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1948-06-29 第2回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科員昭和二十三年六月二十一日(月曜日) 委員長の指名で次の通り選任された。    主 査 押川 定秋君    副主査 松本 瀧藏君       東  舜英君    島村 一郎君       鈴木 正文君    苫米地英俊君       海野 三朗君    加藤シヅエ君       小島 徹三君    大原 博夫君       世耕 弘一君 —————————————————————   会議 昭和二十三年六月二十九日(火曜日)     午前十一時十三分開議  出席分科員    主 査 押川 定秋君    副主査 松本 瀧藏君       島村 一郎君    鈴木 正文君       苫米地英俊君    海野 三朗君       小島 徹三君    大原 博夫君  出席國務大臣         文 部 大 臣 森戸 辰男君  出席政府委員         外務事務官   朝海浩一郎君         外務事務官   千葉  晧君         文部政務次官  細野三千雄君         文部事務官   剱木 亨弘君         文部事務官   柴沼  直君         厚生政務次官  喜多楢治郎君         厚生事務官   宮崎 太一君         厚生技官    濱野規矩雄君         労働政務次官  大矢 省三君         労働基準監督官 江口見登留君         労働事務官   齋藤 邦吉君  分科員外出席者         外務事務官   鈴木 政勝君     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十三年度一般会計予算外務省文部省、  厚生省及び労働省所管  昭和二十三年度特別会計予算厚生省及び労働  省所管     —————————————
  2. 押川定秋

    押川主査 ただいまより会議を開きます。  本分科会外務省文部省厚生省及び労働省所管予算案を審議するのでありますが、本日の審査につきましては、まず外務省及び文部省所管のものを、一括審査をいたし、次にそれが終り次第、厚生省及び労働省所管のものを一括審査いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 押川定秋

    押川主査 御異議なければ、さよう決定いたします。まず外務省及び文部省所管予算案について、審査をいたすことにいたしますが、審査に入ります前に、政府側より提案の内容説明を聴取いたすことにいたします。
  4. 千葉晧

    千葉政府委員 外務省所管昭和二十三年度予算につきまして、大要説明を申し上げます。  外務省所管昭和二十三年度予算として要求いたしております金額は、合計四億一千九百四十五万九千円でありまして、ただいま差上げました資料につきまして、順を逐いまして御説明いたします。資料括弧の一をごらん願います。第一は外務省運営に必要な経費、その金額五千五百六万四千円であります。これは外務行政に関する一般事務を処理いたしますため、外務省各部局において必要といたします俸給あるいは事務費などの基準的経費であります。その細目区分につきましては、資料をごらん願いたいと思います。括弧の第二は、外務省官吏の研修に必要な経費であります。その金額二千五百五万四千円であります。これは将来わが国と諸外国との外交関係が再開されました暁に備えまして、その第一線に活躍する外務省職員養成訓練等を行うため必要な経費であります。括弧の三、外交再建に関する基礎調査等に必要な経費でありますが、その金額は一千七百四十五万二千円であります。これはわが国外交再建に資するため、内外の政治経済等情勢を初め、国際法国際条約等に関する諸般調査研究を行うために必要な経費であります。括弧の四は、情報啓発事業に必要な経費、その金額二百四十六万円であります。括弧の五は、国際文化事業に必要な経費四百六十六万八千円であります。第六は、同邦引揚げに伴い必要な経費、その金額二億一千六百一万七千円であります。これは在外邦人引揚げに関する事務、あるいは外地官署残務整理事務処理などに必要な経費、そのほか外地より未帰還の一般職員に対する給与を計上いたしたものであります。第七は、在外邦人事情等調査に必要な経費百八十五万円であります。これは在外邦人事情調査、あるいは救恤に必要な経費を計上いたしたものであります。第八は、関東州徴用船員死亡者弔慰金その他補償に必要な経費、その金額三百三十三万三千円を計上いたしております。第九は、外務省所管通信施設維持改善に必要な経費、その金額二百七十一万八千円であります。これは外交再開の際使用いたします通信機の製作、研究、あるいは既存通信施設その他の運営に必要な経費を計上いたしたものであります。第十は、定員外職員給与に必要な経費、その金額四百六十三万一千円であります。第十一は、家族手当超過勤務手当等手当の支給に必要な経費、千五百五十六万三千円であります。次は第十二、これは政府職員待遇改善に必要な経費でございます五千五百六十三万八千円であります。これは政府において決定いたしました三千七百九十一円基準給与増額実施に必要な経費であります。第十三は、外務省庁舎その他の営繕に必要な経費でありまして、その金額は百五十万円を計上いたしております。第十四は、今回の物価改訂によりまして必要となりました価引補正に必要な経費、その金額千三百五十一万一千円であります。これを要しまするに、外務省所管といたしましては、総額四億一千九百四十五万九千円でございますが、このうち外地関係経費、すなわち外地官署残務整理事務、あるいは外地職員給与に要しまする経費といたしまして、二億一千六百一万七千円が含まれておりますので、外務省本来の運営、あるいは外交再建に用います一般経費といたしましては、二億三百四十四万二千円と相成つておる次第であります。この金額は、国家予算の全体あるいは各省の予算に比しまして、きわめて少いものと申し得ると考えるのでありますが、外務省といたしましては、国家財政現状に鑑みまして、この点はやむを得ないものと考え予算上の不足省員の精進をもつて能う限り補いまして、外交事務の推進をはかりたいと考えております。
  5. 押川定秋

    押川主査 質疑に移ります。海野君。
  6. 海野三朗

    海野委員 ちよつと伺います。貿易のことにつきましては、やはり外務省関係しておられますか。それをお伺いしておきたいと思います。
  7. 朝海浩一郎

    ○朝海政府委員 お答え申し上げます。貿易につきましては、御存じのように、現在の情勢国営貿易のような形をとつておりますので、直接外務省としては関係しておりません。但しこれはどういう意味の御質問か存じませんが、おそらく将来もし外務省経済を重視して、中心になつて動いていかなければならないかという御意向が含まれおるといたしますならば、これは私どももさよう考えており、またいろいろな方からそういう御注意も受けておるのでありまして、将来の外務省機構考えます場合には、現在のような変態的な貿易の形が変りまして、常態にもどりました場合に、外務省がこれに対処し得るような予算なり機構なりを考えていかなければならないと、私ども考えておる次第であります。但しさしあたつて現状におきましては、直接外務省所管からは離れておるという実情にあるのであります。
  8. 海野三朗

    海野委員 貿易をいたしますのに、ことごとくG・H・Qの方からの命令によつて各国とやつておるのでありましようか。たとえば石炭の買上げにいたしましても、品物の安いところから買うという方針ではなしに、その筋の命によつてつておるのでありましようか、その辺はいかがなものでありましようか、お伺いしたいと思います。
  9. 朝海浩一郎

    ○朝海政府委員 ただいまの御質問は、ちよつと外務省としてはお答えいたしかねますので、これは貿易関係の官庁に対して御質問願いたいと思うのであります。私どもといたしましては、責任をもつてお答え申し上げることはできないと思います。
  10. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 ちよつとお伺いいたしますが、五の二にあります国際文化機関保存に必要な経費という中に、国際学友会とか、友隣学会とかありますが、これはどういう性質のものであるか、御説明願いたいと思います。
  11. 鈴木政勝

    鈴木説明員 ただいまの御質問に対してお答え申し上げます。国際学友会に対する補助金説明をいたしたいのでありますが、これは戦時中東亜の各地から日本政府が招聘あるいはそれに準じた形でもつて日本の内地に招致いたしました留学生が、南方関係では約六十名、中国関係が約四百五十名、この程度の者が、現在なお日本の各大学その他に留学しておるわけであります。日本側といたしましては、終戦後できるだけ帰国できる者は帰国せしめるような措置を講じてまいつたのでありますが、いろいろな事情で国へ帰れない者がある。またなお残つて最後まで日本で勉強して帰りたいという熱意をもつている者が、ただいま申し上げましたような数字になつているのであります。これに対して日本政府といたしましても、従来のいろいろな経緯もありまして、できるだけ本人の意思に副うように、また従来の日本政府との関係等から見まして、できるだけの援助をしてやろうという考えと、もう一つは、将来の広い意味文化提携といいますか、そういう意味ももちろんございますので、国際学友会というような団体を通じて、こういつた学生の学資並びに生活援助をいたしておるわけでありまして、この予算はそういつた意味補助費でございます。
  12. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 よくわかりました。目的も非常に結構だと思いますが、留学生などが本国から金を取寄せなくとも、これだけでやつていける補助費でありましようか。もしくはこれ以外に収入がないとやつていけないような程度のものでありましようか。
  13. 鈴木政勝

    鈴木説明員 御質問の点は、端的に申し上げますと、政府補助金は、非常に事務的になりますが、大体予算基礎になる単価は、月一人二千円ということで予算を組みましたが、必ずしも二千円全部をやるというわけではなしに、あるいは団体の方でその半額寄附金などを募集して、政府補助金と合わせて二千円というようなことでやつております。ところが御承知の通りな状態で、なかなかその程度の金では十分な学費とはならないので、そこで学生といたしましては、これは日本学生も同様でありますが、いろいろ内職というようなことで補つているので、その補いについては、学友会とか何とかそういう学生を扱つている団体が、いろいろと便宜をはからつてつているという状態でございます。
  14. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 御懇切なる御説明でよくわかりましたが、国家財政も非常に困難でありますし、日本学生も非常に困つている実情十分知つております。しかしこの場合は、戦争中ああいう事情で連れてきた外国学生であるといたしますならば、なまはんかな援助をして不満を抱かせるようなことであつては、将来の目的に支障が起つてきわしないかということを憂うるのであります。外務省といたしましては、どうかこういう者については、十分御努力願いまして、外国留学生が満足をして、日本に好感をもつて帰り得るように御援助くださることを、私の希望として申し上げておきます。
  15. 大原博夫

    大原委員 外務省から今いただいた資料と、本予算の中の外務省予算と違つておりますが、これはどこからどういうようにしてもつてきたのでしようか。
  16. 押川定秋

    押川主査 文部大臣がお急ぎのようですから、文部省予算説明を聴取することにいたします。
  17. 森戸辰男

    森戸國務大臣 昭和二十三年度文部省所管予算大要につきまして御説明申し上げます。  昭和二十三年度文部省所管予算額は、二百十三億六千百四十三万七千円でありまして、総予算額に対する割合は五三%となるのであります。これを前年度予算額八十七億八千三百七十一万七千円に比較いたしますれば、百二十五億七千七百七十二万円を増加いたしております。今本年度予算額の中重要な事項について申し述べたいと存じます。  第一は小学校教員給与に必要な経費であります。小学校教員給与費半額を、地方公共団体補助する必要な経費八十七億四千百三十二万五千円を学校教育局に計上したのであります。  第二は、中学校義務制延長に伴う必要な経費であります。中学校義務教育に従事する、教員給与費半額義務制延長に伴う設備及び校舎の模様替え並びに私立中学校に対する教育委託に必要な経費四十四億四千二百七十二万三千円を、地方公共団体補助するため学校教育局に計上したのであります。なお六・三制実施に伴う学校建物費補助は、別途公共事業費に計上してあるのであります。  第三は、盲聾唖教育義務制実施に必要な経費であります。盲聾唖教育義務制実施に伴う教員給与費半額及び児童の就学奨励並びに私立盲聾唖学校に対する教育委託等に必要な経費千九百九十七万五千円を、地方公共団体補助するのと、臨時教員養成施設に必要な経費百三十二万六千円とを学校教育局に計上したのであります。  第四は、定時制高等学校実施に必要な経費であります。勤労青年教育機関である定時制高等学校実施に伴う教員給与費の四割、及び設備充実に必要な経費五億二千三百一万三千円を、地方公共団体補助するため、学校教育局に計上したのであります。  第五は育英制度拡充に必要な経費であります。育英事業重要性に顧み、日本育英会事業費補助及び育英資金貸付に必要な経費、四億六千二百八十四万五千円を、学校教育局に計上したのであります。  第六は私立学校の助成に必要な経費であります。現在の経済事情に顧み、私立学校の経営を助成するための貸付金として七千五百万円を学校教育局に、戦災建物の復旧を助成するための貸付金として二億六千六百二十一万五千円を、教育施設局に計上したのであります。  第七は、社会教育拡充に必要な経費であります。社会教育拡充をはかるために、公民館の事業整備等社会教育施設に必要な経費二千五百七十三万円を社会教育局に計上したのであります。  第八は科学教育及び科学研究振興に必要な経費であります。科学教育及び科学研究振興をはかるために科学教育施設に必要な経費及び科学研究費として一億六千五百十八円を科学教育局に計上したのであります。  第九は、芸術文化保存振興に必要な経費であります。芸術文化保存振興をはかるために古典芸術国宝史蹟等保存、その他芸術文化振興に必要な経費三千六百三十六万二千円を社会教育局に、四千二百五十四万五千円を、国立博物館に計上したのであります。  第十は、直轄学校運営に必要な経費であります。直轄学校運営のために必要な経費として、十一億八千三百二十万三千円を国立総合大学に、五億三百六万七千円を官立大学に、十五億四百七十三万五千円を直轄学校に計上したのであります。  第十一は、国語研究所及び遺伝学研究所の設置に必要な経費であります。社会生活の能率を高め、国民文化の進展をはかるため、国語研究所を設置するに必要な経費八百十七万二千円を国語研究所に、人口問題並びに公衆衛生総合研究を行うため、遺伝学研究所を設置するに必要な経費百三十六万円を遺伝学研究所に計上したのであります。  第十二は、政府職員給与改善に必要な経費であります。現下の経済事情に鑑み政府職員給与改善をはかるため必要な経費十七億四千三百二十八万九千円を、行政共通費に計上したのであります。  このほか体育並びに保健衛生教科用図書編修発行その他文部行政及び学術振興上緊急欠くべからざる諸般施設を講ずるため、それぞれ必要な経費並びに、価格の補正等に伴つて生ずる予算不足を処理するに必要な経費を計上いたしたのであります。  以上は文部省所管におきまする昭和二十三年度予算大要につきまして御説明申し上げました次第でございます。  何とぞ御審議の上、御協賛あらんことを希望いたします。
  18. 押川定秋

    押川主査 前に戻りまして、大原君の質問に対する答弁を願います。
  19. 千葉晧

    千葉政府委員 ただいま御質問の三億二千八百六十一万六千円という経費は、この資料の一から九までの経費でございまして、これは予算の立て方におきまして、行政部費行政共通費とにわけるのでありますが、その区分によりました場合、この第九の項目までが行政部費にはいりまして、その金額がただいまの三億二千八百六十一万六千円と相なります。残りの十、十一、十二、十三、十四、これは行政共通費に属するものでありまして、その金額は九千八十四万三千円であります。皆さんのお手もとにございます資料の末尾の方に、政府全体としての総額二百三億という数字が出ております。そのうちに、外務省の分が九千万円あるわけでございます。
  20. 押川定秋

    押川主査 外務省予算について他に御質疑ございませんか。——質疑がなければ、外務省予算についての質疑を終了いたします。  次に、文部省予算についての御質疑を願います。
  21. 海野三朗

    海野委員 文部当局にお伺いいたしたいのでありますが、日本再建復興ということにつきましては、科学の勃興、科学の普及が最も大事であると考えるのであります。つきましては、民間の各研究機関財団法人研究所が約百ほどありますが、それらの非常に必要なる研究が多々あると思うのでありますが、それらに対して、文部当局は、この死に瀕しておる民間研究所——今日までのすばらしい業績を残したそれらの研究所が、今死にかかつておる。これを見なさつて文部当局では、これに対してどういうふうなお考えをもつていなさるのであるか。それに対しては民間の有益なる研究であれば、これを補助してやろうというお考えがおありになるのでありますか。これをお伺いしたいと思います。
  22. 柴沼直

    柴沼政府委員 民間研究機関が、日本学術振興のために、きわめて大事な役割をしておりますことは、文部省といたしましても、まつたく御同感でございまして、二十三年度予算におきましても、千六百五十万円の研究機関に対する直接の補助費を計上いたしまして、その研究を助成いたしたいと考えておるのであります。なお、これは民間研究機関に対する直接の補助でございまして、そのほかに研究事項によりまして、科学研究費の方から、学者を対象とする補助金が、研究事項のもとに別途に出てまいります。両方合わせまして、民間研究を奨励してまいりたい。かように考えておる次第でございます。
  23. 海野三朗

    海野委員 両方合わせまして千六百五十万円でありますか。
  24. 柴沼直

    柴沼政府委員 民間研究機関に直接まいる金が千六百五十万円であります。その他のものにつきましては、学術研究会議その他の機関の決定によりまして、きまつてまいりますので、ただいまどのくらいまいりますかということは、申し上げかねるのでありますが、おそらく研究事項によりましては、相当額のものが出てまいるものと予想されております。
  25. 大原博夫

    大原委員 近ごろ官公立大学専門学校の生徒が、同盟休校をやつておるようであります。その行為そのものの批判は別として、日本全体の情勢から見ると、ああした短期間に、ああしたたくさんの学校が寄り集まつて同盟休校をやるというようなことは、思想上においても、種々なる問題が起ると思います。これらの学生について聴いてみるというと、やむを得ずここに至つたのである、それは文部省に何回か交渉したけれども、とにかく文部省のいろいろな問題に対する回答について、遂にやむを得ずここに立至つたのである。こう述べておるのであります。その間における経過その他について、文部省の御説明を願いたいと思います。
  26. 細野三千雄

    細野政府委員 今起つておりまする学生のスト問題は、発端は大分以前であります。詳しい月日は覚えておりませんが、今年度予算におきまして、官立学校授業料を三倍に値上げするというこの予算内容がわかりましてから、授業料値上げ反対という形をとりまして、初め運動があつたのであります。しかし授業料反対につきましては、学生代表の方が、全国学生自治連盟という名称をもつて代表の方が文部省へも交渉に来られたのでありますが、これは今日のいろいろなわが国の国情、財政状態、あるいは私立学校との授業料の対比等々から考えまして、今日三倍程度授業料値上げは、やむを得ぬということを、諄々とお話いたしまして、学生諸君の御了解は得たはずでありまするが、しかし、そういう場合の学生諸君の態度というものは、とにかく自分たち要求を聴かなければというよりも、文部省要求を聴く聴かぬにかかわらず、何らかの団体行動をやつちまう、初めからそういう決意をもつて運動を進められておるということが、だんだんにわかつてきたのであります。これは何かやはりある政治団体指導とかいうふうなことがあるんじやないかというふうなことを、われわれは考えざるを得ないような運動のやり方であつたのであります。  その後授業料の問題が、世論の支持を得ぬというような情勢になつてきましてから、今度は、これはごく最近でありまするが、学生自治連盟は、教育復興会議という名称会合をもたれたのであります。この会合におきましては、もはや授業料値上げ反対という問題はすみに小さくかくれまして、今度表面に現われてきましたのは、全面的な教育に関する政治問題が、表面に押し出されてきたのであります。たとえば教育委員会法絶対反対とか、あるいは六・三制即時完全実施というふうな、二十数項目要求表面に出されて、そのほとんど全部は政治問題であります。そうして財源がなければ、こういうふうな財源があるというような、財源まで数字的に示したような計算書などを附した決議書をつくつて、そうして文部省へ持つてこられたのであります。その場合に、われわれも応待したのでありまするが、代表される方々の中には、学生の方もありまするが、学生でない関係の方もおられた。だんだん聴いてみますると、それは単に学生ばかりでなくて、あるいはそのほかの労働団体日本教育組合、その他の労働団体も一緒になつて、この教育復興会議というものを催されたもののようでありまするが、そうなつてきますると、もはやこれは政治運動範囲にはいつておるように、われわれは見たのであります。もつとも、純眞な立場から、授業料値上げ生活に困るというところから、こういう運動に参加された方も、もちろんあると思います。今日の学生諸君の実際の生活状態というものが、非常に困窮な状態でありまして、学生諸君のほとんど半数近くは、いわゆるアルバイトということによつて、働きつつ学ぶというような態勢を、大部分の学生がとつておりまする実情は、文部省もよくわかつておりまするし、その面につきましては、あるいは学生厚生課において、学徒援護会事業を積極的に支持する、応援する。あるいは学費につきましては、育英会の方におきまして、本年度は昨年に比べまして、破格的な増額をいたしまして、育英会の助長もやつておりまするが、そういう面におきまして、文部省は一生懸命に国の財政状態の許す範囲内におきまして、いろいろな手を打つておりますが、それでもなおかつ今日の学生諸君生活が非常に苦しいことにつきましては、われわれも十分理解しておりますが、そういうほんとうの苦しさから、そういう運動に加わられた方もあると思います。しかし今日まで行われております盟休は、もはやそういう人たち指導権をもつておるのではなくて、ある種の政治団体指導がほとんど支配的になつているように、われわれは見受けるのでありまして、それにつきましては、文部省といたしましても、ただちに各学校に対しまして、通牒を出しましたし、なお文部省としましては、今後なおこの運動が継続いたしますならば、何らかの手を打つことを考えておる次第であります。
  27. 海野三朗

    海野委員 ただいま政府委員からいろいろお話を承つたのでありますが、私が学校に教鞭をとりました経験から考えてみますと、戦後の日本におきましては、一般大衆がまるで虚脱状態にあつた。従つて学生虚脱状態にあつたことはやむを得ない。従つてその進むべき進路をはずれておるというふうに見られる点も、多々あるのでありますが、それは要するに、教育者自身考えによると私は思うのであります。教育者自身のの考えはどうであるかと申しますと、つまり教員は優遇されていないということが、根本であると思うのでありますが、この点につきましては、私はこの予算をずつと拝見いたしますと、以前の九十議会あたりの予算と比較してみますと、まことにすばらしいところの予算を組んでおられる。つまりこれだけ非常に御熱心になつたということは、はつきりわかります。森戸文部大臣教育に対しましては、非常に御熱心であるという御誠意は、十分わかるのでありますが、もう一つ百尺竿頭一歩を進めて、学生がそういうふうな行動に出ずるというその源はどこにあるかと申しますと、要するに教員の品が悪いのだ。それは月給が安いからだ。待遇が悪いからだ。学校の方面に走る者は、屑ばかり向いていくというふうに、自然となつておると、私は考えるのであります。この点につきましては、文部当局では、今の教職員のことにつきましては、いかなるお考えをもつておるのでありましようか、それをお伺いしたいと思います。
  28. 細野三千雄

    細野政府委員 教員の待遇につきましては、海野委員御指摘の通り、決してよくはないのであります。文部省は現在教職員団体であります日本職員組合と、待遇の問題につきましては、ほとんど一週間に二回ないし三回は、団体交渉の機会をもつて、いろいろなあるいは宿直、日直とか、こまかい問題につきまして、それぞれ折衝を重ねておるのであります。しかしながら、一面におきまして教員の待遇だけを取上げて特別に優遇するということは、今日の国の財政状態からいたしまして、いろいろ影響するところが多いのであります。御指摘の通り、教員労働というものは、単純な肉体労働とは違いまして、種々その労働内容を質的に向上していかなければならない、種々の研鑽を重ねていかなければなりません。そういう点におきまして、単純なる肉体労働とは違つた面をもつておりますので、そういう点からいたしましても、教員労働には特殊性があるということは、政府でも最近よく認めるようになりまして、給与審議会におきましても、そういう特殊性は、現在認識されておるのであります。そうして現在千八百円ベースから二千九百二十円ベースへの改訂を、どうやら終つたのでありますが、さらに新しい新給与の場合は、やはり教員労働の特殊性を認識するというその線は堅持されていくものと思います。何しろ国全般の財政状態が、こういう状態でありますから、十分なことはできないでありましようが、ともあれ他の肉体労働とは違つた面があるということを取入れました給与体制ができるものと信じておるのであります。
  29. 海野三朗

    海野委員 ただいま教員の待遇のことを伺つたのでありますが、次にこの予算を拝見しますと、研究費であります。人件費が大部分を占めておる。あるいは事務費、そういう方面が大部分を占めておりますが、ほんとうの研究費というものは、まだ非常に少いと私は考えておるのでありますが、文部当局では、これくらいの研究費総額でおよろしいとお考えになつておられるのでありましようか。それをお伺いいたしたいと思います。
  30. 剱木亨弘

    ○剱木政府委員 研究費の問題につきまして御説明申し上げますが、研究費として計上してありますのは、科学教育局で計上してあります科学研究費補助と、それから予算面には各学校の方の経緯になつておりますが、大学等におきまして、各講座に対します講座の研究費というのが、直接に研究目的といたしました研究費として計上してあるわけであります。  なお前の御質疑と関連いたしまして、一般職員に対しまする研究費の問題を、お尋ねになつたのではないかと考えるのであります。昨年から教員に対しまして、特殊の教育——労働の特殊性から考えまして、今も政務次官が申しましたように、常に研鑽をいたしまして、研究によつて内容を高めていくという関係から、一般教員研究費を与えたらどうかという教員組合からの要望もありましたし、そういう考え方もあつたのでございますが、本来新給与の改革に伴いまして、その意味における各人の渡すべき研究費につきましては、本法の改訂によりまして、その研究を続けていくべき特殊性ということを考慮いたしまして、二千九百二十円ベースの切替に際しまして、本俸の切替に研究費を加味いたしまして、切替をいたすということにいたしまして、今その切替をいたしているわけであります。従いまして、その方を本俸の中に含ませておりまして、他の直接に研究の方の援助といたしましては、ただいま申しました科学研究費と、各学校の講座等にありまする研究費になつているわけであります。
  31. 海野三朗

    海野委員 アメリカ人一人に対する研究費の割当と、わが日本人一人に対する研究費の割当、それを思いますと、まことに九牛の一毛で、ほとんど研究費がないにひとしい、それを私はなさけなく思うのでありますが、その点に対して文部当局はほんとうに研究の必要を痛感しておられないように私は考える。左甚五郎を生んだのはわが日本民族である。また関孝和という大数学者をもつているのは日本民族なのである。この科学的にすぐれたるところの日本人の頭、これを働かせていくことが、日本産業の基礎でもあり、日本文化国家を建設する一番のもとを握つているのが文部省である。その点から考えまして、私はこれだけの予算では、はなはだ足らないと思う。しかるに先に次官から言われましたように、現下の情勢ではやむを得ないというお話でございまするが、大体文部当局は御熱心が足りない。学校教員というものは、黙つてさえおれば、いつでも後まわしにされる状態であります。つまり文部御当局の御熱心が足りないのだというように考えるのでありまするが、御当局におきましては、これで十分であるというふうにお考えになつておるのでありましようか。はつきりしたお気持をお伺いしたいと思います。
  32. 細野三千雄

    細野政府委員 文部省が熱心が足らぬという御叱責に対しましては、なお今後とも一層熱心にやるつもりでありまするが、決定して不熱心なわけではありませんので、たとえば科学研究奨励費は、一人当きわめてわずかな金であります。おそらくそれを受取りにくる旅費にも十分でないというくらいの研究奨励費であります。しかしそれを受取られた、たとえば小学校の先生が、何か植物について研究されるというような場合に、微々たる奨励費でありましても、その奨励費が渡つたということが、御本人を非常に発奮させ、また同僚諸君も、そういう場合には、その御本人の研究を助成するために、たとえば御本人の受持時間を、他の教員が、補助してくださるというような協力と相まつて、やはり進んでいくのでありまして、そういう面いおきましては、科学研究の必要ということを、そういう同僚諸君なり、またひいては国民全体が痛感してもらわなければならぬと思うのでありまして、痛感していただければ、金額は少くても私は相当に効果をあげえると思つておるのであります。もちろん何といいましても、奨励費が多いに越したことはございませんので、その点につきましては、今後とも予算の獲得には熱を入れたいと考えておる次第であります。
  33. 海野三朗

    海野委員 前々議会から見ますと、実に隔世の観がいたしておると私は感ずるのでございます。以前からみますと、すべての方面にわたつて、御当局では非常に御熱心におやりになつておるように考えます。このたびの予算面をみましてもそうでありまするが、広く眼を世界文化国家教育費、文部省費、それらを今後よく御参考になさいまして、もつと強くこの予算面に御熱心のほどを現わしていただかなえればならないと考えます。今日この予算面に現わしたことを、いまさら言つてもしようがないのでありまするが、どうしてもこればかりの予算では、私は絶対不賛成である。どれをとつてみても、諸外国の割当からみると、日本人一人に対しては、まことに冷遇した予算であると考えまするがゆえに、今後なお一層お力をお入れになつておやりになつていただきたいということをお願いいたしまして、私の質問を打切ることにいたします。
  34. 大原博夫

    大原委員 さつきの続きですが、それぞれ学校等へ、同盟休校に対して指図をし、もし依然としてきかない場合は、それに対処したいというお話でありましたが、もちろん現在のストライキの考え方についても、私たちも意見をもつておるのでありますが、しかしただ単に抑えるというだけ、あるいは学校当局について、何か最後の対処をしたいというだけでは足らぬのではないかという感じをもつております。これに対しては、学生諸君の希望のうちにも、それを相当にわれわれは取入れていかなければならぬのではないかという項目もあると思うのであります。その点については、どういうふうなお考えになつておるか、これを質したいのと、いま一つは、医科大学の附属病院でありますが、ひとしく民間の者を治療しておるのであるけれども、これに就職しておる医師でも看護婦でも、厚生省等の管轄しておる病院や看護婦に比べて、著しく待遇が悪いという実例を聞いておるのでありますが、その点を文部省では知つておられるのかどうか。また今年の予算でそれに対処しておられるかどうか。その二点をお伺いいたします。
  35. 細野三千雄

    細野政府委員 学生運動につきましては、文部省は決してあるいは警察力によるとか、あるいは法律の力によつてこれを取締ろうというふうな考えはもつておりません。文部省はどこまでも、こういう教育面に起つた問題を、かような法律の力によつてどうしようというふうな考え方はしておらぬのであります。現在の運動がもし政治運動であるとしますると、これは全国学生自治連盟というものが、一つの政治団体ということになりまして、今回の運動が結社届のない、無届の運動でありまするがゆえに、ポツダム宣言に伴う政令に該当するとかしないとかいうふうな法律問題もあるそうでありまするが、そういうことを文部省は全然考えておらぬのであります。なお学生運動に対する直接の責任者といいましようか、管理者といいましようか、それは各学校長でありまするから、文部省が直接何らかの処置をとろうという考えはもつておらぬのでありまして、現在各学校運動実情調査いたしまして、しかるべく学校長を通じて、あくまで学校内において解決したいという考え方をしておるのであります。それから附属の大学病院の問題につきまして、看護婦の待遇の問題につきましては、これはやはりこの日本職員組合に看護婦の人たちも加盟しておられるので、この日本職員組合を通じまして、文部省と数回にわたつて団体交渉をしておるのであります。その経過について知つておるものはおりませんが、たしかに待遇が非常に悪いのでありまして、殊に結核患者になつておる人が相当あるので、これも待遇が悪いということが第一の原因でありまするから、厚生省などとも連絡いたしまして、待遇向上について対策を立てたいと思つております。
  36. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 現在、ところによつてもいろいろ違いがありまするし、季節によつても違いがありますが、年間平均で、官立学生は月割にしてどのくらいの学費が最低必要になつておりますか、お伺いいたします。
  37. 剱木亨弘

    ○剱木政府委員 大体のことは申し上げられると思いますけれども、各地方別及び正確な数字につきましては、後ほど取調べてお答えいたします。
  38. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 そこでこれも文科系であるとか、理科系であるということによつて違いますが、学生一人に対する政府の負担はどのくらいになつておりますか。
  39. 剱木亨弘

    ○剱木政府委員 学生一人に対しまする負担と申しますと、実はたとえば一つの大学で見ますと、その大学の総予算から、その大学にもらいます学生の一人当りの経費ということで、出すのはすぐできますが、しかしその中には直接に学生関係のない研究所だとか、あるいは病院の経費とか、そういうものも含まれておりますので、純粋に一人当りを出す場合には、その経費の中からどういうふうに選りわけていくかという問題がありまして、実は非常に困難なのであります。しかし大ざつぱに申しまして、国立の総合大学においては、大体一人当りが五万三千二百十円になつております。官立大学におきましては、一人当りが三万七千円になつております。それからその他の直轄学校においては、学生一人当りが一万六千二百四十円ということになつております。但し前から申し上げましたように、これは正確な数字ではありませんので、その中から直接関係のないいろいろな経費を差引きませんと、純粋の意味の一人当りの経費はいくらかということが出てまいらないのであります。
  40. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 もちろん御説明の通りでありますが、営業と同様に、商売をしていてもいなくてもかかる。いわゆるオーヴアーヘツド・コストつまり授業をしていてもいなくてもかかる経費と、生徒が来て運営するためにかかる経費というものがあるので、ここで大体わけることができるだろうと考えて、こういう質問をいたしたのでありますが、とにかくこういう数字を伺いましてありがとうございました。  そこで私は今度の文部省の御決定になつ授業料三倍は、現下の事情において、決して高いとは思つておりません。むしろ安いくらいだという印象がありますが、この授業料の算定は、どういう基礎でおやりになつておりますか。それをお伺いたいと思います。
  41. 剱木亨弘

    ○剱木政府委員 二十三年度予算を編成する場合において、授業料を相当増額してほしいという要求が大蔵省からありまして、私どもといたしましては、もちろん学生の窮状に鑑みまして、上げないで済めばできるだけ上げない方がいいと考えたのでありますけれども、たとえば今まで大学が年に六百円でありまして、これは月にいたしますと五十円、しかるに一方公立の高等学校におきましては、すでに百円を突破しております。こういう状態において、官立の大学だけが値上げをしないというわけにはいきませんので、合理的に話ができるならば、多少の増加については応じようという考えをもつて交渉したのであります。その当時は千八百円ベースでありましたので、物価庁との話合いもありまして、二倍ないし三倍程度は、一応千八百円ベースにおいて正当ではないかというお話があつたのでありますが、その後すぐ二千九百二十円ベースに移行いたしましたので、千八百円ベースで、すでに三倍近くのものが考えられておつたのでございますから、二千九百二十円ベースにおきましては、三倍もまたやむを得ないだろうということが、私どもとして考えられたわけであります。しかるにこの本予算の編成と同時に、三千七百円ベースということが予定されてまいつたのでありますが、三千七百円ベースになつたために、再び何倍か増加するということは、とうていわれわれとして耐えられませんので、この二千九百二十円ベースで適当だと思われます。適当と申しますのも、十分学生の特殊性とかいろいろなことを考慮した上のことでございますが、新物価改訂に際しましても、その三倍以上に上げることは、絶対に承服できないという強い約束のもとに、私どもといたしましては、三倍値上げを承認したのでございます。現在の物価改訂の線から申しますれば、三倍にすることは戦前の十五倍になるわけであります。新物価体系から申しますれば、百十倍くらいになつておるのでありますので、その一割いくらの率しかないのでありますから、この程度値上げもわれわれとしては、当然承服しなければならないという考えをもつて承認したわけであります。
  42. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 私は授業料値上げが、いま少し計数的の基礎の上に算定されたのかと思つておりましたが、今御説明を伺いますと、標準となつたものがただ公立学校私立学校の現在の授業料給与のベースというものが基礎になつておるということを了承いたしたのでありますが、私はこの考え方には賛成いたしかねるのであります。その一つの理由は、公立学校並びに私立学校は、官立の学校授業料値上げによつて刺激を受けて、また値段を上げるというような——私立学校においては、授業料が全収入で、それで経営していくのでありますから、高いのは当然のことである。これは経営の方面から、計数的に割出されておるものと考えるのでありますが、ここの関係はむしろ官立学校基準となつていく、しかるにその基準となるべきものが、ほかの方を基準にしたということは、理論的に少し賛成いたしかねるのであります。それから給与水準は、文化教育費というものが、あの中に盛りこまれておるのが非常に乏しいのであります。従つてあれを基準とつたということであるならば、今度の賃金水準の方に、政府がとるところの授業料というものが、いくらかの割合で反映していかなければならないことになつて、まことにこれはめんどうな問題を起すと思います。そこで私は今度の値上げは決して不当ではないと感ずると同時に、将来においては、もう少し合理的な基準で、たとえば大学においては政府の負担が学生一人についていくらかかつておるか、そのうち学生は何割程度負担するかというようなことからお定めになつたらいかがかと思いますが、今後はどういうふうにお考えでありましよう。
  43. 剱木亨弘

    ○剱木政府委員 非常にごもつともな御意見かと存ずるのでありますが、今当局においても、学校の設置基準法と申しますか、一定の規格に対しまして、どのくらいの金が要るという基礎的なものを考えておるのでございまして、ある学科について、どのくらいの設備費をもち、どのくらいの生徒数をもち、教授数をもつかという標準がきまりますれば、それによつて学校経費科学的に分析できると思います。その上において学校経費区分、だれがどのくらい負担するか、場合によりますれば、各学生授業料として負担いたしますか、もしくはその学生の出身しております地方公共団体が負担するかといつた面につきまして、十分研究をしてみたいと考えておるのでございます。
  44. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 ただいまの御説明に満足いたすものでございます。今後はこういう問題が当分の間頻繁と起り得ると思いまするので、だれが聴いても合理的だというような基礎のもとにお取扱いいただきましたならば、非常にしあわせだと存じます。  次にお伺いいたしたいことは、現在の教組のあり方について、私は大きな疑問をもつておるのであります。日本教育をさかんにしなければ復興はできない。文化国家の建設はできない。これはすべての人が言うことでありますけれども、現在のような教育の実際の運営をみておると、教育によつて国が亡ぼされるということも起つてきはしないかという重大な憂いをもつておるのであります。この教組に対して、政府はどういう見方をしておられるか、また現在のあのいき方で、学問の切り売りも十分であるとは考えませんが、訓育方面に対する力が非常に落ちておると思うのでありますが、これらに対する御見解を承りたいのでございます。
  45. 細野三千雄

    細野政府委員 現在の教員の組合で一番大きいのは、日本職員組合であろうと思います。ほとんど全国的に組織がありまして、小学校教員から、ところによつて大学の先生まで包含されております。私まだ文部省においては日が浅いのでございますが、この教員組合との接触は、私がおもにやつておるのであります。いろいろ私労働組合と接触した経験もありまするが、現在日本職員組合は、官公庁労組の中の一つにはいつております。しかし私の接触して感じたことは、何といいましてもこの労組は知識階級の人たちの組織であります。従いまして、話せばわかるという感じを、私は率直に受けたのであります。いろいろ要求がありまするが、諄々と事情をお話すれば常に解決点に到達しておるのでありまして、いまだ団体交渉において解決しなかつたような問題は、一つもありません。また教員組合の諸君に接触しておりますると、御要求のよつて来たる点について、いろいろ文教行政を担当するものといたしまして、示唆を受ける点も相当あるのであります。私どもはこの教員組合は、今後健全な発達をしていくものと確信をして、また期待をもつてその健全な発達を希つておる次第であります。この将来のいき方につきましては、現在教職員組合といたしまして、教職を直接担当しておられる方々と、事務職員とが一つの組合に合体されておりまして、その面からくるいろいろ複雑また不明朗さというようなものも、たくさんあるのでありますが、この点は組合の諸君はどういうふうにお考えになつておるか存じませんけれども、当然これは労働内容が違うのでありますから、これは将来わかれるべきものではないかと思つておるのであります。そういたしまして、純粋に教育を担当しております組合になりました場合により一層その組合は教員の組合としての本来のあるべき形態をとり戻すであろうと、われわれは期待しておるのであります。なお現在日本労働組合は、すべてそうでありまするが、組合運動が敗戦後上から与えられた組織でありましたために、いわゆる専従職員というものが、どこの組合でも認められておるのであります。教職員組合におきましても、現在三百人の教員に対して一人の専従職員が大体認められておりまするが、こういつた面から地方にいきますると、何か教員組合の中には、教育ということを放り出しておる人があるかのような印象を間々受けることがあるのでありますが、この専従職員の問題は、漸次少くなつていく傾向にあると思つておるのでありまして、文部省として積極的に今どう手を打つかということを考えておりませんが、全般の各官庁の労働組合において、漸次専従職員というものは減少する傾向にありまして、教員組合においても、だんだんに整理されていくであろうと考えておるのであります。教員組合との団体交渉におきましては、もつぱら教員の待遇、経済面の問題にのみ問題を限局しておるのでありますが、往々にいたしまして、教員組合から政治的な面の御要求なり御注文なりもないではないのでありますが、われわれといたしましては、あくまで教員組合は労働組合である。労働基準法なり労働組合法によつて認められた組合であるというその範囲内においてのみ、団体交渉を続けておるのであります。  なお教員の素質のことでありまするが、これにつきまして、いろいろ御論及されたのでありまするが、現在文部省は敗戦後の教員の素質の向上ということにつきましても、その必要は十分に痛感いたしておりまして、昨年から教員の再教育講習会ということを実施いたし、相当の成果をおさめましたので、今年も去る五月から六月にわたつて教員の再教育の講習会を全国各ブロツクにわけまして実行いたしておる次第であります。
  46. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 私どもよりも文部当局は広い範囲にわたつてこの組合運動等について御承知のはずでありまするから、あるいは私の観察が間違つておるかもしれない、先ほどお話の専従組合員の問題は別といたしまして、私の知つておるある地方では、組合の会合を授業を休んでしばしばやつておる。そうして児童には自習という名目で勝手なことをさして、自分たち会合を開いておる。そして学問もしくは訓育という方面に対しては、相当力が抜けておる。こういうような様子が見えるのであります。それからもつと大きな問題といたしましては、現在の学校においては、校長というものがまつたく浮いてしまつておる。学校の行政も、人事権も組合がすつかり握つておる。これがすなわち今度教育復興会議において教育委員会を否定してきておる一つの理由になつてきておるのではないかという疑問をもつておるのであります。昨年の二・一ゼネストに反対した教員反対した校長は、この組合が人事権をもつておるために、非常にその後虐待されておる事実はいくつもあるのであります。また新しい校長を任命するときに、この範囲でなければ任命してはならぬという表を提出しておるところもあるのであります。また視学等のようなもの、教育課長というようなものの任免にすら容喙じておる。これは現実にある問題であります。こういうようないき方ばかりでなく、二・一ゼネストに反対したがゆえに、いろいろの材料をかき集めて、これを追放委員会にかける。その追放委員五人のうち、組合員が三名おる。このために非難を受けておるというような実例もあるのであります。教員労働組合も、労働組合である以上は、労働法規に従い、また経済的の問題でいくべきであるが、現在は実際そうではない。政治運動をしきりにやつておる。こういう点につちて、もし私の知つておる小範囲に止まるならば、これはさいわいでありますけれども、私は決してそうではないのではないかという疑問をもつております。この点についての御観察はいかがでございましようか。
  47. 剱木亨弘

    ○剱木政府委員 学校の教師が教場を離れて、自由研究とかいうような意味合において、生徒の学習の指導が十分でないとか、あるいはまた学校長の権威がなくて、その学校の行事に対して、いろいろまとまつた行事ができていない。今の学校実情について、いろいろなお話をいただいたのでありますが、この点につきましては、実は私どもも率直にその事実のありますことを認めざるを得ないと考えるのでございます。特にその原因が組合運動にあるか、もしくはこの新教育目的を眞に理解しない点にあるか。すなわち生徒に対して先生は何ら指導しないで、生徒は勝手に自習をすればよいのだという誤つた考え方をして、生徒を自由に放つておいて、その指導の手を伸べようとしないというような理由もあるかと思います。なおまた教員そのものの素質が、非常に教員不足しておるということから、地方には教員として十分でない教員も相当採用せざるを得ない実情にありますので、そういつたような関係から申しまして、現在実際の教育面において憂慮すべき状態がありますことは、前にも申し上げた通り、率直に認めざるを得ないと考えるのでございます。そこでこれは決して文部省といたしまして、昔のように教育をコントロールするという意味ではないのでありますけれども、やはりこの教育者の自覚を促すという意味において、本月の八日であつたと記憶いたしますが、教員としての学校における教育活動についての相当具体的なものを示して、その基準となるべき方向をお示しいたしたのであります。ただいま各地方にそれを通牒いたしたのでありますが、なお一面このことは単に通牒をもちまして、ために先生が全部そういうふうに自覚してもらえるとは考えられないので、いま日教組とも十分話合いをしております。日教組自体、教員組合自体も、これに協力してもらいまして、この戦後の教育の再建のために、組合側と私たちとみな一緒になつて建直していこうという方向に今努力しておる次第でございます。この点は御指摘の通り、われわれも自認いたすのでありまして、今後とも十分努力いたしてまいりたいと考えておる次第であります。なおただいま組合が個々の人事について事実上支配しておるというようなお話でございましたが、政府の方針といたしましても、個々の人事権について、組合がそれに干渉するということは認めないという方針をとつておるのでございます。しかし実際問題といたしまして、いろいろ各地方に個々の人事について、組合側の意見が相当及んでおるという事実のあることも、私ども大体承知できるのでありますが、これは一面個々の人事に関しまして、組合が干渉するということは、私ども組合運動自体から申しましても、これは組合運動それ自身の堕落と申しますか、その本筋から外れてくる。必ずこれは誤つた方向にいくものと考えますので、組合自体についても、この個々の人事権に関する問題はタツチしないような方向にいくことを念願しておるのであります。いろいろ御指摘のような現在の状況におきまして、多少組合運動の本筋から逸脱した点もあるとは地方的にはお目につくかもしれませんが、まだ日本の組合運動といたしましては、ほんの一年生と考えますので、これもやはり十分組合自体もその健全なる発達に向つて努力していただけるものと私どもは確信しておるのであります。現在のいろいろの間違いは、多少はやむを得ない現象であるとは思いますが、それをもつて日本教員組合運動が間違つた方向にいつておるというふうには考えませんし、考えたくないのであります。
  48. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 ただいまの御説明大体了承いたしました。どうかこの組合運動を眞に健全に発達をさせるために、文部省といたしましては、もう少し指導啓蒙という方面にお力を注がれることを希望いたしておきます。  それから次に伺いたいのは、師範教育のことでございます。私は従来の師範教育というものに、非常に賛成いたさなかつた一人でございます。今度は師範教育が大分改まつて、新らしい構想のもとに進捗しておるようでありますが、今文部省でお考えになつておるような方法でいきますと、なかなかいい先生を早い期間に充実させるということは、困難ではなかろうかと思うのであります。そこで臨時の措置として、急に優良な先生を吸収し得るような何か方法をお考えになつておるかどうかということを、お伺いいたしたいのであります。
  49. 剱木亨弘

    ○剱木政府委員 従来の師範教育の欠陥につきましては、しばしば論議されたところでございます。この点につきましては、私どもも何とかしてこの新学制の実施とともに、師範学校の根本的な改革をいたしまして、最もいい教師を養成することができるような方向にもつていきたいと努力中でございますが、急速にいい教師を集めて、急につくるという方法はないかとの御質問でございますが、やはりこの教育の問題は、これを改革するにつきましても、相当の時間というものは、どうしても必要だと考えるのでございまして、われわれが考えますのは、試験的な策を一応考えるよりはしかたがないと存じます。そこでまず師範教育につきましては、教員養成機関につきまして、できるだけ新学制の実施とともに、二十四年度から新制大学に全部切りかえたいと思つておるのでございますが、少くとも師範学校につきましては、できるだけこの機会に新学制に切りかえまして、新しい大学という組織の中で、この教員養成をしていくようにもつていきたい、しかもそれが四年制の大学は、急速に教員養成の需要に合いませんので、その新しい大学の中で、二年のコースを認めまして、その二年のコースで、さしあたり小学校及び中学校の先生の養成をやつていきたい。これは決して十分とは考えられませんけれども、現在の情勢からいえば、やむを得ない方法ではないかと考えておる次第でございます。
  50. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 ただいまの説明によりまして、まことに結構だと私も賛意を表する次第でございます。  次に義務教育につきまして、義務教育は無料で教育を与えるということが、憲法でもうたつてあるのでありますが、現在のところでは、授業料が免除せられておるだけで、父兄の負担は非常に重いのであります。これはお調べになつたかどうかは知りませんが、小学校へ児童一人送るために、父兄の負担というものは非常に重い。こういう状態である上に、給与が十分でない先生方が生活ができないというところから、P・T・Aの方で非常に重い負担をする。学校の方の寄附もある。いろいろなことがあつて義務教育の本質に反した方向に向つておると思うのでありますが、この点に何か改善の途をお考えになつておるかどうか、伺つておきたいのであります。
  51. 剱木亨弘

    ○剱木政府委員 お説の通り、現在授業料だけが無償でございまして、教科書その他学用品はもとより、ただいま申されましたように、いろいろP・T・Aその他学校の後援会費等によりまして、寄附金があるという実情につきましては、まことにお説の通りでございます。ただ六・三制の実施等によりまして、ただいま政府といたしまして、私どももできるだけのものを義務教育に出していただきたいと考えるのでございますけれども、現在の状況、財政関係から、不十分な国家経費をいただいておるにすぎませんので、地方的に自分の学校をよりよくするという熱意から。寄附金その他を自発的に募られまして、学校をよくされるという分につきましては、むしろ私どもは感謝せざるを得ないような状態でございまするけれども、これが強制的な姿になつてまいりますと、この間において非常に弊害がありますし、ぜひ避けなければならないものだと考えるのでございます。そこで実は本年度予算につきましても、小学校なり、義務教育の学齢児童に対しまする教育を、全般的に無償にするということはできないと思いましたけれども、少くとも貧困者の児童につきましては、学用品その他相当な経費を国がみるべきであると考えまして、相当前にございましたが、義務教育費の中で、就学奨励費を相当多額に計上していきたいというふうに考えたのでございますが、これはいろいろ論議されました結果、結局失業救済の方の経費の中に、これを組んでいくことになりまして、就学奨励費としては認められなかつたのでございます。しかしこれは本年度予算といたしましては、やむを得ないと考えるのでございますが、私ども文部当局といたしましては、将来の問題として、これはやはりあくまで教育的に取扱う必要がありますので、将来就学奨励費という形をもちまして、教育的な意味において、取扱うような経費をお願いしたいという熱望を今もつておる次第であります。残念ながら、今年度におきましては、予算上計上いたしていないのでございます。
  52. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 御苦心のほどお察しいたしまして、この上とも御努力を願いたいと思うのでありますが、日本育英会の規則を改正するとかいうことにしまして、これを義務教育の方面まで少し拡げていくというようなことが可能であるかどうか、またこの育英会の問題につきましては、ここに計上されているところを見ますと、四億四千五百万円少し余の金が寄付金として計上されておるようであります。私はこの問題について文部当局のお考えを質しておきたいと思うのであります。それは諸外国におきましては、スカラシツプというものがある。このスカラシツプは、金と同時に名誉を与える組織であります。日本のこの育英会というものは、これは金を貸して返させる組織であります。借りたものを返すというのは、当然な義務であるという見地からいたせば、当然でありますが、これではどうもせつかく勝れた才能をもつている人が、金を借りて学資を援助してもらつて学問をしなければならないのだというような卑屈な考えも起つてきて、そう効果が十分にあがらないのではないか。どうせこのうち何割が返つてくるかわからないのでありますしいたしますので、私はこの育英会の金はむしろ名誉とともに金を与えて学問をさせて、国家のために人類のために働き得るりつぱな人間をつくるというような構想でいつた方がいいのではないか。これは国家財政の上から容易にこれを拡げるということは困難でありましようが、現在貸しつけておる四億二千五百万程度でも相当の範囲に有能なる学生を養つていくことができる。貸しつけていつ国庫にかえつてくるかわからぬようなもの、国庫に返らないでまた育英会資金となるというようなこと、そういうここを考えておるよりは、私はこれだけの金でもいいから、学徒に名誉と金とをそろえて渡して激励していくという方が、はるかに効果が多いと思うのでありますが、この点について御当局はどういう考えをもつておるか、お伺いいたします。
  53. 剱木亨弘

    ○剱木政府委員 育英会の成立いたしますときに、根本的に大問題でありましたのは、育英会学費を給費にするか貸費にするかという問題でございました。これはずいぶん論議された問題でございますけれども、結論といたしましては、ただいまのように、一応貸費にするということになつたのでございます。これは両方ともいろいろ理由があることだと考えますけれども、現在の私ども考え方といたしましては、これは育英会から学生に対しまして貸す方の政府といたしましては、制度上は貸費になつておりますが、その気持におきましては、給費というような気持の貸費であつてほしいと思うのであります。それから借りる方から申しますと、これはやはり名誉であり、かつ貸費であると考えてほしいと思うのであります。貸した金は、たとえば現在学生がこのインフレの時代に非常に大きな金を借りまして、そして貨幣価値が下落した場合に負担が大きくなるじやないかという心配が非常にあると思うのでありますが、前申しましたような精神から言えば、そういうことはあり得べきことではないと思うのであります。これは学生には決して心配は要らないということを申しておるのでありますが、国としてはやはり高利貸のようにこれを取立てるという態度ではいけないのではないか。しかし借りた方は、その借りた金を返すということではなくして、その金を返すことによりまして、より多くのあとに続く者に対する貸費として返していくという意味合いにおきまして、これはやはり自分の責任において返すということであつた方がいいのではないかと考えます。なおもしこれを給費にいたしました場合におきましては、国家財政関係から、いわゆる優秀性というものが非常に限定されると考えられるのでありまして、憲法の線に沿いました能力に応じて学習をする権利を保障する意味をもたしてまいりますと、やはり能力の程度は国力の許す限り、できるだけ広い方がいいのではないかと考えます。いろいろな意味合からいきましても、現在のところ、やはり貸費制度の方がいいのではないかと考えておる次第であります。
  54. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 ただいまの御説明ごもつともな点が多々ありますし、私は当時からの経過もいくらか承知しておるのであります。これのできる当時から、私はこの育英会は恩恵を与えるのだという気持があつてはいけない。その気持があつてはこの金は死んでしまうのだ。なるほど借りた金だから返すという気持があることは必要でありますけれども、これは借りたものを返すのではなくて、外国におけるスカラー・シツプのようなぐあいに、自分がスカラーシツプの試験を受ける、また人間については学校で認められておる。それで名誉と金とをもとに得て自由にそれを使う。その代り自分が大成したときには、義務ではなく、後進のために大きな寄附をする。こういうことを外国においてはやつておるのであります。日本もやはりそういうぐあいに、借りた金だから返すというのではなく、自分の努力と人間によつてかち得たところの権利の金である。しかしこの資源を培うために、自分もその地位になつたらこれだけの寄附をしたいという気持をもつていくことが、より多く私は発展性をもつておるのではないかと思うのであります。これは意見の相違にもなりましようが、なお深く御研究くださるように希望しておきます。
  55. 押川定秋

    押川主査 それでは午後二時まで休憩いたします。     午後零時五十七分休憩      ━━━━◇━━━━━     午後二時三十一分開議
  56. 押川定秋

    押川主査 ただいまより休憩前に引続いて会議を開きます。  まず厚生省側より厚生省所管予算案内容説明を求めます。
  57. 喜多楢治郎

    ○喜多政府委員 ただいま議題となりました昭和二十三年度厚生省所管予定経費要求額の概要について、簡単に御説明申し上げます。  昭和二十三年度厚生省所管一般会計予算要求額は二百九億四千百三十二万五千円でありまして、これを二十二年度成立予算百二十九億六千五百四十七万二千円に比較いたしますと、七十九億七千五百八十五万三千円の増加と相なつております。今右予算のおもなる事項について申し上げますと、まず第一は、公衆保健衛生の向上に関する経費二億九千五十六万円であります。公衆衛生行政の綜合調査をはかりまして、国民の健康増進に関する調査企画、衛生思想の普及向上を期しまする等のため、必要な経費百四十六万余円と、公衆衛生の向上をはかりますには、これに従事いたします衛生技術者の素質の向上をはかりますことが、急務でありますので、公衆衛生院におきまして、医学科、薬学科等七科目にわたりまして、再教育実施いたします経費二千百五十七万余円と、公衆衛生行政の末端機関である保健所が、公衆衛生向上に関し、国民のよき相談相手となるよう、運営いたしますために必要な経費九千三百七十三万余円と、また国民の身体状況や、摂取栄養量を都市農村を通じ調査いたしまして、その実情を把握するためと、入院患者の栄養状態を改善するため、さしあたり七大都市に病院給食を実施いたします等の経費、二千十六万と、またこれと相呼応いたしまして、国民の食生活の改善方策を科学的に調査研究する国立栄養研究所を経営するに必要な経費四百二十四万余円と、前会議に御協賛を得ました食品衛生法の施行に伴いまして、不良飲食物の横行を阻止いたし、中毒事件の発生を未然に防止する必要がありますので、これが指導取締りをするための経費三千二十三万余円と、人口動態及び各種疾病の状態を、迅速かつ正確に把握するため、衛生統計行政機構を整備充実する経費一億三万余円と、また国立公園は、御承知のように、国民の保健、休養、教化等に効果がありますのみならず、観光経済に寄与すること大なるものがあると考えられますので、現在十三箇所の国立公園の維持管理をする等のため、千九百十二万余円をそれぞれ計上いたしておるのであります。  次に第二は、医務及び薬務対策に関する経費四千二百五十万余円でありますが、国民医療法及び薬事法による、医務及び薬務行政の円滑なる運営をはかりますとともに主要医薬品の生産、配給等の確保、不良医薬品及び麻薬の取締りを徹底的に実施いたしまして、国民の医療の向上を期しますための経費一千八百九十六万余円と、医薬品の創成及び製造方法の効率的な研究実施いたしますため、衛生試験所の経営に要する経費千五百五十八万余円と、変死者、行旅死者等の死因調査経費に対して、助成するに必要な経費百十七万余円と、医師及び歯科医師の素質の向上をはかりますため、国家試験を実施するに必要な経費六百三十二万余円と、また日本医療団は、さきに解散しまして、現在清算中でありますが、医療施設の転換、清算事務指導等を行いますための経費四十六万余円を計上いたしておるのであります。  次に第三に、特殊医薬品の配給確保に必要な経費、六億四千七百三万余円でありますが、本経費は、不時の伝染病の発生に備えまして、D・D・T及び発疹チフスワクチン等、特殊医薬品の生産加工を行い、適切迅速な配給をいたしまして、防疫上万全の措置を講ぜんとするものであります。  次に第四は、国立病院及び国立療養所の経営等に関する経費三十一億七千三百三万余円であります。国民医療の確保改善をはかりますため、国立病院九十七箇所、二万四千病床、国立の結核療養所百箇所、三万五千病床、癩療養所十箇所、一万病床、精神療養所二箇所六百病床、頭部療養所一箇所五百病床、脊髄療養所一箇所九十病床、温泉療養所七箇所四百病床等を経営いたす必要がありますのと、これら病院、療養所の諸設備の補修整備をするため必要な経費を計上いたしました。  次は第五に、予防衛生対策に必要な経費七億七千七十一万余円でありますが、伝染病の発生を未然に防止いたしますため、防疫及び水道、清掃等の行政の充実をはかりますのと、都道府県の行います、トラホーム、癩、寄生虫病、精神病、その他急性伝染病予防の経費二億五千七十七万余円と、伝染病発生の根元となります、鼠族昆虫の駆除を全国的に実施いたしますための経費三億二千五百万円と、特殊疾病の検索、治療方法の研究、細菌製剤の検定等を行います予防衛生研究所経営に必要な経費四千九百三十七万余円と、また性病は、最近ますます蔓延の傾向にありますので、接触者の調査と、健康診断及び治療を行う等、諸般の性病対策を実施いたしますための経費八千八百十一万余円と、海港検疫は国内伝染病の予防上きわめて重要なことでありますので、前年度に引続いて、海港検疫を実施いたします経費五千七百四十五万余円を計上いたしておるのであります。  また第六は、結核予防対策の強化に必要な経費八千七百二十四万余円でありますが、御承知のように、わが国の結核は、ますます蔓延の傾向にありまして、憂慮すべき状況にありますので、結核予防技術者の資質の向上と、八才から二十才までの青少年を対象といたしまして、B・C・Gの接種を行いますのと、さらに陽性者と判定せられたものに対して、精密検診を行いまして、結核発病防止を期しまするとともに、全国百箇所の保健所を選びまして、特に巡回診療班を設け、国立病院、療養所等とも密接な連絡のもとに、健康診断及び治療の指導にあたらせる等、結核予防の徹底をはからんとするものであります。  次に第七は、民生安定に必要な経費九千九百七十二万余円でありますが、終戦後の情勢の激変に伴いまして、速やかに各種の社会施策を実施することは、緊要なことと考えられますが、とりあえず各種社会事業施設指導と、また社会事業に従事する者の素質の向上をはかるため、従来東京のみであつた社会事業学校を、本年度はさらに、大阪に一箇所増設いたします等の経費千六百五十五万円と、また約十三万人の民生委員は、社会福祉の増進にきわめて重要な任務をもつものでありますので、これが指導の強化をはかりまして、民生安定施策に寄与せしめますための経費四千八百七十六万余円と、傷痍者に適応した授産事業を併設した傷痍者保護施設運営に要する経費の助成と、中途失明者の再起に資するため、適当な生活訓練と、職業教育を与える施設は、従来一箇所でありましたが、本年度は一箇所増設致しまして、これを国立で経営しますのと、また顛落婦人の顛落防止と、更正の機会を与えるための経営費に対し助成する等の経費九百八十五万余円と、ララ救助物資の配給の万全を期するための経費二千四百五十五万余円を計上いたしたのであります。  次は第八に、生活保護法施行等に必要な経費七十九億千百八十四万余円でありますが、現下の経済状況の推移に伴いまして、生活困窮者が、ますます増加の傾向にありますので、生活保護法に基き、実情に即した保護を加える必要がありますので、本年度におきましても、約三百万人を対象といたしまして、生活扶助、医療、助産、産業等各種の扶助援護を実施いたしまして、民生の安定をはかるため必要な経費を計上致しておるのであります。  また第九は、児童福祉に関し必要な経費三億百五十万余円でありますが、児童の健全な育成、愛護等、児童福祉を増進するため、本年四月から児童福祉法の全面的施行をみたのでありますが、これに伴いまして、児童委員の設置、児童相談所、一時保護所、保導委員の設置等に要する経費六千四百十五万余円と、また不良児、孤児、浮浪児に対し、収容保護を加えんとするための経費一億九千七百三十八万余円と、保育所、母子寮等の施設の経営及び妊産婦、乳幼児の栄養増進、疾病の予防と母子保護対策に必要な経費三千九百九十七万余円を計上いたしまして、児童福祉の増進をはからんとするものであります。  次に第十は、社会保険対策に必要な経費四億七百五万円でありますが、健康保険、厚生年金保険及び船員保険等、各種社会保険行政の円滑なる運営をはかりますのと、新たに社会保障制度についても、慎重に調査研究をいたす必要があると認められますので、これが調査実施する等の経費八千四百三十七万余円と、厚生保険特別会計及び船員保険特別会計へ保険給付費及び業務取扱費の一部を一般会計から繰入れますための経費三億二千二百六十七万余円をそれぞれ計上いたしておるのであります。  次は第十一として、国民健康保険に関する経費五億六千五百九十五万余円であります。国民健康保険組合は、全国で七千組合、組合員約四千万人を擁しておりますが、これらの組合は、国民保険向上の基盤でありまして、これが育成強化をはかりますことは、きわめて重要でありますので、本年度におきましても、組合の運営及び直営診療所の経費等に対し、助成するための経費を計上致したのであります。  また第十二として、引揚民対策に関する経費四十億九千六十万余円であります。内地へ引揚ぐる者、及び内地以外の地域へ引揚ぐる者に対する援護の徹底をはかりますことは、きわめて重要なことでありまして、前年度に引続いて、引揚地において、収容保護、輸送その他各種援護の万全を期しますため必要な経費八億四千二百九十七万余円と、旧陸海軍の残務の処理及び未復員者、在外死没者の給与等、各種復員事務を処理するための経費三十二億四千七百六十五万円を計上いたしておるのであります。  最後に、その他の経費として二十五億三千七百九十四万三千円を計上いたしましたが、これは現下の経済状況によりまして、政府職員給与の改善をはかります経費十三億七百八十七万七千円と、物価の改訂に伴う物件費等の値上りに必要な経費十二億八百七十九万六千円と、大臣官房事務の処理のため必要な経費二千百二十七万円等を計上いたしました。  以上二十三年度厚生省所管一般会計予算大要について、御説明申し上げたのでありますが、次に特別会計の概要について申し上げます。  まず第一に、厚生保険特別会計の健康勘定においては、歳入歳出とも二十七億五千九百十三万六千円でありまして、年間勘定では、歳入が二十四億九千六百六十万五千円、歳出が四億五千四百三十五万円、差引歳入超過二十億四千二百五十七万円であります。また業務勘定におきましては、歳入歳出とも五億八千五百六十八万千円と相なつております。  また第二に、船員保険特別会計におきましては、普通保険勘定が歳入で九億五千六百三万三千円、歳出で三億四百七十九万六千円、差引歳入超過六億五千百二十三万七千円でありまして、失業保険勘定では、歳入歳出とも一億六千五百九十九万七千円と相なつております。  右はいずれも各種の保険給付と、業務運営のため必要とする経費であります。  以上昭和二十三年度厚生省所管一般及び特別両会計の概要について、御説明申し上げたのでありますが、何とぞ本予算の成立につきましては、皆様の格別のお力添えをお願い申し上げる次第でございます。
  58. 押川定秋

    押川主査 御質疑はございませんか。
  59. 大原博夫

    大原委員 国民健康保険組合の必要なることは、平素私は最も強く主張しておるものであります。非常に振わない理由を政府の方ではどう考えておるのでありますか。御意見を承ります。なぜ振わないのであるか。
  60. 三木行治

    ○三木政府委員 ただいま国民健康保険について、非常な知識をもつておられます大原さんからの御質問でございますが、私は国民健康保険の今日振わざる原因につきまして、約五つばかりの原因をあげておるのでございます。その第一点といたしまして、国民健康保険は、今日一万を超ゆる組合があるのでございますが、そのうちの大部分が戦時中の昭和十七、十八、十九の三箇年におきまして、政府が非常な勢いで奨励し、各県庁もこれに呼応いたしまして、各町村に普及宣伝をいたしてつくりましたが、すなわち町村民が国民健康保険の必要を十分理解せざるうちに、この組合ができ上つたということでございますので、国民健康保険の必要なるゆえんが、十分徹底していない。すなわち思想の普及が足りないということが、第一点であると思うのであります。  第二点といたしまして、国民健康保険の振わざるに至りましたのは、戦時中は何かとやつておりましたのが、敗戦後のインフレーシヨンの進行に伴いまして、医療費その他の諸経費がかさんでまいりました。ところが保険料の徴収あるいは保険料の値上げがこれに伴わなかつたという、すなわち物価の進行と保険経済とが一致しなかつたという点であります。  それから第三点といたしまして、国民健康保険は、生立ちから社会事業的色彩を帯びて進んでおりました関係上、政府の助成があつて初めて動いておつた。ところが政府の助成が国民健康保険創立当初のごとく出なかつたということであります。今日の国庫補助金は五億七千万円を算うるに至りましたけれども、今日国民健康保険組合が望んでおるほど、助成が出ないという点であろうと思います。  第四点といたしまして、国民健康保険を創立しました当初の組合の幹部が、敗戦後一切退いたために、新しい人たちが担当するようになつた。この人たちと創立当時の人たちとは意気ごみが違つておる。でありますから、国民健康保険組合の組合員の構成をかえるなり、あるいは幹部の意気ももつと盛んにする必要はないかという点であります。  もう一つは国民健康保険と医師、歯科医師、すなわち医療担当者の関係でありますが、国民健康保険が、社会事業的色彩を帯びて進んだがために、医療費が普通の慣行料金よりも低い。低いために差別待遇という話が出てきておる。これは医療担当者側、あるいは組合側の両方において誤解があるようでありますけれども、いずれにいたしましても、差別待遇というような意見が現われておりまするために、何か国民健康保険というものが、最初の理想通りにいつておらないような感じを、双方に与えておるということであると思います。これらの点が、あるいは保険料の値上げを困難にいたしたり、あるいは医療費の支払いが滞つたりするいろいろな結果まで現わしておると思うのでございます。これらの点を考慮いたしまして、今回第二国会に国民健康保険法の改正法案を提出いたしまして御審議を願つておる次第でございます。
  61. 大原博夫

    大原委員 今の御説明の原因は、それぞれ理由があると思いますが、私は何と言つても第一は政府の助成が足りないということだと思つております。それは保険制度でありますから、平素かけるのですが、ただいまのような事態では、非常に高い結果を招いておる。保険という性質上、平生そうあまりたくさんの費用を負担することは困るし、そう負担してまでもはいろうという気を起さぬ。従つて保険はあくまでも保険であつて、ある程度のものでなければならぬと思います。政府補助助長をしていこうとするならば、うんと思い切つた補助を与えなければやつていけない。私は国民健康保険があるために、非常に有益な点があると思つております。しかし国民保険だけをやつていく医者は、赤字になつておる。やればやるだけ赤字になつてくる。それをなぜ依然としてやつておるかというと、またいつかはもう少し上つて経営がよくなるだろうと思いつつやつておるのであります。私などは家族とは別におつてそこで経営して、費用がいくら要つてどうなるということも、はつきり出てまいりますが、こういう中間程度のものが立つていく程度には費用の増加をしなければならぬと思います。これはよほど考慮して、ほんとうに国民健康保険のいい点を認めていきたいと思います。  もう一つついでに申し述べておきたいと思いますが、私は私の町で私のおります部落と、私のいない部落と、両方に診療所を持つておりますが、私の現在住んでおる方の病院では、別の所と同じ患者の数があつても、私のおる方が請求点数は大体半分くらいになる。なぜ半分くらいになるかというと、近いものですから、小さい子供が患つてもすぐ来る。往診などはほとんどありません。しかるに一方少し離れた所にまいりますと、そうはまいりませんから、従つて点数が多くなる。私のおります第一の診療所では、大体平均六日である。しかるに離れた第二の診療所にまいりますと十日以上、倍もかかる。従つて請求点数も同時に倍かかる。のみならず、治療に手がかかつてくるから、治療費がかさんでくる。国民保険をほんとうに達成しますと、治療日数がわずかになつてくる。また早く来るために早く癒る。体を傷めないということになるのであります。一体この数字で、一人当りどの程度補助金になつておりますか、ちよつと伺いたいと思います。
  62. 三木行治

    ○三木政府委員 ただいま国民健康保険につきまして、補助金が少いという御意見でありますが、私どももこの点につきましては同感でございまして、いろいろお願いをしておるのでございますけれども、御承知のような状態でございまして、本年は五億七千万円の補助でございます。これを一人当りにいたしますと、補助金の内訳は事務費と、あと大きなものは診療部の費用なのでございます。そこで診療所の費用は別にいたしまして、事務費、旅費、あるいは保健婦の費用等を合わせまして、大体一人当り十三円くらいの金になるわけであります。十三円弱の経費が診療所の建設以外の費用であります。診療所建設の費用は一億三千万円ばかりであります。これは診療所の設置個所に要するので、頭割にしないで、それ以外の点につきまして、先ほど申しましたように、十三円弱の補助であります。
  63. 大原博夫

    大原委員 最初は一人について一円程度であつたと記憶しておりますので、今日物価が上れば、それだけもつと上りそうなものですが……。
  64. 三木行治

    ○三木政府委員 最初これをつくりましたときには、一人当り一円、それが今日十三円弱になりますが、ただそのほかに最初と違いますのは、診療所の経費が一人当り四円三十九銭くらいございますから、これを合計いたしますと十七円くらいのものになると思います。でありますから、今日の物価と比較しますと、十七円では非常に少いわけであります。
  65. 大原博夫

    大原委員 結核予防対策でB・C・Gをやるというお話ですが、それを工場その他にやられてどういう成績があがつておりますか。
  66. 濱野規矩雄

    ○濱野政府委員 B・C・Gは日本では昭和十三年に学振で取上げまして、それ以来ずつと研究してまいりましたが、学振の成績については、相当数の人を扱いまして、昭和十八年でしたか、発病が二分の一、死亡者が八分の一まで下りました。なお最近の府県の例で申しますと、石川県とか北海道札幌、近い所で栃木県あたりでは、青壮年の死亡が非常に減つてまいりました。これは昭和十六、七年ないし十七、八年ごろからずつと戦争にかけて、B・C・Gを政府の手において予防会を通じて実施いたしましたから、その効果が現われたことと思うのでありますが、このB・C・Gに対しましては、日本のこういう成績が今のところ非常に尊いものになりまして、進駐軍の方からも、この成績を始終とりにきておりますが、最近は超短波などを使いまして、非常に上手にB・C・Gをつくるようになりましたので、わざわざ進駐軍が製造所を参観してその術を教わつて帰るというふうでありまして、つい先日国際連合におきまして、本年度四千人に実施することになりまして、いろいろな資料日本から送るようになつております。大体非常な成績をあげましたことを、私たちは非常に愉快に思つております。終戦後結核死亡者が一万に対して二八・二というのが、最近一八・八まで下つた。非常な下り方で、一八という数字は、戦争前にはございませんでした。一九という数字が一番最後でしたが、終戦後一八・八に下りました。この大半は青壮年期の結核が滅つたのであります。こういう点から見ましてB・C・Gはきわめて効果大であります。先般予防接種法を今議会に提出しまして、昨日衆議院、参議院とも通過いたしておりますが、これによりまして、徹底的に予防接種をしていきたい。ただ問題は国家検定をして正しいB・C・Gを与えるということでありまして、それを今つくるべく努力いたしておるのであります。さような実情でございます。
  67. 押川定秋

    押川主査 他に御質疑はありませんか。——ないようですから、厚生省所管予算案の本分科会における審査を終ります。しばらくこのまま休憩いたします。     午後三時七分休憩      ━━━━◇━━━━━     午後三時十五分開議
  68. 押川定秋

    押川主査 休憩前に引続いて開会いたします。  次は労働省所管予算案を議題として審査にはいります前に、労働省側より提案の内容説明を聴取いたしたいと存じます。大矢政務次官。
  69. 大矢省三

    ○大矢政府委員 今回提出されました昭和二十三年度一般会計及び特別会計予算中、労働省所管分につきまして、その概要を御説明申し上げます。  労働省所管の会計は、一般会計のほかに、労働者災害補償保険及び失業保険の二特別会計がございます。まず第一に昭和二十三年度労働省所管一般会計歳入歳出予算でありますが、本会計は歳入におきまして、総額九万一千円でありまして、ほかに逓信省所管通信事業特別会計歳入に、労働関係分が三千五百四万円計上されておりますので、両者の合計は三千五百十三万一千円と相なるのであります。一方歳出の総額は三十九億八千九百四十二万三千円でありまして、ほかに内閣所管公共事業費中に、労働関係分が六億四千五百六十二万八千円計上されておりますので、両者の合計は四十六億三千五百五万一千円と相なるのであります。第二に、労働者災害補償保険特別会計予算でありますが、本会計は歳入歳出とも二十六億一千七百四十一万一千円であります。第三の失業保険特別会計でありますが、本会計も歳入歳出とも六十三億三千六百三十一万九千円と相なつております。  以上が労働省所管に属するもの、並びに関係予算総額でありますが、御承知の通り労働省において所管する事項は、労働省設置法に定めるところに従いまして、労働組合、労働関係の調整、労働に関する啓蒙宣伝、労働条件、労働者災害補償保険及び労働者保護に関する事務、職業の紹介、指導、補導、その他労務需給の調整に関する事務、失業対策に関する事務、失業保険に関する事務労働統計調査に関する事務、その他労働に関する事務を掌つておるのでありまして、本予算はこれら一般事務並びに諸般事業遂行上、必要な経費予算したものであります。今回要求いたしました予算額のうちで、おもなるものについてその概略を御説明申し上げます。  まず第一に一般会計歳出予算について御説明いたしますと、その一は大臣官房関係経費で、二千百三十九万三千円であります。大臣官房におきましては、各省共通の事務を行うのほか、所管行政に関する調査企画、及び重要政策の綜合調査に関する事務を処理しているのでありますが、本年度は特に労働に関する情報、教育、啓蒙、宣伝等、弘報関係事務重要性に鑑みまして、その事務の総合調整を行はしめるために弘報係を設けることとし、これに必要な予算を計上しておるのであります。  その二は労政局関係経費で、一億二千五百二十一万一千円であります。現下の労働情勢は、きわめて複雑かつ微妙なものがありまして、労働運動の帰趨によりましては、わが国産業の再建に重大な影響のありますことは、各位の御承知の通りであります。従いまして、労働組合法並びに労働関係調整法の適切なる運営をはかることが、いよいよ重要となつてまいりましたので、これが実施に遺憾なきを期するため、おおむね前年度に引続き所要の予算を計上したのであります。特に最近の労働情勢ないし労働運動の実態に鑑みまして、労働情報を的確迅速に把握し、かつ広汎な労働教育を行う必要を痛感いたしますので、情報、教育予算に重点をおくとともに、従来比較的手薄であつた各府県の労政末端機関たる労政事務所を、能う限り充実することに努めて、所要の経費を計上いたしたのであります。なお、最近の労働争議の形態及び実質は、いよいよ複雑多岐となり、それに伴い中央、地方の労働委員会に負荷された職責は、いよいよ加重されてまいりましたので、本年度予算におきましては、能う限りこれが内容を整備するため、必要な予算を計上しておるのであります。  その三は、労働基準関係経費三億二千四十九万四千円であります。御承知の通り、労働基準法は、昨年九月より一部実施せられ、本年五月以降全面的に実施せらるることになつたのでありますが、本法の実施は、各般の労働条件について、使用者及び労働者の守るべき最低基準を明確にして、労働者の地位の向上をはかり、また産業経営上、労働条件に関する一定の基準を与えて、産業間の不公正競争を排除し、ひいては国際貿易への参加等を期待するものでありますので、これが実施に遺漏のないよう、おおむね前年度に引続き所要の予算を計上しましたが、特に本年度におきましては、財政の許す限り、都道府県労働基準局及び労働基準監督署等、現地実行機関の整備充実に努めたのであります。さらに、労務者用物資につきましては、労働者の実質賃金の確保と、労働生産性の向上をはかるため、これが適切円滑な配分を期することが、特に必要でありますので、今回労務省関係機関において、配給計画の基礎資料を蒐集して、配給計画の決定に参加し、また一般物資につきましては、物資割当配給券の交付、並びに割当後の査察等に関する事務を担当する等、積極的にこれに関与することになりましたので、労務者用物資の配給に関する機構及び機能の整備充実をはかるに必要な予算を計上いたしました。なおまた、最近問題となりました金属山における職業病珪肺の予防対策を講ずるために必要な予算も計上いたしました。  その四は、婦人少年局関係経費二千百九十三万六千円であります。婦人少年局におきましては、婦人及び少年労働者の保護並びに一般婦人の地位の向上をはかるため、諸般の企画、調査、啓発、宣伝等を行つておりますが、これが事務の円滑なる遂行をはかるため、おおむね前年度に引続き所要の予算を計上いたしましたのであります。  その五は、職業安定局関係経費二十六億二千百十八万七千円であります。現下の労務需給の状況は、一般に楽観を許さないものがありますことは申すまでもないところでありますが、さらに今後は従来の僣在的失業が、漸次顕在化する傾向をたどる等、相当の失業者の発生も予想されますので、これに対しては、一方においては公共事業による失業応急事業等を行つて、失業者の就労機会を増加すると同時に、他方従来の職業紹介業務に一層の刷新を加え、これに根幹として職業指導、職業補導を併せ行い、もつてわが国勤労階級の職業安定に万全に期したいと存じているのであります。本年度予算におきましては、特に都道府県所在の公共職業安定所における第一線業務の機能を活発ならしめるために、その内容の整備充実をはかることに重点を置いたのであります。なお、職業補導事業に要する経費は、従来公共事業費中に計上してありましたが、職業安定法制定の趣旨等に鑑み、職業安定機関と総合一体的運営をはかるために、本年度以降は、労働省所管一般会計中に移すことにし、その内容についても、能う限り整備充実をはかりました。また失業保険特別会計へ繰入れるために必要な経費として、十九億百五十八万二千円を本予算中に計上しております。  その六は、労働統計調査関係経費二千百九十一万八千円であります。諸般労働政策の樹立実行のためには、正確なる調査統計に基礎を置くことが最も必要でありますので、労働省といたしましては、労働省といたしましては、労働統計機構を一層整備し、雇用状態、賃金、労働者家計状況、労働組合等、諸般調査統計を行うため、この経費を計上いたしたのであります。なお国立国会図書館法の施行に伴いまして、労働省にもこれが支部を設置するために、所要の経費を計上いたしました。  その七は、行政共通費でありまして、その額は八億五千七百二十八万四千円であります。そのおもなる内訳は、超過勤労手当家族手当及び職員共済組合交付金等の諸支出金として一億七千五百五十万円、職員給与水準を千八百円ベースより三千七百円ベースに引上げるための職員待遇改善費より、行政整理の実施に伴う人件費の節約額として、労働省所管職員の人件費の一割五分を減額した差引額として四億七千三百八十三万五千円、物価改訂に伴う価格補正等のため、補充費として一億九千三百八万円、労働省その他の庁舎補修に必要な経費として千四百八十六万八千円であります。  以上が労働省所管一般会計歳出予算の概要でありますが、なお、この外に内閣所管公共事業費中に、労働関係分として六億四千五百六十二万八千円が計上されております。そのおもなる内訳は、失業応急事業費補助として四億七千五百三十二万四千円、授産共同作業施設補助として一億一千七百十四万円、都道府県労働基準局及び公共職業安定所等の官庁営繕費として五千三百十六万四千円であります。  第二に、労働者災害補償保険特別会計について御説明申し上げます。本特別会計、御承知の通り、労働者災害補償保険法によつて労働者の業務上の事由による負傷、疾病、廃疾または死亡に対して災害補償を行い、併せて、労働者の福祉に必要な施設をなすことを目的とする保険会計でありまして、金額使用者負担の特別会計でございます。これが歳入は、総額二十六億一千七百四十一万一千円でありまして、そのおもなる内訳は、保険料収入二十三億六千百三十万二千円、支払備金受入二億七十八万七千円、未経過保険料四千五百七十八万二千円、その他九百五十四万円となつております。一方、歳出の総額は、二十六億一千七百四十一万一千円でありまして、そのおもなる内訳は、保険給付金十五億八千二十七万五千円、保険施設費八千四百八十六万六千円、業務取扱費一億二百八十七万三千円、諸支出金三億五千百四十六万七千円、予備費四億九千七百九十三万円となつております。  第三に失業保険特別会計について御説明申し上げます。本特別会計は、昨年十一月から施行されました失業保険法及び失業手当法によつて労働者が失業した場合に、失業保険金または失業手当金を支給して、その生活の安定をはかることを目的とした保険会計でございます。これが費用の負担は、大体政府事業主、労働者の三者持ち寄りの特別会計でありまして、うち政府は、保険給付に要する費用の三分の一額と、事務費の全額を負担し、使用者及び労働者は、失業保険法に定める保険料率によつて、おのおの同額を負担する建前となつているのであります。これが歳入は総額六十三億三千六百三十一万九千円でありまして、おもなる内訳は、一般会計よりの受入十九億百五十八万二千円、保険料収入四十四億二千九百六十五万六千円、その他五百八万一千円でございます。歳出におきましては、総額六十三億三千六百三十一万九千円でありまして、そのおもなる内訳は、失業保険給付金五十億六千五百八十四万八千円、失業手当給付金九百六十三万六千円、業務取扱費九千三百七十二万二千円、諸支出金一億九百六十万八千円、予備費十億五千七百五十万五千円と相なつております。  以上をもちまして、労働省所管一般会計及び特別会計予算並びに関係予算大要の御説明を申し上げました。  本予算案の成立につきましては、慎重御審議の上、何とぞ御賛成あらんことをお願い申し上げる次第であります。
  70. 押川定秋

    押川主査 御質疑のある方は発言を許します。
  71. 海野三朗

    海野委員 労働者の値打のあるのは、技術がそこに伴つておるからでありますが、労働省といたしましては、労働者の技術教育の方面について、どうお考えになつておるのでありましようか、お伺いいたします。
  72. 江口見登留

    ○江口政府委員 お尋ねの労働者の技術教育の問題でございますが、戦時中におきましては政府としてはこの方面に相当力こぶを入れてやつてつたのでございますが、終戦と同時にあらゆる施設も戦時中のものであるからというわけで、一応廃止の形になつております。しかしながら、われわれといたしましても、貿易の再開、外資の導入などの点からいいまして、どうしても輸出品向きのりつぱな製作品ができなければならない時期になつてまいつておりますので、国立の技能者養成所というようなものでもつくつて、技能者を養成するための指導者をさらに養成する機関をもちたいという考えをもつてつたのでございますが、何分予算の都合がありまして、本年度にはこれが計上されておりません。しかし御承知の通り、労働基準法には、技能者養成委員会というものの設置が認められておりますので、その方の経費が三十万円くらいだつたと思いますが計上されておりまして、その委員会で、いろいろな職種について、技能者の養成を各事業者が行うに際して、それに使う教科書とか、いろいろの便宜を与えたいと考えております。
  73. 海野三朗

    海野委員 ただいまお話を伺いまして、お忘れになつていないようでありますから、私はそこに一縷の望みをもつておるものでありますが、労働省といたしましては、全体の予算を通覧いたしますと、そういうようなものは一つも書いてないのでありまして、もう少し予算をその方面にとつて、技術者として進むべき道、つまり労働者として進むべき道は、どういうところにあるのかというところの考えを、よく植えつけなければならない。技術が向上しないで、文化国家の建設などいくら言つてみてもだめだと考えるのであります。それでこの技術者の教育につきまして、あるいは地方で講習会をやるとか、そういうことに対しては、もつともつと労働省当局は熱心にこの予算を御請求にならなければいけない。今年度はこれくらいでおやりになるつもりでありましようが、将来はいかなる構想をもつて労働者をひつぱつていこうというふうにお考えになつておるか。もう一度お伺いしたいと思います。
  74. 江口見登留

    ○江口政府委員 最初にわれわれ考えましたことは、先ほど申し上げましたように、とにかく国立の技能者養成所を設けるということで三、四百万円の設置費を、実は予定しておつたのであります。戦時中にもいろいろな方面の施設をそれに充当しておつたところもありますので、それらの現にあります設備、資材を国に移管してもらうとか、あるいは借用するとか——技術教育にはむろん設備機械がたくさん必要でありますので、一々それらの機械を買い集めるということでは、莫大な経費になりますから、現にありますものをどこからか手に入れてくる予定もあつたのでありますが、それらのものに対しまして、数百万円を投じて、そういう養成所をぜひつくりたい。現にそういう方面の関係のある労働者といたしましても、そういうものの設立を非常に要望しておる次第もありますので、それの実現のために、非常な努力をいたしたのであります。やはりそれには金のかかるものでありますから、政府財政の都合上、本年度は待つてくれというような財政当局の意向もありまして、来年度は何とかそういう趣旨のものを実現さしていきたいと考える次第であります。
  75. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 ちよつとお伺いいたしたいのでありますが、失業者というのは、どういう範囲のものを失業者というのでありますか。
  76. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 失業者の定義でございますが、これにつきまして、法律できめておるのが一つありまして、それが失業保険法の中に提示されております。失業保険法の定義しております失業者の定義と申しますものは、働こうという就職の意思と能力を有しながら、適当な職につくことができない者、こういうことに定義しております。
  77. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 その点が私疑問でした。適当なというのは、どういう意味でございましようか。つまりある人は非常に高い能力をもつておるけれども、その能力を発揮する地位にはつかれないが、職にはついておるという場合には、これを失業者と認めるか認めないかという点であります。
  78. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 その者が何らかの職業についておる。すなわち自分の能力から申しまして、不適当ではあるけれども、何らかの職業についておるという者でありますならば、これは失業者という定義にははいつておりません。
  79. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 そういたしますと、適当なるというのは、どういう意味に了解してよろしいのでございますか。
  80. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 失業保険法の運用にあたりまして、結局従来の知識なり経験なり、そういうところに適切するところの職業を斡旋してやる。こういう就職斡旋という場合において、適当なるという言葉をつけるのでございます。先ほど多少言い違えたかもしれませんが、就職の意思と能力を有しながら、職業につく機会のない者、これを失業者というふうに考えておるわけでございます。すなわち失業保険法の運用にあたりまして、失業保険金を給付するという問題のときには、適当なるということが問題になるのでございますが、その場合の適当なると申しますのは、従来の知識なり経験なり、そういうものに適当なる職業というふうに考えておる次第でございます。
  81. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 そこで現在の失業者の数は、どのくらいあるのでしようか。
  82. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 失業者の数でありますが、これにつきましては、政府において、昨年以来いろいろな統計を行い、また調査もいたしておるのでありますが、最近におきまして、一番正確だと思われますのは、昨年の十月に全国一斉に国勢調査をいたしましたときに、完全失業者ということであげられております数字が約六十七万という数字になつております。これは国勢調査前一箇月間において、全然職業につかなかつた者、これを完全失業者ということにいたしまして統計いたしました者が、六十七万という数字に相なつております。
  83. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 潜在失業者と申しますか、それはどのくらいのお見込みでございますか。
  84. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 潜在失業者という定義でありますが、実は政府におきまして、調査いたしたものはないのでありますが、昨年のやはり国勢調査の際に部分就業者という調査を実はいたしたのであります。これはまだ政府から正式に発表はいたされておりませんことを、あらかじめ御了承を願いたいのでありますが、この部分就業者と申しますものは、何らかの職業についておるけれども、自分といたしましては、もつとよりよき職業につきたいという考えをもつておる者、これを部分就業者と称しておるのでありますが、この部分就業者のこういう統計によりますと、約四百万という数字に相ななておるわけでございます。この四百万の数字は、今申しましたように、何らかの職業についておる。その点におきましては、りつぱな失業者ではない、りつぱな有業者であると言えますけれども、自分としては、何らかもつとよりよき職業につきたいと考えておるところに、多少通俗的に言われます潜在失業者といつたようなにおいが多分にあるのではないかと考えておる次第でございます。従つて潜在失業者という定義におきまして調べたものはありませんけれども、かりにこの部分就業者が大体において潜在失業者だとするならば、そうした潜在失業者が四百万おるのではないだろうかというふうに考えられる次第でございます。
  85. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 私の申します潜在失業者というのは、今後の行政整理とか、もしくは産業界の合理化によつて当然生じてくるだろうということが想像せられる失業者の統計がおありかどうかということを伺いたいのであります。
  86. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 行政整理につきましては、御承知のように、平均一割五分で大体天引式にやつていくということでありますが、これによりますと、官庁の欠員状況というものを調べてみますと、各官庁の欠員は、予算定員につきまして、大体一割五分程度あるのではないか。従つて現実的に首を切らなければならぬといつたような数字が、さほど私は出ないのではないだろうかと考えておる次第でございます。  それから民間の企業整備の問題であります。これにつきましては、どういう規模において、いつどういう形で行つていくかということにつきましても、まだ政府の方針も確たるものがきまつておりませんので、今この席上でどのくらい失業者が出るだろうかということについて、明確に申し上げる資料を何も持つていないことを御了承願いたいと思います。
  87. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 そういたしますと、この失業手当とか、失業保険に必要なる経費というものは、どういう基準で御計算になつておるのですか。
  88. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 お答え申し上げます。失業保険金を受くべき対象の数字の問題でありますが、これにつきましては、被保険者の総数を四百七十万と推定をいたしておるわけでございます。被保険者の総数を四百七十万といたしまして、これに失業率一年に大体一〇%と見まして、受給資格のある者がそのうちの五〇%と考えまして、さらに職業安定の窓口にまいります数を、そのうちの九〇%というふうに見ておるわけでございます。もう一度申しますと、被保険者総数四百七十万に対しまして、失業率一〇%、そのうちの五〇%が受給資格のある者、それから安定所の窓口にまいります者がその九〇%、かようなことを考えまして、この失業保険法の失業保険特別会計におきましては、二十万人が失業保険法の恩恵を受け得る者と考えまして、この予算を編成してあるような次第でございます。
  89. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 そういたしますと、これは何か統計から最初に一〇%というものが出きたのでありますか。もしくは目分量でありますか。もし統計的にあるならば、最近五年間の統計とか、もしくはこれは標準にならないかもしれませんが、過去の実績はどのくらいとかいう数字がありますでしようか。
  90. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 失業率一〇%と申しますのは、諸外国でいろいろのそうした失業率の統計、それからわが国におきましても、昔の産業構成の当時どの程度の失業が出るであろうかといつたような調査、そうしたものを一応もとにいたしまして研究をいたしたものでございまして、目分量というのではないわけでございます。大体諸外国の例におきましては、失業保険をやります場合には、大体一〇%ということが言われておりますので、また日本のいろいろな事情等考えまして、一〇%というふうに考えておる次第でございます。
  91. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 ただいま御説明を承りましたが、外国のことは例にならない。今日のような異常な日本状態において、外国で普通こうなつておるから、これでいいということでは、やはり目分量としか見られないと思うのであります。昨年の予算の見積りについては、実績はどういうことになつておりますか。
  92. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 御承知のように、昨年第一回国会に御審議を願いまして、失業保険法が昨年の十一月から施行になつたのでありますが、その後の成績を申しますと、四月末までに失業保険の失業手当及び失業保険の恩恵に浴しました者が、約三千人おるわけでございます。従いまして、当初予定いたしました者は、先ほども申し上げましたように、二十一万人という数字で、昨年も失業保険を実施してまいりましたが、その数字に比較いたしますと、きわめて少い数字に相なつておる次第でございます。しかしこれにつきましては、多少理由もありまして、御承知のように、昨年十一月失業手当法が施行になつたのでありますが、この失業手当法によりますと、任意退職の者につきましては、失業手当の恩恵に浴することがないということもあつたろうと思います。それからもう一つは、昨年、片山内閣の当時、この失業保険法を早急にやろうというときには、相当大規模な企業整備というものを前提として考えておつた次第なのでありますが、そうした企業整備が、ずつとずれてきておるということも、一つの原因であつたろう、かように考えております。それからなお一つは、こうした労働者が失業し、難職いたしましても、安定所にわずかばかりの保険金をもらいに来るということよりも、何か別な、異常なる生活様式を採用した方が、より有利だといつたような考え方で、安定所に保険金をもらいに来ることも少いということもあつたかと思いますが、いずれにしても、予定した数字よりも、きわめて少い数字になつておるということを、御報告申し上げておきたいと思います。
  93. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 本会議も始まつたようでありますからまだお伺いしたいこともたくさんありますが、もう一つだけお尋ねいたします。私の見るところでは、頭脳労働者と筋肉労働者と、こう二つにわけることができるとしてみますならば、この筋肉労働者の方は、日本の産業が少し軌道に乗つてくれば、現在の労務者だけでは不足をするのじやないかというふうな計算になるのでありますが、知能労働者については、日本経済が相当復興するまでは、部分失業と申しますか、部分就業と申しますか、もしくは潜在失業者と申しますか、そういうものが相当あるのじやないかと考えるのでありますが、この二つに大別して、何か統計でもおとりになつたものがございますでしようか。
  94. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 私の方の、職業紹介の立場から申しますると、頭脳労働者、肉体労働者といつたように、わけてやりますることは、あまりおもしろいことではない。むしろ、すべての人について、各人の適正なる職業、そういうものを探してやるということが、一番必要じやないだろうか。本人の知識なりあるいは経験なり、そうしたものを中心として、本人に一番適した職業を心配してやる、こういうような気持でやつておりますので、今日までのところ、頭脳労働者、肉体労働者というものを調査した統計資料というものは、持つていないような次第でございます。
  95. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 就職の斡旋をなさるのには、それでよかろうかと思うのであります。しかし、現在余剰人員を抱えて赤字を続けておる企業の方から申しますというと、現在のような経済状態が続くとするならば、いやでも応でも失業者が近い将来に出てこなければならない。その場合に、筋肉労働者の方は、むしろ私は余剰人員があつても、抱えておかなければならないという必要があると思う。但し、頭脳労働者の方は、抱えておいても、先に行つてまた合理化をやらなければならぬということが起つてくるので、合理化をやる場合に、産業界の人々が、よほどそこのところに考慮を要するのではないか。これの指導のために、労働省では、そういう指針になるような統計をお示しくださるならば有益じやないか、こんなふうに考えた次第であります。それでは、時間がありませんから、やめます。
  96. 押川定秋

    押川主査 これにて労働省所管予算案の本分科会における審査を終了いたします。次に、文部省関係において、海野君からの質問がありますが、当局がお見えになつておりませんので、他の機会に譲つてもらうことにいたします。  次に本日本分科会において審査いたしました各案の採決につきましては、予算委員会の総会において決定いたしたいと存じますが御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  97. 押川定秋

    押川主査 御異議がなければ、さよう決定いたします。これにて散会いたします。     午後三時五十五分散会