はすべてこれを改惡なりというレツテルをはつて巧みにこれをリードした。内容の分析は行わずして、傳えられるところのものはすべて改惡であるということを巧みに宣傳して、これをリードしたところに、致命的の缺陷があつた、事実その改正する、あるいは改惡するその基準の考え方というものは、人々によつて私はまちまちではなかろうかとさえ考えておる。あるいは今後情勢の推移に應じて労働法規改正を行わなければならぬ時期が來るのではないかということを、私は今から見透しをいたしておるのでありますが、労働大臣労働情勢がひとくるめて労働法規改惡一切に反対をしておる、労働法規をいじるということに反対しておるということの情勢を見透せられて、労働法規改正には一切手をつけられないということを言つておられるのか。それともあらゆる政治的、客観的情勢を見て、そうして法理的に見ても今の労働法すべてが理想的な完璧なものだと考えておられるのか。その点ぜひひとつお伺いをいたしたい。
  24. 加藤勘十

    加藤國務大臣 ただいまの川崎君の御質問にお答えいたしたいと思います。第一の点は労働組合法第二條に関連して、いわゆる組合專從者の給料をいずれが負担するかという問題であります。これは労働組合運動の理論的な立場に立てば、ほとんど問題はない事柄でありまして労働組合の運動があくまでも労働者の自主的なものであるという点からいつて組合の仕事をする者のすべての経費が組合によつて負担せられるということは、理論的には爭ひの余地のない点であります。ただ日本労働組合情勢川崎君も十分御承知の通り、戰爭が終つてわずかの期間に、世界のどこの國のいかなる時代の歴史にも見ることができないような数的な異常な発展を遂げたのであります。この短かい期間に非常な数的発展を遂げた組合は、先ほど前田君あるいは島上君が指摘されましたように、若干行き過ぎもあり、まだ十分その質の伴わない点があることは爭われない事実であります。こういう点についてこの組合の現実をながめましたとき、またほとんど至上命令としてわれわれが義務づけられておる日本民主化の基本的な推進力としての労働組合の存在を、現実に見るような存在として見まする場合に、どうしても労働組合自身の質的な向上をはからなければならぬと思うのであります。そういう点から見まして理論的にはなるほど純理的ではないが、組合の現実はこの数的に膨脹した組合を質的に伴わしめるために、すなわちほんとうの意味においての自主的な堅実な健全な労働組合として発展せしむるためには、いましばらく組合の内部において組合員自身を教育する必要が十分にあると思うのであります。そういう組合員に対する組合内部においての教育を充実せしむるために、しばらく專從者の問題を取上げて、経済的には十分基礎をもつていない組合の現状でありますから、從來の職務は職務としてそのままにして、組合への内部教育のために專從する、こういうことで私は過渡的な現象としてこれを認めざるを得ないのではないか、こういう解釈をとつておりますので、この過渡的な期間がどのくらいのものであるか、これはもつぱら組合の質的な充実向上によつて決定せられる問題でありまして、あらかじめ半歳とか一年とか、あるいは三月とか区切るべきものではない、組合が質的に完全に自主的なものとして一人歩きができ、そうして数と質とが相均衡のとれた状態に置かれる、ここまでを大体過渡的時期と見て差支へないのではないかと考えております。  また第二の点であります。これは先ほど芦田総理が、自分が手がけた労働組合法であるから、愛着を感じておると言われましたが、実は労働組合法が制定されます当時、私は労働法制委員会の一人ではなかつたのですけれども、ある特別な関係でこの法律については相当意見を問われております。また私もその意見を問われるままに相当強く主張しまして、その意見が盛り込まれております。しかしでき上つた法律そのものを見ますと、これは労働者側にとつても、なおこれこれの点はこうしてほしいというような、いわゆる改正への意思といいますか、要求といいますか、そういうものはあるのです。これは他の労働関係調整法について見ましても、また同様のことが言われるわけであります。また基準法などについては、日本の経済的現実にそぐわないものがあるという点から、あるいは中小企業者方面においてはこれを何とかかえてほしいという希望のあるということも、よくわかつておるわけなのであります。そういうように、それぞれいろいろな方面から、なお現在の法制がいずれにしても完璧なものであるとは見ておられないのでないか。私もまたそのように見ております。しかしながら今日、今川崎河が指摘されましたように、労働者に與えられた大きな命題は、何と申しましても日本経済再建のため、どこまでほんとうに熱情をもつて盡し得られるか、これを労働者が自覚するかどうかという点にあると思うのであります。そういう点にから見まして、私は労働者がそういう日本経済再建への熱情をもつためには、まず生活への不安がなくならなければならぬ。生活の不安をなくするということは経済的の問題でもございますが、同時にまた心理的にも非常に大きな問題であると思うのであります。経済的に今十分にその生活を保障することができぬ現状であります。從つて私どもは経済上の問題としては生産能率を向上することによつて生産復興への熱意を強め、同時にそのことは労働者生活を安定化せしめ、安心感をもたしめるという、この生活給と能率給が織り込まれた経済的な主張、すなわち賃金体系もそこから生れなければならぬと考えておりますが、同時に心理的にもまた常に、とにかく労働者の基本的な権利を擁護する法律として存在しておるものが、いつどのように改められるかわからない。労働者側から見れば改惡と思われることも、あるいは資本家側から、世間からは改正と見られるという点から、これがいつどのように変更せられるかわからぬということがあつては、私はこれは心理的な不安が起つてくると思うのです。心理的な不安が起つてくることは、経済的な不安と相まつて、やはり経済再建への熱意を失わしめることになるのでありますから、そういう大きな命題の点からいつて、経済的にも心理的にも不安を感ぜしめぬようにする。その経済的な点は能率給を加味した賃金体系が確立せられ、心理的には労働者の権利を擁護しておるところの基本的な法律が変更されないという、この安心感の上に立づということが必要である。こういう点から私は現在の段階においてはこれらの法律には手を触れないのが最も賢明な対策である。こういう考えから私は手を触れるべきでない、こういうふうに見ております。
  25. 小林運美

    ○小林(運)委員 ただいま川崎委員質問に対しまして、労働大臣のお話を聽いておりますと、第一の問題でございますが、ただいまもお話になりましたように、たとえば專從者の問題にしましても、大臣は現在労働者でもないし、資本家でもないと私は思いますが、そういうような立場から、この問題は改惡とお考えになりますかどうか、その辺をはつきりとひとつ、簡單でよろしゆうございますから、あなたの今のお話で、これをしばらくの間どうこうというような事情はよくわかつておりますが、これは一体改惡であるかどうかということをはつきりお答えを願いたい。  それからもう一つは、これは全般的な問題ですが、この際すべての労働法規をどこも絶対に動かさぬというようなお考えのようにも今まで聽いておりましたが、はたしてそうかどうか。それが改正であり、当然これは改正しなければいかんという正しい意味におきまして必要があれば、これはかえなくちやいかぬとわれわれは考えるのですが、それでも何でも頑として絶対に動かさぬ、こういうお考えですが、この二点をお伺いします。
  26. 加藤勘十

    加藤國務大臣 第一の点は労働組合法に関することでなくして、それは運用に関する問題でありまして、団体協約等の内容に盛られるものであつて、私は労働組合法の中に專從者をどうする、こうするというようなことを規定すべきではないと思います。その点において改惡とか改正とかいうことは生れてこないのであります。運営の点においてそういう現実の問題が起つてくるわけでありますから、それは先ほど私が申しますような意味において解釈すべきである。  第二の問題でありますが、私は今日の段階においてはとにかく全労働者が、いずれにしても今申しますような心理的不安を感ずるときに、その心理的不安に、何か小さな針の先でつついたようなことでも、一つの刺激を與えることが大きいのですから、そういう刺激を避けることが必要である完全に労働組合が自主的な性格をもち、質的にも充実して、その上で正当に自主的に判断し得られる段階になつて、なお改めなければならない、正しく改められなければならないという段階の起つたときには、初めてこれは労働者意見を聽いて、公聽会なんかの形式によつて聽いて、それから手をつけても決して遅くはない、その時期がいつ來るかということについては、私はまだそういう時期には來ていないと思う。從つて現在においては、私はどういう意味においても手をつけるべきでない、こういう確信をもつております。
  27. 川崎秀二

    川崎委員 今小林君と労働大臣との間に一問一答があつたわけですが、組合法第二條の問題は法律でなしに運用の問題だと言われたのですけれども、われわれはこの解釈が非常に運用いかんによつてはあいまいなので、その際法的な規定をしてはいかがと、こういうことを一應要望申し上げている。今日はその御返事は要りませんけれども、われわれのとつている解釈の立場というものを明快にしておきたいと思つたので、一言つけ加えたわけであります。先ほど総理大臣は、今度の全官公労組の要求は、主として経済要求に則つて行われたものだけれども、一部にはこれを利用した政治的な動きがある、ということを指摘された。労働大臣は、今回の爭議は純経済要求に基くものである、こういう御見解である。決して両者の間に私は食い違いはないと思うのでありますけれども、総理大臣はこれを一歩進められて、純経済要求に基くものではあるけれども、その過程においてこれを利用した政治的な動きもあるということを指摘されておりますが、これに対して労働大臣はどいうふうなお考えをもつておられるか。
  28. 加藤勘十

    加藤國務大臣 その点は先ほど島上君の御質問のお言葉の中にもありましたように、大勢の組合員の中に、それが指導的な地位であるか、指導的な地位でないかは別問題としまして、政治的な意図をもつてつた人があるということは、これは否定すべからざる事実であると思います。ただ爭議そのものが、そういう政治的意図によつて指導されたかどうかということになりますと、私はそういう政治的意図によつて全体が指導されたとは思いません。一部に実在しておるということは、これは爭えない事実であります。從つて私の申し上げることと芦田総理の申し上げることとは、少しも矛盾はしていないと、私はこのように思います。
  29. 川崎秀二

    川崎委員 最後に私は、加藤労働大臣が現在とつておられる労働組合との交渉の方法その他について、要望的な質問を申し上げたいと思つております。それは労働大臣は、労働省は労働者にサービスをする省であると言われ、労働行政の最高責任者として、この問題に対して最も熱心に御関係なつたことは事実であるけれども、私の目から見ると、全官公労組の爭議の正式な団体交渉の当事者というものは、内閣においては官房長官、あるいは総理大臣より指名されたところの西尾副総理が当られたと思うのでありますが、この間において、労働大臣は非常に労働運動の長い経驗者でもあるし、また何とか事態を円満に解決したいという熱情から、組合の意的というものを十分に認識して、その間政府組合との間に立つて折衝に非常に奔走をされたことは、実は私は感謝の意を表するものではありまするけれども、正式な団体交渉にはいつてからは、使用者側の代表者としては官房長官、あるいは総理から指名された者が当然当事者として当るべきものであつた。しかるにしばしば私どもの耳にはいりますることは、加藤労働大臣組合側の人々としばしば関係方面その他に行かれての御折衝のいきさつというものと、これに関連して、また当の責任者たる苫米地官房長官あたりが行かれての関係方面との話合いとの間において、しばしば齟齬があつた、手違いがあつたというようなことがわれわれの耳にはいるのであります。おそらくそれが間違いであれは結構でありますけれども、先般の四月一日でありましたか、二日でありましたか、いよいよ妥結をせんとする瞬間において、種々の行き違いがあつたようにも伺つておるのでありますが、これらに対して、官公爭議などの場合においては、労働大臣はあくまでも中立制を維持して、そうしてその間の斡旋をされるべきがもつともだと思いまするけれども、交渉の当事者としての立場のような御行動があつては、かえつて爭議解決に支障を來すのではないかとも考えるのであります。この点労働大臣官公爭議などの場合において、どういう立場に立つてどういう性格をもつて問題を解決していくべきものか。この点の御使命をまず伺いたいと思います。
  30. 加藤勘十

    加藤國務大臣 ただいま川崎君の言われました通り、労働省はあくまでも一方においては政府行政機関の一つではありまするが、またサービス省としての本質を失つてはならない。從つて労働省は他の行政官廳とは多少性格を異にしまして、そういう意味においては二重性格をもつておる。二重性格をもつておることが労働省の本質である。こういうように私は深く理解しております。從つて今度の官公労組の爭議問題にあたりましても、私は一面政府当事者としての立場ももつておると思いますが、あくまでも労働省へのサービス省——サービスしたからといつて何でも、かでも御機嫌を伺つて、言うことを聞かなければならぬという性格のものではない。その点は政府側の正式の代表者は官房長官と心得ております。從つて正式の組合代表と折衝される場合には、官房長官が主で、労働大臣はあくまでも斡旋役というか、介添えというか、そばについておるという態度でありまして関係方面との折衝のごときも、労働省としての立場においてやつておることでありまして、これが最後の決定的なものである、そこで私の意思を明確にして、これが政府意思であるということを言うたことは、一度もありませんので、四月一日の問題のごときでも、もとより関係方面労働大臣という立場と、組合側立場、こういうものにおいての話合いは、ある程度了解点に達したのであります。だからというて、それが政府がただちにきめたものであるというようには思いません。しかしそれが政府への折衝の端緒にはなつております。そういう点から、政府政府としての独自の見解をもつて——もちろん私も政府側として相談をかけられれば相談には應じますけれども、あくまでもそれは事態を円満に終熄せしめたいという立場に立つて、どちらかといえば、むしろ組合側に深く傾いてあると世間から思われる程度にまで、組合側意思を十分に政府に反映せしめ、これに対する政府意思を明確にせしめたい、こういう点であります。
  31. 山下榮二

    山下(榮)委員長代理 本日はこれにて会議を終ります。     午後五時三十分散会