○川島
委員 総括的な
質問が一應終了いたしましたと見ますので、この機会に総理
大臣に一点緊急
質問を申し上げまして、総理の明確なお答えを得たいと存ずるものであります。
その事柄は総理も御存じのごとく、わが
日本社会党といたしましては、今次上程にな
つておりまする
昭和二十三年度の本
予算案に繰込まれておりまする賃金問題であります。
政府は
一般の物價を大体において七〇%の値上げを実施し、基本産業に対する企業の赤字はこれを價格差補給金に求める。しかして企業の赤字を解消するということに一應の努力を拂
つておりますことは、了承するものであります。しかしながら、
政府が本
予算に設定いたしました賃金水準三千七百円については、わが党といたしましては、過日來これに対する愼重なる檢討を続けてまい
つてきたのであります。その結果といたしまして、言うまでもなく、今次の
政府の物價に対する構想は、戰前のおおむね百十倍にすえおいて値上げをして、
予算と物價体系との均衡を保つということがねらいである
ようでありますが一方ただいま申し上げました賃金水準の三千七百円では、
政府の今次訂正いたしまする物價体系並びに今後やみ物價のある
程度の上昇をもわれわれは具体的に想像をいたしております。その推定から
考えてみまする場合に、三千七百円の賃金ベースでは、勤労者大衆の家計の赤字は断じて解消できない。か
ような
考え方のもとにわれわれは立ちまして、過日党の機関を通じまして、天下にその旨を声明いたしましたことは、総理もとくと御存じの事柄と思うのであります。わが党といたしましては、もとより三党連立
内閣の成立を目途といたしまして、三党の
政策協定を行いました際にも、これまた総理の御存じのごとく、賃金はできるだけ実質的賃金の確保ということを目標といたしまして、從
つてその賃金は実効價格において生活の水準に、スライドさせるということが、きわめて望ましい事柄であり、それによ
つてこそ、勤労大衆の家計が維持せられ、同時に勤労大衆の経済再建に寄與するところの生産意欲を高揚せしめる唯一の途である、か
ような
考え方にわれわれは立
つておるのであります。從
つて政府の今度の三千七百円ベースに対しては、
根本的にわれわれはその
意見を異にするという建前からいたしまして、本來でございますれば、この三千七百円ベースに対する別な観点に立
つた修正案をわれわれは出したい。か
ような
考えに立
つたものでありますけれ
ども、この三千七百円のベースを修正いたしますることは、今次提案されました二十三年度総
予算に対する組替をも要求するという結果になることはもちろん、それから生ずる経済的な混乱をも、われわれは多少危惧いたしまするがために、この三千七百円ベースというもは、
予算的、暫定的なやむを得ざる措置として一應了承する、こういう
考え方に立
つて過日声明を発したものである次第であります。そこで
政府にお尋ねをいたすのでありますが、この三千七百円ベースは、必ずや近き將來において崩れ去るであろうという不安をも、われわれは大いにも
つております。この
考え方からいたしまするならば、
政府におきましては、この三千七百円ベースと経済の今後の推移、あるいはまた具体的に申しますならば、マル公の物價改訂に伴いまするところの
一般やみ物資價格の高昇率、こうい
つた点をにらみ合わせまして、三千七百円ベースというものは、近き將來において必ず補正されなければ、家計の赤字は解消されず、從
つて勤労大衆の最低生活は保障されず、さらにそれがやがて
日本経済再建の上に重大なる支障ありとの
考えをわれわれはも
つておりまするために、当然來るべきことといたしまして、
政府は速やかにこの一点だけでも臨時
議会を召集いたしまして、この賃金水準の改訂を
議会に要求するということが、当然の措置であろうかと、われわれは
考えておるのであります。これと同時に、かりに現在われわれが
審議いたしておりまするところの二十三年度の本
予算が、無修正で成立をするといたしましても、そもそもこの
予算案を実施いたしまする目途の時期は、殊に鉄道、逓信あるいはタバコ、あるいは税金の面では酒税、これらの問題を大体において六月十五日実施できるものという前提のもとに立
つて、本
予算を編成されたものであると、われわれは確信をいたしております。しかるところ、もうすでに六月十五日はとうに過ぎ去りまして、目下の情勢では、鉄道並びに通信料金等の改訂が、現実に実施されるのは、大体において七月十五日ごろであろうとさえ予想されるに至
つたのであります。この面からいたしまして、かりに原案が無修正で通るにいたしましても、すでに一箇月の実施時期のずれを生じておるという関係上、そこに当然伴いまする歳入の欠陷が生じてまい
つてくることも当然であるのであります。こういう面からいたしましても、すでにこの
予算は実施きわめて不可能なる
予算になりまするということも、想像にかたくないのであります。從
つて政府は速やかに臨時
議会を召集して、補正
予算について
議会の
審議を求めなければならぬという
ような状態になることは、必然であろうと
考えられるのであります。そこで総理
大臣に重ねてお伺いいたしますが、以上申し上げました二点に対して総理はいかなる御所見をも
つておるか、同時にまた至急に臨時
議会を召集いたします方針でありますならば、その臨時
議会の召集の時期は、いつごろであるかという点について、総理
大臣の明確な方針を、この機会に承
つておきたいのであります。
○芦田
國務大臣 川島君のお尋ねの二つの点について、便宜上第二点からお答えいたします。六月十五日ごろに特別会計の鉄道運賃並びに通信料金等の値上げを実行いたしたいという目標をも
つて予算を編成したことは、御指摘の
通りであります。その実行期日が一箇月あるいは三週間遅れる結果、そこに歳入欠陷が起る、これをどうして補填するかという問題でありますが、ただいまそのずれに基く歳入欠陷を補填する案を作成中であります。本
予算の
審議より多少遅れますけれ
ども、引続きこの補正
予算を提出する計画でおります。
第一点は三千七百円九十何円の賃金水準は、今後諸般の情勢から維持できないと思うから、必然的にその補正のために臨時
國会を召集しなければならない、それはいつごろに召集するのかというお尋ねであります。この問題は、
予算委員会においても、またその他の関係
委員会においても、しばしば
論議された問題であります。
政府の立場は繰返して申し述べる必要のないくらいに、すでに論じ盡されたと思いますが、御
承知の
通りに、本年の一月、二月の実質賃金を低下させないという点に眼目をおいて、價格改訂あるいは物價騰貴とにらみ合わせて、三千七百九十何円という数字を出したのであります。從
つて現在の情勢から見て、この賃金が、ただちに崩れるものとは
考えていないのであります。しかしながら、どうしても三千七百円ベースを変更しなければならないという情勢が今後新たに生れた場合においては、むろんこれに必要なる措置をとらなければならぬということが
考えられるのは当然であります。さ
ような
事情が起
つた場合においては、臨時
國会を召集する必要が起る可能性は、今日からでも理論としては
考えられる。か
ように
政府も大体の方針をきめておるわけであります。